説明

コンバインの前処理部における伝動構造

【課題】穀稈の株元を掻き込んで後送する複数(3個以上)の掻込ホイールを連続並置したコンバインの前処理部において、前記複数の掻込ホイール間の噛み合い伝動が安定して行なわれるようにする。
【解決手段】中央側の株元側集束搬送装置19Cに対応する株元掻込装置20Cの掻込スターホイール18c,18zに動力を伝達し、更に前記中央の株元掻込装置20Cの掻込スターホイール18c,18z側からの動力により、中央の株元掻込装置20Cに隣接する左側の株元掻込装置20Lに備える二つの掻込スターホイール18a,18bを駆動すべく、両掻込スターホイール18a,18bのうち、右側の掻込スターホイール18bの上方で穀稈の通過しない位置に伝動手段Dを設け、前記中央の株元掻込装置20Cの動力を、当該伝動手段Dを介して両掻込スターホイール18a,18bのうち右側の掻込スターホイール18bに伝達するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの前処理部に備える株元掻込装置の伝動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの前処理部では、刈刃により刈り取った穀稈の株元を掻き込んで後送する掻込部を、センターデバイダフレームを中心として左右に相対応する掻込ホイール(スターホイール)と、該掻込ホイールの上方において機体前方に向けてハの字状に開放する掻込ベルト等で構成すると共に、左側の掻込部の掻込ホイール、即ち左端の掻込ホイールを中心として3個の掻込ホイールを連続並置して歯合させ、前記左端の掻込ホイールを駆動源として3個の掻込ホイールを順次噛み合い駆動させるように構成にしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−196132号公報(第3−4頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した特許文献1のように、複数(3個以上)の掻込ホイールを連続並置して順次噛み合い駆動させる構成のものでは、その噛み合い誤差が蓄積されて伝動下手側の掻込ホイールが回転不良やロックを起こす不具合があった。また、各掻込ホイール間の噛み合い伝動が効率的に行なわれるようにするには、各掻込ホイールの歯合部の円弧歯厚を精密に形成すればよいが、その反面、歯合する掻込ホイール間の穀稈の掻き込み搬送隙間が狭くなり、掻き込まれる穀稈の量が増加すると搬送不良が発生する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、機体の左右方向に並設した複数の分草体と、各分草体の後方に設けた分草穀稈を引起す引起装置と、該引起装置の後方に設けた刈取装置と、該刈取装置により刈り取った穀稈の株元を掻込む複数の株元掻込装置と、各株元掻込装置により掻き込んだ穀稈の株元を合流部に集束する複数の株元側集束搬送装置を備えたコンバインの前処理部における伝動構造であって、前記株元側集束搬送装置のうち中央側の株元側集束搬送装置から、該株元側集束搬送装置に対応する中央の株元掻込装置の掻込スターホイールに動力を伝達し、更に前記中央の株元掻込装置の掻込スターホイール側からの動力により、中央の株元掻込装置に隣接する左側の株元掻込装置に備える二つの掻込スターホイールを駆動すべく、両掻込スターホイールのうち、右側の掻込スターホイールの上方で穀稈の通過しない位置に伝動手段を設け、前記中央の株元掻込装置の動力を、当該伝動手段を介して両掻込スターホイールのうち右側の掻込スターホイールに伝達すると共に、両掻込スターホイールの左側の掻込スターホイールを右側の掻込スターホイールとの歯合により駆動させるように構成したことを第1の特徴としている。
【0005】
そして、伝動手段を、左側の株元掻込装置に備える右側の掻込スターホイールと同軸心に設けた伝動スターホイールと、該伝動スターホイールと歯合する右側の伝動スターホイールにより構成すると共に、左側の株元掻込装置に備える掻込スターホイールの歯厚を、前記伝動スターホイールの歯厚よりも小さく形成したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、株元側集束搬送装置のうち中央側の株元側集束搬送装置から、該株元側集束搬送装置に対応する中央の株元掻込装置の掻込スターホイールに動力を伝達し、更に前記中央の株元掻込装置の掻込スターホイール側からの動力により、中央の株元掻込装置に隣接する左側の株元掻込装置に備える二つの掻込スターホイールを駆動すべく、両掻込スターホイールのうち、右側の掻込スターホイールの上方で穀稈の通過しない位置に伝動手段を設け、前記中央の株元掻込装置の動力を、当該伝動手段を介して両掻込スターホイールの右側の掻込スターホイールに伝達すると共に、両掻込スターホイールの左側の掻込スターホイールを右側の掻込スターホイールとの歯合により駆動させるように構成したことによって、従来のように複数(3個以上)の掻込ホイールを歯合状態で連続並置した場合でも、連続並置されている複数の掻込ホイールを順次噛み合い駆動させることなく、中央側の株元側集束搬送装置に対応する中央の株元掻込装置の掻込スターホイール側からの動力により、この中央の株元掻込装置の掻込スターホイールに隣接する左側の株元掻込装置の掻込スターホイールを安定して回転駆動させることが可能となり、各掻込ホイールの噛み合い誤差によって、連続並置されている伝動下手側の掻込ホイールが回転不良やロックを起こすといった従来の不具合を解消できるようになる。
【0007】
そして、請求項2の発明によれば、伝動手段を、左側の株元掻込装置に備える右側の掻込スターホイールと同軸心に設けた伝動スターホイールと、該伝動スターホイールと歯合する右側の伝動スターホイールにより構成すると共に、左側の株元掻込装置に備える掻込スターホイールの歯厚を、前記伝動スターホイールの歯厚よりも小さく形成したことによって、穀稈の通過する掻込ホイール間の穀稈の掻き込み搬送隙間が広がり、刈取り穀稈の稈量が増加しても良好な掻き込み性能を維持できるものでありながら、伝動手段である両伝動スターホイールの噛み合い率は、掻込スターホイールよりも高いので安定した動力の伝達が可能になる。更に、両伝動スターホイールを穀稈の掻き込み手段として兼用することができるので掻き込み性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る6条刈りコンバインの前処理部1の左側面図、図2は、同じく平面図である。前処理部1は、従来と同様に前処理フレーム2に、分草体3、引起装置4、刈取装置6、及び穀桿搬送部7等を設けて構成されている。
【0009】
更に詳しくは、前処理フレーム2は、主フレームとして機体の前後方向に向く縦伝動筒8と、この縦伝動筒8の前端に設けた機体の左右方向に向く横伝動筒9を備えている。そして、横伝動筒9から前方に突設した分草体支持フレーム11の先端に刈り取り穀稈を分草する複数の分草体3を取り付けると共に、この分草体3の後方には、該この分草体3により分草された後の穀稈を引き起す引起装置4と、該引起装置4により引き起こされた穀稈の株元を切断する刈刃6aを備える刈取装置6を横伝動筒9の前方に横設している。
【0010】
また、横伝動筒9の一端からは、各引起装置4に駆動力を伝達する引起伝動筒12を上方に向けて立設している。そして、縦伝動筒8の基端部は、コンバインの機体に昇降自在に軸支してあり、縦伝動筒8の下面と機体との間に介装した図示しない油圧シリンダを伸縮作動させることにより前処理部1の昇降を可能にしている。
【0011】
また、図3〜図5に示すように、縦伝動筒8内には縦伝動軸13を内装している。そして、横伝動筒9内には、縦伝動軸13から駆動力を伝達する横伝動軸14を内装している。また縦伝動軸13には、縦伝動筒8の基端部側に設けた入力プーリ15から駆動力が入力されるようになっている。更に、引起伝動筒12内には、横伝動軸14から駆動力を伝達する引起伝動軸16を内装しており、上述した縦伝動軸13、横伝動軸14、及び引起伝動軸16を介して前処理部1の各部に駆動力が入力されるようになっている。
【0012】
そして、穀稈搬送部7は、引起装置4によって引き起こされた穀稈を掻き込む掻込みベルト17a,17b,17c,17d,17e,17fと、これら掻込みベルト17a,17b,17c,17d,17e,17fに対応する掻込スターホイール18a,18b,18c,18d,18e,18fを備える左右及び中央(複数)の株元掻込装置20L,20R,20Cと、刈刃6aにより切断された後の穀稈の株元を搬送する左右及び中央の株元側集束搬送装置19L,19R,19Cと、刈刃6aにより切断された後の穀稈の穂側を搬送する左右及び中央の穂先側搬送装置21L,21R,21Cと、両搬送装置19L,19R,19C,21L,21R,21Cにより搬送される穀稈の稈長を検出して自動的に適正な扱ぎ深さに調節する扱深搬送装置22と、該扱深搬送装置22から穀稈の株元側を受け継いで図示しないフィードチェンに搬送する中継株元搬送チェン23を備えている。
【0013】
上述したように、本実施形態の前処理部1は6条刈りであり、左右方向に並設した6個の掻込スターホイール18a,18b,18c,18d,18e,18fの上方には、左右一対ごとに前方に向かって略ハの字状に拡開する掻込みベルト17a,17b,17c,17d,17e,17fを設けている。これらの掻込みベルト17a,17b,17c,17d,17e,17fは、駆動プーリ24及び図示しない従動プーリに巻回してあり、当該駆動プーリ24の回転駆動により穀稈の搬送方向に回転する。
【0014】
そして、右側にある穂先側搬送装置21Rを前処理部1の後端まで延出すると共に、当該穂先側搬送装置21Rと左側にある穂先側搬送装置21Lとを平面視で略y字状をなすように配置している。一方、中央にある穂先側搬送装置21Cと左側にある穂先側搬送装置21Lとは、右側にある穂先側搬送装置21Rと比較して穀稈の搬送距離が短く、中央にある穂先側搬送装置21Cは、左右の穂先側搬送装置21L,21Rの合流部Mの近傍まで延出させてある。
【0015】
そして、左右及び中央の穂先側搬送装置21L,21R,21Cの下方には、これらの穂先側搬送装置21L,21R,21Cに対応する左右及び中央の株元側集束搬送装置19L,19R,19Cが設けてあり、上述した左右及び中央の株元掻込装置20L,20R,20Cにより掻き込んだ穀稈の株元は、当該株元側集束搬送装置19L,19R,19Cによって上述の合流部Mで集束されるようになっている。
【0016】
また、扱深搬送装置22は、その前端部22aを支点として上下揺動自在に設けてあり、当該扱深搬送装置22により扱ぎ深さが調節された後の穀稈は、その株元側が扱深搬送装置22から中継株元搬送チェン23に受け継がれる。但し、穂先側は右側にある穂先側搬送装置21Rによって継続的に搬送される。
【0017】
尚、扱深搬送装置22と、左右及び中央の株元側集束搬送装置19L,19R,19C、及び中継株元搬送チェン23は、駆動力が入力される図示しない駆動スプロケットと従動スプロケットとの間に搬送チェンを掛け回した構造となっており、これらの搬送チェンと該搬送チェンに対向して設けた挟持レールとの間に穀稈の株元を挟持しながら、当該穀稈の株元側を後方に搬送することができるように構成している。
【0018】
一方、左右及び中央の穂先側搬送装置21L,21R,21Cは、駆動力が入力される図示しない駆動スプロケットと従動スプロケットとの間に、穀稈の穂先側を受け継ぐ樹脂製の起伏可能な搬送爪を複数取り付けた搬送チェンを掛け回した構造となっており、前処理フレーム2に支持した搬送レールと前記搬送爪との間に穀稈の穂先側を保持しながら、当該穀稈の穂先側を後方に搬送することができるように構成している。
【0019】
そして、上述した掻込スターホイール18a,18b,18c,18d,18e,18fは、前処理フレーム2に固定または回転自在に設けた支軸26a,26b,26c,26d,26e,26fに一体的または回転自在に軸支している。詳述すると、図3及び図6に示すように、左最外側の掻込スターホイール18aを軸支した支軸26aを、前処理フレーム2に固定した筒軸27aに回転自在に内挿すると共に、当該支軸26aには、左側の株元側集束搬送装置19Lの従動スプロケット28aを回転自在に取り付けている。尚、支軸26aの上端には、該支軸26aと一体回転するように左側の株元掻込装置20Lに備える掻込みベルト17aの駆動プーリ24を取り付けている。
【0020】
また、左側の株元側集束搬送装置19Lの駆動スプロケット29Lは、引起伝動筒12から突出する左駆動軸31に軸支すると共に、該左駆動軸31の先端には、左側にある穂先側搬送装置21Lの駆動スプロケット32Lも軸支している。そして、左駆動軸31によって左側にある穂先側搬送装置21Lの駆動スプロケット32Lと左側の株元側集束搬送装置19Lの駆動スプロケット29Lに駆動力が伝達されると、左側にある穂先側搬送装置21Lと左側の株元側集束搬送装置19Lが駆動する。
【0021】
一方、図3に示すように、右最外側の掻込スターホイール18fは、前処理フレーム2に固設した支軸26fに回転自在に外嵌する筒軸27fの下部に固設されると共に、この筒軸27fには、右側の株元側集束搬送装置19Rの従動スプロケット28fを一体回転可能に取り付けている。そして、筒軸27fは、従動スプロケット28fの上方位置に右側の株元掻込装置20Rに備える掻込みベルト17f用の駆動プーリ24を一体回転可能に取り付けている。尚、右側の株元側集束搬送装置19Rの駆動スプロケット29Rは、縦伝動筒8から突出する右駆動軸33に軸支してある。
【0022】
前記右駆動軸33によって右側の株元側集束搬送装置19Rの駆動スプロケット29Rに駆動力が伝達されると、右側の株元側集束搬送装置19Rが駆動すると共に、右最外側の掻込スターホイール18fと該掻込スターホイール18fの上方に位置する掻込みベルト17fが駆動する。そして、右最外側の掻込スターホイール18fと該掻込スターホイール18fに隣接して歯合する掻込スターホイール18eを配置している。
【0023】
そして、掻込スターホイール18eを軸支する支軸26eは、前処理フレーム2に固設した筒軸27eに回転自在に内挿してあり、当該支軸26eには、筒軸27eの下方位置に掻込スターホイール18eを固設すると共に、筒軸27eの上方位置には、右側の株元掻込装置20Rに備える掻込みベルト17e用の駆動プーリ24を取り付けてある。したがって、右最外側の掻込スターホイール18fが回転駆動すると、このスターホイール18fに歯合する機体の中央側の掻込スターホイール18eが回転駆動すると共に、該掻込スターホイール18eの上方に位置する掻込みベルト17eも駆動する。
【0024】
次に、機体の中央側に配置されているその他(3個)の掻込スターホイール18b,18c,18dと、左最外側の掻込スターホイール18aへの動力伝達構造について説明する。
【0025】
上述した縦伝動軸8の前端近傍には、上方に向く中伝動筒34が突出しており、この中伝動筒34内には、縦伝動軸13から駆動力が伝達される伝動軸36を内装すると共に、当該中伝動筒34の端部にギヤ37,38を収容したギヤケース39を備えている。そして、ギヤケース39からは、機体の略中央に相当する位置に配置した株元側集束搬送装置19Cの駆動スプロケット29Cを軸支した中駆動軸41が突出している。
【0026】
即ち、中駆動軸41には、前記伝動軸36に伝達された駆動力がギヤ37,38を介して伝達されると共に、機体の略中央に配置した株元側集束搬送装置19Cの駆動スプロケット29Cの上方位置には、該駆動スプロケット29Cと中央の穂先側搬送装置21Cの駆動スプロケット32Cが一体回転するように取り付けてあり、両駆動スプロケット29C,32Cに駆動力が伝達されると中央の株元側集束搬送装置19Cと穂先側搬送装置21Cが駆動する。
【0027】
また、縦伝動筒8の基端部側からは、右側の穂先側搬送装置21Rの駆動スプロケット32Rと,中継株元搬送チェン23の駆動スプロケット42を一体回転するように取り付けた駆動軸43と、扱深搬送装置22の駆動スプロケット44を一体回転するように取り付けた駆動軸46が突出しており、右側の穂先側搬送装置21R、中継株元搬送チェン23、及び扱深搬送装置22は、駆動軸43または駆動軸46によって駆動するようになっている。
【0028】
そして、左側から3番目の掻込スターホイール18cを、前処理フレーム2に固設した支軸26cに回転自在に外嵌する筒軸27cの下部に間座Sを介して固設すると共に、当該掻込スターホイール18cの上方には、所定の間隔を隔てて伝動手段Dを構成する伝動スターホイール18Cを筒軸27cの下部に該筒軸27cと同軸心で固設している。更に、筒軸27cの上部には、中央の株元側集束搬送装置19C用の従動スプロケット28cを一体回転可能に取り付けると共に、筒軸27cは、従動スプロケット28cの上方位置に中央の株元掻込装置20Cに備える掻込みベルト17c用の駆動プーリ24を一体回転可能に取り付けている。
【0029】
また、掻込スターホイール18cの左側に隣接して歯合する掻込スターホイール18bを軸支する支軸26bは、前処理フレーム2に固設した筒軸27bに回転自在に内挿してあり、この掻込スターホイール18bを支軸26bの下部に間座Sを介して固設すると共に、当該掻込スターホイール18bの上方には、所定の間隔を隔てて上述の伝動手段Dを構成する伝動スターホイール18Bを支軸26bに該支軸26bと同軸心で固設している。更に、支軸26bの上部には、左側の株元掻込装置20Lに備える掻込みベルト17b用の駆動プーリ24を一体回転可能に取り付けている。
【0030】
そして、中央側に配置されている株元掻込装置20Cに備える掻込スターホイール18b,18cは互いに歯合しているが、両掻込スターホイール18b,18cは、その上方に同軸心で、且つ穀稈の通過しない位置に設けた互いに歯合する伝動スターホイール18B,18Cからなる伝動手段Dを介して回転駆動するようになっている。
【0031】
即ち、図7に示すように、伝動手段Dを、左側の株元掻込装置20Lに備える二つの掻込スターホイール18a,18bのうち、右側の掻込スターホイール18bの上方で、該掻込スターホイール18bと同軸心に設けた伝動スターホイール18Bと、中央の株元側集束搬送装置19Cに備える中央の掻込スターホイール18cの上方で、該掻込スターホイール18cと同軸心に設けた伝動スターホイール18Cにより構成すると共に、互いに歯合する両伝動スターホイール18B,18Cを、その下方の掻込スターホイール18b,18cよりも歯厚が大きく且つ大径ホイールに形成してあって、当該伝動スターホイール18B,18Cを介して駆動力を分岐すると共に、その噛み合い率を向上させて掻込スターホイール18b,18cへの確実且つ安定した動力伝達を可能にしている。
【0032】
尚、上述した伝動スターホイール18B,18Cの外形形状を基準にすると、各株元掻込装置20L,20C,20Rに備える掻込スターホイール18a,18b,18c,18d,18e,18fは、当該伝動スターホイール18B,18Cよりも歯厚が小さく且つ小径ホイールに形成してある。
【0033】
また、掻込スターホイール18cの右側に隣接して歯合する掻込スターホイール18dを軸支する支軸26dは、前処理フレーム2に固設した筒軸27dに回転自在に内挿してあり、当該支軸26dには、筒軸27dの下方位置に掻込スターホイール18dを固設すると共に、筒軸27dの上方位置に中央の株元掻込装置20Cに備える掻込みベルト17d用の駆動プーリ24を取り付けてある。したがって、掻込スターホイール18cが回転駆動すると、この掻込スターホイール18cの右側に隣接して歯合する掻込スターホイール18dが回転駆動すると共に、該掻込スターホイール18dの上方に位置する掻込みベルト17dも駆動する。
【0034】
一方、掻込スターホイール18bの左側に隣接して歯合する左最外側の掻込スターホイール18aは、上述の如く前処理フレーム2に固定した筒軸27aに回転自在に内挿されている支軸26aに軸支してあって、掻込スターホイール18bが回転駆動すると、このスターホイール18bに歯合する掻込スターホイール18aが回転駆動すると共に、該掻込スターホイール18aの上方に位置する掻込みベルト17aも駆動する。
【0035】
尚、図8は、上述した伝動手段Dを5条刈りの前処理部1に適用した場合の要部伝動図であって、この場合は、掻込スターホイール18zを伝動手段Dを構成する伝動スターホイールとして兼用している。また、図9に示す6条刈りの前処理部1の要部伝動図に示すように、ベベルギヤB1,B2を介装した伝動軸51を用いて伝動手段Dを構成することも可能である。
【0036】
以上説明したように、前処理部1に備える複数の株元側集束搬送装置19L,19C,19Rのうち中央側の株元側集束搬送装置19Cから、該株元側集束搬送装置19Cに対応する中央の株元掻込装置20Cの掻込スターホイール18c(6条刈り),18z(5条刈り)に動力を伝達し、更に前記中央の株元掻込装置20Cの掻込スターホイール18c,18z側からの動力により、中央の株元掻込装置20Cに隣接する左側の株元掻込装置20Lに備える二つの掻込スターホイール18a,18bを駆動すべく、両掻込スターホイール18a,18bのうち、右側の掻込スターホイール18bの上方で穀稈の通過しない位置に伝動手段Dを設け、前記中央の株元掻込装置20Cの動力を、当該伝動手段Dを介して両掻込スターホイール18a,18bのうち右側の掻込スターホイール18bに伝達すると共に、両掻込スターホイール18a,18bの左側の掻込スターホイール18aを右側の掻込スターホイール18bとの歯合により駆動させるように構成したことによって、例えば、従来の6条刈りコンバインの前処理部1のように、複数(3個以上)の掻込ホイール18a,18b,18c,18dを歯合状態で連続並置した場合でも、連続並置されている複数の掻込スターホイール18a,18b,18c,18dを順次噛み合い駆動させることなく、中央側の株元側集束搬送装置19Cに対応する中央の掻込スターホイール18c側からの動力により、この中央の株元掻込装置20Cの掻込スターホイールに隣接する左側の株元掻込装置20Lの掻込スターホイール18a,18bを安定して回転駆動させることが可能となり、各掻込ホイール18a,18b,18c,18dの噛み合い誤差によって、連続並置されている伝動下手側の掻込ホイール(本実施例では18a,18d)が回転不良やロックを起こすといった従来の不具合を解消できるようになる。
【0037】
そして、伝動手段Dを、左側の株元掻込装置20Lに備える右側の掻込スターホイール18bと同軸心に設けた伝動スターホイール18Bと、該伝動スターホイール18Bと歯合する右側の伝動スターホイール18Cにより構成すると共に、左側の株元掻込装置20Lに備える掻込スターホイール18a,18bの歯厚を、前記伝動スターホイール18B,18Cの歯厚よりも小さく形成したことによって、穀稈の通過する掻込スターホイール(18aと18b及び18cと18d)間の穀稈の掻き込み搬送隙間が広がり、刈取り穀稈の稈量が増加しても良好な掻き込み性能を維持できるようになる。尚、穀稈の通過する掻込スターホイール(18aと18b及び18cと18d)間の穀稈の掻き込み搬送隙間を広げるには、当該掻込スターホイール18a,18b,18c,18dの歯厚はそのままで小径に形成することによっても可能である。
【0038】
また、6条刈りの場合の伝動手段Dである伝動スターホイール18B,18Cの噛み合い率は、その下方の掻込スターホイール18b、18cよりも高く、同じく5条刈りの場合の伝動手段Dである伝動スターホイール18z,18Bの噛み合い率は、該伝動スターホイール18Bの下方の掻込スターホイール18bと歯合する掻込スターホイール18aの噛み合い率よりも高いので安定した動力の伝達が可能になる。更に、これらの伝動スターホイール18B,18C,18zを穀稈の掻き込み手段として兼用することができるので掻き込み性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】前処理部の要部側面図。
【図2】前処理部の要部平面図(6条刈り)。
【図3】前処理部の要部伝動図。
【図4】各穂先側搬送装置を除いた状態の前処理部の要部平面図。
【図5】中央の株元側集束搬送装置を示す前処理部の要部側面図。
【図6】左側の掻込スターホイールの取り付け状態を示す要部正面断面図。
【図7】掻込スターホイール配置を示す平面図。
【図8】他の実施形態を示す前処理部の要部伝動図(5条刈り)。
【図9】他の実施形態を示す前処理部の要部平面図(6条刈り)。
【符号の説明】
【0040】
3 分草体
4 引起装置
6 刈取装置
18B 伝動スターホイール
18C 伝動スターホイール(右側)
18a 左側の株元掻込装置に備える左側の掻込スターホイール
18b 左側の株元掻込装置に備える右側の掻込スターホイール
18c 中央の掻込スターホイール(6条刈り)
18z 中央の掻込スターホイール(5条刈り)
19C 株元側集束搬送装置(中央)
19L 株元側集束搬送装置(左側)
19R 株元側集束搬送装置(右側)
20C 株元掻込装置(中央)
20L 株元掻込装置(左側)
20R 株元掻込装置(右側)
D 伝動手段
M 合流部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の左右方向に並設した複数の分草体(3)と、各分草体(3)の後方に設けた分草穀稈を引起す引起装置(4)と、該引起装置(4)の後方に設けた刈取装置(6)と、該刈取装置(6)により刈り取った穀稈の株元を掻込む複数の株元掻込装置(20L,20C,20R)と、各株元掻込装置(20L,20C,20R)により掻き込んだ穀稈の株元を合流部(M)に集束する複数の株元側集束搬送装置(19L,19C,19R)を備えたコンバインの前処理部における伝動構造であって、前記株元側集束搬送装置(19L,19C,19R)のうち中央側の株元側集束搬送装置(19C)から、該株元側集束搬送装置(19C)に対応する中央の株元掻込装置(20C)の掻込スターホイール(18c,18z)に動力を伝達し、更に前記中央の株元掻込装置(20C)の掻込スターホイール(18c,18z)側からの動力により、中央の株元掻込装置(20C)に隣接する左側の株元掻込装置(20L)に備える二つの掻込スターホイール(18a,18b)を駆動すべく、両掻込スターホイール(18a,18b)のうち、右側の掻込スターホイール(18b)の上方で穀稈の通過しない位置に伝動手段(D)を設け、前記中央の株元掻込装置(20C)の動力を、当該伝動手段(D)を介して両掻込スターホイール(18a,18b)のうち右側の掻込スターホイール(18b)に伝達すると共に、両掻込スターホイール(18a,18b)の左側の掻込スターホイール(18a)を右側の掻込スターホイール(18b)との歯合により駆動させるように構成したことを特徴とするコンバインの前処理部における伝動構造。
【請求項2】
伝動手段(D)を、左側の株元掻込装置(20L)に備える右側の掻込スターホイール(18b)と同軸心に設けた伝動スターホイール(18B)と、該伝動スターホイール(18B)と歯合する右側の伝動スターホイール(18C)により構成すると共に、左側の株元掻込装置(20L)に備える掻込スターホイール(18a,18b)の歯厚を、前記伝動スターホイール(18B,18C)の歯厚よりも小さく形成した請求項1に記載のコンバインの前処理部における伝動構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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