説明

コンバインの前処理部

【課題】直線作動機の伸縮作動によって扱深搬送体を安定的に上下揺動させ、穀稈の扱深さをスムーズに変更できるコンバインの前処理部を提供することを課題としている。
【解決手段】刈取られて後方搬送される穀稈の搬送経路の途中に扱深搬送体19を配置し、伸縮作動によって扱深搬送体19を上下揺動駆動させる上下方向の直線作動機29を設け、扱深搬送体19の上下揺動によって変えることにより穀稈の扱深さを変更するコンバインの前処理部において、扱深搬送体19側に動力を伝動する伝動機構が内装されてフレーム部の一部を構成する伝動ケース4から上方側に突出形成された支持フレーム33に前記直線作動機29の上端側を連結支持する一方で、扱深搬送体19の下面側における上記支点よりも後方側に、前記直線作動機29の下端側を連結支持し、直線作動機29の伸長作動によって扱深搬送体19を浅扱ぎ側である下方側に揺動させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、穀稈の扱深さを変更する扱深搬送体を備えたコンバインの前処理部に関する。
【背景技術】
【0002】
刈取られて後方搬送される穀稈の搬送経路の途中に扱深搬送体を配置し、扱深搬送体が前部を支点に上下揺動するように支持され、扱深搬送体の後方側に配置された搬送体が該扱深搬送体から穀稈を受取る際における穀稈の保持位置を、扱深搬送体の上下揺動によって変えることにより穀稈の扱深さを変更するコンバインの前処理部が従来公知である。
【0003】
該構成では、電動モータの動力によってクランク等のリンク機構を作動させ、該リンク機構によって上下揺動させるが、ガタ等によって扱深搬送体を円滑に上下揺動させることができない場合があった。これに対応して伸縮作動によって扱深搬送体を上下揺動駆動させる電動シリンダ等の直線作動機を設けた特許文献1に記載のコンバインの前処理部が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4288096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記文献のコンバインの前処理部は、直線作動機が支持される支持部材側の強度不足によって、ガタが生じ、扱深搬送体を円滑に上下揺動作動させることができない場合がある。
本発明は、直線作動機の伸縮作動によって扱深搬送体を安定的に上下揺動させ、穀稈の扱深さをスムーズに変更できるコンバインの前処理部を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明のコンバインの前処理部は、刈取られて後方搬送される穀稈の搬送経路の途中に扱深搬送体19を配置し、扱深搬送体19が前部を支点に上下揺動するように支持され、伸縮作動によって扱深搬送体19を上下揺動駆動させる上下方向の直線作動機29を設け、扱深搬送体19の後方側に配置された搬送体21が該扱深搬送体19から穀稈を受取る際における穀稈の保持位置を、扱深搬送体19の上下揺動によって変えることにより穀稈の扱深さを変更するコンバインの前処理部において、扱深搬送体19側に動力を伝動する伝動機構が内装されてフレーム部の一部を構成する伝動ケース4から上方側に突出形成された支持フレーム33に前記直線作動機29の上端側を連結支持する一方で、扱深搬送体19の下面側における上記支点よりも後方側に、前記直線作動機29の下端側を連結支持し、直線作動機29の伸長作動によって扱深搬送体19を浅扱ぎ側である下方側に揺動させることを特徴としている。
【0007】
第2に、前記扱深搬送体19の下面側に直線作動機29を連結支持する連結部34を設け、連結部34に連結した状態で直線作動機29が伸縮した場合に扱深搬送体19に対して直線作動機29を回動させる第1回動軸Cと直交する第2回動軸D回りにも直線作動機29が扱深搬送体19に対して回動するように連結部34を構成したことを特徴としている。
【0008】
第3に、前記直線作動機29の伸長作動に伴って一体的に移動する検出体49を設け、該検出体49によって入切される検出スイッチ53を、直線作動機29が作動限界範囲内で伸縮した場合に検出体49が移動する範囲である限界伸縮範囲内の伸長側と縮小側とにそれぞれ配置し、該一対の検出スイッチ53を支持体47によって限界伸縮範囲内で位置調整可能に支持し、一対の検出スイッチ53の入切検出に基づき、該一対の検出スイッチ53の間を検出体49が移動する範囲である設定伸縮範囲内で直線作動機29を伸縮させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構成によれば、直線作動機を、フレームの一部を構成し強度が高い伝動ケースに支持フレームによって支持し、該直線作動機によって、扱深搬送体の下面側を伝動ケース側に連結支持しているため、扱深搬送体の支持強度が向上し、ガタが抑制され、安定して扱深搬送体を上下揺動作動させ、穀稈の扱深さをスムーズに変更できる効果がある。
【0010】
前記扱深搬送体の下面側に直線作動機を連結支持する連結部を設け、連結部に連結した状態で直線作動機が伸縮した場合に扱深搬送体に対して直線作動機を回動させる第1回動軸と直交する第2回動軸回りにも直線作動機が扱深搬送体に対して回動するように連結部を構成すれば、直線作動機の下端部を連結部に連結させた際の自由度が増し、支持フレームに支持された直線作動機のガタが許容される他、直線作動機の下端部を連結部に連結させる組付作業をより容易に行うことが可能になるという効果がある。
【0011】
また、前記直線作動機の伸長作動に伴って一体的に移動する検出体を設け、該検出体によって入切される検出スイッチを、直線作動機が作動限界範囲内で伸縮した場合に検出体が移動する範囲である限界伸縮範囲内の伸長側と縮小側とにそれぞれ配置し、該一対の検出スイッチを支持体によって限界伸縮範囲内で位置調整可能に支持し、一対の検出スイッチの入切検出に基づき、該一対の検出スイッチの間を検出体が移動する範囲である設定伸縮範囲内で直線作動機を伸縮させることにより、刈取る穀稈の長さに合わせて扱深搬送体の上下揺動範囲を容易に変更できるため、汎用性を向上させるために設定伸縮範囲を広くとる必要はないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用したコンバインの側面図である。
【図2】本コンバインの前処理部の側面図である。
【図3】扱深搬送体の深扱ぎ時の側面図である。
【図4】扱深搬送体の浅扱ぎ時の側面図である。
【図5】連結部材に扱深搬送体の下端部を連結支持した状態の斜視図である。
【図6】連結部材から扱深搬送体の下端部を取外した状態の斜視図である。
【図7】連結部材から扱深搬送体の下端部を取外し且つ離間させた状態の斜視図である。
【図8】伸縮範囲設定ユニットの構成を示す斜視図である。
【図9】図8の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明を適用したコンバインの側面図であり、図2は、本コンバインの前処理部の側面図である。本コンバインは、走行部である左右一対のクローラ式走行装置1,1に支持された走行機体2と、該走行機体2の前部に昇降駆動可能に連結されて圃場の穀稈の刈取作業等を行う前処理部3とから構成されている。
【0014】
前処理部3は、前方斜め下方に延びた縦筒4によって昇降可能に走行機体2に連結されており、該縦筒4は、前処理部3の主フレームとして機能する他、走行機体2側からのエンジン動力を前処理部3側に伝動する伝動軸等の伝動機構が内装された伝動ケースとしても機能している。言換えると、縦筒4は、前処理部3のフレーム部の一部を構成している。
【0015】
この前処理部3の前部下端側には、前方突出するデバイダ6が左右方向に複数並列配置され、隣接するデバイダ6間の後側には、上方に向かって立上る引起装置7が配置されており、この引起装置7下端部のさらに後方には、引起された穀稈の株元側を後方に掻込む株元掻込装置8と、該穀稈の穂先側を後方に掻込む穂先掻込装置9と、引起されて掻込まれた圃場の穀稈を刈取る刈刃11とが設置され、刈刃11によって刈取られた穀稈は、後側に配置された搬送装置12によって、後方側に搬送される。
【0016】
圃場での刈取作業時、本コンバインは、前処理部3を降下させた状態で圃場を走行させる。そして、この走行中、前処理部3のデバイダ6によって分草された穀稈は、引起装置7によって引起されるとともに刈刃11によって刈取られ、搬送装置12によって走行機体2側に後方搬送され、走行機体2側に渡される。
【0017】
走行機体2側では、該走行機体2の進行方向左(以下、単に「左」)側に配置された前後方向のフィードチェーン13の前端側で前処理部3からの穀稈の株元を受取る。フィードチェーン13は、走行機体2の左部に設置された脱穀部14の扱室(図示しない)に穀稈の穂先側を挿入した状態で、該穀稈の株元側を保持して後方搬送するように構成されている。
【0018】
後方搬送される穀稈は、扱室に挿入された部分が扱胴(図示しない)によって扱降され、排藁になり、走行機体2の後端部から機外に排出される。このような扱降しによる脱穀処理では、扱室への穀稈の挿入量に応じて扱深さが変わり、この扱深さは、穀稈の稈長さと、フィードチェーン13による穀稈の保持位置とによって定まる。このため、穀稈の稈長に応じて、穀稈の扱深さを最適に保持するためには、フィードチェーン13による穀稈の保持位置を適宜変更する必要があり、この手段については、後述する。
【0019】
脱穀処理された処理物は、扱室下方の選別室(図示しない)に落下供給され、穀粒と、藁屑等とに選別される。穀粒は、揚穀筒によって走行機体2の後半部右側のグレンタンク16側に搬送され、該グレンタンク16内に収容される。藁屑等は、走行機体2の後端部から機外に排出される。グレンタンク16内の穀粒は、走行機体2の後端部に左右旋回及び昇降駆動可能に基端部が支持されたオーガ17の先端部から機外に排出される。
【0020】
次に、図2に基づき、搬送装置の構成について説明する。
搬送装置12は、前側から順に株元搬送体18と、扱深搬送体19と、後方搬送体21(搬送体)とを備えるとともに、この株元搬送体18、扱深搬送体19及び後方搬送体21の上方側に穂先搬送体22を有している。
【0021】
株元搬送体18は、刈取られた穀稈の株元側を保持し、該穀稈を扱深搬送体19に向けて後方搬送するように構成されている。扱深搬送体19は、株元搬送体18から穀稈の株元側を受取り、該穀稈を後方搬送体21に向けて後方搬送するように構成されている。後方搬送体21は、扱深搬送体19から穀稈の株元側を受取り、該穀稈を上述のフィードチェーン13に向けて後方搬送するように構成されている。
【0022】
すなわち、株元搬送体18と扱深搬送体19と後方搬送体21とによって穀稈の株元側の搬送経路が形成される。この穀稈の株元側搬送経路の上方側に穂先搬送体22が配置され、この穂先搬送体22によって、穀稈の穂先側を乱れなく後方側に搬送する。ちなみに、株元搬送体18は、左右に複数配列配置され、この複数の株元搬送体18は、前処理部3の幅方向全体に亘って刈取られた穀稈を、正面視扱深搬送体19側に合流させ、該扱深搬送体19に引継ぐように構成されている。
【0023】
また、扱深搬送体19は、自身の前部を支点に、全体が上下揺動するように縦筒4の左側近傍に配設されている。扱深搬送体19を上下揺動させると、後方搬送体21に対して扱深搬送体19の後部の上下位置が変わり、扱深搬送体19から後方搬送体21に穀稈を引継ぐ際の穀稈の保持位置が変更される。この保持位置の変更によって、後方搬送体21からフィードチェーン13に穀稈が引継がれる際の穀稈の保持位置も変更され、これによって扱室への穀稈の挿入量も変わる。すなわち、本コンバインでは、扱深搬送体19の上下揺動によって、穀稈の扱深さが変更される。
【0024】
ちなみに、本コンバインでは、穂先搬送体22における搬送最下流(以下、単に「下流」)側箇所近傍に複数の穂先センサ23を設け、穀稈の稈長に応じた最適な扱深さとなるように、穂先センサ23の検出結果に基づいて扱深搬送体19を上下揺動制御する。
【0025】
次に、図3乃至7に基づいて扱深搬送体について詳述する。
図3は、扱深搬送体の深扱ぎ時の側面図であり、図4は、扱深搬送体の浅扱ぎ時の側面図である。扱深搬送体19は、全体が上下揺動するように、前部が、縦筒4の中途部から一体的に突出形成された筒状の支持部材24に回動自在に支持されている。言換えると、この筒状の支持部材24の軸心上に、扱深搬送体19を揺動させる支点軸Aが設定される。
【0026】
この支持部材24の内部には、縦筒4内から動力を取出して扱深搬送体19に伝動する動力取出機構(図示しない)が内装されており、この動力取出機構からの動力によって、扱深搬送体19が搬送駆動される。具体的には、この扱深搬送体19が、主に、駆動スプロケット26と、従動スプロケット(図示しない)と、駆動スプロケット26及び従動スプロケットを支持する枠体25と、駆動スプロケット26及び従動スプロケットに掛け回される搬送チェーン28とから構成され、動力取出機構の動力によって駆動スプロケット26が回転駆動され、搬送チェーン28が穀稈の株元を下流側である後方側に搬送するように駆動される。
【0027】
また、この扱深搬送体19は、伸縮作動する上下方向の電動シリンダ29(直線作動機)によって、上述した支点軸A回りに上下揺動駆動される。この電動シリンダ29は、非作動部であるシリンダ部31と、該シリンダ部31内を軸方向に移動する作動部であるピストン部32とを備え、ピストン部32の軸方向の往復によって全体が伸縮作動するように構成されている。
【0028】
この電動シリンダ29は、ピストン部32が下側、シリンダ部31が上側に位置して上下方向を向いた姿勢で、シリンダ部31の上端部(電動シリンダ29の上端部)が、縦筒4から上方側に突出形成された棒状の支持フレーム33に回動自在に連結支持される一方で、ピストン部32の下端部(電動シリンダ29の下端部)が、扱深搬送体19の下面側から下方に突出形成された棒状の連結部材34(連結部)に回動自在に連結支持されている。
【0029】
支持フレーム33は、縦筒4における支持部材24設置箇所よりも後方側に配置されており、縦筒4に垂直な基端側半部に対して先端側半部が扱深搬送体19側に屈曲されている。この支持フレーム33の先端部は、上述した支点軸Aの後方に位置している。この支持フレーム33の先端部に上記支点軸Aと平行な支持ピン36が挿通支持され、この支持ピン36に回動自在に上記電動シリンダ29が取付けられている。言換えると、支持ピン36の軸心方向に電動シリンダ29の回動軸Bが設定され、この回動軸B回りに回動自在に電動シリンダ29が支持フレーム33の先端側に連結される。ちなみに、電動シリンダ29の上端部は、支持フレーム33に着脱可能に連結されている。
【0030】
連結部材34は、扱深搬送体19の枠体25下面から下方に突出する基端側半部に対して、先端側半部が、縦筒4側に屈曲形成されて前記支持軸A及び回動軸Bと略平行な軸部39を構成している。この軸部39は上記支持部材24の後方且つ上記支持ピン36の下方に位置している。この軸部39の先端部には、上記回動軸Bと平行な第1回動軸C回りに回動自在で、且つ、この第1回動軸Cと直交する第2回動軸D回りに回動自在に、電動シリンダ29の下端部が取付支持されている。すなわち、この連結部材34は、電動シリンダ29を扱深搬送体19の下面側に連結支持する部材として機能している。
【0031】
このような支持フレーム33及び連結部材34の構成によれば、電動シリンダ29を伸縮させると、該電動シリンダ29が、支持フレーム33に対して回動軸Bの軸回りに回動するとともに、連結部材34に対して第1回動軸Cの軸回りに回動し、この結果、扱深搬送体19が支点軸Aの軸回りに上下揺動される。該構成によって、電動シリンダ29は、扱深搬送体19を、高強度の縦筒4に支持する部材としても機能するため、電動シリンダ29の伸縮により上記扱深搬送体19は安定した姿勢で上下揺動駆動される。
【0032】
なお、この扱深搬送体19が前側の支持軸A回りに上方揺動されると、後方搬送体21の上流側端に対して、扱深搬送体19の下流側端が近接し、フィードチェーン13による扱室への穀稈挿入の際の挿入量が多くなる深扱ぎ状態となる一方で(図3参照)、扱深搬送体19が前側の支持軸A回りに下方揺動されると、後方搬送体21の上流側端に対して、扱深搬送体19の下流側端が下方に離間し、フィードチェーン13による扱室への穀稈挿入の際の挿入量が少なくなる浅扱ぎ状態となる(図4参照)、ちなみに、この電動シリンダ29の伸縮範囲は、後述する伸縮範囲設定ユニット46によって、設定可能である。
【0033】
次に、図3乃至7に基づき、第1回動軸及び第2回動軸の構成について説明する。
図5は、連結部材に扱深搬送体の下端部を連結支持した状態の斜視図であり、図6は、連結部材から扱深搬送体の下端部を取外した状態の斜視図であり、図7は、連結部材から扱深搬送体の下端部を取外し且つ離間させた状態の斜視図である。
【0034】
軸部39は、断面形状が円形になるように成形され、この軸部39には軸回りに回動自在にカラー41が外装されており、該カラー41からは連結ピン42が外側に向かって一体的に突設されている。連結ピン42の軸心が軸部39の軸心と直交するように、該連結ピン42はカラー41外周から突出形成されている。
【0035】
一方、電動シリンダ29のピストン部32の下端部には、シリンダ部31の軸心方向に対して直交し且つ開口側が上記連結ピン42側に向けられた連結孔43が穿設され、この連結孔43には、上述した連結ピン42が自身の軸回りに回動自在に挿通支持されている。このようにして、連結孔43に挿通され先端側がピストン部32から突出した連結ピン42の該先端部外周には、連結ピン42の連結孔43からの抜けを防止する抜止めリング44が取付部材を介して着脱可能に外装されている。
【0036】
以上によって、電動シリンダ29は、カラー41によって支持軸Aと平行な軸部39の軸回りに回動自在に連結部材34に連結されるとともに、連結孔43への連結ピン42の挿入によって連結ピン42の軸回りに回動自在に連結部材34に連結される。すなわち、軸部39の軸心が上述した第1回動軸Cに設定され、第1回動軸Cと直交する連結ピン42の軸心が上述した第2回動軸Dに設定される。
【0037】
このように、第1回動軸Cの他に、第1回動軸Cと直交する第2回動軸Dを設定することによって、電動シリンダ29の上端側を支持フレーム33へ連結支持等した場合に、連結ピン42と直交する方向にガタが生じた場合でも、電動シリンダ29の連結部材34に対する第2回動軸D回りの回動角を変更して、該連結ピン42を電動シリンダ29の連結孔43に挿脱自在に挿入することが可能になるため、連結部材34から電動シリンダ29を着脱する作業を容易に行うことができる。ちなみに、連結ピン42方向のガタは、上述した支持ピン36の軸心である回動軸B回りの回動によって解消可能である。
【0038】
このような構成の第1回動軸C及び第2回動軸Dによれば、シリンダ部31の上端部を支持フレーム33に取付けた後、ピストン部32の下端部を連結部材34に取付けることにより、電動シリンダ29の装着作業を行う。また、メンテナンス時においては、図6及び7に示すように、電動シリンダ29の上端部を支持フレーム33に連結支持したままで、電動シリンダ29の下端部を連結部材34から取外し(図6参照)、続いて、電動シリンダ29が最伸長作動した際よりも、さらに下方側位置に扱深搬送体19を揺動させることにより、搬送装置12内(特に、株元搬送体18の穀稈を合流させる部分等)のメンテナンスを容易に行うことが可能になる。
【0039】
次に、図8及び9に基づき伸縮範囲設定手段の構成を説明する。
図8は、伸縮範囲設定ユニットの構成を示す斜視図であり、図9は、図8の要部拡大図である。伸縮範囲設定ユニット46は、電動シリンダ29のシリンダ部31に固設されたプレート状の支持ブラケット47(支持体)と、支持ブラケット47に穿設された電動シリンダ29伸縮方向のガイド孔48の全長方向にスライド自在に係合支持された検出体49と、支持ブラケット47におけるガイド孔48の全長方向両端部にそれぞれ設置された検出スイッチ54,56と、電動シリンダ29の伸縮方向に形成されて上端部に検出体49が固定されたスライドバー51と、スライドバー51の下端部を電動シリンダ29のピストン部32に取付固定する取付具52とを備えている。
【0040】
そして、電動シリンダ29を伸縮させると、スライドバー51によってピストン部32に連結された検出体49が、ガイド孔48内を移動する範囲内で、ピストン部32と一体で伸縮方向に往復作動するが、このガイド孔48は、電動シリンダ29を最大限(作動限界範囲内で)伸縮させた場合における検出体49の移動範囲である限界伸縮範囲内に、全長が収まるように配置構成されている。
【0041】
このため、ガイド孔48の全長方向縮小側端部に移動した検出体49は、該端部側の検出スイッチである縮小側検出スイッチ54を入作動させる一方で、このガイド孔48の全長方向伸長側端部に移動した検出体49は、該端部側の検出スイッチである伸長側検出スイッチ56を入作動させる他、ガイド孔48の全長方向両端部の何れにも検出体49が位置していない場合には、一対の各検出スイッチ54,56が切状態で保持される。
【0042】
この一対の検出スイッチ54,56の入切をマイコン等より構成された制御部(図示しない)が検出し、該制御部は、この検出スイッチ54,56の入切検出に基づいて、電動シリンダ29を伸縮制御する。具体的には、縮小側検出スイッチ54の入作動によって、電動シリンダ29の縮小作動を停止させ、伸長側検出スイッチ56の入作動によって、電動シリンダ29の伸長作動を停止させる。
【0043】
すなわち、この一対の検出スイッチ54,56の間にガイド孔48が位置する配置構成によって、該ガイド孔48内を検出体49が移動する範囲が、電動シリンダ29の設定伸縮範囲になる。この設定伸縮範囲は、支持ブラケット47及び取付具52を電動シリンダ29の伸縮方向に一体で移動させ、支持ブラケット47のシリンダ部31への固定位置及び取付具52のピストン部32への固定位置を変更することによって、変更可能であり、さらに詳しくは、該設定伸縮範囲が、限界伸縮範囲内で、そのレンジを変更せずに、上記伸縮方向に変更される。
【0044】
なお、スライドバー51の取付具52への固定位置を変更することによって、設定伸縮範囲の限界伸縮範囲内での位置を変えてもよい。
【0045】
また、上述の例では、検出体49が一端側に固定されたスライドバー51の他端側を、取付具52によってピストン部32に直接連結して固定したが、スライドバー51と、取付具52との間に、圧縮バネ等の弾性部材を介在させてもよい。この弾性部材は、検出体49が伸長側検出スイッチ56に当接して該検出スイッチ56を入作動させている状態から、さらに電動シリンダ29が伸長作動した場合に弾性変形し、この弾性変形が予め定めた所定以上になると、ヒューズ等の電力供給停止手段が作動し、電動シリンダ29への電力供給が停止し、電動シリンダ29の伸長作動が停止される。この構成によって、伸長側検出スイッチ56の入切検出に異常が生じた場合でも、電力供給停止手段によって、電動シリンダ29の伸長作動を停止させることが可能になる。
【符号の説明】
【0046】
3 前処理部
4 縦筒(伝動ケース)
19 扱深搬送体
21 後方搬送体(搬送体)
29 電動シリンダ(直線作動機)
33 支持フレーム
34 連結部材(連結部)
47 支持ブラケット(支持体)
49 検出体
54 縮小側検出スイッチ(検出スイッチ)
56 伸長側検出スイッチ(検出スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取られて後方搬送される穀稈の搬送経路の途中に扱深搬送体(19)を配置し、扱深搬送体(19)が前部を支点に上下揺動するように支持され、伸縮作動によって扱深搬送体(19)を上下揺動駆動させる上下方向の直線作動機(29)を設け、扱深搬送体(19)の後方側に配置された搬送体(21)が該扱深搬送体(19)から穀稈を受取る際における穀稈の保持位置を、扱深搬送体(19)の上下揺動によって変えることにより穀稈の扱深さを変更するコンバインの前処理部において、扱深搬送体(19)側に動力を伝動する伝動機構が内装されてフレーム部の一部を構成する伝動ケース(4)から上方側に突出形成された支持フレーム(33)に前記直線作動機(29)の上端側を連結支持する一方で、扱深搬送体(19)の下面側における上記支点よりも後方側に、前記直線作動機(29)の下端側を連結支持し、直線作動機(29)の伸長作動によって扱深搬送体(19)を浅扱ぎ側である下方側に揺動させるコンバインの前処理部。
【請求項2】
前記扱深搬送体(19)の下面側に直線作動機(29)を連結支持する連結部(34)を設け、連結部(34)に連結した状態で直線作動機(29)が伸縮した場合に扱深搬送体(19)に対して直線作動機(29)を回動させる第1回動軸(C)と直交する第2回動軸(D)回りにも直線作動機(29)が扱深搬送体(19)に対して回動するように連結部(34)を構成した請求項1のコンバインの前処理部。
【請求項3】
前記直線作動機(29)の伸長作動に伴って一体的に移動する検出体(49)を設け、該検出体(49)によって入切される検出スイッチ(54,56)を、直線作動機(29)が作動限界範囲内で伸縮した場合に検出体(49)が移動する範囲である限界伸縮範囲内の伸長側と縮小側とにそれぞれ配置し、該一対の検出スイッチ(54,56)を支持体(47)によって限界伸縮範囲内で位置調整可能に支持し、一対の検出スイッチ(54,56)の入切検出に基づき、該一対の検出スイッチ(54,56)の間を検出体(49)が移動する範囲である設定伸縮範囲内で直線作動機(29)を伸縮させる請求項1又は2の何れかに記載のコンバインの前処理部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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