説明

コンバインの引起し駆動構造

【課題】コンバインにおいて、引起し装置を円滑良好に振り上げ揺動できるようにする。
【解決手段】振り上げ揺動していない状態での内側引起し装置13の背部にステー67を固定配備するとともに、下端側が刈取り部の下部に連結されたステー67の上端側を内側引起し装置13の上端部の背部に固定して、ステー67を刈取り部側に残した状態で内側引起し装置13を外側引起し装置13に対して振り上げ揺動するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取り部の前部に複数の引起し装置を左右に並列配備するとともに、所定の引起し装置を振り上げ揺動可能に支持したコンバインの引起し駆動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自脱型のコンバインにおいては、引起し装置で所定の姿勢に引起した複数条の穀稈を刈り取り、刈取り穀稈を刈幅の中間箇所に合流搬送した後、供給搬送装置に送り込み、供給搬送装置で後方に搬送した穀稈を、脱穀装置に備えられたフィードチェーンの始端部に横倒れ姿勢で受け渡し供給する穀稈搬送形態が採用されている。
【0003】
上記穀稈搬送形態においては、刈取り穀稈の合流搬送経路や刈取り装置が引起し装置の背部にあるので、穀稈の詰まりを除去作業や、刈取り装置の点検整備作業が行い難いものとなる。そこで、例えば、特許文献1に示されているように、刈取り部の前部に並列立設された複数の引起し装置のうちの中央側の一部を振り上げ揺動可能に構成し、引起し装置の振り上げによって開放された広い空間から、詰まり除去作業や各種の点検整備作業を行うことができるように構成したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−81006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引起し装置を振り上げ開放する上記構造は、刈取り穀稈の合流搬送経路や刈取り装置における詰まり除去や点検整備作業を容易に行う上で有用な手段であるが、振り上げ揺動される引起し装置の駆動構造において改良の余地があった。
【0006】
つまり、並列配備された複数の引起し装置は、その上部に横架支承されたカウンタ軸にそれぞれギヤ連動されており、上記従来構造では、引起し装置の振り上げ揺動支点がカウンタ軸の軸心から外れた位置に設定されていた。そのために、ベベルギヤ連動された引起し駆動軸の連動系に、回転軸心方向に係脱可能なピン係合式のクラッチ(特許文献1の図4および図10の35,35a,35b)が介在され、引起し装置を振り上げ揺動するとクラッチが自動的に分離されてカウンタ軸との連動が断たれ、引起し装置を元の位置まで下げてクラッチをつなぐことで、カウンタ軸に再び連動連結されるようになっていた。
【0007】
このために、分離された前記クラッチを構成する伝動部材同士を適正に芯合わせして係合連結させるためには、精度および剛性の高い接続分離構造が必要であり、製作コストが高くつくきらいがあった。引起し装置を振り上げた際に、内装した引起しチェーンが回動されると、引起し装置を振り降ろした際にクラッチにおける伝動部材同士の回動位相がすれて所定の係合連結が不能となるものであり、クラッチにおける伝動部材同士の回動位相に注意して引起し装置を振り降ろし操作する必要があり、取扱い性の面でも改良の余地があった。
【0008】
引起し装置を振り上げ揺動させる手段としては例示した上記従来構造の他に、引起し装置をカウンタ軸の軸心を中心にして振り上げ揺動可能に支持する構造も考えられる。この構造は、上記従来構造に比べて伝動構造が簡素化できるとともに、取扱い性にも優れた利点を備えるものであるが、引起し装置の振り上げ時に次のような不具合が発生することが予測される。つまり、引起し装置を振り上げ揺動させるメンテナンス時、カウンタ軸は回転停止しているので、引起し装置と共に振り上げ移動される従動側のギヤが、停止しているカウンタ軸に固着された駆動側のギヤによって相対的に逆回動されることになる。このために、引起しチェーンが逆回動されることになって引起し爪が引っかかって損傷したり、引起し爪を回動駆動する引起しチェーンが切断するおそれがある。
【0009】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、引起し装置への伝動構造を簡素化しながら、カウンタ軸からの逆駆動を受けることなく引起し装置を円滑良好に振り上げ揺動できるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、刈取り部の前部に複数の引起し装置を左右に並列配備するとともに、所定の引起し装置を振り上げ揺動可能に支持したコンバインの引起し駆動構造において、
前記引起し装置を、その上部に横架支承されたカウンタ軸にギヤ連動するとともに、前記カウンタ軸の軸心を中心にして振り上げ揺動可能に支持し、
引起し装置への動力伝動系に伝動遮断手段を設け、この伝動遮断手段の遮断作動によって、引起し装置の振り上げ揺動に伴うカウンタ軸から引起し装置への逆駆動力の伝達が遮断されるよう構成してあることを特徴とする。
【0011】
上記構成によると、引起し装置を振り上げ揺動するに先立って、伝動遮断手段を遮断状態にする。この状態で引起し装置を振り上げ揺動しても、振り上げ揺動される引起し装置が逆駆動されることはない。
【0012】
従って、第1の発明によると、引起し装置をカウンタ軸の軸心を中心にして振り上げ揺動可能に構成することで、カウンタ軸の軸心と異なった支点周りに振り上げ揺動する従来構造に比較して伝動構造を簡素化することができ、かつ、引起し装置の振り上げ揺動による逆駆動の不具合を解消して、刈取り部の開放メンテナンスを一層容易に行うことができるようになった。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記伝動遮断手段を前記カウンタ軸への動力伝動系に設けてあるものである。
【0014】
上記構成によると、引起し装置を振り上げ揺動するに先立って、伝動遮断手段によってカウンタ軸を自由回転状態にする。この状態で引起し装置を振り上げ揺動すると、カウンタ軸と引起し装置とを連動連結するギヤ伝動系が引起し装置側から駆動されることになり、カウンタ軸に回動力が与えられる。この場合、カウンタ軸は自由に回動するので振り上げ揺動される引起し装置が逆駆動されることはない。
【0015】
伝動遮断手段を一箇所設けるだけで、一部の引起し装置の振り上げ揺動、あるいは、全部の引起し装置の振り上げ揺動にも対応させることができるので、例えば、振り上げ揺動可能な複数の引起し装置のそれぞれに伝動遮断手段を備えて同等の機能を発揮させる場合に比べて、伝動遮断手段が一箇所ですみ、伝動構造の簡素化を損なわないものとなる。
【0016】
第3の発明は、上記第2の発明において、
前記カウンタ軸への動力伝動系に複数段の変速を行う引起し変速機構を設けるとともに、この引起し変速機構を伝動中立状態に保持してカウンタ軸への伝動を遮断するように前記伝動遮断手段を構成してあるものである。
【0017】
上記構成によると、引起し変速機構に現出される伝動中立状態を利用してカウンタ軸への伝動を遮断するので、カウンタ軸を回動自由状態にする伝動遮断手段をクラッチなどの専用の機構を導入することなく簡単に構成することができる。
【0018】
第4の発明は、上記第3の発明において、
前記引起し変速機構に、変速用にシフト操作される作動部材を複数の変速位置に保持するデテント手段を備えるとともに、このデテント手段で前記作動部材を中立位置に保持可能に構成してあるものである。
【0019】
上記構成によると、デテント手段にデテント位置を一箇所増設するだけの簡単な改造を加えるだけで、上記第2の発明を好適に実施することができる。
【0020】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか一つの発明において、
前記引起し装置が振り上げ揺動される方向と、カウンタ軸の引起し駆動方向とを同方向に設定してあるものである。
【0021】
上記構成によると、複数の引起し装置のうちの一部が振り上げ揺動された際のカウンタ軸の回動で、振り上げ揺動されない他の引起し装置が正規の引起し方向に少し作動されるだけで、駆動上に何らの支障もなく、引起し装置の振り上げ揺動を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】刈取り部の平面図
【図3】引起し装置を開放した刈取り部の側面図
【図4】引起し装置駆動構造の全体を示す背面図
【図5】引起し装置駆動構造の縦断側面図
【図6】引き起こし駆動ケースとカウンタ軸との連動構造を示す正面図
【図7】引起し変速装置の縦断正面図
【図8】引起し駆動系の概略を示す斜視図
【図9】引起し装置駆動構造の別実施例を示す背面図
【図10】補助引起し装置を付設した別実施例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に、自脱型コンバインの前部の側面図が示されている。この自脱型コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に6条刈り仕様の刈取り部3が昇降自在に連結されるとともに、走行機体2に運転部4、脱穀装置5、および、アンローダ付きの穀粒回収タンク6、等が搭載された構造となっている。
【0024】
刈取り部3には、伝動ケースを兼ねた筒状の刈取り部フレーム10が前下がり傾斜姿勢で備えられており、この刈取り部フレーム10の後端基部が、走行機体2の前端部に立設された支持台11に横向きの支点Pを中心として上下揺動可能に連結支持されるとともに、油圧シリンダ12で上下に駆動揺動されるようになっている。刈取り部フレーム10には、植立穀稈を所定の刈取り姿勢に引き起こす6台の引起し装置13、引き起こした植立穀稈を切断するバリカン型の刈取り装置14、引起し穀稈を各条ごとに後方に軽く掻き込む補助搬送ベルト15、刈取り穀稈の株元を各条ごとに後方に掻き込み搬送する回転パッカ16、刈取り穀稈を2条づつ刈幅内の中間部位に搬送して合流する3組の合流搬送装置17,18,19、および、合流された穀稈を脱穀装置5の横外側に備えられたフィードチェーン7の始端部にまで搬送する供給搬送装置20、等が備えられている。
【0025】
図2に示すように、機体左側の前記合流搬送装置17は、左2条の刈取り穀稈の株元を挟持搬送する株元搬送機構17aと穂先を係止搬送する穂先搬送機構17bとで構成され、中央部の前記合流搬送装置18は、中2条用の株元搬送機構18aと穂先搬送機構18bとで構成され、機体右側の前記合流搬送装置19は、右2条用の株元搬送機構19aと穂先搬送機構19bとから構成されている。そして、各株元搬送機構17a、18a,19aの前端に前記補助搬送ベルト15および回転パッカ16がそれぞれ装備されるとともに、2条単位で隣接する回転パッカ16同士が噛み合い連動されている。
【0026】
前記供給搬送装置20は、右2条の穂先搬送機構19bをフィードチェーン7の前方まで延長してなる穂先係止搬送機構21と、3組の前記合流搬送装置17,18,19による穀稈合流箇所から後方に延出された株元挟持搬送機構22と、フィードチェーン7の前方に配備された横回し型の中継搬送機構23とで構成されており、合流搬送装置17,18,19で合流された立姿勢の穀稈は供給搬送装置20の始端部に受取られ、後方上方に搬送されながら穀稈が横倒れ姿勢に変更されてフィードチェーン7の始端部に受け渡されるようになっている。
【0027】
前記株元挟持搬送機構22は、前部支点を中心に上下揺動して搬送終端位置を変更することで、フィードチェーン7への穀稈受け渡し位置を稈長方向に変更して脱穀装置6への穀稈挿入長さを変更調節する機能、いわゆる扱き深さ調節機能が備えられている。
【0028】
刈取り部フレーム10は、内部に伝動軸を挿通した筒型の伝動ケースとしての機能が備えられており、前記支点Pに伝達された走行速度と同調した動力がこの刈取り部フレーム10を介して刈取り部3の前部に伝達され、前記引起し装置13、刈取り装置14、補助搬送ベルト15、回転パッカ16、合流搬送装置17,18,19、および、供給搬送装置20の株元挟持搬送機構22が走行速度と同調した速度で駆動されるようになっている。供給搬送装置20の株元挟持搬送機構22は、刈取り部フレーム10の途中箇所から分岐して取り出された動力で駆動され、供給搬送装置20の穂先係止搬送機構21と中継搬送機構23は、支点Pで分岐された動力で駆動されるようになっている。
【0029】
図4に示すように、引起し装置13は、引起しケース31の上部に配備された駆動スプロケット32およびテンションプレート33と、ケース下部に配備された案内ローラ34とに亘って引起しチェーン35が巻回張設されるとともに、この引起しチェーン35に多数本の引起し爪36が起伏自在に所定ピッチで枢着されて構成されたものであり、前記駆動スプロケット32が以下のように駆動される。
【0030】
図3に示すように、前記刈取り部フレーム10の基端部から、山形に屈曲されたパイプ製の支持アーム37が前方に向けて延出され、この支持アーム37の前端に横長の支持フレーム38が連結されている。図5に示すように、支持フレーム38は板材を屈曲して上側部38a、後側部38b、および、コーナー部38cを備えた断面形状に形成されており、そのコーナー部38cに支持アーム37の前端が連結されている。
【0031】
図4,図5,図6に示すように、支持フレーム38の横方向6箇所には、上側部38aと後側部38bを介して板金構造の支持ブラケット39がボルト連結され、各支持ブラケット39にアルミダイキャスト成型された縦長筒状の引起し駆動ケース40の上端部が、横向き支点X周りに上下揺動可能に嵌合支持されている。引起し駆動ケース40は、左右対称形の左右二つ割り構造に構成されており、その上端部に前記横向き支点Xと同心に六角軸からなるカウンタ軸41が貫通支持されている。この例の場合、中央側の4台の引起し駆動ケース40は、臨設する2台づつに共通のカウンタ軸41が挿通されて互いに接続スリーブ42で突き合わせ連結されるとともに、左右両端の引起し駆動ケース40のカウンタ軸41に接続スリーブ42を介して突き合わせ連結され、カウンタ軸41が一本軸として回動するよう構成されている。
【0032】
各引起し駆動ケース40にはケース長手方向に沿って縦向きに伝動軸43が支承され、この伝動軸43がベベルギヤG1,G2を介してカウンタ軸41に連動連結されるとともに、引起し駆動ケース40の下部に前後方向に向けて支承された引起し駆動軸44と前記伝動軸43とがベベルギヤG3,G4を介して連動連結されている。各引起し駆動ケース40の下部に引起しケース31の上部が連結されるとともに、前記引起し駆動軸44が引起しケース31の前方に貫通突出され、その突出部に前記駆動スプロケット32が連結されている。この場合、図8に示すように、カウンタ軸41が前方上方に向かう方向Aに回動されることで各引起し装置13の引起しチェー35が所定の引起し方向に回動されるように各引起し駆動軸44がカウンタ軸41にベベルギヤ連動されているのである。
【0033】
図4に示すように、刈取り部フレーム10の前端に横長筒状の駆動ケース46が直交して連結され、この駆動ケース46の左右両端近くからパイプ製の支柱47,48が立設されており、機体左側の支柱47には引起し駆動用の縦向き伝動軸49が挿通されている。駆動ケース46の内部には刈取り部フレーム10を介して伝達された動力で回転駆動される横向き伝動軸50が挿通配備されており、この横向き伝動軸50の左端部と前記縦向き伝動軸49とがベベルギヤ連動されている。
【0034】
機体左側の支柱47の上端部には変速ケース51が連結されて、左端の引起し駆動ケース40に連結されている。図7に示すように、変速ケース51には前記縦向き伝動軸49と平行に出力軸52が装備され、この出力軸52とカウンタ軸41とがベベルギヤG5,G6を介して連動連結されるとともに、縦向き伝動軸49と出力軸52との間に引起し変速機構53が装備されている。
【0035】
引起し変速機構53は、縦向き伝動軸49に連結固定された小径駆動ギヤG7および大径駆動ギヤG8と、大径従動ギヤG9と小径従動ギヤG10を一体形成して出力軸52にスプライン装着されたシフトギヤSGとから構成されており、シフトギヤSGを上方にシフトして大径従動ギヤG9を小径駆動ギヤG7に咬合することで出力軸52を低速駆動し、シフトギヤSGを下方にシフトして小径従動ギヤG10を大径駆動ギヤG8に咬合することで出力軸52を高速駆動するよう構成されている。
【0036】
前記シフトギヤSGに係合されたシフトフォーク54を備えた変速操作軸55が変速ケース51に挿通支持されており、この変速操作軸55が押し引き操作されるようになっている。
【0037】
前記シフトギヤSGは、デテント機構60によって、上方の定速位置「L]、下方の高速位置「H」、および、その中間の中立位置「N」に保持可能となっている。デテント機構60は、出力軸52に組み込まれてバネ61によって径方向外方に突出付勢されたデテントボール62をシフトギヤSGの内周における軸心方向3箇所に形成した環状溝63のいずれかに選択係合させることでシフトギヤSGを弾性的に位置保持するよう構成されており、引起し変速機構53を中立に保持することで、出力軸52およびこれにギヤ連動されたカウンタ軸41を自由回動可能な状態に保持することができる。
【0038】
引起し装置13の背部における穀稈搬送経路での詰まり除去作業や搬送手段の点検整備作業を容易にするために、並列配備された6台の引起し装置13の内、両端の引起し装置13(L),13(R)を除く内側4台の引起し装置13を振り上げ揺動して、刈取り部前方を開放することができるよう構成されている。
【0039】
内側4台の引起し装置13における引起しケース31の下部は、前記駆動ケース36から前方に延出された分草フレーム64の前部ブラケット65に分離可能に連結されており、前部ブラケット65と引起しケース31との連結を解除するとともに、分草フレーム64の前端に差込み連結された分草具66を取り外すことで、この引起し装置13を引起し駆動ケース40と共にカウンタ軸軸心と同心の横向き支点X周りに略90°上方に振り上げ揺動することが可能となっている。引起し駆動ケース40とその背部に固定配備されたステー67に亘ってガススプリング68が架設されており、振り上げた引起し装置13は、ガススプリング68の伸長付勢力によってその振り上げ姿勢に保持されるようになっている。
【0040】
なお、図5中に示すように、前記支持フレーム38の前端にはカウンタ軸41を前方から覆う化粧カバー69が支点y周りに上下揺動可能に装着されており、引起し装置13を振り上げ揺動すると化粧カバー69が上方に持上げ揺動されることになる。支持フレーム38を連結支持する前記支持アーム37は、供給搬送装置20の前部上方を覆う防塵カバー70の支持部材を兼ねている。
【0041】
引起し装置13を振り上げ揺動するに先立って、引起し変速機構53をデテント機構60を用いて中立に切換え保持して、カウンタ軸41を自由回転可能な状態にしておく。これによって、引起し駆動ケース40の振り上げ揺動に伴って、回転自由なカウンタ軸41が正規の引起し駆動方向Aへ引起し駆動ケース40の振り上げ角度と同角度だけ回動される。
【0042】
引起し装置13が振り上げ揺動されてカウンタ軸41が引起し駆動方向Aに回動されることで、振り上げられない引起し装置13が正規駆動方向に少し作動することになる。この場合、カウンタ軸41の引起し駆動方向Aへの回動抵抗が、振り上げ揺動される引起し装置13のチェーン回動負荷より大きいと、振り上げ揺動される引起し装置13が逆駆動されてその引起しチェーン35が正規の引起し作動方向と逆方向に回動されようとするが、逆行する引起し爪36の突っかかりによって引起しチェーン35の逆回動が阻止されることで、カウンタ軸41が引起し駆動方向Aに回動されることになる。
【0043】
〔他の実施例〕
(1)図9に示すように、中央側の4台の引起し装置13における引起し駆動ケース40を隣接する2台ずつステー71で連結して2台づつ引起し装置13を振り上げ揺動する形態にし、ステー71を取外して引起し装置13を1台づつ振り上げ揺動可能な形態に戻して実施することもできる。中央側の4台の引起し装置13における引起し駆動ケース40あるいは引起し装置13自体を図示されていないステーで連結して、中央側の4台の引起し装置13を同時に振り上げ揺動できるようにすることもできる。
【0044】
(2)中央4台のみならず左右両端の引起し装置13も独自に振り上げ揺動可能に構成して実施することも可能である。
【0045】
(3)6台の引起し装置13における引起し駆動ケース40あるいは引起し装置13自体を図示されないステーで連結して、全部の引起し装置13を同時に振り上げ揺動できるようにすることもできる。
【0046】
(4)図10に示すように、運転部4がキャビン付き仕様に構成されるとともに、引起し装置13の前部に、倒伏作物引起し用に縦回し式の補助引起し装置72を装着し、引起し装置13と補助引起し装置72とを一体に振り上げ揺動可能に構成された場合、補助引起し装置72の基部に突設した牽制部材73を前記支持フレーム38の上面に接当させて振り上げ制限をすることで、運転部4の前方に位置する引起し装置13が振り上げ揺動された際に、この引起し装置13に付設された補助引起し装置72が運転部4に干渉することを回避することができる。
【0047】
(5)前記シフトギヤ(作動部材)SGを中立位置に保持するデテント機構60を、変速操作軸55に作用するように構成することもできる。
【0048】
(6)引起し変速機構53は周知の変速構造を適宜選択することができ、例えば、複数段のギヤ変速を行う常噛みギヤ対のいずれかを伝動状態に切換える形態で実施することもできる。この場合は、伝動ギヤ対の選択を行うシフトスリーブやシフトキーなどの作動部材を中立位置に保持してカウンタ軸41を回動自由状態に保持するようにすればよい。
【0049】
(7)変速ケース51に出力軸52を伝動状態と遊転状態に切換え可能な専用のクラッチを組み込むことで、カウンタ軸41を自由回動状態に保持できるよう構成することもできる。
【0050】
(8)振り上げ揺動可能な引起し駆動ケース40の縦向き伝動軸43に伝動遮断手段としてのクラッチを装備し、引起し装置13が振り上げ揺動された際、固定されているカウンタ軸41からの逆駆動力が振り上げ揺動される引起し装置13に伝達されるのを遮断することもできる。
【符号の説明】
【0051】
3 刈取り部
13 引起し装置
41 カウンタ軸
53 引起し変速機構
A 引起し駆動方向
SG 作動部材(シフトギヤ)
X 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取り部の前部に複数の引起し装置を左右に並列配備するとともに、所定の引起し装置を振り上げ揺動可能に支持したコンバインにおいて、
前記刈取り部側に位置固定された左右両端の外側引起し装置の内側に配備された内側引起し装置を、該外側及び内側引起し装置の上端部に貫通支持されたカウンタ軸の横向き支点周りに回動可能に構成して、前記内側引起し装置を前記外側引起し装置に対して振り上げ揺動して前記刈取り部の前方を開放できるように構成し、
振り上げ揺動していない状態での前記内側引起し装置の背部にステーを固定配備するとともに、下端側が前記刈取り部の下部に連結された前記ステーの上端側を前記内側引起し装置の上端部の背部に固定して、前記ステーを刈取り部側に残した状態で前記内側引起し装置を前記外側引起し装置に対して振り上げ揺動するよう構成してあることを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−187114(P2012−187114A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129824(P2012−129824)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【分割の表示】特願2011−82707(P2011−82707)の分割
【原出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】