説明

コンバインの排塵装置

【課題】 塵埃の絡み付きを回避しやすいコンバインの排塵装置を提供する。
【解決手段】 排塵経路35を形成するフード31と、排塵経路35に沿わせて塵埃を流動させるようフード31の内部に設けた電動軸流ファン40とを備えている。フード31の壁部31bから排塵経路35に突出した筒状のモータステー60を備えている。モータステー60の突出端部に、電動軸流ファン40の電動モータ41を内嵌させるとともに止着させるモータ連結部62を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排塵経路を形成するフードと、前記排塵経路に沿わせて塵埃を流動させるよう前記フードの内部に設けた電動軸流ファンとを備えたコンバインの排塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した排塵装置として、従来、たとえば特許文献1に記載されたものがあった。
特許文献1に記載された排塵装置では、フィーダハウスの上面と側面に設けた上面フードと側面フードとによって形成された防塵フードを備え、上面フードの内部に設けた吸排塵ファンと電動モータとを備え、穀物ヘッダに発生する粉塵をファンにより吸引排出させる。
【0003】
この種の排塵装置において、従来、電動軸流ファンの回転ファンの周囲に位置する風洞形の送風ガイドに、この送風ガイドからファン回転軸芯に向かって延出したモータ支持体を設け、このモータ支持体の延出端部に電動軸流ファンの電動モータを止着することにより、電動軸流ファンのフード内部への取り付けを行われていた。
【0004】
【特許文献1】特開2002−345320号公報(段落〔0007〕、〔0008〕、図1−5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の技術を採用することによって電動軸流ファンの取り付けを行うと、回転ファンの吸排作用によって流動する塵埃のモータ支持体への絡み付きが発生しやすくなっていた。
つまり、従来の技術を採用すると、モータ支持体が回転ファンと塵埃流動方向に並んで排塵経路に位置する。このため、モータ支持体を回転ファンの回転方向に適当間隔を隔てて並んで位置するアーム形に構成し、モータ支持体どうしの間隔が塵埃通路になってモータ支持体が塵埃流動の障害物にならないようにする必要があった。この結果、モータ支持体が細い棒状体になり、モータ支持体に稈屑や切れワラが絡み付きやすくなっていた。
【0006】
本発明の目的は、塵埃の絡み付きを回避しやすいコンバインの排塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第1発明は、排塵経路を形成するフードと、前記排塵経路に沿わせて塵埃を流動させるよう前記フードの内部に設けた電動軸流ファンとを備えたコンバインの排塵装置において、
前記フードの壁部から前記排塵経路に突出した筒状のモータステーを備え、
前記モータステーの突出端部に、前記電動軸流ファンの電動モータを内嵌させるとともに止着させるモータ連結部を設けてある。
【0008】
本第1発明の構成によると、モータステーを排塵経路に位置させて電動軸流ファンを支持させることになるが、塵埃がモータステーの周囲を流動しやすい状態でモータステーが排塵経路に位置する。さらに、モータステーが筒状であることにより、塵埃がモータステーの周面をすべってモータステーに付着しにくい。
【0009】
従って、モータステーの塵埃付着による詰まりや流動不良が発生しにくくて排塵処理がスムーズに行われる排塵装置を得ることができる。
【0010】
本第2発明では、前記モータステーが円筒形状を備えている。
【0011】
本第2発明の構成によると、モータステーが塵埃流動の障害物によりならないようにモータステーの外径を極力小にしても、塵埃がモータステーの周面をより滑りやすくてモータステーの塵埃付着が発生しにくい。
【0012】
従って、モータステーの小径化と塵埃付着の回避との両面から塵埃がスムーズに流動して塵埃排出をより能率よく行わせることができる。
【0013】
本第3発明では、前記電動軸流ファンの回転ファンを、前記フードの吸塵口に配置し、前記フードを、前記吸塵口が連通対象部材から離間した開き状態と、前記吸塵口が前記連通対象部材に対向した閉じ状態とに揺動開閉自在に枢支させてある。
【0014】
本第3発明の構成によると、フードを揺動開放してその吸塵口を開けると、電動軸流ファンがフードに付いて連通対象部材から離間し、回転ファンをフードの吸塵口から点検や清掃できるように開放できる。
【0015】
従って、フードを揺動開放するだけで回転ファンも開放してその点検や清掃を楽に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの全体の左側面図である。図2は、本発明の実施例に係るコンバインの全体の右側面図である。図3は、本発明の実施例に係るコンバインの全体の平面図である。これらの図に示すように、本発明の実施例に係るコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置1,1によって自走し、かつ運転座席2aが装備された運転部2を有した走行機体と、この走行機体の機体フレーム3の後部側に設けた脱穀機4と、この脱穀機4の横側に設けた袋詰めタンク11が装備された穀粒袋詰め部10と、前記脱穀機4の前部にフィーダ21が連結された刈取り部20とを備えて構成してある。
【0017】
このコンバインは、稲、麦などを収穫する。
すなわち、刈取り部20は、前記フィーダ21を備える他、このフィーダ21の前端部に連結された刈取りフレーム22と、この刈取りフレーム22の前端部の両横側に設けたデバイダ23と、前記刈取りフレーム22にこれのプラットホーム部22aの前端部に配置して駆動自在に設けたバリカン形の刈取り装置24と、前記刈取りフレーム22に前記刈取り装置24の後方近くで、かつ前記プラットホーム部22aの上面側に配置して駆動回転自在に設けたオーガ25と、前記刈取りフレーム22の基端側の上部から前方向きに延出している左右一対の支持アーム26,26に駆動回転自在に支持された回転リール27とを備えて構成してある。
【0018】
前記刈取り部20は、前記フィーダ21が油圧シリンダ28によって機体横向きの昇降軸芯Pまわりに脱穀機4に対して上下に揺動操作されることにより、刈取りフレーム22の前記プラットホーム部22aが地面近くに下降した下降作業状態と、刈取りフレーム22が地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降する。刈取り部20を下降作業状態にして走行機体を走行させると、刈取り部20は、植立穀稈の刈取り処理と、刈取り穀稈の脱穀機4への供給とを行う。
【0019】
すなわち、左右一対のデバイダ23,23によって植立穀稈を刈取り対象と非刈取り対象とに分草し、刈取り対象の植立穀稈を、回転リール27によって刈取り装置24に掻き込みながらこの刈取り装置24によって刈り取る。刈取り穀稈をオーガ25の両端側に位置する螺旋プレート25aによってプラットホーム部22aに沿わせてフィーダ21の前方に横送りする。フィーダ21の前方に至った刈取り穀稈を、オーガ25の中間に一体回転自在に設けてある搬送アーム25bの掻き送りによってオーガ25の後側に位置するフィーダ21の入り口21a(図4参照)に送り込む。フィーダ21に入り込んだ刈取り穀稈を、フィーダ21の内部に位置するコンベヤ29によってフィーダ21の内部を後方に搬送する。フィーダ21の後端部に至った刈取り穀稈の株元から穂先までの全体を前記コンベヤ29の掻き送り作用によって脱穀機4の扱室(図示せず)に投入する。
【0020】
脱穀機4は、扱室に投入された刈取り穀稈を回転する扱胴4aによって脱穀処理する。
【0021】
図2に示すように、前記穀粒袋詰め部10は、前記袋詰めタンク11を備える他、この袋詰めタンク11の下部に位置する吐出筒12に装着された穀粒袋の上端側を袋支持杆13によって支持し、この穀粒袋の下端側を袋受けデッキ14によって支持する袋支持部を備えている。
【0022】
袋詰めタンク11は、脱穀機4の選別部(図示せず)からの脱穀粒を揚穀装置15(図2参照)によって供給されて貯留し、貯留した脱穀粒を前記吐出筒12から穀粒袋に排出する。
【0023】
図2,3に示すように、穀粒袋詰め部10は、前後一対の作業補助具16,16を備えている。各作業補助具16は、図2と図3に実線で示す如く袋支持部から走行機体横外側に突出した下降使用姿勢と、図2に二点鎖線で示す如く袋詰めタンク11の上方に位置した上昇格納姿勢とに揺動切り換えできるよう支持されている。各作業補助具16は、下降使用姿勢に切り換えることにより、袋受けデッキ14の上面からの高さHが1.0〜1.1mとなった配置高さに位置し、穀粒袋詰め部10に袋詰め作業のために搭乗した作業者が腰当て部材として使用できる。
【0024】
図1,3に示すように、前記刈取り部20は、前記フィーダ21に設けたフード31が装備された排塵装置30を備えている。
【0025】
図4は、前記排塵装置30の縦断側面図である。図5は、前記排塵装置30の正面図である。図7は、前記排塵装置30の縦断正面図である。図8は、前記排塵装置30の斜視図である。これらの図に示すように、前記排塵装置30は、前記フード31を備える他、このフード31の走行機体横方向での一端側の内部に設けた電動軸流ファン40を備えて構成してある。
【0026】
前記フード31は、下壁部31aと、上壁部31bと、下壁部31aと上壁部31bとの全周にわたる側壁部31cとを備えている。このフード31は、下壁部31aと側壁部31cとの一端側にわたって連結した送風ガイド32を備えている。フード31は、前記送風ガイド32によってフィーダ21の天板部21bに向かった吸塵口33を形成し、下壁部31aの他端側に連結された筒状体によって地面に向かった排塵口34を形成し、前記吸塵口33と前記排塵口34と連通させた排塵経路35を内部に形成している。
【0027】
前記電動軸流ファン40は、電動モータ41と、この電動モータ41の出力軸41aに一体回転自在に取り付けた回転ファン42とを備えて構成してある。すなわち、電動軸流ファン40は、回転ファン42が電動モータ41によって駆動されて風を発生させ、発生する風が回転ファン42の羽列を通るよう作動する。この電動軸流ファン40は、前記回転ファン42が前記吸塵口33に位置した配置になっている。
【0028】
つまり、排塵装置30は、回転ファン42を電動モータ41によって回転駆動し、刈取りフレーム22にて発生した粉塵や稈屑などの塵埃を機体上方向きに拡散しないように排出する。
すなわち、回転ファン42による吸引力を前記フィーダ21の天板部21bに設けた円形の開口50を介してフィーダ21の内部に作用させ、刈取りフレーム22で発生した塵埃をフィーダ21に前記入り口21aから吸引し、フィーダ21に流入した塵埃を前記開口50からフード31に吸引する。フード31に流入した塵埃を回転ファン42による送風によって排塵経路35に沿わせて排塵口34に流動させ、この排塵口34から機体下方向きに排出する。このとき、排塵口34から垂下されたゴム板製の防振カバー36によって塵埃の飛散を防止する。
【0029】
前記電動軸流ファン40は、前記フード31にこれの上壁部31bから前記排塵経路35に突出させて設けたモータステー60に取り付けてある。
【0030】
すなわち、前記モータステー60を、外周面61が円筒周面になって、塵埃がモータステー60の周囲を容易に流動するとともにモータステー60の外周面61を滑るよう筒状に形状し、モータステー60の突出端部に筒状のモータ連結部62を備えてある。
【0031】
図7、図9に示すように、前記モータ連結部62は、モータ孔63を有したモータ連結板64を備えており、電動モータ41の回転ファン42が連結している側とは反対側の端部41bが前記モータ孔63からモータ連結部62に内嵌した状態にし、電動モータ41が備えている取付けフランジ43と前記モータ連結板64とに装着した複数本の連結ボルト65によって電動モータ41をモータ連結板64に脱着自在に止着している。
【0032】
図7に示すように、前記フード31は、これの前記排塵口34が位置する側とは反対側の横端部に設けた枢着手段51を介してフィーダ21の天板部21bに支持されており、前記枢着手段51が有する走行機体前後向きのフード開閉軸芯Xまわりにフィーダ21に対して上下揺動する。
【0033】
図5と図7とは、フード31の下降閉じ状態を示している。これらの図に示すように、フード31は、前記フード開閉軸芯Xまわりに下降操作されると、前記送風ガイド板32の下端部に取り付けたシール材37によって、フィーダ21の天板部21bのうちの前記開口50と前記枢着手段51を形成する板金部材52を備えている部位に当接した閉じ状態になる。すると、フード31の前記吸塵口33がフィーダ21の開口50に対向してフード31がフィーダ21に連通する。このとき、フィーダ21とフード31との間が、前記吸塵口33の周囲で前記シール材37によってシールされる。また、フード31の前記排塵口34とフィーダ21の横板部21cとにわたって設けたロック手段70を作用させることにより、フード31を下降閉じ状態に固定できる。
【0034】
図6は、フード31の上昇開き状態での正面図である。この図に示すように、フード31は、前記フード開閉軸芯Xまわりに上昇操作されると、前記送風ガイド32がフィーダ21の天板部21bから上昇して吸塵口33がフィーダ21から離間した開き状態になる。すると、電動軸流ファン40がフード31に付いて上昇し、回転ファン42が点検や清掃しやすいように吸塵口33で開放した状態になる。このとき、前記板金部材52がフィーダ21の上面側に形成している支持ブラケット56に支持されている支持杆57を上昇揺動操作し、この支持杆57の遊端部をフード31が備える係止孔58に装着する。すると、支持杆57は、フード31を突っ張り支持して上昇開き状態に維持する。
【0035】
図10は、前記枢着手段51の平面図である。この図と図7と図8とに示すように、前記枢着手段51は、前記板金部材52の一部によって構成された枢支ブラケット53と、この枢支ブラケット53が備える前後一対のピンホルダ54,54に各別回転自在に内嵌するように構成してフード31に設けた前後一対の連結ピン55,55とによって構成してある。
【0036】
図9は、前記ロック手段70の側面図である。この図と図7とに示すようには、前記ロック手段70は、前記横板部21cに設けたブラケット71に支持された操作具72と、この操作具72に支持されたロックリング73と、前記排塵口34に設けたフック74とを備えて構成してある。このロック手段70は、フック74に係止させたロックリング73を操作具72の揺動操作によってブラケット71に引き寄せ固定することによってロック状態になる。
【0037】
図11は、第二実施構造のロック手段70を備えた排塵装置30の縦断正面図である。図12は、第二実施構造を備えたロック手段70の縦断側面図である。これらの図に示すように、第二実施構造のロック手段70は、フード31の前後側に設けてある。各ロック手段70は、フード31と、フィーダ21の天板部21bに設けた固定片75とにわたってロックボルト76が装着されることによってフード31を下降閉じ状態に固定する。このロック手段70は、前記ロックボルト76が固定片75から取り外されることによってフード31の閉じ固定を解除する。
尚、図11に示すフィーダ21は、前記開口50に設けた除塵網77を備えている。
【0038】
〔別実施例〕
上記したモータステー60に替え、外周面が六角筒や四角筒の周面になるよう六角形や四角形の筒状になった構成を採用して実施してもよい。この場合も、本発明の目的を達成することができる。
【0039】
上記した実施例の排塵装置30に替え、刈取りフレーム22に開口を設け、この開口を介してフード31の吸塵口33が刈取りフレーム22の内側に連通する構成を備えた排塵装置の場合にも、本発明を適用することができる。従って、フィーダ21、刈取りフレームなどを総称して連通対象部材21と呼称する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】コンバインの全体の左側面図
【図2】コンバインの全体の右側面図
【図3】コンバインの全体の平面図
【図4】排塵装置の縦断側面図
【図5】排塵装置の正面図
【図6】フードの上昇開き状態での正面図
【図7】排塵装置の縦断正面図
【図8】排塵装置の斜視図
【図9】ロック手段の側面図
【図10】枢着手段の平面図
【図11】第二実施構造のロック手段を備えた排塵装置の縦断正面図
【図12】第二実施構造のロック手段を備えた排塵装置の縦断側面図
【符号の説明】
【0041】
31 フード
31b フードの壁部
33 吸塵口
35 排塵経路
40 電動軸流ファン
41 電動モータ
42 回転ファン
60 モータステー
62 モータ連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排塵経路を形成するフードと、前記排塵経路に沿わせて塵埃を流動させるよう前記フードの内部に設けた電動軸流ファンとを備えたコンバインの排塵装置であって、
前記フードの壁部から前記排塵経路に突出した筒状のモータステーを備え、
前記モータステーの突出端部に、前記電動軸流ファンの電動モータを内嵌させるとともに止着させるモータ連結部を設けてあるコンバインの排塵装置。
【請求項2】
前記モータステーが円筒形状を備えている請求項1記載のコンバインの排塵装置。
【請求項3】
前記電動軸流ファンの回転ファンを、前記フードの吸塵口に配置し、
前記フードを、前記吸塵口が連通対象部材から離間した開き状態と、前記吸塵口が前記連通対象部材に対向した閉じ状態とに揺動開閉自在に枢支させてある請求項1又は2記載のコンバインの排塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−39024(P2009−39024A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206731(P2007−206731)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】