説明

コンバインの排藁放出装置

【課題】排出装置により圃場に放出される集束を所定間隔に保ちつつ、複数列、放出することができ、任意の位置に集束を放出することができる。
【解決手段】前記排藁放出装置60の結束装置30側に設ける回動支点と、前記回動支点を中心に排藁放出装置60の後側を所定の角度で左右回動させる回動駆動手段と、回動角度を設定する角度設定手段を備える。
排藁放出装置160に、後方へ搬送する前後方向搬送部162aと、該前後方向搬送部162aの後部より斜め後方に搬送する斜め方向搬送部162bと、前記前後方向搬送部162a及び斜め方向搬送部162bに対向して、それぞれ搬送面側に付勢されて平行移動可能に配設されるガイド杆161a・161bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束装置が結束した排藁束を圃場に放出するコンバインの排藁放出装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの後部に結束装置が設けられ、該結束装置の後部に立体放出装置を設けて、結束装置により結束した排藁束を、その根元部を広げて自立可能な状態として圃場に放出するコンバインの立体放出装置の技術が公知となっている。
例えば、特許文献1に記載のように、結束装置から排藁を受け取って搬送する搬送チェーンとの間で排藁を挟持する挟持ガイドを、搬送チェーンが排藁を搬送する方向で前後に分割することにより、排藁の処理量が増加した場合でも脱落を防止し、圃場に放出した排藁束を確実に自立させることが可能な排藁放出装置は公知となっている。
【特許文献1】特開2007−75011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、コンバインの作業効率向上のためにコンバインの作業時の刈り取り条数は増加し作業速度は高速化する傾向にある。これに伴って結束装置及び立体放出装置の単位時間当りの排藁処理量も増加している。
しかし、排藁放出装置の単位時間当りの排藁処理量が増加しても、集束藁の乾燥、持ち運びを考慮すると、結束径を大きくすることはできないため、排出された集束藁が連続的に放出されるため、排藁束が重なり合い、倒れることもあり、所定間隔を保つことができず、本来の目的であった排藁乾燥が効率よく行われない場合があった。
【0004】
本発明は以上の状況に鑑み、排藁放出装置の単位時間当りの排藁処理量が増加した場合であっても、結束径を大きくすることなく放出される排藁束の間隔は所定間隔を保つことができるコンバインの排藁放出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、結束装置により結束した排藁束を、その後部に配置して起立状態で圃場に放出するコンバインの排藁放出装置であって、前記排藁放出装置の前記結束装置側に設ける回動支点と、前記回動支点を中心に前記排藁放出装置の後側を所定の角度で左右回動させる回動駆動手段と、を備えるものである。
【0007】
請求項2においては、前記排藁放出装置の回動角度を設定する角度設定手段を備えるものである。
【0008】
請求項3においては、前記結束装置により結束した排藁束を、その後部に配置して起立状態で圃場に放出するコンバインの排藁放出装置であって、前記排藁放出装置は、後方へ搬送する前後方向搬送部と、該前後方向搬送部の後部より斜め後方に搬送する斜め方向搬送部と、前記前後方向搬送部及び前記斜め方向搬送部に対向して、それぞれ搬送面側に付勢されて平行移動可能に配設されるガイド杆と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、排出装置により圃場に放出された排藁束を所定間隔に保ちつつ、複数列、排出することができる。また、任意の位置に排藁束を放出することができる。
【0011】
請求項2においては、回動放出角度を設定することで、排藁放出装置の収納位置、所望回動放出角度に設定することができる。
【0012】
請求項3においては、排出装置により圃場に放出された排藁束が所定間隔を保ちつつ、二列に放出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係るコンバインの全体構成を示した側面図、図2は同じく平面図、図3は排藁処理装置の構成を示す平面模式図である。図4は同じく側面図、図5は実施例1の排藁放出装置の構成を示す平面模式図、図6は実施例2の排藁放出装置の構成を示す平面模式図、図7は本発明に係る駆動ケースの拡大断面図、図8は実施例2の駆動手段を示す模式図である。
【0014】
本発明に係るコンバインの実施の一形態であるコンバイン1について説明する。
以下の説明では、便宜上図1中の矢印Aの方向を「前方」と定義する。
【0015】
まず、図1及び図2を用いて後述する実施例1及び実施例2のコンバイン1の概略構成について説明する。
コンバイン1は稲の収穫作業、より詳細には、圃場を走行しつつ圃場から穀稈を刈取り、穀粒を脱穀する。本実施形態のコンバイン1は、刈取られた穀稈のうち、穀粒の付いた穂先部のみを脱穀する自脱型のコンバインである。
コンバイン1は、主として刈取り装置2、脱穀装置3、選別装置4、排藁処理装置5等を備える。
【0016】
刈取り装置2は、コンバイン1の前部に配置される。刈取り装置2は、引起し装置や下部搬送装置や穂先搬送装置や刈刃等を備え、圃場から穀稈を刈取り、当該穀稈を脱穀装置3へと渡す。
【0017】
脱穀装置3は、刈取り装置2の後方に配置される。脱穀装置3は、主としてフィードチェーン3a、扱胴3b等を備える。脱穀装置3は、フィードチェーン3aにより、刈取り装置2から受け取った穀稈を横に倒した状態で前方から後方へと搬送しながら、扱胴3bの回転により、穀稈から穀粒を分離(脱穀)する。
【0018】
選別装置4は、脱穀装置3の下方に配置される。選別装置4は、脱穀装置3によって脱穀された穀粒に混じった藁屑や塵挨等を、風力選別や揺動選別により分離する。
【0019】
排藁処理装置5は、脱穀装置3の後方に配置される。排藁処理装置5は、フィードチェーン3aから受け取った脱穀された穀稈(以下、単に「排藁」と記す)を排藁チェーン5aにより後方へ搬送し、所定の処理を施す。
【0020】
選別装置4により藁屑等と分離された精粒は、揚穀筒6を経て脱穀装置3の右方に設けられたグレンタンク7に搬入され、貯溜される。グレンタンク7には排出オーガ8が連通接続される。排出オーガ8を作動することにより、グレンタンク7に貯溜された精粒を、排出オーガ8を経てグレンタンク7の外部に搬出することが可能である。
グレンタンク7の前方には、オペレータがコンバイン1の運転及び各種装置の操作を行うための運転部9が配置される。
【0021】
排藁処理装置5の構成について図2乃至図4を用いて説明する。排藁処理装置5は、主として排藁切断装置20、結束装置30、排藁放出装置60・160等で構成される。
【0022】
排藁切断装置20は、排藁チェーン5aにより搬送されてきた排藁を所定の長さに切断する。図3に示すように、排藁切断装置20は、主として高速回転軸21、高速回転刃22、低速回転軸23、低速回転刃24、切断切替カバー25等で構成されている。
【0023】
高速回転軸21及び低速回転軸23は、排藁チェーン5aの終端部の下方に配置される。高速回転軸21及び低速回転軸23は互いに平行に左右方向に横架される。高速回転軸21及び低速回転軸23上には、それぞれ円板状の高速回転刃22・22・・・及び低速回転刃24・24・・・が互いに交互に並ぶように固設される。
【0024】
高速回転軸21の左端部には、高速ギア21a、入力プーリ21b、出力プーリ21cが配設される。入力プーリ21bには、コンバイン1のエンジンからの動力を伝達する入力ベルト21dが巻回される。低速回転軸23の左端部には、低速ギア23aが配設され、高速ギア21aと歯合される。
高速回転軸21は、入力ベルト21d及び入力プーリ21bを介して伝達されるコンバイン1のエンジンからの動力により、左側面視で反時計回りに回転される。低速回転軸23は、高速ギア21a及び低速ギア23aを介して伝達される動力により、左側面視で時計回りに回転される。また、高速回転軸21は低速回転軸23よりも高速で回転されるよう構成される。
【0025】
切断切替カバー25は、高速回転刃22・22・・・及び低速回転刃24・24・・・を上方から覆うように配置される。切断切替カバー25の後部は、左右方向に枢支された回動支点軸25aに固設される。
【0026】
回動支点軸25aは図示しないアームやワイヤー等を介して運転部9付近に設けた切替レバーと連結される。当該切替レバーを操作することにより、切断切替カバー25を開閉することができる。切断切替カバー25が開放され、排藁チェーン5aの下方に配置される図示せぬ挟扼杆が縮められた場合、排藁チェーン5aにより搬送される排藁は切断切替カバー25の下方へと投入される。切断切替カバー25が閉鎖され、前記挟扼杆が伸ばされた場合、排藁チェーン5aにより搬送される排藁は、結束装置30へと搬入される。
切断切替カバー25が開放され、切断切替カバー25の下方へと搬入された排藁は、回転する高速回転刃22及び低速回転刃24により所定の長さに切断される。
【0027】
結束装置30は、排藁チェーン5aにより搬送されてきた排藁を結束する。図3に示すように、結束装置30は、主として結束装置ケース31、動力伝達ケース32、株元搬送部40、結束部50等を備える。株元搬送部40及び結束部50は、結束装置ケース31内に配置される。
【0028】
株元搬送部40は、排藁チェーン5aにより搬送されてきた排藁を左右方向に向けたまま株元端を揃えて、結束部50へ搬送する。株元搬送部40は、主として結束入力軸41、ギアボックス42、支持板43、タイン44、株元揃え板45等で構成されている。
【0029】
結束入力軸41は、左右方向に枢支され、結束入力軸41の左端部は、結束装置30の左側部に配置される動力伝達ケース32内に延設される。結束入力軸41の左端部には、結束入力プーリ41aが備えられている。結束入力プーリ41aと出力プーリ21cとの間に巻回される結束入力ベルト41bにより、コンバイン1のエンジンからの動力が結束入力軸41へと伝達される。
【0030】
ギアボックス42の下面には支持板43が固設される。支持板43の後端部及び前端部には図示しない駆動スプロケット及び従動スプロケットが支持される。前記駆動スプロケット及び前記従動スプロケットの間には図示しないチェーンが巻回され、当該チェーンの外周部にタイン44・44・・・が支持される。結束入力軸41により伝達される動力によって、ギアボックス42内のギア等を介して前記駆動スプロケットが回転し、これによりタイン44・44・・・が平面視時計回りに回転する。
【0031】
株元揃え板45は、回動支点45aに枢支される。株元揃え板45の前端は、タイン44の回転後端部まで延出される。株元揃え板45は、結束入力軸41により伝達される動力によって、図示しないリンク機構を介して左右方向に揺動駆動される。
【0032】
排藁切断装置20の切断切替カバー25が閉鎖されている(高速回転刃22・22・・・及び低速回転刃24・24・・・を上方から覆っている)場合、排藁チェーン5aにより搬送される排藁を、切断切替カバー25の上方を経て結束装置30の株元搬送部40へと搬入することができる。
株元搬送部40へと搬入された排藁は、回転するタイン44・44・・・に押されて後方へ搬送される。タイン44・44・・・の回転後端部において、揺動駆動される株元揃え板45によって排藁の株元端が叩かれて揃えられながら、当該排藁は結束部50へと搬送される。
【0033】
結束部50は、株元搬送部40により搬送されてきた排藁を所定量ずつ結束する。図3及び図4に示すように、結束部50は、主としてパッカー51、ドア52、ニードル53、結束紐ケース54、結節部55、放出アーム56等で構成されている。結束部50は、結束入力軸41により伝達される動力によって駆動される。
【0034】
パッカー51は、株元搬送部40により搬送されてきた排藁を、当該排藁を一時的に収容するための収容空間に掻き込む。
ドア52は、前記収容空間の出口(前記収容空間の後部)を閉鎖する。所定量の排藁が前記収容空間に収容されると、ドア52は、前記収容空間の出口を開放する。
ドア52が開放されるとニードル53が回動され、結束紐ケース54内に収容される結束紐54aを、前記収容空間に収容されていた排藁に巻き付けながら結節部55へと供給する。
結節部55は、排藁に巻き付けられた結束紐54aを結節する。結束紐54aにより結束された排藁は、放出アーム56により前記収容空間の出口から掻き出され、排藁放出装置60へと受け渡される。該排藁放出装置60・160は、後述する駆動力伝達部300を介して、結束ミッションケース58に回動可能に接続されている。
【0035】
以上の構成を基本構成とし、次に排藁放出装置60・160の詳細な各実施例について述べる。
【実施例1】
【0036】
本発明の実施例1を、図5を用いて説明する。
【0037】
実施例1に係る排藁放出装置60は、結束装置30により結束された排藁を外部(圃場)へと放出する装置であり、主として、搬送部62a、ガイド杆61、駆動力伝達部300、回動駆動手段等から構成されている。
【0038】
図3、図4、図5に示すように、搬送チェーン62の挟持部側である搬送部62aは、後述するガイド杆61と共に排藁束200の搬送を行うものである。
搬送部62a(搬送チェーン62)は主として支持プレート65、駆動スプロケット63、従動スプロケット64等を備える。
該支持プレート65は排藁放出の主たる構造体であり、駆動スプロケット63と従動スプロケット64は前後に延びた該支持プレート65の長手方向両端に回転自在に支持されている。前記搬送チェーン62は前側に配置された該駆動スプロケット63と後側に配置された該従動スプロケット64の間に巻回され、後述する駆動力伝達部300による駆動で平面視反時計回りに回転可能となっている。
【0039】
該ガイド杆61は搬送チェーン62の搬送部62aの搬送面に対向するように配設されている。更に、搬送部62aとガイド杆61に略平行に支持フレーム68がガイド杆61の外側(本実施例では機体進行方向左側)に配設されている。また、ガイド杆61の搬送方向の始端(排藁束搬送入口)側は搬送方向後方に向かうに従い徐々に狭くなるように形成され、排藁束200をガイド杆61と搬送部62aとの間に容易に受け入れ可能となるべく形成されている。そして、ガイド杆61の搬送後流側には、搬送部62aと対向する面に平面視三角形状の板体よりなる突起部69が所定間隔を空けて配置されている。ここで、前記突起部69は板体としているが限定するものではなく、板体の代わりに棒体を所定間隔をあけて「く」字状に屈曲させた、つまり、波状に突起部が配設されたり、ガイド杆61の搬送後流側に所定間隔を空けて搬送部62a側に「く」字状に屈曲させた棒体を複数箇所突出するように配設したりしてもよい。
【0040】
前記支持プレート65と支持フレーム68は連結フレーム67を介して固定される。つまり、前記支持プレート65の上面(穂先側)に後面視逆「U」字状の連結フレーム67の一端が固設され、他端は前記支持フレーム68上に固設されている。該支持フレーム68上の前後二箇所にガイド杆61の取付ブラケット66・66が配置される。該取付ブラケット66内にはバネ66aが配設され、ロッド66bが該取付ブラケット66に摺動自在に挿入されている。該ロッド66b・66bの搬送部62a側端部にはガイド杆61が連結して横設されている。そして、取付ブラケット66内のバネ66aの付勢力によりガイド杆61が搬送面側(挟持方向)に付勢される構成となっている。
【0041】
以下では、前記駆動力伝達部300の構成について説明する。
駆動力伝達部300はコンバイン1のエンジンからの駆動力を、駆動スプロケット63を介して搬送チェーン62に伝達するものである。図7に示すように、駆動力伝達部300は主として駆動ケース、伝動軸、ベベルギア、伝達軸等で構成されている。
【0042】
駆動ケースは第一駆動ケース91、第二駆動ケース92、及び第三駆動ケース93で構成されており、駆動力伝達部300の主たる構造体を成す中空の部材である。
図4、図5、図7に示すように、第三駆動ケース93はパイプ状に構成されて、その一端は結束装置30の結束ミッションケース58の側面に固定され、第三駆動ケース93の他端は第二駆動ケース92の側端に固定される。第二駆動ケース92はL字パイプ状に構成されて、その上端には第一駆動ケース91の下端が水平方向回転自在に嵌合固定され、第一駆動ケース91の上端は排藁放出装置60の下面に固定される。
【0043】
前記駆動スプロケット63は駆動軸81上に固設され、該駆動軸81は図7に示すように、第一駆動ケース91に回転自在に支持され、他端にベベルギア87aを固設している。該ベベルギア87aは第一駆動ケース91及び第二駆動ケース92内に回転自在に支持した伝動軸82上のベベルギア87bと噛合し、該伝動軸82の他端にはベベルギア87cを固設して、該ベベルギア87cは、第三駆動ケース93に回転自在に支持した伝達軸83上のベベルギア87dと噛合している。そして、結束部50後方に配設された結束ミッションケース58の一側より突出した動力取出軸から伝達軸83に伝えて排藁放出装置60が駆動される。
【0044】
前記第一駆動ケース91下部は第二駆動ケース92上部と嵌合してステー94により抜止め固定している。即ち、該ステー94は板体の上部に鍔部が形成されて第二駆動ケース92の側面にボルト等で固設される。そして、第一駆動ケース91下部外周に形成された鍔がステー94の鍔部によって係止される。よって、第一駆動ケース91下部と第二駆動ケース92上部が接する水平面Xを回転面(回動支点)として回動自在に係止するとともに、鉛直方向の抜け止めの役割を果たす。つまり、排藁放出装置60の結束装置30側に回動支点が設けられており、排藁放出装置60の前端下部が前記第一駆動ケース91と固定されていることにより、後述する回動駆動手段により水平面Xを回転面として排藁放出装置60が左右回転可能となっている。
【0045】
次に、前記排藁放出装置60の回動面を前記第一駆動ケース91下部水平面Xとし、該水平面を回転面とする排藁放出装置60を所定の角度で左右回動させる回動駆動手段を説明する。
【0046】
回動駆動手段は主に、アクチュエーター、排藁回動入切手段、排藁検知手段、角度検知手段、及び制御部75等からなる。
運転部9には排藁放出装置60を左右回動させるかどうかを設定する排藁回動入切手段となる排藁回動入切スイッチ72や、排藁放出装置60の回動角度を設定するための角度設定手段となるダイヤル74や、制御部75が配設されている。そして、図8に示すように、該制御部75には、排藁回動入切スイッチ72、ダイヤル74、アクチュエーターとなるシリンダ71を駆動するためのモータ76、排藁が通過したことを検知するための排藁検知手段となる排藁センサ73、排藁放出装置60の回動角度を検知する手段としての角度センサ77等が接続されている。
【0047】
図5、図8に示すように、排藁放出装置60とコンバイン1の機体右後部との間には、回動駆動手段が配設されている。具体的には、前記支持プレート65の前側部(排藁束搬入側上面右側)よりステー71dが突設され、該ステー71dに伸縮可能なシリンダ71の一端(ピストンロッド71a先端)が枢支され、該シリンダ71の他端(シリンダチューブ71b基部)は、結束装置30の右後方より突設したステー71cに枢支されている。該シリンダ71は電動シリンダにより構成されて伸縮可能とし、アクチュエーターをモータ76として、該モータを正転または逆転させることにより伸縮可能としている。但し、排藁放出装置60の回動基部にモータ76を取り付けて直接回動駆動可能に構成したり、油圧シリンダで回動駆動したりすることが可能であり、アクチュエーターは限定するものではない。また、クラッチを介してエンジンからの動力により左右回動するように構成することも可能である。
【0048】
前記第一駆動ケース91と第二駆動ケース92との間には角度検知手段として、ポテンショメータまたはロータリエンコーダ等の角度センサ77が配置されて、排藁放出装置60の左右回動角度が検知される。そして、この排藁放出装置60の回動角度、または回動範囲はダイヤル74を回動することにより設定することを可能としている。但し、リミットスイッチを最大回動位置に位置調整可能に配置して、排藁放出装置60が回動されて該リミットスイッチの接点が接触して「ON」すると反転して回動するように構成することも可能であり、角度検知手段は限定するものではない。
前記排藁センサ73は排藁が排藁放出装置60の入口近傍または出口近傍、または、取付ブラケット66に配設され、排藁センサ73が「ON」すると、所定時間(排藁束200が排藁放出装置60に入ってから放出するまでの時間)後にシリンダを駆動する。または、排藁束200を検知する毎にシリンダを駆動するようにしている。本実施例では、排藁センサ73は搬送後端位置に配置されて、排藁束200の通過を検知するようにしている。
【0049】
次に、シリンダ71の伸縮により排藁放出装置60を回動させて、排藁束200を左右振り分け放出する態様について詳説する。
【0050】
ここで、図5に示すように、説明上、排藁放出装置60の作業開始時の位置は、左斜め後方に突出した状態の位置を初期位置として説明する。
まず、排藁放出装置60を使用しない時や格納時等では、排藁放出装置60は左右方向を向くように回動されて格納状態として、全長が長くならないようにしている。
排藁を切断せずに結束して放出する場合には、切断切替カバー25を閉鎖して結束装置30を駆動させるようにする。そして、排藁放出装置60を作動させる時には、排藁回動入切スイッチ72を「ON」する。この排藁回動入切スイッチ72が「ON」されることで、シリンダ71が駆動されて、排藁放出装置60は初期位置まで回動される。
そして、刈取作業が行われることで、脱穀後の排藁が結束装置30により結束され、排藁放出装置60に供給される。排藁放出装置60において、排藁束200は結束付近で挟持されて後方へ搬送される。このとき、排藁束200は搬送部62aとガイド杆61との間で安定して挟持されながら、かつ、ガイド杆61の後方に設けられた山型の突起部69との接触によって回転が与えられながら搬送される。前記支持フレーム68の後部には排藁センサ73が取り付けられており、後方に搬送されてきた排藁束200が該排藁センサ73に当接され、排藁センサ73が「ON」となる。排藁束200はガイド杆61の後端に達し、圃場既刈跡に略円錐形状となって放出される。その際、排藁束200が排藁センサ73より離れることで該排藁センサ73が「OFF」となる。
【0051】
前記排藁センサ73が「ON」することにより、その信号が制御部75に送信され、該制御部75からシリンダ71を縮小させる駆動信号を送信する。この駆動信号により、シリンダ71は縮小し、排藁放出装置60は回動支点である第一駆動ケース91を中心に設定回動角度右方(平面視反時計回り)に回動され、排藁放出装置60の後端が右方に振られる。
【0052】
前記状態の該排藁放出装置60によって、次送の排藁束200が前記結束装置30から、穂先側が挟持されて回転が与えられながら後方へ搬送される。後方に搬送されてきた排藁束200が該排藁センサ73に当接され、排藁センサ73が「ON」となる。引き続き搬送されている排藁束200はガイド杆61の後端に達し、略円錐形状となって圃場既刈跡に放出される。こうして、排藁束200は前記と左右反対側の右側に放出される。その際、排藁束200が排藁センサ73より離れることで該排藁センサ73が「OFF」となり、再び排藁センサ73より制御部75へと信号が送られ、シリンダ71全長が伸長されたことにより、第一駆動ケース91を介して、左方に排藁放出装置60が押され、設定角度左方(平面視時計回り)に回動させる。よって、排藁放出装置60の後端が元の位置である左方に振られる。
【0053】
この排藁放出装置60の左右回動する一連の動きを繰り返すことにより、排藁束200が起立状で圃場に二列の千鳥状となって放出される。また、コンバインを格納する際も同様に排藁放出装置60を機体右方へと回動させ収納することができる。
【0054】
本実施例においては、排藁束200が二列になるよう圃場に放出されているが、限定するものではなく、設定回動角度を複数に設定することにより、三列以上の排藁束200の放出が可能である。また、排藁量(刈取量)が少ない場合には、左右回動させることなく(回動角度をゼロとする)一列で放出することも可能である。このとき、放出角度を設定することにより、任意の方向に放出することが可能となる。
【0055】
実施例1では、以上のように構成したことで、次のような効果を奏するものである。即ち、排藁放出装置60により圃場に放出された排藁束200を所定間隔に保ちつつ、複数列、放出することができる。つまり、単位時間当りの排藁排出量が多くなり、放出結束数が多くなっても、排藁束200の放出を複数列にすることにより、所定間隔を保つことができ、排藁束200同士の間隔が広がり、排藁乾燥が効率よく行われ且つ作業者が持ち運びし易い。また回動角度を設定する、つまり排藁放出装置60の角度が変更できるので、圃場状態に合せた所望回動角度に設定するため、排藁放出装置60の損傷を回避することができ条対応や中割が可能となり、任意の位置に排藁束200を放出することができる。また、収納位置へと回動させることによりコンバイン1の全長を短くすることができる。
【実施例2】
【0056】
本発明の排藁排出量が多くなっても、排藁束200の放出間隔を所定間隔以上に保つようにできる実施例2を、図6を用いて説明する。
【0057】
実施例2に係る排藁放出装置160も、結束装置30により結束された排藁を外部(圃場)へと放出する装置であり、主として、搬送部(搬送チェーン162)、ガイド杆161a・161b、駆動力伝達部300等から構成されている。
【0058】
図3、図4、図6に示すように、搬送チェーン162の挟持部側である搬送部は、後述するガイド杆161a・161bと共に排藁束200の搬送を行うものである。搬送部(搬送チェーン162)は主として支持プレート165、駆動スプロケット63、従動スプロケット164a・164b等で支持されている。該支持プレート165は平面視略三角形の排藁放出の主たる構造体である。駆動スプロケット63と二つの従動スプロケット164a・164bは該支持プレート165の頂点に夫々配設され、回転自在に支持されている。前記搬送チェーン162は前方の該駆動スプロケット63と後方の該従動スプロケット164a・164bの間に巻回され、実施例1と同様の駆動力伝達部300による駆動で平面視反時計回りに回転可能となっている。
【0059】
また説明上、駆動スプロケット63と従動スプロケット164a間の後方へ排藁束200を搬送する搬送部を前後方向搬送部162a(経路B)とし、従動スプロケット164a・164b間の該前後方向搬送部の後部より斜め後方に排藁束200を搬送する搬送部を斜め方向搬送部162b(経路C)とする。
【0060】
前後方向搬送部162a、斜め方向搬送部162bに対向するようにガイド杆161a・161bが夫々配設されている。更に、前後方向搬送部162a、斜め方向搬送部162bとガイド杆161a・161bに略平行に支持フレーム168a・168bがガイド杆161a・161bの外側に配設されている。
【0061】
そして、ガイド杆161a・161bの搬送方向後方側の夫々前後方向搬送部162a、斜め方向搬送部162bと対向する面に三角形状の板体よりなる突起部69が所定間隔を空けて配置されている。実施例1と同様、突起部69を板体としているが限定するものではない。また、ガイド杆161a・161bは、夫々搬送経路始端(経路B・Cの各始端)部には搬送方向下流側に向かうに従い徐々に狭くなるように形成されており、排藁束200がガイド杆161aと前後方向搬送部162aとの間に容易に受け入れ可能となるべく形成され、また、ガイド杆161bと斜め方向搬送部162bとの間に容易に受け入れ可能となるべく、または、所定条件において容易に放出されるべく形成されている。
【0062】
前記支持プレート165に連結フレーム167a・167bを介して前記支持フレーム168a・168bがそれぞれ固定される。つまり、経路B近傍の前記支持プレート165上面に後面視逆「U」字状の連結フレーム167aの一端が固設され、他端はガイド杆161aの前記支持フレーム168a前端に固設されている。一方、経路C近傍の前記支持プレート165の上面に側面視逆「U」字状の連結フレーム167bの一端が固設され、他端はガイド杆161bの前記支持フレーム168b上に固設されている。該支持フレーム168a・168b上に夫々二箇所ガイド杆161a・161bの取付ブラケット66・66が配置される。該取付ブラケット66内にはバネ66aが配設され、ロッド66bが該取付ブラケット66に摺動自在に挿入されている。搬送チェーンの搬送面側の該ロッド66b・66b端部には夫々ガイド杆161a・161bが横設されている。よって、取付ブラケット66内のバネ66aの付勢力によりガイド杆161a・161b夫々が挟持方向に付勢される構成となっている。
【0063】
駆動力伝達部300の構成については、図7に示すように、排藁放出装置60を実施例2の排藁放出装置160を入れ替えただけであり、その他の構成部材等は実施例1と同様であるため省略する。但し、排藁放出装置160はシリンダ71ではなく図示しないロッド等で機体側に固定され、該ロッドの固定位置を変更することにより排藁束200の放出位置を変更したり、格納位置で固定したりできるようにしている。
【0064】
次に、排藁放出装置160における排藁束200の放出作用について、図6を用いて説明する。
排藁結束作業が行われ、結束後の排藁束200が排藁放出装置160に供給されると、前記結束装置30から搬送されてきた排藁束200の穂先側が挟持されて後方へ搬送される。経路Cに排藁束200が挟持されていない場合、経路Bより搬送挟持されてきた排藁束200は経路Cへと導かれ経路Cで右斜め後方へと搬送挟持され、下流端より放出される。
そして、経路Cで排藁束200が挟持されていると、経路Cで挟持されている排藁束200によりガイド杆161bは押し広げられた状態となっており、ガイド杆161bと搬送チェーン162の斜め方向搬送部162bとの間に空間(隙間D)が形成されている。該隙間Dは結束径よりもやや大きく形成される。このとき、経路Bより搬送挟持された別の排藁束200が経路Bの搬送終端に差し掛かると、経路Bと経路Cとの受け継ぎ部に形成される空間(隙間D)によって、排藁束200は挟持されず圃場へと自由落下し放出される。
つまり、前送の排藁束200が経路Cの斜め方向搬送部162bとガイド杆161b間に位置していると、その排藁束200がガイド杆161bを押し広げ、従動スプロケット164a近傍の経路Cにおいて、大きな空間が形成されることとなる。そのため、経路Cで排藁束200が挟持されている間は、後送の排藁束200は経路Cの斜め方向搬送部162bとガイド杆161bに挟持されること無く落下する。経路Cは経路Bよりも距離が長く形成されているため、経路Bの後端で後送の排藁束200が落下した後に、前送の排藁束200が経路Cの右後端で落下することとなる。
【0065】
以上の排藁束200の搬送放出を繰り返すことにより、圃場に放出された排藁束200は、千鳥状の二列に立体状に排出されることとなる。
また、放出される排藁束200は前後方向搬送部162aとガイド杆161a、斜め方向搬送部162bとガイド杆161bとの間で安定して挟持されながら、かつ、ガイド杆161a・161bの後方側に設けられた山型の突起部69との接触によって回転が与えられながら搬送される。この回転によって下方の株元側が広げられ略円錐形状となり、既刈跡に排藁束200が起立状態で落下する。
【0066】
実施例2では、以上のように構成したことで、次のような効果を奏するものである。
排藁放出装置160により圃場に放出された集束藁200が所定間隔を保ちつつ、二列に排出される。つまり、単位時間当りの排藁排出量が多くなり、放出結束数が多くなっても、排藁排出を二列にすることにより、所定間隔を保つことができ、結束径を小さくすることができるため、排藁乾燥が効率よく行われる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るコンバインの全体構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】排藁処理装置の構成を示す平面模式図。
【図4】同じく側面図。
【図5】実施例1の排藁放出装置の構成を示す平面模式図。
【図6】実施例2の排藁放出装置の構成を示す平面模式図。
【図7】本発明に係る駆動ケースの拡大断面図。
【図8】実施例2の駆動手段を示す模式図。
【符号の説明】
【0068】
1 コンバイン
30 結束装置
60・160 排藁放出装置
61・161a・161b ガイド杆
75 制御部
91 第一駆動ケース
92 第二駆動ケース
162a 前後方向搬送部
162b 斜め方向搬送部
200 排藁束
300 駆動力伝達部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結束装置により結束した排藁束を、その後部に配置して起立状態で圃場に放出するコンバインの排藁放出装置であって、
前記排藁放出装置の前記結束装置側に設ける回動支点と、
前記回動支点を中心に前記排藁放出装置の後側を所定の角度で左右回動させる回動駆動手段と、を備える、
ことを特徴とするコンバインの排藁放出装置。
【請求項2】
前記排藁放出装置の回動角度を設定する角度設定手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの排藁放出装置。
【請求項3】
前記結束装置により結束した排藁束を、その後部に配置して起立状態で圃場に放出するコンバインの排藁放出装置であって、
前記排藁放出装置は、
後方へ搬送する前後方向搬送部と、該前後方向搬送部の後部より斜め後方に搬送する斜め方向搬送部と、
前記前後方向搬送部及び前記斜め方向搬送部に対向して、それぞれ搬送面側に付勢されて平行移動可能に配設されるガイド杆と、を備える
ことを特徴とするコンバインの排藁放出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−278919(P2009−278919A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134650(P2008−134650)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】