コンバインの運転部構造
【課題】乗員が運転部に容易に乗降することができながらも、刈取作業中に乗降用ステップが穀稈や畦等に接触する等の障害が生じ難いコンバインの運転部構造を経済的に提供できるようにする。
【解決手段】複数段の乗降用ステップ21の内、最下段に位置する最下段ステップ21Cは、乗降荷重を受けるステップ作用状態と、ステップ作用状態より上方向へ退避するステップ非作用状態とに切替自在に構成してあり、最下段ステップ21C以外の他ステップ21A、21Bは、その両端部を、他ステップの上下寸法より縦長に形成された一対の縦長構造部材21Dにそれぞれ取り付けてあり、一対の縦長構造部材21Dに、機体への取付部22が設けられている。
【解決手段】複数段の乗降用ステップ21の内、最下段に位置する最下段ステップ21Cは、乗降荷重を受けるステップ作用状態と、ステップ作用状態より上方向へ退避するステップ非作用状態とに切替自在に構成してあり、最下段ステップ21C以外の他ステップ21A、21Bは、その両端部を、他ステップの上下寸法より縦長に形成された一対の縦長構造部材21Dにそれぞれ取り付けてあり、一対の縦長構造部材21Dに、機体への取付部22が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの運転席への乗降用ステップの複数が、上下に間隔をあけた状態でコンバインの機体に取り付けてあるコンバインの運転部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンバインの運転部構造としては、乗員が運転席に乗降するために、運転席のフロアの下方の機体横側部に乗降用ステップを設けることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
運転部が高い位置となるときには、乗降用ステップを上下方向に複数個設けることがある。このとき、各乗降用ステップの機体横側部からの突出量を大きくすると、乗員が足を乗降用ステップに掛け易くなり、乗員が運転部に容易に乗降することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3615945号公報(図2,図3を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のコンバインの運転部構造によれば、乗降用ステップは、機体から突出する片持ち梁として荷重を支持することになるから、基端部に作用する曲げモーメントが大きくなる。従って、乗降用ステップそのものを高強度に形成する必要があると共に、乗降用ステップが取り付く機体部分の高強度化も必要となる。具体的には、例えば、機体の表面板の裏面側に、補強用のフレーム等を設置しておき、フレームと表面板とで乗降用ステップに作用する荷重を支持できるようにすることになる。従って、機体側の補強構造が大掛かりとなりコストアップにつながり易い問題点がある。
また、機体外側に突出する乗降用ステップが、刈取作業中に穀稈に接触することがあり、穀稈が乗降用ステップに絡みつくことがある。また、畦際での刈取作業中に乗降用ステップが畦に接触して、乗降用ステップが損傷することがある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、乗員が運転部に容易に乗降することができながらも、刈取作業中に乗降用ステップが穀稈や畦等に接触する等の障害が生じ難いコンバインの運転部構造を経済的に提供できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴構成は、コンバインの運転席への乗降用ステップの複数が、上下に間隔をあけた状態でコンバインの機体に取り付けてあるコンバインの運転部構造であって、前記複数段の乗降用ステップの内、最下段に位置する最下段ステップは、乗降荷重を受けるステップ作用状態と、前記ステップ作用状態より上方向へ退避するステップ非作用状態とに切替自在に構成してあり、前記最下段ステップ以外の他ステップは、その両端部を、前記他ステップの上下寸法より縦長に形成された一対の縦長構造部材にそれぞれ取り付けてあり、前記一対の縦長構造部材に、機体への取付部が設けられているところにある。
【0008】
本発明の第1の特徴構成によれば、最下段ステップをステップ作用状態に切り替えることで、最下段ステップと前記他ステップとの複数段の乗降用ステップを使用して、乗員が運転席へ容易に乗降することができる。
また、前記最下段ステップを前記ステップ非作用状態に切り替えることで、最下段ステップが上方に退避し、刈取作業中に穀稈や畦に最下段ステップが接触することを防止できる。
また、前記他ステップは、両端部を、前記他ステップの上下寸法より縦長に形成された一対の縦長構造部材にそれぞれ取り付けてあるから、他ステップそのものは、縦長構造部材によって支持された単純梁として機能し、従来の片持ち梁に比べて、ステップ自身に発生する内部応力の低減化を図れる。
更には、縦長構造部材に機体への取付部が設けられているから、他ステップからの荷重を縦長構造部材の長手方向に分散して機体に伝達することができ、機体に対する応力集中を緩和できる。その結果、機体側の大掛かりな補強構造が不要となり、コスト低減を図ることができる。
【0009】
本発明の第2の特徴構成は、前記他ステップは、複数段設けてあり、前記一対の縦長構造部材に、複数段の前記他ステップが上下に間隔をあけた状態にそれぞれ取り付けてあるところにある。
【0010】
本発明の第2の特徴構成によれば、複数段の他ステップを使用して乗降できるから、運転席が高いコンバインであっても、上下のステップ間隔寸法が大きくならず、楽に乗降できる。
【0011】
本発明の第3の特徴構成は、前記他ステップは、乗降荷重を受けるステップ作用状態と、前記ステップ作用状態より上方向へ退避するステップ非作用状態とに切替自在に構成してあるところにある。
【0012】
本発明の第3の特徴構成によれば、前記最下段ステップと同様に、他ステップをステップ作用状態に切り替えることで、最下段ステップと前記他ステップとの複数段の乗降用ステップを使用して、乗員が運転席へ容易に乗降することができる。
また、前記最下段ステップと前記他ステップを前記ステップ非作用状態に切り替えることで、全ステップが上方に退避し、刈取作業中に穀稈や畦に最下段ステップや他ステップが接触することを防止できる。
【0013】
本発明の第4の特徴構成は、前記一対の縦長構造部材に、前記他ステップと最下段ステップとが上下に間隔をあけた状態にそれぞれ取り付けてあるところにある。
【0014】
本発明の第4の特徴構成によれば、最下段ステップも他ステップも、共通した縦長構造部材によって支持されるから、ステップ全体構造をより簡素化でき、部材コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】乗降用ステップの設置状況を示すステップ断面図
【図4】乗降用ステップの設置状況を示すステップ平面図
【図5】乗降用ステップの設置状況を示すステップ正面図
【図6】乗降用ステップの設置状況を示すステップ断面図
【図7】乗降用ステップの設置状況を示す要部斜視図
【図8】別実施形態の乗降用ステップの設置状況を示すステップ正面図
【図9】図8に示す乗降用ステップの設置状況を示すステップ側面図
【図10】図8に示す乗降用ステップの設置状況を示すステップ平面図
【図11】別実施形態の乗降用ステップの設置状況を示すステップ側面図
【図12】図11に示す乗降用ステップの設置状況を示すステップ平面図
【図13】別実施形態の乗降用ステップの設置状況を示すステップ側面図
【図14】別実施形態の乗降用ステップの設置状況を示すステップ側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1、図2は、本発明に係る運転部構造を備えたコンバインの一実施形態を示している。
ここに説明するコンバインは自脱型のもので、左右一対のクローラ式走行装置Aを装備した機体フレームB(機体の一例)の前部に、穀稈を刈り取る刈取部C、作業者が運転する運転部Dを装備するとともに、その機体フレームBの後部に、刈取穀稈を脱穀する脱穀装置E、脱穀した穀粒を貯留するグレンタンクF、貯留した穀粒を排出する排出オーガGを装備して構成してある。
【0018】
(刈取部)
図1、図2に示すように、前記刈取部Cは、穀稈を分草するデバイダ1、穀稈を立姿勢に引き起こす引き起こし装置2、引き起こされた穀稈の株元側を切断するバリカン型の切断装置3、刈取られた穀稈を徐々に横倒れ姿勢に姿勢変更させながら後方に搬送する図示しない縦搬送装置等を備えている。
【0019】
(運転部)
図1、図2に示すように、前記運転部Dは、機体フレームBの前部の右側部に配置されており、フロア5、そのフロア5の後方に位置する座席支持台6、その座席支持台6に設置された運転席7等を備えている。
【0020】
平面視で、フロア5の右側の端部5aから前方に延びる直線L1が刈取部Cにおける右側(運転部D側)のデバイダ1に重なるように、フロア5およびデバイダ1を配置してある(図2参照)。これにより、フロア5の右側の端部5aの延長線上にある右側のデバイダ1の位置を把握し易くなる。フロア5の前部及び機体内側部から前部操縦塔4a及び側部操縦塔4bが立設されている。
【0021】
(座席支持台)
図1〜図3に示すように、前記座席支持台6は、機体フレームBの上側に配置されており、天井部6a、前側壁部6b、後側壁部6c、右側壁部6dを備えている。座席支持台6の天井部6aには、運転席7が設置されている。座席支持台6の内部には、エンジン8およびラジエータ9が収容されている。座席支持台6の右側壁部6dには、ラジエータ9に空気を導入する防塵カバー10が取り付けられている。座席支持台6は、軸芯X1周りに回動可能に構成してある。これにより、座席支持台6を機体外側に回動させて、エンジン8およびラジエータ9のメンテナンスを容易に行い得る。フロア5のステップ面の高さは、エンジン8の上下中間高さよりも高く設定されて、前方の視界性を確保し易いように運転席7が高い位置に配備されている。
【0022】
前記防塵カバー10は、矩形状の上面部10a、矩形状の傾斜面部10b、台形状の前側壁部10c、台形状の後側壁部10d、矩形状の右側壁部10eを備えている。防塵カバー10の右側壁部10eには、防塵網付きの通気窓10fが設けられている。防塵カバー10の右側壁部10eは、フロア5の右側の端部5aや座席支持台6の右側壁部6dよりも所定距離だけ機体外側に突出している。フロア5のステップ面の高さは、防塵カバー10の上下中間部の高さに位置する。
【0023】
(フロア支持台)
図1、図2に示すように、機体フレームBの上側で座席支持台6の前側には、フロア支持台11が配置されている。フロア支持台11は、矩形状の上面部11a(フロア5)、矩形状の前側壁部11c、左側壁部11e、機体横側部12を備えている。
【0024】
(乗降用ステップ)
図3〜図7に示すように、前記フロア5の下方でかつ防塵カバー10の前隣りの機体横側部12には、三段の乗降用ステップ21が、上下に間隔をあけた状態に、取付部22を介して取り付けてある。
【0025】
前記三段の乗降用ステップ21の内、上段に位置する第1ステップ(他ステップの一例)21Aと、中段に位置する第2ステップ(他ステップの一例)21Bとは、その両端部どうしを一対の縦壁部材(縦長構造部材に相当)21Dに各別に連結してある。
【0026】
第1ステップ21Aは、断面形状が下向きコ字状の溝形部材23によって構成してあり、溝形部材23の両端縁部が、前記縦壁部材21Dに固着されている。溝形部材23は、上面側に滑り止め用の突起が設けられた縞板で構成されている。
【0027】
第2ステップ21Bは、一対の帯状の平面部24によって構成してあり、両平面部24は、帯幅方向を縦にした状態で、厚み方向に間隔をあけて並列状態に配置してあり、両端縁部が、前記縦壁部材21Dに固着されている。外側の平面部24の上端には、滑り止め用の複数の凹凸部が形成されている。
因みに、前記縦壁部材21Dは、上辺が、下辺より短く形成してあり、第2ステップ21Bの方が、第1ステップ21Aより機体フレームBの側方に突出する配置に支持できるように構成されている。この構成によって、第1ステップ21Aと第2ステップ21Bとを階段状に配置でき、スムーズな乗降を可能にしている。
また、縦壁部材21Dは、フランジ部f(取付部22の一例)を備えてあり、このフランジ部fを、機体横側部12に着脱自在にボルト固定してある。
従って、前記第1ステップ21Aと第2ステップ21Bとは、単純梁としての被支持形態となり、片持ち梁に比べて、ステップ自身に発生する内部応力の低減化を図れる。
更には、第1ステップ21Aや第2ステップ21Bからの荷重を縦壁部材21Dの長手方向に分散してフランジ部fから機体フレームBに伝達することができ、機体フレームBに対する応力集中を緩和できる。その結果、機体側の大掛かりな補強構造が不要となり、コスト低減を図ることができる。
【0028】
最下段に位置する第3ステップ(最下段ステップに相当)21Cは、乗降荷重を受けるステップ作用状態と、前記ステップ作用状態より上方向へ退避するステップ非作用状態とに切替自在に構成してある。
具体的には、第3ステップ21Cは、図3、図6に示すように、機体横側部12に前後向きの軸芯X2周りに上下揺動自在に取り付けられている。
第3ステップ21Cは、乗員の足を載置する載置部25、その載置部25の両端から斜め上方に突出する状態で固着された2つのアーム部26、機体横側部12に取り付けられてアーム部26を支持する支持部27を備えている。
前記載置部25は、帯状の平面部25a、その平面部25aの両端からその平面部25aに交差する方向に延びる2つの帯状の折曲部25b、それら折曲部25bを連結する帯状の連結部25cを備えている。平面部25a及び折曲部25bの上端には、滑り止め用の複数の凹凸部が形成されている。
前記アーム部26は、四つの隅部のうちの一つの隅部が切り欠かれた短冊状に形成されている。折曲部25bの先端側にアーム部26の一端側(アーム部26の切欠部26bの非存在側)を固着してある。アーム部26の他端側(アーム部26の切欠部26bの存在側)には、切欠部26bに沿って長孔26aが形成されている。
前記支持部27は、機体フレームBに固着されて機体横側に突出する断面形状が略L字状の支持部分27a、その支持部分27aから機体後側に延びる矩形状の当接部分27bを備えている。支持部分27aには、ピン28が固着されている。ピン28がアーム部26の長孔26aを貫通している。
この前記ピン28とアーム部26とによって、第3ステップ21Cを軸芯X2周りに上下揺動することができ、これらを含めて上下揺動機構Yという。
【0029】
(乗降用ステップの動作)
図6(b)に示すように、第3ステップ21Cが機体横側部12の側に折り畳んだ格納姿勢のときには、ピン28がアーム部26の長孔26aの一端(図6(b)の紙面上端)に当接し、アーム部26の切欠部26bが機体フレームBに当接して、下側の第3ステップ21Cは格納姿勢を維持する。この状態をステップ非作用状態という。
【0030】
第3ステップ21Cが格納姿勢のときにおいて、図3の2点鎖線に示すように、第3ステップ21Cは、第1ステップ21Aと第2ステップ21Bとの下方に入り込み、平面視で載置部25の平面部25aの全部が防塵カバー10の右側壁部10eよりも機体内側に位置し、かつ正面視で載置部25の平面部25aの一部が防塵カバー10の傾斜面部10bよりも機体内側に位置する。よって、第3ステップ21Cが穀稈や畦等に接触することを防止できる。
【0031】
格納姿勢の第3ステップ21Cを持ち上げると、ピン28がアーム部26の長孔26aの他端(図6(b)の紙面下端)に当接する。このとき、図6(a)に示すように、第3ステップ21Cが機体外側に回動し、載置部25の折曲部25bの端面29が支持部27の当接部分27bに当接してそれ以上の回動を阻止する。よって、第3ステップ21Cが機体横側部12から機体外側に突出する使用姿勢(ステップ作用状態)になる。このように、第3ステップ21Cを持ち上げるだけの操作(ワンタッチ操作)で、第3ステップ21Cを格納姿勢(ステップ非作用状態)から使用姿勢(ステップ作用状態)にすることができる。
【0032】
使用姿勢の第3ステップ21Cを機体内側に回動すると、ピン28がアーム部26の長孔26aの一端に当接し、アーム部26の切欠部26bが機体フレームBに当接して、使用姿勢の第3ステップ21Cが格納姿勢に戻る。このように、第3ステップ21Cを機体内側に回動するだけの操作(ワンタッチ操作)で、第3ステップ21Cを格納姿勢から使用姿勢にすることができる。
【0033】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0034】
〈1〉 上記実施形態では、運転部Dが機体フレームBの前部の右側部に配置される構成を例示したが、このような構成に代えて、運転部Dが機体フレームBの前部の左側部に配置される構成としてもよい。
【0035】
〈2〉 前記乗降用ステップ21は、先の実施形態で説明した上下3段の乗降用ステップで構成されるものに限るものではなく、例えば、最上段と最下段とだけの2段の乗降用ステップで構成してあるものや、上下中間に複数段の乗降用ステップを備えた4段以上の乗降用ステップで構成してあるものであってもよい。
【0036】
〈3〉 前記他ステップ21A、21Bは、先の実施形態で説明したように、乗降荷重を受けるステップ作用状態のまま固定されたものに限るものではなく、例えば、図9、図11、図13に示すように、ステップ作用状態より上方へ退避するステップ非作用状態に切替自在に構成されていてもよい。
【0037】
図8〜10に示すものは、縦壁部材21Dのフランジfとスライド自在に嵌合する嵌合溝30aを備えた前後一対のレール部材30が、機体横側部12に取り付けてあり、両縦壁部材21Dと他ステップ21A、21Bとから構成される一体部品31を、前記嵌合溝30aに沿って、上下にスライド自在に構成してある。また、レール部材30には、前記一体部品31を上限位置、下限位置で固定するためのピンPが備えてある一方、前記縦壁部材21Dには、前記ピンPが係合自在な係合穴32が、上下端部に各別に設けてある。
【0038】
このコンバインの運転部構造によれば、前記一体部品31を下限位置に配置した状態で、ピンPを縦壁部材21Dの上端部の係合穴32に挿入して係合することで、前記ステップ作用状態にできる一方、ピンPを係合穴32から引き抜いて係合解除した状態で、前記一体部品31を引き上げて上限位置に配置して再度、ピンPで固定することで、前記ステップ非作用状態に簡単に切り替えることができる。前記レール部材30の嵌合溝30aと、縦壁部材21Dのフランジfとで上下スライド機構が構成されている。
尚、最下段ステップ21Cは、先の実施形態と同様に、前記一体部品31と別に、機体横側部12に上下揺動自在に取り付けてある。
【0039】
図11、図12に示すものは、縦壁部材21Dの上下スライド機構が、嵌合溝30aとフランジfとの構成に替えて、機体横側部12に固定されたピン33と、ピン33に対応させて両縦壁部材21Dに形成された『J』文字形状の長穴34とで構成してある。
前記ピン33が、長穴34内の上端部に位置する状態においては、前記一体部品31は前記ステップ作用状態になる。また、前記一体部品31を上方に引き上げて、ピン33が、長穴34内の他方の端部に位置させると、図に示すように、前記一体部品31が、若干外側に傾斜した状態のまま安定し、前記ステップ非作用状態に切り替えることができる。
また、この実施形態の前記一体部品31においては、一対の縦壁部材21Dに前記他ステップ21A、21Bのみならず、最下段ステップ21Cも、固着されている。
尚、一方の縦壁部材21Dには、図12に示すように、帯板を「く」字形状に屈曲形成した枠部31aを、外面の下端部で横方向に突出する状態に固着してある。また、前記一体部品31が下方位置にある前記ステップ作用状態において、前記枠部31aの屈曲角部分が外嵌する縦ピン12aが、機体横側部12から突出する状態に設けてある。この枠部31aと縦ピン12aとの嵌合によって、前記ステップ作用状態での、前記一体部品31の下部の位置決めができ、振れ防止を図ることができる。
【0040】
図13に示すものは、前後の縦長構造部材21Dが、縦壁部材に替えてリンク構造で構成されたものを例に示している。図13に示すように、縦長の板状部材35が複数のリンク部材35Aを介して機体横側部12に取り付けられた取付部22にリンク接続されている。最も下側の前後のリンク部材35Aに亘って縦平板状の一対の平面部25を固定することで最下段ステップ21Cが構成され、下から2番目の前後のリンク部材35Aに亘って縦平板状の一対の平面部24を固定することで他ステップ21Bが構成されている。他ステップ21Aは、前後の板状部材35の上端部どうしに亘って連結されている。板状部材35の上部には、内側に延出された下限規制部材35Bが設けられており、取付部22の上端部には乗降用ステップ21のステップ作用状態において下限規制部材35Bを接当支持する接当部材22Aが設けられている。
これにより、下限揺動位置まで揺動させることでステップ作用状態に切り替えることができる。この例によれば、乗降用ステップ21のステップ作用状態とステップ非作用状態との切り替えは、リンク部材35Aの各枢支連結部からなる上下揺動機構によって叶えられている。
尚、図13に示す上下揺動機構の変形例としては、例えば、各乗降用ステップ21の揺動先端部どうしを連結している板状部材35の無い構成にして、各乗降用ステップ21を個別に上下揺動操作できるように形成するものであってもよい。この場合、各乗降用ステップ21の揺動下限位置で揺動を阻止するストッパをそれぞれのステップに設ける必要がある。
【0041】
図14に示すものは、上下揺動機構を、機体横側部12に固着され、他ステップ21A、21Bが固着された一対の縦壁部材21Dと、最下段ステップ21Cが固着された一対の下縦壁部材36とを、上下揺動自在に連結する枢支連結部37によって接続して構成してある例を示している。この例によれば、下縦壁部材36には、下端部に切欠き36a、上端部に長穴36bが形成してあり、縦壁部材21Dには、前記長穴36bに嵌入して、前記下縦壁部材36の上下揺動を許容するピン38と、縦壁部材21Dを上方へ揺動させたまま長穴36bに沿って下降させた位置で戻り防止を図るガイドピン39とが設けてある。一方、機体横側部12には、前記下縦壁部材36の下降位置において前記切欠き36aに係合して最下段ステップ21Cをステップ作用状態にロックするロックピン40が設けられている。
また、図14に示す上下揺動機構の変形例としては、例えば、縦壁部材21Dと下縦壁部材36とを一枚の板材で一体化し、それら一体部品の全体を、機体横側部12に枢支連結部を介して取り付けて、上下揺動自在に構成するものであってもよい。
【0042】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
当該運転部構造を備えたコンバインは、自脱型である構成に限るものではなく、普通型であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
7 運転席
21 乗降用ステップ
21A 第1ステップ(他ステップの一例)
21B 第2ステップ(他ステップの一例)
21C 第3ステップ(最下段ステップに相当)
21D 縦壁部材(縦長構造部材に相当)
22 取付部
B 機体フレーム(機体の一例)
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの運転席への乗降用ステップの複数が、上下に間隔をあけた状態でコンバインの機体に取り付けてあるコンバインの運転部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンバインの運転部構造としては、乗員が運転席に乗降するために、運転席のフロアの下方の機体横側部に乗降用ステップを設けることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
運転部が高い位置となるときには、乗降用ステップを上下方向に複数個設けることがある。このとき、各乗降用ステップの機体横側部からの突出量を大きくすると、乗員が足を乗降用ステップに掛け易くなり、乗員が運転部に容易に乗降することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3615945号公報(図2,図3を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のコンバインの運転部構造によれば、乗降用ステップは、機体から突出する片持ち梁として荷重を支持することになるから、基端部に作用する曲げモーメントが大きくなる。従って、乗降用ステップそのものを高強度に形成する必要があると共に、乗降用ステップが取り付く機体部分の高強度化も必要となる。具体的には、例えば、機体の表面板の裏面側に、補強用のフレーム等を設置しておき、フレームと表面板とで乗降用ステップに作用する荷重を支持できるようにすることになる。従って、機体側の補強構造が大掛かりとなりコストアップにつながり易い問題点がある。
また、機体外側に突出する乗降用ステップが、刈取作業中に穀稈に接触することがあり、穀稈が乗降用ステップに絡みつくことがある。また、畦際での刈取作業中に乗降用ステップが畦に接触して、乗降用ステップが損傷することがある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、乗員が運転部に容易に乗降することができながらも、刈取作業中に乗降用ステップが穀稈や畦等に接触する等の障害が生じ難いコンバインの運転部構造を経済的に提供できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴構成は、コンバインの運転席への乗降用ステップの複数が、上下に間隔をあけた状態でコンバインの機体に取り付けてあるコンバインの運転部構造であって、前記複数段の乗降用ステップの内、最下段に位置する最下段ステップは、乗降荷重を受けるステップ作用状態と、前記ステップ作用状態より上方向へ退避するステップ非作用状態とに切替自在に構成してあり、前記最下段ステップ以外の他ステップは、その両端部を、前記他ステップの上下寸法より縦長に形成された一対の縦長構造部材にそれぞれ取り付けてあり、前記一対の縦長構造部材に、機体への取付部が設けられているところにある。
【0008】
本発明の第1の特徴構成によれば、最下段ステップをステップ作用状態に切り替えることで、最下段ステップと前記他ステップとの複数段の乗降用ステップを使用して、乗員が運転席へ容易に乗降することができる。
また、前記最下段ステップを前記ステップ非作用状態に切り替えることで、最下段ステップが上方に退避し、刈取作業中に穀稈や畦に最下段ステップが接触することを防止できる。
また、前記他ステップは、両端部を、前記他ステップの上下寸法より縦長に形成された一対の縦長構造部材にそれぞれ取り付けてあるから、他ステップそのものは、縦長構造部材によって支持された単純梁として機能し、従来の片持ち梁に比べて、ステップ自身に発生する内部応力の低減化を図れる。
更には、縦長構造部材に機体への取付部が設けられているから、他ステップからの荷重を縦長構造部材の長手方向に分散して機体に伝達することができ、機体に対する応力集中を緩和できる。その結果、機体側の大掛かりな補強構造が不要となり、コスト低減を図ることができる。
【0009】
本発明の第2の特徴構成は、前記他ステップは、複数段設けてあり、前記一対の縦長構造部材に、複数段の前記他ステップが上下に間隔をあけた状態にそれぞれ取り付けてあるところにある。
【0010】
本発明の第2の特徴構成によれば、複数段の他ステップを使用して乗降できるから、運転席が高いコンバインであっても、上下のステップ間隔寸法が大きくならず、楽に乗降できる。
【0011】
本発明の第3の特徴構成は、前記他ステップは、乗降荷重を受けるステップ作用状態と、前記ステップ作用状態より上方向へ退避するステップ非作用状態とに切替自在に構成してあるところにある。
【0012】
本発明の第3の特徴構成によれば、前記最下段ステップと同様に、他ステップをステップ作用状態に切り替えることで、最下段ステップと前記他ステップとの複数段の乗降用ステップを使用して、乗員が運転席へ容易に乗降することができる。
また、前記最下段ステップと前記他ステップを前記ステップ非作用状態に切り替えることで、全ステップが上方に退避し、刈取作業中に穀稈や畦に最下段ステップや他ステップが接触することを防止できる。
【0013】
本発明の第4の特徴構成は、前記一対の縦長構造部材に、前記他ステップと最下段ステップとが上下に間隔をあけた状態にそれぞれ取り付けてあるところにある。
【0014】
本発明の第4の特徴構成によれば、最下段ステップも他ステップも、共通した縦長構造部材によって支持されるから、ステップ全体構造をより簡素化でき、部材コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】乗降用ステップの設置状況を示すステップ断面図
【図4】乗降用ステップの設置状況を示すステップ平面図
【図5】乗降用ステップの設置状況を示すステップ正面図
【図6】乗降用ステップの設置状況を示すステップ断面図
【図7】乗降用ステップの設置状況を示す要部斜視図
【図8】別実施形態の乗降用ステップの設置状況を示すステップ正面図
【図9】図8に示す乗降用ステップの設置状況を示すステップ側面図
【図10】図8に示す乗降用ステップの設置状況を示すステップ平面図
【図11】別実施形態の乗降用ステップの設置状況を示すステップ側面図
【図12】図11に示す乗降用ステップの設置状況を示すステップ平面図
【図13】別実施形態の乗降用ステップの設置状況を示すステップ側面図
【図14】別実施形態の乗降用ステップの設置状況を示すステップ側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1、図2は、本発明に係る運転部構造を備えたコンバインの一実施形態を示している。
ここに説明するコンバインは自脱型のもので、左右一対のクローラ式走行装置Aを装備した機体フレームB(機体の一例)の前部に、穀稈を刈り取る刈取部C、作業者が運転する運転部Dを装備するとともに、その機体フレームBの後部に、刈取穀稈を脱穀する脱穀装置E、脱穀した穀粒を貯留するグレンタンクF、貯留した穀粒を排出する排出オーガGを装備して構成してある。
【0018】
(刈取部)
図1、図2に示すように、前記刈取部Cは、穀稈を分草するデバイダ1、穀稈を立姿勢に引き起こす引き起こし装置2、引き起こされた穀稈の株元側を切断するバリカン型の切断装置3、刈取られた穀稈を徐々に横倒れ姿勢に姿勢変更させながら後方に搬送する図示しない縦搬送装置等を備えている。
【0019】
(運転部)
図1、図2に示すように、前記運転部Dは、機体フレームBの前部の右側部に配置されており、フロア5、そのフロア5の後方に位置する座席支持台6、その座席支持台6に設置された運転席7等を備えている。
【0020】
平面視で、フロア5の右側の端部5aから前方に延びる直線L1が刈取部Cにおける右側(運転部D側)のデバイダ1に重なるように、フロア5およびデバイダ1を配置してある(図2参照)。これにより、フロア5の右側の端部5aの延長線上にある右側のデバイダ1の位置を把握し易くなる。フロア5の前部及び機体内側部から前部操縦塔4a及び側部操縦塔4bが立設されている。
【0021】
(座席支持台)
図1〜図3に示すように、前記座席支持台6は、機体フレームBの上側に配置されており、天井部6a、前側壁部6b、後側壁部6c、右側壁部6dを備えている。座席支持台6の天井部6aには、運転席7が設置されている。座席支持台6の内部には、エンジン8およびラジエータ9が収容されている。座席支持台6の右側壁部6dには、ラジエータ9に空気を導入する防塵カバー10が取り付けられている。座席支持台6は、軸芯X1周りに回動可能に構成してある。これにより、座席支持台6を機体外側に回動させて、エンジン8およびラジエータ9のメンテナンスを容易に行い得る。フロア5のステップ面の高さは、エンジン8の上下中間高さよりも高く設定されて、前方の視界性を確保し易いように運転席7が高い位置に配備されている。
【0022】
前記防塵カバー10は、矩形状の上面部10a、矩形状の傾斜面部10b、台形状の前側壁部10c、台形状の後側壁部10d、矩形状の右側壁部10eを備えている。防塵カバー10の右側壁部10eには、防塵網付きの通気窓10fが設けられている。防塵カバー10の右側壁部10eは、フロア5の右側の端部5aや座席支持台6の右側壁部6dよりも所定距離だけ機体外側に突出している。フロア5のステップ面の高さは、防塵カバー10の上下中間部の高さに位置する。
【0023】
(フロア支持台)
図1、図2に示すように、機体フレームBの上側で座席支持台6の前側には、フロア支持台11が配置されている。フロア支持台11は、矩形状の上面部11a(フロア5)、矩形状の前側壁部11c、左側壁部11e、機体横側部12を備えている。
【0024】
(乗降用ステップ)
図3〜図7に示すように、前記フロア5の下方でかつ防塵カバー10の前隣りの機体横側部12には、三段の乗降用ステップ21が、上下に間隔をあけた状態に、取付部22を介して取り付けてある。
【0025】
前記三段の乗降用ステップ21の内、上段に位置する第1ステップ(他ステップの一例)21Aと、中段に位置する第2ステップ(他ステップの一例)21Bとは、その両端部どうしを一対の縦壁部材(縦長構造部材に相当)21Dに各別に連結してある。
【0026】
第1ステップ21Aは、断面形状が下向きコ字状の溝形部材23によって構成してあり、溝形部材23の両端縁部が、前記縦壁部材21Dに固着されている。溝形部材23は、上面側に滑り止め用の突起が設けられた縞板で構成されている。
【0027】
第2ステップ21Bは、一対の帯状の平面部24によって構成してあり、両平面部24は、帯幅方向を縦にした状態で、厚み方向に間隔をあけて並列状態に配置してあり、両端縁部が、前記縦壁部材21Dに固着されている。外側の平面部24の上端には、滑り止め用の複数の凹凸部が形成されている。
因みに、前記縦壁部材21Dは、上辺が、下辺より短く形成してあり、第2ステップ21Bの方が、第1ステップ21Aより機体フレームBの側方に突出する配置に支持できるように構成されている。この構成によって、第1ステップ21Aと第2ステップ21Bとを階段状に配置でき、スムーズな乗降を可能にしている。
また、縦壁部材21Dは、フランジ部f(取付部22の一例)を備えてあり、このフランジ部fを、機体横側部12に着脱自在にボルト固定してある。
従って、前記第1ステップ21Aと第2ステップ21Bとは、単純梁としての被支持形態となり、片持ち梁に比べて、ステップ自身に発生する内部応力の低減化を図れる。
更には、第1ステップ21Aや第2ステップ21Bからの荷重を縦壁部材21Dの長手方向に分散してフランジ部fから機体フレームBに伝達することができ、機体フレームBに対する応力集中を緩和できる。その結果、機体側の大掛かりな補強構造が不要となり、コスト低減を図ることができる。
【0028】
最下段に位置する第3ステップ(最下段ステップに相当)21Cは、乗降荷重を受けるステップ作用状態と、前記ステップ作用状態より上方向へ退避するステップ非作用状態とに切替自在に構成してある。
具体的には、第3ステップ21Cは、図3、図6に示すように、機体横側部12に前後向きの軸芯X2周りに上下揺動自在に取り付けられている。
第3ステップ21Cは、乗員の足を載置する載置部25、その載置部25の両端から斜め上方に突出する状態で固着された2つのアーム部26、機体横側部12に取り付けられてアーム部26を支持する支持部27を備えている。
前記載置部25は、帯状の平面部25a、その平面部25aの両端からその平面部25aに交差する方向に延びる2つの帯状の折曲部25b、それら折曲部25bを連結する帯状の連結部25cを備えている。平面部25a及び折曲部25bの上端には、滑り止め用の複数の凹凸部が形成されている。
前記アーム部26は、四つの隅部のうちの一つの隅部が切り欠かれた短冊状に形成されている。折曲部25bの先端側にアーム部26の一端側(アーム部26の切欠部26bの非存在側)を固着してある。アーム部26の他端側(アーム部26の切欠部26bの存在側)には、切欠部26bに沿って長孔26aが形成されている。
前記支持部27は、機体フレームBに固着されて機体横側に突出する断面形状が略L字状の支持部分27a、その支持部分27aから機体後側に延びる矩形状の当接部分27bを備えている。支持部分27aには、ピン28が固着されている。ピン28がアーム部26の長孔26aを貫通している。
この前記ピン28とアーム部26とによって、第3ステップ21Cを軸芯X2周りに上下揺動することができ、これらを含めて上下揺動機構Yという。
【0029】
(乗降用ステップの動作)
図6(b)に示すように、第3ステップ21Cが機体横側部12の側に折り畳んだ格納姿勢のときには、ピン28がアーム部26の長孔26aの一端(図6(b)の紙面上端)に当接し、アーム部26の切欠部26bが機体フレームBに当接して、下側の第3ステップ21Cは格納姿勢を維持する。この状態をステップ非作用状態という。
【0030】
第3ステップ21Cが格納姿勢のときにおいて、図3の2点鎖線に示すように、第3ステップ21Cは、第1ステップ21Aと第2ステップ21Bとの下方に入り込み、平面視で載置部25の平面部25aの全部が防塵カバー10の右側壁部10eよりも機体内側に位置し、かつ正面視で載置部25の平面部25aの一部が防塵カバー10の傾斜面部10bよりも機体内側に位置する。よって、第3ステップ21Cが穀稈や畦等に接触することを防止できる。
【0031】
格納姿勢の第3ステップ21Cを持ち上げると、ピン28がアーム部26の長孔26aの他端(図6(b)の紙面下端)に当接する。このとき、図6(a)に示すように、第3ステップ21Cが機体外側に回動し、載置部25の折曲部25bの端面29が支持部27の当接部分27bに当接してそれ以上の回動を阻止する。よって、第3ステップ21Cが機体横側部12から機体外側に突出する使用姿勢(ステップ作用状態)になる。このように、第3ステップ21Cを持ち上げるだけの操作(ワンタッチ操作)で、第3ステップ21Cを格納姿勢(ステップ非作用状態)から使用姿勢(ステップ作用状態)にすることができる。
【0032】
使用姿勢の第3ステップ21Cを機体内側に回動すると、ピン28がアーム部26の長孔26aの一端に当接し、アーム部26の切欠部26bが機体フレームBに当接して、使用姿勢の第3ステップ21Cが格納姿勢に戻る。このように、第3ステップ21Cを機体内側に回動するだけの操作(ワンタッチ操作)で、第3ステップ21Cを格納姿勢から使用姿勢にすることができる。
【0033】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0034】
〈1〉 上記実施形態では、運転部Dが機体フレームBの前部の右側部に配置される構成を例示したが、このような構成に代えて、運転部Dが機体フレームBの前部の左側部に配置される構成としてもよい。
【0035】
〈2〉 前記乗降用ステップ21は、先の実施形態で説明した上下3段の乗降用ステップで構成されるものに限るものではなく、例えば、最上段と最下段とだけの2段の乗降用ステップで構成してあるものや、上下中間に複数段の乗降用ステップを備えた4段以上の乗降用ステップで構成してあるものであってもよい。
【0036】
〈3〉 前記他ステップ21A、21Bは、先の実施形態で説明したように、乗降荷重を受けるステップ作用状態のまま固定されたものに限るものではなく、例えば、図9、図11、図13に示すように、ステップ作用状態より上方へ退避するステップ非作用状態に切替自在に構成されていてもよい。
【0037】
図8〜10に示すものは、縦壁部材21Dのフランジfとスライド自在に嵌合する嵌合溝30aを備えた前後一対のレール部材30が、機体横側部12に取り付けてあり、両縦壁部材21Dと他ステップ21A、21Bとから構成される一体部品31を、前記嵌合溝30aに沿って、上下にスライド自在に構成してある。また、レール部材30には、前記一体部品31を上限位置、下限位置で固定するためのピンPが備えてある一方、前記縦壁部材21Dには、前記ピンPが係合自在な係合穴32が、上下端部に各別に設けてある。
【0038】
このコンバインの運転部構造によれば、前記一体部品31を下限位置に配置した状態で、ピンPを縦壁部材21Dの上端部の係合穴32に挿入して係合することで、前記ステップ作用状態にできる一方、ピンPを係合穴32から引き抜いて係合解除した状態で、前記一体部品31を引き上げて上限位置に配置して再度、ピンPで固定することで、前記ステップ非作用状態に簡単に切り替えることができる。前記レール部材30の嵌合溝30aと、縦壁部材21Dのフランジfとで上下スライド機構が構成されている。
尚、最下段ステップ21Cは、先の実施形態と同様に、前記一体部品31と別に、機体横側部12に上下揺動自在に取り付けてある。
【0039】
図11、図12に示すものは、縦壁部材21Dの上下スライド機構が、嵌合溝30aとフランジfとの構成に替えて、機体横側部12に固定されたピン33と、ピン33に対応させて両縦壁部材21Dに形成された『J』文字形状の長穴34とで構成してある。
前記ピン33が、長穴34内の上端部に位置する状態においては、前記一体部品31は前記ステップ作用状態になる。また、前記一体部品31を上方に引き上げて、ピン33が、長穴34内の他方の端部に位置させると、図に示すように、前記一体部品31が、若干外側に傾斜した状態のまま安定し、前記ステップ非作用状態に切り替えることができる。
また、この実施形態の前記一体部品31においては、一対の縦壁部材21Dに前記他ステップ21A、21Bのみならず、最下段ステップ21Cも、固着されている。
尚、一方の縦壁部材21Dには、図12に示すように、帯板を「く」字形状に屈曲形成した枠部31aを、外面の下端部で横方向に突出する状態に固着してある。また、前記一体部品31が下方位置にある前記ステップ作用状態において、前記枠部31aの屈曲角部分が外嵌する縦ピン12aが、機体横側部12から突出する状態に設けてある。この枠部31aと縦ピン12aとの嵌合によって、前記ステップ作用状態での、前記一体部品31の下部の位置決めができ、振れ防止を図ることができる。
【0040】
図13に示すものは、前後の縦長構造部材21Dが、縦壁部材に替えてリンク構造で構成されたものを例に示している。図13に示すように、縦長の板状部材35が複数のリンク部材35Aを介して機体横側部12に取り付けられた取付部22にリンク接続されている。最も下側の前後のリンク部材35Aに亘って縦平板状の一対の平面部25を固定することで最下段ステップ21Cが構成され、下から2番目の前後のリンク部材35Aに亘って縦平板状の一対の平面部24を固定することで他ステップ21Bが構成されている。他ステップ21Aは、前後の板状部材35の上端部どうしに亘って連結されている。板状部材35の上部には、内側に延出された下限規制部材35Bが設けられており、取付部22の上端部には乗降用ステップ21のステップ作用状態において下限規制部材35Bを接当支持する接当部材22Aが設けられている。
これにより、下限揺動位置まで揺動させることでステップ作用状態に切り替えることができる。この例によれば、乗降用ステップ21のステップ作用状態とステップ非作用状態との切り替えは、リンク部材35Aの各枢支連結部からなる上下揺動機構によって叶えられている。
尚、図13に示す上下揺動機構の変形例としては、例えば、各乗降用ステップ21の揺動先端部どうしを連結している板状部材35の無い構成にして、各乗降用ステップ21を個別に上下揺動操作できるように形成するものであってもよい。この場合、各乗降用ステップ21の揺動下限位置で揺動を阻止するストッパをそれぞれのステップに設ける必要がある。
【0041】
図14に示すものは、上下揺動機構を、機体横側部12に固着され、他ステップ21A、21Bが固着された一対の縦壁部材21Dと、最下段ステップ21Cが固着された一対の下縦壁部材36とを、上下揺動自在に連結する枢支連結部37によって接続して構成してある例を示している。この例によれば、下縦壁部材36には、下端部に切欠き36a、上端部に長穴36bが形成してあり、縦壁部材21Dには、前記長穴36bに嵌入して、前記下縦壁部材36の上下揺動を許容するピン38と、縦壁部材21Dを上方へ揺動させたまま長穴36bに沿って下降させた位置で戻り防止を図るガイドピン39とが設けてある。一方、機体横側部12には、前記下縦壁部材36の下降位置において前記切欠き36aに係合して最下段ステップ21Cをステップ作用状態にロックするロックピン40が設けられている。
また、図14に示す上下揺動機構の変形例としては、例えば、縦壁部材21Dと下縦壁部材36とを一枚の板材で一体化し、それら一体部品の全体を、機体横側部12に枢支連結部を介して取り付けて、上下揺動自在に構成するものであってもよい。
【0042】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
当該運転部構造を備えたコンバインは、自脱型である構成に限るものではなく、普通型であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
7 運転席
21 乗降用ステップ
21A 第1ステップ(他ステップの一例)
21B 第2ステップ(他ステップの一例)
21C 第3ステップ(最下段ステップに相当)
21D 縦壁部材(縦長構造部材に相当)
22 取付部
B 機体フレーム(機体の一例)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバインの運転席への乗降用ステップの複数が、上下に間隔をあけた状態でコンバインの機体に取り付けてあるコンバインの運転部構造であって、
前記複数段の乗降用ステップの内、最下段に位置する最下段ステップは、乗降荷重を受けるステップ作用状態と、前記ステップ作用状態より上方向へ退避するステップ非作用状態とに切替自在に構成してあり、
前記最下段ステップ以外の他ステップは、その両端部を、前記他ステップの上下寸法より縦長に形成された一対の縦長構造部材にそれぞれ取り付けてあり、
前記一対の縦長構造部材に、機体への取付部が設けられているコンバインの運転部構造。
【請求項2】
前記他ステップは、複数段設けてあり、
前記一対の縦長構造部材に、複数段の前記他ステップが上下に間隔をあけた状態にそれぞれ取り付けてある請求項1に記載のコンバインの運転部構造。
【請求項3】
前記他ステップは、乗降荷重を受けるステップ作用状態と、前記ステップ作用状態より上方向へ退避するステップ非作用状態とに切替自在に構成してある請求項1又は2に記載のコンバインの運転部構造。
【請求項4】
前記一対の縦長構造部材に、前記他ステップと最下段ステップとが上下に間隔をあけた状態にそれぞれ取り付けてある請求項1〜3の何れか一項に記載のコンバインの運転部構造。
【請求項1】
コンバインの運転席への乗降用ステップの複数が、上下に間隔をあけた状態でコンバインの機体に取り付けてあるコンバインの運転部構造であって、
前記複数段の乗降用ステップの内、最下段に位置する最下段ステップは、乗降荷重を受けるステップ作用状態と、前記ステップ作用状態より上方向へ退避するステップ非作用状態とに切替自在に構成してあり、
前記最下段ステップ以外の他ステップは、その両端部を、前記他ステップの上下寸法より縦長に形成された一対の縦長構造部材にそれぞれ取り付けてあり、
前記一対の縦長構造部材に、機体への取付部が設けられているコンバインの運転部構造。
【請求項2】
前記他ステップは、複数段設けてあり、
前記一対の縦長構造部材に、複数段の前記他ステップが上下に間隔をあけた状態にそれぞれ取り付けてある請求項1に記載のコンバインの運転部構造。
【請求項3】
前記他ステップは、乗降荷重を受けるステップ作用状態と、前記ステップ作用状態より上方向へ退避するステップ非作用状態とに切替自在に構成してある請求項1又は2に記載のコンバインの運転部構造。
【請求項4】
前記一対の縦長構造部材に、前記他ステップと最下段ステップとが上下に間隔をあけた状態にそれぞれ取り付けてある請求項1〜3の何れか一項に記載のコンバインの運転部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−244774(P2011−244774A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123395(P2010−123395)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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