説明

コンバイン

【課題】 排稈搬送装置の一側方に、前方上方を支点として上下揺動自在な株元カバーを備えるコンバインにおいて、株元カバーの下側に下草が滞積する不都合を防止する。
【解決手段】 脱穀フィードチェンから受け継いだ排稈を後処理部まで搬送する排稈搬送装置9の一側方に、前方上方を支点として上下揺動自在な株元カバー12を設け、非脱穀作業時には、排稈搬送装置9の一側方を株元カバー12で覆う一方、脱穀作業時には、排稈株元部との接触で株元カバー12を上方に退避揺動させるにあたり、脱穀作業時においては、株元カバー12を選択的に上方退避位置に保持できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、排稈搬送装置の一側方に株元カバーを配設したコンバインの技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、この種コンバインにおいては、脱穀搬送装置から受け継いだ排稈を後処理部まで搬送する排稈搬送装置の一側方(排稈受入れ口)に、前方上方を支点として上下揺動自在な株元カバーを設け、非脱穀作業時には、排稈搬送装置の一側方を株元カバーで覆う一方、脱穀作業時には、排稈株元部との接触で株元カバーを上方に退避揺動させるものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、この様なものでは、搬送中に排稈から分離した下草が株元カバーと排稈ガイド棒との間に挟まって滞積する場合があるため、搬送中の排稈が滞積した下草に接触して姿勢を乱す可能性がある許りでなく、滞積した下草が脱穀搬送装置終端部の排稈詰りセンサを誤作動させる可能性があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、脱穀搬送装置から受け継いだ排稈を後処理部まで搬送する排稈搬送装置の一側方に、前方上方を支点として上下揺動自在な株元カバーを設け、非脱穀作業時には、排稈搬送装置の一側方を株元カバーで覆う一方、脱穀作業時には、排稈株元部との接触で株元カバーを上方に退避揺動させるコンバインであって、該コンバインに、株元カバーを上方退避位置に保持する上方退避保持手段を設けたことを特徴とするものである。つまり、脱穀作業時に株元カバーを上方退避位置に保持しておけば、株元カバーと排稈ガイド棒との間に下草が滞積することを防止できるため、搬送中の排稈が滞積した下草に接触して姿勢を乱したり、滞積した下草が脱穀搬送装置終端部の排稈詰りセンサを誤作動させる不都合を解消することができる。また、株元カバーの上方への退避揺動を補助する退避補助用弾機を設けると共に、該退避補助用弾機の一端部が係合される弾機係合部を株元カバーに形成するにあたり、弾機係合部を上下に所定間隔を存して一対形成し、下側の弾機係合部に対する退避補助用弾機の掛け替え操作に基づいて株元カバーを上方退避位置に保持することを特徴とするものである。つまり、退避補助用弾機の掛け替え操作のみで株元カバーを上方退避位置に保持することができるため、専用の保持機構を不要にして部品点数の削減や構造の簡略化を計ることができる。また、退避補助用弾機の一端部にフック部を形成する一方、株元カバー側にフック部が選択的に係合される上下一対の弾機係合孔を形成するにあたり、該弾機係合孔に、フック部の折返し方向に沿い、かつ折返し長さよりも長い弾機係脱用の長孔もしくは切欠きを連通状に形成したことを特徴とするものである。つまり、退避補助用弾機の掛け替え操作を容易にすることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態の一つを図面に基づいて説明する。図面において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈取る前処理部2、刈り取った茎稈から穀粒を脱穀し、かつ脱穀した穀粒を選別する脱穀部3、選別済みの穀粒が貯溜される穀粒タンク4、脱穀済みの排稈を排出処理する後処理部5、機体底部に設けられるクローラ走行部6、各種の操作具が配設される操作部7等で構成されるが、これらの基本構成は何れも従来通りである。
【0006】前記脱穀部3の左側部には、図示しない脱穀フィードチェンが前後方向を向いて配設されており、この脱穀フィードチェンは、前処理部2から横向き姿勢(左右方向)の茎稈を受け継ぐと共に、受け継いだ茎稈の株元部を挟扼レール8との間で挟持しながら後方に搬送し、その搬送経路において茎稈の脱穀処理が行われるようになっている。
【0007】9は機体後部に配設される排稈搬送装置であって、該排稈搬送装置9は、脱穀フィードチェンの終端部まで搬送された排稈の株元部を排稈レール(図示せず)との間で挟持搬送する排稈フィードチェン10と、排稈の穂先側を搬送する穂先搬送チェン(図示せず)とを並列配置して構成されるものであるが、機体の左側端部で脱穀フィードチェンから受け継いだ排稈を後処理部5の左右中間位置に供給すべく、平面視において傾斜状(搬送終端側ほど機体中心寄り)に配置されている。
【0008】11は前記排稈搬送装置9を覆う開閉自在な排稈カバーであって、該排稈カバー11を閉鎖した状態では、排稈搬送装置9の上方、下方、前方、後方および右側方が排稈カバー11等で覆われることになるが、排稈搬送装置9の左側方には、脱穀フィードチェンから排稈を受け入れるための排稈受入れ口が確保されている。
【0009】12は前記受入れ口に設けられる樹脂製の株元カバーであって、該株元カバー12の前方上方位置は、排稈カバー11の左側前端部に左右を向く支軸13を介して上下揺動自在に支持されている。つまり、株元カバー12は、非脱穀作業時には前記排稈受入れ口を覆う一方、脱穀作業時には排稈の株元部に接触して上方に退避揺動するように構成されている。
【0010】12aは前記株元カバー12の前後中間位置に内側方に向けて一体突出形成される複数の凸部であって、該凸部12aは、上下方向に所定間隔を存して複数形成されており、その先端部には、金属製の逃げ規制プレート14が上下方向を向いて一体的にビス止めされている。
【0011】15は前記排稈カバー11の左側前端部に一体的に設けられる逃げ規制アームであって、該逃げ規制アーム15は、排稈カバー11側から平面視L字状に突出して前記逃げ規制プレート14の外側面に係合し、該係合によって株元カバー12の外側方への逃げを規制しているため、仮令株元カバー12の後端側に外側方への荷重が働いたとしても、揺動支点部位に大きなモーメントが作用することを回避して株元カバー12の破損を防止することができるようになっている。
【0012】また、12bは前記株元カバー12の前端側に内側方に向けて一体突出形成されるガイド部であって、該ガイド部12bは、支軸13を中心とする円弧状のガイド溝12cを形成しており、該ガイド溝12cに、排稈カバー11側から突出するストッパピン16を遊嵌させて株元カバー12の上下限ストッパを構成している。
【0013】さらに、17は前記株元カバー12の内側部に配設される退避補助用弾機であって、該退避補助用弾機(捻りコイルバネ)17は、前記支軸13に巻装され、その一端部は株元カバー12側に係合される一方、他端部は排稈カバー11側に係合されている。つまり、排稈との接触に応じて株元カバー12を退避揺動させるにあたり、株元カバー12の自重よりも小さい退避補助用弾機17の付勢力で株元カバー12の退避揺動を補助するため、株元カバー12の退避揺動を円滑にすると共に、排稈が受ける接触抵抗を小さくして搬送乱れの発生を防止することができるようになっている。
【0014】前記退避補助用弾機17は、株元カバー12側に係合される一端部にフック部17aを有しており、このフック部17aは、通常、前記逃げ規制プレート14の上端部に形成された第一係合孔14aに係合されるようになっている。そして、この状態では、前記ストッパピン16で下降規制される通常位置(下限位置)に株元カバー12が保持され、前述の様に、非脱穀作業時には排稈受入れ口を覆う一方、脱穀作業時には排稈との接触で上方に退避揺動することになる。
【0015】14bは前記第一係合孔14aの下方に所定間隔を存して形成される第二係合孔であって、該第二係合孔14bは、退避補助用弾機17の弾性変形に伴う先端円弧軌跡上に位置すべく逃げ規制プレート14に形成されており、退避補助用弾機17のフック部17aを選択的に掛け替えることができるようになっている。そして、退避補助用弾機17のフック部17aを下側の第二係合孔14bに掛け替えた場合には、退避補助用弾機17の中間部が前記ストッパピン16に上方から接当して株元カバー12の下降を規制するため、株元カバー12が上方退避位置に保持されるようになっている。つまり、脱穀作業時に株元カバー12を上方退避位置に保持しておくことができるため、株元カバー12と、その下方の排稈ガイド棒(図示せず)との間に下草が滞積することを防止でき、その結果、搬送中の排稈が滞積した下草に接触して姿勢を乱したり、滞積した下草が脱穀フィードチェンの終端部に設けられる排稈詰りセンサ(図示せず)を誤作動させる不都合を解消することができ、しかも、本実施形態では、退避補助用弾機17の掛け替え操作のみで株元カバー12を上方退避位置に保持することができるため、専用の保持機構を不要にして部品点数の削減や構造の簡略化を計ることができるようになっている。
【0016】ところで、前記係合孔14a、14bは、上下方向を向く長孔形状に形成されるが、その下端部には、フック部17aの折返し方向に沿い、かつ折返し長さL1よりも長い所定長さ寸法L2の弾機係脱用切欠き14cが連通しているため、全体的には略L字状に形成されている。つまり、退避補助用弾機17のフック部17aは、常時は係合孔14a、14bの上端側に係合しているが、退避補助用弾機17の先端側を手で下方に引けば、フック部17aの折返しが側面視で前記切欠き14cに重合するため、ここで退避補助用弾機17を外側方に押すことでフック部17aを係合孔14a、14bから簡単に外すことができ、一方、逆の操作でフック部17aを係合孔14a、14bに簡単に掛けることができるようになっている。
【0017】叙述の如く構成されたものにおいて、脱穀フィードチェンから受け継いだ排稈を後処理部まで搬送する排稈搬送装置9の一側方に、前方上方を支点として上下揺動自在な株元カバー12を設け、非脱穀作業時には、排稈搬送装置9の一側方を株元カバー12で覆う一方、脱穀作業時には、排稈株元部との接触で株元カバー12を上方に退避揺動させるものであるが、脱穀作業時においては、株元カバー12を選択的に上方退避位置に保持することができるようにしたため、株元カバー12と排稈ガイド棒との間に下草が滞積することを防止でき、その結果、搬送中の排稈が滞積した下草に接触して姿勢を乱したり、滞積した下草が脱穀フィードチェン終端部の排稈詰りセンサを誤作動させる不都合を解消することができる。
【0018】また、前記株元カバー12の上方への退避揺動を補助する退避補助用弾機17を設けると共に、該退避補助用弾機17の一端部が係合される係合部を株元カバー12側に形成するにあたり、一対の係合孔14a、14bを上下に所定間隔を存して形成し、下側の第二係合孔14bに対する退避補助用弾機17の掛け替え操作に基づいて株元カバー12を上方退避位置に保持するようにしたため、専用の保持機構を不要にして部品点数の削減や構造の簡略化を計ることができる。
【0019】また、前記退避補助用弾機17の一端部にフック部17aを形成する一方、株元カバー12側にフック部17aが選択的に係合される上下一対の係合孔14a、14bを形成するにあたり、該係合孔14a、14bに、フック部17aの折返し方向に沿い、かつ折返し長さよりも長い弾機係脱用の切欠き14cを連通状に形成したため、退避補助用弾機17の掛け替え操作を容易にすることができる。
【0020】尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、例えば前記実施形態では、係合孔14a、14bに弾機係脱用の切欠き14cを形成しているが、該切欠き14cは、図6および図7に示す第二実施形態の如く長孔14dとしてもよく、この場合には、逃げ規制プレート14の強度アップを計ることができる。
【0021】また、図8に示す第三実施形態や図9に示す第四実施形態の如く、退避補助用弾機17のフック部17a(折返し部)に対する切欠き14c(長孔14d)の向きを平行とすることなく、上下何れかに所定のズレ角を確保してもよい。そして、この場合には、仮令フック部17aが株元カバー12の揺動に伴って係合孔14a、14bの下端部に位置したとしても、フック部17aが切欠き14cの上側端縁部14eもしくは下側端縁部14fに係合して外れ規制されるため、退避補助用弾機17が意に反して脱穀作業中に外れてしまう不都合を防止でき、一方、退避補助用弾機17を掛け替える際には、退避補助用弾機17の中間部を指で押し引きして弾性変形させれば、退避補助用弾機17のフック部17aを容易に切欠き14cに沿わせることができるため、退避補助用弾機17の掛け替え操作を難しくする不都合も回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】株元カバーの要部平面図である。
【図3】標準状態を示す株元カバーの要部側面図である。
【図4】上方保持状態を示す株元カバーの要部側面図である。
【図5】(A)は逃げ規制プレートの側面図、(B)は要部断面図である。
【図6】第二実施形態を示す株元カバーの要部側面図である。
【図7】(A)は第二実施形態の逃げ規制プレートを示す側面図、(B)は要部断面図である。
【図8】第三実施形態の作用説明図である。
【図9】第四実施形態の作用説明図である。
【符号の説明】
1 コンバイン
9 排稈搬送装置
12 株元カバー
13 支軸
14 逃げ規制プレート
14a 第一係合孔
14b 第二係合孔
14c 切欠き
14d 長孔
16 ストッパピン
17 退避補助用弾機
17a フック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 脱穀搬送装置から受け継いだ排稈を後処理部まで搬送する排稈搬送装置の一側方に、前方上方を支点として上下揺動自在な株元カバーを設け、非脱穀作業時には、排稈搬送装置の一側方を株元カバーで覆う一方、脱穀作業時には、排稈株元部との接触で株元カバーを上方に退避揺動させるコンバインであって、該コンバインに、株元カバーを上方退避位置に保持する上方退避保持手段を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】 請求項1において、株元カバーの上方への退避揺動を補助する退避補助用弾機を設けると共に、該退避補助用弾機の一端部が係合される弾機係合部を株元カバーに形成するにあたり、弾機係合部を上下に所定間隔を存して一対形成し、下側の弾機係合部に対する退避補助用弾機の掛け替え操作に基づいて株元カバーを上方退避位置に保持することを特徴とするコンバイン。
【請求項3】 請求項2において、退避補助用弾機の一端部にフック部を形成する一方、株元カバー側にフック部が選択的に係合される上下一対の弾機係合孔を形成するにあたり、該弾機係合孔に、フック部の折返し方向に沿い、かつ折返し長さよりも長い弾機係脱用の長孔もしくは切欠きを連通状に形成したことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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