説明

コンバイン

【課題】刈取部の前方開放時に、刈取処理速度同調経路や定速処理用動力入力部が邪魔にならず、刈取部の開放操作性を損なうことのないコンバインを提供する。
【解決手段】機体前側部に設けた刈取部4を、同刈取部4に連動連結した刈取駆動軸42の一側端部又は端部近傍に設けた回動軸D1を中心に前方へ回動可能としたコンバインにおいて、前記刈取駆動軸42の回動軸D1の外側に、同刈取駆動軸42の動力入力部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの一形態として、刈取部を機体に対して開閉可能に構成し、同刈取部内部などのメンテナンスを行えるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記したコンバインによれば、刈取部に不具合が生じた場合でも、刈取部を開放することで容易に不具合を発見したり、処置を施すことができる。
【特許文献1】特開平6−319339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、刈取部には、機体側に配設した原動機からの動力を伝達して刈取部を稼働する動力伝達経路や、同動力伝達経路からの動力を受け取る動力入力部が配設されている。
【0005】
それゆえ、刈取部の前方開放時に、これらの動力伝達経路や、動力入力部が邪魔になり、刈取部の開放操作性が損なわれる場合があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決することのできるコンバインを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1記載の本発明では、機体前側部に設けた刈取部を、同刈取部に連動連結した刈取駆動軸の一側端部又は端部近傍に設けた回動軸を中心に前方へ回動可能としたコンバインにおいて、前記刈取駆動軸の回動軸の外側に、動力入力部を設けた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0009】
請求項1記載の本発明では、機体前側部に設けた刈取部を、同刈取部に連動連結した刈取駆動軸の一側端部又は端部近傍に設けた回動軸を中心に前方へ回動可能としたコンバインにおいて、前記刈取駆動軸の回動軸の外側に、動力入力部を設けたことにより、刈取部の前方開放時に、刈取処理速度同調経路や定速処理用動力入力部が邪魔にならず、刈取部の開放操作性を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
本発明に係るコンバインは、基本的構造として、走行部上に、運転部を設けた機体フレームを載設し、同機体フレームの前端部に穀桿を刈り取る刈取部を取り付けるとともに、同刈取部を、一側に設けた回動軸を中心に前方へ回動自在に構成し、また、前記機体フレーム上に、刈取部により刈り取った穀桿を脱穀する脱穀部を配設し、同脱穀部の下方に脱穀した穀粒を選別する揺動選別部を配設するとともに、同揺動選別部の後方上部に排藁処理部を配設し、さらに、前記脱穀部の上方位置には穀粒貯留部を配設している。なお、刈取部の前方回動動作の回動中心は、刈取部に連動連結し、その後方に機体フレームを横断するように伸延配置された刈取駆動軸上に設けられている。また、刈取部によりより刈取られた穀稈は、フィードチェンを介して脱穀部に搬送される。
【0012】
上記コンバインの特徴的構造として、前記刈取駆動軸の回動軸の外側に、前記定速処理用経路からの定速処理用動力入力部を設けている。
【0013】
すなわち、本実施形態におけるコンバインは、走行速度に同調させて刈取部の刈取処理速度を変化させるようにして、同刈取部による刈取効率を良好に確保することができるとともに、機体を低速走行させたり、停止状態にする場合は、定速処理用経路へ動力を伝達するようにして、同定速処理用経路から刈取駆動軸の定速処理用動力入力部に刈取駆動軸を定速回転させる動力を入力し、走行速度にかかわらず所定の刈取処理速度で刈取処理を行うことができる。
【0014】
そして、上記定速処理用経路を、原動機部から脱穀部に動力伝達する脱穀用経路の脱穀用駆動軸の終端部に設けた出力プーリと、前記刈取駆動軸の定速処理用動力入力部となる入力プーリとの間にベルトを巻回して構成することができ、刈取部を回動した際に、前記入力プーリが出力プーリに近づくようにすることができる。
【0015】
かかる構成とすれば、刈取部を前方へ開放しようとした際に、定速処理用入力部となる入力プーリは出力プーリに近づくことになるので、両プーリ間に巻回されたベルトは撓むことになり、ベルトを外したりすることなく刈取部を開放することができ、刈取部の開放動作を容易に行える。
【0016】
また、他の実施形態として、原動機部からミッション部を介して動力を入力し、走行速度に同調させて刈取部の刈取処理速度を変化させる刈取処理速度同調経路と、原動機部から動力を入力し、所定の刈取処理速度で刈取処理を行う定速処理用経路を備え、前記刈取駆動軸の回動軸と略同位置に、前記定速処理用経路からの定速処理用動力入力部を設けることもできる。
【0017】
前記定速処理用経路からの定速処理用動力入力部を、前記刈取駆動軸の回動軸と略同位置に設けたことで、刈取部を、刈取駆動軸の一側に設けた回動軸を中心に回動させて前方へ開放したときに、定速処理用経路の長さの変化量を可及的に小さくすることができ、同定速処理用経路の構成要素などを取外したりする必要がなくなる。
【0018】
たとえば上記定速処理用経路としては、両端にベベルギヤを設け、軸方向に伸縮自在とした伝達杆により構成することができる。
【0019】
そして、同伝達杆を、原動機部から脱穀部に動力伝達する脱穀用経路の脱穀用駆動軸の終端部に設けたベベルギヤと、前記刈取駆動軸の動力入力部に設けたベベルギヤとの間に介設して、刈取部へ動力を伝達可能とすることができる。
【0020】
なお、伝達杆を軸方向に伸縮自在とするのは、一側の杆と他側の杆とをスプライン嵌合して、嵌合部において杆同士を摺動させるなどの方法が考えられる。さらに、上記伝達杆の中途二個所にユニバーサルジョイントを設ける構造とすることが好ましい。
【0021】
上記構成とすることにより、刈取部を前方へ開放した際に、刈取部と連動して回動する刈取駆動軸とベベルギヤを介して連動連結した伝達杆の長さ変化が小さくなり、しかも、伝達杆が軸方向へ前後摺動して、伝達杆の長さ変動を吸収することが可能となる。
【0022】
以上説明した構成とすることにより、刈取部の前方開放動作を何ら支障なく行うことができるとともに、従来のように高価なカウンターケースを装備することなく、低コストで高機能のコンバインを提供することが可能となる。
【0023】
(第1実施例)
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。図1は本実施例に係るコンバインの全体側面図、図2は同コンバインの運転部の平面図、図3は同コンバインの動力伝達部の模式的説明図、図4は刈取部を前方開放したときの説明図、図5は定速処理用経路の説明図である。
【0024】
図1に示すように、本実施例に係るコンバインAは、左右一対のクローラ式の走行部1,1上に機体フレーム2を載設し、同機体フレーム2の前端部に刈取部4を取り付け、機体フレーム2上の左側前部に脱穀部6を配設し、同脱穀部6の直下方位置に揺動選別部7を配設する一方、同揺動選別部7の後方上部であって、脱穀部6の直後方位置に排藁処理部8を配設している。11は、刈取部4に設けた穀稈搬送機構、12は刈刃、13は、脱穀部6に設けた扱胴である。
【0025】
また、コンバインAは、機体フレーム2上の右側前部に運転部9を配設しており、さらに、同運転部9の直後方位置であって、前記脱穀部6の直上方位置に穀粒貯留部10を配設している。
【0026】
また、前記脱穀部6に設けた扱胴13の左側方位置には、前後方向に伸延するフィードチェン14を配設しており、同フィードチェン14の上方位置に狭やく桿15を対向させて配置して、同狭やく桿15とフィードチェン14とが協働して穀桿の株元部を狭持し、同穀桿の穂先部を扱胴13の下側周面に沿わせて前方から後方へ向けて搬送できるようにしている。
【0027】
また、フィードチェン14は、図3に示すように、その後端部に設けた回動支点となる軸Dを中心に側方へ回動して開放可能とし、例えばフィードチェン14そのものや、機体内部の脱穀部6や揺動選別部7などのメンテナンスを行えるようにしている。14aはフィードチェン14の後端部に設けたブラケットであり、前記軸Dを回動自在に嵌装している。
【0028】
さらに、前記刈取部4についても、後述する刈取駆動軸42上に設けた回動支点となる回動軸D1を中心にして、前方へ開放可能として、同刈取部4内部などのメンテナンスを行えるようにしている。
【0029】
また、運転部9は、図2に示すように、キャビン20内の床部21の前部略中央位置に、上部にステアリングホイール23を取り付けたステアリングコラム22を操縦装置として立設し、また、ステアリングホイール23の左側方位置に操作コラム24を配置するとともに、同ステアリングホイール23の後方位置に運転者用座席25を配置している。28は操作コラム24に設けた変速レバーである。
【0030】
そして、床部21の左側前部位置に主クラッチペダル26を配置する一方、ステアリングコラム22を挟むようにして、床部21の右側前部位置には、後述する定速処理用経路経路34に配設した定速処理用クラッチ73の操作手段となる定速処理用クラッチペダルSを配置している。
【0031】
上記構成により、本コンバインAは、走行しながら刈取部4に設けた刈刃12により圃場に植生している穀稈を刈り取り、この刈り取った穀稈を刈取部4に設けた穀稈搬送機構11により後上方へ搬送してフィードチェン14に受け渡し、同フィードチェン14と狭やく桿15とにより穀桿の株元部を狭持するとともに、穀桿の穂先部を扱胴13の下側周面に沿わせて前方から後方へ向けて搬送して、同扱胴13により脱穀することができる。そして、この脱穀した穀粒を揺動選別部7により選別して、選別した清粒を穀粒貯留部10に搬送して貯留する一方、排藁を排藁処理するようにしている。
【0032】
ところで、前記した走行部1,1と刈取部4と脱穀部6とフィードチェン14は、図3に示すように、原動機部Eからの出力を動力伝達部30を介して伝達して作動させるようにしている。
【0033】
動力伝達部30には、原動機部Eからミッション部Mを介して走行部1,1に動力を伝達する走行用経路31と、原動機部Eからミッション部Mを介して刈取部4とフィードチェン14とにそれぞれ動力を伝達する刈取用経路として、走行速度に同調させて刈取部4の刈取処理速度を変化させる同調制御機能をもたせた刈取処理速度同調経路32と、原動機部Eから脱穀部6と揺動選別部7とにそれぞれ動力を伝達する脱穀用経路33とを設け、さらに、原動機部Eから前記脱穀用経路33を介して刈取部4とフィードチェン14とにそれぞれ動力を伝達し、所定の刈取処理速度で刈取処理を行わせる定速処理用経路3 4を設けている。
【0034】
すなわち、原動機部Eより突出させた駆動軸40に、主クラッチCを介してミッション部Mを連動連結し、同ミッション部Mに前記走行用経路31を介して走行部1,1の駆動輪1a,1aを連動連結している。
【0035】
また、刈取処理速度同調経路32は、ミッション部Mに突設した出力軸41に取付けたプーリ44と、刈取部4の後方位置に、機体フレーム2を横断するように伸延させて配置した刈取駆動軸42のフィードチェン14と反対側をなす端部に取付けた速度同調用入力プーリ45との間に刈取伝動ベルト43を巻回し、同刈取伝動ベルト43を刈取クラッチ35により緊張・弛緩自在として動力の伝達を接続・切断可能として、走行速度に同調させて刈取部4の刈取処理速度を変化させることができるようにしている。また、上記プーリ44、速度同調用入力プーリ45には、ワンウェイクラッチC1を設けている。
【0036】
ところで、上記刈取駆動軸42上には、そのフィードチェン14側に終端近傍に回動支点となる回動軸D1を設け、刈取部4ごと前方へ回動して刈取部4を開放させることができる。
【0037】
また、脱穀用経路33は、原動機部Eより突出させた駆動軸40と、原動機部E側からフィードチェン14側へ伸延させた脱穀駆動軸50との間に脱穀伝動ベルト51をプーリ52,53を介して巻回し、同脱穀伝動ベルト51を脱穀クラッチ54により緊張・弛緩自在となして、動力の伝達を接続・切断可能としている。
【0038】
そして、脱穀駆動軸50に脱穀部6の扱胴13(図1参照)を連動連結するとともに、同脱穀駆動軸50に揺動選別部7の駆動部(図示せず)を連動連結している。55は脱穀部伝動用プーリ、56は選別部伝動用プーリである。
【0039】
さらに、定速処理用経路34は、前記刈取駆動軸42のフィードチェン14側をなす端部に、定速処理用動力入力部として定速処理用入力プーリ72を取付け、同プーリ72と前記脱穀駆動軸50のフィードチェン14側をなす端部に取付けた出力プーリ71との間に定速処理用伝動ベルト70を巻回して、同定速処理用伝動ベルト70を、定速処理用クラッチ73により緊張・弛緩自在として動力の伝達を接続・切断可能としている。なお、前記定速処理用入力プーリ72にはワンウェイクラッチC1を設けている。
【0040】
図3中、47は刈取駆動軸42の中途部に取付けた出力用ベベルギヤであり、同出力用ベベルギヤ47に刈取部4の入力軸48に取り付けた入力用ベベルギヤ49を噛合させて、刈取処理速度同調経路32あるいは定速処理用経路34を介して、刈取駆動軸42より刈取部4に動力を伝達することができる。
【0041】
また、60は刈取駆動軸42の機体進行方向左側端部に設けた減速ケースであり、同減速ケース60より出力軸61を突設し、同出力軸61とフィードチェン14に設けた入力軸62との間に伝動チェン63をスプロケット64,65を介して巻回して、刈取駆動軸42より減速ケース60を介してフィードチェン14に減速した動力を伝達することができるようにしている。
【0042】
なお、本実施例においては、フィードチェン14の後端部側にブラケット14aを設け、同ブラケット14aを回動支点である軸Dに嵌装して、フィードチェン14は後側を回動支点として側方へ開放可能としている。
【0043】
また、フィードチェン14を外側へ開放したときに、前記入力軸62は機体側に固定で、フィードチェン14の前端部に設けた駆動用スプロケット66と離脱可能としている。66aは駆動用スプロケット66に設けた前記入力軸61との連結機構部、67はフィードチェン14の従動スプロケット、68は同従動スプロケット67の従動軸である。
【0044】
上記してきたように、本実施例に係るコンバインAは、前記刈取クラッチ35により、刈取処理速度同調経路32の刈取伝動ベルト43を緊張させて動力伝達を行えば、走行速度に同調させて刈取部4の刈取処理速度を変化させることができ、刈取部4による刈取効率を良好に確保することができる。
【0045】
他方、機体を低速走行させたり、停止状態にする場合は、前記した定速処理用クラッチ73により、定速処理用経路34の定速処理用伝動ベルト70を緊張させて動力伝達を行えば、走行速度にかかわらず、所定の刈取処理速度で刈取処理を行うことができる。
【0046】
しかも、かかる高機能のコンバインを、従来のように高価なカウンターケースを装備することなく低コストで提供することが可能である。
【0047】
本実施例において特徴となるのは、上記構成において、前記定速処理用経路34からの定速処理用動力入力部である定速処理用入力プーリ72を、前記刈取駆動軸42の回動支点となる回動軸D1の外側に設けたことにある。
【0048】
すなわち、前述したように、たとえばメンテナンス時などに刈取部4を回動軸D1を中心にして前方開放する場合、定速処理用入力プーリ72は、刈取駆動軸42の上に設けた回動軸D1の外側にあるので、図4に示すように、前記定速処理用入力プーリ72は、脱穀駆動軸50の出力プーリ71に近づくことになり、両プーリ71,72間に巻回された定速処理用伝動ベルト70は撓むことになって、同ベルト70を外す必要なく刈取部4を開放することができる。
【0049】
また、図3からも明らかなように、本実施例では、前記脱穀駆動軸50と刈取駆動軸42との間に設けた上記定速処理用経路34をフィードチェン14側に配置していることから、定速処理用入力プーリ72も前記フィードチェン14の内側に配設されており、例えばフィードチェン14そのものや、機体内部の脱穀部6や揺動選別部7などのメンテナンス時にフィードチェン14を外側に開放する場合、前記定速処理用入力プーリ72が邪魔になることなく、同プーリ72などを含め、定速処理用経路34の構成要素を取外したりする必要もなくなる。
【0050】
さらに、定速処理用経路34への動力伝達は、原動機部E側からフィードチェン14側へ機体を横断するように伸延させた脱穀駆動軸50を介して行っているので、同定速処理用経路34をフィードチェン14側に容易に配置することができ、コンバインAにおける動力伝達経路のレイアウトを簡素化することができる。
【0051】
ところで、前記した定速処理用クラッチ73は、図5に示すクラッチ作動機構36を介して、クラッチ操作スイッチとして機能する前記定速処理用クラッチペダルSに連動連結している。
【0052】
すなわち、定速処理用クラッチ73は、図5に示すように、アーム支持台74にテンションアーム75の基端部を枢支ピン76により枢支し、同テンションアーム75の中途部と機体フレーム2に設けたスプリングステー76との間に引張スプリング77を介設して、同テンションアーム75の先端部に設けたテンションローラ75aを定速回転系伝動ベルト70の上側回動側部70 aより離隔する方向に弾性付勢している。
【0053】
そして、クラッチ作動機構36は、テンションアーム75の中途部と運転部9に設けた定速処理用クラッチペダルSとの間に押し引きワイヤ78を介設している。
【0054】
本実施例に係るクラッチ作動機構36は、運転部9の前側部略中央位置に突設したステアリングコラム22の右側床部21上にペダル枢支体79を設け、同ペダル枢支体79にペダル支持アーム80を介して前記定速処理用クラッチペダルSの後部を枢軸81により枢支し、同枢軸81よりも下方にペダル支持アーム80より延設したワイヤ作動アーム82に、前記押し引きワイヤ78の一側端部を連結して構成している。83はペダル復元用スプリングである。
【0055】
このようにして、定速処理用クラッチペダルSの踏み込み操作に連動して押し引きワイヤ78を引張動作させて、テンションアーム75の先端部に設けたテンションローラ75aを定速処理用伝動ベルト70の上側回動側部70aに押圧させて、同定速処理用伝動ベルト70を緊張状態となすことができるようにして、所定の回転速度を定速処理用入力プーリ72を介して刈取駆動軸42に伝達することができる。
【0056】
すなわち、運転部9の座席25に着座した作業者は、定速処理用クラッチペダルSを足で踏み込み操作することができ、操作中のステアリングハンドル23やその他のレバー類などから手を話す必要がなく、穀稈の脱穀部4への流し込み操作を容易に行うことができる。
【0057】
そして、定速処理用クラッチペダルSの踏み込み操作により、定速処理用クラッチ73を接続動作させると、原動機部E→脱穀用経路33→定速処理用経路34→刈取駆動軸42→刈取部4及びフィードチェン14に動力を伝達して、刈取部4とフィードチェン14を、走行速度に同調することなく、脱穀部7に同調させて作動させることができる。
【0058】
したがって、機体が減速走行、停止、又は後退移動している場合にも、既に刈取部4により刈り取っている穀稈や、フィードチェン14により搬送されている穀稈の脱穀部7への流し込み作業の処理速度を低下させたり、また、流し込み作業を中断させたりすることなく、継続してかかる穀稈流し込み作業を効率良く行うことができる。
【0059】
また、走行速度に刈取処理速度を同調させた通常の刈取作業を行う際には、定速処理用クラッチペダルSの踏み込み操作を解除した状態としておくことにより、刈取クラッチ35を接続状態に保持させることができ、その結果、原動機部E→ミッション部M→刈取処理速度同調経路32→刈取部4及びフィードチェン14に動力を伝達して、刈取部4とフィードチェン14を走行部1,1に同調させて作動させることができる。
【0060】
なお、定速処理用クラッチペダルSの操作により、走行速度に刈取処理速度を同調させた通常の刈取作業を行う場合や、車速と同調させることなく刈り取り動作させる場合において、刈取駆動軸42の両端に取付けた刈取処理速度同調経路32の入力部となる速度同調用プーリ45、及び定速処理用経路34の入力部となる定速処理用入力プーリ72にはワンウェイクラッチC1を設けているので、刈取処理速度同調経路32と定速処理用経路34のいずれか一方の回転数が大きい方の動力が刈取部4に入力されることになる。
【0061】
また、定速処理用経路34から動力を刈取部4へ伝達する場合、刈取駆動軸42の回転数を、本実施例では図6に示すように、最大回転数の1/2〜最大回転数までの間に設定している。
【0062】
すなわち、図6において、通常の作業では、刈取駆動軸42の回転数は車速と同調してリニアに変化するが(図5のO−A)、例えばB−C間においては、車速が低速であっても高速回転が可能で、このように、車速にかかわらず刈取部4の処理速度を高速で行うことができる。
【0063】
したがって、機体停止時や低速走行に穀稈の流し込みが必要な場合においても刈取部4は高速処理が可能となって、刈取作業能率をいつも良好に維持することができる。
【0064】
ここで、本実施例の変形例として、フィードチェン14の回動支点を前端部側に設けたものを図7及び図8に示す。
【0065】
図7に示したものは、動力伝達部30の基本的構造としては先に説明した第1実施例における動力伝達部30と同じであるが、フィードチェン14の回動支点を前端部側に設けるとともに、フィードチェン14の駆動を揺動選別部7より伝動機構85と変速機構86とを介して行うようにしている。
【0066】
すなわち、フィードチェン14は、前端部側に従動用スプロケット67を配置するとともに、後端部側に駆動用スプロケット66を配置して、同駆動用スプロケット66を有段式の変速機構86に設けたフィードチェン駆動軸88により支持している。
【0067】
そして、伝動機構85は、選別部7に設けた出力軸89と、変速機構86に設けた入力軸90との間に、伝動ベルト91をプーリ92,93を介して巻回して構成している。
【0068】
また、変速機構86は、前記入力軸90とフィードチェン駆動軸88とをファン軸94と中間軸95とを介して連動連結しており、中間軸95に設けた大・小径ギヤ96,97に、フィードチェン駆動軸88にスライド自在に設けた高・低速変速ギヤ98,99を選択的に噛合させて、フィードチェン14の駆動を二段変速可能としている。100は出力ギヤ、101は排塵ファン、102はファン入力兼伝達用ギヤである。
【0069】
そして、フィードチェン14の前端部側に設けたブラケット14aを、回動支点である軸Dに嵌装して、前側を回動支点として側方へ開放可能としている。なお、フィードチェン14の開放時には、この場合でもフィードチェン駆動軸88は機体側に固定されている。
【0070】
このように、本実施例においても、先の実施例同様に、刈取部4の前方開放時には、定速処理用入力プーリ72は出力ブーリ71側に移動することになるので、定速処理用伝動ベルト70を取外したりする必要はない。
【0071】
また、図8に示したものは、図7に示したものと基本的構造は同じであるが、変速機構86を無段式に構成している点で異なる。
【0072】
すなわち、変速機構86は、ファン軸94に出力側割プーリ103を設ける一方、フィードチェン駆動軸88に入力側割プーリ104を設け、両プーリ103,104間に伝動ベルト105を巻回して、両プーリ103,104の径を無段階に変更調節することにより、フィードチェン14の駆動を無段変速可能としている。106はクラッチである。
【0073】
なお、上記してきた各変形例では、刈取クラッチ35と定速処理用クラッチ73とを連動させて、定速処理用クラッチペダルSを操作すれば、定速処理用クラッチ73の接続・切断に連動して刈取クラッチ35が切断・接続するようにしており、図3で示した先の第1実施例のように、ミッション部Mに突設した出力軸41に取付けたプーリ44と、刈取駆動軸42のフィードチェン14と反対側をなす端部に取付けた第1のプーリ45と、同刈取駆動軸42のフィードチェン14側をなす端部に取付けた第2のプーリ72とにそれぞれ設けたワンウェイクラッチC1を廃止している。
【0074】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例を図9を参照しながら説明する。
【0075】
第2実施例において、原動機部Eからミッション部Mを介して動力を入力し、走行速度に同調させて刈取部4の刈取処理速度を変化させる刈取処理速度同調経路32と、原動機部Eから動力を入力し、所定の刈取処理速度で刈取処理を行う定速処理用経路34を備えた構成を有することは第1実施例と同様であるが、刈取駆動軸42上に設けた回動軸D1と略同位置に、前記定速処理用経路34からの定速処理用動力入力部を設けたことにある。
【0076】
本実施例に係る定速処理用経路34は、両端に第1・第2ベベルギヤ111,112を設け、軸方向に伸縮自在とした伝達杆110により構成されている。
【0077】
そして、前記刈取駆動軸42のフィードチェン14側に、定速処理用動力入力部として入力用ベベルギヤ113を取付ける一方、原動機部Eから脱穀部6に動力伝達する脱穀用経路33の脱穀用駆動軸50の終端部に出力用ベベルギヤ114を取付け、第1ベベルギヤ111と入力用ベベルギヤ113とを、第2ベベルギヤ112と出力用ベベルギヤ114とを噛合させて、原動機部Eからの動力を刈取部4へ伝達するようにしている。
【0078】
また、伝達杆110は、軸方向に伸縮自在とするために、前側伝達杆110aと後側伝達杆110bとをスプライン嵌合して構成し、嵌合部115において前側・後側伝達杆110a,110b同士を摺動可能としている。しかも、同前側・後側伝達杆110a,110bの中途二個所には、ユニバーサルジョイント116,116を設けている。
【0079】
また、このように、定速処理用経路34を、軸方向へ摺動自在な伝達杆110により構成したことから、定速処理用クラッチ73を脱穀用経路33中に設けている。なお、この場合、テンション式のクラッチ機構ではなく、ドッグクラッチなど他のクラッチ機構を適宜採用することができる。
【0080】
上記構成とすることにより、刈取部4を回動軸D1を中心に前方へ開放すると、刈取部4と連動して回動する刈取駆動軸42と、前記ベベルギヤ111,113を介して連動連結した伝達杆110は、軸方向へ前後摺動するので伝達杆110の長さ変動を吸収することが可能となることから回動時の長さ変化を小さくすることができ、刈取部4を容易に前方開放することができる。
【0081】
なお、第2実施例に係るコンバインAのその他の構成については第1実施例と同様なので、ここでの説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】第1実施例に係るコンバインの全体側面図である。
【図2】同コンバインの運転部の平面図である。
【図3】同コンバインの動力伝達部の模式的説明図である。
【図4】刈取部を前方開放したときの説明図である。
【図5】定速処理用経路の説明図である。
【図6】刈取駆動軸の回転数と車速との関係を示すグラフである。
【図7】動力伝達部の変形例を示す模式的説明図である。
【図8】変形例を示す動力伝達部の模式的説明図である。
【図9】第2実施例における刈取部を前方開放したときの説明図である。
【符号の説明】
【0083】
A コンバイン
D1 回動軸
E 原動機部
M ミッション部
4 刈取部
6 脱穀部
32 刈取処理速度同調経路
33 脱穀用経路
42 刈取駆動軸
50 脱穀駆動軸
72 定速用入力プーリ(定速処理用動力入力部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前側部に設けた刈取部を、同刈取部に連動連結した刈取駆動軸の一側端部又は端部近傍に設けた回動軸を中心に前方へ回動可能としたコンバインにおいて、
前記刈取駆動軸の回動軸の外側に、同刈取駆動軸の動力入力部を設けたことを特徴とするコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−181469(P2007−181469A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59263(P2007−59263)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【分割の表示】特願2000−384182(P2000−384182)の分割
【原出願日】平成12年12月18日(2000.12.18)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【Fターム(参考)】