説明

コンバイン

【課題】刈取装置4の前方及び側方の広い範囲を照明できるものでありながら、前照灯27を軽量でコンパクトな構造に構成できるようにしたコンバインを提供するものである。
【解決手段】刈取装置4及び脱穀装置5を搭載した走行機体2と、運転座席12を有する運転部15と、走行機体2の前方を照らす前照灯27と、刈取装置4の作業域及びその周辺を照らす作業灯28とを備えてなるコンバインにおいて、刈取装置4の左右側面を覆うための左右の機体カバー35R・35Lの少なくともいずれか一方に、作業灯28を組付けるためのライトハウジング39R・39Lを配置し、機体カバー35R・35Lの外面に配置した前照灯27を、ライトハウジング39R・39Lにて覆うように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取装置と脱穀装置とを搭載した走行機体にオペレータが搭乗して収穫作業するコンバインに係り、より詳しくは、走行機体の前方を照らす前照灯と、刈取装置の作業域及びその周辺を照らす作業灯とを備えるコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体の前側に昇降可能に配設した刈取装置によって圃場の未刈り穀稈を刈取り、刈取った穀稈を脱穀装置によって脱穀して、穀粒を収集するように構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、従来のコンバインにおいては、刈取装置の前面側に前照灯を配置し、夜間作業等で、前照灯によって走行機体の前方を照らすように構成されている。また、収集した穀粒を排出するための排出オーガに作業灯を配置し、作業灯によって刈取装置の周辺を照らすように構成されている。
【特許文献1】特開2006−115799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、特許文献1に示されるように、前照灯によって、刈取装置(走行機体)の前方と、刈取装置の側方とを照らすから、前照灯の照明範囲を広く設定する必要があり、前照灯を軽量でコンパクトな構造に構成できない等の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、刈取装置の前方及び側方の広い範囲を照明できるものでありながら、前照灯を軽量でコンパクトな構造に構成できるようにしたコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、刈取装置及び脱穀装置を搭載した走行機体と、運転座席を有する運転部と、前記走行機体の前方を照らす前照灯と、前記刈取装置の作業域及びその周辺を照らす作業灯とを備えてなるコンバインにおいて、前記刈取装置の左右側面を覆うための左右の機体カバーの少なくともいずれか一方に、前記作業灯を組付けるためのライトハウジングを配置し、前記機体カバーの外面に配置した前記前照灯を、前記ライトハウジングにて覆うように構成したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記ライトハウジングには、前記前照灯用の前方照射開口と、前記作業灯用の側方照射開口とを形成したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のコンバインにおいて、前記作業灯用の側方照射開口に、前記作業灯を着脱可能に嵌め込むように構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、刈取装置及び脱穀装置を搭載した走行機体と、運転座席を有する運転部と、前記走行機体の前方を照らす前照灯と、前記刈取装置の作業域及びその周辺を照らす作業灯とを備えてなるコンバインにおいて、前記刈取装置の左右側面を覆うための左右の機体カバーの少なくともいずれか一方に、前記作業灯を組付けるためのライトハウジングを配置し、前記機体カバーの外面に配置した前記前照灯を、前記ライトハウジングにて覆うように構成したものであるから、前記前照灯と前記作業灯とによって、前記刈取装置の前方及び側方の広い範囲を照明できる。また、前記機体カバーを利用して前記前照灯及び前記作業灯を簡単に配置できる。その結果、前記刈取装置から前記機体カバーを脱着することによって、前記刈取装置から前記前照灯及び前記作業灯を脱着でき、前記前照灯及び前記作業灯の組立分解作業性、及び前記刈取装置のメンテナンス作業性等を向上できるものである。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、前記ライトハウジングには、前記前照灯用の前方照射開口と、前記作業灯用の側方照射開口とを形成したものであるから、コンパクトな形状の前記ライトハウジングによって、前記前照灯用の前方照射範囲、及び前記作業灯用の側方照射範囲を簡単に確保できる。前記前照灯によって前記刈取装置の前方を適正に照明でき、前記作業灯によって前記刈取装置の側方を適正に照明できるものである。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、前記作業灯用の側方照射開口に、前記作業灯を着脱可能に嵌め込むように構成したものであるから、前記ライトハウジングから取外した前記作業灯を利用することによって、例えば前記刈取装置の内方、又は前記走行機体の周辺、又は運転座席の周辺等を前記作業灯にて簡単に照明できる。その結果、夜間作業中のメンテナンス又は夜間作業時の後片付け等の作業性を向上できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図、図2は同じく正面図である。図3は刈取装置の右サイドカバーに取り付けられたライトを示す斜視図、図4はライトの断面側面図、図5はライトの側面図、図6は前照灯、作業灯の制御ブロック説明図、図7はライトの照射範囲を示す平面説明図である。
【0013】
まず、本発明の実施例に係るコンバインの全体構成について説明する。なお、以下の説明では、走行機体2の進行方向に向かって左側を単に左(左側)と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右(右側)と称する。
【0014】
図1、図2に示すように、コンバイン1は、走行機体2がクローラ式走行装置3で支持され、走行機体2上に搭載したエンジン10からの動力が、トランスミッションを介してクローラ式走行装置3に伝達されて、前進または後進走行可能に構成されている。そして、前記走行機体2の前部には、穀稈を刈り取って機体後方へ搬送する刈取装置4が設けられている。走行機体2の左側前後中途部には、刈取装置4からの刈取穀稈を脱穀する脱穀装置5と、該脱穀装置5で脱穀された穀粒を選別する選別部6とが上下に配設されている。走行機体2の後部には、脱穀装置5で脱穀された穀稈を排藁として機外へ排出する排藁処理部7が設けられている。
【0015】
また、走行機体2の右側後部には、選別部6から揚穀筒で搬送される穀粒を貯溜するグレンタンク8が設けられ、該グレンタンク8の後方から上方にかけてグレンタンク8内の穀粒を機体外部に排出する排出オーガ9が配設されている。そして、この排出オーガ9の縦オーガ9aを中心として、グレンタンク8が前部を機体側方へ開放回動できるように構成されている。グレンタンク8の前方で走行機体2の右側前部には、操向ハンドル11や種々の操作レバーなどの操作装置や、運転席12などを備えた運転部15が設けられている。運転部15の下方の走行機体2には、トランスミッションやエンジン10が配設されている。
【0016】
図6に示すように、エンジン10と、作業機としての刈取装置4及び脱穀装置5との間には、後述する作業クラッチ63が設けられている。該作業クラッチ63を切断作動すると、エンジン10からの動力が、刈取装置4、脱穀装置5に伝達されないように構成されている。
【0017】
運転部15において、操向ハンドル11の左側方位置にサイドコラム20が配置されている。該サイドコラム20には、主変速レバー21や副変速レバーや作業クラッチレバーや表示パネルや操作スイッチ等が設けられている。
【0018】
前記運転部15としてのサイドコラム20の上面には、前照灯スイッチ23、作業灯スイッチ24等が設けられている(図7参照)。運転席12近傍には点灯制御手段としての制御装置25が配置されている(図7参照)。図6に示すように、制御装置25は、入力側に、作業クラッチレバー64、前照灯スイッチ23、作業灯スイッチ24、刈取部昇降スイッチ19等が接続される一方、出力側には、作業クラッチ63、アクチュエータ47、刈取部昇降シリンダ26、前照灯27、作業灯28等が接続されている。更に、制御装置25には、路上走行状態を検出するために、作業クラッチ63の接続動作及び切断動作を検出する作業クラッチセンサ60と、刈取装置4の穀稈の存否を検出する穀稈存否センサ61と、走行速度センサ62とが接続されている。該作業クラッチセンサ60と、穀稈存否センサ61と、走行速度センサ62とによって、路上走行検出手段22が構成されている。
【0019】
制御装置25は、作業クラッチ63の切断状態(刈取装置4及び脱穀装置5の停止状態)が作業クラッチセンサ60にて検出され、かつ、走行速度センサ62によって、走行速度が一定速度以上であると検出された場合には、路上走行状態であると判断する。更に、穀稈存否センサ61が穀稈を検出しない場合も、路上走行状態であると判断することで、精度を高めて確実に路上走行状態であると判断できる。
【0020】
そして、前照灯スイッチ23および作業灯スイッチ24がONされた状態のときに、路上走行検出手段22の検出により、制御装置25が路上走行状態であると判断した場合、作業灯28を消灯するように制御している。なお、走行速度が、路上走行状態から一定速度以下の作業速度になると、作業灯28は点灯される。また、副変速レバーの回動基部に検知手段としての角度センサを配置して、変速位置を検知して、路上走行変速位置を検知し、路上走行状態であると判断する構成としてもよい。また、走行速度センサ62は車軸に回転数センサを配置する構成としているが、路上走行を検知できるものであれば限定するものではない。また、穀稈存否センサ61により穀稈を検出しない場合等でも、作業灯28の点灯が必要な場合もあるので、作業灯28を点灯するモードを設けてもよい。
【0021】
次に、刈取装置4について説明する。
【0022】
図1及び図9に示されるように、刈取装置4は、昇降機構により適宜昇降位置調節して、刈り高さを調節することができるようになっている。刈取装置4は、走行機体2の前部に立設した刈取支持体29の上端部に、刈取回動支点軸4aを介して、刈取支持フレーム30の基端部が枢支されている。刈取支持フレーム30が左右方向の軸線(刈取回動支点軸4a)回りに上下方向に昇降回動自在に構成されている。刈取支持フレーム30と走行機体2との間には、刈取部昇降手段としての刈取部昇降シリンダ26が介設されている。刈取部昇降シリンダ26を伸縮作動させることにより、刈取支持フレーム30(刈取装置4)は昇降される。
【0023】
前記操向ハンドル11に設けた刈取部昇降スイッチ19を操作することにより、刈取部昇降シリンダ26が伸縮駆動されて、刈取装置4が任意の高さに昇降される。刈取部昇降スイッチ19及び刈取部昇降シリンダ26(実際はシリンダ駆動回路)は、制御装置25に接続されている。
【0024】
図1、図2、図7、図9及び図10に示されるように、刈取支持フレーム30の前端部に刈取駆動ケース30bを連結する。刈取駆動ケース30bから前方に向けて分草フレーム30aを延長する。分草フレーム30aの前端側に分草体31が設けられている。また、分草体31の後方位置に穀稈引起体32が設けられる。刈取駆動ケース30bに引起入力ケース32aを立設し、引起入力ケース32aの上端側に引起駆動ケース32bを配置し、引起駆動ケース32bに穀稈引起体32の上端側(引起し終端側)を連結する。分草フレーム30aに引起支持フレーム32cを立設し、引起支持フレーム32cに穀稈引起体32の下端側(引起し始端側)を連結する。穀稈引起体32の後方位置に穀稈搬送機構33が配置され、該穀稈搬送機構33の下方位置に刈刃34が設けられている。
【0025】
穀稈引起体32の左右両端に配置される左右のサイドカバー35R・35Lは、側面視において、下方ほど機体外方に向かう傾斜姿勢に配置されている(図1参照)。図9及び図10に示されるように、分草フレーム30aと引起支持フレーム32cとにカバー下部支持フレーム37の両端側を連結する。サイドカバー35R・35Lの下端側の内面に固定フック38を固着する。カバー下部支持フレーム37の中間部に固定フック38を係脱可能に係止する。また、サイドカバー35R・35Lの上端側に可動フック45及びフックレバー46を配置する。引起駆動ケース32bにブラケット48を介して上部支持フレーム47を連結する。上部支持フレーム47に可動フック45を係脱可能に係止する。可動フック45は、図示しないバネの弾圧によって、上部支持フレーム47に係止維持されている。
【0026】
左サイドカバー35Lの上下方向の中途部には、可動フック45a及びフックレバー46aを配置する。穀稈引起体32の上下方向の中途部にブラケット48aを介して上部支持フレーム47aを連結する。上部支持フレーム47aに可動フック45aを係脱可能に係止している。左サイドカバー35Lは、サイドカバー35Lの外面のフックレバー46・46aを操作して、上部支持フレーム47・47aから可動フック45・45aを離脱させ、且つカバー下部支持フレーム37から固定フック38を離脱させることによって、左サイドカバー35Lを、図10の仮想線位置から実線位置に取外すことになる。一方、右サイドカバー35Rは、右サイドカバー35Rの外面のフックレバー46を操作して、上部支持フレーム47から可動フック45を離脱させ、且つカバー下部支持フレーム37から固定フック38を離脱させることによって、右サイドカバー35Lを取外すことになる。
【0027】
図1乃至図5、図7乃至図14に示されるように、左右のサイドカバー35R・35Lの上下方向の中途部には、一対の左右対称構造の左右のライト36R・36Lがそれぞれ配置されている。左右のライト36R・36Lは、それぞれ前照灯27と作業灯28とが、一つのライトハウジング39R・39L内に収納されて構成されている。なお、図7に示したように、前照灯27は機体前方の照明範囲L1を照射し、作業灯28は、機体側方の照明範囲L2を照射する。また、左右のサイドカバー35R・35Lの上端間、即ち穀稈引起体32の上端側に上部フレーム17が横架されている。上部フレーム17の上方の刈取上面カバー91には、上部ライト18が配設されている。上部ライト18には、前照灯ランプが収納されて前記前照灯27と同時に点灯・消灯される。
【0028】
次に、図1乃至図3、図7乃至図14参照して、本発明の第1実施形態の左右のライト36R・36Lの構造について詳細に説明する。図1乃至図3、図7、図8に示されるように、左右のライト36R・36Lは、略対称の構造及び形状に構成されている。
【0029】
前記ライト36R・36Lは、サイドカバー35R・35Lの上下方向の中途部の側面より突設されて配置される。ただし、ライト36R・36Lは、刈取装置4の両側に配置されていれば、上下位置が限定されるものではない。ライト36R・36Lは、前照灯27及び作業灯28と、ライトハウジング39R・39Lとをそれぞれ有する。サイドカバー35R・35Lの内面側からライトハウジング39R・39Lの固定脚体69に螺着する3本のビス70によって、サイドカバー35R・35Lの外面に、ライトハウジング39R・39Lを着脱可能に固着する。側面視略直角三角形状のライトハウジング39R・39L内の前部に前照灯27が収納され、前照灯27によって機体前方を照らすように構成されている。ライトハウジング39R・39Lの外側の側部に作業灯28が収納されて、刈取装置4の前側方を作業灯28にて照らすように構成されている。
【0030】
図3、図8、図11乃至図14に示されるように、前記ライトハウジング39R・39Lは、サイドカバー35R・35Lと同様に、前面が、下方ほど機体外方に向かう傾斜姿勢に配置されており、ライトハウジング39R・39Lの前面に、前照灯27用の前方照射開口40が形成されて、該前方照射開口40内に前照灯27が配置されている。前方照射開口40には、透光性を有する前方照射カバー41が被装されている。前方照射カバー41は、前方照射カバー41の外面の前方からライトハウジング39R・39Lの固定脚体72に螺着する2本のビス71によって、ライトハウジング39R・39Lの前面に着脱可能に固着されている。
【0031】
前記前照灯27は、図4に示すように、前照灯リフレクタ51(前照灯27用の反射鏡)と、前照灯リフレクタ51の底部(奥底部)に位置する電球支持部52に支持された前照灯電球53と、前照灯リフレクタ51前部に装着された前照灯レンズ54とにより構成されている。前照灯レンズ54は、正面視略矩形に形成され、該前照灯レンズ54が、地表面に対して略垂直となるように、前照灯27は配置されている。該前照灯27の上端部は、後傾状に傾斜する前方照射開口40よりやや突出しており、該前照灯27上端部が当接しないように、前照灯27を覆う前方照射カバー41は丸みを帯びた凸状に形成されている。
【0032】
また、図5、図13及び図14に示すように、ライトハウジング39R・39Lの側部には、略台形状の作業灯28用の側方照射開口42が形成されており、該側方照射開口42に、作業灯28が配置されている。前記作業灯28は、前記略台形状の側方照射開口42の形状に沿って形成されて、中央部に窪み59を有する作業灯リフレクタ55と、該作業灯リフレクタ55の側部に位置する電球支持部56に支持された作業灯電球57と、前記作業灯リフレクタ55の窪み59を覆うように装着された作業灯レンズ58とにより構成されている。
【0033】
図12乃至図14に示されるように、作業灯レンズ58は、作業灯リフレクタ55の係止部55aに着脱可能に嵌着されている。作業灯リフレクタ55の裏面側に係止片部55bと突起片部55cとを形成する。ライトハウジング39R・39Lの係止凹部73に係止片部55bを着脱可能に係止する。また、ライトハウジング39R・39Lの締結フレーム部74に、ボルト75によって突起片部55cを着脱可能に締結する。即ち、ライトハウジング39R・39Lに係止片部55bを介して作業灯リフレクタ55を係止した状態で、ライトハウジング39R・39Lにボルト75によって作業灯リフレクタ55を締結する。その結果、1本のボルト75によってライトハウジング39R・39Lに作業灯リフレクタ55を固着できる。
【0034】
図4、図11及び図14に示されるように、前記前照灯27は、左右方向に軸線を有する回動支軸44を中心に、前照灯27からの光の照射方向が上下方向に揺動可能に設けられている。前照灯27にはバランスウエイト46が連結されている。刈取装置4の昇降動作に連動して、前照灯27が回動支軸44回りに回動し、前照灯27からの光の照射方向が上下方向に揺動して、前照灯27の照射方向が、水平に対して略一定に保持されて収納されるように構成されている。
【0035】
図11及び図14に示されるように、サイドカバー35R・35Lの内面にライト設置台80を熔接にて固着する。また、前照灯リフレクタ51に前照灯支持フレーム81を配置する。サイドカバー35R・35Lの外面から内面に向けて差込口82を介して前照灯支持フレーム81を出入可能に挿入することによって、ライト設置台80に前照灯支持フレーム81を当接させた状態で、ライト設置台80に設けた回動支軸44に、前照灯支持フレーム81に設けた枢支パイプ45を回動可能に被嵌している。すなわち、前照灯27の後端部に枢支パイプ45が左右水平方向に設けられて、該枢支パイプ45は、ライトハウジング39R・39Lを固着するためのサイドカバー35R・35Lに左右水平方向に固定された回動支軸44に外嵌されて回動自在に支持されている。また、該枢支パイプ45には、電球支持部52と、下方に突出したバランスウエイト46とが固定されている。なお、バランスウエイト46の重量は、電球支持部52及び前照灯電球53の重量よりも重くしている。
【0036】
このような構成において、刈取装置4を昇降させると、バランスウエイト46はその重力により回動支軸44の鉛直下方に位置しようとし、バランスウエイト46と前照灯27(前照灯電球53)は回動支軸44を中心に、刈取装置4の昇降動作と連動して回動する。このとき前照灯27は、水平面に対して一定の角度に保持されることなる。
【0037】
このように構成することで、枕地等で刈取装置4を上昇させながら旋回する場合などでも、刈取装置4の昇降位置調節にかかわりなく、前照灯27は所定の角度を維持して所望の位置を確実に照射することができるので、走行操作性と安全性を良好に確保することができる。
【0038】
また、前照灯27は走行時や作業時等においてエンジン10や穀稈搬送機構33等の駆動により振動して、照射部分も振動して見難くなる畏れがある。また、傾斜地を走行する場合には、照射方向が上を向き過ぎたり下を向き過ぎたりすることがあるので、刈取部の昇降時以外は揺動を停止するライトロック手段となるアクチュエータ47が枢支パイプ45近傍に配置されている。
【0039】
すなわち、ライトロック手段は摩擦パッド49と、該摩擦パッド49を枢支パイプ45に押圧するアクチュエータ47より構成される。該アクチュエータ47はシリンダやモータやソレノイド等からなり制御装置25と接続されている。本実施例ではアクチュエータ47を作動させると、ピストン48が伸張されて摩擦パッド49を枢支パイプ45側に押圧し、ライトハウジング39R・39Lに対して回転しないように固定される。ただし、ライトロック手段の構成は限定するものではなく、バランスウエイト46を固定する等の構成であってもよい。
【0040】
こうして、前照灯用スイッチ23の操作により前照灯27を点灯すると、ライトロック手段が作動されて、前照灯27は固定されて揺動することはできなくなる。そしてこの状態で、刈取部昇降スイッチ19を操作すると、ライトロック手段は解除されて、前照灯27は揺動自在となり、刈取装置4の昇降動作に合わせて前照灯27は所定の方向を向くように回動するのである。刈取部昇降スイッチ19操作がされなくなると、ライトロック手段は作動して、前照灯27は固定される。こうして、前照灯27は簡単な構成で常に所定の方向を向くように制御されるのである。
【0041】
ただし、ライトロック手段を設ける代わりに、前照灯27はモータにより回動支軸44を中心に回動可能に構成するとともに、刈取装置4の昇降角度をセンサにより検知し、刈取装置4が昇降回動されると、その回動に合わせて、モータを駆動して前照灯27を所定の方向を照らすように構成することも可能である。
【0042】
なお、作業灯28は側面に取り付けられているために、刈取装置4が昇降されても照射方向は殆ど変化しない。
【0043】
以上のごとく、機体前方に昇降可能に配置した刈取装置4に、機体前方を照らす前照灯27と、刈取装置4の前側方を照らす作業灯28とを備えるコンバインであって、該前照灯27と作業灯28と路上走行検出手段22を制御装置25と接続し、前照灯27と作業灯28を点灯した状態で、路上走行状態を検出すると、作業灯28を消灯するように制御したので、作業灯28は刈取装置4の前側方を照らすことができ、夕暮れ時や夜間でも作業が行いやすくなる。そして、路上走行時は、自動的に作業灯28が消灯されるので、側方に位置していても眩しくなく、周囲に悪影響を与えることがない。また、無駄なエネルギー消費を防止することができる。
【0044】
また、エンジン10と作業機(刈取装置4、脱穀装置5)との間に作業クラッチ63を設け、該作業クラッチ63を切断し、かつ、走行速度が設定速度以上となった場合に、前記制御装置25は路上走行状態と判断するので、路上走行状態を確実に検出することができ、不要な場合に点灯することがない。
【0045】
次に、図15及び図16を参照して、本発明の第2実施形態の左右のライト36R・36Lの構造について詳細に説明する。図15及び図16に示されるように、ライトハウジング39R・39Lは、作業灯レンズ58及び作業灯リフレクタ55の前端側(作業灯28の前端側28a)を嵌め込む係合ノッチ101と、作業灯リフレクタ55の後端側(作業灯28の後端側28b)の外面に弾圧するロックレバー体102とを有する。また、作業灯リフレクタ55は、携帯用の取手103と、作業灯電球57用の電源ケーブル104の入力端子105を接続する電源プラグ106と、作業灯電球57用のバッテリ107と、バッテリ107を電源として作業灯電球57を点灯・消灯操作する電源スイッチ108とを有する。
【0046】
上記の構成により、図15に示されるように、係合ノッチ101とロックレバー体102とによって、ライトハウジング39R・39Lに作業灯28を固定した状態で、入力端子105を嵌めた電源プラグ106を介して作業灯電球57に電源ケーブル104を接続することによって、制御装置25に作業灯電球57が接続され、作業灯スイッチ24のオン・オフ操作によって作業灯電球57が点灯・消灯する。制御装置25に電源ケーブル104を介して作業灯電球57が接続された場合、バッテリ107が充電される。
【0047】
一方、図16に示されるように、オペレータ等によってサイドカバー35R・35Lの外側からロックレバー体102の係合を解除して、ライトハウジング39R・39Lから作業灯28を取外し、取手103を握って作業灯28を持ち運ぶことによって、懐中電灯等の携帯用照明機器として作業灯28を利用できる。ライトハウジング39R・39Lから作業灯28を取外した場合、電源スイッチ108のオン・オフ操作によって、バッテリ107を電源として作業灯電球57が点灯・消灯する。
【0048】
次に、図17を参照して、本発明の第3実施形態の左右のライト36R・36Lの構造について詳細に説明する。図17に示されるように、複数の白色発光ダイオード111を内蔵した作業灯電球57aを備える。電球支持部56に作業灯電球57aを嵌め込み、作業灯スイッチ24又は電源スイッチ108のオン・オフ操作によって、作業灯電球57aを点灯・消灯させる。作業灯電球57aの光源として発光ダイオード111を利用することによって、フィラメント等の電球57に比べて、同じバッテリ107を電源とした場合、連続使用時間が長くなる利点がある。
【0049】
上記の記載及び図3、図7、図8、図14から明らかなように、刈取装置4及び脱穀装置5を搭載した走行機体2と、運転座席12を有する運転部15と、走行機体2の前方を照らす前照灯27と、刈取装置4の作業域及びその周辺を照らす作業灯28とを備えてなるコンバインにおいて、刈取装置4の左右側面を覆うための左右の機体カバーとしてのサイドカバー35R・35Lの少なくともいずれか一方に、作業灯28を組付けるためのライトハウジング39R・39Lを配置し、サイドカバー35R・35Lの外面に配置した前照灯27を、ライトハウジング39R・39Lにて覆うように構成したものであるから、前照灯27と作業灯28とによって、刈取装置4の前方及び側方の広い範囲を照明できる。また、サイドカバー35R・35Lを利用して前照灯27及び作業灯28を簡単に配置できる。その結果、刈取装置4からサイドカバー35R・35Lを脱着することによって、刈取装置4から前照灯27及び作業灯28を脱着でき、前照灯27及び前記作業灯28の組立分解作業性、及び刈取装置4のメンテナンス作業性等を向上できる。
【0050】
上記の記載及び図3、図8、図14から明らかなように、ライトハウジング39R・39Lには、前照灯用27の前方照射開口40と、作業灯28用の側方照射開口42とを形成したものであるから、コンパクトな形状のライトハウジング39R・39Lによって、前照灯27用の前方照射範囲、及び作業灯28用の側方照射範囲を簡単に確保できる。前照灯27によって刈取装置4の前方を適正に照明でき、作業灯28によって刈取装置4の側方を適正に照明できる。
【0051】
上記の記載及び図15、図16から明らかなように、作業灯28用の側方照射開口42に、作業灯28を着脱可能に嵌め込むように構成したものであるから、ライトハウジング39R・39Lから取外した作業灯28を利用することによって、例えば刈取装置4の内方、又は走行機体2の周辺、又は運転座席12の周辺等を作業灯28にて簡単に照明できる。その結果、夜間作業中のメンテナンス又は夜間作業時の後片付け等の作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】右サイドカバーに取り付けられたライトを示す斜視図である。
【図4】ライトの断面側面図である。
【図5】ライトの側面図である。
【図6】前照灯、作業灯の制御ブロック説明図である。
【図7】ライトの照射範囲を示す平面説明図である。
【図8】左サイドカバーに取り付けられたライトを示す斜視図である。
【図9】刈取装置の左側面図である。
【図10】左サイドカバーを分解した刈取装置の左側面図である。
【図11】左サイドカバーに取り付けられたライトを分解した斜視図である。
【図12】右ライトを分解した斜視図である。
【図13】左ライトを分解した斜視図である。
【図14】右ライトを切断した断面平面図である。
【図15】本発明の第2実施形態を示す右ライトを切断した断面平面図である。
【図16】図15の分解説明図である。
【図17】本発明の第3実施形態を示す右ライトを切断した断面平面図である。である。
【符号の説明】
【0053】
2 走行機体
4 刈取装置
5 脱穀装置
12 運転席
15 運転部
27 前照灯
28 作業灯
35R 右サイドカバー
35L 左サイドカバー
39R 右ライトハウジング
39L 左ライトハウジング
40 前方照射開口
42 側方照射開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取装置及び脱穀装置を搭載した走行機体と、運転座席を有する運転部と、前記走行機体の前方を照らす前照灯と、前記刈取装置の作業域及びその周辺を照らす作業灯とを備えてなるコンバインにおいて、
前記刈取装置の左右側面を覆うための左右の機体カバーの少なくともいずれか一方に、前記作業灯を組付けるためのライトハウジングを配置し、
前記機体カバーの外面に配置した前記前照灯を、前記ライトハウジングにて覆うように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記ライトハウジングには、前記前照灯用の前方照射開口と、前記作業灯用の側方照射開口とを形成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記作業灯用の側方照射開口に、前記作業灯を着脱可能に嵌め込むように構成したことを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−118979(P2008−118979A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351659(P2006−351659)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】