説明

コンバイン

【課題】コンバインにおいて、刈取前処理装置の搬送穀稈の株元部の合流部での穀稈詰まりと穀稈抜落ちとを同時に防止する。
【解決手段】左下部搬送機構51における爪付き搬送チェン104の後端部の内周側に位置するアイドラローラ110は、支持フレーム97から突出する支軸112を中心にして回動自在なアイドラアーム113の先端に枢支されている。テンションローラ111は、駆動スプロケット105の駆動軸(枢軸)95bに対して回動自在に枢支されたテンションアーム114の先端の軸111aに回動自在に枢支されている。アイドラローラ110は駆動スプロケット105を挟んで、合流部Aに近い側に配置される一方、合流部Aから遠い側にてテンションローラ111が爪付き搬送チェン104の外周側に当接している。アイドラアーム113とテンションアーム114とが付勢手段としての引張バネ115にて連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、圃場の植立穀稈を連続的に刈り取って脱穀するコンバインに係り、より詳しくは、刈り取った穀稈を脱穀部に搬送する刈取前処理装置における下部搬送機構(株元搬送機構)にて穀稈の詰まりを防止できる構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のコンバインにおいては、フィードチェン付きの脱穀装置を搭載した走行機体の前部に、刈取前処理装置が昇降用アクチュエータにて昇降調節可能に装着されている。
【0003】
この刈取前処理装置は、刈取条数に応じた分草装置、穀稈引起装置、刈刃装置、掻込み装置、上部搬送機構、株元搬送機構、縦搬送機構、及び補助搬送機構等が配置されている。圃場の植立穀稈を分草後に穀稈引起装置、スターホイール、突起付きベルトである掻込みベルトにて引起しながら掻込み、その掻込み時に植立穀稈の株元を刈刃にて切断する。刈り取られた穀稈は、その穂先側を上部搬送機構や穂先搬送タインにより挟持される一方、複数条分の株元側を左右に配置された下部搬送機構にてそれぞれ挟持されながら搬送される。その場合、機体進行方向の一方、例えば左側の下部搬送機構の後方と、他方(右側)の下部搬送機構の後部において、左右の条の刈取穀稈の株元部を合流させてから、縦搬送機構へ受け継ぐように構成されている。この合流部に多量の株元部が搬送されると、左右の下部搬送機構の間で詰まるおそれがある。
【0004】
この現象を無くするため、特許文献1では、左右の何れか一方の下部搬送機構における株元搬送チェンの後端部を巻回支持する回転輪を、他方の下部搬送機構における株元搬送チェンに対して遠近方向に位置変位可能に設け、回転可能なカム手段により、回転輪を前記他方の株元搬送チェンに接近する位置に保持するように構成したものが開示されている。この構成によれば、カム手段を操作して、回転輪の接近位置保持を解除して、離間させることで、合流部で詰まった穀稈を引抜いて、穀稈詰まりの解除を行うものである。
【0005】
他方、特許文献2では、左右の何れか一方の下部搬送機構における株元搬送チェンの後端部を巻回支持しながら駆動する駆動スプロケットの駆動軸回りに後ガイドを回動可能に配置し、この後ガイドは株元搬送チェンの後端部に隣接し、且つ合流部側の株元搬送チェンの内周面に当接するように設けられ、且つ後ガイドを介して株元搬送チェンにテンションを付与するテンション機構が設けられている。
【特許文献1】特開平11−127663号公報
【特許文献2】特開2007−29025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2では、いずれも合流部で穀稈詰まりが発生した場合に、その解除作業を容易にするための構成であって、多量の穀稈が搬送された状態と、少量の穀稈が搬送された状態とで、自動的に合流部の隙間を遠近調節できるものではなかった。
【0007】
そこで、本願発明は、合流部での搬送穀稈量の大小変化に応じて、自動的に当該交流部の隙間を広狭調節できるようにして、合流部での穀稈詰まりと、穀稈のこぼれ(抜け落ち)との両現象を無くして、円滑な穀稈搬送が実現できるコンバインを提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術的課題を解決するため、請求項1の発明は、フィードチェン付きの脱穀装置が搭載された走行機体と、前記走行機体の前部に装着された刈取前処理装置とを備えており、前記刈取前処理装置には、刈取部と、刈取穀稈の株元側を前記フィードチェンに向けて搬送する縦搬送機構と、前記刈取部から前記縦搬送機構へ刈取穀稈の株元側を搬送する左右複数の下部搬送機構とが備えられたコンバインであって、前記複数の下部搬送機構による株元側の合流部には、前記少なくとも一方の下部搬送機構における搬送チェンの内周側に当接するアイドラローラが、揺動回動可能なアイドラアームの一端に回転自在に設けられ、前記アイドラアームを付勢する付勢手段により、前記アイドラローラが前記合流部に接近する方向に弾力付勢するように設けられているものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載したコンバインにおいて、前記下部搬送機構における搬送チェンを駆動するための駆動スプロケットを挟んで、前記合流部に近い側に前記アイドラローラが配置され、前記合流部から遠い側には前記搬送チェンの外周側に当接するテンションローラが、前記駆動スプロケットの枢軸に対して揺動回動可能なテンションアームの一端に回転自在に設けられ、前記アイドラアームと前記テンションアームとが前記付勢手段にて連結されているものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載したコンバインにおいて、前記アイドラアームは前記搬送チェンが前記合流部に向かう穀稈搬送方向と実質上平行に延びているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によると、複数の下部搬送機構による株元側の合流部には、前記少なくとも一方の下部搬送機構における搬送チェンの内周側に当接するアイドラローラが、揺動回動可能なアイドラアームの一端に回転自在に設けられ、前記アイドラアームを付勢する付勢手段により、前記アイドラローラが前記合流部に接近する方向に弾力付勢するように設けられているものであるから、合流部を通過する穀稈量の大小の変化に応じて、弾力付勢されたアイドラアームを介してアイドラローラが合流部での隙間を広狭変動するように自動的に移動するので、合流部での穀稈詰まりと、穀稈のこぼれ(抜け落ち)との両現象を無くして、円滑な穀稈搬送が実現でき、刈取脱穀作業の作業性が向上するという効果を奏する。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、前記下部搬送機構における搬送チェンを駆動するための駆動スプロケットを挟んで、前記合流部に近い側に前記アイドラローラが配置され、前記合流部から遠い側には前記搬送チェンの外周側に当接するテンションローラが、前記駆動スプロケットの枢軸に対して揺動回動可能なテンションアームの一端に回転自在に設けられ、前記アイドラアームと前記テンションアームとが前記付勢手段にて連結されているものであるから、テンションアーム及びテンションローラにて搬送チェンに適度なテンションを与えることができ、アイドラローラの移動に伴って搬送チェンが過度に緩んだり、過度に緊張することを確実に防止できる。しかも、前記アイドラアームと前記テンションアームとが前記付勢手段にて連結されているので、アイドラローラの移動量に対してテンションローラの移動量が拘束されることがなく、適度のテンションを与えことが容易となる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、前記アイドラアームは前記搬送チェンが前記合流部に向かう穀稈搬送方向と実質上平行に延びているものであるから、アイドラアームに対するアイドラローラの位置と引張バネの連結個所との前記比率を与える場合、他の部品の邪魔にならずに、アイドラアームを長く形成することが容易にできるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図8)に基づいて説明する。図1はコンバインの側面図、図2はコンバインの平面図、図3は刈取前処理装置の概略側面図、図4は刈取前処理装置の概略平面図、図5は動力伝達系のスケルトン図、図6は刈取前処理装置における動力伝達系のスケルトン図、図7は合流部における一方の下部搬送機構の平面図、図8は図7の VIII −VIII線矢視断面図である。
【0015】
(1).コンバインの概略構造
まず、図1及び図2を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。
【0016】
実施形態における4条刈り用のコンバインは、左右一対の走行クローラ2,2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、圃場の植立穀稈(未刈穀稈)を刈り取りながら取り込む刈取前処理装置3が単動式の油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。
【0017】
走行機体1には、フィードチェン6付きの脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留するためのグレンタンク7とが横並び状に搭載されている。この場合、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、グレンタンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。走行機体1の後部には排出オーガ8が旋回可能に設けられている。グレンタンク7内の穀粒は、排出オーガ8の先端籾投げ口から、例えばトラックの荷台やコンテナ等に搬出される。
【0018】
刈取前処理装置3とグレンタンク7との間には操縦部9が設けられている。操縦部9内には、走行機体1の進行(旋回)方向及び旋回速度を変更操作する操向ハンドル10や、オペレータが着座する操縦座席11等が配置されている。操縦座席11の一側方に配置されたサイドコラム12には、走行機体1の変速操作を行うための主変速レバー13及び副変速レバー14、刈取前処理装置3への動力継断操作用の刈取クラッチレバー15、並びに、脱穀装置5への動力継断操作用の脱穀クラッチレバー16が前後傾動可能に設けられている。
【0019】
操縦部9の下方には、動力源としてのエンジン17が配置されている。エンジン17の前方には、当該エンジン17からの動力を適宜変速して左右両走行クローラ2に伝達するためのミッションケース18が配置されている。実施形態のエンジン17にはディーゼルエンジンが採用されている。
【0020】
刈取前処理装置3は、バリカン式の刈刃装置19、4条分の穀稈引起装置20、穀稈搬送装置21及び分草体22を備えている。刈刃装置19は、刈取前処理装置3の骨組を構成する刈取フレーム45の下方に配置されている。穀稈引起装置20は刈取フレーム45の上方に配置されている。穀稈搬送装置21は穀稈引起装置20とフィードチェン6の送り始端部との間に配置されている。分草体22は穀稈引起装置20の下部前方に突設されている。走行機体1は、エンジン17にて左右両走行クローラ2を駆動させて圃場内を移動しながら、刈取前処理装置3の駆動にて圃場の未刈穀稈を連続的に刈り取る。
【0021】
脱穀装置5は、刈取穀稈を脱穀処理するための扱胴23と、扱胴23の下方に配置された揺動選別機構24及び風選別機構25と、扱胴23の後部から取り出される脱穀物を再処理する送塵口処理胴26とを備えている。扱胴23は脱穀装置5の扱室内に配置されている。揺動選別機構24は扱胴23にて脱穀された脱穀物を揺動選別するためのものであり、風選別機構25は前記脱穀物を風選別するためのものである。
【0022】
刈取前処理装置3から送られてきた刈取穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれる。そして、当該刈取穀稈の穂先側が脱穀装置5内に搬入され、扱胴23にて脱穀処理される。なお、扱胴23の回転軸74(図5参照)は、フィードチェン6による刈取穀稈の送り方向(走行機体1の進行方向)に沿って延びている。
【0023】
脱穀装置5の下部には、両選別機構24,25にて選別された穀粒のうち精粒等の一番物が集まる一番受け樋27と、枝梗付き穀粒や穂切れ粒等の二番物が集まる二番受け樋28とが設けられている。実施形態の両受け樋27,28は、走行機体1の進行方向前側から一番受け樋27、二番受け樋28の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方に横設されている。
【0024】
両選別機構24,25による選別を経て一番受け樋27内に集められた精粒等の一番物は、当該一番受け樋27内の一番コンベヤ29及び揚穀筒31内の揚穀コンベヤ32(図5参照)を介してグレンタンク7に送られる。
【0025】
枝梗付き穀粒等の二番物は、一番受け樋27より後方の二番受け樋28に集められ、ここから二番受け樋28内の二番コンベヤ30及び還元筒33内の還元コンベヤ34(図5参照)を介して二番処理胴35に送られる。そして、二番物は、二番処理胴35にて再脱穀されたのち、脱穀装置5内に戻されて再選別される。藁屑は、排塵ファン36に吸い込まれて、脱穀装置5の後部に設けられた排出口(図示せず)から機外へ排出される。
【0026】
フィードチェン6の後方側(送り終端側)には排稈チェン37が配置されている。フィードチェン6の後端から排稈チェン37に受け継がれた排稈(脱粒した稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方にある排稈カッタ38にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0027】
(2).刈取前処理装置及びその周辺の構造
次に、図3及び図4を参照しながら、刈取前処理装置3及びその周辺の構造について説明する。
【0028】
刈取前処理装置3は、脱穀装置5の前方にある刈取架台41に軸支された横長の刈取入力パイプ42回りに上下回動可能に構成されている。刈取入力パイプ42の中途部には前方斜め下向きに延びる縦伝動パイプ43が取り付けられている。縦伝動パイプ43の中途部と走行機体1の前端部とが単動式の油圧シリンダ4を介して連結されている。
【0029】
縦伝動パイプ43の下端部に固定された横長の横伝動パイプ44には、横方向に適宜間隔にて並ぶ複数本の刈取フレーム45が前向きに突設されている。刈取フレーム45の下方にバリカン式の刈刃装置19が設けられている。そして、各刈取フレーム45の先端部に分草体22が突設されている。また、横伝動パイプ44には、前方斜め上向きに延びる複数本の支持パイプ46が立設されている。各支持パイプ46は、圃場の植立穀稈を引き起こすための穀稈引起装置20を支持している。
【0030】
図3に示すように、穀稈引起装置20は、分草体22を介して取り込んだ未刈穀稈を起立させる引起タイン(図示せず)を有する縦長の引起ケース47と、各引起ケース47の後方下部に配置されたスターホイル48及び掻き込みベルト49とを備えている。スターホイル48及び掻き込みベルト49は、これらの組に対応する引起ケース47の引起タインにて起こされた未刈穀稈の株元側を後方に掻き込むためのものである。スターホイル48及び掻き込みベルト49にて掻き込まれた未刈穀稈の株元側が刈刃装置19にて切断される(刈り取られる)。
【0031】
穀稈引起装置20とフィードチェン6の送り始端部との間に配置された穀稈搬送装置21は、右下部搬送機構50、左下部搬送機構51、上部搬送機構52、縦搬送機構53、横回し式の第1中継搬送機構54、及び縦回し式の第2中継搬送機構55等を備えている。
【0032】
右下部搬送機構50は、右2条分の刈取穀稈を左斜め後方に搬送するチェン方式のものである。左下部搬送機構51は、左2条分の刈取穀稈を右斜め後方に搬送してその株元側を右下部搬送機構50の送り終端部近傍に合流させるチェン方式のものである。右上部搬送機構52と左上部搬送機構96とで、4条分の刈取穀稈の穂先部を寄せ集めながら左斜め後方に搬送するタイン方式のものである。
【0033】
縦搬送機構53は、右下部搬送機構50の送り終端部近傍にて合流した4条分の刈取穀稈の株元側をフィードチェン6に向けて後ろ斜め上方に搬送するチェン方式のものである。第1中継搬送機構54及び第2中継搬送機構55は、縦搬送機構53とフィードチェン6との間で刈取穀稈の株元側の搬送を中継するチェン方式のものである。
【0034】
縦搬送機構53は、伝動ケース58を介して縦伝動パイプ43の長手中途部に、送り始端側を支持させている。そして、当該縦搬送機構53は、縦搬送アクチュエータ(図示せず)の駆動にて、送り終端側がフィードチェン6の始端側に遠近動するように伝動ケース58回りに昇降回動可能に構成されている(図4参照)。このような縦搬送機構53の昇降回動により、扱胴23に対する刈取穀稈の扱ぎ深さ位置が調節される。
【0035】
上部搬送機構52、第1中継搬送機構54、縦搬送機構53は、側面視でこの順番に上から並べて配置されている。更に詳述すると、第1中継搬送機構54は、右上部搬送機構52の送り終端部と縦搬送機構53の送り終端部とで上下から挟まれている。
【0036】
第2中継搬送機構55は、図4の平面視において第1中継搬送機構54とフィードチェン6の送り始端部との間に位置していて、図3の側面視では送り後方側がフィードチェン6の送り始端部に重なっている(ラップしている)。第2中継搬送機構55は、アクチュエータとしての電動モータ(図示せず)の駆動にて、送り後方側を支点として上下方向に姿勢変更回動可能に構成されている。
【0037】
縦搬送機構53の送り面側と対峙する箇所には、挟持ガイド部材としての縦搬送ガイド体56が配置されている。当該縦搬送ガイド体56は、4条分の刈取穀稈の株元側を縦搬送機構53と共に挟持するためのものである。第1中継搬送機構54の送り面側と対峙する箇所には、4条分の刈取穀稈の株元側(より詳しくは株元寄りの中途部)を第1中継搬送機構53と共に挟持する中継ガイド体57が配置されている(図3参照)。
【0038】
縦搬送機構53及び縦搬送ガイド体56にて横倒しの姿勢で挟持搬送されてきた4条分の刈取穀稈の株元側は、第1及び第2中継搬送機構54,55を介して、フィードチェン6の送り始端部に受け継がれる。そして、これら刈取穀稈の穂先側が脱穀装置5における扱室内の扱胴23にて脱穀される。
【0039】
(3).コンバインの動力伝達系
次に、図5及び図6を参照しながら、コンバインの動力伝達系について説明する。
【0040】
エンジン17からの動力の一方は刈取前処理装置3と脱穀装置5との2方向に分岐して伝達される。エンジン17からの他の動力は排出オーガ8に向けて伝達される。エンジン17から刈取前処理装置3に向かう分岐動力は一旦、刈取クラッチ61を介して、ミッションケース18内にある油圧ポンプ油圧モータ式(HST式)無段変速機のHST入力軸62に伝達され適宜変速される。この変速出力は、ミッションケース18に突設された刈取PTO軸63からプーリ及びベルト伝動系を介して、刈取入力パイプ42内の刈取入力軸64に伝達され、刈取入力軸64から刈取前処理装置3の各装置19〜21に動力伝達される。したがって、この場合、コンバインの走行速度に連動して刈取前処理装置3の各装置19〜21の駆動速度も変化する。
【0041】
例えば、刈取入力軸64に伝達された動力の一部は、刈取入力軸64の中途部に連結された上部伝達機構65を介して、右上部搬送機構52及び第1中継搬送機構54に伝達される。また、縦伝動パイプ43内の縦伝動軸66に伝達された動力の一部は、縦伝動軸66の中途部に連結された下部伝達機構67を介して縦搬送機構53及び右下部搬送機構50に伝達される。下部伝達機構67の一構成要素である縦搬送駆動軸68は、縦伝動パイプ43の長手中途部に取り付けられた伝動ケース58から上向きに突き出ており、縦搬送駆動軸68の回転動力にて縦搬送機構53が駆動するように構成されている。
【0042】
また、縦伝動軸66の終端から、横伝動パイプ44内のベベルギヤ対及び下駆動軸89を介して刈刃装置19に動力伝達される。さらに、一方の下駆動軸89の端部から、1つの支持パイプ46内のベベルギヤ対及び縦伝動軸90を介して、上部横伝動パイプ91内の引起し駆動軸92に動力伝達され、それからさらに、4つの引起しケース47内の動力伝達部93に動力伝達され、各引起しタインチェン94を回動させる(図6参照)。縦伝動軸90の中途部に連結された伝達機構95を介して左下部搬送機構51及び左上部搬送機構96に動力伝達される(図6参照)。
【0043】
他方、エンジン17から脱穀装置5に向かう分岐動力は、脱穀クラッチ71を介して脱穀入力軸72に伝達される。脱穀入力軸72に伝達された動力の一部は、脱穀駆動機構73を介して、送塵口処理胴26の回転軸75と、扱胴23の回転軸74及び排稈チェン37とに伝達される。
【0044】
また、脱穀入力軸72からは、プーリ及びベルト伝動系を介して、風選別機構25の唐箕ファン軸76、一番コンベヤ29と揚穀コンベヤ32、二番コンベヤ30と還元コンベヤ34と二番処理胴35、揺動選別機構24の揺動軸77、排塵ファン36の排塵軸78、並びに排稈カッタ38に伝達される。
【0045】
排塵軸78を経由した分岐動力は、FCクラッチ79及びフィードチェン軸80を経て、フィードチェン6の後部側に動力伝達され、フィードチェン6からは、その送り始端側に配置されたスプロケット式の伝動手段81を介して、第2中継搬送機構55に動力伝達される。
【0046】
なお、脱穀入力軸72からの動力は、流し込みクラッチ82を介して刈取入力軸64にも伝達可能である。すなわち、ミッションケース18を経由せずに直接、エンジン17からの動力を刈取前処理装置3に伝達することにより、車速の速い遅いに拘らず、刈取前処理装置3を一定の高速にて強制駆動させることが切り換え可能な構成になっている。
【0047】
エンジン17から排出オーガ8に向かう動力は、グレン入力ギヤ機構83及び動力継断用のオーガクラッチ84を介して、グレンタンク7内の底コンベヤ85及び排出オーガ8における縦オーガ筒内の縦コンベヤ86に動力伝達され、次いで、受継スクリュー87を介して、排出オーガ8における横オーガ筒内の排出コンベヤ88に動力伝達される。
【0048】
(4).下部搬送機構の詳細構造
次に、図4、図6〜図8を参照しながら、刈り取られた穀稈の株元部を左右の下部搬送機構51、50の搬送作用後部側(合流部)で合流させるときの穀稈詰まりを防止する機構について詳細に説明する。
【0049】
図7及び図8に示すように、左下部搬送機構51の伝達機構95のケース95a及び支持フレーム97と、その前方のスターホイル48及び掻込みベルト49のための支持フレーム98とを連結パイプ99にて溶接固定し、さらに、図示しないが、刈取フレーム45から立設する支持パイプの上端を支持フレーム98に連結させて、位置及び姿勢固定させている。左下部搬送機構51における無端の爪付き搬送チェン104を駆動するための駆動スプロケット105は支持フレーム97の下面側において伝達機構95の駆動軸(枢軸)95bにキーなどを介して固定されている。
【0050】
一方、連結パイプ99及び支持フレーム98から非回転の支持軸100を下向きに突設する。非回転の支持軸100の下端に設けられた軸受手段101の外ケースを介して、円筒ドラムケース103が一体的に回転可能に支持(吊支)されている。円筒ドラムケース103の外周には、無端の爪付き搬送チェン104のための従動スプロケット106が固定されている。また、円筒ドラムケース103の上端側に掻込みベルト49のためのプーリ102が、下端側にはスターホイル48がそれぞれ着脱可能に取り付けられている。
【0051】
爪付き搬送チェン104は駆動スプロケット105と、従動スプロケット106と、後述するアイドラローラ110とに巻回されており、後述するテンションローラ111にてテンションが付与される。そして、爪付き搬送チェン104の回動に応じて、円筒ドラムケース103と従動スプロケット106とスターホイル48とプーリ102とが一体的に回転することになる(図7及び図8参照)。なお、掻込みベルト49のための従動プーリ107が支持フレーム98に回転可能に軸支されており、掻込みベルト49の従動側が巻回されている。ゴム製の掻込みベルト49の外周には、穀稈の株元部をかきこむための突起部49aが一体的に形成されている。
【0052】
図7における掻込みベルト49及びスターホイル48は、図4における機体進行方向の最左側に配置されるものであり、このスターホイル48とその右側に隣接するスターホイル48とが噛み合っており、これと同心軸及びプーリを介して当該右側の掻込みベルト49も回転駆動される。
【0053】
次に、右下部搬送機構50と左下部搬送機構51との無端の爪付き搬送チェンによる穀稈株元部の搬送作用後部側(図4及び図7で示す合流部Aであり、この合流部Aは、縦搬送機構53の始端部との合流部でもある)で合流させるときの、少なくとも一方の下部搬送機構(実施形態では、左下部搬送機構51)の後部における、穀稈詰まり防止手段の構成について説明する。
【0054】
左下部搬送機構51における無端の爪付き搬送チェン104の後端部の内周側に位置するアイドラローラ110は、支持フレーム97から下向きに突出する支軸112を中心にして回動自在(揺動回動自在)なアイドラアーム113の先端の軸110aに枢支されている。他方、テンションローラ111は、駆動スプロケット105の駆動軸(枢軸)95bに対して回動自在に枢支されたテンションアーム114の先端の軸111aに回動自在に枢支されている。アイドラローラ110は駆動スプロケット105を挟んで、合流部Aに近い側に配置される一方、合流部Aから遠い側にてテンションローラ111が爪付き搬送チェン104の外周側に当接している。アイドラアーム113とテンションアーム114とが付勢手段の一例としての引張バネ115にて連結されている。その場合、引張バネ115の一端と、テンションアーム114の先端部とが長さ調節可能な調節ボルト116にて連結され、引張バネ115のバネ力を調節可能としている。
【0055】
上記の構成により、引張バネ115の付勢力にて、図7において、アイドラアーム113は反時計回りに回動付勢される一方、テンションアーム114は時計回りに回動付勢される。その結果、アイドラアーム113の先端部のアイドラローラ110は爪付き搬送チェン104の後端部を合流部Aの隙間が小さくなるように付勢され、テンションローラ111は爪付き搬送チェン104にテンション(張り)を付与している。
【0056】
合流部Aに多量穀稈が搬送されて来たときには、合流部Aの隙間(右下部搬送機構50における無端の爪付き搬送チェンと左下部搬送機構51における無端の爪付き搬送チェン104の対峙する隙間)が広がるようにアイドラローラ110が移動し、アイドラアーム113が図7において時計回りに回動するので、引張バネ115を介して、テンションアーム114も時計回りに回動し、テンションローラ111は爪付き搬送チェン104の外周にテンションを与えた状態を維持できる。合流部Aに少量の穀稈が搬送されるときには、当該合流部Aの隙間が小さくなるように、前記引張バネ115の付勢力が作用し、アイドラアーム113を介してアイドラローラ110が移動する。このように合流部Aを通過する穀稈量に応じて合流部Aの隙間を広狭するようにアイドラローラ110が自動的に移動でき、且つテンションローラ111にて爪付き搬送チェン104が緩まないようにテンションを与えているから、合流部Aにおける穀稈の脱落(抜け落ち)も穀稈詰まりも発生させずに、縦搬送機構53の始端部側に、穀稈の受け継ぎを円滑にできるという効果を奏する。
【0057】
支軸112からアイドラアーム113の先端の軸110aまでの距離(第1アーム長さ)よりも、支軸112からアイドラアーム113の他端の引張バネ115の連結個所までの距離(第2アーム長さ)を1対2程度または、第2アーム長さをそれよりも大きく設定する。このように設定することにより、アイドラローラ110が合流部Aの隙間を調節する方向に移動する距離よりも、引張バネ115の伸縮量を大きくすることができる結果、アイドラローラ110が合流部Aの隙間を少なくする方向への移動付勢力(自動復帰力)を大きく、且つ迅速できる。従って、特に、合流部Aを通過する穀稈量が多い状態から少ない状態に変動したときに、合流部Aでの穀稈の抜け落ちを無くすることができる。
【0058】
そして、アイドラアーム113は爪付き搬送チェン104が合流部Aに向かう穀稈搬送方向と実質上平行に延びていることにより、前記アイドラアーム113に対するアイドラローラ110の位置と引張バネ115の連結個所との前記比率を与える場合、他の部品の邪魔にならずに、アイドラアーム113を長く形成することが容易にできる。また、アイドラアーム113とテンションアーム114とを伸縮可能な引張バネ115にて連結することにより、アイドラアーム113の回動量(アイドラローラ110の移動量)により、テンションアーム114の回動量(テンションローラ111の移動量)が拘束されないので、爪付き搬送チェン104が不用意に緩んだり、過度に緊張されるという不具合も解消される。
【0059】
なお、爪付き搬送チェン104の作用面側(送り面)のうち合流部Aに近い部位には、丸棒状のバネ対からなるガイド杆117の基端部を支持フレーム97に固定し、ガイド杆117の先端部を合流部Aから縦搬送機構53の始端部側に延設して、穀稈の受け継ぎを円滑にできるようにしている。
【0060】
他の実施形態として、アイドラアーム113及びテンションアーム114を別々の付勢手段(捩じりバネ)などにて弾力付勢するように構成しても良い。
【0061】
上記した実施形態の各構成は図示のものに限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】刈取前処理装置の概略側面図である。
【図4】刈取前処理装置の概略平面図である。
【図5】動力伝達系のスケルトン図である。
【図6】刈取前処理装置における動力伝達系のスケルトン図である。
【図7】左下部搬送機構51の拡大平面図である。
【図8】図7の VIII −VIII線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 走行機体
3 刈取前処理装置
50 右下部搬送機構
48 スターホイル
49 掻込みベルト
51 左下部搬送機構
21 穀稈搬送装置
95b 駆動軸(枢軸)
104 爪付き搬送チェン
105 駆動スプロケット
110 アイドラローラ
111 テンションローラ
112 支軸
113 アイドラアーム
114 テンションアーム
115 付勢手段としての引張バネ
116 調節ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードチェン付きの脱穀装置が搭載された走行機体と、前記走行機体の前部に装着された刈取前処理装置とを備えており、前記刈取前処理装置には、刈取部と、刈取穀稈の株元側を前記フィードチェンに向けて搬送する縦搬送機構と、前記刈取部から前記縦搬送機構へ刈取穀稈の株元側を搬送する左右複数の下部搬送機構とが備えられたコンバインであって、
前記複数の下部搬送機構による株元側の合流部には、前記少なくとも一方の下部搬送機構における搬送チェンの内周側に当接するアイドラローラが、揺動回動可能なアイドラアームの一端に回転自在に設けられ、前記アイドラアームを付勢する付勢手段により、前記アイドラローラが前記合流部に接近する方向に弾力付勢するように設けられていることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記少なくとも一方の下部搬送機構における搬送チェンを駆動するための駆動スプロケットを挟んで、前記合流部に近い側に前記アイドラローラが配置され、前記合流部から遠い側には前記搬送チェンの外周側に当接するテンションローラが、前記駆動スプロケットの枢軸に対して揺動回動可能なテンションアームの一端に回転自在に設けられ、
前記アイドラアームと前記テンションアームとが前記付勢手段にて連結されていることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記アイドラアームは前記搬送チェンが前記合流部に向かう穀稈搬送方向と実質上平行に延びていることを特徴とする請求項1または2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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