説明

コンバイン

【課題】刈取作業の終了時に穀稈の稈長が短くなるような場合でも、穀稈の受け継ぎ不良によるコボレを確実に防止できるコンバインを提供することを目的とする。
【解決手段】刈取部3で刈り取られた刈取穀稈の株元側を受け継いで搬送し、脱穀部5のフィードチェーン6に受け継ぐ株元搬送チェーン42と、該刈取穀稈の穂先側を受け継いで搬送し、フィードチェーン6に受け継ぐ穂先搬送タイン41と、を備え、扱深さ調節装置40(穂先搬送タイン41、株元搬送チェーン42)が上下回動されて扱深さ調節可能とするコンバイン100において、リミットスイッチ51が前記刈取穀稈を扱深さ調節装置40(穂先搬送タイン41、株元搬送チェーン42)へ受け継ぐ位置よりも搬送方向上流側に設けられ、リミットスイッチ51が穀稈の無いことを検知すると、扱深さ調節装置40(穂先搬送タイン41、株元搬送チェーン42)が深扱ぎ側へ回動されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部で刈り取られた刈取穀稈を脱穀部へ搬送する搬送装置と、該搬送装置により搬送された穀稈の株元側を受け継いで搬送し、脱穀部のフィードチェーンに受け継ぐ縦搬送装置と、該搬送装置により搬送された穀稈の穂先側を受け継いで搬送し、該フィードチェーンに受け継ぐ上部搬送装置と、を備え、該縦搬送装置又は/及び上部搬送装置が上下回動されて扱深さ調節可能とするコンバインの技術に関し、より詳細には、穀稈検知手段が穀稈の無いことを検知すると、前記縦搬送装置が深扱ぎ側へ回動される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈取部で刈り取られた刈取穀稈を脱穀部へ搬送する搬送装置と、該搬送装置により搬送された穀稈の株元側を受け継いで搬送し、脱穀部のフィードチェーンに受け継ぐ縦搬送装置と、該搬送装置により搬送された穀稈の穂先側を受け継いで搬送し、該フィードチェーンに受け継ぐ上部搬送装置と、を備え、該縦搬送装置又は/及び上部搬送装置が上下回動されて扱深さ調節可能とするコンバインの技術は公知となっている。
例えば、特許文献1には、刈取穀稈を脱穀装置に向けて支持搬送する搬送装置の穀稈搬送経路の途中箇所において、前記搬送装置による前記刈取穀稈の支持位置を稈長方向で変更して前記脱穀装置の扱室での扱深さを調節する扱深さ調節手段と、その扱深さ調節手段による扱深さ調節箇所よりも前記穀稈搬送経路の下手側箇所において、前記扱深さ調節手段による扱深さ調節状態を検出する扱深さ検出手段と、前記搬送装置にて搬送される前記刈取穀稈の存否を検出する穀稈存否検出手段と、前記穀稈存否検出手段にて前記刈取穀稈の存在が検出されている場合に、前記扱深さ検出手段にて設定適正扱深さ調節状態が検出される状態に維持するように前記扱深さ調節手段を作動させる適正扱深さ制御を実行する制御手段とが設けられたコンバインの扱深さ制御装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−204612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に開示されているコンバインの扱深さ制御装置は、制御手段が、脱穀装置に向けて支持搬送される刈取穀稈の存在が穀稈存否検出手段にて検出されている場合には、扱深さ検出手段にて設定適正扱深さ調節状態が検出される状態になるように扱深さ調節手段を作動させる適正扱深さ制御を実行するが、上記穀稈存否検出手段にて刈取穀稈の存在から非存在への変化が検出されると、扱深さ検出手段にて設定適正扱深さ調節状態よりも設定量深扱き側の深扱き調節状態が検出される状態になるように扱深さ調節手段を作動させる強制深扱き作動を実行するものであるが、前記穀稈存否検出手段は、前記縦搬送装置の始端部に設けられているものである。
すなわち、前記穀稈存否検出手段は、補助搬送装置から縦搬送装置への穀稈の受け渡し箇所よりも穀稈搬送経路の下手側箇所に設けられているため、刈取作業の終了時に穀稈の稈長が短くなるような場合、穀稈の受け継ぎ不良によるコボレが発生することがある。
【0004】
本発明は以上の状況に鑑み、刈取作業の終了時に穀稈の稈長が短くなるような場合でも、穀稈の受け継ぎ不良によるコボレを確実に防止できるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
すなわち、請求項1においては、
刈取部で刈り取られた刈取穀稈の株元側を受け継いで搬送し、脱穀部のフィードチェーンに受け継ぐ縦搬送装置と、
該刈取穀稈の穂先側を受け継いで搬送し、該フィードチェーンに受け継ぐ上部搬送装置と、を備え、
該縦搬送装置又は/及び上部搬送装置が上下回動されて扱深さ調節可能とするコンバインにおいて、
穀稈の有無を検知する穀稈検知手段が、前記刈取穀稈を縦搬送装置及び上部搬送装置へ受け継ぐ位置よりも搬送方向上流側に設けられ、
該穀稈検知手段が穀稈の無いことを検知すると、前記縦搬送装置又は/及び上部搬送装置が深扱ぎ側へ回動される、ものである。
【0007】
請求項2においては、
前記穀稈検知手段は、前記刈取部の刈取フレームの前部に設けられている、ものである。
【0008】
請求項3においては、
前記穀稈検知手段は、左右一対のガイドバネを備え、該ガイドバネに穀稈が接触することにより、穀稈を検知する、ものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、
搬送装置から縦搬送装置及び上部搬送装置への受け継ぎ位置よりも搬送方向上流側で穀稈の有無を検知することにより、穀稈の受け継ぎ前に穀稈の有無を検知でき、刈取作業の終了時に穀稈の稈長が短くなるような場合でも、穀稈の受け継ぎ不良によるコボレを確実に防止できる。
【0011】
請求項2においては、
刈取部の前部で穀稈の有無を検知することにより、穀稈の受け継ぎ前に穀稈の有無を検知でき、刈取作業の終了時に穀稈の稈長が短くなるような場合でも、穀稈の受け継ぎ不良によるコボレを確実に防止できる。
【0012】
請求項3においては、
簡単な構成で、確実に穀稈の有無を検知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るコンバインを示した側面図、図2は同じく平面図、図3は刈取部を示した側面図、図4は同じく平面図、図5は(a)リミットスイッチ及びガイドバネを示した平面図(b)ガイドバネの変形例を示した平面図、図6は制御ブロック図、図7は制御フロー図である。
【0014】
先ず、本発明の一実施例に係るコンバイン100の全体構成について、図1から図3を用いて説明する。
なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に「左側」とし、同じく進行方向に向かって右側を単に「右側」とする。また、本実施例では、三条刈りのコンバインについて説明するが、二条刈りまたは四条刈り以上のコンバインであってもよい。
【0015】
図1及び図2に示すように、コンバイン100は、左右一対の走行クローラ2によって走行機体1が支持されており、この走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取部3が昇降調節可能に装着されている。走行機体1の左側には、刈り取られた穀稈を脱穀、選別する脱穀部5が配設され、走行機体1の右側には、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7が、脱穀部5と横並びに配設されている。走行機体1の後部には、排出オーガ8が旋回可能に設けられており、穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。そして、穀粒タンク7の前方には、運転部10が配設されている。
【0016】
運転部10には、オペレータが搭乗するステップ11と、このステップ11上のハンドルコラム12に設けられた略U形の操縦ハンドル13と、この操縦ハンドル13の後方に設けられた運転座席14と、この運転座席14の左側方のサイドコラム15に設けられた主変速レバー16と副変速レバー17と刈取クラッチレバー18と刈取変速レバー19とが配設されている。そして、運転座席14の下方には、コンバイン100自体の走行や後述するフィードチェーン6を駆動するための動力源となるエンジン20が配設されている。
【0017】
図3及び図4に示すように、刈取部3は、刈取フレーム21の前端に、分草板25・25・・・が突設され、この分草板25・25・・・の後部の刈取フレーム21の前部に、引起タイン23aを備える三条分の引起装置23・23・・・が配設され、引起装置23・23・・・の後下部に、三条分の掻込ホイル36・36・・・及び掻込ベルト35・35・・・が配設され、刈取フレーム21の下部には、刈刃22が配設されている。刈取部3は、圃場の未刈り穀稈が分草板25・25・・・により右二条と左一条とに分草されて、それぞれ引起装置23・23・・・の引起タイン23a・23a・・・により引き起こされ、掻込ホイル36・36・・・及び掻込ベルト35・35・・・により後方に掻き込まれて、刈刃22により株元が切断されるように構成されている。そして、右端の引起装置23と中央の引起装置23との間(右二条の穀稈の搬送経路上)であって、刈取フレーム21の前端には、右二条の穀稈をさらに右一条と中一条とに分草する分草板小25aが突設されている。分草板小25a後部の刈取フレーム21の前部には、左右一対の稈案内棒52・52及び株元案内棒53・53が設けられている(図5参照)。
また、刈取部3は、伝動ケースである主フレーム39の中途部と走行機体1前部との間に昇降シリンダ(図示省略)が介装され、この昇降シリンダが伸縮することにより、刈取部3全体が支点軸38を回動支点として昇降するように構成されている。
そして、刈取部3は、刈取穀稈を搬送する搬送装置46(上部搬送タイン43、下部搬送チェーン44)と、この搬送装置46により搬送された穀稈を受け継いで搬送し、脱穀部5のフィードチェーン6に受け継ぐ扱深さ調節装置40(穂先搬送タイン41、株元搬送チェーン42)とを備えている。
【0018】
搬送装置46は、右二条の穀稈の株元を挟扼して左後方に搬送する右下部搬送チェーン44Rと、同じく穀稈の穂先を係止して左後方に搬送する右上部搬送タイン43Rとを備えるとともに、左一条の穀稈の株元を挟扼して右後方に搬送する左下部搬送チェーン44Lと、同じく穀稈の穂先を係止して右後方に搬送する左上部搬送タイン43Lとを備え、左右一対の上部搬送タイン43L・43R及び下部搬送チェーン44L・44Rの搬送方向終端部には、右二条の穀稈と左一条の穀稈とが合流する合流部X(図4参照)が形成されている。
【0019】
扱深さ調節装置40は、穀稈の株元を挟扼してフィードチェーン6に受け継ぐ縦搬送装置(株元搬送チェーン)42と、同じく穀稈の穂先を係止してフィードチェーン6に受け継ぐ上部搬送装置(穂先搬送タイン)41とを備え、搬送装置46の搬送方向終端部に配設され、前記合流部Xにて合流する三条分の穀稈を受け継いで搬送し、脱穀部5のフィードチェーン6に受け継ぐように構成されている。
そして、扱深さ調節装置40は、基部に扱深さモータ45が取り付けられ、後部(搬送方向下流側)が支点軸38の同軸回りに回動可能に支持されている。
【0020】
搬送装置46及び扱深さ調節装置40の搬送経路上には、図6に示す穀稈の株元側を検出するLセンサー47と、穀稈の穂先側を検出するMセンサー48及びHセンサー49(図3参照)が配設され、穀稈を検出してコントローラ50に信号を送信して、扱深さモータ45を制御することにより、扱深さ調節装置40が支点軸38を回動支点として回動されて、穀稈の長さに関わらず脱穀部5に供給される穀稈の扱深さを適性に保つように構成されている。
扱深さセンサー47、48、49は、センサーアームに穀稈が接触することによりスイッチが作動するものであり、M、Hセンサー48、49は、穀稈の長さに応じて穂先を検出する位置を調整できるように取付位置が変更可能とされている。
また、詳しくは後述するが、扱深さ調節装置40は、穀稈検知手段(リミットスイッチ)51が穀稈の無いことを検知すると、扱深さモータ45が駆動されて、深扱ぎ側へ回動されるように構成されている。
【0021】
このような構成により、コンバイン100は、エンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取部3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈り取ることができる。
【0022】
また、脱穀部5は、穀稈脱穀用の扱胴26と、扱胴26の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別装置27及び唐箕ファン28と、扱胴26の後部から取り出される脱穀排出物を再処理する処理胴29と、揺動選別装置27後部で藁屑や塵埃等を排出する排塵ファン30とを備えている。そして、脱穀部5は、刈取部3から搬送装置46、扱深さ調節装置40によって搬送された穀稈の株元側が、フィードチェーン6に受け継がれて後方へと挟持搬送されて、穀稈の穂先側が扱胴26内に搬入されて扱胴26にて脱穀され、揺動選別装置27による揺動選別と、唐箕ファン28による風選別とが行われ、一番物と二番物と藁屑等に分別されるように構成されている。
【0023】
そして、フィードチェーン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェーン34が配設されている。フィードチェーン6の後端側から排藁チェーン34に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態のまま走行機体1の後方に排出されるか、または脱穀部5の後方に配設された排藁カッタ55にて適宜長さに短く切断された後、走行機体1の後方下方に排出されるように構成されている。
【0024】
次に、穀稈検知手段について、図4から図6を用いて説明する。
図4及び図5に示すように、穀稈検知手段は、穀稈の有無を検知するためのものであって、リミットスイッチ51とガイドバネ54とを備えている。穀稈検知手段は、前記分草板近傍、本実施例では、分草板小25a後部の刈取フレーム21の前部と、左側の刈取フレーム21の前部に設けられている。
【0025】
すなわち、穀稈検知手段は、搬送装置46から扱深さ調節装置40への受け継ぎ位置である合流部Xよりも搬送方向上流側に設けられ、穀稈の受け継ぎ前に穀稈の有無を検知できる位置に設けられている。
そして、穀稈検知手段を構成するリミットスイッチ51の前部には、検知部51a(図5参照)が設けられているとともに、このリミットスイッチ51の前方から後側方には、左右一対のガイドバネ54・54が延設され、このガイドバネ54・54の前後面には、カム54a・54aが設けられている。
【0026】
ガイドバネ54・54は、左右略対称に平面視略弓状に張り出された左右一体の弾性変形可能な部材であって、リミットスイッチ51と同じく、分草板25(25a)後部の刈取フレーム21の前部に設けられている。
そして、ガイドバネ54・54は、外縁に穀稈が接触して弾性変形することにより、カム54a・54aが検知部51aに当接して、リミットスイッチ51をON・OFFするように構成されている。
【0027】
すなわち、右二条の穀稈の有無を検知する穀稈検知手段について説明すると、右端の分草板25と分草板小25aとにより分草された右一条の穀稈、及び分草板小25aと中央の分草板25とにより分草された中一条の穀稈が、それぞれ左右のガイドバネ54・54の外縁に接触することにより、ガイドバネ54・54が内方に弾性変形するとともに(図5に示す二点鎖線)、カム54a・54aが回動されて検知部51aに当接され、リミットスイッチ51が「ON」にされる。
そして、穀稈がガイドバネ54・54に接触しなくなると、ガイドバネ54・54が弾性変形した状態から元の形状に復元するとともに(図5に示す実線)、検知部51aに当接されているカム54a・54aが解除されて、リミットスイッチ51が「OFF」にされる。
【0028】
そして、ガイドバネ54・54は、穀稈が接触するのに適当な長さ(前後方向)を有するとともに、右二条の搬送経路(右端の引起装置23と中央の引起装置23との間)の略全幅(左右方向)に渡たるように弓状に張り出され、搬送経路上の穀稈が確実に接触してリミットスイッチ51が穀稈を検知するように構成されている。また、ガイドバネ54・54は、稈案内棒52・52及び株元案内棒53・53よりも前部に設けられ、圃場の未刈り穀稈が案内棒52・52、53・53にガイドされる前に直接接触して、確実にリミットスイッチ51が穀稈を検知するように構成されている。
そして、図6に示すように、リミットスイッチ51及び前記扱深さモータ45は、コントローラ50に接続され、リミットスイッチ51が穀稈の無いことを検知すると、扱深さモータ45が駆動されるように制御されて、扱深さ調節装置40(穂先搬送タイン41、株元搬送チェーン42)が深扱ぎ側へ回動されるように構成されている。
【0029】
コントローラ50は、リミットスイッチ51及び扱深さセンサーである前記Lセンサー47、Mセンサー48、Hセンサー49からの入力信号に基づいて扱深さモータ45を制御するための制御手段である。
コントローラ50は、リミットスイッチ51から検知信号が送信される場合は、「刈取作業中」であることを認識し、リミットスイッチ51から検知信号が送信されない場合であって、検知信号が送信される状態から送信されない状態への変化を伴わない場合は、「刈取作業開始」であることを認識し、リミットスイッチ51から検知信号が送信されない場合であって、検知信号が送信される状態から送信されない状態への変化を伴う場合は、「刈取作業終了」であることを認識するように設定されている。また、コントローラ50には、扱深さ調節装置40を所定量回動させるため扱深さモータ45の駆動量が記憶されている。
【0030】
次に、コントローラ50による扱深さモータ45の制御フローについて、図7を用いて説明する。
図7に示すように、刈取作業開始時は、ガイドバネ54・54に穀稈が接触していないため、リミットスイッチ51は「OFF」のままで穀稈を検知せず、コントローラ50へ検知信号を送信しない(ステップ1、2)。
そして、コントローラ50は、リミットスイッチ51から検知信号が送信されない場合であって、検知信号が送信される状態から送信されない状態への変化を伴わない場合であるため、「刈取作業開始」であることを認識する。コントローラ50が「刈取作業開始」であることを認識すると、扱深さモータ45は、駆動されず(ステップ4、6)、扱深さ調節装置40は、深扱ぎ側へ回動されることなく初期位置(標準位置または設定位置)となっており、刈取作業状態(脱穀クラッチ、刈取クラッチが「入」状態)が続行される(ステップ8)。
【0031】
そして、刈取作業中において、機体の進行にともない分草板の間に入った穀稈が、ガイドバネ54・54に接触することにより、ガイドバネ54・54が弾性変形して、リミットスイッチ51が「ON」とされて穀稈を検知し、コントローラ50へ検知信号を送信する(ステップ1、3)。
そして、コントローラ50は、リミットスイッチ51から検知信号が送信される場合は、「刈取作業中」であることを認識する。コントローラ50が「刈取作業中」であることを認識すると、扱深さモータ45は、扱深さセンサーである穀稈の穂先側を検出するMセンサー48及びHセンサー49の信号に応じて駆動され(ステップ5、6)、扱深さ調節装置40は、深扱ぎ側へは回動されることなく刈取作業が続行される(ステップ8)。
【0032】
一方、刈取作業終了時や圃場端に至り未刈り穀稈が無くなると、ガイドバネ54・54に穀稈が接触しなくなり、ガイドバネ54・54は、弾性変形した状態から元の形状に復元するため、リミットスイッチ51は「OFF」とされて穀稈を検知せず、コントローラ50へ検知信号を送信しない(ステップ1、2)。
そして、コントローラ50は、リミットスイッチ51から検知信号が送信されない場合であって、検知信号が送信される状態から送信されない状態への変化を伴う場合であるため、「刈取作業終了」であることを認識する。コントローラ50が「刈取作業終了」であることを認識すると、扱深さモータ45は、駆動され(ステップ4、7)、扱深さ調節装置40は、穂先搬送タイン41及び株元搬送チェーン42が一体的に深扱ぎ側へ所定量回動されて刈取作業が終了される(ステップ9)。
【0033】
すなわち、図3に示すように、扱深さ調節装置40は、扱深さモータ45により支点軸38を回動支点として、穂先搬送タイン41及び株元搬送チェーン42が一体的に前部(搬送方向上流側)が上下動されることにより、搬送装置46から扱深さ調節装置40に穀稈を受け継ぐ時の挟持高さが変更されて、扱深さが調節される。
【0034】
以上のように、コンバイン100は、刈取部3で刈り取られた刈取穀稈の株元側を受け継いで搬送し、脱穀部5のフィードチェーン6に受け継ぐ縦搬送装置(株元搬送チェーン)42と、該刈取穀稈の穂先側を受け継いで搬送し、フィードチェーン6に受け継ぐ上部搬送装置(穂先搬送タイン)41と、を備え、扱深さ調節装置40(穂先搬送タイン41、株元搬送チェーン42)が上下回動されて扱深さ調節可能とするコンバイン100において、リミットスイッチ51が前記刈取穀稈を扱深さ調節装置40(穂先搬送タイン41、株元搬送チェーン42)へ受け継ぐ位置(合流部X)よりも搬送方向上流側に設けられ、リミットスイッチ51が穀稈の無いことを検知すると、扱深さ調節装置40(穂先搬送タイン41、株元搬送チェーン42)が深扱ぎ側へ回動されるものである。
このような構成により、穀稈の受け継ぎ前に穀稈の有無を検知でき、刈取作業の終了時に穀稈の稈長が短くなるような場合でも、穀稈の受け継ぎ不良によるコボレを確実に防止できる。
【0035】
そして、リミットスイッチ51は、刈取部3の刈取フレーム21の前部に設けられているものであるため、刈取部3の前部で穀稈の有無を検知することにより、穀稈の受け継ぎ前に穀稈の有無を検知でき、刈取作業の終了時に穀稈の稈長が短くなるような場合でも、穀稈の受け継ぎ不良によるコボレを確実に防止できる。
【0036】
また、リミットスイッチ51は、左右一対のガイドバネ54・54を備え、ガイドバネ54・54に穀稈が接触することにより、穀稈を検知するものであるため、確実に穀稈の有無を検知できる。
【0037】
なお、実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0038】
穀稈検知手段51は、リミットスイッチとされているが、光センサーや静電センサー等の穀稈の有無を検知できるセンサーで構成されてもよい。
【0039】
また、ガイドバネ54・54は、棒材や帯状等に形成されてもよく、鋼材や合成樹脂等の弾性部材で構成されてもよい。例えば、ガイドバネ54・54は、バネ部材(図5(a)参照)による構成の他に、センサーアーム(アーム部材)54・54(図5(b)参照)による構成も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインを示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】刈取部を示した側面図。
【図4】同じく平面図。
【図5】(a)リミットスイッチ及びガイドバネを示した平面図(b)ガイドバネの変形例を示した平面図。
【図6】制御ブロック図。
【図7】制御フロー図。
【符号の説明】
【0041】
3 刈取部
5 脱穀部
6 フィードチェーン
21 刈取フレーム
40 扱深さ調節装置
41 穂先搬送タイン
42 株元搬送チェーン
43L・43R 上部搬送タイン
44L・44R 下部搬送チェーン
46 搬送装置
51 リミットスイッチ
54 ガイドバネ
100 コンバイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部で刈り取られた刈取穀稈の株元側を受け継いで搬送し、脱穀部のフィードチェーンに受け継ぐ縦搬送装置と、
該刈取穀稈の穂先側を受け継いで搬送し、該フィードチェーンに受け継ぐ上部搬送装置と、を備え、
該縦搬送装置又は/及び上部搬送装置が上下回動されて扱深さ調節可能とするコンバインにおいて、
穀稈の有無を検知する穀稈検知手段が、前記刈取穀稈を縦搬送装置及び上部搬送装置へ受け継ぐ位置よりも搬送方向上流側に設けられ、
該穀稈検知手段が穀稈の無いことを検知すると、前記縦搬送装置又は/及び上部搬送装置が深扱ぎ側へ回動される、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記穀稈検知手段は、前記刈取部の刈取フレームの前部に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記穀稈検知手段は、左右一対のガイドバネを備え、該ガイドバネに穀稈が接触することにより、穀稈を検知する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−301750(P2008−301750A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151010(P2007−151010)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】