コンバイン
【課題】刈取搬送装置を、穀装置の前側に収納した刈取作業位置と、車台の側部の非刈取作業位置との両方の位置で、一つのロックレバーによってロック作用とその解除とができるものとし、刈取搬送装置ないし該刈取搬送装置に隠れていた機体各部のメンテナンスを容易に行なうことができるものとする。
【解決手段】車台(1)前部の左右一側寄りの位置に縦向きの回動支持軸(4,4)を設け、該回動支持軸(4,4)に四点リンク機構(5)を軸装し、該四点リンク機構(5)によって刈取搬送装置(3)を脱穀装置(2)の前側の刈取作業位置と車台(1)の側方の非刈取作業位置とにわたって回動可能に支持し、該刈取搬送装置(3)を前記刈取作業位置と非刈取作業位置との両方の位置で位置固定するロック装置(7)及び該ロック装置(7)の操作用のロックレバー(6)を設ける。
【解決手段】車台(1)前部の左右一側寄りの位置に縦向きの回動支持軸(4,4)を設け、該回動支持軸(4,4)に四点リンク機構(5)を軸装し、該四点リンク機構(5)によって刈取搬送装置(3)を脱穀装置(2)の前側の刈取作業位置と車台(1)の側方の非刈取作業位置とにわたって回動可能に支持し、該刈取搬送装置(3)を前記刈取作業位置と非刈取作業位置との両方の位置で位置固定するロック装置(7)及び該ロック装置(7)の操作用のロックレバー(6)を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車台に搭載した脱穀装置の前方に刈取搬送装置を配置して構成したコンバインにおいて、前部の刈取搬送装置とすぐ背後の脱穀装置との間に、広くメンテナンス空間を確保してメンテナンスを容易に行うために、前部の刈取搬送装置を車台の側方位置に回動させる、いわゆる、刈取オープン装置に関する公知の技術がある。
【0003】
例えば、特開2005−27543号公開特許公報(特許文献1参照)に開示されているように、コンバインにおいて、脱穀装置の前側にある刈取機を、四点リンク機構で形成した回動装置によって走行車台の側方外側に回動させる構成となっている。
【0004】
そして、上記公報の記載によると、「穀稈を刈取り移送する刈取機を側方外側ヘ回動移動させる回動装置は、四点リンク機構で構成したことにより、刈取機は、二本の前後支持フレームで支持されることになり、回動移動させたときでも、強固に支持することができる。」と述べている。
【特許文献1】特開2005−27543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
まず、前項で本件出願人が提示した従来型の刈取オープン装置は、回動する刈取機の収納位置における位置決め機構が、前・後支持フレームにそれぞれ別々に設けている2つの位置決めピンと、他に一つのロック機構とからなる構成で、構造が複雑な上に操作が煩わしく、更に、刈取機のオープン位置にはロック機構が設けられていない課題がある。
【0006】
そして、刈取機を回動自由に支持する四点リンク機構は、前・後の支持フレームから構成されており、刈取機の収納位置において、前後にはみ出して相当の前後スペースを必要とし、コンパクト化の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
すなわち、請求項1に記載した発明は、車台(1)前部の左右一側寄りの位置に縦向きの回動支持軸(4,4)を設け、該回動支持軸(4,4)に四点リンク機構(5)を軸装し、該四点リンク機構(5)によって刈取搬送装置(3)を脱穀装置(2)の前側の刈取作業位置と車台(1)の側方の非刈取作業位置とにわたって回動可能に支持し、該刈取搬送装置(3)を前記刈取作業位置と非刈取作業位置との両方の位置で位置固定するロック装置(7)及び該ロック装置(7)の操作用のロックレバー(6)を設けたことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0008】
刈取搬送装置3は、四点リンク機構5によって支持され、脱穀装置2の前側に収納した刈取作業位置と、車台1の側部の非刈取作業位置とに回動可能に構成しているが、両方の位置において、ロックレバー6によってロック装置7を操作して、確実にロックし安定よく位置決めができるものとなっている。
【0009】
つぎに、請求項2に記載した発明は、オープンフレーム(9)の上側に刈取搬送装置(3)を支持し、前記四点リンク機構(5)を構成する上下2つのアーム(8,8)の先端部を、オープンフレーム(9)の内空部(10)に挿入して枢着し、刈取搬送装置(3)を刈取作業位置に位置させた状態で、前記2つのアーム(8,8)のうちの少なくとも一方のアームをオープンフレーム(9)の内空部(10)に収納できる構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとしたものである。
【0010】
四点リンク機構5を構成している2つのアーム8,8は、先端部分の上下にオープンフレーム9を支持したから、支持強度が大幅に強化されるとともに、少なくとも一方のアーム8を、刈取搬送装置3が刈取作業位置にあるとき、オープンフレーム9の内空部10に収納できるから、構成がコンパクトになって収納時に場所を取らないものとなった。
【0011】
つぎに、請求項3に記載した発明は、前記ロックレバー(6)に、前記刈取搬送装置(3)の刈取入力プーリー(11)に巻き掛けた伝動ベルト(12)に作用するベルトストッパー(13)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとしたものである。
【0012】
刈取オープン操作に先立ってロックレバー6をロック解除側に操作すると、ロック解除と同時にベルトストッパー13も解放され、伝動ベルト12の取り外しが簡単にできるものとなっている。
【0013】
つぎに、請求項4に記載した発明は、前記回動支持軸(4,4)から遠い部位で下側の支持台(14)上を転動する支持転輪(15)をオープンフレーム(9)に対して上下動自由に取り付け、該支持転輪(15)は、前記刈取搬送装置(3)が刈取作業位置にあるとき、前記ロックレバー(6)のロック解除操作に連動して下動して支持台(14)上に押し付けられる構成としたことを特徴とする請求項2記載のコンバインとしたものである。
【0014】
刈取搬送装置3のオープン回動の初期に、支持転輪15で刈取搬送装置3を支持台14上に受けさせて支持しながら転動させて、四点リンク機構5の受ける重量負担を軽くすることができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によると、刈取搬送装置3を四点リンク機構5に支持させ、脱穀装置2の前側に収納した刈取作業位置と、車台1の側部の非刈取作業位置とにわたって回動可能に構成したものであり、上記した両方の位置で、一つのロックレバー6によってロック装置7を操作し、ロック作用とその解除とができるものとなっており、構造をコンパクトに構成し、加えて、ロックレバー6の簡単な操作で、両位置でロックとその解除ができ、刈取搬送装置3ないし該刈取搬送装置3に隠れていた機体各部のメンテナンスを容易に行なうことができる。
【0016】
そして、請求項2の発明は、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、四点リンク機構5を構成している前・後2つのアーム8,8の先端部を、上側に刈取搬送装置3を支持したオープンフレーム9の内空部10に挿入して、アーム8,8の上下両側で支持したから、支持強度が大幅に強化され、頑丈な支持・回動機構となった。
【0017】
更に、この発明は、前・後2つのアーム8,8のうち、少なくとも一方のアームを、刈取搬送装置3を収納した位置において、上記オープンフレーム9の内空部10に配置できる構成にしているから、四点リンク機構5をコンパクトに収め、周囲への場所的影響を少なくすることができる。
【0018】
そして、請求項3に記載した発明は、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、刈取オープン操作に先立ってロックレバー6をロック解除側に操作すると、その解除操作によりベルトストッパー13も同時に伝動ベルト12から離れて、伝動ベルト12の取り外し作業が楽にできる。
【0019】
そして、請求項4に記載した発明は、上記請求項2記載の発明の効果に加えて、刈取搬送装置3のオープン回動の初期に、支持転輪15で刈取搬送装置3を支持台14上に受けさせて支持しながら、オープン工程の最初の回動ができるから、四点リンク機構5を構成している前・後2つのアーム8,8にかかる刈取搬送装置3の重量負荷を軽減でき、刈取搬送装置3の回動操作を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、コンバインは、図5に示すように、クローラ18,18を装備した車台1上に、穀稈供給口19を前側に位置させた脱穀装置2を搭載し、その前側に刈取搬送装置3を配置し連結して構成している。そして、上記刈取搬送装置3は、図1、及び図4に示すように、オープンフレーム9の上側に、横向きに刈取伝動ケース20が装備され、その左端に刈取入力プーリ11が軸架されて、伝動ベルト12を介してエンジンから走行ミッションを経由した回転動力が伝動される構成としている。そして、刈取フレーム21は、円筒状の部材からなり、基部を前記刈取伝動ケース20に上下回動自由に枢着連結し、中間部には車台1の前部に装備した刈取上下油圧シリンダ22に連結して支持し、先端側を前方下方に延長して刈取装置23、穀稈引起し装置24、穀稈搬送装置25を設けて構成している。そして、前記刈取フレーム21は、前記刈取入力プーリー11によって入力された動力を、回転各部に伝動する刈取伝動軸が内装して軸架されており、走行速度(作業能率)にシンクロされた回転速度によって刈取搬送装置3の各装置を伝動する構成としている。
【0021】
そして、前記オープンフレーム9は、図1、乃至図3に示すように、内空部10が形成され、その内空部10に四点リンク機構5を構成する前・後2つのアーム8,8の先端部を挿入して上下に枢着して構成している。そして、該前・後2つのアーム8,8は、その基部を、車台1の側部寄りに軸架されている回動支持軸4,4にそれぞれ軸装して設けた構成としている。
【0022】
このように、刈取搬送装置3は、オープンフレーム9上に装備された状態で、四点リンク機構5の回動作用によって、前記脱穀装置2の前側の収納した作業位置と、前記車台1の側部のオープン位置とに回動可能に支持された構成となっている。この場合、前記2つのアーム8,8の内、一方側の後アーム8は、図3に示すように、刈取搬送装置3が収納状態の作業位置にあるときに、オープンフレーム9の内空部10内に収まった位置にある構成となっている。
【0023】
そして、ロックレバー6は、図面に示すように、前記刈取伝動ケース20の上部に回動操作可能に設けられ、前記オープンフレーム9の上部に装備したロック装置7を上下操作すると共に、連動ロット26を介してロック爪27を固定ピン28(車台1に固定されている)にロックと、その解除操作ができる構成としている。そして、前記ロック装置7は、図1、図2、図4に示すように、上記ロックレバー6に連結されて上下するロックピン7aと、オープンフレーム9に設けたロックピン挿通孔7bと、後アーム8に設けた収納位置ロック孔7cと、オープン位置ロック孔7dとから構成している。
【0024】
したがって、上記構成のロック装置7は、刈取搬送装置3の刈取伝動ケース20に設けたロックレバー6の上下操作によって、刈取搬送装置3を収納した作業位置では、ロックピン7aをロックピン挿通孔7bと収納位置ロック孔7cとに挿し通して連結ロックし(図1参照)、刈取搬送装置3を車台1の側方外側のオープン位置に回動すると、ロックピン7aを前記ロックピン挿通孔7bとオープン位置ロック孔7d(図2仮想線参照)とに挿し通して連結ロック作用を行い、その解除操作ができるものとしている。
【0025】
そして、ロックレバー6は、図1、及び図4に示すように、前記刈取搬送装置3の刈取入力プーリー11に巻き掛けた前記走行ミッションから分岐した回転動力を入力する伝動ベルト12に作用するベルトストッパー13を設け、ロック解除時に一体にベルト12から上方に離れる構成とし、楽に伝動ベルト12の取り外しができる構成となっている。
【0026】
そして、前記オープンフレーム9は、図1に示すように、前記回動支持軸4,4から離れた遠い部位で下側の支持台14上を転動する支持転輪15を上下移動自由に軸架して設けた構成としている。そして、上記支持転輪15は、図4に示すように、前記刈取搬送装置3が収納した作業位置にあるとき、前記ロックレバー6をロック解除操作すると、前記したロック爪27の下部に連結している屈曲連動杆29を介して下動して前記支持台14上に達する位置まで下降する構成としている。
【0027】
つぎに、上記構成の実施例について、その作用と効果をまとめて述べる。
まず、実施例に係るコンバインは、刈取搬送装置3を脱穀装置2の前側に収納した位置において、ロック装置7とロック爪27とをロック状態に保持して、刈取脱穀作業を行う。そして、コンバインは、刈取搬送装置3のメンテナンスを行う場合には、まず、ロックレバー6を、図4の仮想線で示すように、上方に解除操作すると、ロックピン7aがアーム8の収納位置ロック孔7cから上に抜けてロック解除され、一方のロック爪27も連動ロット26によって引き上げられて固定ピン28から離れてロック解除となる。と同時に、支持転輪15は、屈曲連動杆29を介して連動されて下方に移動し、支持台14上まで下がってオープンフレーム9を受け止め支持する。
【0028】
そして、刈取搬送装置3は、オープンフレーム9を支持している四点リンク機構5の前・後2つのアーム8,8を、回動支持軸4,4を支点にして車台の外側に回動してオープン位置まで移動する。
【0029】
そのとき、支持転輪15は、刈取搬送装置3のオープン回動の初期において、支持台14上を転動しながら重量を支持し、オープン工程の最初の回動ができるから、四点リンク機構5の前・後2つのアーム8,8にかかる刈取搬送装置3の重量負荷を軽減することができる利点がある。
【0030】
そして、オープン回動の前には、ベルトストッパー13は、ロックレバー6のロック解除の操作に伴って一体に上方に上がり、伝動ベルト12から離れるから、伝動ベルト12の取り外しが楽にできる。
【0031】
そして、刈取搬送装置3は、車台1の側部のオープン位置に達したとき、一体に回動してきた前記ロックレバー6をロック側に操作すると、ロックピン7aがオープンフレーム9のロックピン挿通孔7bから下方に移動してアーム8側のオープン位置ロック孔7dに挿入され、その位置で連結ロック作用が働くのである。
【0032】
そして、四点リンク機構5は、前・後2つのアーム8,8の先端部を、オープンフレーム9の内空部10に挿入して、そのアーム8,8の上下両側で支持した構成にしているから、刈取搬送装置3を支持する強度が大幅に強化され、頑丈な支持・回動機構となっている。
【0033】
更に述べれば、実施例は、前・後2つのアーム8,8のうち、後アーム8を、刈取搬送装置3を収納した作業位置において、前記オープンフレーム9の内空部10に嵌め込んだ状態になるから、四点リンク機構5をコンパクトに収めて周囲への場所的影響を少なくすることができる優れた特徴となっている。
【0034】
つぎに、コンバインの車台上に搭載したメインタンク30とサブタンク31とからなる2つの燃料タンク30,31と、該燃料タンク30,31に貯留した燃料をエンジン32に供給するためのメインフィルター33、燃料ポンプ34、プレフィルター35の配置構成について図6、乃至図10に基づいて実施例を説明する。
【0035】
まず、コンバインは、図6に示すように、エンジン32が操縦席36に下側に搭載されており、その操縦席36の後方位置にはグレンタンク37が設けられている。そして、図6において、38は脱穀装置であって、前記グレンタンク37の左側に隣接して配置され、脱穀装置38の後部には排藁カッター39が装置されている。40は穀粒排出オーガーであって、前記グレンタンク37の後部に接続し、貯留した穀粒を機外に搬出する構成としている。
【0036】
そして、前記脱穀装置38は、図7に示すように、一番揚穀装置41とニ番揚穀装置42とが側部で、グレンタンク37側に前後に配置して設けられ、一番揚穀装置41が一番穀粒を前記グレンタンク37に揚穀し、ニ番揚穀装置42がニ番物をニ番処理装置に揚穀する構成としている。
【0037】
そして、揺動プーリー44は、図7、及び図8に示すように、ニ番揚穀装置42の後方において、後述するサブタンク31の上方に軸架して設け、脱穀装置38の選別室に支架している揺動選別棚を駆動する構成としている。
【0038】
そして、グレンタンク37は、図9に示すように、脱穀装置38側の底板45を、タンクの下部に前後方向に軸装している穀粒排出螺旋46側に斜めに傾斜した構成としている。
【0039】
そして、サブタンク31は、図面に示すように、車台1の後部左側に搭載しているメインタンク30と、グレンタンク37の後部にあるオーガメタル48との間ある空間部49を利用して取り付けている。この場合、サブタンク31は、排藁カッター39の下側に、後方から入り込んだ状態に取り付けられ、脱穀装置38側のすぐ上には揺動プーリー44が軸架されている。そして、サブタンク31は、図8に示すように、上面を前下がりの形状に形成して前記揺動プーリ44との接触を避ける形状に構成している。
【0040】
このように、サブタンク31は、メインタンク30の側方に接近させて、限られた狭いスペースを利用して取り付け、コンバインに多量の燃料を搭載できるものとしている。そして、サブタンク31は、その上面形状を前下がりに傾斜した構成にして揺動プーリー44との干渉を回避すると共に、藁屑等が溜まりをなくした利点もある。
【0041】
そして、燃料タンクガード50は、図8、乃至図10に示すように、燃料タンク30,31の背後の全幅に渡って配置し、車台1の後部左右の取付部に着脱自在に取り付けができる構成としている。
【0042】
このように、燃料タンクガード50は、着脱が自由にできるから、メインタンク30やサブタンク31の取り付け替えやガード自体の交換がきわめて容易にできるものでありながら、燃料タンク30,31の後方ガードを確実に行うことができるものとなっている。
【0043】
つぎに、プレフィルター35と燃料ポンプ34とメインフルター33とは、図面に示すように、脱穀装置38とグレンタンク37との間にある空間を利用してエンジン32と燃料タンク30,31との間に燃料ホースで一連の状態に接続されて配置した構成としている。そして、手動ポンプ51は、図7、及び図8に示すように、メインフィルター33の上部で後ろ側に取付けて設け、前記排藁カッター39の下方(後ろ側)から手を挿し込んで押圧操作ができる構成としている。
【0044】
このように、プレフィルター35と燃料ポンプ34とメインフルター33とは、燃料タンク30,31とエンジン32との間に燃料を送ることができる状態に燃料ホースで連通状態に接続しているから、円滑に燃料の供給ができるが、ガス欠等の緊急時にあっても、メインフィルター33の上部で後ろ側に手動ポンプ51を設けているから、手動操作でエンジン32まで燃料の供給ができる特徴がある。そして、これらのプレフィルター35と燃料ポンプ34とメインフルター33とは、側面から見れば、脱穀装置38の一番揚穀装置41とニ番揚穀装置42との間で、しかも、背面的には脱穀装置38とグレンタンク37とで囲まれた狭いスペースを利用して装置した特徴もある。
【0045】
つぎに、脱穀装置38のフィードチエーン55と排藁チエーン56とを車速(作業能率)に応じて自動変速する構成において、両チエーン55,56の変速タイミングに関する実施例を、図11に基づいて説明する。
【0046】
通常、脱穀装置38は、脱穀作業中、フィードチエーン55が穀稈の株元を挟持して搬送しながら穂先側を扱室に供給して脱穀し、扱室から送り出された排藁を排藁チエーン56に引き継がせて機外に搬送する。このような排藁の引き継ぎ搬送の過程において、排藁チエーン56は、フィードチエーン55の搬送終端部から排藁を引き継ぐとき、排藁の停滞をなくし、円滑に安定して引き継ぐためにはフィードチエーン55と少なくとも同速度か、或いは高速であることが必要である。以下説明する実施例は、フィードチエーン55から排藁チエーン56へ排藁を引き継がせる引継ぎ性能を安定させるために、上記条件を満足する自動変速機構を構成したものである。
【0047】
まず、フィードチエーン55は、図11に示すように、入力プーリー57を軸架したフィードチエーン変速装置58から駆動スプロケット59によって伝動される構成としている。そして、排藁チエーン56は、排藁入力プーリー60を有する排藁チエーン変速装置61から一連の伝動装置62によって伝動される構成としている。
【0048】
そして、前記フィードチエーン変速装置58と排藁チエーン変速装置61とは、図外のコントローラに接続され、車速(作業能率)に対応して高速走行時には高速側に、低速走行時には低速側に自動変速される構成としている。この場合、具体的な図示は省略したが、上記フィードチエーン変速装置58と排藁チエーン変速装置61とは、コントローラから出力される制御信号に基づいて制御モータが制御され、ギヤの変速操作による変速が行われる構成となっている。そして、前記コントローラは、車速が増速されて両チエーン55,56を増速側に変速するときには排藁チエーン56を先に増速して、その後、フィードチエーン55を増速し、減速するときには、先にフィードチエーン55を減速した後、排藁チエーン56を減速する変速タイミングを確保する構成としている。
【0049】
以上のように、実施例は、両チエーン55、56を変速する場合には、必ず、排藁チエーン56がフィードチエーン55より遅くならない変速タイミングを保って変速し、変速中でも排藁の引き継ぎ性能を安定して継続できるものとしている。したがって、実施例は、説明の冒頭に述べたように、フィードチエーン55から排藁チエーン56への排藁の引継ぎ作用を、変速作用の前後においても安定させることができる特徴がある。
【0050】
つぎに、コンバイン作業において、圃場表面に散布する切藁を均一排出する実施例を説明する。
実施例は、図12に示すように、刈取作業を終了するとき(圃場のコーナーに達して旋回後、続けてコンバイン作業をするとき。)、車台前部の刈取搬送装置65の終端部に装備している穀稈センサ66が穀稈の検出をしなくなると、フィードチエーン55と排藁チエーン56とを穀稈、及び排藁を挟持した状態で自動停止する構成としている。
【0051】
つぎに、実施例は、図13に示すように、圃場のコーナーでコンバインを旋回した後、刈取作業を再開し、前記穀稈センサ66が搬送穀稈を検出すると、搬送穀稈を挟持した状態で停止していた前記フィードチエーン55と排藁チエーン56との伝動を開始して、穀稈、及び排藁を連続状態で排藁カッター39に搬送して供給する構成としている。
【0052】
以上のように構成することによって、実施例は、コンバイン作業において、従来のように、圃場面に排出する切藁の2重排出をほとんどなくし、切藁を排出しない空白部分を少なくできる特徴がある。したがって、本件実施例は、事後の圃場管理、すなわち、土中ガスの発生斑をなくし、耕耘作業に支障を与えることがほとんどない効果かある。
【0053】
なお、コンバイン作業において、切藁の二重排出を防止する方策として、図14に示すように、排藁カッター39の下部に開閉シャッター67を設け、該排藁カッター39の切藁排出位置の前側圃場面を検出できる映像センサ68を装備して構成する実施例がある。
【0054】
該実施例は、コンバイン作業中に排藁カッター39の前方位置の圃場面を映像センサ68によって検出し、既に切藁が散布されている圃場面には二重散布を防止するために、前記開閉シャッター67を、図14に実線で示す位置に、自動的に閉める構成として二重散布を防止することができる。
【0055】
つぎに、図15、乃至図17に基づいて選別制御の実施例を説明する。
まず、コントローラ70は、入力側に圧力センサ71を接続し、検出した圧力を入力する構成としている。この実施例の場合、圧力センサ71は、図17に示すように、扱室上部の送塵板72の回動枢着部に接続して設け、扱室内の送塵によって送塵板72が受ける圧力を検出して前記コントローラ70に情報として入力する構成としている。
【0056】
当然のことながら、圧力センサ71が検出する送塵板72の圧力は、扱室内部を持ち回られている送塵量に比例し、扱室の排塵物の量が増加すると、高くなる傾向が明らかになっている。
【0057】
つぎに、コントローラ70は、図15に示すように、出力側に、唐箕調節手段73、シーブ調節手段74、送塵板駆動モーター75、負荷表示手段76、警報ブザー77を接続して出力する制御信号で制御する構成としている。この場合、コントローラ70は、送塵板72から圧力センサ71が検出した圧力が設定した基準値を超えると、唐箕調節手段73(実施例は唐箕風量を増減調節する変速装置)とシーブ調節手段74(実施例はシーブの傾斜度を調節してシーブ間の選別間隔を変更する制御モータ)とに制御信号を出力して、唐箕の選別風量を増大し、シーブの選別間隔を広くする選別制御を行うことになる。
【0058】
このように、実施例は、扱室内の送塵板72が扱室内を持ち回られている排塵物から受ける圧力を圧力センサ71で検出し、唐箕とシーブとを制御して排塵物の量に応じた選別制御を行うものである。
【0059】
そして、コントローラ70は、操縦席のモニタに負荷の表示(負荷表示手段76)をしたり、排塵量が過大になって選別制御が対応できない状態になると、警報ブザー77を発することになる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本件発明の要部を示す正面図
【図2】要部の作用平面図
【図3】図2の一部の横断面図
【図4】ロックレバーの作用を示す側面図
【図5】コンバインの側面図
【図6】実施例を示すコンバインの平面図
【図7】実施例のメイン、及びサブタンクと関連装置を配置した平面図
【図8】図7の要部側面図
【図9】図7の背面図
【図10】燃料タンクガードを分離した状態の側面図
【図11】別実施例の概要平面図
【図12】別実施例の穀稈と排藁との搬送状態を示す概略の平面図
【図13】別実施例の穀稈と排藁との搬送状態を示す概略の平面図
【図14】別実施例の排藁カッターの開閉シャッターの作用を示す概略側面図
【図15】別実施例の制御部のブロック図
【図16】別実施例の送塵板の上面図
【図17】別実施例の送塵板の作用図。
【符号の説明】
【0061】
1 車台 2 脱穀装置
3 刈取搬送装置 4,4 回動支持軸
5 四点リンク機構 6 ロックレバー
7 ロック装置 7a ロックピン
7b ロックピン挿通孔 7c 収納位置ロック孔
7d オープン位置ロック孔 8,8 アーム
9 オープンフレーム 10 内空部
11 刈取入力プーリー 12 伝動ベルト
13 ベルトストッパー 14 支持台
15 支持転輪。
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車台に搭載した脱穀装置の前方に刈取搬送装置を配置して構成したコンバインにおいて、前部の刈取搬送装置とすぐ背後の脱穀装置との間に、広くメンテナンス空間を確保してメンテナンスを容易に行うために、前部の刈取搬送装置を車台の側方位置に回動させる、いわゆる、刈取オープン装置に関する公知の技術がある。
【0003】
例えば、特開2005−27543号公開特許公報(特許文献1参照)に開示されているように、コンバインにおいて、脱穀装置の前側にある刈取機を、四点リンク機構で形成した回動装置によって走行車台の側方外側に回動させる構成となっている。
【0004】
そして、上記公報の記載によると、「穀稈を刈取り移送する刈取機を側方外側ヘ回動移動させる回動装置は、四点リンク機構で構成したことにより、刈取機は、二本の前後支持フレームで支持されることになり、回動移動させたときでも、強固に支持することができる。」と述べている。
【特許文献1】特開2005−27543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
まず、前項で本件出願人が提示した従来型の刈取オープン装置は、回動する刈取機の収納位置における位置決め機構が、前・後支持フレームにそれぞれ別々に設けている2つの位置決めピンと、他に一つのロック機構とからなる構成で、構造が複雑な上に操作が煩わしく、更に、刈取機のオープン位置にはロック機構が設けられていない課題がある。
【0006】
そして、刈取機を回動自由に支持する四点リンク機構は、前・後の支持フレームから構成されており、刈取機の収納位置において、前後にはみ出して相当の前後スペースを必要とし、コンパクト化の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
すなわち、請求項1に記載した発明は、車台(1)前部の左右一側寄りの位置に縦向きの回動支持軸(4,4)を設け、該回動支持軸(4,4)に四点リンク機構(5)を軸装し、該四点リンク機構(5)によって刈取搬送装置(3)を脱穀装置(2)の前側の刈取作業位置と車台(1)の側方の非刈取作業位置とにわたって回動可能に支持し、該刈取搬送装置(3)を前記刈取作業位置と非刈取作業位置との両方の位置で位置固定するロック装置(7)及び該ロック装置(7)の操作用のロックレバー(6)を設けたことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0008】
刈取搬送装置3は、四点リンク機構5によって支持され、脱穀装置2の前側に収納した刈取作業位置と、車台1の側部の非刈取作業位置とに回動可能に構成しているが、両方の位置において、ロックレバー6によってロック装置7を操作して、確実にロックし安定よく位置決めができるものとなっている。
【0009】
つぎに、請求項2に記載した発明は、オープンフレーム(9)の上側に刈取搬送装置(3)を支持し、前記四点リンク機構(5)を構成する上下2つのアーム(8,8)の先端部を、オープンフレーム(9)の内空部(10)に挿入して枢着し、刈取搬送装置(3)を刈取作業位置に位置させた状態で、前記2つのアーム(8,8)のうちの少なくとも一方のアームをオープンフレーム(9)の内空部(10)に収納できる構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとしたものである。
【0010】
四点リンク機構5を構成している2つのアーム8,8は、先端部分の上下にオープンフレーム9を支持したから、支持強度が大幅に強化されるとともに、少なくとも一方のアーム8を、刈取搬送装置3が刈取作業位置にあるとき、オープンフレーム9の内空部10に収納できるから、構成がコンパクトになって収納時に場所を取らないものとなった。
【0011】
つぎに、請求項3に記載した発明は、前記ロックレバー(6)に、前記刈取搬送装置(3)の刈取入力プーリー(11)に巻き掛けた伝動ベルト(12)に作用するベルトストッパー(13)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとしたものである。
【0012】
刈取オープン操作に先立ってロックレバー6をロック解除側に操作すると、ロック解除と同時にベルトストッパー13も解放され、伝動ベルト12の取り外しが簡単にできるものとなっている。
【0013】
つぎに、請求項4に記載した発明は、前記回動支持軸(4,4)から遠い部位で下側の支持台(14)上を転動する支持転輪(15)をオープンフレーム(9)に対して上下動自由に取り付け、該支持転輪(15)は、前記刈取搬送装置(3)が刈取作業位置にあるとき、前記ロックレバー(6)のロック解除操作に連動して下動して支持台(14)上に押し付けられる構成としたことを特徴とする請求項2記載のコンバインとしたものである。
【0014】
刈取搬送装置3のオープン回動の初期に、支持転輪15で刈取搬送装置3を支持台14上に受けさせて支持しながら転動させて、四点リンク機構5の受ける重量負担を軽くすることができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によると、刈取搬送装置3を四点リンク機構5に支持させ、脱穀装置2の前側に収納した刈取作業位置と、車台1の側部の非刈取作業位置とにわたって回動可能に構成したものであり、上記した両方の位置で、一つのロックレバー6によってロック装置7を操作し、ロック作用とその解除とができるものとなっており、構造をコンパクトに構成し、加えて、ロックレバー6の簡単な操作で、両位置でロックとその解除ができ、刈取搬送装置3ないし該刈取搬送装置3に隠れていた機体各部のメンテナンスを容易に行なうことができる。
【0016】
そして、請求項2の発明は、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、四点リンク機構5を構成している前・後2つのアーム8,8の先端部を、上側に刈取搬送装置3を支持したオープンフレーム9の内空部10に挿入して、アーム8,8の上下両側で支持したから、支持強度が大幅に強化され、頑丈な支持・回動機構となった。
【0017】
更に、この発明は、前・後2つのアーム8,8のうち、少なくとも一方のアームを、刈取搬送装置3を収納した位置において、上記オープンフレーム9の内空部10に配置できる構成にしているから、四点リンク機構5をコンパクトに収め、周囲への場所的影響を少なくすることができる。
【0018】
そして、請求項3に記載した発明は、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、刈取オープン操作に先立ってロックレバー6をロック解除側に操作すると、その解除操作によりベルトストッパー13も同時に伝動ベルト12から離れて、伝動ベルト12の取り外し作業が楽にできる。
【0019】
そして、請求項4に記載した発明は、上記請求項2記載の発明の効果に加えて、刈取搬送装置3のオープン回動の初期に、支持転輪15で刈取搬送装置3を支持台14上に受けさせて支持しながら、オープン工程の最初の回動ができるから、四点リンク機構5を構成している前・後2つのアーム8,8にかかる刈取搬送装置3の重量負荷を軽減でき、刈取搬送装置3の回動操作を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、コンバインは、図5に示すように、クローラ18,18を装備した車台1上に、穀稈供給口19を前側に位置させた脱穀装置2を搭載し、その前側に刈取搬送装置3を配置し連結して構成している。そして、上記刈取搬送装置3は、図1、及び図4に示すように、オープンフレーム9の上側に、横向きに刈取伝動ケース20が装備され、その左端に刈取入力プーリ11が軸架されて、伝動ベルト12を介してエンジンから走行ミッションを経由した回転動力が伝動される構成としている。そして、刈取フレーム21は、円筒状の部材からなり、基部を前記刈取伝動ケース20に上下回動自由に枢着連結し、中間部には車台1の前部に装備した刈取上下油圧シリンダ22に連結して支持し、先端側を前方下方に延長して刈取装置23、穀稈引起し装置24、穀稈搬送装置25を設けて構成している。そして、前記刈取フレーム21は、前記刈取入力プーリー11によって入力された動力を、回転各部に伝動する刈取伝動軸が内装して軸架されており、走行速度(作業能率)にシンクロされた回転速度によって刈取搬送装置3の各装置を伝動する構成としている。
【0021】
そして、前記オープンフレーム9は、図1、乃至図3に示すように、内空部10が形成され、その内空部10に四点リンク機構5を構成する前・後2つのアーム8,8の先端部を挿入して上下に枢着して構成している。そして、該前・後2つのアーム8,8は、その基部を、車台1の側部寄りに軸架されている回動支持軸4,4にそれぞれ軸装して設けた構成としている。
【0022】
このように、刈取搬送装置3は、オープンフレーム9上に装備された状態で、四点リンク機構5の回動作用によって、前記脱穀装置2の前側の収納した作業位置と、前記車台1の側部のオープン位置とに回動可能に支持された構成となっている。この場合、前記2つのアーム8,8の内、一方側の後アーム8は、図3に示すように、刈取搬送装置3が収納状態の作業位置にあるときに、オープンフレーム9の内空部10内に収まった位置にある構成となっている。
【0023】
そして、ロックレバー6は、図面に示すように、前記刈取伝動ケース20の上部に回動操作可能に設けられ、前記オープンフレーム9の上部に装備したロック装置7を上下操作すると共に、連動ロット26を介してロック爪27を固定ピン28(車台1に固定されている)にロックと、その解除操作ができる構成としている。そして、前記ロック装置7は、図1、図2、図4に示すように、上記ロックレバー6に連結されて上下するロックピン7aと、オープンフレーム9に設けたロックピン挿通孔7bと、後アーム8に設けた収納位置ロック孔7cと、オープン位置ロック孔7dとから構成している。
【0024】
したがって、上記構成のロック装置7は、刈取搬送装置3の刈取伝動ケース20に設けたロックレバー6の上下操作によって、刈取搬送装置3を収納した作業位置では、ロックピン7aをロックピン挿通孔7bと収納位置ロック孔7cとに挿し通して連結ロックし(図1参照)、刈取搬送装置3を車台1の側方外側のオープン位置に回動すると、ロックピン7aを前記ロックピン挿通孔7bとオープン位置ロック孔7d(図2仮想線参照)とに挿し通して連結ロック作用を行い、その解除操作ができるものとしている。
【0025】
そして、ロックレバー6は、図1、及び図4に示すように、前記刈取搬送装置3の刈取入力プーリー11に巻き掛けた前記走行ミッションから分岐した回転動力を入力する伝動ベルト12に作用するベルトストッパー13を設け、ロック解除時に一体にベルト12から上方に離れる構成とし、楽に伝動ベルト12の取り外しができる構成となっている。
【0026】
そして、前記オープンフレーム9は、図1に示すように、前記回動支持軸4,4から離れた遠い部位で下側の支持台14上を転動する支持転輪15を上下移動自由に軸架して設けた構成としている。そして、上記支持転輪15は、図4に示すように、前記刈取搬送装置3が収納した作業位置にあるとき、前記ロックレバー6をロック解除操作すると、前記したロック爪27の下部に連結している屈曲連動杆29を介して下動して前記支持台14上に達する位置まで下降する構成としている。
【0027】
つぎに、上記構成の実施例について、その作用と効果をまとめて述べる。
まず、実施例に係るコンバインは、刈取搬送装置3を脱穀装置2の前側に収納した位置において、ロック装置7とロック爪27とをロック状態に保持して、刈取脱穀作業を行う。そして、コンバインは、刈取搬送装置3のメンテナンスを行う場合には、まず、ロックレバー6を、図4の仮想線で示すように、上方に解除操作すると、ロックピン7aがアーム8の収納位置ロック孔7cから上に抜けてロック解除され、一方のロック爪27も連動ロット26によって引き上げられて固定ピン28から離れてロック解除となる。と同時に、支持転輪15は、屈曲連動杆29を介して連動されて下方に移動し、支持台14上まで下がってオープンフレーム9を受け止め支持する。
【0028】
そして、刈取搬送装置3は、オープンフレーム9を支持している四点リンク機構5の前・後2つのアーム8,8を、回動支持軸4,4を支点にして車台の外側に回動してオープン位置まで移動する。
【0029】
そのとき、支持転輪15は、刈取搬送装置3のオープン回動の初期において、支持台14上を転動しながら重量を支持し、オープン工程の最初の回動ができるから、四点リンク機構5の前・後2つのアーム8,8にかかる刈取搬送装置3の重量負荷を軽減することができる利点がある。
【0030】
そして、オープン回動の前には、ベルトストッパー13は、ロックレバー6のロック解除の操作に伴って一体に上方に上がり、伝動ベルト12から離れるから、伝動ベルト12の取り外しが楽にできる。
【0031】
そして、刈取搬送装置3は、車台1の側部のオープン位置に達したとき、一体に回動してきた前記ロックレバー6をロック側に操作すると、ロックピン7aがオープンフレーム9のロックピン挿通孔7bから下方に移動してアーム8側のオープン位置ロック孔7dに挿入され、その位置で連結ロック作用が働くのである。
【0032】
そして、四点リンク機構5は、前・後2つのアーム8,8の先端部を、オープンフレーム9の内空部10に挿入して、そのアーム8,8の上下両側で支持した構成にしているから、刈取搬送装置3を支持する強度が大幅に強化され、頑丈な支持・回動機構となっている。
【0033】
更に述べれば、実施例は、前・後2つのアーム8,8のうち、後アーム8を、刈取搬送装置3を収納した作業位置において、前記オープンフレーム9の内空部10に嵌め込んだ状態になるから、四点リンク機構5をコンパクトに収めて周囲への場所的影響を少なくすることができる優れた特徴となっている。
【0034】
つぎに、コンバインの車台上に搭載したメインタンク30とサブタンク31とからなる2つの燃料タンク30,31と、該燃料タンク30,31に貯留した燃料をエンジン32に供給するためのメインフィルター33、燃料ポンプ34、プレフィルター35の配置構成について図6、乃至図10に基づいて実施例を説明する。
【0035】
まず、コンバインは、図6に示すように、エンジン32が操縦席36に下側に搭載されており、その操縦席36の後方位置にはグレンタンク37が設けられている。そして、図6において、38は脱穀装置であって、前記グレンタンク37の左側に隣接して配置され、脱穀装置38の後部には排藁カッター39が装置されている。40は穀粒排出オーガーであって、前記グレンタンク37の後部に接続し、貯留した穀粒を機外に搬出する構成としている。
【0036】
そして、前記脱穀装置38は、図7に示すように、一番揚穀装置41とニ番揚穀装置42とが側部で、グレンタンク37側に前後に配置して設けられ、一番揚穀装置41が一番穀粒を前記グレンタンク37に揚穀し、ニ番揚穀装置42がニ番物をニ番処理装置に揚穀する構成としている。
【0037】
そして、揺動プーリー44は、図7、及び図8に示すように、ニ番揚穀装置42の後方において、後述するサブタンク31の上方に軸架して設け、脱穀装置38の選別室に支架している揺動選別棚を駆動する構成としている。
【0038】
そして、グレンタンク37は、図9に示すように、脱穀装置38側の底板45を、タンクの下部に前後方向に軸装している穀粒排出螺旋46側に斜めに傾斜した構成としている。
【0039】
そして、サブタンク31は、図面に示すように、車台1の後部左側に搭載しているメインタンク30と、グレンタンク37の後部にあるオーガメタル48との間ある空間部49を利用して取り付けている。この場合、サブタンク31は、排藁カッター39の下側に、後方から入り込んだ状態に取り付けられ、脱穀装置38側のすぐ上には揺動プーリー44が軸架されている。そして、サブタンク31は、図8に示すように、上面を前下がりの形状に形成して前記揺動プーリ44との接触を避ける形状に構成している。
【0040】
このように、サブタンク31は、メインタンク30の側方に接近させて、限られた狭いスペースを利用して取り付け、コンバインに多量の燃料を搭載できるものとしている。そして、サブタンク31は、その上面形状を前下がりに傾斜した構成にして揺動プーリー44との干渉を回避すると共に、藁屑等が溜まりをなくした利点もある。
【0041】
そして、燃料タンクガード50は、図8、乃至図10に示すように、燃料タンク30,31の背後の全幅に渡って配置し、車台1の後部左右の取付部に着脱自在に取り付けができる構成としている。
【0042】
このように、燃料タンクガード50は、着脱が自由にできるから、メインタンク30やサブタンク31の取り付け替えやガード自体の交換がきわめて容易にできるものでありながら、燃料タンク30,31の後方ガードを確実に行うことができるものとなっている。
【0043】
つぎに、プレフィルター35と燃料ポンプ34とメインフルター33とは、図面に示すように、脱穀装置38とグレンタンク37との間にある空間を利用してエンジン32と燃料タンク30,31との間に燃料ホースで一連の状態に接続されて配置した構成としている。そして、手動ポンプ51は、図7、及び図8に示すように、メインフィルター33の上部で後ろ側に取付けて設け、前記排藁カッター39の下方(後ろ側)から手を挿し込んで押圧操作ができる構成としている。
【0044】
このように、プレフィルター35と燃料ポンプ34とメインフルター33とは、燃料タンク30,31とエンジン32との間に燃料を送ることができる状態に燃料ホースで連通状態に接続しているから、円滑に燃料の供給ができるが、ガス欠等の緊急時にあっても、メインフィルター33の上部で後ろ側に手動ポンプ51を設けているから、手動操作でエンジン32まで燃料の供給ができる特徴がある。そして、これらのプレフィルター35と燃料ポンプ34とメインフルター33とは、側面から見れば、脱穀装置38の一番揚穀装置41とニ番揚穀装置42との間で、しかも、背面的には脱穀装置38とグレンタンク37とで囲まれた狭いスペースを利用して装置した特徴もある。
【0045】
つぎに、脱穀装置38のフィードチエーン55と排藁チエーン56とを車速(作業能率)に応じて自動変速する構成において、両チエーン55,56の変速タイミングに関する実施例を、図11に基づいて説明する。
【0046】
通常、脱穀装置38は、脱穀作業中、フィードチエーン55が穀稈の株元を挟持して搬送しながら穂先側を扱室に供給して脱穀し、扱室から送り出された排藁を排藁チエーン56に引き継がせて機外に搬送する。このような排藁の引き継ぎ搬送の過程において、排藁チエーン56は、フィードチエーン55の搬送終端部から排藁を引き継ぐとき、排藁の停滞をなくし、円滑に安定して引き継ぐためにはフィードチエーン55と少なくとも同速度か、或いは高速であることが必要である。以下説明する実施例は、フィードチエーン55から排藁チエーン56へ排藁を引き継がせる引継ぎ性能を安定させるために、上記条件を満足する自動変速機構を構成したものである。
【0047】
まず、フィードチエーン55は、図11に示すように、入力プーリー57を軸架したフィードチエーン変速装置58から駆動スプロケット59によって伝動される構成としている。そして、排藁チエーン56は、排藁入力プーリー60を有する排藁チエーン変速装置61から一連の伝動装置62によって伝動される構成としている。
【0048】
そして、前記フィードチエーン変速装置58と排藁チエーン変速装置61とは、図外のコントローラに接続され、車速(作業能率)に対応して高速走行時には高速側に、低速走行時には低速側に自動変速される構成としている。この場合、具体的な図示は省略したが、上記フィードチエーン変速装置58と排藁チエーン変速装置61とは、コントローラから出力される制御信号に基づいて制御モータが制御され、ギヤの変速操作による変速が行われる構成となっている。そして、前記コントローラは、車速が増速されて両チエーン55,56を増速側に変速するときには排藁チエーン56を先に増速して、その後、フィードチエーン55を増速し、減速するときには、先にフィードチエーン55を減速した後、排藁チエーン56を減速する変速タイミングを確保する構成としている。
【0049】
以上のように、実施例は、両チエーン55、56を変速する場合には、必ず、排藁チエーン56がフィードチエーン55より遅くならない変速タイミングを保って変速し、変速中でも排藁の引き継ぎ性能を安定して継続できるものとしている。したがって、実施例は、説明の冒頭に述べたように、フィードチエーン55から排藁チエーン56への排藁の引継ぎ作用を、変速作用の前後においても安定させることができる特徴がある。
【0050】
つぎに、コンバイン作業において、圃場表面に散布する切藁を均一排出する実施例を説明する。
実施例は、図12に示すように、刈取作業を終了するとき(圃場のコーナーに達して旋回後、続けてコンバイン作業をするとき。)、車台前部の刈取搬送装置65の終端部に装備している穀稈センサ66が穀稈の検出をしなくなると、フィードチエーン55と排藁チエーン56とを穀稈、及び排藁を挟持した状態で自動停止する構成としている。
【0051】
つぎに、実施例は、図13に示すように、圃場のコーナーでコンバインを旋回した後、刈取作業を再開し、前記穀稈センサ66が搬送穀稈を検出すると、搬送穀稈を挟持した状態で停止していた前記フィードチエーン55と排藁チエーン56との伝動を開始して、穀稈、及び排藁を連続状態で排藁カッター39に搬送して供給する構成としている。
【0052】
以上のように構成することによって、実施例は、コンバイン作業において、従来のように、圃場面に排出する切藁の2重排出をほとんどなくし、切藁を排出しない空白部分を少なくできる特徴がある。したがって、本件実施例は、事後の圃場管理、すなわち、土中ガスの発生斑をなくし、耕耘作業に支障を与えることがほとんどない効果かある。
【0053】
なお、コンバイン作業において、切藁の二重排出を防止する方策として、図14に示すように、排藁カッター39の下部に開閉シャッター67を設け、該排藁カッター39の切藁排出位置の前側圃場面を検出できる映像センサ68を装備して構成する実施例がある。
【0054】
該実施例は、コンバイン作業中に排藁カッター39の前方位置の圃場面を映像センサ68によって検出し、既に切藁が散布されている圃場面には二重散布を防止するために、前記開閉シャッター67を、図14に実線で示す位置に、自動的に閉める構成として二重散布を防止することができる。
【0055】
つぎに、図15、乃至図17に基づいて選別制御の実施例を説明する。
まず、コントローラ70は、入力側に圧力センサ71を接続し、検出した圧力を入力する構成としている。この実施例の場合、圧力センサ71は、図17に示すように、扱室上部の送塵板72の回動枢着部に接続して設け、扱室内の送塵によって送塵板72が受ける圧力を検出して前記コントローラ70に情報として入力する構成としている。
【0056】
当然のことながら、圧力センサ71が検出する送塵板72の圧力は、扱室内部を持ち回られている送塵量に比例し、扱室の排塵物の量が増加すると、高くなる傾向が明らかになっている。
【0057】
つぎに、コントローラ70は、図15に示すように、出力側に、唐箕調節手段73、シーブ調節手段74、送塵板駆動モーター75、負荷表示手段76、警報ブザー77を接続して出力する制御信号で制御する構成としている。この場合、コントローラ70は、送塵板72から圧力センサ71が検出した圧力が設定した基準値を超えると、唐箕調節手段73(実施例は唐箕風量を増減調節する変速装置)とシーブ調節手段74(実施例はシーブの傾斜度を調節してシーブ間の選別間隔を変更する制御モータ)とに制御信号を出力して、唐箕の選別風量を増大し、シーブの選別間隔を広くする選別制御を行うことになる。
【0058】
このように、実施例は、扱室内の送塵板72が扱室内を持ち回られている排塵物から受ける圧力を圧力センサ71で検出し、唐箕とシーブとを制御して排塵物の量に応じた選別制御を行うものである。
【0059】
そして、コントローラ70は、操縦席のモニタに負荷の表示(負荷表示手段76)をしたり、排塵量が過大になって選別制御が対応できない状態になると、警報ブザー77を発することになる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本件発明の要部を示す正面図
【図2】要部の作用平面図
【図3】図2の一部の横断面図
【図4】ロックレバーの作用を示す側面図
【図5】コンバインの側面図
【図6】実施例を示すコンバインの平面図
【図7】実施例のメイン、及びサブタンクと関連装置を配置した平面図
【図8】図7の要部側面図
【図9】図7の背面図
【図10】燃料タンクガードを分離した状態の側面図
【図11】別実施例の概要平面図
【図12】別実施例の穀稈と排藁との搬送状態を示す概略の平面図
【図13】別実施例の穀稈と排藁との搬送状態を示す概略の平面図
【図14】別実施例の排藁カッターの開閉シャッターの作用を示す概略側面図
【図15】別実施例の制御部のブロック図
【図16】別実施例の送塵板の上面図
【図17】別実施例の送塵板の作用図。
【符号の説明】
【0061】
1 車台 2 脱穀装置
3 刈取搬送装置 4,4 回動支持軸
5 四点リンク機構 6 ロックレバー
7 ロック装置 7a ロックピン
7b ロックピン挿通孔 7c 収納位置ロック孔
7d オープン位置ロック孔 8,8 アーム
9 オープンフレーム 10 内空部
11 刈取入力プーリー 12 伝動ベルト
13 ベルトストッパー 14 支持台
15 支持転輪。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台(1)前部の左右一側寄りの位置に縦向きの回動支持軸(4,4)を設け、該回動支持軸(4,4)に四点リンク機構(5)を軸装し、該四点リンク機構(5)によって刈取搬送装置(3)を脱穀装置(2)の前側の刈取作業位置と車台(1)の側方の非刈取作業位置とにわたって回動可能に支持し、該刈取搬送装置(3)を前記刈取作業位置と非刈取作業位置との両方の位置で位置固定するロック装置(7)及び該ロック装置(7)の操作用のロックレバー(6)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
オープンフレーム(9)の上側に刈取搬送装置(3)を支持し、前記四点リンク機構(5)を構成する上下2つのアーム(8,8)の先端部を、オープンフレーム(9)の内空部(10)に挿入して枢着し、刈取搬送装置(3)を刈取作業位置に位置させた状態で、前記2つのアーム(8,8)のうちの少なくとも一方のアームをオープンフレーム(9)の内空部(10)に収納できる構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ロックレバー(6)に、前記刈取搬送装置(3)の刈取入力プーリー(11)に巻き掛けた伝動ベルト(12)に作用するベルトストッパー(13)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項4】
前記回動支持軸(4,4)から遠い部位で下側の支持台(14)上を転動する支持転輪(15)をオープンフレーム(9)に対して上下動自由に取り付け、該支持転輪(15)は、前記刈取搬送装置(3)が刈取作業位置にあるとき、前記ロックレバー(6)のロック解除操作に連動して下動して支持台(14)上に押し付けられる構成としたことを特徴とする請求項2記載のコンバイン。
【請求項1】
車台(1)前部の左右一側寄りの位置に縦向きの回動支持軸(4,4)を設け、該回動支持軸(4,4)に四点リンク機構(5)を軸装し、該四点リンク機構(5)によって刈取搬送装置(3)を脱穀装置(2)の前側の刈取作業位置と車台(1)の側方の非刈取作業位置とにわたって回動可能に支持し、該刈取搬送装置(3)を前記刈取作業位置と非刈取作業位置との両方の位置で位置固定するロック装置(7)及び該ロック装置(7)の操作用のロックレバー(6)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
オープンフレーム(9)の上側に刈取搬送装置(3)を支持し、前記四点リンク機構(5)を構成する上下2つのアーム(8,8)の先端部を、オープンフレーム(9)の内空部(10)に挿入して枢着し、刈取搬送装置(3)を刈取作業位置に位置させた状態で、前記2つのアーム(8,8)のうちの少なくとも一方のアームをオープンフレーム(9)の内空部(10)に収納できる構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ロックレバー(6)に、前記刈取搬送装置(3)の刈取入力プーリー(11)に巻き掛けた伝動ベルト(12)に作用するベルトストッパー(13)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項4】
前記回動支持軸(4,4)から遠い部位で下側の支持台(14)上を転動する支持転輪(15)をオープンフレーム(9)に対して上下動自由に取り付け、該支持転輪(15)は、前記刈取搬送装置(3)が刈取作業位置にあるとき、前記ロックレバー(6)のロック解除操作に連動して下動して支持台(14)上に押し付けられる構成としたことを特徴とする請求項2記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−33975(P2009−33975A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198347(P2007−198347)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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