説明

コンバイン

【課題】揺動選別盤が下向きに移動するとき(チャフシーブから穀粒が殆ど漏下しないとき)に、チャフシーブの上面側の脱粒物に対して唐箕ファンの選別風を効果的に作用させることができ、揺動選別盤の比重選別の選別能力を向上できるようにしたコンバインを提供する。
【解決手段】揺動選別盤227は、穀粒を取出すためのチャフシーブ239を有し、チャフシーブ239に設けた複数の横桟239aの間から穀粒を下方に漏下させるように構成してなるコンバインにおいて、横桟239aの漏下間隔を変更する漏下間隔切換機構57を備え、揺動選別盤227が下向きに移動する揺動運動に関連させて、横桟239aの漏下間隔を拡大するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取装置によって圃場の未刈り穀稈を刈取り、刈取った穀稈を脱穀装置によって脱穀し、脱穀装置によって脱穀された穀粒を収集するコンバインに係り、より詳しくは、脱穀装置の脱粒物を揺動選別盤にて選別して、穀粒タンクに脱粒物中の穀粒を取出し、脱粒物中の藁屑を機外に排出するコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体を支持する左右の走行クローラと、操縦ハンドル及び運転座席を有する運転部と、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置と、刈取った穀稈を脱穀する脱穀装置とを備え、圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取って脱穀し、穀粒を収集するように構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、従来のコンバインにおいては、脱穀装置からの脱粒物を選別する揺動選別盤と、揺動選別盤に選別風を供給する唐箕ファンとを備え、揺動選別盤は、穀粒を取出すためのチャフシーブを有し、揺動選別盤が揺動運動によって上向きに移動するときには、チャフシーブの上面側の穀粒が横桟の間から下方に漏下する。また、揺動選別盤が揺動運動によって下向きに移動するときには、チャフシーブの上面側の脱粒物(穀粒及び藁屑)が上方に浮き上がる。そのように、揺動選別盤の揺動運動(上向き移動と下向き移動)によって脱穀装置からチャフシーブの上面に落下した脱粒物が比重選別される。また、穀粒を下方に漏下させる横桟の漏下間隔が、脱穀装置の脱穀処理量に応じて変更されるように構成されている。
【特許文献1】特開2002−360048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、特許文献1に示されるように、脱穀装置の脱穀処理量が変化しない場合、揺動選別盤の揺動運動中、横桟の漏下間隔が一定に維持されるから、脱粒物(穀粒及び藁屑)が浮き上がる下向き移動のときの選別風の抵抗が、穀粒が横桟の間から漏下する上向き移動のときの選別風の抵抗と略等しくなる。したがって、揺動選別盤が揺動運動によって下向きに移動するときに、チャフシーブの上面側の穀粒又は藁屑に対して唐箕ファンの選別風を効果的に作用させることができない。
【0005】
即ち、揺動選別盤が下向きに移動して、チャフシーブの上面側の脱粒物(穀粒及び藁屑)が浮き上がったときにも、揺動選別盤の上向きの移動によって横桟の間から穀粒を漏下するときの選別風の抵抗(横桟の漏下間隔)が維持されるから、チャフシーブの上面側の脱粒物に対して唐箕ファンの選別風を効果的に作用させることができない等の問題がある。例えば横桟の漏下間隔を小さくして塵の落下を防いで選別しているときに、チャフシーブが唐箕ファンの選別風の大きな抵抗体になり、揺動選別盤の選別能力を向上できない等の問題がある。
【0006】
本発明の目的は、揺動選別盤が下向きに移動するとき(チャフシーブから穀粒が殆ど漏下しないとき)に、チャフシーブの上面側の脱粒物に対して唐箕ファンの選別風を効果的に作用させることができ、揺動選別盤の比重選別の選別能力を向上できるようにしたコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、エンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体を支持する左右の走行クローラと、操縦ハンドル及び運転座席を有する運転部と、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置と、刈取った穀稈を脱穀する脱穀装置と、脱穀装置からの脱粒物を選別する揺動選別盤と、前記揺動選別盤に選別風を供給する唐箕ファンとを備え、前記揺動選別盤は、穀粒を取出すためのチャフシーブを有し、前記チャフシーブに設けた複数の横桟の間から穀粒を下方に漏下させるように構成してなるコンバインにおいて、前記横桟の漏下間隔を変更する漏下間隔切換機構を備え、前記揺動選別盤が下向きに移動する揺動運動に関連させて、前記横桟の漏下間隔を拡大するように構成したものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記漏下間隔切換機構は、前記揺動選別盤の揺動運動に同期させて前記横桟の漏下間隔を変更する同期切換手段を有し、前記揺動選別盤が下向きの移動を開始してから、下動限度位置に移動するまでの間に、前記同期切換手段によって前記漏下間隔切換機構が作動し、前記揺動選別盤が下向きに移動中、前記横桟の漏下間隔を一時的に拡大可能に構成したものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記横桟の漏下間隔を調節する漏下間隔調節手段を備え、前記横桟に前記漏下間隔調節手段を介して前記漏下間隔切換機構を連結したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、エンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体を支持する左右の走行クローラと、操縦ハンドル及び運転座席を有する運転部と、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置と、刈取った穀稈を脱穀する脱穀装置と、脱穀装置からの脱粒物を選別する揺動選別盤と、前記揺動選別盤に選別風を供給する唐箕ファンとを備え、前記揺動選別盤は、穀粒を取出すためのチャフシーブを有し、前記チャフシーブに設けた複数の横桟の間から穀粒を下方に漏下させるように構成してなるコンバインにおいて、前記横桟の漏下間隔を変更する漏下間隔切換機構を備え、前記揺動選別盤が下向きに移動する揺動運動に関連させて、前記横桟の漏下間隔を拡大するように構成したものであるから、前記チャフシーブから穀粒が殆ど漏下しないとき(前記揺動選別盤が下向きに移動するとき)に、前記横桟の漏下間隔が拡大されることによって、前記唐箕ファンの選別風に対する前記横桟の抵抗を低減でき、前記チャフシーブの上面側の脱粒物に対して前記唐箕ファンの選別風を効果的に作用させることができ、前記揺動選別盤の比重選別の選別能力を簡単に向上できるものである。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、前記漏下間隔切換機構は、前記揺動選別盤の揺動運動に同期させて前記横桟の漏下間隔を変更する同期切換手段を有し、前記揺動選別盤が下向きの移動を開始してから、下動限度位置に移動するまでの間に、前記同期切換手段によって前記漏下間隔切換機構が作動し、前記揺動選別盤が下向きに移動中、前記横桟の漏下間隔を一時的に拡大可能に構成したものであるから、前記揺動選別盤の揺動運動を利用して前記同期切換手段を作動でき、前記漏下間隔切換機構の作動タイミングを簡単に設定でき、前記漏下間隔切換機構を組付けるときの調整作業性又はメンテナンス作業性等を簡単に向上できるものである。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、前記横桟の漏下間隔を調節する漏下間隔調節手段を備え、前記横桟に前記漏下間隔調節手段を介して前記漏下間隔切換機構を連結したものであるから、前記漏下間隔調節手段によって設定された前記横桟の漏下間隔を維持して、前記揺動選別盤を上向きに移動し、前記揺動選別盤が下向きに移動したときに、前記漏下間隔調節手段によって設定された漏下間隔よりも前記横桟の漏下間隔を大きくすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図、図3は脱穀装置の断面図、図4はチャフシーブの側面図、図5はチャフシーブの拡大説明図である。図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0014】
図1及び図2に示されるように、本実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられ、穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
【0015】
運転キャビン10内に操縦ハンドル11及び運転座席12を配置している。なお、図示しないが、運転キャビン10には、オペレータが搭乗するステップと、操縦ハンドルを設けたハンドルコラムと、運転座席12の左側方のレバーコラムに設けた主変速レバー、及び副変速レバー、及び脱穀クラッチレバー、及び刈取クラッチレバーとが、配置されている。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのエンジン20が配置されている。
【0016】
図1及び図2に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持することになる。
【0017】
刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場の未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置されている。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。エンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取ることになる。
【0018】
図1乃至図3に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230とを備えている。なお、扱胴226の回転軸はフィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室226a内に搬入されて扱胴226にて脱穀されることになる。
【0019】
揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231及び一番樋231aと、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232及び二番樋232aとが設けられている。本実施形態の両コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
【0020】
揺動選別盤227は、脱穀装置5を形成した脱穀機筐35に、揺動駆動軸36と、前側ガイドレール37及び後側ガイドレール38とを介して、前方斜め下方乃至後方斜め上方に移動可能に配置されている。エンジン20からの動力によって揺動駆動軸36を介して揺動選別盤227が作動し、揺動選別盤227が前方斜め下方乃至後方斜め上方に往復移動することになる。その結果、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱粒物が、フィードパン238及びチャフシーブ239によって搖動選別(比重選別)されるように構成している(図3参照)。揺動選別盤227のグレンシーブ240から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231及び一番樋231aに落下することになる。
【0021】
一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀筒233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀筒233を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集されることになる。なお、穀粒タンク7の後面の傾斜に沿わせて、揚穀筒233の上端側が後方に傾斜する後傾姿勢で、穀粒タンク7の後方に揚穀筒233が立設されている。
【0022】
また、チャフシーブ239の送り下流側(後方側)にストローラック243を配置する。揺動選別盤227は、搖動選別(比重選別)によって、チャフシーブ239又はストローラック243から枝梗付き穀粒等の二番還元再処理物が二番コンベヤ232及び二番樋232bに落下するように構成している。なお、チャフシーブ239の上面側の比較的軽い藁屑は、排塵ファン230に吸込まれて、排塵ファン230の排出側から機外に排出されることになる。また、チャフシーブ239の送り下流側(後方側)からストローラック243の上面側に移動した比較的重い藁屑は、揺動選別盤227の後方側の3番口244から機外に排出されることになる。
【0023】
ストローラック243の下方に落下する二番還元再処理物を風選する二番選別ファン241を備える。ストローラック243から落下した二番還元再処理物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が二番選別ファン241からの選別風によって除去され、粉塵及び藁屑を除去した二番還元再処理物が二番コンベヤ232に落下することになる。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、揚穀筒233と交差して前後方向に延びる還元筒236を介して、フィードパン238の上面側に連通接続されている。還元筒236の送り終端側から、二番還元処理胴242を介して、二番還元再処理物がフィードパン238の上面側に戻されて再選別されるように構成している(図3参照)。
【0024】
一方、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出されることになる。
【0025】
次に、図3及び図4を参照しながら、唐箕ファン228からチャフシーブ239に供給する選別風の風路構造について説明する。唐箕ファン228のファンケース40には、グレンシーブ240と一番コンベヤ231及び一番樋231aとに唐箕ファン228の選別風を供給する主選別風路41と、フィードパン238の後端側とチャフシーブ239の前端側との間からチャフシーブ239の上面側に唐箕ファン228の選別風を供給する第1プレ風路42と、揺動選別盤227の底部のグレンパン245とチャフシーブ239の前端側との間からチャフシーブ239の下面側に唐箕ファン228の選別風を供給する第2プレ風路43とを形成している。上述の主選別風路41は、唐箕ファン228からの選別風が、グレンシーブ240の前方の下方から、グレンシーブ240の後方の上方に向けて、主風向体44を介して移動するように形成されている。また、上述の主選別風路41は、唐箕ファン228からの選別風が、一番コンベヤ231及び一番樋231aの上方で前方から後方に向けて、主風向体44を介して移動するように形成されている。即ち、グレンシーブ240から一番コンベヤ231及び一番樋231aに落下する穀粒及び塵が、唐箕ファン228からの選別風によって風選されるように構成している。
【0026】
上述した第1プレ風路42は、唐箕ファン228からの選別風が、チャフシーブ239の上方で前方から後方に向けて、揺動選別盤227に設けたプレ風向体45を介して移動するように形成されている。即ち、扱胴226から受網237を介してフィードパン238の上面に落下した脱粒物が、フィードパン238の後端側からチャフシーブ239の前端側に落下するときに、唐箕ファン228からの選別風によって風選されるように構成している。
【0027】
上述した第2プレ風路43は、唐箕ファン228からの選別風が、グレンパン245の上方で前方から後方に向けて、プレ風向体45を介して移動するように形成されている。換言すると、チャフシーブ239の前方の下方から、チャフシーブ239の後方の上方に向けて、唐箕ファン228からの選別風が移動するように形成されている。即ち、チャフシーブ239からグレンパン245及びグレンシーブ240に落下する穀粒及び塵が、唐箕ファン228からの選別風によって風選されるように構成している。
【0028】
なお、主選別風路41と、第1プレ風路42と、第2プレ風路43とから供給された唐箕ファン228からの選別風は、上述した排塵ファン230に吸い込まれたり、三番口244から脱穀機筐35の後方に移動するから、扱胴226からの脱粒物中の藁屑及び粉塵等が、脱穀機筐35の後部から圃場に向けて排出されることになる。
【0029】
次に、図4及び図5を参照しながら、チャフシーブ239の穀粒選別(漏下間隔Aの調節)構造について説明する。チャフシーブ239は、揺動選別盤227の左右幅方向に延長した複数の横桟239aと、揺動選別盤227の側板に各横桟239aを回動可能に支持するチャフ取付板239bと、各横桟239aの漏下間隔A(傾斜角)を変更する漏下間隔変更板239cとを有する。各横桟239aは、揺動選別盤227の左右幅と略同一長さの平板状に形成されている。各横桟239aの上辺側に、漏下間隔A調節用のチャフ支点軸51を配置する。換言すると、チャフ取付板239bにチャフ支点軸51を介して各横桟239aの上辺側が回動可能に連結されている。即ち、揺動選別盤227の側板にチャフ取付板239bを介して各横桟239aが支持されている(図5を参照)。
【0030】
また、各横桟239aの下辺側には、漏下間隔A調節用のチャフ調節軸52が固着されている。即ち、漏下間隔変更板239cにチャフ調節軸52を介して各横桟239aの下辺側が回動可能に連結されている(図5を参照)。
【0031】
したがって、オペレータの操作又は自動制御手段によって漏下間隔変更板239cを前方向又は後方向に移動した場合、チャフ支点軸51回りに横桟239aが回動して、下辺側(下端側)が低くて上辺側(上端側)が高くなる前低後高形に傾斜させた各横桟239aの漏下間隔A(傾斜角)が変更される。その結果、各横桟239aの間から穀粒を漏下させるための漏下間隔Aが縮小又は拡大されて、チャフシーブ239(複数の横桟239a)から漏下する穀粒中の塵(藁屑)量が一定以下に保たれ、チャフシーブ239の選別精度が維持されることになる。
【0032】
図4に示されるように、オペレータの手動操作又は自動制御手段によって各横桟239aの漏下間隔A(傾斜角)を調節する漏下間隔調節手段56と、揺動選別盤227が下向きに移動する揺動運動に関連させて各横桟239aの漏下間隔Aを変更する漏下間隔切換機構57とを備える。漏下間隔調節手段56は、可逆形の電動モータ56aにてピストン56bを進出又は退入させる電動シリンダ56cを有する。上述した漏下間隔変更板239cにピストン56bを連結している。即ち、オペレータの手動操作又は自動制御手段によって電動モータ56aが作動して、各横桟239aの漏下間隔A(傾斜角)が調節されることになる。
【0033】
上述した漏下間隔切換機構57は、揺動選別盤227の側板にガイド58を介して前後方向に移動可能に配置するスライド体59と、揺動選別盤227の側板に揺動支軸67を介して回動可能に一端側を連結する揺動体60と、スライド体59の後端側に揺動体60の他端側を連結するリンク機構61と、揺動選別盤227の側板に回転支軸65を介して回転可能に軸支する同期切換手段としてのカム体62と、カム体62に揺動体60の中間部を当接維持させる復帰バネ体63と、上述した脱穀機筐35にクランク支軸66を介して一端側を連結させるクランクロッド体64とを有する。
【0034】
図4に示されるように、回転支軸65回りに回転可能なカム体62の偏心位置にクランクロッド体64の他端側を連結し、揺動選別盤227の1ストロークの揺動運動(前方の斜め下方の下動限度位置と、後方の斜め上方の上動限度位置とを往復する動作)によってクランクロッド体64を介してカム体62が1回転するように構成している。また、カム体62の1回転によって、復帰バネ体63にてカム体62に当接維持された揺動体60が、1ストロークだけ揺動するように構成している。
【0035】
図4に示されるように、漏下間隔変更板239cの後端側には、漏下間隔調節手段56(ピストン56b及び電動シリンダ56c)を介して、漏下間隔切換機構57(スライド体59の前端側)を連結している。揺動選別盤227の1ストロークの揺動運動によってカム体62が1回転し、カム体62の1回転中、揺動体60が1ストローク往復揺動することになる。即ち、揺動体60の1ストロークの往復揺動のうちの往動によって、復帰バネ体63に抗して、スライド体59が後方に移動して、漏下間隔変更板239cを後方に移動し、各横桟239aの漏下間隔Aを一時的に拡大するように構成している。
【0036】
その結果、揺動選別盤227が下向きに移動する揺動運動に関連させて、各横桟239aの漏下間隔Aを拡大できる。即ち、後方の斜め上方の上動限度位置から揺動選別盤227が下向きの移動を開始してから、前方の斜め下方の下動限度位置に移動するまでの間、換言すると、揺動選別盤227が下向きに移動している途中、カム体62によってスライド体59を介して漏下間隔変更板239cが作動し、横桟239aの漏下間隔Aを一時的に拡大できる。
【0037】
また、揺動選別盤227が前方の斜め下方の下動限度位置に移動するまでに、復帰バネ体63にてスライド体59が前方に戻り、漏下間隔変更板239cを前方に戻し、拡大前の漏下間隔A(漏下間隔調節手段56にて調節した漏下間隔A)に、各横桟239aの漏下間隔Aを戻すように構成している。なお、揺動体60の1ストロークの往復揺動のうちの復動中(揺動選別盤227が上向きに移動している間)、漏下間隔調節手段56にて調節した漏下間隔Aに、各横桟239aの漏下間隔A(傾斜角)が維持されるように構成している。
【0038】
上記の構成により、揺動選別盤227が下向きに移動している途中、カム体62の回転によって揺動体60が復帰バネ体63に抗して後方に往動し、スライド体59を介して漏下間隔変更板239cが後方に移動する。その後、揺動選別盤227が前方の斜め下方の下動限度位置に移動するまでの間に、復帰バネ体63にて揺動体60が前方に復動し、スライド体59を介して漏下間隔変更板239cを前方に復動させる。即ち、後方の斜め上方の上動限度位置から揺動選別盤227が下向きの移動を開始してから、前方の斜め下方の下動限度位置に移動するまでの間に、横桟239aの漏下間隔Aが一時的に拡大されて、元の漏下間隔Aに再び戻される。
【0039】
したがって、揺動選別盤227の揺動運動(上向き移動と下向き移動)によって、扱胴226からチャフシーブ239の上面に落下した脱粒物が比重選別されている場合、揺動選別盤227が揺動運動によって上向きに移動するときには、漏下間隔調節手段56にて調節した漏下間隔Aに、各横桟239aの漏下間隔A(傾斜角)が維持され、チャフシーブ239の上面側の穀粒が横桟239aの間から下方に漏下する。
【0040】
また、揺動選別盤227が揺動運動によって下向きに移動するときには、チャフシーブ239の上面側の脱粒物(穀粒及び藁屑)が上方に浮き上がる。そのときに、横桟239aの漏下間隔Aが一時的に拡大されて、唐箕ファン228の選別風に対するチャフシーブ239の抵抗が低減する。上方に浮き上がったチャフシーブ239の上面側の脱粒物(穀粒及び藁屑)に作用する唐箕ファン228の選別風量を増大させる。上方に浮き上がったチャフシーブ239の上面側の脱粒物(穀粒及び藁屑)が、風量が増大した唐箕ファン228の選別風によって風選される。その結果、チャフシーブ239の上面側の穀粒又は藁屑に対して唐箕ファン228の選別風を効果的に作用させることができ、揺動選別盤227の比重選別の選別能力を向上できる。
【0041】
上記の記載及び図1、図4、図5から明らかなように、エンジン20を搭載した走行機体1と、走行機体1を支持する左右の走行クローラ2と、操縦ハンドル11及び運転座席12を有する運転部としての運転キャビン10と、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置3と、刈取った穀稈を脱穀する脱穀装置5と、脱穀装置5からの脱粒物を選別する揺動選別盤227と、揺動選別盤227に選別風を供給する唐箕ファン228とを備え、揺動選別盤227は、穀粒を取出すためのチャフシーブ239を有し、チャフシーブ239に設けた複数の横桟239aの間から穀粒を下方に漏下させるように構成してなるコンバインにおいて、横桟239aの漏下間隔Aを変更する漏下間隔切換機構57を備え、揺動選別盤227が下向きに移動する揺動運動に関連させて、横桟239aの漏下間隔Aを拡大するように構成したものであるから、チャフシーブ239から穀粒が殆ど漏下しないとき(揺動選別盤227が下向きに移動するとき)に、横桟239aの漏下間隔Aが拡大されることによって、唐箕ファン238の選別風に対する横桟239aの抵抗を低減でき、チャフシーブ239の上面側の脱粒物に対して唐箕ファン238の選別風を効果的に作用させることができ、揺動選別盤227の比重選別の選別能力を簡単に向上できる。
【0042】
上記の記載及び図4、図5から明らかなように、漏下間隔切換機構57は、揺動選別盤227の揺動運動に同期させて横桟239aの漏下間隔を変更する同期切換手段としてのカム体62を有し、揺動選別盤227が下向きの移動を開始してから、下動限度位置に移動するまでの間に、カム体62によって漏下間隔切換機構57が作動し、揺動選別盤227が下向きに移動中、横桟239aの漏下間隔Aを一時的に拡大可能に構成したものであるから、揺動選別盤227の揺動運動を利用してカム体62を作動でき、漏下間隔切換機構57の作動タイミングを簡単に設定でき、漏下間隔切換機構57を組付けるときの調整作業性又はメンテナンス作業性等を簡単に向上できる。
【0043】
上記の記載及び図4、図5から明らかなように、横桟239aの漏下間隔Aを調節する漏下間隔調節手段56を備え、横桟239aに漏下間隔調節手段56を介して漏下間隔切換機構57を連結したものであるから、漏下間隔調節手段56によって設定された横桟239aの漏下間隔Aを維持して、揺動選別盤227を上向きに移動し、揺動選別盤227が下向きに移動したときに、漏下間隔調節手段56によって設定された漏下間隔Aよりも横桟239aの漏下間隔Aを大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態の6条刈り用コンバインの側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】脱穀装置の断面図である。
【図4】チャフシーブの側面図である。
【図5】チャフシーブの拡大説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 走行機体
2 走行クローラ
3 刈取装置
5 脱穀装置
10 運転キャビン(運転部)
11 操縦ハンドル
12 運転座席
20 エンジン
56 漏下間隔調節手段
57 漏下間隔切換機構
62 カム体(同期切換手段)
227 揺動選別盤
228 唐箕ファン
239 チャフシーブ
239a 横桟
A 漏下間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体を支持する左右の走行クローラと、操縦ハンドル及び運転座席を有する運転部と、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置と、刈取った穀稈を脱穀する脱穀装置と、脱穀装置からの脱粒物を選別する揺動選別盤と、前記揺動選別盤に選別風を供給する唐箕ファンとを備え、前記揺動選別盤は、穀粒を取出すためのチャフシーブを有し、前記チャフシーブに設けた複数の横桟の間から穀粒を下方に漏下させるように構成してなるコンバインにおいて、
前記横桟の漏下間隔を変更する漏下間隔切換機構を備え、前記揺動選別盤が下向きに移動する揺動運動に関連させて、前記横桟の漏下間隔を拡大するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記漏下間隔切換機構は、前記揺動選別盤の揺動運動に同期させて前記横桟の漏下間隔を変更する同期切換手段を有し、前記揺動選別盤が下向きの移動を開始してから、下動限度位置に移動するまでの間に、前記同期切換手段によって前記漏下間隔切換機構が作動し、前記揺動選別盤が下向きに移動中、前記横桟の漏下間隔を一時的に拡大可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記横桟の漏下間隔を調節する漏下間隔調節手段を備え、前記横桟に前記漏下間隔調節手段を介して前記漏下間隔切換機構を連結したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−34058(P2009−34058A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202213(P2007−202213)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】