説明

コンバイン

【課題】穀粒貯留部に必要容量を備えさせながら、横幅が小であり、かつ安定面で優れた状態に得ることができるコンバインを提供する。
【解決手段】左右一対のクローラ走行装置1,1を備えた走行機体と、走行機体の前部の機体左右方向一端側に設けた運転部と、走行機体の機体左右方向他端側に揺動昇降自在に連結された刈取り前処理装置3と、刈取り前処理装置3に機体左右方向に並べて設けた複数の引起し装置30L,30Rと、走行機体に機体左右方向に並べて設けた脱穀装置4と穀粒貯留部5とを備えている。左右一対のクローラ走行装置1,1のうちの穀粒貯留部5に近い側のクローラ走行装置1における接地輪21での左右中心21Cと穀粒貯留部5の機体左右方向外側端5aとの間隔D2を、左右一対のクローラ走行装置1,1のうちの脱穀装置4に近い側のクローラ走行装置1における接地輪21での左右中心21Cと脱穀装置4の機体左右方向外側端4bとの間隔D1よりも、小に設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のクローラ走行装置を備えた走行機体と、前記走行機体の前部の機体左右方向一端側に設けた運転部と、前記走行機体の機体左右方向他端側に揺動昇降自在に連結された刈取り前処理装置と、前記刈取り前処理装置に機体左右方向に並べて設けた複数の引起し装置と、前記走行機体に機体左右方向に並べて設けた脱穀装置と穀粒貯留部とを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記したコンバインとして、従来、たとえば特許文献1に記載されたものがあった。
特許文献1に記載されたコンバインでは、左右のクローラ走行装置を備えた機体フレームの前部に刈取部(刈取り前処理装置に相当)を揺動昇降自在に連結し、前記機体フレームに、脱穀装置とタンク(穀粒貯留部に相当)と搭乗運転部とを搭載支持させている。
タンクは、脱穀装置の左右一方側の横脇に位置している。搭乗運転部は、タンクの前側に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−173529号公報(段落〔0014〕、図1−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したコンバインにおいて、穀粒貯留部の機体左右方向での大きさが大きくなってコンバインとしての横幅が大きくなることを抑制しながら、穀粒貯留部に必要な容量を備えさせると、穀粒貯留部の機体上下方向での大きさが大きくなることがある。すると、走行機体上での穀粒貯留部の高さが脱穀装置の高さよりも高くなり、穀粒貯留部に穀粒が貯留されると、貯留部内穀粒による重量のために機体重心が高くなる問題があった。
【0005】
本発明の目的は、穀粒貯留部に必要容量を備えさせながら、横幅が小であり、かつ安定面で優れた状態に得ることができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、左右一対のクローラ走行装置を備えた走行機体と、前記走行機体の前部の機体左右方向一端側に設けた運転部と、前記走行機体の機体左右方向他端側に揺動昇降自在に連結された刈取り前処理装置と、前記刈取り前処理装置に機体左右方向に並べて設けた複数の引起し装置と、前記走行機体に機体左右方向に並べて設けた脱穀装置と穀粒貯留部とを備えたコンバインにおいて、
前記左右一対のクローラ走行装置のうちの前記穀粒貯留部に近い側のクローラ走行装置における接地輪での左右中心と前記穀粒貯留部の機体左右方向外側端との間隔を、前記左右一対のクローラ走行装置のうちの前記脱穀装置に近い側のクローラ走行装置における接地輪での左右中心と前記脱穀装置の機体左右方向外側端との間隔よりも、小に設定してある。
【0007】
本第1発明の構成によると、穀粒貯留部の機体左右方向での大きさを小にしてコンバインとしての横幅を極力小にしても、かつ穀粒貯留部の容量を必要容量にしても、この結果、穀粒貯留部の機体上下方向での大きさが大きくなって穀粒貯留部の貯留穀粒の重量のために機体重心が高くなっても、穀粒貯留部に近い側のクローラ走行装置における接地輪での左右中心と穀粒貯留部の機体左右方向外側端との間隔が、脱穀装置に近い側のクローラ走行装置における接地輪での左右中心と脱穀装置の機体左右方向外側端との間隔よりも小であることにより、機体重心がクローラに対して極力機体左右方向での内側に位置し、穀粒貯留部側での転倒角を極力大きくすることができる。
【0008】
本第1発明の構成によると、穀粒貯留部に近い側のクローラ走行装置における接地輪での左右中心と穀粒貯留部の機体左右方向外側端との間隔が、脱穀装置に近い側のクローラ走行装置における接地輪での左右中心と脱穀装置の機体左右方向外側端との間隔よりも小であることにより、走行機体の横側に既刈り地を位置させても穀粒貯留部と植立穀稈との接触を防止や回避しやすいよう、穀粒貯留部の走行機体から横外側への突出量を抑制できる。
【0009】
従って、穀粒貯留部に必要量の穀粒を貯留することができながら、横幅が小さいコンパクトなものになって操縦しやすく、しかも転倒角が大きくて安定性に富んだコンバインを得ることができる。
また、走行機体の横側に位置した植立穀稈と穀粒貯留部との接触を防止や回避しやすくて中割刈りや周囲刈り作業を可能にしやすい。
【0010】
本第2発明では、前記引起し装置の一対を備え、前記左側のクローラ走行装置におけるクローラベルトの機体左右方向外側端の位置と、刈取り前処理装置の左外側のデバイダ先端の位置とを、機体左右方向で一致又はほぼ一致させ、前記右側のクローラ走行装置におけるクローラベルトの機体左右方向外側端の位置と、刈取り前処理装置の右外側のデバイダ先端の位置とを、機体左右方向で一致又はほぼ一致させてある。
【0011】
本第2発明の構成によると、刈取り前処理装置の左外側のデバイダ先端と右外側のデバイダ先端との間隔が、左のクローラ横外側端と右のクローラ横外側端との間隔(以下、走行機体の踏み代と称する。)と同一またはほぼ同一になる状態で、刈取り前処理装置が走行機体の踏み代の直前方で刈取り作業を行うようにできる。
【0012】
従って、左右のクローラ走行装置による植立穀稈の踏み付けが発生しない良好な中割刈りや周囲刈り作業を行うことができる。
【0013】
本第3発明では、前記複数の引起し装置のうちの最も運転部側に位置する引起し装置における下端部の引起しチェーン横回し経路を、他の引起し装置における下端部の引起しチェーン横回し経路よりも長く設定してある。
【0014】
本第3発明の構成によると、植立穀稈の踏み付けがない良好な中割刈りや周囲刈り作業を行うことができながら、刈取り前処理装置を構造簡単なものに済ませた安価なコンバインを得ることができる。
【0015】
つまり、中割刈りや周囲刈り作業の場合、運転部側に位置する植立穀稈を、クローラ走行装置による踏み付けを受けないよう、最運転部側の引起し装置の下端部の引起しチェーン横回し経路に沿わせて走行機体左右方向での内側に引き寄せ、最運転部側の引起し装置の前方からの植立穀稈と合流させて最運転部側の引起し装置によって引起し処理する。すなわち、中割刈りや周囲刈り作業の場合、クローラ走行装置による植立穀稈の踏み付けが発生しないよう、最運転部側の引起し装置に回刈り作業の場合よりも数多い植え付け条の植立穀稈を導入する。これにより、刈取り前処理装置に備える引起し装置に必要数を、中割刈りや周囲刈り作業の際の刈取り条数よりも少ない数で済ませられる。
【0016】
本第4発明では、前記運転部に立設した操縦塔の刈取り前処理装置側端部に、前記刈取り前処理装置の装置部分と前記操縦塔との間隙を形成する凹入部を設けてある。
【0017】
本第4発明の構成によると、植立穀稈のクローラ走行装置による踏み付けがない良好な中割刈りや周囲刈り作業を行うことができながら、コンバイン全体の前後長さが短くてコンパクトなコンバインを得ることができる。
【0018】
つまり、運転部側に位置する植立穀稈が最運転部側の引起し装置に導入されるように、最運転部側の引起し装置の下端部の引起しチェーン横回し経路を、他の引起し装置における下端部の引起しチェーン横回し経路よりも長くすると、刈取り前処理装置のデバイダや引き起こし装置を備える部位での横幅が大になる。しかし、刈取り前処理装置を走行機体に極力寄せて連結しても、刈取り前処理装置を昇降操作する際、刈取り前処理装置の装置部分が操縦塔の凹入部を通って刈取り前処理装置と操縦塔とが干渉せず、コンバイン全体の前後長さを極力短くできる。
【0019】
本第5発明では、前記複数の引起し装置の背後に、植立穀稈を機体後方向きに搬送する補助搬送装置を設け、前記最も運転部側に位置する引起し装置の前記補助搬送装置を、前記他の引起し装置の前記補助搬送装置よりも高い配置高さに配置してある。
【0020】
本第5発明の構成によると、植立穀稈のクローラ走行装置による踏み付けがない良好な中割刈りや周囲刈り作業を行うことができながら、穀稈の稈身折れによる詰まりなどのトラブル発生を回避しやすいコンバイを得ることができる。
【0021】
つまり、運転部側に位置する植立穀稈が最運転部側の引起し装置に導入されるように、最運転部側の引起し装置の下端部の引起しチェーン横回し経路を、他の引起し装置における下端部の引起しチェーン横回し経路よりも長くすると、運転部側に位置する植立穀稈は、稈身を比較的大きく曲げられながら最運転部側の引起し装置に導入され、その曲がり状態で引起し装置背後の補助搬送装置による搬送を受ける。この補助搬送装置による穀稈搬送が行われる際、この補助搬送装置が他の補助搬送装置よりも高い配置高さに位置していることから、穀稈は補助搬送装置による搬送作用を地面から極力高い箇所で受けることになり、穀稈に急角度での曲がりが発生しにくくなる。すると、穀稈の稈身折れが発生しにくくて、以降の搬送に姿勢乱れや詰まりが発生しにくくなる。
【0022】
本第6発明では、前記最も運転部側に位置する引起し装置に、引起しチェーンを引起しチェーン戻り経路から引起しチェーン横回し経路に案内する横回し用チェーン案内部材と、引起しチェーンを前記引起しチェーン横回し経路から引起しチェーン上昇経路に案内する上昇用チェーン案内部材とを設け、前記上昇用チェーン案内部材のチェーン巻回曲率を、前記横回し用チェーン案内部材のチェーン巻回曲率よりも大きく設定してある。
【0023】
本第6発明の構成によると、植立穀稈のクローラ走行装置による踏み付けがない良好な中割刈りや周囲刈り作業を行うことができながら、穀稈の稈身折れによる詰まりなどのトラブル発生を回避しやすいコンバイを得ることができる。
【0024】
つまり、運転部側に位置する植立穀稈が最運転部側の引起し装置に導入されるように、最運転部側の引起し装置の下端部の引起しチェーン横回し経路を、他の引起し装置における下端部の引起しチェーン横回し経路よりも長くすると、運転部側に位置する植立穀稈は、稈身を比較的大きく曲げられながら最運転部側の引起し装置の下端部の引起しチェーン横回し経路に沿わせて走行機体左右方向での内側に引き寄せられ、さらにその曲がり状態で引起しチェーン上昇経路に沿った引起し経路に導入されて引起し処理される。このように穀稈が引起し装置の下端部から引起し経路に導入される際、上昇用チェーン案内部材のチェーン巻回曲率が横回し用チェーン案内部材のチェーン巻回曲率よりも大きいことから、穀稈は引起し装置下端部から引起し経路に比較的大きな曲率の湾曲角部に沿って導入されて、穀稈に急角度での曲がりが発生しにくくなる。すると、穀稈の稈身折れが発生しにくくて、以降の搬送に姿勢乱れや詰まりが発生しにくくなる。
【0025】
本第7発明では、前記最も運転部側に位置する引起し装置の引起しチェーン上昇経路の上端を、前記他の引起し装置の引起しチェーン上昇経路の上端よりも高い配置高さに配置してある。
【0026】
本第7発明の構成によると、植立穀稈のクローラ走行装置による踏み付けがない良好な中割刈りや周囲刈り作業を行うことができながら、穀稈の引起し性能がよいコンバイを得ることができる。
【0027】
つまり、最も運転部側に位置する引起し装置とこれに隣り合う引起し装置とを、互いの引起し経路が対向し合うよう配置すると、両引起し装置の引起し爪を突合せ対向させて引起し作動させることで、穀稈を引起し爪から逃がすことなく引起すことができる。このように対向する引起し装置を引起し爪の突合せ状態で同調駆動するには、両引起し装置が備える引起しチェーンの周長を引起し爪ピッチの整数倍の長さに設定する。
【0028】
運転部側に位置する植立穀稈が最運転部側の引起し装置に導入されるように、最運転部側の引起し装置の下端部の引起しチェーン横回し経路を、他の引起し装置における下端部の引起しチェーン横回し経路よりも長くすると、最運転部側の引起し装置とこれに隣り合う引起し装置との引起しチェーン上昇経路の上端が同じ配置高さに位置しておれば、両引起し装置が備える引起しチェーンが引起し爪ピッチの整数倍の長さの周長を備えるものであっても、両引起し装置の引起し爪が突合せ状態にならないことがある。これは、最運転部側の引起し装置の引起しチェーン横回し経路が、隣り合う引起し装置の引起しチェーン横回し経路よりも長く、最運転部側の引起し装置の引起しチェーン横回し経路に掛かる引起しチェーン長さと、隣り合う引起し装置の引起しチェーン横回し経路に掛かる引起しチェーン長さとが相違するからである。
【0029】
本第7発明の構成によると、最運転部側の引起し装置の引起しチェーン横回し経路に掛かるチェーン長さと、これに隣り合う引起し装置の引起しチェーン横回し経路に掛かるチェーン長さとが相違しても、最運転部側の引起し装置の引起しチェーン上昇経路の上端が他の引起し装置の引起しチェーン上昇経路の上端よりも高い配置高さに位置していて、最運転部側の引起し装置の引起しチェーン上昇経路に掛かる引起しチェーン長さと、隣り合う引起し装置の引起しチェーン上昇経路に掛かる引起しチェーン長さとが相違することにより、引起しチェーン上昇経路に掛かる引起しチェーン長さの相違と、引起しチェーン横回し経路に掛かる引起しチェーン長さの相違との相殺により、最運転部側の引起し装置とこれに隣り合う引起し装置とを引起し爪の突合わせ状態で同調駆動することができる。
【0030】
しかも、最運転部側の引起し装置の引起しチェーン上昇経路の上端が他の引起し装置の引起しチェーン上昇経路の上端よりも高い配置高さに位置していることにより、最運転部側の引起し装置に引起しチェーン上昇経路の長さ不足が発生しないようにしながら、両引起し装置の引起し爪を突合わせ状態にできる。
【0031】
従って、最運転部側の引起し装置の下端部の引起しチェーン横回し経路を、他の引起し装置における下端部の引起しチェーン横回し経路よりも長くしながら、最運転部側の引起し装置とこれに隣り合う引起し装置とを互いの引起し経路が対向し合うよう配置した場合でも、両引起し装置を引起し爪の突合せ状態で同調駆動して、かつ最運転部側の引起し装置に長さ不足がない引起しチェーン上昇経路を備えさせて、穀稈を引起し爪から逃げないようにするとともに極力穂先側まで引起し作用を与えて引起し処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】コンバインの全体の左側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】コンバインの正面図
【図4】コンバインの全体の右側面図
【図5】脱穀装置と穀粒タンクとの走行装置に対する配置を示す後面図
【図6】引起し装置の正面図
【図7】刈取り前処理装置と走行装置の回刈り作業状態での平面図
【図8】刈取り前処理装置と走行装置の中割刈りと周囲刈り作業状態での平面図
【図9】刈取り前処理装置の補助搬送装置配設部での平面図
【図10】刈取り前処理装置の補助搬送装置配設部での正面図
【図11】操縦塔の正面図
【図12】刈取り前処理装置の下降作業状態での側面図
【図13】刈取り前処理装置の上昇状態での側面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの全体の左側面図である。図2は、本発明の実施例に係るコンバインの全体平面図である。図3は、本発明の実施例に係るコンバインの正面図である。図4は、本発明の実施例に係るコンバインの全体の右側面図である。これらの図に示すように、本発明の実施例に係るコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1,1(以下、走行装置1と略称する。)を備えた走行機体と、この走行機体の機体フレーム2の前部に連結された刈取り前処理装置3と、前記機体フレーム2の後側に走行機体左右方向に並べて設けた脱穀装置4と穀粒タンク5とを備えて構成してある。このコンバインは、稲、麦などを収穫する。
【0034】
すなわち、走行機体は、前記左右一対の走行装置1,1を備える他、前記機体フレーム2の前部の機体左右方向一端側に設けた運転部6と、前記運転部6が備える運転座席7の下方に設けたエンジン8が装備された原動部とを備えている。
【0035】
前記刈取り前処理装置3は、前記機体フレーム2の前部の運転部側と反対の横端側に軸芯Pまわりに上下揺動自在に連結された刈取り前処理フレーム10を備えている。この刈取り前処理フレーム10は、機体フレーム2に上下揺動自在に連結された主フレーム10aと、この主フレーム10aの先端部に機体左右方向に並べて連結された三本の分草フレーム10bとを備えている。
【0036】
刈取り前処理装置3は、前記刈取り前処理フレーム10が油圧シリンダ11によって機体フレーム2に対して上下に揺動操作されることにより、前記各分草フレーム10aの前端部に設けてあるデバイダ12が地面近くに下降した下降作業状態と、前記デバイダ12が地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降する。
【0037】
刈取り前処理装置3を下降作業状態にして走行機体を走行させると、刈取り前処理装置3は、前記各デバイダ12からの刈り取り対象の植立穀稈を引起し処理するとともに刈取り処理し、刈取り穀稈を脱穀装置4の脱穀フィードチェーン4aに供給する。脱穀装置4は、脱穀フィードチェーン4aによって刈取り穀稈の株元側を機体後方向きに挟持搬送しながら穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。穀粒タンク5は、脱穀装置4からの脱穀粒を供給されて貯留する。
【0038】
図1は、前記走行装置1の側面視での構造を示している。図7は、前記左右の走行装置1の平面視での構造を示している。こられの図に示すように、前記左右の走行装置1は、走行機体前後方向に沿ったトラックフレーム20と、このトラックフレーム20に走行装置前後方向に並べて遊転自在に支持された三つの接地輪21と、三つの接地輪21の前方に位置するクローラ駆動輪22と、前記前記トラックフレーム20の後端部に支持されたクローラ緊張輪23と、前記接地輪21とクローラ駆動輪22と前記クローラ緊張輪23とにわたって巻回されたクローラベルト24とを備えて構成してある。
【0039】
前記クローラ駆動輪22は、前記機体フレーム2の前部に設けたミッションケース25に駆動回転自在に支持されている。
【0040】
前記クローラベルト24は、ゴム製のクローラベルトである。このクローラベルト24は、これの長手方向に並べて埋設された複数個の芯金26(図5参照)を備えている。前記各芯金26は、クローラベルト24の横幅方向での中心に対してクローラベルト横外側に偏倚した配置になっている。
【0041】
図5に示すように、前記各接地輪21は、左右一対の輪体本体21a,21aを備え、左右一対の輪体本体21a,21aによって前記芯金26が備える左右一対の突起26a,26aよりも外側でクローラベルト24の内面側に接触作用するよう外転輪になっている。
【0042】
図5は、前記脱穀装置4と前記穀粒タンク5との前記走行装置1に対する配置を示す後面図である。この図に示すように、前記脱穀装置4は、左右一対の走行装置1,1のうちの脱穀装置4に近い側の走行装置1における前記接地輪21での左右中心21Cと、脱穀装置4の機体左右方向外側端4bとの間に間隔D1を備えた配置になっている。脱穀装置4の機体左右方向外側端4bは、脱穀フィードチェーン4aを覆うよう脱穀装置4の横外側に装着されたチェーンカバー4c(図1参照)の外側面で成っている。
【0043】
前記穀粒タンク5は、左右一対の走行装置1,1のうちの穀粒タンク5に近い側の走行装置1における前記接地輪21での左右中心21Cと、穀粒タンク5の機体左右方向外側端5aとの間に間隔D2を備えた配置になっている。穀粒タンク5の前記間隔D2は、脱穀装置4の前記間隔D1よりも小になっている。
【0044】
図5に示す走行機体の機体重心G1は、穀粒タンク5の前記間隔D2が脱穀装置4の前記間隔D1よりも小である場合(以下、本実施例の場合と称する。)で、かつ穀粒タンク5が穀粒貯留状態になった場合での機体重心を示している。図5に示す走行機体の穀粒タンク5が位置する横側での転倒角θ1は、本実施例の場合で、かつ穀粒タンク5が穀粒貯留状態になった場合における転倒角を示している。図5に示す走行機体の機体重心G2と転倒角θ2とは、穀粒タンク5に近い側の走行装置1における前記接地輪21での左右中心21Cと、穀粒タンク5の機体左右方向外側端5aとの間に、脱穀装置4の前記間隔D1よりも大の間隔D3設けた場合(以下、比較例の場合と称する。)で、かつ穀粒タンク5が穀粒貯留状態になった場合での機体重心と転倒角とを示している。
この図に示すように、本実施例の場合で、かつ穀粒タンク5が穀粒貯留状態になった場合の走行機体の機体重心G1は、比較例の場合で、かつ穀粒タンク5が穀粒貯留状態になった場合の走行機体の機体重心G2よりも走行機体左右方向での内側に位置する。従って、本実施例の場合で、かつ穀粒タンク5が穀粒貯留状態になった場合の走行機体の穀粒タンク5が位置する側での転倒角θ1は、比較例の場合で、かつ穀粒タンク5が穀粒貯留状態になった場合の走行機体の穀粒タンク5が位置する側での転倒角θ2よりも大になる。
【0045】
図1,9,12に示すように、前記刈取り前処理装置3は、前記刈取り前処理フレーム10と前記デバイダ12とを備える他、前記三つのデバイダ12よりもやや走行機体後方側に設けた左右一対の引起し装置30L,30Rと、各引起し装置30L,30Rの背後に設けた補助搬送装置50L,50Rと、各補助搬送装置50L,50Rの搬送終端側の下方に前記各分草フレーム10bにわたって連結して設けたバリカン形の刈取り装置13と、前記補助搬送装置50L,50Rの搬送終端側の上方に搬送始端部が位置した供給装置14とを備えて構成してある。
【0046】
図12に示すように、刈取り前処理装置3の揺動軸芯Pは、脱穀フィードチェーン4aの搬送始端部よりも少し高い配置高さに位置している。これにより、刈取り前処理装置3が下降作業位置から上昇非作業位置に上昇するに伴って左右一対の引起し装置30L,30Rの上端が機体後方側に移動するストロークを少なく済ませながら刈取り前処理装置3を上昇非作業状態と下降作業状態とに昇降できる。
【0047】
図3に示すように、刈取り前処理装置3は、前記三つのデバイダ12のうちの走行機体左右方向での両端に位置するデバイダ12の先端どうしの距離を最大の刈取り処理幅Wとして備えている。三つのデバイダ12のうちの最も運転部6に近いデバイダ12と中間に位置するデバイダ12との先端どうしの距離が、最も運転部6から離れているデバイダ12と中間に位置するデバイダ12との先端どうしの距離よりも大になっている。
【0048】
図6は、前記左右一対の引起し装置30L,30Rの正面図である。この図と図12とに示すように、前記各引起し装置30L,30Rは、前記デバイダ12の機体後方側に下端部が位置し、上端側ほど機体後方側に位置した傾斜姿勢の引起しケース31と、この引起しケース31の内側の下部に設けた左右一対の案内輪体32,33又は一つの案内輪体34と、前記引起しケース31の内側の上部に設けたスプロケット35とテンション輪体36と、前記各案内輪体32,33,34と前記スプロケット35と前記テンション輪体36とにわたって巻回された無端チェーン型の引起しチェーン37とを備えて構成してある。
【0049】
左右一対の引起し装置30L,30Rのうちの運転部側に位置した引起し装置30R(以下、右引起し装置30Rと称する。)は、前記左右一対の案内輪体32,33を備え、運転部側とは反対側に位置した引起し装置30L(以下、左引起し装置30Lと称する。)は、前記一つの案内輪体34を備えている。前記各案内輪体32,33,34と前記テンション輪体36とは、遊転自在に支持されている。前記スプロケット35は、駆動自在に支持されている。前記引起しチェーン37は、引起しチェーン37の周長方向での複数箇所に起伏揺動自在に設けた引起し爪38を備えている。
【0050】
前記右引起し装置30Rでは、前記引起しチェーン37が、前記スプロケット35によって駆動されて、前記左右一対の案内輪体32,33のうちの大径側の案内輪体33から前記スプロケット35に至る引起しチェーン上昇経路40(以下、チェーン上昇経路40と略称する。)を上昇する。このチェーン上昇経路40の上端40aに至った引起しチェーン37は、前記スプロケット35から前記左右一対の案内輪体32,33のうちの小径側の案内輪体32に至る引起しチェーン戻り経路41(以下、チェーン戻り経路41と略称する。)に前記スプロケット35によって案内され、このチェーン戻り経路41を下降する。このチェーン戻り経路41の下端に至った引起しチェーン37は、前記小径側の案内輪体32から前記大径側の案内輪体33に至る引起しチェーン横回し経路42a(以下、チェーン横回し経路42aと略称する。)に前記小径側の案内輪体32の外周面32aによって案内されてこのチェーン横回し経路42aを移動する。このチェーン横回し経路42aの終端に至った引起しチェーン37は、前記チェーン上昇経路40に前記大径側の案内輪体33の外周面33aによって案内されてチェーン上昇経路40を再度上昇していく。
【0051】
これにより、前記右引起し装置30Rでは、前記各引起し爪38が、前記チェーン横回し経路42aを移動する引起しチェーン37によって、引起し装置30Rの下端部に前記チェーン横回し経路42aに沿って位置する爪横回し経路43aを移送される。このとき、前記左右一対の案内輪体32,33の外周面32a,33aと、左右一対の案内輪体32,33の間に配置して引起しケース31に固定してある起立ガイド44とが引起し爪38の基部に当接して起立操作することにより、引起し爪38は、引起しチェーン37に対して起立した姿勢を維持して引起し爪38の先端側が引起しケース31から爪横回し経路43aに突出した状態で横移動し、運転部側のデバイダ12からの植立穀稈の株元側に係止してこの植立穀稈を機体左右方向での内側に引き寄せる。
【0052】
爪横回し経路43aの終端に至った引起し爪38は、引起し装置30Rの横側部に前記チェーン上昇経路40に沿って位置する引起し経路45に前記大径側の案内輪体33の周面33aによって案内される。前記引起し経路45に移動した引起し爪38は、チェーン上昇経路40を移動する引起しチェーン37によって引起し経路45を上昇移送される。このとき、案内輪体33とスプロケット35との間に配置して引起しケース31に固定してある起立ガイドレール46が引起し爪38の基部に当接して起立操作することにより、引起し爪38は、引起しチェーン37に対して起立した姿勢を維持して引起し爪37の先端側が引起しケース31から引起し経路45に突出した状態で上昇移動し、運転部側のデバイダ12と中間に位置するデバイダ12とからの植立穀稈に梳き上げ作用する。
【0053】
引起し経路45の終端に至った引起し爪38は、チェーン戻り経路41に移動する引起しチェーン37によって引起しケース31の内部に引き込まれ、前記小径側の案内輪体32に至る爪戻り経路47に移動する。引起し爪38は、引起しケース31に引き込まれた際、引起しケース31の内部に設けてある倒伏ガイド48に当接して引起しチェーン35に対して倒伏した姿勢に切り換わり、この倒伏姿勢で爪戻り経路47を下降移動する。爪戻り経路47の終端に至った引起し爪38は、前記チェーン戻り経路41からチェーン横回し経路42aに移送される引起しチェーン37によって前記爪横回し経路43aに移送され、この爪横回し経路43aを再度移動していく。爪戻し経路47の終端に至った引起し爪38は、前記案内輪体32の近くに位置する起立ガイド49に当接して起立操作を受けることにより、引起しチェーン37に対する倒伏姿勢から起立姿勢に姿勢変化して爪横回し経路43aに移動する。
【0054】
引起しチェーン37をチェーン横回し経路42aからチェーン上昇経路40に案内する上昇用チェーン案内部材としての前記案内輪体33は、引起しチェーン37をチェーン戻り経路41からチェーン横回し経路42aに案内する横回し用チェーン案内部材としての案内輪体32の外径よりも大きな外径を備えていることから、横回し用チェーン案内部材としての案内輪体32のチェーン巻回曲率半径よりも大きなチェーン巻回曲率半径を備えている。これにより、案内輪体33は、引起し爪38によって爪横回し経路43aから引起し経路45に導入される植立穀稈の稈身折れが発生しにくいよう引起し爪38を爪横回し経路43aから引起し経路45に大きな曲率半径の湾曲角部に沿わせて移動させる。
【0055】
一方、前記左引起し装置30Lでは、前記引起しチェーン37が、前記スプロケット35によって駆動されて、前記案内輪体34から前記スプロケット35に至る引起しチェーン上昇経路40(以下、チェーン上昇経路40と略称する。)を上昇する。このチェーン上昇経路40の上端40b(スプロケット35の上端に相当)に至った引起しチェーン37は、前記スプロケット35から前記案内輪体34に至る引起しチェーン戻り経路41(以下、チェーン戻り経路41と略称する。)に前記スプロケット35によって案内され、このチェーン戻り経路41を下降する。このチェーン戻り経路41の下端に至った引起しチェーン37は、前記案内輪体34の外周面34aの下部によって形成された引起しチェーン横回し経路42b(以下、チェーン横回し経路42bと略称する。)に前記案内輪体34の外周面34aによって案内されてこのチェーン横回し経路42bを移動する。このチェーン横回し経路42bの終端に至った引起しチェーン37は、前記チェーン上昇経路40に前記案内輪体34の外周面34aによって案内されてチェーン上昇経路40を再度上昇していく。
【0056】
これにより、前記左引起し装置30Lでは、前記各引起し爪38が、前記チェーン横回し経路42bを移動する引起しチェーン37によって、引起し装置30Lの下端部に前記チェーン横回し経路42bに沿って位置する爪横回し経路43bを移送される。このとき、前記案内輪体34の外周面34aが引起し爪38の基部に当接して起立操作することにより、引起し爪38は、引起しチェーン37に対して起立した姿勢を維持して引起し爪38の先端側が引起しケース31から爪横回し経路43bに突出した状態で横移動し、運転部側とは反対側に位置するデバイダ12からの植立穀稈の株元側に係止してこの植立穀稈を機体左右方向での内側に引き寄せる。
【0057】
爪横回し経路43bの終端に至った引起し爪38は、引起し装置30Lの横側部に前記チェーン上昇経路40に沿って位置する引起し経路45に前記案内輪体34の周面34aによって案内される。前記引起し経路45に移動した引起し爪38は、チェーン上昇経路40を移動する引起しチェーン37によって引起し経路45を上昇移送される。このとき、案内輪体34とスプロケット35との間に配置して引起しケース31に固定してある起立ガイドレール46が引起し爪38の基部に当接して起立操作することにより、引起し爪38は、引起しチェーン37に対して起立した姿勢を維持して引起し爪38の先端側が引起しケース31から引起し経路45に突出した状態で上昇移動し、運転部側とは反対側に位置するデバイダ12と、中央に位置するデバイダ12とからの植立穀稈に梳き上げ作用する。
【0058】
引起し経路45の終端に至った引起し爪38は、チェーン戻り経路41に移動する引起しチェーン37によって引起しケース31の内部に引き込まれ、前記案内輪体34に至る爪戻り経路47に移動する。引起し爪38は、引起しケース31に引き込まれた際、引起しケース31の内部に設けてある倒伏ガイド48に当接して引起しチェーン37に対して倒伏した姿勢に切り換わり、この倒伏姿勢で爪戻り経路47を下降移動する。爪戻り経路47の終端に至った引起し爪38は、前記チェーン戻り経路41からチェーン横回し経路42bに移送される引起しチェーン37によって前記爪横回し経路43bに移送され、この爪横回し経路43bを再度移動していく。爪戻し経路47の終端に至った引起し爪38は、前記案内輪体34の近くに位置する起立ガイド49に当接して起立操作を受けることにより、引起しチェーン37に対する倒伏姿勢から起立姿勢に姿勢変化して爪横回し経路34に移動する。
【0059】
前記右引起し装置30Rの前記チェーン横回し経路42aは、チェーン横回し経路42aに沿って並ぶ一対の案内輪体32,33によって形成され、前記左引起し装置30Lの前記チェーン横回し経路42bは、一つの案内輪体34の周部によって形成されており、前記右引起し装置30Rの前記チェーン横回し経路42aは、前記左引起し装置30Lの前記チェーン横回し経路42bよりも長くなっている。
【0060】
これにより、図3,7に示す如く前記刈取り処理幅Wが、左側の走行装置1におけるクローラベルト24の機体左右方向外側端24aの位置と、左外側のデバイダ先端12aの位置とが機体左右方向で一致し、右側のクローラ走行装置1におけるクローラベルト24の機体左右方向外側端24bの位置と、右外側のデバイダ先端12bの位置とが機体左右方向でほぼ一致する状態を現出する大きさの刈取り処理幅になっている。
【0061】
前記右引起し装置30Rにおけるチェーン上昇経路40の前記上端40aを、前記左引起し装置30Lにおけるチェーン上昇経路40の前記上端40bよりも高い配置高さに配置してある。
すなわち、左右一対の引起し装置30L,30Rの引起しチェーン37は、引起し爪38の取り付け間隔(爪ピッチ)の整数倍の長さに等しい周長を備えている。右引起し装置30Rの前記チェーン横回し経路42aが左引起し装置30Lの前記チェーン横回し経路42bよりも長いことから、右引起し装置30Rの引起しチェーン37は、左引起し装置30Lの引起しチェーン37の周長よりも長い周長を備えている。
右引起し装置30Rにおいてチェーン横回し経路42aに掛かる引起しチェーン長さと、左引起し装置30Lにおいてチェーン横回し経路42bに掛かる引起しチェーン長さとが相違する。右引起し装置30Rにおいてチェーン上昇経路40に掛かる引起しチェーン長さと、左引起し装置30Lにおいてチェーン上昇経路40に掛かる引起しチェーン長さとが相違する。チェーン上昇経路40に掛かる引起しチェーン長さの相違と、チェーン横回し経路42a,42bに掛かる引起しチェーン長さの相違との相殺により、左右一対の引起し装置30L,30Rの引起し爪38が引起し経路45において突き合せ状態で上昇する状態を現出している。
【0062】
図7は、刈取り前処理装置3と走行装置1との回刈り作業状態で平面図である。回刈り作業は、走行機体の運転部側の横側に既刈り地が位置し、走行機体の運転部側とは反対側の横側に未刈り地が位置する状態で作業する。この図に示すaは、刈り取り対象の植立穀稈を示し、bは、未刈り地の植立穀稈を示し、cは、既刈り地の切り株を示す。この図に示すように、刈取り前処理装置3は、回刈り作業では、三つのデバイダ12のうちの運転部6から最も離れて位置するデバイダ12によって植立穀稈を刈り取り対象と非刈り取り対象とに分草して刈取り対象の植立穀稈を後方に案内し、三つのデバイダ12のうちの中間に位置するデバイダ12によって二つの植え付け条の植立穀稈を分草して後方に案内する。すなわち、デバイダ間距離が大である側(運転部側)のデバイダ間に一つの植え付け条の植立穀稈aを、デバイダ間距離が小である側(運転部側とは反対側)のデバイダ間に一つの植え付け条の植立穀稈aをそれぞれ導入する。刈取り前処理装置3は、デバイダ間距離が大であるデバイダ間からの植立穀稈を、右引起し装置30Rの引起し爪38によって引き起こしケース31の横側に位置する引起し経路45に導入して引起し処理し、デバイダ間距離が小であるデバイダ間からの植立穀稈を、左引起し装置30Rの引起し爪38によって引起しケース31の横側に位置する引起し経路45に導入して引起し処理し、左右一対の引起し装置30L,30Rが引起し処理する植立穀稈aを刈取り装置13によって刈取り処理し、刈取り装置13からの刈取り穀稈を供給装置14によって機体後方向きに搬送して脱穀装置4の脱穀フィードチェーン4aの始端部に供給する。(二条の植立穀稈の刈取り処理を行う。)
【0063】
図8は、刈取り前処理装置3と走行装置1との中割刈り作業と周囲刈り作業とでの平面図である。中割刈り作業は、走行機体の両横側に未刈り地が位置する状態で作業する。周囲刈り作業は、走行機体の一方の横側に畦が位置する状態で畦に沿って走行しながら作業する。この図に示すaは、刈り取り対象の植立穀稈を示し、bは、非刈取り対象の植立穀稈を示す。この図に示すように、刈取り前処理装置3は、中割刈り作業と周囲刈り作業とでは、三つのデバイダ12のうちの最も運転部側に位置するデバイダ12と運転部6から最も離れているデバイダ12とによって植立穀稈を刈り取り対象と非刈取り対象とに分草して刈取り対象の植立穀稈を後方に案内し、三つのデバイダ12のうちの中央に位置するデバイダ12によって二つの植え付け条の植立穀稈を分草して後方に案内する。すなわち、デバイダ間距離が大である側(運転部側)のデバイダ間に二つの植え付け条の植立穀稈aを、デバイダ間距離が小である側(運転部側とは反対側)のデバイダ間に一つの植え付け条の植立穀稈aをそれぞれ導入する。刈取り前処理装置3は、デバイダ間距離が大であるデバイダ間からの植立穀稈を、右引起し装置30Rの引起し爪38によって引き起こしケース31の横側に位置する引起し経路45に導入して引起し処理し、デバイダ間距離が小であるデバイダ間からの植立穀稈を、左引起し装置30Lの引起し爪38によって引起しケース31の横側に位置する引起し経路45に導入して引起し処理し、左右一対の引起し装置30L,30Rが引起し処理する植立穀稈を刈取り装置13によって刈取り処理し、刈取り装置13からの刈取り穀稈を供給装置14によって機体後方向きに搬送して脱穀装置4の脱穀フィードチェーン4aの始端部に供給する。(三条の植立穀稈の刈取り処理を行う。)
【0064】
図9は、刈取り前処理装置3の補助搬送装置配設部での平面図である。図10は、刈取り前処理装置3の補助搬送装置配設部での正面図である。これらの図と図12とに示すように、前記各補助搬送装置50L,50Rは、複数本の係止アーム51が装備された無端回動ベルト52L,52Rと、この無端回動ベルト52L,52Rの搬送終端部の下方に設けた回転輪体53L,53Rとを備えて構成してある。
【0065】
各補助搬送装置50L,50Rは、引起し途中の植立穀稈の株元側を無端回動ベルト52L,52Rの係止アーム51によって刈取り装置13に向けて係止搬送し、刈取り装置13による処理後の刈取り穀稈の株元側を無端回動ベルト52L,52Rの係止アーム51による係止搬送と、回転輪体53L,53Rの突起による掻き込み搬送とによって刈取り装置13の後方側に搬送して前記供給装置14の搬送始端部に供給する。
【0066】
図10に示すように、前記一対の補助搬送装置50L,50Rのうちの運転部側に位置する補助搬送装置50R(以下、右補助搬送装置50Rと称する。)の無端回動ベルト52Rと回転輪体53Rとは、伝動ケースに兼用の刈取り前処理装置フレーム10から右引起し装置30Rに動力伝達する伝動ケース54の内部に位置する回転伝動軸55によって駆動される。前記一対の補助搬送装置50L,50Rのうちの運転部側とは反対側の補助搬送装置50L(以下、左補助搬送装置50Lと称する。)の回転輪体53Lは、右補助搬送装置50Rの回転輪体53Rとの突起による噛み合いによって駆動される。左補助搬送装置50Lの無端回動ベルト52Lは、回転輪体53Lとの連動によって駆動される。
【0067】
図10に示すように、前記一対の補助搬送装置50L,50Rのうちの右補助搬送装置50Rの前記無端回動ベルト52Rは、左補助搬送装置50Lの無端回動ベルト52Lよりも高い配置高さに配置してある。
【0068】
すなわち、運転部側のデバイダ12からの植立穀稈は、右引起し装置30Rの爪横回し経路43aから引起し経路45に移動する引起し爪38によって引起し経路45に導入されることから、大きく曲がりやすい。右補助搬送装置50Rの無端回動ベルト52Rは、運転部側のデバイダ12からの植立穀稈に係止アーム51を比較的高い箇所で作用させ、稈身の急角度での曲がりを発生しにくくしながら穀稈を刈取り装置13に搬送する。
【0069】
図2,3,4に示すように、前記運転部6は、前記運転座席7を備える他、この運転座席7の前方下方に設けた運転部床60と、運転座席7の前方に配置して前記運転部床60に立設した操縦塔61とを備えて構成してある。
【0070】
図11に示すように、操縦塔61は、操縦塔61から上方向きに突出した固定ハンドル62と操作レバー63とを備え、操縦塔61の前面に設けた前照灯64を備え、操縦塔61の刈取り前処理装置側端部に操縦塔61の下部に配置して設けた凹入部65を備えている。
【0071】
前記操作レバー63は、走行機体横方向に揺動操作されることにより、操向クラッチ(図示せず)を操作して左右一対の走行装置1,1を各別に駆動、停止操作して走行機体の操向操作を行う。
【0072】
図13は、刈取り前処理部の上昇状態での側面図である。この図と図9とに示すように、前記凹入部65は、刈取り前処理装置3が上昇操作される際、刈取り前処理装置3の装置部分としての前記右補助搬送装置50Rの前記係止アーム51と前記回転輪体53Rとが操縦塔61に干渉することを回避するよう補助搬送装置50Rと操縦塔61との間隙を形成している。
【0073】
〔別実施例〕
上記した実施例の刈取り前処理装置3に替え、引起し装置を三つ以上、機体左右方向に並べて設け構成を採用した場合も、本発明の目的を達成することができる。
【0074】
前記穀粒タンク5に替え、脱穀粒を袋詰めのために貯留するようホッパ形に構成したものを採用した場合においても本発明の目的を達成することができる。従って、穀粒タンク5と袋詰めホッパとを総称して穀粒貯留部5と呼称する。
【0075】
上記した実施例に替え、左側のクローラ走行装置1におけるクローラベルト24の機体左右方向外側端24aの位置と、刈取り前処理装置3の左外側のデバイダ先端12aの位置とを、機体左右方向でほぼ一致させ、右側のクローラ走行装置1におけるクローラベルト24の機体左右方向外側端24bの位置と、刈取り前処理装置3の右外側のデバイダ先端12bの位置とを、機体左右方向で一致させた構成、あるいは、左側のクローラ走行装置1におけるクローラベルト24の機体左右方向外側端24aの位置と、刈取り前処理装置3の左外側のデバイダ先端12aの位置とを、機体左右方向で一致させ、右側のクローラ走行装置1におけるクローラベルト24の機体左右方向外側端24bの位置と、刈取り前処理装置3の右外側のデバイダ先端12bの位置とを、機体左右方向で一致させた構成、あるいは、左側のクローラ走行装置1におけるクローラベルト24の機体左右方向外側端24aの位置と、刈取り前処理装置3の左外側のデバイダ先端12aの位置とを、機体左右方向でほぼ一致させ、右側のクローラ走行装置1におけるクローラベルト24の機体左右方向外側端24bの位置と、刈取り前処理装置3の右外側のデバイダ先端12bの位置とを、機体左右方向でほぼ一致させた構成を採用しても本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 クローラ走行装置
3 刈取り前処理装置
4 脱穀装置
4b 脱穀装置の機体左右方向外側端
5 穀粒貯留部
5a 穀粒貯留部の機体左右方向外側端
6 運転部
12a 左外側のデバイダ先端
12b 右外側のデバイダ先端
21 接地輪
21C 接地輪での左右中心
24 クローラベルト
24a 左側のクローラ走行装置におけるクローラベルトの機体左右方向外側端
24b 右側のクローラ走行装置におけるクローラベルトの機体左右方向外側端
30L,30R 引起し装置
32 横回し用チェーン案内部材
33 上昇用チェーン案内部材
37 引起しチェーン
40 引起しチェーン上昇経路
40a,40b 引起しチェーン上昇経路の上端
41 引起しチェーン戻り経路
42a,42b 引起しチェーン横回し経路
61 操縦塔
65 凹入部
D1,D2 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のクローラ走行装置を備えた走行機体と、前記走行機体の前部の機体左右方向一端側に設けた運転部と、前記走行機体の機体左右方向他端側に揺動昇降自在に連結された刈取り前処理装置と、前記刈取り前処理装置に機体左右方向に並べて設けた複数の引起し装置と、前記走行機体に機体左右方向に並べて設けた脱穀装置及び穀粒貯留部とを備えたコンバインであって、
前記左右一対のクローラ走行装置のうちの前記穀粒貯留部に近い側のクローラ走行装置における接地輪での左右中心と前記穀粒貯留部の機体左右方向外側端との間隔を、前記左右一対のクローラ走行装置のうちの前記脱穀装置に近い側のクローラ走行装置における接地輪での左右中心と前記脱穀装置の機体左右方向外側端との間隔よりも、小に設定してあるコンバイン。
【請求項2】
前記引起し装置の一対を備え、
前記左側のクローラ走行装置におけるクローラベルトの機体左右方向外側端の位置と、刈取り前処理装置の左外側のデバイダ先端の位置とを、機体左右方向で一致又はほぼ一致させ、前記右側のクローラ走行装置におけるクローラベルトの機体左右方向外側端の位置と、刈取り前処理装置の右外側のデバイダ先端の位置とを、機体左右方向で一致又はほぼ一致させてある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記複数の引起し装置のうちの最も運転部側に位置する引起し装置における下端部の引起しチェーン横回し経路を、他の引起し装置における下端部の引起しチェーン横回し経路よりも長く設定してある請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記運転部に立設した操縦塔の刈取り前処理装置側端部に、前記刈取り前処理装置の装置部分と前記操縦塔との間隙を形成する凹入部を設けてある請求項3記載のコンバイン。
【請求項5】
前記複数の引起し装置の背後に、植立穀稈を機体後方向きに搬送する補助搬送装置を設け、
前記最も運転部側に位置する引起し装置の前記補助搬送装置を、前記他の引起し装置の前記補助搬送装置よりも高い配置高さに配置してある請求項3記載のコンバイン。
【請求項6】
前記最も運転部側に位置する引起し装置に、引起しチェーンを引起しチェーン戻り経路から引起しチェーン横回し経路に案内する横回し用チェーン案内部材と、引起しチェーンを前記引起しチェーン横回し経路から引起しチェーン上昇経路に案内する上昇用チェーン案内部材とを設け、
前記上昇用チェーン案内部材のチェーン巻回曲率半径を、前記横回し用チェーン案内部材のチェーン巻回曲率半径よりも大きく設定してある請求項3記載のコンバイン。
【請求項7】
前記最も運転部側に位置する引起し装置の引起しチェーン上昇経路の上端を、前記他の引起し装置の引起しチェーン上昇経路の上端よりも高い配置高さに配置してある請求項3記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−11870(P2010−11870A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240657(P2009−240657)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【分割の表示】特願2007−181196(P2007−181196)の分割
【原出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】