説明

コンバイン

【課題】コンバインのハンドルの支持強度を高めて作業の安全性を向上させると共に、スイッチの操作性を高める。
【解決手段】座席(1)の前方にメーターパネル(2)を配置し、該メーターパネル(2)の上側に沿う左右方向のハンドル(3)を設け、該ハンドル(3)の一端部をメーターパネル(2)を支持するフロントフレーム(4)の機体内側の部位に連結し、該操作ハンドル(3)の他端部を座席(1)への乗降口(5)側に達する位置まで延長した自由端部(3a)とし、フロントフレーム(4)の外側部に沿う上下方向の支持フレーム(6)を設け、操作ハンドル(3)の自由端部(3a)と支持フレーム(6)の上端部とをメーターパネル(2)の外側部において箱型のスイッチケース(8)で連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインのスイッチケースの取付け位置に関する技術は、例えば、下記特許文献1及び2などに開示されている。
まず、特許文献1には、「方向手動スイッチ17を、アームレスト16の右側コーナー部16aの前側に取り付ける構成」が記載されている。そして、該文献には、「安定し易いコーナー部に手を置きながら方向手動スイッチを操作することができるうえに、コーナー部に手を置いたまま指で自然に操作できる位置に方向手動スイッチの操作部を配置することができ、しかも、アームレスト16のコーナー部を利用して方向手動スイッチを保護することができる。」と記載され、操作の容易性を期待している。
【0003】
そして、特許文献2は、「運転座席とその横側方の手摺との間にスイッチボックスを配備し、製作や組み付けの容易化並びに製造コストの削減を図る」と記載されているように、製造工程の合理化効果をねらった発明を開示している。
【特許文献1】特開平10−150832号公開特許公報
【特許文献2】特開2002−262639号公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成、例えば、前項で特許出願人が提示した特許文献1に開示されている発明は、その明細書、及び図面の記載から解るように、スイッチケースは、アームレストの連結部材として使用するものではなく、単にスイッチを取り付けるためのものであって、前側ケースと後側ケースとの前後2つの分割ケースから構成され、アームレストのコーナー部に前後から挟むようにして取り付けられている。したがって、アームレストは、両端部分が、フロント操作パネル、乃至はパネルを取付けたフロントフレーム部材に連結された構成であって、剛性上課題の残る構成になっている。
【0005】
すなわち、コンバイン等、この種の作業車両のアームレスト(ハンドル)は、運転中にオペレータが腕や肘を載せた状態で、体を前方や側方に乗り出しながら刈取状態や穀稈の搬送状態を監視するために、体重を持たしかけることが多く、従来から素材自体の強度と共に取付け部位の剛性が充分でなく、課題となっている。
【0006】
更に、上述の如き従来型は、スイッチケースに装備されたスイッチに接続するハーネスをパイプ材であるアームレストの内部を通して配線することになるから、製作時に手間を要し、複雑となって製造コストが高くなる課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この出願の発明は、上述の課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、座席(1)の前方にメーターパネル(2)を配置し、該メーターパネル(2)の上側に沿う左右方向のハンドル(3)を設け、該ハンドル(3)の一端部を前記メーターパネル(2)を支持するフロントフレーム(4)の機体内側の部位に連結し、該操作ハンドル(3)の他端部を座席(1)への乗降口(5)側に達する位置まで延長した自由端部(3a)とし、前記フロントフレーム(4)の外側部に沿う上下方向の支持フレーム(6)を設け、前記操作ハンドル(3)の自由端部(3a)と支持フレーム(6)の上端部とをメーターパネル(2)の外側部において箱型のスイッチケース(8)で連結したことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0008】
即ち、箱型に形成した剛性のあるスイッチケース(8)を、ハンドル(3)の自由端部(3a)と支持フレーム(6)の上端部(6a)との連結部材として使用し、強固に連結してハンドル(3)とフロントフレーム(4)とを取付けの剛性を増したものである。
【0009】
更に、スイッチケース(8)に接続するハーネスは、ケース(8)の内側面と支持フレーム(6)及びフロントフレーム(4)の上端部に配線用の孔を開ければ如何様にでも配線が簡単にできる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記スイッチケース(8)をアルミダイキャスト製とし、該スイッチケース(8)にエンジン(9)のスタータースイッチ(7)を装備したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとしたものである。
【0011】
即ち、スイッチケース(8)をアルミダイキャスト製とすることでケース(8)自体の強度を増してハンドル(3)の支持強度を高め、エンジン(9)のスタータスイッチ(7)を操作の容易な場所に配置した。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、一端をフロントフレーム(4)の機体内側の部位に連結したハンドル(3)の自由端部(3a)と、フロントフレーム(4)の外側部に沿う上下方向の支持フレーム(6)の上端部(6a)とを、箱型に構成したスイッチケース(8)で一体に連結したから、ハンドル(3)の支持強度が大幅に増強されて、操縦者がハンドル(3)に体を持たしかけた状態にまで身を乗り出して前方下方の分草杆周辺を監視しながら安全に作業を行なうことができる。
【0013】
そして、例えばケース(8)の内側面と支持フレーム(6)及びフロントフレーム(4)の上端部に配線用の孔を開ければ、スイッチケース(8)に接続するハーネスを如何様にでも配線が可能となり、従来技術のようにアームレストのパイプ内を通して配線する構成に比較してはるかに簡単で、低コストで製作でき、安価に提供することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加え、スイッチケース(8)自体をアルミダイキャスト製にすることによって、ハンドル(3)の支持強度を更に高めることができる。そして、このスイッチケース(8)にエンジン(9)のスタータスイッチ(7)を設けたから、運転中のオペレータや降車中の作業者が容易に操作でき、操作性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、コンバインは、図5に示すように、クローラ13,13を装備した車体14の前部に、刈取搬送装置15を装備し、その後方の車体14上に、脱穀装置を左側に搭載し、該脱穀装置の右側に、前から運転部16、グレンタンク17の順に搭載した構成としている。
【0016】
そして、運転部16は、図2、及び図5に示すように、前側に横方向に配置したメーターパネル2を、下側のフロントフレーム4(図1参照)に取付け、左側には主変速レバー18やスロットルレバー19を設けた前部サイド操作パネル20と、横側ハンドル21や分草杆調節レバー22を備えた後部サイド操作パネル23を取付け、該サイド操作パネル20、23の対向側(右側)は、外部に開放して乗降口5とし、後ろ側には座席1を設置して構成している。そして、エンジン9は、図6、及び図7に示すように、前記座席1の下方に搭載しており、右側に冷却ファン10、更に、その外側にラジエータ11の順に装備し、外側には防塵網を持つラジエータカバー12を設けた構成としている。
【0017】
この場合、冷却ファン10は、前記ラジエータカバー12の防塵網の中心に近い位置に軸架して、偏り吸引をなくして防塵網の全面から均等に外気の吸引ができる構成としている。
【0018】
なお、この明細書における左右の表現は、コンバインの前進方向に向かって見た状態を基準にして記載している。
そして、ハンドル3は、図1、及び図2に示すように、左端部を、前記メーターパネル2の奥側(左側)において、フロントフレーム4に固着し、そのメーターパネル2の上方を通して右の乗降口5側に達するように延長して右端を自由端部3aとした構成としている。そして、支持フレーム6は、図面に示すように、前記フロントフレーム4の外側(乗降口5側)に沿わせて固着し、上方の前記ハンドル3の自由端部3aに近い位置まで延長して設けている。
【0019】
そして、スイッチケース8は、図3、及び図4に示すように、アルミダイキャストによって製作するが、外観を頑丈な箱型に形成し、中心にエンジンスタータスイッチ7を配置し、その前側にクラクションスイッチ25、後ろ側には旋回切替えスイッチ26を配置して構成している。このように構成したスイッチケース8は、図面に示すように、前記乗降口5の前側で、メーターパネル2の右外側において、側面の取付け凹部27に、前記ハンドル3の自由端部3aを嵌合してねじで固着し、下側の取付け腕28を支持フレーム6の上端部6aに接合してねじで固着して一体に連結した構成としている。そして、スイッチケース8は、側部にハーネス取出孔29を設けて、各スイッチ7,25,26に接続したハーネスを通してそれぞれ該当する機器まで配線して接続する構成としている。30は点検用の窓を示す。
【0020】
以上述べたように、実施例は、前側のメーターパネル2の上方に横向きにしたハンドル3の自由端部3a側と、フロントフレーム4の外側に沿わせて固着している支持フレーム6の上端部6aとを、箱型に構成したスイッチケース8を連結部材として一体に連結したから、ハンドル3の強度が大幅に増強されて、運転中に、ハンドル3に上体を持たしかけた状態にまで乗り出して作業を続けても安心できる程度に、ハンドル強度を高め、剛性を増してオペレータの安全を確保できるものとなった。
【0021】
そして、実施例は、従来公知の技術(特許文献1)に対比すると、スイッチケース8に接続するハーネスを、ケース8の側面にハーネス取出用の孔29を設けて如何様にでも、配線が可能で、アームレストのパイプ内を通して配線する従来構成に比較してはるかに簡単で、低コストで製作できるものとなっている。
【0022】
そして、実施例は、スイッチケース8自体をアルミダイキャスト製にしたから、更に剛性が増し、ハンドル3の支持強度を高めたものとなった。そして、スイッチケース8は、乗降口5の前で、メーターパネル2の外側に位置し、エンジン9のスタータスイッチ7を設けたから、運転中のオペレータの右前に位置して操作の容易な場所に配置した点に利点がある。
【0023】
つぎに、運転部16を構成する他の実施例を説明する。
まず、運転部16は、既に説明しているように、前側にメーターパネル2を配置し、左側部には、主変速レバー18やスロットルレバー19を設けた前部サイド操作パネル20と、それに続いて後部に横側ハンドル21が外側にある後部サイド操作パネル23を配置し、これらに対向する右側は、外部に開放した乗降口5を設けて構成している。
【0024】
そして、メーターパネル2は、図8、乃至図10に示すように、特に、パネル面(画面)2aの前側を高くして、後側を低くした傾斜面とし、更に、画面を平面視で、図面の如く台形状に形成してオペレータが見易い構成にしている。そして、ハンドル3は、前記パネル面(画面)2aの上方を横切った状態に位置する部分3bを低くして、座席1の位置からパネル面2aを見るときに障害にならないように構成している。
【0025】
このように、運転部16は、パネル面(画面)2aの前側を高くして傾斜面とし、画面を台形状(図8参照)に形成し、しかも、上側のハンドル3の形状を、パネル面(画面)2aの上方に位置する部分3bを低くして視界の障害とならない位置に構成したから、オペレータは、メーター類の確認が容易となり、前方視界も広がって運転が楽にできるものとなった。
【0026】
そして、横側ハンドル21は、図8、乃至図13にそれぞれ示したように、前部サイド操作パネル20の後部外側に前端部を取付け、後端部を後部サイド操作パネル23の後部外側位置に固着した構成としている。そして、横側ハンドル21は、図面から解るように、サイド操作パネル21,23より外側にオフセットした状態(図9、及び図11参照)に設け、前記後部サイド操作パネル23の上面が有効に活用できるように配慮して構成している。そして、分草杆調節レバー22は、図2で説明したように、前記横側ハンドル21に接近する位置で、後部サイド操作パネル23に装備している。
【0027】
そして、横側ハンドル21は、図12、及び図13に示すように、下側の後部サイド操作パネル23との間に空間があり、アーチ形状に形成して後部サイド操作パネル23上に堆積しようとする藁屑等を外側(左側)に排出できる構成としている。
【0028】
つぎに、前部サイド操作パネル20は、図8、図10、及び図13に示すように、前記横側ハンドル21の基部ですぐ前側に、外縁を高くして内側に低く傾斜させたスイッチパネル32を形成し、制御関係のスイッチ33,34,35をそれぞれ配置した構成としている。実施例の場合、スイッチパネル32のすぐ向こう側には、穀稈の搬送通路があり、搬送穀稈の供給部が位置する関係になり、スイッチパネル32を低くしているから、穀稈の供給状態が座席1から目視で確認し易くなっている。
【0029】
そして、前部サイド操作パネル20は、既に説明したように、主変速レバー18の前進側操作溝36の横側の空きスペースにスロットルレバー19の操作溝37を並べて形成した構成としている。このように構成すると、実施例は、主変速レバー18を前進側に変速するとき、スロットルレバー19の位置が確認できる利点がある。
【0030】
つぎに、図14、及び図15に示した実施例は、運転部16の左側、すなわち前部サイド操作パネル20、及び後部サイド操作パネル23の右側と、下のフロア39との間に設けたカバー40であって、着脱自由の1枚プレートで構成している。実施例のカバー40は、オペレータの座席1の左側にあって、前記サイド操作パネル20,23の下側に配置されている操作ワイヤーや操作ロットをカバーする機能を有し、着脱が容易にできていて、操作機構のメンテナンスが容易である特徴がある。
【0031】
つぎに、図16、乃至図18に示した実施例について説明する。
実施例は、エンジン9の始動時における安全装置に関し、駐車ブレーキをかけた状態で働くロック装置を検出したときに、エンジン9の始動を可能にしている。
【0032】
まず、駐車ブレーキペダル43は、ブレーキアーム44を介して作動軸45に連結し、踏込み操作に関連して図外のブレーキ装置を働かせる構成としている。そして、作動板46は、前記作動軸45に基部を固着し、前記ブレーキアーム44と一体に作動し、上部に係合爪47が形成されている。そして、ロックプレート48は、図17に示すように、前記作動板46の前側にあって、前記駐車ブレーキペダル43が踏み込まれ、一体に下方に回動する係合爪47が、駐車ブレーキが制動位置に達すると、ロックする構成となっている。
【0033】
そして、ブレーキ検出スイッチ50は、図17に示す実線の状態(駐車ブレーキが制動状態)に達すると、ロックプレート48と一体の押圧板51に押されてONになり、エンジン9のスタータスイッチ7を操作可能な状態に切替える構成になっている。
【0034】
なお、操作レバー52は、ロックプレート48にワイヤー53を介して接続し、駐車ブレーキを解除するときにロックプレート48を作動板46の係合爪47から離脱操作ができる構成としている。
【0035】
以上述べたように、実施例は、駐車ブレーキを踏込み操作して、ブレーキが制動状態に達すると、作動板46の係合爪47にロックプレート48がロック状態となり、これを、ブレーキ検出スイッチ50が検出してエンジンの始動を可能にしたものであって、エンジンの始動を安全に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】スイッチケースの連結状態を示す斜面図
【図2】運転部の平面図
【図3】スイッチケースの平面図
【図4】スイッチケースの側面図
【図5】コンバインの側面図
【図6】エンジン搭載状態の側面図
【図7】エンジン搭載状態の正面図
【図8】運転部の平面図
【図9】運転部の背面図
【図10】運転部の斜面図
【図11】運転部の正面図
【図12】運転部の左側面図
【図13】運転部の右側面図
【図14】運転部の側面図
【図15】運転部の正面図
【図16】駐車ブレーキの操作機構の作用側面図
【図17】駐車ブレーキの操作機構の要部を拡大して示す作用側面図
【図18】駐車ブレーキの操作機構の平面図
【符号の説明】
【0037】
1 座席
2 メーターパネル
3 ハンドル
3a 自由端部
4 フロントフレーム
5 乗降口
6 支持フレーム
6a 上端部
7 スイッチ
8 スイッチケース
9 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席(1)の前方にメーターパネル(2)を配置し、該メーターパネル(2)の上側に沿う左右方向のハンドル(3)を設け、該ハンドル(3)の一端部を前記メーターパネル(2)を支持するフロントフレーム(4)の機体内側の部位に連結し、該操作ハンドル(3)の他端部を座席(1)への乗降口(5)側に達する位置まで延長した自由端部(3a)とし、前記フロントフレーム(4)の外側部に沿う上下方向の支持フレーム(6)を設け、前記操作ハンドル(3)の自由端部(3a)と支持フレーム(6)の上端部とをメーターパネル(2)の外側部において箱型のスイッチケース(8)で連結したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記スイッチケース(8)をアルミダイキャスト製とし、該スイッチケース(8)にエンジン(9)のスタータースイッチ(7)を装備したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−124752(P2010−124752A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302764(P2008−302764)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】