説明

コンバイン

【課題】揺動選別盤のうち扱胴の回転下流側の一側寄りに脱穀物及び二番物が集中して堆積し易い問題を解消したコンバインを提供する。
【解決手段】脱穀選別後の二番物を脱穀装置又は揺動選別盤27に戻す二番還元機構60の送り終端側に、二番物を処理するための枝梗処理機構61を備えているコンバインであって、枝梗処理機構61から脱穀装置内に臨む二番物放出部83を、側面視で脱穀装置内にある扱胴26の下面に対して上下に跨るように開口させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、刈り取られた穀稈を脱穀して、脱穀物から精粒を選別・収集するコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインは、エンジンが搭載された走行機体と、前記走行機体を支持する左右の走行部としての走行クローラ等と、操縦ハンドル及び運転座席を有する運転部と、圃場の未刈り穀稈を刈り取る刈取装置と、刈り取った穀稈を脱穀する脱穀装置とを備えており、圃場の未刈り穀稈を連続的に刈り取って脱穀し、穀粒を収集するように構成されている。
【0003】
従来のコンバインにおいては、揺動選別盤から二番コンベヤにて取り出された二番物(枝梗付き穀粒や穂切れ粒等)を、還元筒を経由して揺動選別盤に還元する(戻す)ように構成されている。また、還元筒の送り終端側に枝梗処理機構を配置し、枝梗処理機構にて二番物を処理してから、揺動選別盤に二番物を戻す構成もよく知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
前記特許文献1の構成では、脱穀装置の側方に、揺動選別盤下方の一番コンベヤから一番物(脱穀後の精粒)を取り出す揚穀筒が立設されている。また、揺動選別盤の後部下方側で一番コンベヤより後方に配置された二番コンベヤの送り終端側に、還元筒が接続されている。還元筒は、揚穀筒が配置される側の脱穀装置の側方で揚穀筒の後方から前方上向きに延びるように配置されている。従って、揚穀筒と還元筒とは側面視で互いに交差している。枝梗処理機構を構成する枝梗処理ケースは左右幅方向に延びている。処理ケース内には、二番物を処理する枝梗処理胴が左右長手の軸線回りに回動可能に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−111057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1の構成では、枝梗処理機構から戻される二番物の送り及び分散は、主に揺動選別盤の揺動運動にて行われる。枝梗処理機構の開口方向と枝梗処理胴の回転方向との関係上、枝梗処理胴の回転は二番物を揺動選別盤上に分散させるのに余り寄与していない。このため、枝梗処理機構からの二番物は、枝梗処理機構の放出口の直下に偏り易い。また、脱穀装置の扱胴にて脱穀された脱穀物は、揺動選別盤の左右中央部よりも扱胴の回転下流側の一側寄りに偏って落下し易い。従って、揺動選別盤のうち扱胴の回転下流側の一側寄り(放出口の直下付近)では脱穀物及び二番物が集中して堆積し易く、揺動選別盤における脱穀物及び二番物の選別処理能力が低下して、3番ロスや選別不良の原因となるおそれがあった。
【0007】
そこで、本願発明は、上記のような現状を改善したコンバインを提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、脱穀選別後の二番物を脱穀装置又は揺動選別盤に戻す二番還元機構の送り終端側に、前記二番物を処理するための枝梗処理機構を備えているコンバインであって、前記枝梗処理機構から前記脱穀装置内に臨む二番物放出部を、側面視で前記脱穀装置内にある扱胴の下面に対して上下に跨るように開口させているというものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載したコンバインにおいて、前記枝梗処理機構は、前高後低状に傾斜した姿勢で前記脱穀装置の一側壁に沿わせた枝梗処理ケースと、前記枝梗処理ケース内に前高後低状の軸線回りに回転可能に配置された枝梗処理胴とを備えており、前記枝梗処理ケースが前記二番物放出部を介して前記脱穀装置に連通しており、前記扱胴にて脱穀された脱穀物の移動方向と前記二番物放出部からの二番物の移動方向とが向い合うように、前記枝梗処理胴の回転方向が前記扱胴の回転方向と逆向きに設定されているというものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載したコンバインにおいて、前記二番還元機構は、前高後低状に傾斜した姿勢で前記脱穀装置の一側壁に沿って延びる還元筒と、前記還元筒内に前高後低状の軸線回りに回転可能に配置された還元コンベヤとを備えており、前記還元筒の前部下側に前記枝梗処理ケースが配置されており、前記還元コンベヤの回転軸と前記枝梗処理胴の回転軸とが平行状に延びているというものである。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によると、脱穀選別後の二番物を脱穀装置又は揺動選別盤に戻す二番還元機構の送り終端側に、前記二番物を処理するための枝梗処理機構を備えているコンバインであって、前記枝梗処理機構から前記脱穀装置内に臨む二番物放出部を、側面視で前記脱穀装置内にある扱胴の下面に対して上下に跨るように開口させているから、前記扱胴からの脱穀物の飛散方向と、前記二番物放出部からの二番物の飛散方向とが、前記揺動選別盤の左右中央部付近で交差することになる。
【0012】
従って、前記揺動選別盤の左右中央部付近で脱穀物と二番物とを衝突させて、これらを拡散(分散)させることが可能で、前記揺動選別盤における前記扱胴の回転下流側の一側寄り(前記二番物放出部の直下付近)に脱穀物及び二番物が集中して堆積するのを防止できる。そして、前記揺動選別盤上を揺動移動する脱穀物及び二番物を前記揺動選別盤の左右幅方向に拡散(分散)できるから、前記揺動選別盤での脱穀物及び二番物の選別処理能力を向上できる。
【0013】
請求項2の発明によると、前記枝梗処理機構は、前高後低状に傾斜した姿勢で前記脱穀装置の一側壁に沿わせた枝梗処理ケースと、前記枝梗処理ケース内に前高後低状の軸線回りに回転可能に配置された枝梗処理胴とを備えており、前記枝梗処理ケースが前記二番物放出部を介して前記脱穀装置に連通しており、前記扱胴にて脱穀された脱穀物の移動方向と前記二番物放出部からの二番物の移動方向とが向い合うように、前記枝梗処理胴の回転方向が前記扱胴の回転方向と逆向きに設定されているから、前記枝梗処理胴の回転による二番物の放出方向と前記二番物放出部の開口方向とが一致することになる。
【0014】
このため、前記枝梗処理胴の回転を利用して、前記揺動選別盤のうち前記二番物放出部から遠く離れた部位まで、前記二番物放出部からの二番物を分散させて放出でき、前記揺動選別盤での選別処理能力を格段に向上できる。また、前記揺動選別盤での選別処理能力を格段に向上できるから、選別処理能力を低下させることなく、前記揺動選別盤の前後長さの短縮化が可能になり、ひいては前記脱穀装置のコンパクト化を図れる。
【0015】
請求項3の発明によると、前記二番還元機構は、前高後低状に傾斜した姿勢で前記脱穀装置の一側壁に沿って延びる還元筒と、前記還元筒内に前高後低状の軸線回りに回転可能に配置された還元コンベヤとを備えており、前記還元筒の前部下側に前記枝梗処理ケースが配置されており、前記還元コンベヤの回転軸と前記枝梗処理胴の回転軸とが平行状に延びているから、前記枝梗処理胴の回転軸方向の長さを、前記脱穀装置の一側壁に沿わせて長くすることが可能になる。従って、再脱穀のために二番物が前記枝梗処理ケース内を移動する距離を十分に確保できることになり、前記枝梗処理胴による二番物の再脱穀機能の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態におけるコンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの右側面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】脱穀装置の左側面断面図である。
【図5】脱穀装置の正面図である。
【図6】脱穀装置における選別機構の左側断面図である。
【図7】扱胴と揺動選別盤と枝梗処理機構との関係を示す正面断面図である。
【図8】枝梗処理機構の閉止状態を示す拡大右側面図である。
【図9】枝梗処理機構の開放状態を示す拡大右側面図である。
【図10】枝梗処理胴に対する駆動系統の別例を示す脱穀装置の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0018】
(1).コンバインの全体構造
まず、主に図1〜図3を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。図1乃至図3に示されるように、実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2(走行部)にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈取りながら取込む4条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。脱穀装置5が走行機体1の前進方向に向かって左側に配置されている(図3参照)。また、穀粒タンク7が走行機体1の前進方向に向かって右側に配置されている。穀粒タンク7の下方(走行機体1の上面側)に籾受け台8が設けられている。穀粒タンク7内の穀粒は、穀粒タンク7下面側の籾排出口9から籾受け台8上の籾袋(図示省略)に排出される。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転部10が設けられている。
【0019】
運転部10には、オペレータが搭乗するステップ11と運転座席12とが配置されている。運転座席12前方のハンドルコラム13に、操縦用の左右サイドクラッチレバー14,15が配置されている。運転座席12左側方のレバーコラム16に、走行変速レバー17と、脱穀クラッチ及び刈取クラッチ操作用の作業クラッチレバー18とが配置されている。運転座席12の下方には、動力源としてのエンジン20が配置されている。
【0020】
図1及び図2に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持することになる。
【0021】
図1乃至図3に示されるように、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場の未刈り穀稈を引起す4条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前部(送り始端側)との間には、刈刃装置222にて刈り取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置されている。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する4条分の分草体225が突設されている。エンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈り取ることになる。
【0022】
図1、図2及び図4〜図6に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴26と、扱胴26の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別機構としての揺動選別盤27と、揺動選別盤27に選別風を供給する唐箕ファン28と、揺動選別盤27の後部の排塵を機外に排出する排塵ファン30とを備えている。なお、扱胴26を回転させる扱胴軸26aは、フィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。
【0023】
実施形態の扱胴26は下扱ぎ式のものである。脱穀装置5の外形を構成する脱穀機筐55の前面側に、扱胴軸26aの前端側を延長させ、扱胴軸26aの前端側にべベルギヤ機構46、扱胴駆動軸47及びプーリ48・ベルト49等の伝動系を介してエンジン20の動力を伝達することにより、扱胴26は図5及び図7において時計方向に回転するように構成されている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室26b内に搬入され、図5及び図7において時計方向に回転する扱胴26にて脱穀されることになる。
【0024】
図1〜図4に示されるように、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン34が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン34に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ35にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下側に排出されることになる。
【0025】
図4に示されるように、揺動選別盤27の下方側には、揺動選別盤27にて選別された穀粒(一番物)を取り出す一番コンベヤ31及び一番樋31aと、枝梗付き穀粒等の二番物を取り出す二番コンベヤ32及び二番樋32aとが設けられている。実施形態の両コンベヤ31,32は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ31、二番コンベヤ32の順で、側面視において走行機体1の上面側のうち走行クローラ2の後部上方に横設されている。
【0026】
図4〜図7に示されるように、揺動選別盤27は、扱胴26の下方に張設された受網26cから漏下した脱穀物が、揺動選別盤27のフィードパン271及びチャフシーブ272によって搖動選別(比重選別)されるように構成している。実施形態のフィードパン271は、前部右側(送り始端側のうち穀粒タンク7寄りの部位)から後部左側(送り終端側のうちフィードチェン6寄りの部位)に向けて後方斜め下向きに傾斜した板状のものである。当該傾斜面によって、扱胴26にて脱穀された脱穀物がフィードパン271上をフィードチェン6側に転がる(拡散する)ことになる。
【0027】
揺動選別盤27のグレンシーブ273から落下した穀粒(一番物)は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン28からの選別風によって除去され、一番コンベヤ31に落下することになる。一番コンベヤ31のうち脱穀装置5(脱穀機筺55)の穀粒タンク7寄りの下部側壁55a(右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀筒33が連通接続されている。一番コンベヤ31から取り出された穀粒は、揚穀筒33内に設けられた揚穀コンベヤ33aによって穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集されることになる。
【0028】
図4及び図6に示されるように、チャフシーブ272の送り下流側(後方側)にストローラック274が配置されている。揺動選別盤27は、搖動選別(比重選別)によって、チャフシーブ272又はストローラック274から枝梗付き穀粒等の二番物(穀粒と藁屑等が混在した再選別用の還元再処理物)を二番コンベヤ32及び二番樋32aに落下させるように構成されている。二番コンベヤ32にて取り出された二番物は、後述する二番還元機構60及び枝梗処理機構61を介してフィードパン271の上面側に戻されて再選別されることになる。
【0029】
なお、チャフシーブ272及びストローラック274の上面側の比較的軽い藁屑は、排塵ファン30における前側の吸引口30aに吸い込まれて、後側の排出口30bから機外に排出されることになる。また、チャフシーブ272の送り下流側(後方側)からストローラック274の上面側に移動した比較的重い藁屑は、揺動選別盤27における後端側の三番口36から機外に排出されることになる。
【0030】
図4及び図6に示されるように、揺動選別盤27は、脱穀装置5の外形を構成する脱穀機筐55に、揺動駆動軸56と、前側ガイドレール57及び後側ガイドレール58とを介して、前方斜め下方乃至後方斜め上方に往復移動可能に配置されている。エンジン20からの動力にて揺動駆動軸56を介して揺動選別盤27が作動し、揺動選別盤27が前方斜め下方乃至後方斜め上方に往復移動することになる。その結果、扱胴26の下方に張設された受網26cから漏下した脱粒物が、フィードパン271及びチャフシーブ272にて揺動選別(比重選別)されることになる。
【0031】
なお、図5及び図7に示すように、脱穀機筺55における穀粒タンク7寄りの下部側壁55a(右下部側壁)の内側面に近接させて、揺動選別盤27の右側枠板27aを対峙させている。右側枠板27aの上端側に合成樹脂性の弾性シール材50の一端側を固着し、下部側壁55aの内側面に弾性シール材50の他端側を弾圧させている。下部側壁55aと右側枠板27aとの隙間を弾性シール材50にて閉塞することにより、揺動選別盤27の上面側の未選別物(脱粒物)が下部側壁55aと右側枠板27aとの隙間に入り込むのを防止している。
【0032】
図4及び図6に示されるように、唐箕ファン28の唐箕ファンケース28aには、グレンシーブ273の下面側と一番コンベヤ31及び一番樋31aの上方とに向けて唐箕ファン28の選別風を供給する主選別風路41と、フィードパン271の下面側からチャフシーブ272の下面側に向けて唐箕ファン28の選別風を供給するプレ風路42とが形成されている。上述の主選別風路41は、唐箕ファン28からの選別風が、グレンシーブ273の前方下側から、グレンシーブ273の後方上側に向けて移動するように形成されている。
【0033】
また、上述の主選別風路41は、唐箕ファン28からの選別風が、一番コンベヤ31及び一番樋31aの上方で前方から後方に向けて移動するように形成されている。すなわち、グレンシーブ273から一番コンベヤ31及び一番樋31aに落下する穀粒及び塵は、唐箕ファン28からの選別風にて風選される。その結果、塵が除去された後の穀粒だけが、一番コンベヤ31及び一番樋31aに落下して、一番コンベヤ31にて穀粒タンク7に取り出されることになる。
【0034】
上述したプレ風路42は、唐箕ファン28からの選別風が、チャフシーブ272の前方下方から後方上方に向けて移動するように形成されている。即ち、扱胴26から受網26cを介してフィードパン271の上面に落下した脱粒物が、フィードパン271の後端側からチャフシーブ272の前端側に落下するときに、唐箕ファン28からの選別風によって風選される。その結果、フィードパン271からチャフシーブ272の上面に移動した脱粒物のうち、チャフシーブ272の上面に近い脱粒物の下層側の藁屑(軽量物)が、選別風によって上層側に移動されて、チャフシーブ272から落下する藁屑量が低減することになる。
【0035】
また、チャフシーブ272の比重選別作用と、唐箕ファン28からの選別風の風選とによって、脱粒物の上層側の穀粒(重量物)が下層側に移動して、チャフシーブ272から早期に漏下することになる。チャフシーブ272の比重選別作用は、唐箕ファン28からの選別風にて助長され、その選別処理能力(選別精度)を向上させている。
【0036】
なお、主選別風路41とプレ風路42とから供給された唐箕ファン28の選別風は、上述した排塵ファン30の排塵吸引口30aに吸い込まれて排出口30bから排出されたり、三番口36から脱穀機筐55の後方に移動したりするから、扱胴26からの脱粒物中の藁屑及び粉塵等は、脱穀機筐55の後部から圃場に向けて排出されることになる。
【0037】
(2).二番還元機構及び枝梗処理機構の構造
次に、図4乃至図9を参照しながら、二番還元機構60及び枝梗処理機構61の構造について説明する。
【0038】
二番還元機構60は脱穀選別後の二番物を脱穀装置5又は揺動選別盤27に戻すためのものである。二番還元機構60の送り終端側に、二番物を処理するための枝梗処理機構61が設けられている。実施形態の二番還元機構60は、前高後低状に傾斜した姿勢で脱穀装置5の下部側壁55aに沿って延びる還元筒62と、還元筒62内に前高後低状の軸線回りに回転可能に配置された還元コンベヤ63とを備えている。二番コンベヤ32のうち脱穀機筺55の穀粒タンク7寄りの下部側壁55a(右下部側壁)から外向きに突出した送り終端部に、前方斜め上向きに延びる還元コンベヤ63の送り始端側(下端側)が動力伝達可能に接続されている。
【0039】
図4及び図6に示されるように、脱穀機筐55における下部側壁55aの外面には、受継ケース65が配置されている。受継ケース65の上向き開口側に、還元筒62の下端側が連結されている。脱穀機筐55の下部側壁55aの外面に沿わせて還元筒62が前高後低状の傾斜姿勢で支持されている。還元筒62と揚穀筒33とは、脱穀装置5と穀粒タンク7との間において、側面視で互いに交差するように配置されている。この場合、還元筒62は、揚穀筒33に対して脱穀機筺55の下部側壁55aに近い側にオフセットさせて配置されている。換言すると、還元筒62が正面視で脱穀機筺55の下部側壁55aに近い側に位置し、揚穀筒33が穀粒タンク7に近い側(下部側壁55aから遠い側)に位置している。
【0040】
二番コンベヤ32における二番コンベヤ軸32bの右側端側と、還元コンベヤ63における還元コンベヤ軸63aの下端側とが、軸受ベアリング(図示省略)を介して受継ケース65にそれぞれ回転可能に軸支されている。二番コンベヤ軸32bの右側端側に、還元コンベヤ軸63aの下端側が傘歯車機構(図示省略)を介して連結されている。詳細は後述するが、還元コンベヤ軸63aの送り終端側(上端側)は、還元筒62の送り終端面(上端面)を覆う駆動ケース87のケース本体91に回転可能に軸支されている。従って、チャフシーブ272やストローラック274から二番コンベヤ32及び二番樋32aに漏下した二番物は、二番コンベヤ32から還元コンベヤ63に受け継がれる。還元コンベヤ63に受け継がれた二番物は、還元コンベヤ軸63aの送り終端側に設けられた掻き出し羽根63bにて、還元コンベヤ63から後述する枝梗処理胴82に受け継がれることになる。
【0041】
還元筒62の送り終端側と脱穀機筺55の上部側壁55bとは、枝梗処理機構61を介して連通している。枝梗処理機構61は、前高後低状に傾斜した姿勢で脱穀機筺55の上部側壁55bに沿わせた枝梗処理ケース81と、枝梗処理ケース81内に前高後低状の軸線回りに回転可能に配置された枝梗処理胴82とを備えている。実施形態の枝梗処理ケース82は還元筒62の送り終端側の下部(前部下側)に配置されている。図6、図8及び図9に示すように、枝梗処理胴82における前高後低状の処理胴回転軸82aと、還元コンベヤ63の回転軸である還元コンベヤ軸63aとは平行状に延びている。
【0042】
枝梗処理ケース81のうち脱穀機筺55寄りの左側面の下部(後述する固定ケース85の下部)には、枝梗処理ケース81から脱穀装置5内に臨む二番物放出部83が突出形成されている。図7に詳細に示すように、脱穀機筺55の上部側壁55bには、側面視で扱胴26の下面前部に対して上下に跨って開口した嵌合穴84が形成されている。枝梗処理ケース81の二番物放出部83は、上部側壁55bの嵌合穴84に外側から嵌め込まれている。二番物放出部83は、側面視で扱胴26の下面前部に対して上下に跨るように、受網26cの裏面側に向けて開口している(図4及び図6参照)。すなわち、枝梗処理ケース81は二番物放出部83を介して脱穀装置5に連通しており、二番物放出部83からフィードパン271の上面前部側に向けて、枝梗処理ケース81内の二番物が放出されることになる。
【0043】
その結果、図5及び図7において時計方向に回転する扱胴26の下側で脱穀された脱穀物がフィードパン271上面の左側から右側に向けて飛散するのに対して、二番物放出部83から放出された二番物は、フィードパン271の上面の右側から左側に向けて飛散する。つまり、扱胴26からの脱穀物の飛散方向(フィードチェン6側から穀粒タンク7側に向かう方向)と、二番物放出部83からの二番物の飛散方向(穀粒タンク7側からフィードチェン6側に向かう方向)とは、フィードパン271の左右中央部付近で交差することになる。
【0044】
従って、フィードパン271の左右中央部付近で脱穀物と二番物とを衝突させて、これらを分散させることが可能であり、フィードパン271の右側(扱胴26の回転下流側の一側寄り、二番物放出部83の直下付近)に脱穀物及び二番物が集中して堆積するのを防止できる。そして、フィードパン271からチャフシーブ272に揺動移動する脱穀物及び二番物をチャフシーブ272の左右幅方向に拡散(分散)でき、チャフシーブ272での選別作業性を向上できる。
【0045】
図8及び図9に示すように、枝梗処理ケース81は、脱穀機筺55の上部側壁55bに取り付けられた固定ケース85と、二番還元機構60回りに開閉回動可能な可動ケース86とにより、枝梗処理胴82を囲い得るように分割して構成されている。固定ケース85と可動ケース86とを嵌め合わせた閉止状態(図8参照)では、これらケース85,86の対(枝梗処理ケース81)は上向きに開口した筒状(箱状)になっている。両ケース85,86の上向き開口側は駆動ケース87にて覆われている。
【0046】
枝梗処理ケース81の左側を構成する固定ケース85は脱穀機筺55の上部側壁55bにボルト等にて締結されている。固定ケース85の下部に、上部側壁55bの嵌合穴84に外側から嵌る二番物放出部83が設けられている。可動ケース86のうち二番還元機構60寄りの端部は、還元コンベヤ軸63aの送り終端側に設けられた掻き出し羽根63bの外周側を囲うU字カバー88の一端側に溶接等にて固定されている。U字カバー88の下端側には、還元コンベヤ軸63aを貫通させた筒フランジ89が溶接等にて固着されている。筒フランジ89のうち下向きに突出するリング部90は還元筒62の送り終端部(上端部)に回転可能に嵌め込まれている。
【0047】
U字カバー87の上端側と可動ケース86の上端側とに、駆動ケース87を構成するケース本体91がボルト締結されている。ケース本体91のうちU字カバー88側の部位には、還元コンベヤ軸63aの送り終端側(上端側)が回転可能に軸支されている。筒フランジ89のリング部90を還元筒62の送り終端部(上端部)に回転可能に嵌め込むことと、還元コンベヤ軸63aの送り終端側(上端側)をケース本体91に回転可能に軸支することとによって、可動ケース86が駆動ケース87と共に二番還元機構60回り(還元コンベヤ軸63a回り)に開閉回動し得るように構成されている。
【0048】
図7に詳細に示すように、固定ケース85と可動ケース86とを嵌め合わせた閉止状態では、還元筒62の送り終端側のU字カバー88と枝梗処理ケース81(両ケース84,85)の上部側とが連通している。換言すると、U字カバー88と枝梗処理ケース81の上部側とは前方斜め下向きの連通路を介してつながっている。従って、還元コンベヤ63に受け継がれた二番物は、側面視でUターン状に枝梗処理ケース81内に移送されることになる。
【0049】
図8及び図9に示すように、二番物を再脱穀するための枝梗処理胴82は還元コンベヤ軸63aと平行状に延びる前高後低状の処理胴回転軸82aを備えている。処理胴回転軸82aの下端側は、可動ケース86の底板に回転可能に軸支されている。処理胴回転軸82aの上端側は、ケース本体91のうち可動ケース86側の部位に回転可能に軸支されている。つまり、枝梗処理胴82は可動ケース86側に配置されていて、可動ケース86と共に二番還元機構60回り(還元コンベヤ軸63a回り)に回動し得るように構成されている。従って、可動ケース86を固定ケース85から離すように二番還元機構60回りに回動させた開放状態(図9参照)では、枝梗処理胴82が可動ケース86側において露出することになる。
【0050】
実施形態では、扱胴26にて脱穀された脱穀物の飛散方向(フィードチェン6側から穀粒タンク7側に向かう方向)と二番物放出部83からの二番物の飛散方向(穀粒タンク7側からフィードチェン6側に向かう方向)とが向い合うように、枝梗処理胴82の回転方向が扱胴26の回転方向と逆向きに設定されている。この場合、枝梗処理胴82は、図5及び図7で反時計方向に回転し、枝梗処理胴82の回転による二番物の放出方向と、二番物放出部83の開口方向とを一致させている(共に穀粒タンク7側からフィードチェン6側に向かう方向になっている)。
【0051】
処理胴回転軸82a上には、還元筒62の送り終端側から送り込まれた二番物を撹拌する複数本の二番処理歯97と、二番物放出部83からフィードパン271の上面に向けて枝梗処理ケース81内の二番物を飛散させる複数枚(2枚)の放出羽根98とを備えている。図8及び図9に詳細に示すように、処理胴回転軸82aに2条の放出オーガ体99が被嵌されている。処理胴回転軸82aの中途部に複数本の二番処理歯97が放射状に配置されている。枝梗処理ケース81の内部(可動ケース86の内部)に位置する受歯100は、2本1組の二番処理歯97の間を通過するように設けられている。
【0052】
すなわち、枝梗処理ケース81内には、複数本の二番処理歯87と、枝梗処理ケース81の外側から簡単に脱着できない複数本の受歯100と、2枚の放出羽根98と、2条の放出オーガ体99とが配置されている。還元コンベヤ軸63aの掻き出し羽根63bにて枝梗処理ケース81内に移送された二番物は、放出オーガ体99にて枝梗処理ケース81の上端側から下端側に送られながら、二番処理歯97と受歯100とによって処理(刺さり粒の脱粒又は藁屑の揉み解し等)されることになる。放出オーガ体99の下端側に2枚の放出羽根98が放射状に一体的に設けられている。放出オーガ体99にて枝梗処理ケース81の下端側に送られた処理済みの二番物は、放出羽根98にて二番物放出部83から揺動選別盤27の上面に向けて排出されることになる(図7参照)。
【0053】
図5〜図9に示すように、還元筒62の上端側と枝梗処理ケース81の上端側とには駆動ケース87が連結されている。駆動ケース87は、板状のケース本体91と、これを着脱可能に覆うケース蓋92とにより構成されている。実施形態のケース本体91は、還元筒62の送り終端側に位置するU字カバー88の上端側と可動ケース86の上端側とにボルト締結されている。従って、固定ケース85と可動ケース86とを嵌め合わせた閉止状態では、還元筒62の送り終端側の上向き開口と枝梗処理ケース81(両ケース85,86)の上向き開口とがケース本体91にて塞がれることになる。
【0054】
ケース本体91に軸支された還元コンベヤ軸63aの送り終端側(上端側)の突端部には、伝動車の一例としての駆動スプロケット101が固着されている。同様に、ケース本体91に軸支された処理胴回転軸82aの送り始端側(上端側)の突端部には、伝動車の一例としての従動スプロケット102が固着されている。これら両スプロケット101,102には無端帯としてのチェン103が巻き掛けられている。ケース蓋92は、両スプロケット101,102及びチェン103を上方から覆った状態でケース本体91にボルト締結されている。ボルトを緩めてケース蓋92を取り外せば、ケース本体91上には両スプロケット101,102及びチェン103が露出する。
【0055】
すなわち、ケース本体91とケース蓋92とからなる駆動ケース87には、還元コンベヤ63から枝梗処理胴82に動力を伝達する伝動部材(伝動車と無端帯)が内蔵されている(組み込まれている)。還元コンベヤ軸63aの送り終端側(上端側)には、駆動ケース87内の伝動部材を介して、枝梗処理胴82の処理胴回転軸82aが動力伝達可能に連結される。従って、二番コンベヤ軸32bから還元コンベヤ軸63aを介して処理胴回転軸82aに動力を伝達することによって、二番コンベヤ32と連動して、還元コンベヤ63及び枝梗処理胴82とが回転駆動することになる。
【0056】
図8及び図9に詳細に示すように、固定ケース85と可動ケース86とには、可動ケース86を開閉回動させ得るロック解除状態と開閉回動不能に保持するロック状態とに切り換えるためのロック手段105が設けられている。実施形態のロック手段105は、固定ケース85側に設けられた係止バー106と、可動ケース86側に設けられ且つ係止バー106に係脱し得る複数のロック爪107とを備えている。固定ケース85のうち二番還元機構60と反対側の端面から外向きに突出する上下のブラケット部108に、係止バー106の両端が固定されている。可動ケース86の自由端側には縦長の回動軸109が回動可能に軸支されている。当該回動軸109に複数のロック爪107が固定されている。回動軸109には、可動ケース86をロック解除状態とロック状態とに切換操作する操作手段としての操作レバー110が固定されている。操作レバー110は、回動軸109に被嵌されたねじりばね111にて、ロック爪107が係止バー106に係合する方向に常時付勢されている。
【0057】
従って、操作レバー110を回動操作してロック爪107を係止バー106から離脱させると、ロックが解除されて、可動ケース86を駆動ケース87及び枝梗処理胴82と共に二番還元機構60回り(還元コンベヤ軸63a回り)に開閉回動させることが可能になる。逆に、固定ケース85と可動ケース86とを嵌め合わせた閉止状態において、ロック爪107を係止バー106に係合させてロックすることにより、可動ケース86が開閉回動不能に保持されることになる。
【0058】
上記の構成により、刈取装置3にて圃場の未刈り穀稈が刈り取られ、刈取装置3から供給された刈取り穀稈が脱穀装置5にて脱穀された場合、脱穀装置5から落下した脱穀物が、揺動選別盤27にて選別される。揺動選別盤27にて選別された一番物としての精粒は一番コンベヤ31にて穀粒タンク7に収集される。また、揺動選別盤27にて選別された二番物としての穀粒及び藁屑の混合物が二番樋32aに落下した場合、当該二番物は、二番コンベヤ32から還元コンベヤ63に受け継がれ、還元コンベヤ63から枝梗処理ケース81内に搬送される。
【0059】
掻き出し羽根63bにて還元筒62の送り終端側(上端側)から枝梗処理ケース81の内部に取り込まれた二番物は、二番処理歯97及び受歯100にて処理(刺さり粒の脱粒及び藁屑の分離等の処理)された後、放出羽根98にて二番物放出部83からフィードパン271の上面に排出され、揺動選別盤27にて再び選別される。従って、二番物中の穀粒は、一番コンベヤ31から穀粒タンク7に搬入される。また、二番物中の藁屑は、チャフシーブ272の上面を経て、排塵ファン30又は三番口36から機外に排出される。
【0060】
また、二番コンベヤ32と還元コンベヤ63と枝梗処理胴82とは常に連動して回動するが、それぞれの回転数は異なっている。実施形態では、二番コンベヤ32より還元コンベヤ63が高速で回転し、還元コンベヤ63より枝梗処理胴82が高速で回転するように設定されている。すなわち、二番コンベヤ32の単位時間当たりの搬送量より還元コンベヤ63の単位時間当たりの搬送量を多くし、還元コンベヤ63の単位時間当たりの搬送量よりも枝梗処理胴82の単位時間当たりの搬送量を多くすることによって、還元コンベヤ63や枝梗処理胴82での搬送途中で二番物が詰るのを防止している。
【0061】
(3).まとめ
上記の記載並びに図4、図6及び図7から明らかなように、脱穀選別後の二番物を脱穀装置5又は揺動選別盤27に戻す二番還元機構60の送り終端側に、二番物を処理するための枝梗処理機構61を備えているコンバインであって、枝梗処理機構61から脱穀装置5内に臨む二番物放出部83を、側面視で脱穀装置5内にある扱胴26の下面に対して上下に跨るように開口させているから、扱胴26からの脱穀物の飛散方向(フィードチェン6側から穀粒タンク7側に向かう方向)と、二番物放出部83からの二番物の飛散方向(穀粒タンク7側からフィードチェン6側に向かう方向)とが、揺動選別盤27の左右中央部付近で交差することになる。
【0062】
従って、揺動選別盤27の左右中央部付近で脱穀物と二番物とを衝突させて、これらを拡散(分散)させることが可能で、揺動選別盤27における扱胴26の回転下流側の一側寄り(二番物放出部83の直下付近)に脱穀物及び二番物が集中して堆積するのを防止できる。そして、揺動選別盤27上を揺動移動する脱穀物及び二番物を揺動選別盤27の左右幅方向に拡散(分散)できるから、揺動選別盤27での脱穀物及び二番物の選別処理能力を向上できる。
【0063】
上記の記載並びに図7〜図9から明らかなように、枝梗処理機構61は、前高後低状に傾斜した姿勢で脱穀装置5の上部側壁55bに沿わせた枝梗処理ケース81と、枝梗処理ケース81内に前高後低状の軸線回りに回転可能に配置された枝梗処理胴82とを備えており、枝梗処理ケース81が二番物放出部83を介して脱穀装置5に連通しており、扱胴26にて脱穀された脱穀物の移動方向と二番物放出部83からの二番物の移動方向とが向い合うように、枝梗処理胴82の回転方向が扱胴26の回転方向と逆向きに設定されているから、枝梗処理胴82の回転による二番物の放出方向と二番物放出部83の開口方向とが一致することになる(共に穀粒タンク7側からフィードチェン6側に向かう方向になっている)。
【0064】
このため、枝梗処理胴82の回転を利用して揺動選別盤27のうち二番物放出部83から遠く離れたフィードチェン6側の辺りまで、二番物放出部83からの二番物を分散させて放出でき、揺動選別盤27での選別処理能力を格段に向上できる。また、揺動選別盤27での選別処理能力を格段に向上できるから、選別処理能力を低下させることなく、揺動選別盤27の前後長さの短縮化が可能になり、ひいては脱穀装置5のコンパクト化を図れる。
【0065】
上記の記載並びに図8及び図9から明らかなように、二番還元機構60は、前高後低状に傾斜した姿勢で脱穀装置5の下部側壁55aに沿って延びる還元筒62と、還元筒62内に前高後低状の軸線回りに回転可能に配置された還元コンベヤ63とを備えており、還元筒62の前部下側に枝梗処理ケース81が配置されており、還元コンベヤ63の回転軸である還元コンベヤ軸63aと枝梗処理胴82の処理胴回転軸82aとが平行状に延びているから、枝梗処理胴82の処理胴回転軸82a方向の長さを、上部側壁55bに沿わせて長くすることが可能になる。従って、再脱穀のために二番物が枝梗処理ケース81内を移動する距離を十分に確保できることになり、枝梗処理胴82による二番物の再脱穀機能の向上を図れる。
【0066】
上記の記載並びに図8及び図9から明らかなように、脱穀選別後の二番物を脱穀装置5又は揺動選別盤27に戻す二番還元機構60の送り終端側に、二番物を処理するための枝梗処理機構61を備えているコンバインであって、枝梗処理機構61は、前高後低状に傾斜した姿勢で脱穀装置5の上部側壁55bに沿わせた枝梗処理ケース81と、枝梗処理ケース81内に配置された枝梗処理胴82とを備えており、枝梗処理ケース81は、脱穀装置5の上部側壁55aに取り付けられた固定ケース85と、二番還元機構60回りに開閉回動可能な可動ケース86とにより、枝梗処理胴82を囲い得るように分割して構成されているから、二番還元機構60回りに可動ケース86を開き回動させるだけで、枝梗処理ケース81の内部を開放できる。従って、例えば枝梗処理ケース81内の藁詰りの除去といったメンテナンス作業に際して、枝梗処理ケース81を分解したりする必要がなく、メンテナンス作業性を向上できる。
【0067】
上記の記載並びに図8及び図9から明らかなように、枝梗処理胴82は、可動ケース86側に配置されていて、可動ケース86と共に二番還元機構60回りに回動可能に構成されているから、例えば枝梗処理ケース81内で藁詰りが生じた場合に、駆動部材である枝梗処理胴82を可動ケース86の開閉にて動かせることになり、藁詰りを簡単に除去できる。また、枝梗処理胴82が可動ケース86側にあるため、枝梗処理胴82の交換作業の簡素化も可能になる。
【0068】
上記の記載並びに図8及び図9から明らかなように、可動ケース86を開閉回動させ得るロック解除状態と開閉回動不能に保持するロック状態とに切換操作するための操作手段としての操作レバー110を備えているから、操作レバー110による工具不要の切換操作にて、可動ケース86をロック解除状態とロック状態とにワンタッチ的に切り換えできる。従って、圃場での収穫作業中に枝梗処理ケース81内の藁詰り等が生じた場合であっても、その場で簡単にメンテナンス作業を行える。
【0069】
上記の記載並びに図7〜図9から明らかなように、脱穀選別後の二番物を脱穀装置5又は揺動選別盤27に戻す二番還元機構60の送り終端側に、二番物を処理するための枝梗処理機構61を備えているコンバインであって、二番還元機構60は、脱穀装置5の下部側壁55aに沿って延びる還元筒62と、還元筒62内に回転可能に配置された還元コンベヤ63とを有しており、枝梗処理機構61は、脱穀装置5の上部側壁55bに沿わせた枝梗処理ケース81と、枝梗処理ケース81内に回転可能に配置された枝梗処理胴82とを有しており、還元コンベヤ63の回転軸である還元コンベヤ軸63aと枝梗処理胴82の処理胴回転軸82aとが平行状に延びており、還元コンベヤ軸63aの一端と処理胴回転軸82aの一端とに設けられたスプロケット101,102と、これらスプロケット101,102に巻き掛けられたチェン103とを組み込んだ駆動ケース87が、還元筒62と枝梗処理ケース81とに連結されているから、還元コンベヤ63の回転動力を、駆動ケース87内の伝動部材(両スプロケット101,102及びチェン103)を介して枝梗処理胴82に伝達することが可能になる。
【0070】
このため、還元コンベヤ63の回転動力を利用して、還元コンベヤ63に連動して枝梗処理胴82を駆動できる。また、両スプロケット101,102及びチェン103からなる伝動部材だけで還元コンベヤ63から枝梗処理胴82に動力伝達するから、枝梗処理胴82に対する駆動系統を簡素化でき、部品点数の削減に寄与できる。更に、枝梗処理ケース81の支持部材として駆動ケース87を利用できるから、枝梗処理ケース81の支持構造を簡単に構成できると共に、枝梗処理ケース81の支持強度を容易に確保できる。
【0071】
上記の記載並びに図8及び図9に示すように、枝梗処理ケース81は、脱穀装置5の上部側壁55bに取り付けられた固定ケース85と、二番還元機構60回りに開閉回動可能な可動ケース86とにより、枝梗処理胴82を囲い得るように分割して構成されており、駆動ケース87は、可動ケース86と共に二番還元機構60回りに回動可能に構成されているから、駆動ケース87は、還元コンベヤ63から枝梗処理胴82に動力伝達する部材でありながら、可動ケース86の開閉の邪魔にならない。また、駆動ケース87が可動ケース86側にあるため、枝梗処理胴82だけでなく、駆動ケース87内にある伝動部材の交換作業の簡素化も可能になる。
【0072】
上記の記載並びに図8及び図9に示すように、駆動ケース87は、ケース本体91と、ケース本体91、両スプロケット101,102及びチェン103を覆うケース蓋92とからなり、還元筒62の送り終端側と可動ケース86とにケース本体91が連結されており、ケース本体91にケース蓋92が着脱可能に取り付けられているから、両スプロケット101,102とチェン103とを組み付けた状態の駆動ケース87を、枝梗処理機構61の駆動ユニットとして取り扱えることになる。また、駆動ケース87内の伝動部材(両スプロケット101,102及びチェン103)の組立て・分解作業性も向上できる。
【0073】
(4).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、本願発明は、前述のような自脱型コンバインに限らず、普通型コンバインにも適用できる。また、枝梗処理胴82に対する駆動系統は、前述のような両スプロケット101,102及びチェン103からなる伝動部材に限らず、ギヤ機構であっても構わない。すなわち、図10に示すように、還元コンベヤ軸63aの送り終端側の突端部に駆動平ギヤ201を固着し、処理胴回転軸82aの送り始端側の突端部に従動平ギヤ202を固着し、これら両平ギヤ201,202を、ケース本体91上に回転可能に軸支された中継平ギヤ203を介して噛み合わせるようにしてもよい。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
5 脱穀装置
26 扱胴
27 揺動選別盤
55 脱穀機筐
60 二番還元機構
61 枝梗処理機構
62 還元筒
63 還元コンベヤ
81 枝梗処理ケース
82 枝梗処理胴
82a 処理胴回転軸
83 二番物放出部
85 固定ケース
86 可動ケース
87 駆動ケース
91 ケース本体
92 ケース蓋
101 伝動車としての駆動スプロケット
102 伝動車としての従動スプロケット
103 無端帯としてのチェン
110 操作手段としての操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀選別後の二番物を脱穀装置又は揺動選別盤に戻す二番還元機構の送り終端側に、前記二番物を処理するための枝梗処理機構を備えているコンバインであって、
前記枝梗処理機構から前記脱穀装置内に臨む二番物放出部を、側面視で前記脱穀装置内にある扱胴の下面に対して上下に跨るように開口させている、
コンバイン。
【請求項2】
前記枝梗処理機構は、前高後低状に傾斜した姿勢で前記脱穀装置の一側壁に沿わせた枝梗処理ケースと、前記枝梗処理ケース内に前高後低状の軸線回りに回転可能に配置された枝梗処理胴とを備えており、前記枝梗処理ケースが前記二番物放出部を介して前記脱穀装置に連通しており、
前記扱胴にて脱穀された脱穀物の移動方向と前記二番物放出部からの二番物の移動方向とが向い合うように、前記枝梗処理胴の回転方向が前記扱胴の回転方向と逆向きに設定されている、
請求項1に記載したコンバイン。
【請求項3】
前記二番還元機構は、前高後低状に傾斜した姿勢で前記脱穀装置の一側壁に沿って延びる還元筒と、前記還元筒内に前高後低状の軸線回りに回転可能に配置された還元コンベヤとを備えており、
前記還元筒の前部下側に前記枝梗処理ケースが配置されており、前記還元コンベヤの回転軸と前記枝梗処理胴の回転軸とは平行状に延びている、
請求項2に記載したコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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