説明

コンバイン

【課題】刈取部において、切断装置での穀稈の切断タイミングを調節して、穀稈の切断時に、搬送装置による穀稈の搬送を円滑に行うことができるコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインにおいて、刈取部に備える切断装置23に、穀稈を株元側で切断する円盤形状の切断刃231Dと、切断刃231Dを回転駆動させる駆動アクチュエータ233と、切断刃231Dと駆動アクチュエータ233とを支持して、これらを内部に有する伝動機構を介して連動連結する駆動ケース234と、切断刃231Dを刈取部本体に対して引起装置側または脱穀部側に移動可能とするとともに、この刈取部本体に対して任意位置に保持可能とする移動手段250とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穀稈を引き起こす引起装置と、引起装置により引き起こされた穀稈を切断する切断装置と、引起装置により引き起こされた穀稈および切断装置により切断された穀稈を脱穀部側へ搬送する搬送装置とを備えた刈取部を有するコンバインは公知となっている。このようなコンバインの刈取部において、切断装置は、穀稈の株元側を切断するための切断刃として、左右方向に延設した固定刃および可動刃を備え、固定刃と可動刃を上下に重ねた状態で、可動刃を固定刃に対して可動刃を往復摺動させることによって、穀稈を切断するように構成されていた。
【0003】
しかし、このような切断装置は、固定刃および可動刃による穀稈の切断時に大きな振動および騒音を発生させるという問題があった。そこで、この問題を解消するために、穀稈を切断するための切断刃として、円盤形状の切断刃を用いたものが提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。この切断装置は、複数の円盤形状の切断刃(円板型の回転カッター)を左右方向に略同一直線上に並べて配置して、各々を回転駆動させることで、穀稈を切断するようになっている。
【特許文献1】特開平11−46552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のようなコンバインでは、刈取部において、切断装置は、各切断刃が刈取部本体となる刈取フレームに対して一定の位置に保持されるように設けられていた。そのため、穀稈の切断時に、刈取作業の状況、たとえば、車速が変化した場合に、切断装置での穀稈の切断タイミングが適切とならず、刈取フレーム上の搬送装置による穀稈の搬送を円滑に行うことができないことがあった。
【0005】
そこで本発明は、刈取部において、切断装置での穀稈の切断タイミングを調節して、穀稈の切断時に、搬送装置による穀稈の搬送を円滑に行うことができるコンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、穀稈を引き起こす引起装置と、前記引起装置により引き起こされた穀稈を切断する切断装置と、前記引起装置により引き起こされた穀稈および前記切断装置により切断された穀稈を脱穀部側へ搬送する搬送装置とを備えた刈取部を有するコンバインであって、前記切断装置は、穀稈を株元側で切断する複数の円盤形状の切断刃と、前記複数の切断刃を回転駆動させる駆動アクチュエータと、前記複数の切断刃と前記駆動アクチュエータとを支持して、これらを内部に有する伝動機構を介して連動連結する駆動ケースと、前記駆動ケースを刈取部本体に対して前記引起装置側または前記脱穀部側に移動可能に支持するとともに、この刈取部本体に対して移動先の任意位置に保持可能とする移動手段とを備えるものである。
【0008】
請求項2においては、前記駆動ケースを移動可能かつ保持可能とする移動アクチュエータを、前記移動手段に含むとともに、車速を検出する車速検出手段と、前記移動アクチュエータの駆動制御を行う制御手段とを備え、前記制御手段は、前記車速検出手段にて検出された車速に応じて、前記駆動ケースが前記引起装置側または前記脱穀部側に所定の移動量だけ移動されてその移動先の任意位置に保持されるように、前記移動アクチュエータの駆動制御を行うものである。
【0009】
請求項3においては、前記移動手段は、前記駆動ケースを略水平に移動させるように構成するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、切断装置では、複数の切断刃を移動手段にて駆動ケースとともに刈取部本体に対して引起装置側または脱穀部側に移動させ、その移動先の任意位置で保持することが可能となる。そのため、複数の切断刃の前後方向での位置を変更して、穀稈の切断タイミングを変更することが可能となる。したがって、刈取部において、切断装置での穀稈の切断タイミングを刈取作業の状況に応じて適切に調節して、穀稈の切断時に、刈取部本体上の搬送装置による穀稈の搬送を円滑に行うことができる。
【0012】
請求項2においては、刈取部の切断装置において、コンバインの走行時の車速に応じて、複数の切断刃を移動手段にて駆動ケースとともに刈取部本体に対して引起装置側または脱穀部側に移動させ、その移動先の任意位置で保持することが可能となる。そのため、複数の切断刃の前後方向での位置を自動的に変更して、穀稈の切断タイミングを変更することが可能となる。したがって、刈取部において、車速の増速または減速に応じて、切断装置での穀稈の切断タイミングを随時適切に調節して、穀稈の切断時に、刈取部本体上の搬送装置による穀稈の搬送を円滑に行うことができる。
【0013】
請求項3においては、刈取部の切断装置で、穀稈の切断タイミングを調節するために、複数の切断刃の位置を移動手段にて変更した場合でも、穀稈を変更前の切断高さで、即ち一定の切断高さで切断することが可能となる。したがって、穀稈を切断装置で安定的に切断して、搬送装置で円滑に搬送することができる。また、圃場での穀稈の刈り跡をきれいなものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0015】
まず、本発明の一実施形態に係る刈取部20を有する四条刈りのコンバイン1の全体構成について説明する。
【0016】
図1に示すように、コンバイン1には、機体フレーム2に対して、走行部10と、刈取部20と、脱穀部30と、選別部40と、穀粒貯溜部50と、排藁処理部60と、エンジン部70と、ミッション部80と、操縦部90とが備えられる。
【0017】
走行部10は、機体フレーム2の下部に設けられる。走行部10は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置11などを有して、クローラ式走行装置11により機体を前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0018】
刈取部20は、機体フレーム2の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部20は、分草具21や、引起装置22や、切断装置23や、搬送装置24などを有して、分草具21により圃場の穀稈を分草し、引起装置22により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置23により引起後の穀稈を切断し、搬送装置24により切断後の穀稈を脱穀部30側へ搬送することができるように構成される。
【0019】
脱穀部30は、機体フレーム2の左側前部に設けられ、刈取部20の後方に配置される。脱穀部30は、搬送装置31や、扱胴や、受網などを有して、搬送装置31により刈取部20から搬送されてくる穀稈を受け継いで排藁処理部60側へ搬送し、扱胴および受網により搬送中の穀稈を脱穀し、その脱穀物を漏下させることができるように構成される。
【0020】
選別部40は、機体フレーム2の左側部に設けられ、脱穀部30の下方に配置される。選別部40は、揺動選別装置や、風選別装置や、穀粒搬送装置や、藁屑排出装置などを有して、揺動選別装置により脱穀部30から落下する脱穀物を穀粒と藁屑や塵埃などとに揺動選別し、風選別装置により揺動選別後のものを更に穀粒と藁屑や塵埃などとに風選別し、穀粒搬送装置により選別後の穀粒を穀粒貯溜部50側へ搬送する一方、藁屑排出装置により藁屑や塵埃などを外部へ排出することができるように構成される。
【0021】
穀粒貯溜部50は、機体フレーム2の右側後部に設けられ、脱穀部30および選別部40の右側方に配置される。穀粒貯溜部50は、穀粒タンク51や、穀粒排出装置52などを有して、穀粒タンク51により選別部40から搬送されてくる穀粒を貯溜し、穀粒排出装置52により貯溜中の穀粒を任意の方向に搬送してから外部へ排出することができるように構成される。
【0022】
排藁処理部60は、機体フレーム2の左側後部に設けられ、脱穀部30の後方に配置される。排藁処理部60は、排藁搬送装置や、排藁切断装置などを有して、排藁搬送装置により脱穀部30から搬送されてくる脱穀済みの穀稈を受け継いでこれを排藁として外部へ排出する、もしくは排藁切断装置へ搬送し、排藁切断装置により切断してから外部へ排出することができるように構成される。
【0023】
エンジン部70は、機体フレーム2の右側前部に設けられ、穀粒貯溜部50の前方に配置される。エンジン部70は、エンジンなどを有して、エンジンの動力を当該エンジンを駆動源とする各部の装置に適宜の伝動機構を介して供給し、エンジンにより各部の装置を駆動させることができるように構成される。
【0024】
ミッション部80は、機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部70の前方に配置される。ミッション部80は、トランスミッションなどを有して、エンジン部70のエンジンの動力が走行部10や刈取部20などの各装置へ供給される前に、トランスミッションにより当該動力を変速することができるように構成される。
【0025】
操縦部90は、機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部70およびミッション部80の上方に配置される。操縦部90は、ステアリングハンドル91および変速レバーを含む各種の操作具や、操縦席92や、キャビン93などを有して、操作具により各部の装置などを操作し、操縦席92に操縦者を着座させ、キャビン93により操作具や操縦席92を覆うことができるように構成される。
【0026】
このようにして、コンバイン1は、操縦部90での操作具の操作によって、エンジン部70からエンジンの動力を各部の装置に供給するなどして、走行部10にて機体を走行させながら、刈取部20で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部30で刈取部20からの穀稈を脱穀し、選別部40で脱穀部30からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部50で選別部40からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部60で脱穀部30からの排藁を外部へ排出することができるように構成される。
【0027】
次に、刈取部20の構成について説明する。
【0028】
図2に示すように、刈取部20は、前述の分草具21と、引起装置22と、切断装置23と、搬送装置24とに加えて、刈取フレーム110を有して構成される。刈取部20は、刈取部本体となる刈取フレーム110で機体フレーム2の左側前端部に支持され、機体フレーム2の前方に配置される。
【0029】
刈取部20の機体フレーム2に対する支持部付近において、機体フレーム2側では、機体フレーム2の左側前端部に左右一対の支持台3が左右方向に所定間隔をとって平行に立設される。左右の各支持台3上にはパイプ受部材4が設けられる。
【0030】
刈取部20側では、刈取フレーム110に刈取入力パイプ111が備えられる。そして、刈取入力パイプ111が、機体フレーム2の左側前端部の上方であって、左右の支持台3上のパイプ受部材4の間に左右方向に水平に横設され、その左右の端部でそれぞれ支持台3上のパイプ受部材4に回動自在に支持される。
【0031】
刈取フレーム110には、刈取入力パイプ111に加えて、縦伝動パイプ112と、横伝動パイプ113と、複数の分草フレーム114と、左右の引起縦伝動パイプ116と、引起横伝動パイプ117と、複数の引起駆動パイプ118と、連結フレーム119とが備えられる。
【0032】
この刈取フレーム110において、縦伝動パイプ112は、刈取入力パイプ111の前方に配置され、刈取入力パイプ111の左右中途部から前斜下方へ向けて延設される。横伝動パイプ113は、縦伝動パイプ112の前方に配置され、縦伝動パイプ112の先端部から左右方向へ延設される。
【0033】
複数の分草フレーム114は、横伝動パイプ113の前方に配置され、左右方向に適宜の間隔をとって互いに平行に並設される。図3、図5に示すように、これらの分草フレーム114のうち、最外側に位置する左右の外側分草フレーム114Aは、横伝動パイプ113の左右の端部からそれぞれ前方へ向けて延設される。
【0034】
複数の分草フレーム114のうち、左右の外側分草フレーム114Aよりも内側に位置する、残りの内側分草フレーム114Bは、切断装置23に備えられ、横伝動パイプ113と前後に並設される後述の駆動ケース234の左右中途部から左右方向に所定間隔ごとに前方へ向けて延設される。
【0035】
これらの内側分草フレーム114Bは、左右の外側分草フレーム114Aの間において、内側分草フレーム114Bと右外側分草フレーム114Aとの左右幅が、内側分草フレーム114B同士の左右幅、および内側分草フレーム114Bと左外側分草フレーム114Aとの左右幅よりも大きくなるように配置される。
【0036】
左右の引起縦伝動パイプ116は、横伝動パイプ113の上方に配置され、横伝動パイプ113の左右の端部から前斜上方へ向けて立設される。引起横伝動パイプ117は、横伝動パイプ113の前上方に配置され、左右の引起縦伝動パイプ116の上端部の間に左右方向へ水平に横設される。
【0037】
複数の引起駆動パイプ118は、引起横伝動パイプ117の下方に配置され、引起横伝動パイプ117の左右中途部から左右方向に所定間隔ごとに下方へ向けて延設される。また、連結フレーム119は、引起横伝動パイプ117の後方に配置され、引起横伝動パイプ117の左右中途部から縦伝動パイプ112の後部まで後方へ向けて延設される。
【0038】
こうして、刈取フレーム110は、刈取入力パイプ111と、縦伝動パイプ112と、横伝動パイプ113と、複数の分草フレーム114と、左右の引起縦伝動パイプ116と、引起横伝動パイプ117と、複数の引起駆動パイプ118と、連結フレーム119とを一体的に連結して構成される。
【0039】
このような刈取フレーム110に、分草具21や、引起装置22や、切断装置23や、搬送装置24などが適宜に支持される。刈取フレーム110に支持されるとき、分草具21と、引起装置22と、搬送装置24とは、この順で前から後ろへ向けて配置され、切断装置23は、引起装置22の後方で搬送装置24の搬送始端部の下方に配置される。
【0040】
図3にも示すように、分草具21には、四条分五つの分草板211が備えられる。これらの分草板211はそれぞれ先細形状とされ、複数の分草フレーム114、即ち左右の外側分草フレーム114Aおよび三つの内側分草フレーム114Bの先端部に前方へ向けて突設される。
【0041】
引起装置22には、四条分四つの引起ケース221が備えられる。各引起ケース221はタイン付チェーン222などを有し、これらを回転駆動可能とするように構成される。これらの引起ケース221は分草具21の後方で左右方向に適宜の間隔をとって並べて配置され、複数の分草フレーム114と複数の引起駆動パイプ118との間に前低後高の傾斜状に立設される。
【0042】
搬送装置24には、掻込機構241と、搬送機構245とが備えられる。掻込機構241は、搬送装置24の前部側に配置され、この搬送装置24の搬送始端部となるように設けられる。一方、搬送機構245は、搬送装置24の後部側に配置され、搬送装置24の搬送中途部および搬送終端部となるように設けられている。
【0043】
掻込機構241には、左右の掻込装置242L・242Rと、四つの掻込輪243とが備えられる。左右の掻込装置242L・242Rは、それぞれ左右一対で一組の突起付ベルトなどを有し、これらを回転駆動可能とするように構成される。左右の掻込装置242L・242Rは、それぞれ引起ケース221の後方に配置され、引起ケース221側から後方へ向けて、前低後高の傾斜状に延設される。
【0044】
左右の掻込装置242L・242Rは、また、それぞれ左右一対で一組の突起付ベルトを左または右側二つの引起ケース221の間に向けて前方へ大きく開くように配置される。つまり、左右の各掻込装置242L・242Rは、二つの引起ケース221の前部側の左右幅が広くなり、後部側の左右幅が狭くなるように配置される。
【0045】
四つの掻込輪243は、それぞれスターホイルとされ、回転駆動可能に構成される。各掻込輪243は、左右の掻込装置242L・242Rの各突起付ベルトの後部下方に配置され、前低後高の傾斜状に設けられる。
【0046】
搬送機構245には、左右の下部搬送装置246L・246Rと、上部搬送装置247と、縦搬送装置248と、補助搬送装置249とが備えられる。各搬送装置はチェーンなどを有し、これらを回転駆動可能とするように構成される。
【0047】
左下部搬送装置246Lは、左掻込装置242Lの後方に配置され、左掻込装置242L側から右斜後方へ向けて、前低後高の傾斜状に延設される。右下部搬送装置246Rは、右掻込装置242Rの後方に配置され、右掻込装置242R側から左斜後方へ向けて前低後高の傾斜状に延設される。
【0048】
上部搬送装置247は、引起装置22の後方であって右下部搬送装置246Rの上方に配置され、右掻込装置242R側から左斜後方へ向けて、前低後高の傾斜状に延設される。縦搬送装置248は、左下部搬送装置246Lの後方であって、上部搬送装置247の下方に配置され、左下部搬送装置246L側から左斜後方へ向けて前低後高の傾斜状に延設される。補助搬送装置249は、縦搬送装置248の後方であって、上部搬送装置247の下方に配置され、縦搬送装置248側から後方へ向けて脱穀部30の搬送装置31まで延設される。
【0049】
切断装置23には、複数の円盤形状の切断刃231と、円盤形状の補助切断刃232と、駆動アクチュエータ233などとが備えられる。複数の切断刃231および補助切断刃232は、後述するように、掻込機構241の下方に配置され、前低後高の傾斜状に設けられる。駆動アクチュエータ233は、切断刃231および補助切断刃232の近傍に配置され、これらの切断刃231および補助切断刃232と連動連結される。
【0050】
さらに、これらの分草具21および各装置を支持する刈取フレーム110では、刈取入力パイプ111の内部に刈取入力軸121が内挿されるとともに、その他の各パイプの内部に刈取伝動軸が内挿される。そして、各刈取伝動軸や刈取入力軸などを介して引起装置22および搬送装置24がエンジン部70のエンジンと連動連結される。
【0051】
こうして、引起装置22および搬送装置24は、エンジン部70のエンジンを駆動源としてこれから供給される動力を得て、駆動することができるように構成される。また、切断装置23は、駆動アクチュエータ233を駆動源としてこれの動力を用いて、単独で駆動する、言い換えればエンジンから独立して駆動することができるように構成される。
【0052】
このような構成により、刈取部20において、各装置が駆動される場合に、分草具21の分草板211により圃場の穀稈が一条ごとに分離するように分草されたあと、引起装置22で引起ケース221により分草後の穀稈が引き起こされる。つづいて、搬送装置24の掻込機構241で左右の掻込装置242L・242Rと掻込輪243とによりそれぞれ左または右側二つの引起ケース221の間から導入される引起後の左または右側二条分の穀稈の株元側が一束に掻き寄せられ掻き込まれる。
【0053】
このとき、切断装置23で切断刃231および補助切断刃232により引越後の穀稈が株元側で切断される。切断されたあと、穀稈は搬送装置24の搬送機構245で右下部搬送装置246Rにより右二条分の穀稈が左斜後方へ搬送されると同時に、左下部搬送装置246Lにより左二条分の穀稈が右斜後方へ搬送されて、四条分の穀稈の株元側が右下部搬送装置246Rの搬送終端部付近で合流させられる。
【0054】
次に、上部搬送装置247により四条分の穀稈の穂先側が寄せ集められながら左斜後方へ搬送されるとともに、縦搬送装置248により右下部搬送装置246Rの搬送終端部付近にて合流させられた四条分の穀稈の株元側が脱穀部30の搬送装置31へ向けて後斜上方に搬送され、補助搬送装置249により穀稈の株元側が縦搬送装置248から脱穀部30の搬送装置31へ渡される。このようにして、刈取部20で穀稈の一連の刈取作業が行われる。
【0055】
また、このような刈取部20において、刈取フレーム110は、縦伝動パイプ112の前後中途部を機体フレーム2の前下部から前方へ向けて延設される昇降シリンダ5の先端部に連結させ、この昇降シリンダ5の伸縮駆動に応じて刈取入力パイプ111回りに上下方向に回動することができるように構成される。なお、昇降シリンダ5は、操縦部90の操作具の手動操作などに応じて伸縮駆動可能とされる。
【0056】
刈取フレーム110は、昇降シリンダ5が伸縮駆動される場合、昇降シリンダ5の伸長駆動時には、刈取入力パイプ111回りに上方へ回動され、昇降シリンダ5の収縮駆動時には、刈取入力パイプ111回りに下方へ回動される。これにより、刈取部20全体が、刈取フレーム110の上方への回動時に、機体に対して上昇され、刈取フレーム110の下方への回動時に、機体に対して下降される。
【0057】
つづいて、本発明の要部となる切断装置23付近の構成について説明する。なお、切断装置は、本実施形態においては、複数の切断刃とともに補助切断刃を備えるものとしているが、補助切断刃を備えずに複数の切断刃のみを備えるものであってもよい。
【0058】
図4および図5に示すように、切断装置23には、引起装置22により引き起こされる穀稈の条数、即ち刈り取る穀稈の刈取条数と同数の複数の切断刃231と、一つの補助切断刃232と、駆動アクチュエータ233と、駆動ケース234などとが備えられる。本実施形態においては、刈取条数が四条であるので、切断装置23には、第一切断刃231Aと、第二切断刃231Bと、第三切断刃231Cと、第四切断刃231Dとなる四つの切断刃231が備えられる。
【0059】
第一から第四切断刃231A〜231Dは、それぞれ所定幅の径をもって円盤形状に形成され、同一形状とされる。補助切断刃232は、切断刃231と同様に円盤形状に形成され、第一から第四切断刃231A〜231Dよりも小径とされる。そして、第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232は、その外周縁部に刃部を、中心部に固定部を有して構成される。
【0060】
なお、第一から第四切断刃231A〜231Dの径は、一条分の穀稈を切断することができる程度に設定される。一方、補助切断刃232の径は、第一から第四切断刃231A〜231Dの径よりも小さな範囲で切断装置23の切断幅に応じて適宜に設定される。実際には、補助切断刃232は切断装置23の切断幅に応じて適切な径をもったものに変更されて用いられる。
【0061】
第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232は、横伝動パイプ113よりも前方であって、左右の外側分草フレーム114Aの間に、この順に左から右へ向かって配置される。ここで、第一から第四切断刃231A〜231Dは、各々同一平面上で、左右方向に同一直線上に並べられる。補助切断刃232は、第一から第四切断刃231A〜231Dと略同一平面状上で、複数の切断刃231のうち、最外側に位置する左右一方(右方)の第四切断刃231Dの外側方に並べられる。
【0062】
複数の切断刃231のうち、左右他方(左方)の最外側に位置する第一切断刃231Aは、平面視で刃部の左端部が左外側分草フレーム114Aのすぐ内側に位置するように配置される。第二切断刃231Bは、平面視で刃部の左右の各端部が内側分草フレーム114Bと若干重複するように、隣り合う内側分草フレーム114Bの間に配置される。第三切断刃231Cは、平面視で刃部の左右の各端部が内側分草フレーム114Bと若干重複するように、隣り合う内側分草フレーム114Bの間に配置される。
【0063】
第四切断刃231Dは、平面視で刃部の左端部が内側分草フレーム114Bと若干重複するように、内側分草フレーム114Bのすぐ外側に配置される。補助切断刃232は、平面視で刃部の右端部が右外側分草フレーム114Aのすぐ内側に位置するように配置される。つまり、第四切断刃231Dと補助切断刃232とはともに隣り合う内側分草フレーム114Bと外側分草フレーム114Aとの間に配置される。
【0064】
これらの切断刃231のうち、隣り合う切断刃231は、互いに一部を重複させず、相互間にあらかじめ左右方向に所定幅をとって配置される。具体的には、第一切断刃231Aと第二切断刃231Bと、第二切断刃231Bと第三切断刃231Cと、第三切断刃231Cと第四切断刃231Dとが、それぞれ相互間に内側分草フレーム114Bの左右幅と略同程度の幅をとって配置される。
【0065】
一方、隣り合う補助切断刃232と第四切断刃231Dとは、互いに一部を重複させて配置される。こうして、第一から第四切断刃231A〜231Dと左外側分草フレーム114Aまたは内側分草フレーム114Bとが、それぞれ平面視で互いの間に隙間が生じないように配置されるとともに、補助切断刃232と右外側分草フレーム114Aおよび第四切断刃231Dとが、それぞれ平面視で互いの間に隙間が生じないように配置される。
【0066】
ここで、補助切断刃232は、前述のように、内側分草フレーム114Bと右外側分草フレーム114Aとの間の左右幅が、他の分草フレーム114間の左右幅よりも大きく設定されていることから、内側分草フレーム114Bと右外側分草フレーム114Aとの間に、隣り合う第四切断刃231Dとともに、これと互いに一部重複するように配置される。
【0067】
その上、第一から第四切断刃231A〜231Dは、それぞれ搬送装置24の掻込機構241に備えられた各掻込輪243の略直下方に配置され、引起装置22側が低くなり、脱穀部30側が高くなる、即ち前低後高の傾斜状に設けられる。こうして、掻込輪243と第一から第四切断刃231A〜231Dとはともに前低後高の傾斜状に設けられ、互いに異なる傾斜度合いをもって、即ち平行とはならずに上下に並べられる。
【0068】
各第一から第四切断刃231A〜231Dの水平な地面に対する傾斜度合いは、各掻込輪243の水平な地面に対する傾斜度合いよりも緩やかに設定される。言い換えれば、各第一から第四切断刃231A〜231Dの水平な地面に対する傾斜度合いは、各掻込輪243が各第一から第四切断刃231A〜231Dよりも水平な地面に対してより大きく傾くように設定される。
【0069】
そのうえで、各第一から第四切断刃231A〜231Dの傾斜度合いは、その後方に配置された刈取フレーム110の横伝動パイプ113が側面視における第一から第四切断刃231A〜231Dの脱穀部30側への延長線よりも下方に位置するように設定される。なお、複数の掻込輪243の傾斜度合いは同一に設定される。
【0070】
また、補助切断刃232は、複数の掻込輪243のうち、最外側に位置する右掻込輪243の右下方に配置され、第一から第四切断刃231A〜231Dと同様に前低後高の傾斜状に設けられる。補助切断刃232の傾斜度合いは、第一から第四切断刃231A〜231Dの傾斜度合いと同程度に設定される。
【0071】
補助切断刃232は、更に第四切断刃231Dの前部の右外側方で、刃部の前端側が第一から第四切断刃231A〜231Dの刃部の前端側と左右方向に揃うように前寄りに配置される。これにより、補助切断刃232の後方であって、第四切断刃231Dの後部の右外側方に、即ち切断装置23の右側後部に、駆動アクチュエータ233を設置可能とする大きさをもった駆動アクチュエータ設置用空間235が形成される。
【0072】
図6および図7に示すように、駆動アクチュエータ233は、駆動アクチュエータ設置用空間235に設けられる。駆動アクチュエータ233は、電動モータや油圧モータなどとされ、動力を第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232に伝動機構を介して供給し、これらを回転駆動させることができるように構成される。
【0073】
駆動アクチュエータ233は、刈取部20を含む機体の任意位置に備えられるコントローラ等の制御手段により駆動制御される。この制御手段は、駆動アクチュエータ233と接続されるとともに、操縦部90の操作具や、刈取部20の引起装置22や搬送装置24の駆動状態を検出する検出手段、たとえば、エンジン部70のエンジンから刈取部20の引起装置22や搬送装置24への動力供給を切り替える刈取クラッチの入切状態を検出する刈取クラッチ検出センサなどに接続される。
【0074】
そして、駆動アクチュエータ233は、制御手段により操縦部90の操作具の手動操作に応じて、その駆動状態が正転方向への駆動と、逆転方向への駆動と、停止とのいずれかの状態となるように制御される。あるいは、駆動アクチュエータ233は、制御手段により検出手段にて検出された刈取部20の引起装置22や搬送装置24の駆動状態に応じて、その駆動状態が引起装置22や搬送装置24と連動して適宜に駆動または停止の一方の状態となるように自動で制御される。
【0075】
なお、駆動アクチュエータは、制御手段により電気的に駆動制御するだけでなく、機械的に駆動制御するように構成することもできる。たとえば、駆動アクチュエータが油圧モータである場合、油圧モータと当該油圧モータに作動油を送る油圧ポンプとを接続する配管の途中に切換バルブを配設し、この切換バルブに操縦部の操作具や刈取クラッチを連動連結することで、前記同様にアクチュエータの駆動状態を制御することが可能となる。
【0076】
この駆動アクチュエータ233は、駆動アクチュエータ設置用空間235において、横伝動パイプ113と駆動ケース234との間に配置され、横伝動パイプ113には連結されず、駆動ケース234に連結されて支持される。駆動ケース234は、横伝動パイプ113の前斜下方に配置され、左右の外側分草フレーム114Aの間に左右方向に水平に、かつ横伝動パイプ113と平行に横設される。
【0077】
そのうえで、駆動ケース234は、第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232の下方、特にこれらの固定部の下方付近を通るように配置されるとともに、左右の端部がそれぞれ左右の外側分草フレーム114Aよりも上方であって、これらの前低後高の傾斜状とされた後部の前方に位置して、当該外側分草フレーム114Aとは接触しないように配置される。
【0078】
駆動ケース234には、左右方向に延伸される中空状のケース本体234aに対して、中空状の第一延出部234bと、複数の中空状の第二延出部234cと、第三延出部234dとが備えられる。なお、駆動ケース234は、後述するように、移動手段250を介して刈取フレーム110の一部である左右の外側分草フレーム114Aに支持される。
【0079】
第一延出部234bは、補助切断刃232の下方付近で、ケース本体234aの右側部から前後へ向けて前低後高状に延設される。この第一延出部234bは、前端部が補助切断刃232の固定部の下方を通って刃部よりも突出しない程度に前方へ向けて延出される一方、後端部が刃部よりも突出するように後方へ向けて延出され、この後端部で駆動アクチュエータ233と連結される。
【0080】
複数の第二延出部234cは、それぞれ第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232の固定部の下方に配置される。これらの第二延出部234cのうち、四つの第二延出部234cはそれぞれケース本体234aの左右中途部から、一つの第二延出部234cは第一延出部234bから前斜上方へ向けて、第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232のすぐ手前まで延出される。
【0081】
第三延出部234dは、第一切断刃231Aの下方付近で、ケース本体234aの左側部から前後へ向けて前低後高状に延設される。この第三延出部234dは、後端部が第一切断刃231Aの刃部よりも突出するように後方へ向けて、横伝動パイプ113の手前まで延出される。
【0082】
そして、このような駆動ケース234において、ケース本体234aと、第一延出部234bと、複数の第二延出部234cとの内部に、切断装置23の伝動機構が設けられる。この伝動機構には、縦駆動軸236や、横駆動軸237や、複数の回転駆動軸238や、複数のベベルギヤなどが備えられる。
【0083】
縦駆動軸236は、第一延出部234bの内部に配置され、補助切断刃232の固定部の下方を通るように、駆動アクチュエータ233から前下方へ向けて延設される。縦駆動軸236は、前後方向の適宜の箇所で第一延出部234bに軸受を介して回転自在に支持されるとともに、駆動アクチュエータ233の出力軸と連動連結される。なお、縦駆動軸236は、駆動アクチュエータ233の出力軸を兼ねるものとすることも可能である。
【0084】
横駆動軸237は、ケース本体234aの内部に配置され、第一から第四切断刃231A〜231Dの固定部の下方を通るように、縦駆動軸236の中途部から左方向へ延設される。横駆動軸237は、左右方向の適宜の箇所でケース本体234aに軸受を介して回転自在に支持されるとともに、縦駆動軸236とベベルギヤを介して連動連結される。
【0085】
複数の回転駆動軸238は、それぞれ第二延出部234cの内部に配置され、横駆動軸237または縦駆動軸236の中途部から上方へ向けて、第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232の固定部まで延設される。複数の各回転駆動軸238は、上下方向の適宜の箇所で第二延出部234cに軸受を介して回転自在に支持されるとともに、第一から第四切断刃231A〜231D側の回転駆動軸238は、横駆動軸237とベベルギヤを介して連動連結され、補助切断刃232側の回転駆動軸238は、縦駆動軸236とベベルギヤを介して連動連結される。
【0086】
そして、第一から第四切断刃231A〜231Dが、側面視で回転駆動軸238の軸心方向に対して直交するように、固定部で第一から第四切断刃231A〜231Dの裏側に位置する回転駆動軸238の先端部に固設される。同様に、補助切断刃232が、側面視で回転駆動軸238の軸心方向に対して直交するように、固定部で補助切断刃232の裏側に位置する回転駆動軸238の先端部に固設される。
【0087】
こうして、駆動アクチュエータ233は、第一から第四切断刃231A〜231Dと、縦駆動軸236や横駆動軸237や複数の回転駆動軸238などにより連動連結される。駆動アクチュエータ233は、更に補助切断刃232と、縦駆動軸236や回転駆動軸238などにより連動連結される。
【0088】
よって、駆動アクチュエータ233が制御手段の駆動制御に基づいて駆動された場合に、動力が駆動アクチュエータ233から第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232に伝動機構を介して伝達されて、第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232が回転駆動軸238を回転中心として回転駆動される。
【0089】
回転駆動時における第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232の回転速度は、駆動アクチュエータ233が制御手段により適宜に駆動制御されることによって、任意に調節可能とされ、各々が一定の回転速度となるように設定されるとともに、各々が同一の回転速度となるように設定される。なお、第一から第四切断刃231A〜231Dの回転速度を補助切断刃232の回転速度よりも速くなるように設定してもよい。
【0090】
また、第一から第四切断刃231A〜231Dの回転方向は、伝動機構によって、隣り合う切断刃231の回転方向が互いに異なる回転方向となるように設定される。具体的には、第一から第四切断刃231A〜231Dの回転方向は、第一切断刃231Aと第二切断刃231B、第二切断刃231Bと第三切断刃231C、第三切断刃231Cと第四切断刃231Dとの回転方向がそれぞれ互いに異なる回転方向となるように設定される。
【0091】
補助切断刃232の回転方向は、隣り合う切断刃231の回転方向と同一の回転方向となるように設定される。具体的には、補助切断刃232の回転方向は、第四切断刃231Dの回転方向と同一の回転方向となるように伝動機構で設定される。
【0092】
本実施形態においては、第一切断刃231Aと第三切断刃231Cとの回転方向は、図4における時計回り方向に設定され、第二切断刃231Bと第四切断刃231Dの回転方向は、図4における反時計回り方向に設定される。補助切断刃232の回転方向は、第四切断刃231Dと同様に、図4における反時計回り方向に設定される。
【0093】
よって、第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232が回転駆動される場合、第一切断刃231Aと第二切断刃231Bとは、それぞれ上方の掻込輪243と同一の回転方向、即ち掻込輪243および左掻込装置242Lの掻込方向に回転駆動される。第三切断刃231Cと第四切断刃231Dとは、それぞれ上方の掻込輪243と同一の回転方向、即ち掻込輪243および右掻込装置242Rの掻込方向に回転駆動される。
【0094】
一方、補助切断刃232は、第四切断刃231Dとその上方の掻込輪243と同一の回転方向、即ち掻込輪243および右掻込装置242Rの掻込方向に回転駆動される。
【0095】
なお、第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232の各々の回転方向は、前記とは逆の回転方向に切り替えることも可能となっている。この回転方向の切替は、操縦部90の操作具が操作されることなどで、制御手段により駆動アクチュエータ233が以前とは逆の回転方向となる正転方向または逆転方向に駆動するように制御されて行われる。
【0096】
このような構成により、切断装置23付近においては、引起装置22と、搬送装置24とが駆動される場合に、切断装置23も同時に駆動される。つまり、駆動アクチュエータ233から第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232に動力が伝達され、第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232が前述のように設定された回転速度および回転方向で回転駆動される。
【0097】
そして、分草後に引き起こされた左または右側二条分の穀稈が、搬送機構の左右の掻込装置242L・242Rや掻込輪243により後方へ掻き込まれながら、それぞれ一条分ごとに左右の外側分草フレーム114Aと内側分草フレーム114Bとの間、または内側分草フレーム114B同士の間を通って、各分草フレーム114により第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232側に向かって案内される。
【0098】
一条分ごとの穀稈が、各分草フレーム114により案内されて、第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232に至ると、各穀稈が株元側で左外側分草フレーム114Aと内側分草フレーム114Bとの間では、第一切断刃231Aにより切断され、内側分草フレーム114B同士の間では、それぞれ第二切断刃231Bまたは第三切断刃231Cにより切断される。また、内側分草フレーム114Bと右外側分草フレーム114Aとの間では、第四切断刃231Dおよび補助切断刃232とにより切断される。
【0099】
この際、穀稈は第一から第四切断刃231A〜231Dおよび補助切断刃232により掻込輪243および左右の各掻込装置242L・242Rの掻込方向に送られつつ切断されるとともに、左右の各掻込装置242L・242Rや掻込輪243により更に左または右側二条分ごとに一束に掻き寄せられ掻き込まれる。そして、前述のように、搬送機構245の左右の下部搬送装置246L・246Rにより後方へ搬送される。このようにして、切断装置23付近での作業が行われる。
【0100】
そして、このように構成される切断装置23に、複数の切断刃231と、一つの補助切断刃232と、駆動アクチュエータ233と、駆動ケース234とに加えて、移動手段250が備えられる。図4から図9に示すように、移動手段250には、左右の支持プレート260と、左右の第一リンク261と、左右の第二リンク262と、操作ロッド263と、保持部材とが備えられる。
【0101】
左右の支持プレート260は、それぞれ略台形状の板状部材で構成され、左右の外側分草フレーム114Aの後部からその傾斜にあわせて前上方に向けて立設される。各支持プレート260は、一辺部で外側分草フレーム114Aに固定され、刈取部20の側面視で、この一辺部と対向する前後の角部260a・260bのうち、前角部260aが掻込輪243の後部のすぐ下方あたりに位置し、後角部260bが前角部260aよりも上方で引起縦伝動パイプ116の下部の外側方あたりに位置するように配置される。
【0102】
左右の第一リンク261は、それぞれ棒板状部材で構成され、駆動ケース234と支持プレート260との間に介設される。各第一リンク261は、一端部で駆動ケース234のケース本体234aの左または右の端部に横駆動軸237の軸心線上に位置する第一支軸271にて連結され、この第一支軸271回りに回動可能とされる。そして、各第一リンク261は、他端部が一端部の鉛直上方に位置するように配置され、この他端部で支持プレート260の前角部260aに第二支軸272にて連結されて、この第二支軸272回りに回動可能とされる。
【0103】
左右の第二リンク262は、それぞれ棒板状部材で構成され、駆動アクチュエータ233と支持プレート260との間に介設される。各第二リンク262は、一端部で駆動アクチュエータ233の後部に第三支軸273にて連結されて、この第三支軸273回りに回動可能とされる。そして、各第二リンク262は、他端部が一端部の上方に位置するように配置され、この他端部で支持プレート260の後角部260bに第四支軸274にて連結されて、この第四支軸274回りに回動可能とされる。
【0104】
そのうえで、右第二リンク262のみに、他端部から後方へ向けて延出する延出部262aが備えられる。なお、第四支軸274は、刈取部20の側面視で、第二リンク262が当該第四支軸274回りに回動可能に設定される範囲において、この第二リンク262の回動にともなって図10における最前位置P2となるときの第三支軸273の軸心と、図8における最後位置P1となるときの第三支軸273の軸心とを結ぶ直線の垂直二等分線上に位置するように配置される。また、第一リンク261と第二リンク262は略平行に配置され、略平行リンクをなすように構成される。
【0105】
操作ロッド263は、丸棒状部材で構成され、左右の第二リンク262のうち、一方の延出部262aを備える第二リンク262、即ち右第二リンク262から刈取部20の任意位置まで上方へ延出するように設けられる。操作ロッド263は、一端部で第二リンク262の延出部262aに第五支軸275にて連結され、この第五支軸275回りに回動可能とされる。そして、操作ロッド263は、上下および前後方向に移動可能とされる。
【0106】
保持部材は、操作ロッド263の他端部近傍に設けられ、操作ロッド263の上下および前後方向の移動時に、この操作ロッド263を移動先の任意位置に手動または自動で保持することができるように構成される。ただし、保持部材は、操作ロッドに対して本実施形態のものと同様に作用するものであればよく、特に限定するものではない。
【0107】
たとえば、保持部材は、図11(a)に示すように、案内溝264aおよび複数の係合溝264bを有する板状部材のガイド264で構成され、操作ロッド263の他端部近傍に設けられる。ガイド264は、切断装置23の右側上方で刈取フレーム110の任意位置に取り付けられる。このガイド264において、案内溝264aは、右外側方を向いて開口されて、上下方向に延出される。一方、複数の係合溝264bは、右外側方を向いて上下方向に所定間隔ごとに開口されて、前後方向に延出されたうえで、その一端側で案内溝264aと連通される。案内溝264aの前後幅および各係合溝264bの上下幅は、操作ロッド263の径よりも若干大きな程度に設定される。
【0108】
保持部材としてガイド264が用いられる場合、操作ロッド263は、第二リンク262から上方へ延出される途中で略直角に屈曲されて、他端部が右外側方へ延出してその延出先に把持部材276を有するように構成される。そして、操作ロッド263の他端部が、ガイド264の案内溝264aに貫通されて当該案内溝264aに沿って上下方向に移動可能とされるとともに、いずれかの係合溝264bに移動されて選択的に係合可能とされる。ここで、操作ロッド263は、その他端部が係合溝264bとの係合を維持する方向に、ばね等の付勢部材277により付勢される。
【0109】
このような構成により、たとえば、操作ロッド263の他端部がガイド264の最上位置の係合溝264bに係合されている場合、図8に示すように、切断装置23は最後位置P1に保持される。この状態で、操作ロッド263の把持部材276を用いた操作によって、操作ロッド263の他端部とガイド264の係合溝264bとの係合が解除され、操作ロッド263の他端部が案内溝264aに沿って下方に移動されるとき、第二リンク262が第四支軸274回りに図8における反時計回り方向に回動されて、この第二リンク262の一端部に第三支軸273にて連結された駆動アクチュエータ233が前方に移動される。
【0110】
この駆動アクチュエータ233の前方への移動によって、駆動ケース234が前方へ移動される。このとき、駆動ケース234と第一支軸271にて連結された第一リンク261が第二支軸272回りに図8における反時計回り方向に回動されて、駆動ケース234が略水平に移動される。そして、操作ロッド263の他端部がガイド264の以前のものよりも下方にある別の係合溝264bに係合されると、駆動ケース234が所定の移動量だけ前方に移動された位置に保持される。駆動ケース234は、操作ロッド263の他端部がより下方の係合溝264bに係合されるに従って、より前方の位置で保持される。
【0111】
また、操作ロッド263の他端部がガイド264の最下位置の係合溝264bに係合されている場合、図10に示すように、切断装置23は最前位置P2に保持される。この状態で、操作ロッド263の把持部材276を用いた操作によって、操作ロッド263の他端部とガイド264の係合溝264bとの係合が解除され、操作ロッド263の他端部が案内溝264aに沿って上方に移動されるとき、第二リンク262が第四支軸274回りに図10における時計回り方向に回動されて、この第二リンク262の一端部に第三支軸273にて連結された駆動アクチュエータ233が後方に移動される。
【0112】
この駆動アクチュエータ233の後方への移動によって、駆動ケース234が後方へ移動される。このとき、駆動ケース234と第一支軸271にて連結された第一リンク261が第二支軸272回りに図10における時計回り方向に回動されて、駆動ケース234が略水平に移動される。そして、操作ロッド263の他端部がガイド264の以前のものよりも上方にある別の係合溝264bに係合されると、駆動ケース234が所定の移動量だけ後方に移動された位置に保持される。駆動ケース234は、操作ロッド263の他端部がより上方の係合溝264bに係合されるに従って、より後方の位置で保持される。
【0113】
これにより、複数の切断刃231および補助切断刃232は、駆動ケース234に支持されていることから、移動手段250で操作ロッド263が前述のように操作された場合、駆動ケース234と一体的に刈取フレーム110、ひいては当該刈取フレーム110上の掻込輪243を含む搬送装置24に対して前後方向に略水平に所定の移動量だけ移動されるとともに、その移動先の任意位置で保持される。その結果、切断装置23において、穀稈の切断高さは変更されないまま、穀稈の切断タイミングは変更されることとなる。
【0114】
また、保持部材は、図11(b)に示すように、電動モータやシリンダなどからなる移動アクチュエータ265で構成することも可能である。この場合、移動アクチュエータ265は、電動モータとされ、操作ロッド263の他端部近傍に設けられる。移動アクチュエータ265は、切断装置23の右側上方で刈取フレーム110の任意位置に取り付けられ、出力軸265aが操作ロッド263と同一軸心線上に位置して下方へ突出するように配置される。この出力軸265aの突出端部には、ねじ棒266が出力軸265aの軸心線上に位置するように固設され、移動アクチュエータ265の駆動時に、出力軸265aと一体的に回転または停止可能とされる。
【0115】
保持部材として移動アクチュエータ265が用いられる場合、操作ロッド263は、他端部に操作ロッド263の軸心方向に沿って延伸するねじ孔263aを有して構成される。そして、このねじ孔263aに移動アクチュエータ265側のねじ棒266が螺合される。こうして、ねじ棒266が出力軸265aとともに回転される場合に、ねじ孔263aを備える操作ロッド263の他端部がねじ棒266に沿って移動可能とされる。
【0116】
移動アクチュエータ265は、刈取部20を含む機体の任意位置に備えられるコントローラ等の制御手段6により駆動制御される。制御手段6は、図12に示すように、移動アクチュエータ265と接続されるとともに、コンバイン1の車速を検出するための車速検出センサ等の車速検出手段12と接続される。なお、移動アクチュエータを駆動制御する制御手段を、駆動アクチュエータを駆動制御する制御手段と同体とすることも、別体とすることも可能である。
【0117】
そして、移動アクチュエータ265は、制御手段6により車速検出手段12にて検出された車速に応じて、駆動状態が正転方向への駆動と、逆転方向への駆動と、停止とのいずれかの状態となるように適宜に駆動制御可能とされる。
【0118】
具体的には、たとえば、移動アクチュエータ265は、車速が予め設定された第一車速を超えると、所定の駆動量だけ正転方向(逆転方向)へ駆動されて、その後、予め第一車速の次に高く設定された第二車速に達するまでは停止される。この停止状態で、移動アクチュエータ265は、車速が第二車速よりも高くなると、所定の駆動量だけ正転方向(逆転方向)へ駆動されて、その後、予め第二車速の次に高く設定された第三車速に達するまでは停止される。
【0119】
一方、移動アクチュエータ265は、車速が予め設定された第三車速よりも低くなると、所定の駆動量だけ逆転方向(正転方向)へ駆動されて、その後、予め第三車速の次に低く設定された第二車速に達するまでは停止される。この停止状態で、移動アクチュエータ265は、第二車速よりも低くなると、所定の駆動量だけ逆転方向(正転方向)へ駆動されて、その後、予め第三車速の次に低く設定された第一車速に達するまでは停止される。
【0120】
このような構成により、コンバイン1が第一車速以下の車速で走行している場合に、図8に示すように、駆動ケース234が最後位置P1に保持されているとき、車速が増速されて第一車速を超えると、移動アクチュエータ265が所定の駆動量だけ正転方向(逆転方向)へ駆動されて、ねじ棒266が出力軸265aとともに回転され、操作ロッド263が下方に移動される。この操作ロッド263の下方への移動によって、第二リンク262が第四支軸274回りに図8における反時計回り方向に回動されて、この第二リンク262の一端部に第三支軸273にて連結される駆動アクチュエータ233が前方へ移動される。
【0121】
この移動アクチュエータ265の前方への移動によって、駆動ケース234が前方へ移動される。このとき、駆動ケース234と第一支軸271にて連結された第一リンク261が第二支軸272回りに図8における反時計回り方向に回動されて、駆動ケース234が略水平に移動される。そして、移動アクチュエータ265が所定の駆動量だけ正転方向(逆転方向)へ駆動されあとで停止されて、この移動アクチュエータ265とねじ棒266およびねじ孔263aにて連結される操作ロッド263も停止され、駆動ケース234が所定の移動量だけ前方に移動された位置に保持される。
【0122】
そして、車速が第一車速を超えたあと、更に増速されて第二車速を超えた場合、移動アクチュエータ265の駆動制御が前記同様に行われ、駆動ケース234が所定の移動量だけより前方に移動された位置に保持される。つづいて、車速が第二車速を超えたあと、更に増速されて第三車速を超えた場合、移動アクチュエータ265の駆動制御が前記同様に行われ、駆動ケース234が所定の移動量だけより前方に移動された位置、即ち図10における最前位置P2に保持される。
【0123】
また、コンバイン1が第三車速を超える車速で走行している場合に、図10に示すように、駆動ケース234が最前位置P2に保持されているとき、車速が減速されて第三車速以下になると、移動アクチュエータ265が所定の駆動量だけ逆転方向(正転方向)へ駆動されて、ねじ棒266が出力軸265aとともに回転され、操作ロッド263が上方に移動される。この操作ロッド263の上方への移動によって、第二リンク262が第四支軸274回りに図10における時計回り方向に回動されて、この第二リンク262の一端部に第三支軸273にて連結される駆動アクチュエータ233が後方へ移動される。
【0124】
この移動アクチュエータ265の後方への移動によって、駆動ケース234が後方へ移動される。このとき、駆動ケース234と第一支軸271にて連結された第一リンク261が第二支軸272回りに図10における時計回り方向へ回動されて、駆動ケース234が略水平に移動される。そして、移動アクチュエータ265が所定の駆動量だけ逆転方向(正転方向)へ駆動されあとで停止されて、この移動アクチュエータ265とねじ棒266およびねじ孔263aにて連結される操作ロッド263も停止され、駆動ケース234が所定の移動量だけ後方に移動された位置に保持される。
【0125】
車速が第三車速以下となったあと、更に減速されて第二車速以下となった場合、移動アクチュエータ265の駆動制御が前記同様に行われ、駆動ケース234が所定の移動量だけより後方に移動された位置に保持される。つづいて、車速が第二車速以下となったあと、更に減速されて第一車速以下となった場合、移動アクチュエータ265の駆動制御が前記同様に行われ、駆動ケース234が所定の移動量だけより後方に移動された位置、即ち図8における最後位置P1に保持される。
【0126】
なお、移動アクチュエータの駆動制御を行うために予め設定される車速を、本実施形態においては、便宜的に、第一車速、第二車速、第三車速の三段階の車速としているが、任意の複数段の車速に設定することが可能である。また、車速に応じて駆動される移動アクチュエータの正転方向または逆転方向への所定の駆動量も、予め設定される車速の段数にあわせて任意に設定することが可能である。
【0127】
これにより、複数の切断刃231および補助切断刃232は、駆動ケース234に支持されていることから、移動手段250で移動アクチュエータ265が前述のように車速検出手段12により検出された車速に応じて駆動されて、操作ロッド263が操作された場合、駆動ケース234と一体的に刈取フレーム110、ひいては当該刈取フレーム110上の掻込輪243を含む搬送装置24に対して前後方向に略水平に所定の移動量だけ移動されるとともに、その移動先の任意位置で保持される。その結果、切断装置23において、穀稈の切断高さは変更されないまま、穀稈の切断タイミングは変更されることとなる。
【0128】
さらに、制御手段6は、図12に示すように、操縦部90の操作具94とも接続される。そして、移動アクチュエータ265が、制御手段6により操縦部90の操作具94の手動操作に応じて、駆動状態が正転方向への駆動と、逆転方向への駆動と、停止とのいずれかの状態となるように適宜に駆動制御可能とされる。この操作具94の手動操作に基づく、制御手段6による移動アクチュエータ265の駆動制御は、車速検出手段12にて検出された車速による駆動制御が停止された状態で行われる。
【0129】
また、このような切断装置23において、切断刃231は、たとえば、次のような固定手段により駆動ケース234側からではなくその切断刃231を挟んだ反対側から回転駆動軸238に対して着脱可能に固定される。この固定手段には、図13に示すように、複数のボルト281や、ナット282や、固定盤283などが備えられる。なお、補助切断刃232は、切断刃231と同様に固定される。
【0130】
固定盤283は、切断刃231の中心部に備えられる固定部と同程度の径をもって円盤形状に形成される。この固定盤283は、側面視で回転駆動軸238の軸心方向に対し直交するように配置され、中心部で回転駆動軸238の先端部に固定される。
【0131】
複数のボルト281は、固定盤283の回転駆動軸238との固定部の周囲において、固定盤283の下面側に配置され、固定盤283の回転中心に対し周方向に所定間隔ごとに固設される。各ボルト281は、頭部を固定盤283と溶接などで固定させる一方、ねじ部を固定盤283に貫通させるように、切断刃231側から上方へ突出される。
【0132】
また、この固定手段が用いられる場合、切断刃231の固定部には、これらのボルト281と同数のボルト挿通孔が、切断刃231の回転中心に対し周方向に所定間隔ごとに設けられる。
【0133】
そして、切断刃231の固定に際しては、複数のボルト挿通孔を有する切断刃231が、各ボルト挿通孔を固定盤283の対応するボルト281に挿通させて、固定盤283の上に載置される。その後、切断刃231側から突出される各ボルト281のねじ部がナット282のねじ孔と螺合される。これにより、切断刃231がボルト281およびナット282にて固定盤283に複数の箇所で締結され、この固定盤283を介して回転駆動軸238に固定される。
【0134】
一方、切断刃231の取外に際しては、切断刃231がボルト281およびナット282にて固定盤283を介して回転駆動軸238に固定された状態で、各ナット282が緩められて外される。これにより、切断刃231と固定盤283との締結が解除され、切断刃231が回転駆動軸238から取外可能とされる。こうして、切断刃231は固定手段により駆動ケース234側からではなくその切断刃231を挟んだ反対側から回転駆動軸238に対して着脱可能に固定される。
【0135】
前述のように、切断装置23に移動手段250を備える構成においては、駆動ケース234は、図14に示すように、その左右両側における移動手段250の第一リンク261との連結を解除された場合に、移動手段250の左右の第二リンク262と、駆動アクチュエータ233または駆動ケース234の第三延出部234dとを連結する第三支軸273回りに回動可能となる。つまり、切断刃231も、駆動ケース234とともに第三支軸273回りに回動可能となる。
【0136】
これにより、切断刃231を駆動ケース234とともに第三支軸273回りに図14における時計回り方向に回動させることによって、前記固定手段などを用いて固定される切断刃231の着脱作業を、切断装置23の上方からではなく前方から行うことが可能となる。よって、切断刃231の上方に位置する刈取フレーム110や搬送装置24の掻込輪243が着脱作業の邪魔にならなくなるため、切断刃231の着脱作業を円滑に行うことができる。
【0137】
以上のように、コンバイン1は、穀稈を引き起こす引起装置22と、引起装置22により引き起こされた穀稈を切断する切断装置23と、引起装置22により引き起こされた穀稈および切断装置23により切断された穀稈を脱穀部30側へ搬送する搬送装置24とを備えた刈取部20を有するものであって、切断装置23は、穀稈を株元側で切断する複数の円盤形状の切断刃231と、複数の切断刃231を回転駆動させる駆動アクチュエータ233と、複数の切断刃231と駆動アクチュエータ233とを支持して、これらを内部に有する伝動機構を介して連動連結する駆動ケース234と、駆動ケース234を刈取部本体となる刈取フレーム110に対して引起装置22側または脱穀部30側、即ち前方または後方に移動可能とするとともに、この刈取フレーム110に対して移動先の任意位置に保持可能とする移動手段250とを備えるものとされる。
【0138】
これにより、切断装置23では、複数の切断刃231および補助切断刃232を移動手段250にて駆動ケース234とともに刈取フレーム110に対して前方または後方に移動させ、その移動先の任意位置で保持することが可能となる。そのため、複数の切断刃231および補助切断刃232の前後方向での位置を変更して、穀稈の切断タイミングを変更することが可能となる。したがって、刈取部20において、切断装置23での穀稈の切断タイミングを刈取作業の状況に応じて適切に調節して、穀稈の切断時に、刈取フレーム110上の搬送装置24による穀稈の搬送を円滑に行うことができる。
【0139】
具体的には、刈取部20において、刈取作業の状況に応じて、たとえば、刈取作業時の車速が高速とされる場合には、複数の切断刃231および補助切断刃232が前方へ移動されて、切断装置23での穀稈の切断タイミングが早くなるように調節される。よって、穀稈が切断された後、即座に搬送装置24の掻込輪243に取り込まれることになるため、穀稈の搬送を円滑に行うことができる。また、刈取作業時の車速が低速とされる場合には、複数の切断刃231および補助切断刃232が後方へ移動されて、切断装置23での穀稈の切断タイミングが遅くなるように調節される。よって、穀稈が掻込輪243にて掻き込まれながら切断されることになり、切断後の穀稈を脱落させないように、穀稈の搬送を円滑に行うことができる。
【0140】
また、コンバイン1は、駆動ケース234を移動可能かつ保持可能とする移動アクチュエータ265を、移動手段250に含むとともに、車速を検出する車速検出手段12と、移動アクチュエータ265の駆動制御を行う制御手段6とを備え、制御手段6は、車速検出手段12にて検出された車速に応じて、駆動ケース234が引起装置側または脱穀部側、即ち前方または後方に所定の移動量だけ移動されてその移動先の任意位置に保持されるように、移動アクチュエータ265の駆動制御を行うものとされる。
【0141】
これにより、刈取部20の切断装置23において、コンバイン1の走行時の車速に応じて、複数の切断刃231および補助切断刃232を移動手段250にて駆動ケース234とともに刈取フレーム110に対して前方または後方に移動させ、その移動先の任意位置で保持することが可能となる。そのため、複数の切断刃231および補助切断刃232の前後方向での位置を自動的に変更して、穀稈の切断タイミングを変更することが可能となる。したがって、刈取部20において、車速の増速または減速に応じて、切断装置23での穀稈の切断タイミングを随時適切に調節して、穀稈の切断時に、刈取フレーム110上の搬送装置による穀稈の搬送を円滑に行うことができる。
【0142】
具体的には、刈取部20において、車速が増速するに従って複数の切断刃231および補助切断刃232が前方へ移動されて、切断装置23での穀稈の切断タイミングが早くなるように調節される。よって、穀稈が切断された後、即座に搬送装置24の掻込輪243に取り込まれることになるため、穀稈の搬送を円滑に行うことができる。また、車速が減速するに従って複数の切断刃231および補助切断刃232が後方へ移動されて、切断装置23での穀稈の切断タイミングが遅くなるように調節される。よって、穀稈が掻込輪243にて掻き込まれながら切断されることになり、切断後の穀稈を脱落させないように、穀稈の搬送を円滑に行うことができる。
【0143】
また、コンバイン1は、移動手段250は、複数の切断刃231および補助切断刃232を略水平に移動させるように構成するものとされる。
【0144】
これにより、刈取部20の切断装置23において、穀稈の切断タイミングを調節するために、複数の切断刃231および補助切断刃232の位置を移動手段250にて変更した場合でも、穀稈を変更前の切断高さで、即ち一定の切断高さで切断することが可能となる。したがって、穀稈を切断装置23で安定的に切断して、搬送装置24で円滑に搬送することができる。また、圃場での穀稈の刈り跡をきれいなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の一実施形態に係る刈取部を有するコンバインの全体構成を示す左側面図。
【図2】刈取部の構成を示す左側面図。
【図3】刈取部の構成を示す平面図。
【図4】切断装置の構成を示す左側面図。
【図5】切断装置の構成を示す図4におけるA矢視図。
【図6】切断装置の駆動系の構成を示す一部断面側面図。
【図7】切断装置の駆動系の構成を示す図6におけるB矢視一部断面図。
【図8】切断刃が最後位置にある場合における切断装置の構成を示す右側面図。
【図9】切断装置の右側部分の構成を示す図8におけるC矢視一部断面図。
【図10】切断刃が最前位置にある場合における切断装置の構成を示す右側面図。
【図11】保持部材の構成を示す右側面図。(a)ガイドからなる場合の図。(b)移動アクチュエータからなる場合の図。
【図12】移動手段の移動アクチュエータの制御機構を示すブロック図。
【図13】固定手段による切断刃の固定構造の構成を示す断面図。
【図14】回動した状態の切断装置の構成を示す右側面図。
【符号の説明】
【0146】
1 コンバイン
6 制御手段
12 車速検出手段
20 刈取部
21 分草具
22 引起装置
23 切断装置
24 搬送装置
30 脱穀部
231 切断刃
231A 第一切断刃
231B 第二切断刃
231C 第三切断刃
231D 第四切断刃
232 補助切断刃
233 駆動アクチュエータ
234 駆動ケース
243 掻込輪
250 移動手段
265 移動アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を引き起こす引起装置と、
前記引起装置により引き起こされた穀稈を切断する切断装置と、
前記引起装置により引き起こされた穀稈および前記切断装置により切断された穀稈を脱穀部側へ搬送する搬送装置とを備えた刈取部を有するコンバインであって、
前記切断装置は、
穀稈を株元側で切断する複数の円盤形状の切断刃と、
前記複数の切断刃を回転駆動させる駆動アクチュエータと、
前記複数の切断刃と前記駆動アクチュエータとを支持して、これらを内部に有する伝動機構を介して連動連結する駆動ケースと、
前記駆動ケースを刈取部本体に対して前記引起装置側または前記脱穀部側に移動可能に支持するとともに、この刈取部本体に対して移動先の任意位置に保持可能とする移動手段とを備える、コンバイン。
【請求項2】
前記駆動ケースを移動可能かつ保持可能とする移動アクチュエータを、前記移動手段に含むとともに、
車速を検出する車速検出手段と、
前記移動アクチュエータの駆動制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記車速検出手段にて検出された車速に応じて、前記駆動ケースが前記引起装置側または前記脱穀部側に所定の移動量だけ移動されてその移動先の任意位置に保持されるように、前記移動アクチュエータの駆動制御を行う、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記移動手段は、前記駆動ケースを略水平に移動させるように構成する、請求項1または請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−22276(P2010−22276A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187743(P2008−187743)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】