説明

コンバイン

【課題】脱穀処理量が増加した場合でも漏下の促進を図ることができるコンバインを提供する。
【解決手段】脱穀部4内には、穀粒等の処理物を漏下させる漏下口75の開口度合いを調整するための可動式受網54が配設されている。可動式受網54は、排藁量検出手段61と機械的に接続されており、漏下口75の開閉動作を排藁量検出手段61による検出結果に連動させている。脱穀処理量が少ない場合には可動式受網54は閉姿勢を採って受網の面積を大きくして脱穀効率を向上させ、一方、脱穀処理量が大きい場合には可動式受網54は開姿勢を採って漏下口75を形成して当該漏下口75から穀粒等の処理物を選別部60へ漏下させて穀粒の回収効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀部における扱胴周辺の受網端部を開閉可能としたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの脱穀部においては、扱胴により扱室に搬入された穀稈の穂先部を一定方向に回転しながら脱穀するように構成されており、かかる扱胴の周面下半部には湾曲状の受網を張設したものがある。そして、かかる受網の終端部には処理物を下方の選別部に排出する排出口が設けられていると共に、前記扱胴の回転方向下手側に位置する枠部にも、前記扱胴の回転による脱穀処理で得られた処理物の漏下を許容する漏下孔を形成したものがある。このようにして、大量の処理物を受網のメッシュを大きくすることなく漏下容量を大きくすることができるようにして、処理物の漏下処理を促進させることができるようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−193910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したコンバインの脱穀部の処理構造においては、扱胴の下半部周囲に張設された受網で脱穀粒を受けて選別部に漏下して選別回収するように構成されていると共に、受網の張設されていない扱胴の上半部外周側には脱穀部天井板が張設されており、扱胴の回転下手側に位置する受網端縁部との境部には漏下孔を形成し、脱穀された穀粒のうち受網や終端の排出口から漏下することができなかった余剰脱穀粒は、扱胴の回転風圧により飛散されて受網の端縁部に位置する漏下孔より扱室外に排出されて選別部に落下するように構成されている。
【0005】
しかし、かかる漏下孔を有する脱穀部の構造においては、漏下孔は常時開放されているため、漏下孔から排出した脱穀粒が扱室内の隅々まで飛散し、円滑に下方の選別部に達しないで脱穀粒が散逸する虞れがあったり、脱穀粒や刺り粒の量によっては常時開放の漏下孔から排出する必要もないのに、わざわざ漏下孔から排出してしまい、受網による選別を経ることなく排藁等が選別部に落下して、選別部の選別負荷が大きくなる等の欠点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、搬入された穀稈の穂先部を一定方向に回転しながら脱穀する扱胴の下方に受網を張設すると共に、当該受網は扱胴の周面下半部に沿わせて湾曲状に配設したコンバインにおいて、前記扱胴の回転方向下手側に位置する前記受網の端縁部近傍に可動式受網体を配設し、当該可動式受網体の下端縁部側を揺動自在とし、前記可動式受網体は、前記下端縁部を前記受網の端縁部と連続状態に配置した閉姿勢と、前記可動式受網体の下端縁部を前記受網の端縁部に不連続状態に配置した開姿勢とに姿勢変更自在となすと共に、開姿勢では穀粒等の処理物を漏下させる漏下口を任意の大きさに調節可能に構成したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1のコンバインにおいて、前記可動式受網体は前記下端縁部を前記受網の端縁部に不連続状態となるように揺動して開姿勢を採るべく構成すると共に、可動式受網体の外側面側には案内体を取り付けて、前記漏下口から漏下する穀粒等の処理物を前記案内体により下方側に案内するようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2のコンバインにおいて、前記可動式受網体の開閉量は排藁量検出手段による検出結果に連動すべく構成することにより、前記漏下口からの穀粒等の処理物の排出量を、検出結果としての排藁量の増加量に比例させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、可動式受網体の開姿勢では、穀粒等の処理物を漏下する漏下口を任意の大きさに調節可能に構成したので、処理物の増減に適応させて適宜漏下口の大きさを調節することで、漏下の促進を十分に図ることができる。ここで、受網から漏下しなかった単粒化穀粒は扱胴の回転に伴って刈取穀稈の株元側に向けて流下し、刈取穀稈の株元側に紛れ込んだまま脱穀処理後の刈取穀稈とともに機外に排出される、といった刺り粒の発生が生じるが、単粒化穀粒を漏下口から漏下させることで刺り粒の発生を抑制することができる。その結果、単粒化穀粒の回収効率をより効果的に向上させることができる。また、可動式受網体の閉姿勢では、受網の面積を増大させ漏下容量を大きくすることができる。
【0011】
また、請求項2に係る発明では、可動式受網体は前記受網に対して変位して前記受網の端縁部近傍で開姿勢を採ることができるように構成すると共に、可動式受網体の外側面側に案内体を取り付けて、前記受網の端縁部近傍の漏下口から漏下する穀粒等の処理物を案内体により下方側に案内するようにしている。
このように、漏下口から漏下する穀粒等の処理物を案内体により下方側に案内するようにしているため、漏下した穀粒等の処理物を網体の下方に配置した選別部にて堅実に選別させることができて、この点からも穀粒の回収効率を向上させることができる。
【0012】
また、請求項3に係る発明では、可動式受網体の開閉動作は排藁量検出手段による検出結果に連動させて、可動式受網体の開姿勢での漏下口の調節量を排藁量の増加量に比例させている。
このように、可動式受網体の開姿勢での漏下口の調節量を排藁量の増加量の検出結果に基づいた調節により設定することで、処理物の量に適応した堅実な漏下の促進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るコンバインの側面図である。
【図2】図1のコンバインの平面図である。
【図3】脱穀部及びその周辺の部材の動力伝達図である。
【図4】脱穀部の正面図と、連動機構及び排藁量検出手段の側面図である。
【図5】可動式受網、案内体、及び可動機構の拡大斜視図である。
【図6】脱穀部の正面図と、連動機構及び排藁量検出手段の側面図である。
【図7】脱穀部の正面図と、連動機構及び排藁量検出手段の側面図である。
【図8】脱穀部の正面図と、連動機構及び排藁量検出手段の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係るコンバインについて図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0015】
[1.コンバインの全体構成]
まず、本実施形態に係るコンバインの全体構成について説明する。図1はコンバインの側面図、図2はコンバインの平面図、図3は脱穀部及びその周辺の部材の動力伝達図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態のコンバインAは、左右走行クローラ2を装設するトラックフレーム1と、トラックフレーム1上に架設する機台3と、フィードチェン5を左側に張架し扱胴41及び処理胴22を内蔵する脱穀部4と、前記脱穀部4の前方に備える4条刈りの刈取部7と、排藁チェン9の終端を臨ませる排藁カッタ8と、脱穀部4からの穀粒を一番コンベア18及び揚穀筒11を介して搬入する穀物タンク10と、穀物タンク10の穀粒を機外に排出する排出オーガ12と、操向ハンドルなど運転操作部14及び運転席15を備える運転キャビン13と、運転キャビン13下方に設けるエンジン16とを備え、圃場を走行移動しながら穀稈を刈取部7で連続的に刈取り、脱穀部4で脱穀するように構成している。
【0017】
また、コンバインAは、前述の扱胴41及び処理胴22の他に、扱胴41の下方に落下する脱粒物を選別する選別部60と穀粒中の粉塵を除去する選別風を供給する唐箕ファン21を備えている。そして、選別部60の下方側には、選別部60によって選別された穀粒(一番物)を取り出す一番コンベア18と、枝梗付き穀粒等(二番物)を取り出す二番コンベア19とが設けられている。また、選別部60は、扱胴41の下方に張設された受網42から漏下した脱穀物が不図示のフィードパン及びチャフシーブ等によって揺動選別されるように構成している。そして、選別部60のグレンシーブ(不図示)から落下した穀粒等は、唐箕ファン21からの選別風によって粉塵が除去され、一番コンベア18と二番コンベア19へと落下する。
【0018】
一番コンベア18の右側端には上下方向に延びる揚穀筒11の下端が連通接続されており、該一番コンベア18から取り出された穀粒が、該揚穀筒11を介して穀物タンク10へと搬入される。一方、二番コンベア19の終端は、還元筒20を介して選別部60のフィードパンの上面側に連通接続されており、二番物を選別部60のフィードパンの上面側に戻して再選別できるように構成している。
【0019】
また、フィードチェン5の後端側には排藁チェン9が配設され、当該フィードチェン5の後端側から排藁チェン9に受け継がれた排藁は、機体後方側に設けた排藁カッタ8にて適宜長さに短く切断されたのち、コンバインAの機体後方下方に排出されるように構成している。
【0020】
また、排藁チェン9周辺には、後述の排藁量検出手段61及び連動機構62が配設され、後述の可動式受網54の開閉量を排藁量検出手段61による検出結果に連動させている。
なお、図1及び図2に示したコンバインの外観については、単なる一例である。
【0021】
[2.動力伝達系統]
次に、脱穀部4及びその周辺の部材の動力伝達系統について図面を参照しつつ説明する。
図3に示すように、エンジン16の駆動力は、該エンジン16に突設された出力軸40を介して脱穀部4の方向に分岐して伝達される。
【0022】
エンジン16の出力軸40からの分岐動力は、脱穀クラッチ47を介して唐箕ファン21の唐箕軸48へと伝達され、当該唐箕軸48から2つの方向に分岐して動力伝達される。すなわち、唐箕軸48の動力の一方は一番コンベア18と二番コンベア19と排藁カッタ8とへと分岐して伝達され、他方は脱穀入力軸49を介して扱胴41と処理胴22とフィードチェン5とへと分岐して伝達される。
【0023】
脱穀入力軸49からの分岐動力は刈取変速機構56へと伝達され、その分岐動力が揺動駆動軸57及びフィードチェン5の駆動スプロケット93を経てフィードチェン5の前端部へと伝達される。
【0024】
一方、脱穀入力軸49からの分岐動力は扱胴軸58に伝達され、扱胴41を貫通した扱胴軸58の終端部に伝達された動力は、排藁駆動軸59を介して排藁チェン9の駆動ギア23へと伝達される。
【0025】
[3.脱穀部の具体的構成]
次に、脱穀部4の具体的な構成について図面を参照しつつ説明する。
図4に示すように、脱穀部4に設けられた扱室25には、コンバインAの機体前後方向に略水平に扱胴軸58と、当該扱胴軸58を中心にして穂先方向に回転する扱胴41が配設されている。
そして、扱胴41の下半部外周側には網目状の扱胴41が湾曲状に張設される一方、受網42の張設されていない扱胴41の上半部外周側には脱穀部天井板43とガイド体39が張設され、さらに、扱胴41の回転下手側に位置する受網42とガイド体39との境部には、受網42に対して変位自在であって漏下口75を開閉する可動式受網54が配設されている。
図中、44は穀稈の穂先をそろえる整そ歯であり扱胴41の最前方に突設している。また、45及び46はそれぞれ並歯及び補強歯であり扱胴41の前部から後端にわたって略螺旋状に突設し、脱粒すると同時にこなし処理を行う。
【0026】
また、可動式受網54の外側面側に、側面視略逆U字状の案内体53を一体に連設し、当該案内体53は略逆U字状の凹部で一旦扱胴41からの処理物を受け止めてそのまま下方の選別部60に落下案内するように構成している。
【0027】
案内体53は、前後方向の長さを可動式受網54と等しくし、右側端部を可動式受網54の前後左端縁部に連設している。このように構成することにより、可動式受網54が漏下口75を開放した状態では、漏下口75から排出された脱穀粒を案内体53の略逆U字状の凹部で一旦受け止めて扱室25に散逸させることなく選別部60に落下させることができる。
また、図4に示すように、可動式受網54が漏下口75を閉塞している状態では、案内体53は扱室25の外側方に位置して脱穀粒を受け止める機能を果たさない。
そして、可動式受網54がガイド体39の上方に移動するにつれて、漏下口75が徐々に開口していき、可動式受網54が完全に漏下口75から離反したときに、漏下口75は完全に開口される(図6参照)。漏下口75から排出された脱穀粒は案内体53の略逆U字状の凹部で一旦受け止められて選別部60に落下される。
かかる可動式受網54は、案内体53と一体で後述の可動機構50を介して変位可能となっている。
【0028】
すなわち、可動機構50は、扱胴41の回転軸線と略平行して両端を脱穀部4の前後壁に枢着した支軸51と、当該支軸51に回転自在に枢支したブラケット52とから構成されている。ブラケット52は、底辺が円弧状の略三角形状の形状を有し、その底辺部分が案内体53の両端上部に固設されている。このように構成することにより、ブラケット52と案内体53と可動式受網54とは一体として支軸51を中心に揺動する。
【0029】
更に、ブラケット52には後述の連動機構62の一部をなすインナワイヤ端部68aが固設されている。このように構成することにより、可動機構50は、連動機構62を介して後述の排藁量検出手段61と連動連結している。
【0030】
また、図4に示すように、脱穀部4の左壁面とブラケット52との間には、引っ張りバネ55が配設され、ブラケット52を脱穀部4の左壁面側に付勢している。この状態では、可動式受網54は漏下口75を閉塞して、可動式受網54の下端縁部が受網42の上端縁部と連続状態に配置される閉姿勢を採る。
【0031】
また、可動式受網54の表面は、受網42と同様に網目状に構成されているので、可動式受網54が閉姿勢を採っている場合は、脱穀された処理物が可動式受網54を通過して選別部60に落下する。すなわち、可動式受網54が閉姿勢を採っている状態では、受網42及び可動式受網54が連続状態に配置されることで、受網全体の面積を増大させ漏下容量を大きくすることができ、脱穀効率を向上させることができる。
【0032】
一方、図6に示すように、ブラケット52が引っ張りバネ55の力に抗して扱胴41側へ引っ張られると、可動式受網54が受網42に対して変位して、受網42の端縁部付近に漏下口75を形成する開姿勢を採る。
【0033】
可動式受網54が開姿勢を採っている状態では、受網42の上端縁部と可動式受網54の下端縁部との間に形成された漏下口75から穀粒等の処理物を漏下させる。このとき、図6に示すように、案内体53により処理物を下方側に案内するようにしているため、漏下した穀粒等の処理物を受網42の下方に配置した選別部60にて堅実に選別させることができ、穀粒の回収効率を向上させることができる。また、図6に示すように、可動式受網54が開姿勢を採っている状態でも可動式受網54と扱胴41とが接触しないため、開姿勢の可動式受網54が扱胴41の回転を妨げることがない。
【0034】
[4.排藁量検出手段及び連動機構の具体的構成]
次に、漏下口75の開口度合いを調整するための排藁量検出手段61及び連動機構62について説明する。図4に示すように、排藁量検出手段61及び連動機構62は、排藁チェン9の周辺に設けられている。
【0035】
まず、排藁量検出手段61について説明する。
排藁量検出手段61は、図4に示すように、排藁チェン9の下方に位置し排藁を挟持するための挟扼杆31と、当該挟扼杆31の下方に位置する固定板32と、挟扼杆31及び固定板32の間に介設され挟扼杆31を排藁チェン9側に上向き付勢するスプリング33と、挟扼杆31に垂設した検出棒34とによりなる。
【0036】
そして、排藁チェン9によって搬送される排藁量が増加すると、排藁30はスプリング33の力に抗して挟扼杆31を検出棒34と一体に下方に押し下げる。一方、排藁チェン9によって搬送される排藁量が減少すると、スプリング33は挟扼杆31を検出棒34と一体に上方に押し上げる。そして、検出棒34とブラケット52とを連動機構62を介して連結することにより、検出棒34の上下運動と可動式受網54による漏下口75の開閉動作とを連動させている。
【0037】
次に、連動機構62について説明する。
連動機構62は、基端部が検出棒34の下端部に当接可能な検出板35と、コンバインAの機体内部に回動自在に枢支され検出板35の先端部を固設した回動軸36と、基端部を回動軸36に固設した検出アーム37と、検出アーム37に連結したワイヤ72とよりなる。
【0038】
ワイヤ72は、アウタワイヤ73と、当該アウタワイヤ73中を移動自在に挿通したインナワイヤ74とによって構成されており、アウタワイヤ73の一端は排藁チェン9周辺に配設されたアウタワイヤ受け片81により支持され、他端は扱室25内に配設されたアウタワイヤ受け片82により支持されている。また、インナワイヤ74の一端に設けたワイヤ端部68bが検出アーム37の先端部に固設され、他端に設けたインナワイヤ端部68aがブラケット52に固設されている。図中、77はインナワイヤ74を被覆する伸縮自在の被覆体である。
また、排藁チェン9によって搬送される排藁量が所定量以上となった場合に、検出棒34が検出板35に当接するように構成されている。
【0039】
したがって、排藁チェン9によって搬送される排藁量が所定量以上になった場合、検出棒34が検出板35に当接することで検出板35および検出アーム37が回動し、インナワイヤ74が後方に引っ張られる。そして、インナワイヤ74の引っ張り操作を介してブラケット52が扱胴41側に揺動することにより、可動式受網54が変位して受網42の端縁部近傍で漏下口75を形成する開姿勢を採る。
また、排藁量が増大するにつれて検出棒34の下方移動量が増大するので、漏下口75の開口度合いを排藁量の増加量に比例させることができ、その結果、漏下口75からの穀粒等の処理物の排出量を、検出結果としての排藁量の増加量に比例させることができる。
【0040】
また、排藁チェン9によって搬送される排藁量が減少して検出棒34が上方に移動すれば、前述の動作とは反対の動作により、ブラケット52を扱胴41側に引っ張る力が弱まり、引っ張りバネ55の作用により可動式受網54は脱穀部4の左壁面側に変位して、漏下口75の開口度合いが小さくなる。
そして、排藁チェン9によって搬送される排藁量がさらに減少して所定量未満になれば、ブラケット52を扱胴41側に引っ張る力がなくなり、可動式受網54は閉姿勢を採る(図4参照)。
【0041】
なお、本実施形態では、排藁チェン9によって搬送される排藁量より脱穀処理量を検知するよう構成しているが、脱穀処理量の検知方法はこれに限定されるものではなく、例えば、フィードチェン5によって搬送される穀稈の量や、選別部60での処理量を検知することで脱穀処理量を検知できるように構成することもできる。
【0042】
以上説明したとおり、本実施形態では、脱穀処理量が少ない場合には可動式受網54は閉姿勢を採って受網の面積を大きくして脱穀効率を向上させ、一方、脱穀処理量が大きい場合には可動式受網54は開姿勢を採って漏下口75を形成して当該漏下口75から穀粒等の処理物を選別部60へ漏下させて穀粒の回収効率を向上させることができる。また、本実施形態では、漏下口75の開口度合いを大きく形成して穀粒の回収効率を大きく向上させることができ、しかも、開姿勢であっても可動式受網54は扱胴41に接触しないため、開姿勢の可動式受網54が扱胴41の回転を妨げることがない。
【0043】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、前述の実施形態と同じ部材については、同じ符号を用いて説明する。
【0044】
図7に示すように、可動式受網84及び案内体83が、それぞれ前述の第1実施形態の可動式受網54及び案内体53と異なる。
可動式受網84と案内体83とは側面視略逆U字状に形成されており、その中央部分を扱胴41の脱穀部天井板43近傍に枢着しており、可動式受網84が漏下口76を閉塞した状態では、略逆U字状の一方の辺を構成する案内体83は扱室25外方に位置しており、中央部分の脱穀部天井板43近傍の枢着部を中心にして下方に回動すれば、可動式受網84は漏下口76から扱室25内に進入して漏下口76を開放し、同時に案内体83は漏下口76の上方を覆いつつ略逆U字状の空間は漏下口76から扱胴41の外側方に略逆U字状の脱穀粒の排出経路を構成する。
【0045】
また、図7に示すように、可動式受網84が漏下口75を閉塞している状態では、案内体83は脱穀粒を受け止める機能を果たさない。そして、可動式受網84が扱室25内に進入するにつれて、漏下口76が徐々に開口していき、可動式受網84の進入量が一定量に達すると可動式受網84は停止し、漏下口76の開口度合いが最も大きくなる(図8参照)。漏下口76から排出された脱穀粒は案内体83の略逆U字状の凹部で一旦受け止められて選別部60に落下される。
かかる可動式受網84は、案内体83と一体で後述の可動機構90を介して変位可能となっている。
【0046】
すなわち、可動機構90は、扱胴41の回転軸線と略平行して両端を扱室25の前後壁に枢着した支軸51と、当該支軸51により回転自在に枢支したブラケット92とから構成されている。また、ブラケット92は、可動式受網84の上部に突設している。このように構成することにより、ブラケット92と案内体83と可動式受網84とは、一体として支軸51を中心に揺動する。
【0047】
更に、当該ブラケット92には連動機構62の一部をなすインナワイヤ端部68aが固設されている。このように構成することにより、可動機構90は、連動機構62を介して後述の排藁量検出手段61と連動連結している。
【0048】
また、図7に示すように、脱穀部4の左壁面と案内体83との間には、引っ張りバネ85が配設され、ブラケット92を脱穀部4の左壁面側に付勢している。この状態では、可動式受網84は漏下口76を閉じて、可動式受網84の下端縁部が受網42の上端縁部と連続状態に配置される閉姿勢を採る。
【0049】
また、可動式受網84の表面は、受網42と同様に網目状に構成されているので、可動式受網84が閉姿勢を採っている場合、脱穀された処理物が可動式受網84を通過して選別部60に落下する。すなわち、可動式受網84が閉姿勢を採っている状態では、受網42及び可動式受網84が連続状態に配置されることで、受網全体の面積を増大させ漏下容量を大きくすることができ、脱穀効率を向上させることができる。
【0050】
一方、図8に示すように、ブラケット92が引っ張りバネ85の力に抗して扱胴41側へ引っ張られると、可動式受網84が受網42に対して変位して、受網42の端縁部付近に漏下口76を形成する開姿勢を採る。
【0051】
可動式受網84が開姿勢を採っている状態では、受網42の上端縁部と可動式受網84の下端縁部との間に形成された漏下口76から穀粒等の処理物が漏下させる。このとき、図8に示すように、案内体83により処理物を下方側に案内するようにしているため、漏下した穀粒等の処理物を受網42の下方に配置した選別部60にて堅実に選別させることができ、穀粒の回収効率を向上させることができる。
【0052】
また、図8に示すように、可動式受網84が開姿勢を採る場合には、可動式受網84の先端部分が整そ歯44等に接触するため、可動式受網84の先端部分を、扱胴41の回転を許容しつつ扱胴41と可動式受網84間の空間を遮蔽できる部材で構成する必要があり、例えば、無数の起毛が植設された所謂ブラシや、ゴム製シートなどの軟質シートに先端側から複数の切り目が形成された易変形体や、厚手のゴム製シートなどの軟質部材などを用いることができる。
このように構成することにより、扱胴41の回転を許容しつつ、処理物を漏下口76から漏下させることができる。
【0053】
以上説明したとおり、本実施形態では、脱穀処理量が少ない場合には可動式受網84は閉姿勢を採って受網の面積を増大させ漏下容量を大きくして脱穀効率を向上させ、一方、脱穀処理量が大きい場合には可動式受網84は開姿勢を採って漏下口76を形成して当該漏下口76から穀粒等の処理物を選別部60へ漏下させて穀粒の回収効率を向上させることができる。また、扱胴41の左端部から脱穀部4の左壁面までの距離を短くすることでき、その結果、脱穀部4を小さくすることができる。
【0054】
本発明に係る実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
A…コンバイン
41…扱胴、42…受網、50…可動機構、53…案内体、54…可動式受網、75…漏下口、
90…可動機構、83…案内体、84…可動式受網、76…漏下口
61…排藁量検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入された穀稈の穂先部を一定方向に回転しながら脱穀する扱胴の下方に受網を張設すると共に、当該受網は扱胴の周面下半部に沿わせて湾曲状に配設したコンバインにおいて、
前記扱胴の回転方向下手側に位置する前記受網の端縁部近傍に可動式受網体を配設し、当該可動式受網体の下端縁部側を揺動自在とし、
前記可動式受網体は、前記下端縁部を前記受網の端縁部と連続状態に配置した閉姿勢と、前記可動式受網体の下端縁部を前記受網の端縁部に不連続状態に配置した開姿勢とに姿勢変更自在となすと共に、前記開姿勢では穀粒等の処理物を漏下させる漏下口を任意の大きさに調節可能に構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記可動式受網体は前記下端縁部を前記受網の端縁部に不連続状態となるように揺動して開姿勢を採るべく構成すると共に、可動式受網体の外側面側には案内体を取り付けて、前記漏下口から漏下する穀粒等の処理物を前記案内体により下方側に案内するようにしたことを特徴とする請求項1のコンバイン。
【請求項3】
前記可動式受網体の開閉量は排藁量検出手段による検出結果に連動すべく構成することにより、前記漏下口からの穀粒等の処理物の排出量を、検出結果としての排藁量の増加量に比例させたことを特徴とする請求項1又は2のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−273567(P2010−273567A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126798(P2009−126798)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】