説明

コンバイン

【課題】手扱穀稈をガイド部材の棒状部材上に載置して行う手扱作業の簡易化を図ることができるコンバインを提供する
【解決手段】刈取作業時に刈取部3の搬送装置30から搬送される刈取穀稈をガイド部材100により脱穀部4のフィードチェン60に案内するものであり、ガイド部材100はフィードチェン60の搬送始端部60aに沿って配置される棒状部材40と、棒状部材40を回動自在に支持する支持機構50とを備え、手扱作業時に棒状部材40上に手扱穀稈が載置されることにより、棒状部材40を、刈取部3からの刈取穀稈を案内することが可能な刈取作業位置から前記手扱穀稈をフィードチェン60に作用させることが可能な手扱作業位置まで、前記手扱穀稈の量に応じてフィードチェン60の搬送始端部60aに沿って刈取部3側へ移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部の搬送装置から搬送される刈取穀稈をガイド部材により脱穀部のフィードチェンに案内するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインにおいては、刈取部で穀稈を刈り取ったあと、その刈取穀稈を穂先搬送装置や縦搬送装置等からなる搬送装置により脱穀部に搬送して扱胴で脱穀する脱穀作業に加えて、手作業で穀稈を刈り取ったあと、その手扱穀稈をフィードチェンに人為的に作用させて扱胴で脱穀する手扱作業を行うことが可能となっている。このようなコンバインには、刈取穀稈の株元部を刈取部の搬送装置から脱穀部のフィードチェンに案内するガイド部材が備えられている。
【0003】
例えば、特許文献1のコンバインにおいて、ガイド部材は、挟扼レール(挟扼杆)の下側に対設するフィードチェンの始端部を前方に延出し、その延出部上に縦搬送装置の終端側から棒状部材(穀稈押え棒)を延設し、棒状部材を前後方向に出退自在にして挟扼レールの始端部に近付く状態となる刈取作業位置と、始端部から遠ざかる状態となる手扱作業位置とに切替可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−107780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のコンバインにおいて、ガイド部材におけるフィードチェンの手扱作業位置は、フィードチェンに対して固定された位置となっているため、手扱作業を行うために手扱穀稈を棒状部材上に載置する際、その手扱穀稈の量を棒状部材の手扱作業位置にあわせて適切な載置量となるように調整しなければならなかった。また、操作レバーを用いて、棒状部材を刈取作業位置と、手扱作業位置とに切り替えるようになっているため、手扱作業時に、棒状部材を刈取作業位置から手扱作業位置まで人為的に移動させなければならなかった。
【0006】
そこで本発明は、手扱穀稈をガイド部材の棒状部材上に載置して行う手扱作業の簡易化を図ることができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明に係るコンバインは、刈取作業時に刈取部の搬送装置から搬送される刈取穀稈をガイド部材により脱穀部のフィードチェンに案内するコンバインにおいて、前記ガイド部材は、前記フィードチェンの搬送始端部に沿って配置される棒状部材と、前記棒状部材を回動自在に支持する支持機構とを備え、手扱作業時に前記棒状部材上に手扱穀稈が載置されることによって、前記棒状部材を、前記刈取部からの刈取穀稈を案内することが可能な刈取作業位置から、前記手扱穀稈を前記フィードチェンに作用させることが可能な手扱作業位置まで、前記手扱穀稈の量に応じて、前記フィードチェンの搬送始端部に沿って前記刈取部側へ移動させるものである。
【0009】
第2の発明に係るコンバインは、第1の発明に係るコンバインにおいて、前記ガイド部材は、前記棒状部材を前記刈取作業位置まで回動するように付勢する付勢部材を備えるものである。
【0010】
第3の発明に係るコンバインは、第2の発明に係るコンバインにおいて、前記ガイド部材は、前記付勢部材による前記棒状部材の回動を規制する規制部材を備え、前記規制部材により前記棒状部材の回動が規制されたとき、前記棒状部材を前記刈取作業位置に位置させて保持するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
第1の発明においては、手扱穀稈がガイド部材の棒状部材上に載置されたとき、この手扱穀稈の重みで棒状部材が回動して、刈取作業位置から手扱作業位置まで、棒状部材上の手扱穀稈の量に応じてフィードチェンとの相対距離を変えながら移動することとなる。したがって、手扱穀稈を棒状部材上に載置して手扱作業を行うとき、棒状部材の手扱作業位置がその手扱穀稈の量に応じて適切な位置に変わり、手扱穀稈の量を棒状部材のフィードチェンに対して固定された手扱作業位置にあわせて調整する必要や、棒状部材を刈取作業位置から手扱作業位置まで人為的に移動させる必要がなくなり、手扱作業の簡易化を図ることができる。
【0013】
第2の発明においては、手扱穀稈が棒状部材上に載置されれば、この棒状部材が付勢部材の付勢力に抗して適切な手扱作業位置まで回動する一方、手扱穀稈が棒状部材上からなくなれば、この棒状部材が付勢部材の付勢力により刈取作業位置まで回動することとなる。したがって、手扱作業が終了したとき、棒状部材を手扱作業位置から刈取作業位置まで人為的に移動させる必要がなくなり、手扱作業の簡易化を図ることができる。
【0014】
第3の発明においては、手扱穀稈が棒状部材上からなくなれば、棒状部材が付勢部材の付勢力により回動して、その回動を規制部材により規制されると同時に、棒状部材が刈取作業位置に保持されることとなる。したがって、棒状部材を刈取作業位置に容易かつ確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの全体的な構成を示す側面図。
【図2】刈取部の側面図。
【図3】支持機構の平面図。
【図4】支持機構の背面図。
【図5】支持機構の側面図。(a)手扱作業開始時の状態を示す図。(b)手扱作業時の状態を示す図。
【図6】通常刈取作業時における支持機構の側面図。
【図7】手扱作業時における支持機構の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、コンバイン1の全体的な構成について説明する。
尚、本発明は、実施例に係るコンバイン1に限定されず、刈取部のガイド部材において棒状部材を具備するコンバインに広く適用可能である。また、以下の説明では、コンバイン1の進行方向に対して左側を単に左側とし、コンバイン1の進行方向に対して右側を単に右側とする。
【0017】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、穀粒貯溜部6と、排藁処理部7と、運転部8等から構成させる。
【0018】
走行部2は、機体フレーム9の下部に設けられている。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置10を有する。走行部2は、クローラ式走行装置10が駆動することにより機体を走行させるように構成されている。
【0019】
刈取部3は、機体フレーム9の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草装置11と、引起装置12と、切断装置13と、搬送装置30と、これらの各装置を支持する刈取フレーム14、刈取フレーム14に支持される補助フレーム80(図2)等から構成されている。刈取部3は、分草装置11により圃場の穀稈を分草し、引起装置12により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置13により引き起こし後の穀稈の株元を切断し、搬送装置30により切断後の刈取穀稈を脱穀部4側へ搬送するように構成されている。
【0020】
脱穀部4は、機体フレーム9の左側前部から後部に延設されている。脱穀部4は、フィードチェン60と、図示せぬ扱胴等から構成されている。脱穀部4は、刈取部3から搬送される刈取穀稈を受け継いで、フィードチェン60により排藁処理部7側へ搬送し、搬送中の刈取穀稈を扱胴等により脱穀し、その脱穀物を選別部5へ落下させるように構成されている。
【0021】
選別部5は、機体フレーム9の左側部であって、脱穀部4の下方に設けられている。選別部5は、脱穀部4から落下した脱穀物を揺動選別及び風選別により、一番物(精粒)と、二番物と、藁くずや塵埃等に選別する。そして、選別部5は、選別後の一番物を穀粒貯溜部6へ搬送し、二番物を還元コンベア等により脱穀部4または選別部5の前部へ搬送し、藁くずや塵埃等を外部へ排出する。
【0022】
穀粒貯溜部6は、機体フレーム9の右側後部であって、脱穀部4及び選別部5の右側方に設けられている。穀粒貯溜部6は、穀粒タンク15と、穀粒排出装置16等から構成されている。穀粒貯溜部6は、選別部5から搬送される穀粒を穀粒タンク15に貯溜するとともに、穀粒タンク15に貯溜される穀粒を穀粒排出装置16により外部へ排出可能に構成されている。
【0023】
排藁処理部7は、機体フレーム9の後部であって、脱穀部4の後方に設けられている。排藁処理部7は、図示せぬ排藁搬送装置や排藁切断装置等から構成されている。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送される脱穀済みの刈取穀稈を前記排藁搬送装置で受け継いで排藁として外部へ排出し、又は前記排藁切断装置に搬送して切断した後外部へ排出するように構成されている。
【0024】
運転部8は、機体フレーム9の右側前部であって、刈取部3の搬送装置30の右側方に設けられている。運転部8は、座席17と、ハンドル18と、キャビン19と、図示せぬ操作ペダル及び操作レバー等から構成されている。運転部8は、キャビン19により座席17やハンドル18等が覆われるように構成されている。
【0025】
次に、刈取部3の搬送装置30の構成について説明する。
【0026】
図2に示すように、搬送装置30は、掻込装置31と、株元搬送装置32と、穂先搬送装置33と、縦搬送装置34と、補助搬送装置35等から構成されている。搬送装置30では、切断装置13で切断された刈取穀稈の穂先が穂先搬送装置33により係止されながら搬送され、当該刈取穀稈の株元が株元搬送装置32により挟持されながら後方へ搬送される。そして、刈取穀稈の株元は、株元搬送装置32から縦搬送装置34、補助搬送装置35を介してフィードチェン60へ搬送される。このとき、縦搬送装置34が上下回動されることによって、フィードチェン60(図1)での株元の挟持位置が調節され、脱穀部4(図1)での扱深さが調整される。
【0027】
図3に示すように、補助搬送装置35は、挟扼杆36と、補助搬送チェン37等から構成されている。補助搬送装置35では、縦搬送装置34(図2)の後端部からの刈取穀稈の株元が、挟扼杆36と補助搬送チェン37とで挟扼され、ガイド部材100で案内されながら脱穀部4のフィードチェン60へ搬送される。
【0028】
次に、本発明の要部となるガイド部材100の構成について説明する。
【0029】
図3に示すように、ガイド部材100は、刈取部3(補助搬送装置35)の補助搬送チェン37と、フィードチェン60との間付近に設けられ、補助搬送チェン37の左側方であって、フィードチェン60の搬送始端部60aの前方であって、その上方に配置されている。このガイド部材100には、支持部材51や取付ステー59や支持アーム61を含む支持機構50と、棒状部材40と、付勢部材62と、規制部材63とが備えられている。
【0030】
図3及び図4に示すように、支持機構50において、支持部材51は平板を開口部を下方に向けた正面視略逆U字状に折り曲げて形成されている。支持部材51は、刈取部3の任意箇所に取り付けられ、補助搬送装置35の近傍でこれと左右方向で対向するように配置されている。支持部材51は、右側板51aと、左側板51bと、上板51cとで構成されている。
【0031】
右側板51aと左側板51bは、側面視で互いに重複するように対向配置されている。右側板51a及び左側板51bの前部には、それぞれ第1支持杆52が左右方向に移動可能に貫通支持され、右側板51a及び左側板51bの後部には、それぞれ第2支持杆53が左右方向に移動可能に貫通支持されている。第1支持杆52と第2支持杆53とは、前後方向に所定間隔をとって平行に配置されている。
【0032】
そのうえで、右側板51aと左側板51bとの間において、バネ70が第1支持杆52及び第2支持杆53の各々に外嵌され、このバネ70の付勢力によって第1支持杆52及び第2支持杆53が右方に向かって、補助搬送チェン37に向かって移動するように付勢されている。第1支持杆52及び第2支持杆53の右端部には、挟扼杆36が補助搬送チェン37に沿って略前後方向に延長するように連結されている。
【0033】
こうして、挟扼杆36が、支持部材51に第1支持杆52及び第2支持杆53により補助搬送チェン37に対して近接または離間する方向に移動可能に支持され、補助搬送チェン37とで縦搬送装置34の後端部からの刈取穀稈の株元を挟扼可能とされている。つまり、本実施形態においては、棒状部材40を支持する支持部材51は、挟扼杆36を支持する支持部材と兼用されている。
【0034】
また、上板51cは、右側板51aの上端部と左側板51bの上端部との間に略水平に配置される。この上板51cの前後中央部の上面には、連結体55が設けられている。連結体55は、平板を開口部を上方に向けた側面視略U字状に折り曲げ形成され、刈取フレーム14(図2)から後方に突設された補助フレーム80の後端部下側にステー57・57を介して固定されている。また、上板51cの後部左側には、突出板56が左側方へ突出するように設けられている。
【0035】
取付ステー59は、略板状の部材であり、支持部材51の左側板51bに取り付けられている。取付ステー59は、左側板51bの下端部後側に固定され、ここから下方へ突出されている。
【0036】
支持アーム61は、略板状の部材であり、支持部材51の左側板51bに取付ステー59を介して取り付けられている。支持アーム61は、取付ステー59に回動軸64eを介して回動自在に支持され、この取付ステー59から下方へ向けて突出されている。そして、この支持アーム61の突出端部に棒状部材40の基端部が回動可能に連結されている。
【0037】
本実施形態においては、支持アーム61は、支持部材51側に配置される第1アーム部材64と、棒状部材40側に配置される第2アーム部材65とで構成されている。第1アーム部材64及び第2アーム部材65は、支持アーム61の長手方向の長さを変更することができるように、ボルト等の取付部材66により側面視で直線状に連結されている。
【0038】
なお、支持アーム61は、第1アーム部材64と第2アーム部材65とで構成するように、複数の部材で構成するものに限定するものではなく、単体の部材で構成しても構わない。
【0039】
第1アーム部材64には、第1アーム本体部64aと、アーム連結部64bと、付勢部材取付部64cとが備えられている。第1アーム本体部64aは、その支持部材51側でアーム連結部64bと連結され、その第2アーム部材65側で付勢部材取付部64cと連結されている。
【0040】
アーム連結部64bは、取付ステー59に対向配置されるとともに、回動軸64eを介して取付ステー59に回動自在に支持されている。こうして、第1アーム部材64ひいては支持アーム61が、回動軸挿通孔64dに挿通される回動軸64eを支点として回動可能とされている。また、付勢部材取付部64cは、第1アーム部材64から左側方へ突出されている。
【0041】
第2アーム部材65には、第2アーム本体部65aと、回動支持部65bとが備えられている。第2アーム本体部65aはその棒状部材40側で回動支持部65bと連結されている。回動支持部65bは円筒状に形成され、左右方向に延長されている。
【0042】
図3に示すように、棒状部材40は、補助搬送装置35から搬送されてくる刈取穀稈の株元の搬送姿勢が乱れないように案内するものである。棒状部材40は、前後方向に延設される丸棒状の部材であり、所定の位置で上下方向に適宜湾曲するように、本実施形態においては側面視略「へ」字状に折り曲げ形成されるとともに、前側の基端部40bが後側の先端部40aよりも外側方へ位置するように折り曲げ形成されている。
【0043】
棒状部材40の前側の基端部40bでは、その一部が左右方向に折り曲げられて、支持アーム61における第2アーム部材65の回動支持部65bに回動自在に挿通支持されている。こうして、棒状部材40は、回動支持部65bを支点として回動可能とされている。
【0044】
そして、棒状部材40は、回動支持部65bからフィードチェン60の挟扼レール58(図1)の前下方まで、後方へ向けてフィードチェン60の搬送始端部60aに沿って延出され、後側の先端部40aが当該搬送始端部60aに対向するように配置されている。この棒状部材40の先端部40aは、フィードチェン60の搬送始端部60aに載置可能とされている。
【0045】
そして、棒状部材40は、支持アーム61の回動にともなって回動することで、刈取作業位置、又は手扱作業位置に移動可能となる。ここで、刈取作業位置とは、通常の刈取作業時に刈取部3の補助搬送装置35から搬送されてくる刈取穀稈の株元を脱穀部4のフィードチェン60に案内することが可能な位置をいう。また、手扱作業位置とは、手扱作業時に当該棒状部材40上に載置された手扱穀稈をフィードチェン60に作用させることが可能な位置をいう。
【0046】
付勢部材62は、バネのような弾性部材で構成されている。付勢部材62は支持部材51とその下方に配置される支持アーム61の第1アーム部材64との間に介設され、略上下方向に延長されている。付勢部材62の上端部は支持部材51の突出板56に係止され、付勢部材62の下端部は第1アーム部材64の付勢部材取付部64cに係止されている。
【0047】
規制部材63は、支持部材51における左側板51bの下部に取付ステー59を介して取り付けられ、この左側板51bの後部下方で、且つ左側板51bに沿って延長されている。そして、規制部材63は、支持アーム61が付勢部材62の付勢力によって上方に回動されたとき、下端部が当該支持アーム61における第2アーム部材65の回動支持部65bと当接するように構成されている。
【0048】
次に、棒状部材40の動作態様について説明する。
【0049】
図6に示すように、刈取作業時には、支持アーム61は、付勢部材62の付勢力により回動軸64eを中心に上方向へ回動され、支持アーム61の回動支持部65bの外周面が規制部材63に当接される。こうして、支持アーム61の上方への回動が規制部材63によって規制され、支持アーム61が所定の回動位置に保持される。このとき、棒状部材40は、自重により支持アーム61の回動支持部65bを支点として下方に回動し、先端部40aがフィードチェン60の前上端部、即ち搬送始端部60aに載置された状態となり、刈取作業位置に位置することとなる(図6の実線)。
【0050】
そして、刈取穀稈が補助搬送装置35からフィードチェン60の搬送始端部60aに受け継がれる際、棒状部材40がこの刈取穀稈の株元により持ち上げられる。つまり、棒状部材40は、刈取穀稈の搬送量に応じて回動支持部65bを支点として上方に回動される(図6の破線)。このように、通常刈取作業時においては、棒状部材40は位置固定された支持アーム61の回動支持部65bを支点として上下方向(矢印R1)に回動することとなる。
【0051】
こうして、刈取作業時には、支持アーム61が所定の位置(図6の実線)に保持された状態で、棒状部材40が、補助搬送装置35から矢印A1の流れに沿って搬送されてくる刈取穀稈の量に応じて上下方向(矢印R1方向)へ回動支持部65bを支点として回動し、刈取穀稈の株元がフィードチェン60の搬送始端部60aに受け継がれるように案内することとなる。
【0052】
また、手扱作業の開始前には、棒状部材40は刈取作業位置に保持されている。この状態で、手扱作業が開始され、図7に示すように、手作業で刈り取った手扱穀稈の株元部が矢印F1の流れに沿って上方から棒状部材40の先端部40a上に載置される。その結果、この手扱穀稈の重みにより棒状部材40の先端部40aが下方向に押され、支持アーム61が付勢部材62の付勢力に抗して回動軸64eを中心に下方向(矢印R2方向)へ回動される。
【0053】
この支持アーム61の回動にともなって、棒状部材40は、その先端部40aがフィードチェン60の搬送始端部60aに載置された状態のまま、回動支持部65bを支点として上方向(矢印R3方向)へ回動され、刈取作業位置から適切な手扱作業位置まで刈取部3(図1)側へ向かって前方へ移動される。このときの棒状部材40の移動量は手扱穀稈の重み、即ち棒状部材40の先端部40a上に載置される手扱穀稈の量に応じて変わり、その移動量が大きくなるに従って棒状部材40の先端部40a上に載置された手扱穀稈に対して作用する部分が広くなる。
【0054】
こうして、手扱作業時には、棒状部材40の先端部40aがフィードチェン60の搬送始端部60aに載置された状態で、棒状部材40が、その先端部40aに載置された手扱穀稈の量に応じてフィードチェン60の搬送始端部60aに沿って略前方へ移動し、フィードチェン60の搬送始端部60aがこの手扱穀稈に作用することとなっている。
【0055】
つまり、フィードチェン60に対する棒状部材40の手扱作業位置が、従来のように固定された位置ではなく、棒状部材40の先端部40aに載置された手扱穀稈の量に応じて、フィードチェン60の手扱穀稈への作用部分が適切な広さをもつように変化するようになっている。フィードチェン60が棒状部材40の先端部40a上の手扱穀稈に作用する刈取部3側の位置が、先端部40a上の手扱穀稈の量が多くなるに従って刈取部3側に変化するようになっている。
【0056】
例えば、棒状部材40の先端部40aに載置される手扱穀稈の量が少ないとき、棒状部材40は、刈取作業位置から、手扱穀稈の量に応じた手扱作業位置まで前方へ向けて移動され、フィードチェン60における手扱穀稈への作用部分が確保される。この際、棒状部材40は、支持アーム61に対する付勢部材62の上方への付勢力によりフィードチェン60の駆動スプロケット60cの比較的上方に位置した状態となり、フィードチェン60による手扱穀稈の巻き込みや、作業者のフィードチェン60への接触等を防止するガードの役目を果たすようになっている。
【0057】
一方、棒状部材40の先端部40aに載置された手扱穀稈の量が前記よりも多いとき、棒状部材40は、刈取作業位置から手扱穀稈の量に応じた手扱作業位置まで前方へ向けて移動され、フィードチェン60における手扱穀稈への作用部分が十分な広さで確保される。この際、手扱作業位置における刈取部3側の限界位置が前述の手扱穀稈の量が少ないときよりも前方に位置して、フィードチェン60の手扱穀稈への作用部分が前述の扱穀稈の量が少ないときよりも広くなり、手扱穀稈がフィードチェン60により滞ることなく円滑搬送されるようになっている。
【0058】
また、フィードチェン60に対する棒状部材40の手扱作業位置が変化することによって、棒状部材40の先端部40aと、フィードチェン60の挟扼レール58の前端との相対距離が手扱穀稈の量に応じて変化するようにもなっている。これにより、手扱穀稈を棒状部材40の先端部40a上に載置する空間が、フィードチェン60の搬送始端部60aの上方に十分に確保される。
【0059】
以上のように、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、刈取作業時に刈取部3の搬送装置30、詳しくは補助搬送装置35から搬送される刈取穀稈をガイド部材100により脱穀部4のフィードチェン60に案内するものであって、ガイド部材100は、フィードチェン60の搬送始端部60aに沿って配置される棒状部材40と、棒状部材40を回動自在に支持する支持機構50とを備え、手扱作業時に棒状部材40の先端部40a上に手扱穀稈が載置されることによって、この棒状部材40を、刈取部3からの刈取穀稈を案内することが可能な刈取作業位置から、当該棒状部材40の先端部40a上の手扱穀稈をフィードチェン60に作用させることが可能な手扱作業位置まで、棒状部材40の先端部40a上の手扱穀稈の量に応じて、フィードチェン60の搬送始端部60aに沿って刈取部3側へ移動させるものとされる。
【0060】
これにより、手扱穀稈がガイド部材100の棒状部材40上に載置されたとき、この手扱穀稈の重みで棒状部材40が回動して、刈取作業位置から適切な手扱作業位置まで、棒状部材40の先端部40a上の手扱穀稈の量に応じて、フィードチェン60との相対距離を変えながら移動することとなる。したがって、手扱穀稈を棒状部材40上に載置して手扱作業を行うとき、棒状部材40の手扱作業位置がその手扱穀稈の量に応じて適切な位置に変わり、手扱穀稈の量を棒状部材40のフィードチェン60に対して固定された手扱作業位置にあわせて調整する必要や、棒状部材40を刈取作業位置から手扱作業位置まで人為的に移動させる必要がなくなり、手扱作業の簡易化を図ることができる。
【0061】
また、手扱作業位置における刈取部3側の限界位置を、棒状部材40の先端部40a上の手扱穀稈の量が多くなるに従って刈取部3寄りとすることが可能となる。したがって、手扱作業位置で手扱穀稈に対するフィードチェン60の作用部を広くして、フィードチェン60による穀稈の取込性能の向上を図ることができる。
【0062】
本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、また、ガイド部材100は、棒状部材40を前記刈取作業位置まで回動するように付勢する付勢部材62を備えるものとされる。
【0063】
これにより、手扱穀稈が棒状部材40の先端部40a上に載置されれば、この棒状部材40が付勢部材62の付勢力に抗して適切な手扱作業位置まで回動する一方、手扱穀稈が棒状部材40上からなくなれば、この棒状部材40が付勢部材62の付勢力により刈取作業位置まで回動することとなる。したがって、手扱作業が終了したとき、棒状部材40を手扱作業位置から刈取作業位置まで人為的に移動させる必要がなくなり、手扱作業の簡易化を図ることができる。しかも、棒状部材40を刈取作業位置に移動させるのを忘れたまま刈取作業を開始することがなくなるため、棒状部材40が手扱作業位置にあることに起因する刈取穀稈の抜け落ちや詰まりの発生を防止することができる。
【0064】
本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、また、ガイド部材100は、付勢部材62による棒状部材40の回動を規制する規制部材63を備え、規制部材63により棒状部材40の回動が規制されたとき、この棒状部材40を前記刈取作業位置に位置させて保持するものとされる。
【0065】
これにより、手扱穀稈が棒状部材40の先端部40a上からなくなれば、棒状部材40が付勢部材62の付勢力により回動して、その回動を規制部材63により規制されると同時に、棒状部材40が刈取作業位置に保持されることとなる。したがって、棒状部材を刈取作業位置に容易かつ確実に保持することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 コンバイン
3 刈取部
4 脱穀部
30 搬送装置
40 棒状部材
40a 先端部
40b 基端部
50 支持機構
60 フィードチェン
60a 搬送始端部
61 支持アーム
62 付勢部材
63 規制部材
100 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取作業時に刈取部の搬送装置から搬送される刈取穀稈をガイド部材により脱穀部のフィードチェンに案内するコンバインにおいて、
前記ガイド部材は、
前記フィードチェンの搬送始端部に沿って配置される棒状部材と、
前記棒状部材を回動自在に支持する支持機構とを備え、
手扱作業時に前記棒状部材上に手扱穀稈が載置されることによって、前記棒状部材を、前記刈取部からの刈取穀稈を案内することが可能な刈取作業位置から、前記手扱穀稈を前記フィードチェンに作用させることが可能な手扱作業位置まで、前記手扱穀稈の量に応じて、前記フィードチェンの搬送始端部に沿って前記刈取部側へ移動させることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記棒状部材を前記刈取作業位置まで回動するように付勢する付勢部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記付勢部材による前記棒状部材の回動を規制する規制部材を備え、前記規制部材により前記棒状部材の回動が規制されたとき、前記棒状部材を前記刈取作業位置に位置させて保持することを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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