説明

コンバイン

【課題】走行機体の前部に連結した前処理部の未刈り地側に、未刈り茎稈を分草するナローガイドを備えたコンバインにおいて、前記前処理部で刈り取る茎稈の稈長に応じてナローガイドの高さ位置を容易に調節できるようにする。
【解決手段】走行機体2の前部または前処理部5に走行機体2の前後方向に自在に揺動する揺動リンク23を設け、該揺動リンク23にナローガイド21の中間部を支持し、該ナローガイド21を前記揺動リンク23を介して分草作業姿勢Aと格納姿勢Bとに変姿可能に構成すると共に、前記揺動リンク23の揺動支点側にナローガイド21の高さ位置を調節可能な高さ位置調節機構Rを設け、該高さ位置調節機構Rを介して揺動リンク23を上下動させることによって、当該ナローガイド21の高さ位置を調節できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前部に連結した前処理部の未刈り地側に、未刈り茎稈を分草するナローガイドを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体の前部に連結した前処理部の未刈り地側に、前処理部の側部から張り出して未刈り茎稈を分草する分草作業姿勢と、前処理部の側部に沿う格納姿勢とに変姿可能なナローガイド(分草杆)を設け、このナローガイドの姿勢切換えを運転席から行なえるようにすべく、走行機体の前部または前処理部に設けた揺動リンクの基端部を運転席から操作可能な操作レバーに連繋させると共に、前記揺動リンクの先端部を、融通手段を介してナローガイドに連結し、前記操作レバーを操作することにより揺動リンクを揺動させてナローガイドの姿勢切換えを可能にしたコンバインが知れている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2006−129829号(第3−4頁、図4−図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前処理部で刈り取る茎稈は品種等の作物条件や地域条件によって、その稈長は長短様々である。したがって、稈長の長い茎稈を刈り取る場合、ナロ−ガイドの中間部の高さ位置が低いと、穂部が走行機体側に倒れて機枠と接触し、茎稈の折れ曲がりや穀粒の脱落を生じてしまう。一方、稈長の短い茎稈を刈り取る場合は、ナロ−ガイドの中間部の高さ位置が高いと、未刈り茎稈を前処理部の未刈り地側、即ち走行機体の横側方に向けて分草することができずに穂部が走行機体側に倒れて走行部と接触し、穀粒の脱落が生じるといった問題点を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、走行機体の前部に連結した前処理部の未刈り地側に、未刈り茎稈を分草するナローガイドを備えたコンバインにおいて、前記未刈り茎稈の稈長に応じてナローガイドの高さ位置を調節可能な高さ位置調節機構を設けたことを第1の特徴としている。
そして、走行機体の前部または前処理部に走行機体の前後方向に自在に揺動する揺動リンクを設け、該揺動リンクにナローガイドの中間部を支持し、該ナローガイドを前記揺動リンクを介して分草作業姿勢と格納姿勢とに変姿可能に構成すると共に、前記揺動リンクの揺動支点側にナローガイドの高さ位置を調節可能な高さ位置調節機構を設け、該高さ位置調節機構を介して揺動リンクを上下動させることによって、当該ナローガイドの高さ位置を調節できるように構成したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、未刈り茎稈の稈長に応じてナローガイドの高さ位置を調節可能な高さ位置調節機構を設けたことによって、前処理部で刈り取る茎稈の稈長が品種等の作物条件や地域条件によって変動しても、前記高さ位置調節機構により茎稈の稈長に応じてナローガイドの高さ位置を調節することができるので、未刈り茎稈の穂部が走行機体側に倒れて機枠や走行部と接触し、茎稈の折れ曲がりや穀粒の脱落を生じるといった従来の不具合が解消される。
そして、走行機体の前部または前処理部に走行機体の前後方向に自在に揺動する揺動リンクを設け、該揺動リンクにナローガイドの中間部を支持し、該ナローガイドを前記揺動リンクを介して分草作業姿勢と格納姿勢とに変姿可能に構成すると共に、前記揺動リンクの揺動支点側にナローガイドの高さ位置を調節可能な高さ位置調節機構を設け、該高さ位置調節機構を介して揺動リンクを上下動させることによって、当該ナローガイドの高さ位置を調節できるように構成したので、前処理部で刈り取る茎稈の稈長に応じて前記ナローガイドの高さ位置を調節するにあたり、該ナローガイドの横方向への位置変化、即ち未刈り茎稈側へのナローガイドの張り出しを抑制しながらナローガイドの高さ位置を調節することが可能であり、このナローガイドの高さ位置の調節に伴って分草性能が低下することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、コンバインの斜視図であって、コンバインは、走行部である左右一対のクローラ走行装置1L,1Rに支持した走行機体2を有しており、該走行機体2の前部右側には、図示しないエンジンを搭載すると共に、このエンジンの上方には、コンバインの操縦部3を構成する運転席4を配置している。
【0007】
一方、走行機体2の前部左側には、茎稈(穀稈)の刈取りと搬送を行なう前処理部5を昇降自在に連結してあり、この前処理部5の後方には、該前処理部5で刈取った茎稈から穀粒を脱穀し、且つこの穀粒を選別する脱穀部6と、該脱穀部6で選別した穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク7と、前記脱穀部6から排藁搬送装置8を介して搬送される排藁を切断処理する後処理部9を備えている。そして、穀粒タンク7内に一時的に貯留した穀粒は、穀粒排出オーガ11を介して機外に排出することができる。
【0008】
更に詳しく説明すると、図2は、前処理部5の側面図であって、前処理部5は、未刈り茎稈を分草しながら導入する分草体12と、導入される茎稈を引き起す引起し装置13と、茎稈の株元を切断する刈刃装置14と、茎稈の株元を挟持搬送する株元掻込装置15と、該株元掻込装置15による掻込茎稈の株元を図示しない合流部まで搬送する株元搬送装置16と、前記掻込茎稈の穂側を搬送する穂先搬送装置17と、株元搬送装置16によって搬送される茎稈を適正な扱ぎ深さに調節して後送する扱深搬送装置18等を備えており、これら各装置(12〜18)は、走行機体2の前部に前方に向かって斜め下方に延出させた縦伝動筒19aと、該縦伝動筒19aの先端部に平面視でT字状に連結した横伝動筒19bを主フレームとする前処理フレーム19に組み付けてある。
【0009】
また、前処理部5の未刈り地側(左側部)には、未刈り茎稈を分草(倒れ込みを規制)するナローガイド21を設けている。このナローガイド21は、走行機体2の前後方向に向くパイプ材で形成してあり、その前端部21aを最左端側の分草体支持フレーム22の先端部近傍に左右揺動自在に連結することによって、図3に示す如く前処理部5の未刈り地側に、該前処理部5の側部から張り出して未刈り茎稈を分草する分草作業姿勢A(二点鎖線で示す状態)と、前処理部5の側部に沿う格納姿勢B(実線で示す状態)とに変姿できるように構成している。
【0010】
そして、走行機体2の前部または前処理部5の未刈り地側(左側部)には、走行機体2の前後方向に自在に揺動する揺動リンク23を設けてあり、この揺動リンク23の基端部を、オペレータが操縦部3の運転席4に着座した状態で操作することができる操作レバー24(図1及び図4参照)に連繋機構25を介して連繋せしめると共に、揺動リンク23の先端部を、融通手段26を介してナローガイド21の中間部に連結している。
【0011】
即ち、図4に示すように、操作レバー24を揺動操作すると、連繋機構25を介して揺動リンク23が揺動し、ナローガイド21の姿勢を分草作業姿勢Aまたは格納姿勢Bに切換えることができるようになっており、ナローガイド21の前記姿勢切換操作をオペレータが運転席4に着座した状態で行うことができるだけでなく、電動モータ等のアクチュエータを不要にしてコストダウンを図ることができる。
【0012】
次に、上述した揺動リンク23、操作レバー24、連繋機構25、及び融通手段26の具体的な構成について説明する。融通手段26は、ナローガイド21の後端側に並列状に設けた連結レール21bと、この連結レール21bにスライド自在に連結する揺動リンク23の先端部に固設したU字状のフック23aからなり、前記ナローガイド21と揺動リンク23との連結をスライド自在に融通しつつ、当該揺動リンク23の揺動にナローガイド21を追従させることができるように構成している。尚、連結レール21bの後端部は、U字状に折り曲げてナローガイド21の後端部に挿入している。一方、連結レール21bの前端部は、ナローガイド21に固設した固定プレート21cにボルト27を用いて螺設している。
【0013】
また、揺動リンク23は、図5に示すように、緩やかなS字状に曲げ成形したパイプ材からなり、その基端部に連結プレート23bを固設している。一方、走行機体2の前部または前処理部5の未刈り地側(左側部)には、揺動リンク23を揺動自在に取り付けるための支軸(揺動支点)31aを立設したブラケット31を設けると共に、前記支軸31aに回動自在に外嵌するボス32aと、該ボス32aに一体的に固設した取付プレート32bを備える回動アーム32を設けてあり、該回動アーム32の取付プレート32bに穿設した2つの取り付け孔H1,H1に、揺動リンク23の連結プレート23bに穿設した基端側位置決め孔H2と詳細は後述する先端側高さ位置調節孔(長穴)H3を一致させた状態で、前記取付プレート32bと連結プレート23bをボルト33,33とナット34,34(ワッシャ35)を用いて一体的に螺設できるように構成している。
【0014】
そして、上述した回動アーム32のボス32aには、連繋機構25を構成する一対のワイヤ36,36を両端部に連結させる連結プレート32cを固設してあり、操作レバー24を揺動操作することによるワイヤ36,36の背反的な押し引きに応じて連結プレート32cがシーソー状に回動し、この連結プレート32cの回動に伴って揺動リンク23も一体的に揺動するので、ナローガイド21の姿勢を分草作業姿勢Aまたは格納姿勢Bに容易に切換えることができる。尚、操作レバー24は、図示しない操作レバーブラケットを介して機体フレームに取り付けてあり、レバーガイドのガイド溝に沿って走行機体2の前後方向に操作することができるようになっている。
【0015】
更に、回動アーム32の取付プレート32bに一体的に螺設する揺動リンク23の連結プレート23bは、螺設手段であるボルト33,33とナット34,34の螺合を若干緩めた状態で、前記連結プレート23bの基端側位置決め孔H2(ボルト33)を回動支点P(図5参照)として、先端側の高さ位置調節孔(長穴)H3の許容する範囲で揺動リンク23を上下動させることができる。
【0016】
即ち、上述した揺動リンク23の上下動は、前処理部5の未刈り地側における未刈り茎稈の稈長に応じて、ナローガイド21の高さ位置を容易に調節可能な高さ位置調節機構Rを構成するものであり、このような高さ位置調節機構Rを設けることによって、前処理部5で刈り取る茎稈の稈長が品種等の作物条件や地域条件によって変動しても、図2に二点鎖線で示すように、前記高さ位置調節機構Rにより茎稈の稈長に応じてナローガイド21の高さ位置を調節することができるので、未刈り茎稈の穂部が走行機体2側に倒れて機枠や走行部である左右一対のクローラ走行装置1L,1Rと接触し、茎稈の折れ曲がりや穀粒の脱落を生じるといった従来の不具合が解消される。
【0017】
尚、図6に示す状態は、上述の高さ位置調節機構Rを介して揺動リンク23をC矢印方向に最下動させたものであり、また図7に示す状態は、同じく高さ位置調節機構Rを介して揺動リンク23をD矢印方向に最上動させたものであり、このように、走行機体2の前部または前処理部5に走行機体2の前後方向に自在に揺動する揺動リンク23を設け、該揺動リンク23にナローガイド21の中間部を支持し、該ナローガイド21を前記揺動リンク23を介して分草作業姿勢Aと格納姿勢Bとに変姿可能に構成すると共に、前記揺動リンク23の揺動支点側にナローガイド21の高さ位置を調節可能な高さ位置調節機構Rを設け、該高さ位置調節機構Rを介して揺動リンク23を上下動させることによって、当該ナローガイド21の高さ位置を調節できるように構成したので、前処理部5で刈り取る茎稈の稈長に応じて前記ナローガイド21の高さ位置を調節するにあたり、該ナローガイド21の横方向への位置変化、即ち未刈り茎稈側へのナローガイド21の張り出しを抑制しながらナローガイド21の高さ位置を調節することが可能であり、このナローガイド21の高さ位置の調節に伴って分草性能が低下することはない。
【0018】
そして、上述した回動アーム32のボス32aには、連繋機構25を構成する一対のワイヤ36,36を両端部に連結させる連結プレート32cを固設してあり、操作レバー24を揺動操作することによるワイヤ36,36の背反的な押し引きに応じて連結プレート32cがシーソー状に回動し、この連結プレート32cの回動に伴って揺動リンク23も一体的に揺動するので、ナローガイド21の姿勢を分草作業姿勢Aまたは格納姿勢Bに容易に切換えることができる。尚、操作レバー24は、図示しない操作レバーブラケットを介して機体フレームに取り付けてあり、レバーガイドのガイド溝に沿って走行機体2の前後方向に操作することができるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】コンバインの斜視図。
【図2】一部を省略した前処理部の側面図。
【図3】ナローガイドの分草作業姿勢と格納姿勢を示す要部平面図。
【図4】操作レバーの構成を示す要部側面図。
【図5】高さ位置調節機構の構成を示す斜視図。
【図6】揺動リンクを最下動させた状態を示す斜視図。
【図7】揺動リンクを最上動させた状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0020】
2 走行機体
5 前処理部
21 ナローガイド
23 揺動リンク
A 分草作業姿勢
B 格納姿勢
R 高さ位置調節機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(2)の前部に連結した前処理部(5)の未刈り地側に、未刈り茎稈を分草するナローガイド(21)を備えたコンバインにおいて、前記未刈り茎稈の稈長に応じてナローガイド(21)の高さ位置を調節可能な高さ位置調節機構(R)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
走行機体(2)の前部または前処理部(5)に走行機体(2)の前後方向に自在に揺動する揺動リンク(23)を設け、該揺動リンク(23)にナローガイド(21)の中間部を支持し、該ナローガイド(21)を前記揺動リンク(23)を介して分草作業姿勢(A)と格納姿勢(B)とに変姿可能に構成すると共に、前記揺動リンク(23)の揺動支点側にナローガイド(21)の高さ位置を調節可能な高さ位置調節機構(R)を設け、該高さ位置調節機構(R)を介して揺動リンク(23)を上下動させることによって、当該ナローガイド(21)の高さ位置を調節できるように構成した請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−81892(P2010−81892A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255863(P2008−255863)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】