説明

コンバイン

【課題】搬送穀稈と脱穀装置の供給口周辺との干渉による穀粒の脱粒を防いで、穀粒の回収率を高めると共に、コンバインによる刈取脱穀作業を円滑に行なえるものとする。
【解決手段】機体前部の刈取装置(4)で刈り取った刈取穀稈を該刈取装置(4)の後側に設けた脱穀装置(2a)に搬送供給する株元移送装置(10a)と穂先移送装置(12)を設け、該穂先移送装置(12)の上側で穀稈の穂先を押える第一穂先誘導杆(30a)を設けたコンバインにおいて、第一穂先誘導杆(30a)の搬送下手側の位置に、穂先移送装置(12)の搬送終端よりも後方に延出する第二穂先誘導杆(30b)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場内の植立穀稈を刈り取って脱穀機内へ移送する穀稈移送装置を備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインでの植立穀稈の収穫作業は、コンバインを圃場で走行させて、走行車台の前側に設けた刈取装置の前部で、下方から後上方に向けて設けたナローガイドと分草体で植立穀稈が条分けされ、この条分けした穀稈が複数の掻込移送装置で掻込まれながら刈刃装置で株元を刈り取られ、各条の穀稈を株元移送装置と穂先移送装置と搬送し、合流させて供給移送装置へ挟持移送される。供給移送装置から脱穀機に搬送される穀稈は、搬送途中に穀稈の穂先位置が脱穀機の適正供給位置となるよう株元挟持位置を調整されて、脱穀機のフィードチェンと挟持杆へ引継がれて穀稈の穂先側が脱穀機の供給口から内部へ供給され、フィードチェンと挟持杆とで株元側を挟持された穀稈が後方へ送られながら穂先側が脱穀機内を通過する間に脱穀される。脱穀機内で脱穀し選別された穀粒は、この脱穀機の横側へ設けた穀粒貯留タンク内へ供給されて、一時貯留される。
【0003】
前記供給移送装置は、特許文献1に例示するように、供給移送装置に着脱自在な掻込支持装置を備えるとともに、供給移送装置の上側に穀稈の穂先が浮き上がらないように掻込支持装置に備える穂先挟持杆によって穂先を押え込み、穀稈の搬送姿勢を安定させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−016077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載されたような従来技術においては、刈取穀稈は、株元移送装置と穂先移送装置とで引継ぎ移送部に集められてさらに穂先位置を脱穀機供給口供給位置に調整され、さらにフィードチェンと挟持杆で株元を挟持されて後方へ搬送される間に穀稈の穂先側が脱穀機の供給口から内部に引き込まれて脱穀されるが、引継ぎ移送部で、穀稈の姿勢を刈取姿勢である縦姿勢から、脱穀機へ挿入する横姿勢へと変更しながら搬送する構成である為に、刈取速度が速くなると穂先側が横姿勢とならないまま供給口へと移送されてしまい、脱穀機の供給口に多くの刈取穀稈が供給されて穀稈の穂先部分が脱穀機の供給口周囲に衝突することで穀粒が脱粒し、機外に飛散して収量が低減する問題がある。また、穀稈の詰まりを解消するため掻込支持装置の着脱する際に、穂先挟持杆が支持杆に引掛かり着脱作業の妨げとなる上、穂先挟持杆の変形や破損を招く問題がある。
【0006】
本発明は、脱穀機の供給口で盛り上がる穀稈の穂先側を押えて脱穀機内に入り易くして、供給口周囲に当たって脱粒する穀粒を少なくして収穫する穀粒の収量ロスを低減すると共に、掻込支持装置の着脱を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
即ち、請求項1記載の発明は、機体前部の刈取装置(4)で刈り取った刈取穀稈を該刈取装置(4)の後側に設けた脱穀装置(2a)に搬送供給する株元移送装置(10a)と穂先移送装置(12)を設け、該穂先移送装置(12)の上側で穀稈の穂先を押える第一穂先誘導杆(30a)を設けたコンバインにおいて、前記第一穂先誘導杆(30a)の搬送下手側の位置に、穂先移送装置(12)の搬送終端よりも後方に延出する第二穂先誘導杆(30b)を設けたことを特徴とするコンバインとした。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記第二穂先誘導杆(30b)の後端部を下方に向けた屈曲形状に形成したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとした。
請求項3記載の発明は、前記穂先移送装置(12)に対する第二穂先誘導杆(30b)の上下位置を調節自在に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバインとした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によると、穂先移送装置(12)で脱穀装置(2a)に供給される穀稈の穂先側が、穂先誘導杆(30)によって浮き上がりを押えられながら脱穀装置(2a)へと搬送されるので、脱穀装置(2a)の供給口周辺との干渉による穀粒の脱粒を防いで、穀粒の回収率を高めることができると共に、コンバインによる刈取脱穀作業を円滑に行なうことができる。
【0010】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加え、脱粒防止効果を一層高めることができる。
請求項3記載の発明によると、上記請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加え、刈取作業状態や穀稈の品種等に応じて第二穂先誘導杆(30b)を上下調節して穀稈の押え位置を変更し、搬送効率を高めることができ、第二穂先誘導杆(30b)の過度の干渉による脱粒を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】穀稈刈取移送装置部の拡大平面図である。
【図2】穂先移送装置部と供給移送装置部の拡大平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】穀稈刈取移送装置部の概略平面図である。
【図5】穂先移送装置部と供給移送装置部の拡大平面図である。
【図6】穂先移送ケースの概略平面図である。
【図7】穂先移送装置部の拡大側面図である。
【図8】コンバインの左側面図である。
【図9】コンバインの平面図である。
【図10】株元移送装置部の拡大平面図である。
【図11】別実施例におけるコンバインの部分拡大右側面図である。
【図12】第二伸縮筒の外筒の側断面図である。
【図13】別実施例第二伸縮筒の外筒の側断面図である。
【図14】別実施例におけるコンバインの部分拡大右側面図である。
【図15】第二伸縮筒の側断面図である。
【図16】別実施例第二伸縮筒の側断面図である。
【図17】別実施例のコンバイン右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。尚、以下では説明の便宜上、機体の進行方向に対する左右を夫々左側、右側と言うことがある。
実施例は、四条列の植立穀稈を刈取り脱穀するコンバイン1である。このコンバイン1の走行車台2の下側には、図8及び図9で示すように、圃場を走行する左右一対の走行クローラ3aを張設した走行装置3を配設し、走行車台2の上側に脱穀装置2aを載置した構成である。走行車台2の前方部の刈取装置4で植立穀稈を刈取りして、後上方へ移送し、脱穀装置2aのフィードチェン2cと、挟持杆2dとで引継いで挟持移送しながら穀稈の穂先側を供給口から脱穀装置2aに供給して脱穀する。脱穀して選別した穀粒は、脱穀装置2aの右横側へ配設した穀粒貯留タンク2b内へ供給されて一時貯留される。
【0013】
前記走行車台2の前方部には、図8及び図9で示すように、植立穀稈を分離するナローガイド5a、及び複数個の分草体5bと、倒伏穀稈を引起す複数個の引起装置6と、引起された穀稈を掻込む穀稈掻込移送装置9の外側左右両側と、中央部左右両側とに四個の各掻込装置9aと、掻込された穀稈を刈取る刈刃装置5cと、刈り取られた穀稈を挟持移送して、脱穀装置2aのフィードチェン2cと挟持杆2dとへ受渡しする穀稈掻込移送装置9の右側は、右上株元移送装置10aと、右下株元移送装置10bと、穂先移送装置12と、左側は、左株元移送装置11と、供給移送装置14等とからなる刈取装置4を設けている。該刈取装置4は、油圧駆動による伸縮シリンダ16により、土壌面に対して、昇降する構成である。
【0014】
前記刈取装置4の前方下部から後方上部へ傾斜する伝動機構16dを内装した支持杆16aの上端部に設ける伝動機構16eを内装した支持パイプ杆16bを走行車台2の上側面に設けた支持装置16cで回動自在に支持させている。伸縮シリンダ16を作動させると支持杆16aと共に、刈取装置4が上下回動する構成である。この支持杆16aの外径上側部で上後方向の所定位置には、中央部左右両側の各掻込装置9a、9aを装着する取付装置16fを固着して設けている。
【0015】
前記穀粒貯留タンク2b側の前部には、図8及び図9で示すように、コンバイン1を始動、停止、及び各部を調節等の操作を行う操作装置22と、操縦席23とを設け、この操縦席23の下側にエンジン24を載置している。
【0016】
前記走行車台2の前端部に装架した走行用のミッションケース25内の伝動機構25aの伝動経路中には、その出力に基づいて、走行車速を検出するポテンションメータ方式の車速センサ25bを設けている。
【0017】
前記穀粒貯留タンク2b内へ貯留した穀粒を機外へ排出するために、この穀粒貯留タンク2bの後側には、図8及び図9で示すように、縦移送螺旋26aを内装した縦移送筒26を略垂直姿勢で旋回自在に装着して設け、この縦移送筒26の上端部には、その全長がコンバイン1の前後長に亘る機外へ穀粒を排出する排出螺旋27aを伸縮自在に内装した排出オーガ27を伸縮自在、上下回動自在、及び左右旋回自在に前後方向に配設した構成である。
【0018】
図8及び図9で示すように、左側二条列の穀稈は、左外側と左外側より二番目と中央部との分草体5b、5b、5bにより、穀稈を条毎に分離すると共に、右側二条列の穀稈は、右外側と右外側より二番目と中央部との分草体5b、5b、5bにより、穀稈を条毎に分離する。
【0019】
前記引起装置6は、図4及び図9で示すように、左右両外側部には、左外引起装置7aと右外引起装置7bを設けると共に、中央部の左右両側には、左内引起装置6aと右内引起装置6bを設けている。これら左外引起装置7aと左内引起装置6aとにより、左側の二条列の穀稈が引起しされる。又、これら右外引起装置7bと右内引起装置6bとにより、右側の二条列の穀稈が引起される。
【0020】
前記左内引起装置6aと右内引起装置6bと、左外引起装置7aと右外引起装置7bとは、図2で示す個別に設けた引起ケース8a内の上下端部には、上・下スプロケット8b、8cを軸支して設け、これら上・下スプロケット8b、8cには、所定間隔に引起ラグ8eを装着した引起チェン8dを掛け渡している。
【0021】
前記各引起ラグ8eの作用範囲は、引起ケース8aの搬送通路側部が作用範囲であり、搬送通路に向けて引起ケース8a内より突出した各引起ラグ8eは上スプロケット8bの回転駆動により、穀稈を引起しする。非搬送通路側では、各引起ラグ8eは引起ケース8内へ収納状態で引起チェン8dに沿う姿勢となる。
【0022】
前記左外引起装置7aと右外引起装置7b、及び左内引起装置6aと右内引起装置6bの後側には、図4及び図9で示すように、左右両側の二条列毎の穀稈を掻込みする各掻込装置9aを平面視左右両側に、後側で二条分の穀稈を合流させるべく略V字形状に設けている。
【0023】
前記各掻込装置9aは、掻込ケース9bの下側部に所定間隔で掻込ラグ9cを設けた掻込ベルト9dを張設すると共に、この掻込ベルト9dの下側で、後側の掻込軸9eに掻込スターホイル9fを軸支している。掻込ベルト9dと掻込スターホイル9fの間には円筒部を形成している。
【0024】
前記左側2個の掻込装置9a、9aで、左側二条列の穀稈を掻込みする。又、右側2個の掻込装置9a、9aで、右側二条列の穀稈を掻込みする。
中央部の左右両側の前記掻込装置9a、9aの掻込ケース9b、9bの上外側面で掻込軸9e、9eには、図4で示すように、略へ字形状の接続杆9hを設けて、これら左右両側の掻込装置9a,9aを接続している。この接続杆9hの左右方向略中央部に取付板9jを固着して設け、この取付板9jをボルト、及びナット等により、支持杆16aへ設けた取付装置16fへ着脱自在である。これにより、中央部の左右両側の掻込装置9a、9aを一体の部分組立品として、着脱自在である。左右両側のこの掻込装置9a、9aに穀稈の詰まり等の不具合が発生したときには、両者を一体で取り外して対処する。
【0025】
中央部右側の前記掻込装置9aの掻込ラグ8eの下側へ設けた小外径の掻込スターホイル9fは、掻込軸9eへ回転自在に軸支して設けている。この掻込スターホイル9fの下側で、支持杆16aの取付装置16fへ株元案内ガイド9mをボルト、及びナット等により装着している。
【0026】
前記株元案内ガイド9mの取付位置は、図1で示すように、小外径の掻込スターホイル9fの上面に接近した位置に、前側部では小外径の掻込スターホイル9fの歯底部A位置へ位置させて、この歯底部A位置から順次横側部は、円弧状に湾曲させて、後側部では、該掻込スターホイル9fの歯先部B位置へと順次変更させて設け、後端を右下株元移送チェン10dに沿うように構成している。
【0027】
この構成により、小外径の掻込スターホイル9f上面への藁屑、及び泥等の堆積を防止することができる。又、小外径の該掻込スターホイル9fへの藁屑等の巻き付きを防止できる。更に、該株元案内ガイド9mを四角形状の角パイプ材としたことにより、掻込スターホイル9fの円筒部9n部への隙間を小さくすることができ、移送する穀稈の株元との接触面を広くさせることができて、穀稈を起立させて安定した搬送ができる。
【0028】
前記外左側と中央部左側、及び外右側と中央部右側とへ平面視略V字形状に設けた前記各掻込装置9a、9a間には、図1で示すように、分草体5bの分草パイプ5dを設け、この各分草パイプ5dの外径上部には、大案内ガイド5eと、小案内ガイド5fとを個別に設けている。
【0029】
前記各掻込装置9aの後方部の右側の下部には、図4、図5、及び図9で示すように、右上株元移送チェン10cを掛け渡した右上株元移送装置10aと、右下株元移送チェン10dを掛け渡した右下株元移送装置10bとを設けると共に、右側の上部には、略三角形状で平面視移送側面部が略L字形状の穂先移送ケース12aの下側へ所定間隔で穂先移送ラグ12cを装着した穂先移送チェン12bを掛け渡した穂先移送装置12を設けている。
【0030】
又、左側の下部には、左株元移送チェン11aを掛け渡した、左株元移送装置11を設けると共に、左側の上部には、従動軸15aへ設けた供給ケース14aの下側へ複数個の供給ラグ14cと、供給スターホイル14bとを、従動軸15aへ軸支した、供給移送装置14を設けている。
【0031】
図1で示すように、これら右下株元移送チェン10dと、左株元移送チェン11aとで形成する合流部(リ)の左右両側部は、略半円形状に形成して、前側部は、平面視略ハ字形状に形成し、又、後側部は、平面視略逆ハ字形状に形成して設けると共に、該右下株元移送チェン10dと、該左株元移送チェン11aとの移送終端部には、これら移送チェン10dと、左株元移送チェン11aとを伸縮操作するテンション装置28を個別に設けている。
【0032】
前記テンション装置28は、図1で示すように、略L字形状のテンションアーム28aの回動中心部は、テンション回動軸28bで軸支して設け、このテンション回動軸28bにテンションプーリ28cを、回転自在に軸支して設けると共に、該テンションアーム28aの一方側の端部には、テンション軸28dを軸支して設け、このテンション軸28dにテンションプーリ28cを回動自在に軸支して設けている。又、テンションアーム28aの他方側の端部には、テンション装置28を伸縮作動する、テンションスプリング28eを設けている。
【0033】
前記穂先移送装置12と、右上株元移送装置10aと、供給移送装置14とは、一体で上下回動自在に設けている。穀稈の稈長により、脱穀装置2aへ供給する穀稈の供給深さ(扱ぎ深さ)を、これら三部品を一体的に自動で上下回動移動させて、脱穀装置2aへ供給する穀稈の扱ぎ深さ位置を自動調節する構成である。
【0034】
前記穂先移送装置12の平面視略三角形状に形成した穂先移送ケース12aの上部の移送終端部へ設けた穂先上部軸13aに上部スプロケット13dを軸支して設け、略中間の頂上部へ設けた穂先中間軸13cに中間スプロケット13eと、駆動スターホイル12dとを軸支して設け、下部の移送始端部へ設けた穂先下部軸13bに下部スプロケット13fを軸支して設けている。
【0035】
前記上部・中間・下部スプロケット13d、13e、13fに穂先移送ラグ12cを所定間隔で装着した穂先移送チェン12bを掛け渡している。各穂先移送ラグ12cは、略三角形状の短辺側の二辺部で平面視移送側面部が略L字形状部では、穂先移送ケース12aから突出して、穀稈の穂先側を移送する作用側としている。又、反対側は穀稈を移送しない非作用側である。
【0036】
前記穂先移送ケース12aは、図5及び図6で示すように、この穂先移送ケース12aの穀稈移送作用側の短辺側の二辺部の移送角度は、平面視横移送側から縦移送側へ向けて、移送始端部側から移送終端部へ向けて、平面視水平に対して、順次小角度から大角度に複数段に変更して設けている。
【0037】
図6で示すように、例えば、移送始端部側より、水平に対して、小角度の25度から、50度、75度、移送終端部側の90度に、略25度、又は移送終端部は、略15度増加させて、順次変更して形成している。25度の範囲は、右側2条列が移送される箇所であり、25度から50度へ変化する箇所は、左・右2条列が合流する合流部(リ)である。又、50度以後の箇所は、左右の2条列が合流されて、4条列の穀稈が移送される。
【0038】
前記穂先移送装置12の穂先移送ケース12aの上側面には、図5と図7で示すように、穂先案内カバー12fを設けている。この穂先案内カバー12fの後端部は、刈取装置4の後側へ設けた脱穀装置2aの前側近部か、前端部は、右外側の引起装置6の後側近傍部までの間に位置させて設けると共に、穂先案内カバー12fの前後方向の外形形状は、穂先移送ケース12aの前後方向の外形形状と略同じ形状に形成し、又、穂先案内カバー12fは、頂点部から、穀稈移送の作用側へ向けて、下り傾斜させて設けると共に、上下回動自在な穂先移送ケース12aを最上部位置へ回動移動操作した時でも、この穂先移送ケース12aの前端は、前方下部へ下り傾斜状態に設けたことにより、穂先案内カバー12f、及び穂先移送ケース12aには、移送中に穀稈から落下した藁屑、及び塵埃等の堆積を防止することができる。又、移送中の穀稈より飛散する穀粒を防止できるとともに、穀稈の穂先側がスムーズに移送される。
【0039】
又、前記穂先移送ケース12aを最上部位置へ回動移動操作した時でも、この穂先移送ケース12aの前端部は、後方部から前方部へ向けて下り傾斜状態に設けている。穂先移送装置12で移送中の穀稈から、落下する藁屑、及び塵等は、穂先移送ケース12a、及び穂先案内カバー12fへ堆積しない構成である。
【0040】
前記供給移送装置14の従動軸15aへ軸支した、供給スターホイル14bの上側面には、図5で示すように、複数個の供給ラグ14cを回転自在に設け、供給ケース14aより、前方部側と内側部とで突出して、穀稈へ供給スターホイル14bと共に、作用して移送する。又、供給ラグ14cは、前方部側と内側部との以外では、逐次供給ケース14a内へ収納状態になる不作用側である。供給スターホイル14bは、穂先移送装置12の駆動スターホイル12dと噛合して、回転駆動される。
【0041】
前記供給移送装置14は、図2と図5で示すように、穂先移送装置12へ設けた支持杆15bの先端部へコ字形状の支持枠15cを設け、この支持枠15cへ受杆15dを設け、この受杆15dへ供給ケース14aをボルト15eで装着して設けると共に、受杆15dの前端部に従動軸15aを装着して設けている。又、支持枠15cには、スプリング(図示せず)等により、挟持移動自在に挟持用杆17aを設け、この挟持用杆17aの後端部に受板17bを固着して設け、この受板17bに後挟持用杆17cを装着している。
【0042】
供給移送装置14の供給ケース14aには、搬送される刈取穀稈の穂先側を前記穂先案内カバー12fに向けて押え込む線材からなる第一穂先誘導杆30aと第一中間誘導杆31と第二中間誘導杆32を穂先案内カバー12fの上面(搬送面)と略平行姿勢で固着し、支持杆15bに前記第一穂先誘導杆30aに続けて刈取穀稈の穂先側を押え込む第二穂先誘導杆30bを設けている。第二穂先誘導杆30bの取り付け部は、先端部を上下に揺動調節可能に固定するが、電動モータで上下揺動可能にして、操縦席23の近くに設ける調節ダイヤル或いは次に述べる如く穂先移送装置12等の上下動に伴って自動で揺動位置を調整するようにしても良い。
【0043】
即ち、支持杆15bには、刈取穀稈の穂先先端を検出する第一穂先センサ33aと第二穂先センサ33bを設け、第一穂先センサ33aが穂先を検出せず第二穂先センサ33bが穂先を検出する状態が正常な刈取穀稈搬送状態で、第一穂先センサ33aと第二穂先センサ33bとが共に穀稈検出状態にあるときは深扱ぎ状態であり、両センサとも穀稈を検出していない場合は、浅扱ぎ状態である。この正常な刈取穀稈搬送状態になるように、前記穂先移送装置12と右上株元移送装置10aと供給移送装置14とを一体で前側を、深扱ぎ状態においては上方に、浅扱ぎ状態においては下方に上下回動調節する。第二穂先誘導30bはこれに伴い、穂先移送装置12と右上株元移送装置10aと供給移送装置14との相対位置を上下に調節する。
【0044】
この構成によって、扱深さが如何なる状態に調節されていても、第二穂先誘導杆30bが穀稈の稈身方向適正位置を押えることができ、穀稈の搬送状態を安定させるものでありながら、過度に穀稈の先端側部分に干渉して脱粒させる虞がない。
【0045】
前記右側部二個の前記掻込装置9a、9aで掻込されながら、刈刃装置5cで刈取りされた穀稈は、図4と図9で示すように、右側のこの掻込装置9a、9aから右下株元移送装置10bと、同時に上下回動自在な穂先移送装置12、及び右上株元移送10aとにより、後方上部へ移送される。又、左側部二個の掻込装置9a、9aで掻込されながら刈刃装置5cで刈取りされた穀稈は、図4と図9で示すように、左側のこの掻込装置9a、9aから左株元移送装置11と、供給移送装置14とにより、合流部(リ)へ移送され、この合流部(リ)で左右両側を移送される刈取り穀稈は合流され、更に右上株元移送装置10aと、穂先移送装置12とにより、後方上部へ移送され、脱穀へ供給され、この脱穀装置2aのフィードチェン2cと挟持杆2dとで引継ぎされ、脱穀装置2a内を挟持移送され、この脱穀装置2a内で脱穀される。
【0046】
前記穂先移送装置12の穀稈移送作用側で、上側の移送終端部側へ設けた穂先上部軸13aの軸心(イ)と、穂先移送装置12の前側へ設けた供給移送装置14の従動軸15aの軸心(ニ)とは、図5で示すように、前後方向に略直線上へ位置させて設けた構成である。又、左側の二条列の穀稈と、右側の二条列の穀稈とが、後方上部へ移送されて合流される位置までの形状は、図5で示すように、平面視で略Y字形状に形成した構成である。
【0047】
前記穂先移送装置12の穀稈の穂先側を移送する移送終端部の穂先上部軸13aの軸心(イ)位置と、供給移送装置14の従動軸15aの軸心(ニ)位置とは、前後方向に略直線上へ位置させて設けた構成としたことにより、左側の二条列の穀稈と、右側の二条列の穀稈との合流部(リ)で合流したときの穀稈の乱れを防止できる。又、供給移送装置14の供給ラグ14cの移送範囲を少なくしたことにより、多量の穀稈の移送が可能である。更に、穂先の振れが少ないことにより、穀粒の飛散防止ができる。
【0048】
前記支持杆16aの上端部へ設けた支持パイプ杆16bには、図8と図9で示すように、支持メタル19aを設け、この支持メタル19aと、穂先移送装置12の上部の移送終端部に設けた穂先上部メタル12eとの間には、接続メタル19bを設けて接続している。この接続メタル19bへ回動自在に軸支した接続軸19cを回動中心として、穂先移送装置12の穀稈移送部側の下側部を上下回動自在に形成している。接続軸19cの中心位置は、支持パイプ杆16bの中心位置より、所定距離上部へ位置させて設けている。支持パイプ杆16bを支持する支持メタル19aは、図9で示すように、コンバイン1の機体1aの左右方向略中央部へ位置させて設けている。
【0049】
前記前側、及び横側へ設けた前側の操作装置22の前側面部から、左横外側の操作装置22の左横外側面部にわたって設ける防塵用外カバー20の外側面は、図9で示すように、刈取装置4の左右方向の中心(チ)の近傍部、又は略同じ位置へ設けている。
【0050】
これにより、穀稈の穂先移送通路と前記各操作装置22とを離すことで藁屑等の溜りを防止する。又、穀粒及び塵埃の飛散を防止できる。
前記右下株元移送装置10bの右下株元移送チェン10dは、図9、及び図10で示すように、右外側の掻込装置9aへ設けたスプロケット9Qと、移送終端部へ設けたテンション装置28とへ掛け渡している。右下株元移送チェン10dの移送始端部側で、右外側と、右側より二番目の各掻込装置9a、9aの各掻込スターホイル9f、9fの噛合部の後側には、凹部(逃がし部)10fを設けている。多量の穀稈が掻込みされたときであっても、右下株元移送チェン10dは、この凹部10f部で穀稈を逃がして、移送中の穀稈の詰りを防止している。10eはチェンレールであり、右下株元移送チェン10dを支持させている。右外側の掻込スターホイル9fの外径(D1)より、右側より二番目の掻込スターホイル9fの外径(D2)を所定寸法小径に形成して設けている。
【0051】
前記右下株元移送装置10bの右下株元移送チェン10dの前側の穀稈を移送する作用側には、図10で示すように、挟持ガイド21を挟持受装置21aで摺動移動自在に設けている。この挟持ガイド21の移送終端部には、合流部(リ)まで延長した補助挟持ガイド21bを設けると共に、テンション装置28の前側には、後挟持ガイド21cを設けている。スプリング21dは、挟持ガイド21を弾発する。
【0052】
右側二条列の掻込みされて、刈取りされた刈取り穀稈の株元側は、右下株元移送チェン10dと、各挟持ガイド21,21b,21cとの間へ挟持されて、合流部(リ)へ移送される。
【0053】
これにより、右側二条列の穀稈が多量掻込みされて、引継ぎされたときであっても、右下株元移送装置10bの右下株元移送チェン10dの移送始端部側へ穀稈の詰りを防止することができる。又、部品の変形、及び破損を防止できる。
【0054】
図11は、刈取装置4を浮かせて支持するフローティング機構を設けた実施例で、刈取装置4の支持杆16aと走行車台2を伸縮シリンダ16で連結する部分の拡大図で、伸縮シリンダ16の上側を支持杆16aに枢支した第一伸縮筒35と走行車台2に固着した第二伸縮筒36を枢支軸37で連結している。
【0055】
第一伸縮筒35は圧縮バネ35cを内装した内筒35aと外筒35bで、第二伸縮筒36は同じく圧縮バネ36cを内装した内筒36aと外筒36bで内筒36a側に圧縮バネ36cを貫通して外筒36bのフランジ36fに設ける貫通孔36eから後方へ突出する芯軸36dを設け、この芯軸36dの突出端部に抜け止め用ストップ環38を固着して、第一伸縮筒35の外筒35b側と第二伸縮筒36の内筒36a側を枢支軸37で連結している。
【0056】
フランジ36fの貫通孔36eは、芯軸36dが上下に僅かに動いても支障が無いように上下方向の長穴としている。
第二伸縮筒36の内筒36aは、図12の如く、内筒36aのフランジ36hとU字状連結部材36gを芯軸36dで貫通して一体的に溶接している。なお、U字状連結部材36gは、図13の如く、二枚の帯板をフランジ36hに溶接した構成にしても良い。
また、抜け止め用ストップ環38は、座金と芯軸36dの軸端ネジ部に締め付けるダブル ナットで構成して抜け止め位置を変更可能にしても良く、図14に示す如く、芯軸36dに設けた複数の係合孔41に通したRピン40と座金39で抜け止め用ストップ環38を構成し、抜け止め位置を変更可能にしても良い。
【0057】
さらに、図15に示す如く、フランジ36fに芯軸36dを挿通する角筒42を固着し、芯軸36dを角軸或いは角筒としてこの芯軸36dを横切る長溝を形成し、角筒42を横切って挿したピン43を前記芯軸36dの長溝に挿し込んで芯軸36dの可動域を規制した構成にしても良い。この構成で、ピン43を角筒42の複数位置に差し込んで固定するようにすれば、芯軸36dの可動域を変更出来る。
【0058】
また、図16に示す如く、角筒42の後端にボルト45を螺合する止め栓42aを固着し、この止め栓42aに螺合したボルト45をナット44で固定して、芯軸36dの軸端にボルト45を当てて第二伸縮筒36の縮み規制としても良い。
【0059】
角筒4を固着したフランジ36fを第二伸縮筒36の外筒36bに対してボルトとナットで着脱可能にしても良い。
第二伸縮筒36は、フランジ36fを走行車台2に溶接しているが、走行車台2側に取付板を溶接し、この取付板とフランジ36fを上下方向の長穴或いは複数孔とボルトで取付高さ位置を調整可能にしても良い。
【0060】
図17に示すコンバインは、前記のフロート支持装置48で刈取装置4の支持杆16aを支持し、さらに第一接地ソリ体46aを設けた分草体5bの分草フレーム49と第二接地ソリ体46bを設けた刈取装置4の刈刃フレーム50を融通機構47で支持杆16aに支持した構成で、軽い分草フレーム49と刈刃フレーム50が圃場面の凹凸によって融通機構47の許す範囲で昇降し、さらに大きな昇降は、フロート支持装置48の許す範囲で昇降するようにしている。
【0061】
この構成で、分草体5bと刈取装置4が軽快に昇降し、より大きな刈取装置4全体の昇降も行うようになる。
【符号の説明】
【0062】
2a 脱穀装置
4 刈取装置
10a 右上株元移送装置
12 穂先移送装置
14 供給移送装置
15b 支持杆
30 穂先誘導杆
30a 第一穂先誘導杆
30b 第二穂先誘導杆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前部の刈取装置(4)で刈り取った刈取穀稈を該刈取装置(4)の後側に設けた脱穀装置(2a)に搬送供給する株元移送装置(10a)と穂先移送装置(12)を設け、該穂先移送装置(12)の上側で穀稈の穂先を押える第一穂先誘導杆(30a)を設けたコンバインにおいて、前記第一穂先誘導杆(30a)の搬送下手側の位置に、穂先移送装置(12)の搬送終端よりも後方に延出する第二穂先誘導杆(30b)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記第二穂先誘導杆(30b)の後端部を下方に向けた屈曲形状に形成したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記穂先移送装置(12)に対する第二穂先誘導杆(30b)の上下位置を調節自在に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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