説明

ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】低発熱性および耐オゾン性に優れたゴム組成物及びそれを用いたタイヤを提供。
【解決手段】不飽和度が少ないオレフィン−ジエン系共重合体を含むゴム成分に、分散改良剤としてダイポーラー窒素を含む部分Q、及び酸素又は硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環部分Bを有する化合物を含むゴム組成物ゴム成分中に、セルロース繊維を含むゴム組成物及びそれを用いたタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、より詳細には、低発熱性及び耐オゾン性に優れたゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムの分散改良剤として、ダイポーラー窒素を含む部分、及び酸素又は硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環部分を有する化合物は既に使用されている(例えば、特許文献1)。一般的な空気入りタイヤにおいては、低発熱性と安定性が求められる。そこで天然ゴムおよびジエン系合成ゴムから選ばれたゴム成分に対し、特定の化合物を添加することで、そのゴム組成物のtan∂を低下させ、タイヤの低発熱性を向上させることが検討されている。ジエン系ゴムに対して、ダイポーラー窒素を含む部分Q、および酸素または硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環を含む部分Bを有する化合物Dとシリカを配合させたゴム組成物が提案されており、優れた低発熱性を有することが示されている。
【0003】
また、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)の第三成分である5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)のヨウ素価が100以上であるEPDMで、Tgが−25℃以上であるEPDMポリマーを2質量部以上配合したタイヤ用ゴム組成物が提案されている(例えば、特許文献2)。
一般的な空気入りタイヤにおいては、耐久性と自動車の低燃費が求められる。ゴム材料を長く使用していると、使用環境によりダメージを受けて本来の性能が発揮できなくなる。これらの現象はゴムの劣化、老化と呼ばれポリマーの主鎖切断がゴム劣化原因として最も一般的である。主鎖切断反応はラジカル反応で連鎖的に起こる酸化反応であり、二トリルゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)等は主鎖に不飽和結合を多く持ち、その主鎖切断が生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−224069号公報
【特許文献2】特開2004−10863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤに用いられているゴム組成物は、不飽和結合の多いジエン系ゴムが主に用いられている。しかしながら、上述したように不飽和結合の多いジエン系ゴムは、主鎖切断が起こることによって耐オゾン性(又は耐久性)が悪化するという問題がある。この不具合を解消するために、不飽和結合の小さいゴム、例えば、不飽和度を小さくすることのできるEPDMやIIRなどのオレフィン−ジエン共重合体を配合する手段がある。しかしながら、このような共重合体を他のジエン系ゴムと共に配合すると、補強充填剤であるカーボンブラックやシリカがジエン系ゴムへ優先的に分散し、上記共重合体部分での補強性が弱くなる。また、ジエン系部分に補強性充填剤が集まるため、発熱が生じやすく、つまり、tanδが増加し、結果として低発熱性(転がり抵抗)の悪化する不具合がある。
従って、本発明は、低発熱性および耐オゾン性に優れたゴム組成物及びそれを用いたタイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、不飽和度の低い共重合体ゴムをジエン系ゴムに含ませることによって耐オゾン性を高めると共に、これらの共重合体への補強性充填剤の分散性を高めるために特定の分散改良剤をゴム成分に混ぜることによって、低発熱性優れたゴム組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係るゴム組成物及びそれを用いたタイヤは、以下の(1)乃至(10)に記載される構成或いは手段を特徴とするものである。
【0007】
(1)ゴム成分中に、ヨウ素価が350以下のオレフィン−ジエン系共重合体を20質量%以上含み、分散改良剤としてダイポーラー窒素を含む部分Q、及び酸素又は硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環部分Bを有する化合物を含むゴム組成物。
(2)オレフィン−ジエン系共重合体は、該オレフィン部分が構造式[(R)(R)C=C(R)(R)]で表されるオレフィン−ジエン系共重合体である上記(1)記載のゴム組成物。(但し、R、R、R、Rは水素又は炭素数が1〜4のアルキル基である。)
(3)オレフィン−ジエン系共重合体がイソブチレン−イソプレン共重合体及びジエン系モノマーとエチレンおよびプロピレンの少なくとも1以上とを重合させた共重合体である上記(1)又は(2)記載のゴム組成物。
(4)分散改良剤のダイポーラー窒素部分が、A1−C(A2)=N(A3)→O、A1−C≡N→O、及びA1−C≡N→N−A4の少なくとも1以上から選択され、該A1〜A4はそれぞれ異なっていても良い水素又は炭素数が20以下の基又は前記Bを連結する連結鎖であり、化合物が少なくともA1〜A4の1つ以上に前記Bが連結している上記(1)〜(3)の何れかに記載のゴム組成物。
(5)化合物のA1〜A4は、水素、炭素数が1〜20の範囲にあるアルキル基、及び炭素数が6〜20の範囲にあるアリール基(但し、芳香族環にはニトロ基、シアノ基、クロロ基、ブロモ基、アシル基、カルボニルアルキル基、アルキル基、及びアルコキシル基を有してよい。)の何れか1つから選択される基、又はそれらの連結鎖である上記(4)記載のゴム組成物。
(6)前記部分Bの窒素含有複素環がオキサゾリン又はチアゾリンである上記(4)又は(5)記載のゴム組成物。
(7)前記の化合物が、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン、フェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、フェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−トリル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、4−トリル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−メトキシフェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、4−メトキシフェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトリルイミン、フェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトリルイミン、フェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルイミンの少なくとも1以上のものからなる上記(6)記載のゴム組成物。
(8)分散改良剤がゴム成分100質量部に対して0.1〜30質量部含まれる上記(1)〜(7)のいずれかに記載のゴム組成物。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のゴム組成物であって、ゴム成分と分散改良剤とは予め混練されているゴム組成物。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載のゴム組成物をタイヤゴムに使用するタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
本発明のゴム組成物は、特定の分散改良剤を配合することで、不飽和度の小さいオレフィン−ジエン系共重合体をゴムとして加えても、低発熱性に優れ、耐オゾン性が優れる。このため、ゴム組成物の使用により、タイヤ性能の優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る好ましい実施をするための最良形態を詳述する。尚、本発明は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分中に、補強充填剤の分散を改良する分散改良剤を配合する。
【0010】
本発明に係るゴム組成物のゴム成分中には、ゴム成分として、ヨウ素価が350以下、好ましくは、100以下、より好ましくは、30以下にあるオレフィン−ジエン系共重合体が含まれる。また、これらのオレフィン構造部分は、[(R)(R)C=C(R)(R)]で表され、R、R、R、Rは水素又は炭素数が1〜4のアルキル基である。
これらのゴム成分としてのオレフィン−ジエン系共重合体は20質量%以上である。好ましくは、60〜100質量%の範囲である。このような範囲であれば、ゴム組成物は十分な耐オゾン性を発揮する。
このようなオレフィン系共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体にジエン系モノマーを更に共重合した重合体(EPDM)、プロピレン−ブタジエン共重合体(PBR)、イソブチレン−イソプレン(IIR)等が挙げられる。
また、一般的な特に限定されないタイヤ製品等に使用することができるゴム成分としては、例えば、以下のゴム成分を挙げることができる。
ゴム成分は大別して、天然ゴム、及び合成ゴムから選択され、両者を混合使用しても良い。合成ゴムは、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、ジエン系ゴムが好ましく、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等がある。これらのゴム成分は一般に、ヨウ素価が350を超える。
【0011】
本発明に使用するダイポーラー窒素を含む部分Q、及び酸素又は硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環部分Bを有する化合物を、上述の天然ゴム(NR)及び/又は合成ジエン系ゴムに加えると、ゴム二重結合部分(P)と化合物の部分Qが下記反応式(1)〜(3)の反応が生じる。ゴムマスターバッチの全体量当たり前記化合物0.1質量%以上を攪拌混合又は混練する。好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは、1〜15質量%の範囲である。前記化合物が0.1質量%未満では、化合物のゴムへの特性の関与が十分でなく、得られるゴム組成物に十分な低発熱性を付与することができない。一方、前記化合物が15質量%を超えると未反応の化合物がゴム内に多量に残留しゴム組成物に悪影響を与える。尚、ゴムマスターバッチには従来と同様にゴム粘度調整剤を添加することができる。但し、加硫剤及び加硫促進剤のようなゴム成分自体の骨格に影響を与えるものを同時に加えることは好ましくない。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
更に、本発明では、ゴム組成物の段階において、カーボンブラック(CB)或いはホワイトカーボン(又はシリカフィラー)等の充填剤と化合物部分Bが下記反応式(4)〜(15)式の反応が生じる。
【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

このような化合物の作用により、ゴム組成物においてカーボンブラック及びホワイトカーボンが十分に拡散される。その結果として、かかるゴムマスターバッチを用いたゴム組成物の低発熱性(損失弾性率tanδ)を更に改善し、それを用いた空気入りタイヤ及びオフロードタイヤの使用性能を更に高める。
【0019】
前記の化合物はダイポーラー窒素部分Qを含む限り本発明の化合物である。特に好ましいダイポーラー窒素部分の具体的なものとしては、A1−C(A2)=N(A3)→O(ニトロン系)、A1−C≡N→O(ニトリルオキサイド系)、及びA1−C≡N→N−A4(ニトリルイミン系)の3つが挙げられる。これらのダイポーラー窒素部分Qは、ゴム成分等のポリマー中の二重結合部分と上述の反応式(1)〜(3)で示すように反応結合するものである。
【0020】
上述のニトロン系、ニトリルオキサイド系、及びニトリルイミン系のダイポーラー窒素部分Qにおける各A1〜A4の基は、水素、又は炭素数が20以下の基或いは連結鎖であることが望ましい。炭素数が20を超えると、化合物自体の分子量が嵩み、ゴム成分との反応性が悪くなる。
前記化合物は部分Bを有していることから、A1〜A4は部分Bを連結する連結鎖となり得る。但し、A1〜A3の場合、A1のみの場合、又はA1及びA4の場合は、少なくとも1つ以上が部分Bと連結しており、部分Bが複数存在していても良い。尚、A1〜A4はそれぞれ異なるものであっても良く、同一のものであっても良い。
【0021】
前記の化合物のA1〜A4の具体的な基又は連結鎖としては、具体的に水素、炭素数が1〜20の範囲にあるアルキル基、及び炭素数が6〜20の範囲にあるアリール基(但し、芳香族環にはニトロ基、シアノ基、クロロ基、ブロモ基、アシル基、カルボニルアルキル基、アルキル基、及びアルコキシル基を有してよい。)の何れか1つから選択される基、又はそれらの連結鎖である。前記アルキル基、アシル基、カルボニルアルキル基、及びアルコキシル基は、分岐鎖を有していても良く、またシクロ環があっても良い。またA1〜A4はそれぞれ異なっても良い。
【0022】
前記の化合物の部分Bは、オキゼチン系、チオゼチン系、オキサゾリン系、チアゾリン系、テトラヒドロオキサジン系及びテトラヒドロチオキサジン系等の酸素又は硫黄を有する窒素含有複素環からなる。特に、下記構造式(I)〜(III)で表される4〜6員の窒素含有複素環からなる(表中のXは、酸素:O又は硫黄:S)。中でも、構造式(II)のオキサゾリン及びチオゾリンが望ましい。また、各構造式中において、R1〜R7は、水素、又は炭素数が20以下の基又は連結鎖である。また、A1〜A4の場合と同様に各構造式において、R1〜R3の場合、R1〜R5の場合、又はR1〜R7の場合には、少なくとも1以上がQと連結しているA1〜A4に相当する。
上述したように部分Bは、前記反応式(4)〜(15)の結合反応が起こり、カーボンブラック及びホワイトカーボンをゴム成分のポリマー中に均一に取り込むことができる。
【0023】
【化7】

【0024】
前記の化合物の具体的なものとしては、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン、フェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、フェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−トリル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、4−トリル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−メトキシフェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、4−メトキシフェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトリルイミン、フェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトリルイミン、フェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルイミン等を挙げることができる。
【0025】
このような化合物において、例えば、フェニル−N−(4−オキサゾリル−フェニル)−ニトロン(略称PON)を具体的に挙げることができる。
【0026】
【化8】

【0027】
前記の化合物の製造方法は、過度の実験をしなくても製造できる。例えば、PONに関しては後述する実施例においてその製造方法を示すことができる。また、他の本化合物についても、他の開始物質及び中間物質を適宜選択することにより代表的な製造方法で製造することができる。
このような分散改良剤は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜30質量部、好ましくは、1〜10質量部の範囲で配合する。
【0028】
次に、本発明のゴム組成物について製造について説明する。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と分散改良剤とを予め混合処理したブレンド物として使用することが好ましい。従って、本発明のゴム組成物には、ブレンド物の後から通常のその他の充填剤を配合させる。しかしながら、分散改良剤はその他の充填配合剤と一緒にゴム成分と混合混練することもできる。
ブレンド物の製造方法は、既に公知の混合方法を用いる。例えば、固形ゴム成分と前記化合物とをバンバリーミキサー、押出機、ロールなどにかけてドライミキシングする方法、エマルジョン、天然ラテックスのような溶液状のゴム成分にスラリー化した化合物を攪拌混合し、乾燥する方法等が挙げられ、好ましくは溶液状態で攪拌混合及び乾燥してブレンド物を得ることが好ましい。
【0029】
本発明のゴム組成物には、ナフテン系、アロマ系等のプロセスオイル(アロマオイル)、スピンドルオイル等の軟化剤を添加することができる。
本発明のゴム組成物には、シリカ及び/又はカーボンブラック(C/B)等の充填剤が添加される。
充填剤のカーボンブラック(C/B)は、HAF、ISAF、SAFなどのカーボンブラックが好ましい。ゴム組成物中の充填剤の総含有量はゴム成分100質量部に対して、20〜100質量部が好ましく、20質量部未満では弾性率が低下してタイヤの操縦安定性が低下する。100質量部をこえると、発熱性が悪化し、タイヤの耐久性が低下する。
さらに、本発明のゴム組成物には、前記の共重合体に加えて、従来から使用されているステアリン酸などの脂肪酸類を使用してもよい。本発明の組成物は前記の含有組成の他にシランカップリング剤、老化防止剤、加硫促進剤、亜鉛華、硫黄などを含有させることができる。
【0030】
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、前記のように各種薬品を含有させた本発明のゴム組成物が未加硫の段階でトレッド用部材等に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。このようにして得られた本発明のタイヤは、低転がり抵抗性(低発熱性又は損失弾性率)が優れている。尚、空気入りタイヤには窒素などの不活性ガスを導入してもよい。
【0031】
(実施例)
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
先ず、ダイポーラー窒素化合物、及びゴム組成物の製造方法について順に説明する。
ダイポーラー窒素を含む部分Q、及び酸素又は硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環を含む部分Bを有する化合物(C)は、フェニル−N−(4−オキサゾリル−フェニル)−ニトロン(略称PON)を以下の如く製造した。
【0032】
<PONの製造>
クロロホルム300mlに15.0gの4−ホルミル−ベンゾイルクロライド(1当量)を攪拌混合した溶液に、クロロホルム200mlに10.9gの2−アミノエタノール(2当量)を加えた溶液を−10℃下で滴下して加えた。この溶液を25℃に2時間おいた後、白色沈殿物が濾過により除かれた。濾液はロータリーエバポレータにより乾燥させ、17.4gの黄色液である4−ホルミル−N−(2−ヒドロキシエチル)−ベンザミドを得た。
濃硫酸50mlに4−ホルミル−N−(2−ヒドロキシエチル)−ベンザミド17.4gを攪拌しながら滴下し、混合物を100℃で1時間加熱した。この溶液に20%水酸化ナトリウム及びクロロホルムの各500mlを攪拌混合しながら滴下し、温度を15℃以下に維持した。生成層が分離され乾燥されて、6.3gの4−(2−オキサゾリル)−ベンズアルデヒドを得た。
4−(2−オキサゾリル)−ベンズアルデヒド(1当量、6.3g)とN−フェニル−ヒドロキシアミン(1当量、3.9g)との混合物を100mlのエタノール中で30分間還流して、50ml量に濃縮した。水50mlの同量を添加して、混合物を冷蔵庫に5℃にて一昼夜冷却した。濾過分離及び乾燥により白色結晶が得られ、6.7gのフェニル−N−(4−オキサゾリル−フェニル)−ニトロンを生成した。
【0033】
次に、以下の如くにゴム組成物を製造した。
各実施例及び各比較例のゴム組成物を下記表1及び2に示した。表1及び表2の配合表に従ってバンバリーミキサーを使用してゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を160℃20分の条件で加硫して各種試験片を作製し、以下の各評価に供した。
ここで、分散改良剤の上記PONは他の配合剤と同時に添加したもの、他の配合剤とは別に予めゴム成分とプレブレンドしたもの、の配合方法で実施し、プレブレンドの場合は、110℃、70rpmで3分間混練した。
尚、表中の略記は以下のものである。
【0034】
スチレンブタジエン共重合体(EBR):以下の如く合成した。
十分に乾燥した400ml耐圧ガラス反応器に、1,3−ブタジエン4.55g(0.084mol)を含むトルエン溶液300mlを添加した後、エチレンを0.8MPaで導入した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にトリスビストリメチルシリルアミドガドリニウム(Gd[N(SiMe)34.0μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(メンタフルオロフェニル)ボレート(MeNHPhB(C)41.0μmol、及びトリイソブチルアルミニウム1.19mmolを仕込み、トルエン8mlに溶解させて触媒溶液とした。そのグローブボックスから触媒溶液を取り出し、ガドリニウム換算で33.7μmolとなる量をモノマー溶液へ添加し、室温で180分間重合を行った。重合後、2、2−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで共重合体を分離し、70℃で真空乾燥し重合体を得た。得られた共重合体(EBR)の収量は22.50gであり、エチレン/ブタジエン=90/10、ヨウ素価が30であった。
【0035】
EPDM:JSR(株)製のEP35であり、ヨウ素価が26である。
IIR:JSR(株)製のButyl268であり、ヨウ素価が9である。
SBR:JSR(株)製の#1500であり、ヨウ素価が360である。
PON:フェニル−N−(4−オキサゾリル−フェニル)−ニトロンである。
カーボンブラック:HAFである。
老化防止剤:住友化学社製のアンチゲン6Cである。
加硫促進剤:大内新興化学社製のノクセラーCZである。
【0036】
<評価方法>
次ぎに、各実施例及び各比較例についてのゴム組成物の耐オゾン性及びタイヤの性能試験を行った。その結果を表1に示した。性能試験は発熱性の評価を以下のように行った。
1.低低発熱性
10km/hの速度・ステップロード条件のドラムシステムを実施し、トレッドの一定の深さの位置の温度を測定し、比較例1を対照値(コントロール)100として、各例を指数で表示した。指数の値が大きい程、低発熱性に優れていることを示す。
2.耐オゾン性
JIS K6259に限定されているオゾン試験を行った。試験条件は、温度40℃、オゾン濃度100ppm、伸長率10%で100時間動的オゾン試験を行った。放置後の試験片の亀裂状態を、JTSK6259に従って評価した。
○:肉眼で亀裂なし
A2:亀裂少数で、肉眼で確認できるもの。
C4:亀裂無数で、亀裂が深くて大きいもの(1mm以上3mm未満)。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のゴム組成物は、不飽和度の低い共重合体ゴムをジエン系ゴムに含ませることによって耐オゾン性を高めると共に、これらの共重合体を配合したことによる補強性充填剤の偏りをなくし、低発熱性の優れたゴム組成物であり、タイヤなどの性能向上に供する産業上の利用可能性の高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分中に、ヨウ素価が350以下のオレフィン−ジエン系共重合体を20質量%以上含み、分散改良剤としてダイポーラー窒素を含む部分Q、及び酸素又は硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環部分Bを有する化合物を含むゴム組成物。
【請求項2】
オレフィン−ジエン系共重合体は、該オレフィン部分が構造式[(R)(R)C=C(R)(R)]で表されるオレフィン−ジエン系共重合体である請求項1記載のゴム組成物。(但し、R、R、R、Rは水素又は炭素数が1〜4のアルキル基である。)
【請求項3】
オレフィン−ジエン系共重合体がイソブチレン−イソプレン共重合体及びジエン系モノマーとエチレンおよびプロピレンの少なくとも1以上とを重合させた共重合体である請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項4】
分散改良剤のダイポーラー窒素部分が、A1−C(A2)=N(A3)→O、A1−C≡N→O、及びA1−C≡N→N−A4の少なくとも1以上から選択され、該A1〜A4はそれぞれ異なっていても良い水素又は炭素数が20以下の基又は前記Bを連結する連結鎖であり、化合物が少なくともA1〜A4の1つ以上に前記Bが連結している請求項1〜3の何れかの項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
化合物のA1〜A4は、水素、炭素数が1〜20の範囲にあるアルキル基、及び炭素数が6〜20の範囲にあるアリール基(但し、芳香族環にはニトロ基、シアノ基、クロロ基、ブロモ基、アシル基、カルボニルアルキル基、アルキル基、及びアルコキシル基を有してよい。)の何れか1つから選択される基、又はそれらの連結鎖である請求項4記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記部分Bの窒素含有複素環がオキサゾリン又はチアゾリンである請求項4又は5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記の化合物が、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン、フェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、フェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−トリル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、4−トリル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−メトキシフェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、4−メトキシフェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトリルイミン、フェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトリルイミン、フェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルイミンの少なくとも1以上のものからなる請求項6記載のゴム組成物。
【請求項8】
分散改良剤がゴム成分100質量部に対して0.1〜30質量部含まれる請求項1〜7のいずれかの項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項1〜8項のいずれかの項に記載のゴム組成物であって、ゴム成分と分散改良剤とは予め混練されているゴム組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかの項に記載のゴム組成物をタイヤゴムに使用するタイヤ。

【公開番号】特開2012−184343(P2012−184343A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48898(P2011−48898)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】