説明

ゴム組成物

【課題】トラック・バス用タイヤ(TBR)、または航空機用タイヤなどのタイヤのトレッドゴムを張り替えて再利用する更生タイヤのクッションゴム、並びに、別々に加硫されたゴム部材どうしを接着させて作製されるタイヤにおいて、加硫済ゴム部材の間に挟み共加硫させて接着させる接着用に好適な生産性に優れるゴム組成物を提供する。
【解決手段】ゴム成分100質量部に対して、アルデヒドアミン類0.3〜2.5質量部と、テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン及び1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサンから選ばれる少なくとも1つの化合物0.1〜1.5質量部と、チアゾール系加硫促進剤0.1〜2.5質量部とを含有してなることを特徴とするゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック・バス用タイヤ(TBR)、または航空機用タイヤのような空気入りタイヤにあって、トレッドゴムが摩耗したタイヤのトレッドゴムを張り替えて再利用する更生タイヤ製造において、特に、加硫済みのプリキュアトレッドゴムを未加硫のクッションゴムを介してバフした台タイヤに加硫接着させるプレキュアトレッド(PCT)更生方式を採用した更生タイヤのクッションゴムに好適なゴム組成物、並びに、別々に加硫されたゴム部材同士を接着させて作製されるタイヤにおいて、加硫済ゴム部材の間に挟み共加硫させて接着させる接着用に好適なゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラック・バス用ラジアルタイヤの更生タイヤ製造においては、摩耗して一次寿命を終えたタイヤ(以下、「台タイヤ」という)のトレッド面をバフし、この上に、予め加硫された更生トレッドゴム部(=プレキュアトレッド)を貼りつける方法が代表的なものの1つとして知られている。この方法は、コールド(COLD)方式又はプレキュア方式等の名称で呼ばれ、台タイヤに未加硫のトレッドゴムをのせてモールド加硫するホット(HOT)方式と区別されている。
【0003】
上記プレキュア方式では、台タイヤとプレキュアトレッドを接着するために、未加硫のクッションゴムが、まず台タイヤに貼られ、更に、その上にプレキュアトレッドを貼り付けた上で、加硫缶で100〜140℃の温度で加熱する方式が一般的である。
この方式に用いられるクッションゴムは、台タイヤのバフ目に流れ込み、接着面を平滑化し、台タイヤとプレキュアトレッド双方と共加硫することによって、プレキュアトレッドと台タイヤの接着性を確保する機能を有するものである。
【0004】
このクッションゴムは、比較的低温領域(100℃付近)での加硫で、高い架橋度を得ることが必要であり、加硫生産性向上のため、100℃付近加硫速度が速いことが好ましい。一方、クッションゴムは、予めシート状に圧延された状態で台タイヤに貼り付けられる場合や、押し出し機により台タイヤに直接塗り付けられる場合があるが、圧延、押し出しいずれの工程でも70〜100℃程度の温度への上昇を伴うため、圧延、押し出し工程時に加硫が進行すると界面を共加硫させることができなくなるため、100℃付近の温度でもある程度の時間は加硫が進行しないスコーチタイムは長い方が好ましい。すなわち、100℃付近の温度での高い架橋度を示す加硫最大トルクであるFmax値は高く、かつ、加硫がほぼ完了する加硫速度T0.9は速い(時間が短い)が、ゴム硬化が始まる加硫速度T0.1は遅い(時間が長い)方が好ましいという2律背反を高度に両立化する必要がある。
【0005】
このような特性が要求されるクッションゴム用等に好適なゴム組成物としては、例えば、(1)特定のチウラム類化合物と、ジベンゾチアジスルフィド類等の化合物、およびアミン類等の化合物とを配合してなるゴム組成物をクッションゴムに用いることを特徴とするタイヤ(例えば、本願出願人による特許文献1参照)や、(2)ベンゾチアジスルフィド等の加硫促進剤化合物と、テトラベンジルチウラムジスルフィド等の超加硫促進剤化合物と、硬化用アミン活性化剤を配合してなるゴム組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、上記アミン類等の化合物として、アミン類、グアニジン類、アルデヒドアミン類、およびアルデヒドアンモニア類からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を0.1〜2.0重量部と規定しているが、該アミン類等の中でのアルデヒドアミン類の優位性を言及しておらず、また、好ましい配合量範囲も少なく、しかも、本発明とは配合成分が異なるものである。
また、上記特許文献2の技術では、ベンゾチアジスルフィド等の加硫促進剤化合物と、硬化用アミン活性化剤とを併用するものであり、テトラベンジルチウラムジスルフィド等の超加硫促進剤化合物に関しては、テトラベンジルチウラムジスルフィドおよび亜鉛ジベンジルジチオカルバメートからなる群しか規定しておらず、発がん性のニトロソアミン先駆体を含まないその他の化合物に関しては全く記載や示唆はないものであり、未だ100℃付近の温度での高い架橋度と、加硫速度T0.9は速い(時間が短い)が、ゴム硬化が始まる加硫速度T0.1は遅い(時間が長い)こととなる2律背反を高度に両立化した生産性に優れるゴム組成物が得られていないのが現状である。
更に、別々に加硫されたゴム部材の間に接着用のゴム組成物を挟み共加硫させて作製されるタイヤ等においても、未だ十分なゴム組成物が得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−356102号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平8−59898号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、100℃付近の温度での高い架橋度と、加硫時間の短時間化と、耐スコーチ性(加工時発熱による硬化防止)に優れる更生タイヤのクッションゴムに好適なゴム組成物、並びに、別々に加硫されたゴム部材どうしを接着させて作製されるタイヤにおける、加硫済ゴム部材の間に挟み共加硫させて接着させる接着用に好適なゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、ゴム成分100質量部に対して、特定の加硫促進剤を好適に組み合わせると共に、その各含有量の範囲を特定の範囲とすることにより、上記目的のゴム組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) ゴム成分100質量部に対して、アルデヒドアミン類0.3〜2.5質量部と、テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン及び1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサンから選ばれる少なくとも1つの化合物0.1〜1.5質量部と、チアゾール系加硫促進剤0.1〜2.5質量部とを含有してなることを特徴とするゴム組成物。
(2) 120℃以下の加硫温度で加硫されることを特徴とする上記(1)記載のゴム組成物。
(3) ゴム組成物が更生用タイヤのクッションゴムであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のゴム組成物。
(4) 上記(1)〜(3)の何れか一つに記載のゴム組成物を更生用タイヤのクッションゴムとしたことを特徴とするタイヤ。
(5) 上記(1)〜(3)の何れか一つに記載のゴム組成物を、加硫済のタイヤ用ゴム部材と加硫済のタイヤ用ゴム部材の間に挟み共加硫させることによって接着させて製造されたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、100℃付近の温度での高い架橋度と、加硫時間の短時間化と、耐スコーチ性(加工時発熱による硬化防止)により生産性に優れる更生タイヤのクッションゴム、並びに、別々に加硫されたゴム部材どうしを接着させて作製されるタイヤの接着用に好適なゴム組成物が提供される。
また、本発明のタイヤでは、上記ゴム組成物を更正タイヤのクッションゴムに用いることにより更生タイヤのタイヤ性能を損なうことなく生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、アルデヒドアミン類0.3〜2.5質量部と、テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン及び1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサンから選ばれる少なくとも1つの化合物0.1〜1.5質量部と、チアゾール系加硫促進剤0.1〜2.5質量部とを含有してなることを特徴とする。
【0013】
本発明に用いるゴム成分としては、天然ゴム、ジエン系合成ゴムなどを用いることができる。
好ましくは、天然ゴム及び/又は合成ポリイソプレンゴムが、ゴム成分100質量部中に、60〜100質量部含まれることが好ましく、より好ましい範囲は、80〜100質量部である。天然ゴム及び/又は合成ポリイソプレンゴム以外のゴム成分としては、特に制限ないが、SBR、BR等のジエン系合成ゴムが好ましい。
本発明の対象となるプレキュア方式の更生タイヤのクッションゴムに好適に適用されるゴム組成物、または別々に加硫した部材を加硫接着させて製造するタイヤに好適に適用される接着用のゴム組成物とする場合に、界面接着性を低下させない点、高強度のクッションゴム、接着用ゴムなどを得る点から、天然ゴム及び/又は合成ポリイソプレンゴムの含有量を60質量部以上とすることが好ましいものとなる。
【0014】
本発明に用いるアルデヒドアミン類及びテトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン、1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサン、及びチアゾール系の3種類は、加硫促進剤として用いるものである。
アルデヒドアミン類としては、例えば、n−ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ブチルアルデヒド−アセトアルデヒド−ブチリデンアニリン反応物、ブチルアルデヒド−モノブチルアミン縮合物、ブチルアルデヒド−ブチリデンアニリン反応物、ヘプトアルデヒド−アニリン反応物、α−エチル−β−プロピルアクロレイン−アニリン縮合物等の少なくとも1種が挙げられる。好ましくは、入手しやすさの点から、n−ブチルアルデヒド−アニリン縮合物の使用が望ましい。
また、本発明では、チラウム系加硫促進剤の中で、テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン及び1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサンから選ばれる少なくとも1つの化合物を用いるものであり、これ以外のチラウム系であるテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTD)等の場合は、発がん性のニトロソアミン先駆体を含むこととなり、本発明の効果を発揮できないこととなる。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、メルカプトベンゾチアゾール(M)、ジベンゾチアジスルフィド(DM)の少なくとも1種が挙げられる。好ましくは、本発明の更なる効果を発揮せしめる点から、ジベンゾチアジスルフィド(DM)の使用が望ましい。
【0015】
本発明において、上記3種類の各含有量の範囲は、ゴム成分100質量部に対して、アルデヒドアミン類は0.3〜2.5質量部であり、テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン及び1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサンから選ばれる少なくとも1つの化合物の含有量は、0.1〜1.5質量部であり、チアゾール系加硫促進剤の含有量は0.1〜2.5質量部である。
このアルデヒドアミン類、テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン及び1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサンから選ばれる少なくとも1つの化合物、及びチアゾール系加硫促進剤の含有量がそれぞれの下限値である0.3、0.1、及び0.1質量部未満であると、架橋度Fmaxまたは加硫速度T0.9が低下することとなる。一方、アルデヒドアミン類、テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン及び1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサンから選ばれる少なくとも1つの化合物、チアゾール系加硫促進剤の含有量がそれぞれの上限値である2.5、1.5、及び2.5質量部を超えると、加硫速度T0.9が上昇(値は低下)するだけでなく、加硫速度T0.1も速く(値は低下)なり過ぎ、耐スコーチ性が悪化する問題が生じることとなる。
【0016】
好ましくは、良好な架橋度Fmaxと、好適な加硫速度T0.9及び加硫速度T0.1とを発揮せしることにより、100℃付近の温度での高い架橋度と、加硫時間の短時間化と、耐スコーチ性を更に高度に両立する観点から、アルデヒドアミン類の含有量は、0.5〜2.0質量部、更に好ましくは、0.5〜1.5質量部とするのが望ましく、テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン及び1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサンから選ばれる少なくとも1つの化合物の含有量は、0.1〜1.0質量部、更に好ましくは、0.2〜1.0質量部とするのが望ましく、チアゾール系加硫促進剤の含有量は、0.5〜2.0質量部、更に好ましくは、0.5〜1.5質量部とするのが望ましい。
【0017】
本発明のゴム組成物においては、上記の各加硫促進剤、ゴム成分以外に、硫黄(不溶性硫黄)などの加硫剤の他、必要に応じて、補強充填材としてのカーボンブラックやシリカ、プロセスオイル、老化防止剤、亜鉛華,ステアリン酸、樹脂(レジン)等の通常ゴム工業で使用される薬品類等を適宜含有することができる。
硫黄(不溶性硫黄)などの加硫剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは、0.1〜10.0質量部、更に好ましくは1.0〜5.0質量部である。
【0018】
上記補強充填材として用いることができるカーボンブラックとしては、特に制限されないが、HAF(N330)以上の高補強カーボンブラックを含有することが好ましい。
本発明において、HAF以上の高補強カーボンブラックとは、ヨウ素吸着量やDBP吸着量等で評価される比表面積(m2/g)がHAFカーボンブラックと同等或いはそれより大きいカーボンブラックを指し、ゴム組成物に配合した時に弾性率や破壊強度を向上させる効果がHAFカーボンと同等或いはそれより高いカーボンブラックのことを意味する。
このN330以上のカーボンブラックの中でも好ましいのは、N330,N335、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N220、N234、特に好ましいのは、N330、N335、N339、N343、N347、N220が望ましい。
このHAF(N330)以上のカーボンブラックを使用することにより、更に高破壊強度と高耐熱性を獲得することができるゴム組成物が得られるものとなる。
【0019】
これらのカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、30〜60質量部とすることが好ましく、更に好ましくは、30〜50質量部含有することが望ましい。
このカーボンブラックの含有量が30質量部未満であると、機械的強度が不十分であり、一方、60質量部を越えると、発熱特性が悪くなり、または、未加硫時の粘度上昇、粘着力低下が生じ、バフ面凹凸への追従性の不足、未加硫時接着不良等の問題点が生じる場合がある。
【0020】
本発明のゴム組成物では、更生タイヤに適用する場合は、当該ゴム組成物を、台タイヤと再生用トレッドゴム部材との間に配設するクッションゴムに好適に用いることができる。この場合、台タイヤと更生用プレキュアトレッドゴムとをクッションゴムを介して貼り付けた後、一体加硫する。ここで、加硫温度は、好ましくは120℃以下の加硫温度で加硫されることが望ましく、更に好ましくは、100〜120℃であり、該温度範囲内であれば、加硫済みの台タイヤの過加硫を抑制することができ、また、商業生産として実用的な加硫時間で生産することができる。
【0021】
更に、本発明のゴム組成物では、別々に加硫されたゴム部材どうしを接着させて作製されるタイヤに適用する場合は、加硫済ゴム部材の間に挟み共加硫させて接着させる接着用に好適に適用することができる。この場合の加硫済ゴム部材の間に挟み共加硫を行うが、加硫済ゴム部材に過加硫が起こらないようにする必要がある。この場合の加硫温度は、好ましくは120℃以下の加硫温度で加硫されることが望ましく、更に好ましくは、100〜120℃であり、該温度範囲内であれば、加硫済ゴム部材に過加硫の過加硫を抑制することができ、また、商業生産として実用的な加硫時間で生産することができる。
【0022】
このように構成される本発明のゴム組成物では、ゴム成分100質量部に対して、アルデヒドアミン類0.3〜2.5質量部と、テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン及び1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサンから選ばれる少なくとも1つの化合物0.1〜1.5質量部と、チアゾール系加硫促進剤0.1〜2.5質量部とを含有させることにより、更生タイヤのクッションゴム、または、別々に加硫されたゴム部材どうしを接着させて作製されるタイヤにおいて加硫済ゴム部材の間に挟み共加硫させて接着させる接着用のゴムにおいては、100℃付近の温度での高い架橋度を示す加硫最大トルク(Fmax値)は高く、かつ加硫がほぼ完了する加硫速度T0.9は速い(時間が短い)が、ゴム硬化が始まる加硫速度T0.1は遅い(時間が長い)方が好ましいという2律背反を高度に両立化することができるものとなり、生産性に優れるタイヤを製造することができるゴム組成物が得られることとなる。
これに対して、本発明で用いるアルデヒドアミン類ではなく、従来技術となる特開2002−356102号公報(特許文献1)の実施例で示されるグアニジン類をアミン類として適用しても、加硫速度T0.9を速くする効果がアルデヒドアミン類対比低く、効果を増すために、多量に使用すると、加硫速度T0.1が速くなり過ぎてスコーチ性が悪化してしまうこととなる(この点については更に後述する比較例等において詳述する)。
本発明では、上記3種のアルデヒドアミン類0.3〜2.5質量部、及びテトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン及び1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサンから選ばれる少なくとも1つの化合物を0.1〜1.5質量部、加えて、チアゾール系加硫促進剤を0.1〜2.5質量部含有させることによって、初めて、100℃付近の温度での高い架橋度と、加硫時間の短時間化と、耐スコーチ性(加工時発熱による硬化防止)により生産性に優れるゴム組成物が得られるものである。
【0023】
本発明のタイヤは、上記構成のゴム組成物を更生用タイヤのクッションゴム、すなわち、更生トレッドゴムと更生台タイヤを接合するクッションゴムに用いたことを要旨とするものであり、これ以外の構造等は特に限定されるものではない。
本発明のタイヤでは、更生タイヤのタイヤ性能を損なうことなく生産性を向上させることができることとなる。また、本発明のゴム組成物を別々に加硫されたゴム部材どうしを接着させて作製されるタイヤにおいて、加硫済ゴム部材の間に挟み共加硫させて接着させる接着用ゴムに適用することにより、タイヤ性能を損なうことなく生産性を向上させることができるものとなる。
【実施例】
【0024】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0025】
(実施例1〜14及び比較例1〜10)
下記表1及び2に示す配合処方のゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物について、下記方法により、加硫最大トルク(Fmax)、加硫速度T0.9及びT0.1の測定を行った。
なお、本実施例は、単に例示であり、通常用いられるシリカ等の補強充填剤、粘着付与剤(タッキファイヤ)、および軟化剤(プロセスオイル)等の各種ゴム用配合剤の使用を制限するものではない。
【0026】
〔加硫最大トルク(Fmax)の測定方法〕
JIS K6300−2に準拠して、温度105℃±1℃で測定した加硫トルクカーブの最大値を測定した。この加硫最大トルク Fmaxは、105℃における架橋度の指標を示すものである。
【0027】
〔加硫速度T0.9の測定方法〕
JIS K6300−2に準拠して、温度105℃±1℃で測定した加硫トルクカーブの最大値の90%を得るまでに要する時間(分)を測定した。この加硫速度T0.9は、加硫完了までの加硫速度の指標を示すものであり、値が小さいほど加硫速度が速いことを表す。
【0028】
〔加硫速度T0.1の測定方法〕
JIS K6300−2に準拠して、温度105℃±1℃で測定した加硫トルクカーブの最大値の10%を得るまでに要する時間(分)を測定した。この加硫速度T0.1は、耐スコーチ性を示す指標であり、値が小さい程、架橋反応が始まるまでの誘導期間が短くスコーチし易い(耐スコーチ性が悪い)ことを表す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
表1及び2中における*1〜*12の略号は、下記のとおりである。
*1:N−フェニル−N´−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン
*2:N−(1,3−ジメチル−ブチル)−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン
(大内新興化学社製 ノクラック 6C)
*3:Polymerized2、2、4−トリメチル−1、2 ジヒドロキノリン:TMDQ(大内新興化学社製 ノクラック 224)
*4:アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(SI GROUP−RIBECOURT社製 R7521P)
*5:BAA1:n−ブチルアルデヒド−アニリン縮合物(大内新興化学社製 ノクセラー8)
*6:BAA2:n−ブチルアルデヒド−アニリン縮合物(AKROCHEM社製 A40B)
*7:DM:ジベンゾチアジスルフィド(大内新興化学工業社製、ノクセラーDM)
*8:TOT:テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドの33%シリカ担持品(シリカ/TOT=1/3、大内新興化学社製、ノクセラーTOT−N)
*9:KA9188:1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン(LANXESS社製、VULCUREN KA9188)
*10:HDC:1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサン
*11:DPG:ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製、ノクセラーD)
*12:TBZTD:テトラベンジルチウラムジスルフィド
【0032】
上記表1及び2の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜14のゴム組成物は、本発明範囲外となる比較例1〜10のゴム組成物に較べ、100℃付近の温度での高い架橋度を示す加硫最大トルク(Fmax値)は高く、かつ加硫がほぼ完了する加硫速度T0.9は速い(時間が短い)が、ゴム硬化が始まる加硫速度T0.1は遅い(時間が長い)方が好ましいという2律背反を高度に両立化することができることが判明した。
これに対して、本発明の範囲外となる比較例を個別的にみると、比較例1〜4は、ジフェニルグアニジン(DPG)、チアゾール系加硫促進剤(DM)及びテトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)の3種の組み合わせ、比較例5は、チアゾール系加硫促進剤(DM)及びテトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)の2種の組み合わせ、比較例6はアルデヒドアミン類(BAA)及びテトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)の2種の組み合わせ、比較例7はアルデヒドアミン類(BAA)及びチアゾール系加硫促進剤(DM)の2種の組み合わせ、比較例8は、ジフェニルグアニジン(DPG)及びチアゾール系加硫促進剤(DM)の2種の組み合わせ、比較例9及び10は、アルデヒドアミン類(BAA)、チアゾール系加硫促進剤(DM)及びテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)の3種の組み合わせであり、これらの場合、本発明の効果を発揮できないことが判った。
また、実施例1〜6と比較例1〜4は、チアゾール系加硫促進剤(DM)及びテトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)の2種の組み合わせに対して、アルデヒドアミン類(BAA)対ジフェニルグアニジン(DPG)との比較であり、加硫速度T0.1が速くなり過ぎてスコーチ性が悪化してしまうこととなる。
更に、比較例9、10は、従来技術となる特開平8−59898号公報(特許文献2)の実施例(組成物1.5)で示されるアルデヒドアミン類、チアゾール系加硫促進剤(DM)及びテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)の組み合わせであるが、この場合も加硫速度T0.1が速くなり過ぎてスコーチ性が悪化してしまうこととなる。
したがって、上記実施例1〜14及び比較例1〜10の結果から明らかなように、本発明となる処方のゴム組成物では、100℃付近の温度での高い架橋度と、加硫時間の短時間化と、耐スコーチ性(加工時発熱による硬化防止)により生産性に優れるゴム組成物が得られることが判明した。
また、上記実施例1〜14のゴム組成物を、更正タイヤのクッションゴムに適用することにより、また、別々に加硫されたゴム部材どうしを接着させて作製されるタイヤにおいて、加硫済ゴム部材の間に挟み共加硫させて接着させる接着用ゴムに適用することにより、タイヤ性能を損なうことなく生産性を向上させることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量部に対して、アルデヒドアミン類0.3〜2.5質量部と、テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、1,6−ビス(N,N´−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン及び1,6−ビス{N,N´−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ}−ヘキサンから選ばれる少なくとも1つの化合物0.1〜1.5質量部と、チアゾール系加硫促進剤0.1〜2.5質量部とを含有してなることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
120℃以下の加硫温度で加硫されることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
ゴム組成物が更生用タイヤのクッションゴムであることを特徴とする請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一つに記載のゴム組成物を更生用タイヤのクッションゴムとしたことを特徴とするタイヤ。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか一つに記載のゴム組成物を、加硫済のタイヤ用ゴム部材と加硫済のタイヤ用ゴム部材の間に挟み共加硫させることによって接着させて製造されたことを特徴とする空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−32440(P2013−32440A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169054(P2011−169054)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】