説明

サトウダイコンの抽薹を制御するトランスジェニック植物およびそのための方法

本発明は、サトウダイコン抽薹および開花制御の分野、特に、春化応答を抑制するための方法およびトランスジェニックサトウダイコン植物に関する。特に、本発明は、FLC遺伝子の過剰発現によるか、またはAGL20遺伝子発現を抑制することによる、サトウダイコン春化を調節するためのサトウダイコン植物およびその方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サトウダイコン抽薹および開花制御の分野、特に、春化応答を抑制するための方法およびトランスジェニックサトウダイコン植物に関する。
【背景技術】
【0002】
サトウダイコンは、数千年の間、甘味源として栽培されてきたが、その砂糖源としての潜在性は、18世紀まで発見されていなかった。サトウダイコンは、アカザ科に属する越年生植物である。その通常の生活環は、2年で完了する。一年目には、大きな多肉根が発達し、それは、スクロールの形態でのエネルギーの貯蓄として役立つ。このために、それは、一年生植物として栽培される。二年目には、それは、花および種子を産生する。たまたま一年目に延長した低温期間が存在すると、種子柄は、すでに発芽し得る。この遺伝学的に決定された温度誘導は、抽薹と呼ばれる現象を引き起こす。糖抽出のためのビートの収穫は、越年生周期を半分に削減するが、その時、スクロース産生は、その最盛期にある。
【0003】
すでに記載したとおり、完全なサトウダイコン生活環の絶対的な部分は、低温誘導春化であり、それは、植物の抽薹を誘導する。抽薹の可能性は、最大温度が12℃を超えない日数に関連して増大する。これは、早播き法を適用するとき、収量の減少を生じ得て、作物の1 % 抽薹(bolters)は、0.4 - 0.7%糖収量を減少させると見積もられている。
【0004】
サトウダイコンを収穫するための2つの方法、春作および秋作が存在し、一方で、それらは、それぞれ、南の穏やかな気候で、または北半球で実施される。両方法は、抽薹耐性の異なる程度を有する品種に依存する。抽薹耐性は、温度、長さ、薹誘導のために耐え得る照射限界の影響を受け、サトウダイコン育種における重要な特色である。春化を妨害するか、春化処理された植物を脱春化させるか、または花もしくは生存種子を抑制することにより抽薹および開花の完全な制御を可能にすることで、サトウダイコン作物が、次の季節での抽薹および開花の危険なしに、北半球地方で秋に播種されることが可能になる。春作から冬作へのこの変更は、栽培者が、秋にそれらの作物の畝を作り、来夏に収穫することを可能にする。小麦や菜種のような作物における冬作と春作の比較は、冬作が、常に、春作よりも高収量であることを示した。その結果は、作物の採算性および収益性を改善するであろう。さらなる利点は、春および冬作の成長を合わせ得る可能性であり、それは、2ヶ月から3ヶ月早く始めることによる収穫の延長を生じ、したがって、サトウダイコンの収穫、輸送および加工のために必要な設備およびインフラへの投資に対する改善された収益を可能にする。
【0005】
シロイヌナズナでの機能解析は、4つの異なる開花経路を区別した(Levy and Dean, 1998)。これらの4つの経路は、環境刺激、例えば、光周期および春化促進経路、または固有の成長シグナル、例えば、自律促進および開花抑制経路に割り当て得る。ある種では、開花の時期は、主に、環境因子、例えば、光周期、光質/量、春化および水または養分利用性により影響を受ける。他の種は、外部シグナルにあまり影響を受けず、内部シグナル、例えば、植物サイズまたは節の数に、より依存する。
【0006】
興味のある1つの遺伝子座は、シロイヌナズナの自然に生じる後期開花生態型で発見された開花遺伝子座C(FLC)である(Koornneef et al, 1994; Lee et al. 1994)。FLCは、開花を抑制するMADSボックス転写レギュレーターである(Michaels, SD and RM Amasino, 1999)。
【0007】
対照に、“開花遺伝子座T”(FT)、“リーフィー(leafy)”(LFY)、および“Agamous様20”(AGL20)と呼ばれる“constansの過剰発現のサプレッサー”を含む、栄養成長から生殖成長への切り替えを引き起こす遺伝子が存在する(Nilsson et al, 1998; Kobayashi et al. 1999; Blazquez et al., 2000; Lee et al, 2000 ; Samach et al., 2000; Borner et al., 2000)。AGL20の過剰発現は、シロイヌナズナで早期開花を引き起こし、そのダウンレギュレーションは、後期開花を引き起こす。
【0008】
サトウダイコンの場合には、春化応答が最も重要な開花誘導因子の1つであることが示されている。抽薹耐性品種は、サトウダイコン農業従事者に既知であり利用可能であるが、なお、抽薹現象のために、より高い収量の冬ビート栽培に関する主要な問題が存在する。現在、予測どおりにサトウダイコン春化を遅延させる植物も方法も存在しない。
【0009】
春化およびそのサトウダイコンへの影響は、詳細に記載されている(例えば、Jaggard et al, 1983)。サトウダイコンは、3℃から12℃の温度に反応し、冷却温度は、蓄積する。数週間の3℃から12℃の温度が、ビートが抽薹を開始するのに必要とされる。ITB抽薹モデルは、フランスにおいて春化は、ドリリング(畝)後、90日(13週)まで生じることを示す。17日間の7℃の温度が、抽薹を開始するために、これらの90日間の重要な日数である。
【発明の開示】
【0010】
発明の要約
本発明は、サトウダイコンで、FLC遺伝子を過剰発現させるか、またはAGL20遺伝子を抑制することにより、サトウダイコン春化応答を調節するサトウダイコン植物およびそのための方法を含む。
【0011】
1つの態様では、本発明は、同じサトウダイコン植物で、FLC遺伝子を過剰発現させ、AGL20遺伝子発現を抑制することにより、サトウダイコン春化応答を調節するサトウダイコン植物およびそのための方法に関する。
【0012】
図および配列IDの簡単な説明
図1は、バイナリーベクターpHiNK260のプラスミドマップである。
【0013】
図2は、Arabidopsis thaliana (AtAGL20)、Nicotiana tabacum (NtAGL20)およびSinapsis alba (SaAGL20)に由来するAGL20ホモログのcDNA配列のアライメントである。縮重プライマーHiNK624およびHiNK619を保存された領域に対して設計し、下線で示す。
【0014】
図3は、Arabidopsis thaliana、Pinus taeda、Pisum sativum、Sinapsis albaおよびNicotiana tabacum由来のAGL20ホモログに対するサトウダイコン由来のAGL20ホモログのコード領域のアライメントから推論される系統樹である。
【0015】
図4は、バイナリーベクターpHiNK382のプラスミドマップである。
【0016】
図5は、FLCイベントの表現型結果を含む表である。
【0017】
図6は、AGL20イベントの表現型結果を含む表である。
【0018】
図7は、バイナリーベクターpHiNK440のプラスミドマップである。
【0019】
図8は、バイナリーベクターpHiNK441のプラスミドマップである。
【0020】
図9は、3個の異なるスプライシングバリエント間を区別するINDELを示す、Beta vulgaris FLC 遺伝子(BvFLC)のための3個のタンパク質配列のアライメントを示す。
【0021】
図10は、2個のインフレームINDELを示すサトウダイコンからの推定されるFLCホモログの3個のスプライシングバリアントのアライメントを示す。これら3個のcDNA断片を増幅するために使用した縮重プライマーHiNK5279の配列を囲っている。
【0022】
図11は、pHiNK 440および441のRNAi構成要素、コントロール遺伝子GAPCならびに内在性サトウダイコン遺伝子BvAGL20の発現結果を、RT-PCRにより示す。内在性BvAGL20遺伝子は、雑種(A)ではダウンレギュレートしたが、一方のdsRNA構成要素のみを導入した植物(BおよびC)、またはNT(D)ではダウンレギュレートしなかった。
W = 水; D = DNA; R = RNA; 0.5、1および2 = RT-PCR反応あたり1μlでのcDNAの量。
【0023】
配列番号1は、シロイヌナズナFLC遺伝子を含む発現カセットを有する、バイナリーベクターpHiNK260のヌクレオチド配列を示す。
【0024】
配列番号2は、サトウダイコンAGL20ホモログの逆位反復を含む発現カセットを有する、バイナリーベクターpHiNK382のヌクレオチド配列を示す。
【0025】
配列番号3は、シロイヌナズナFLC cDNA(受託番号AF537203)のヌクレオチド配列を示す。
【0026】
配列番号4は、サトウダイコンAGL20ホモログの部分ゲノム配列のヌクレオチド配列を示す。
【0027】
配列番号5は、サトウダイコン由来のAGL20ホモログのエクソン3から7からなる、0.28 Kb cDNA断片のヌクレオチド配列を示す。
【0028】
配列番号6は、サトウダイコンAGL20ホモログ(BvAGL20)のヌクレオチド配列を示す。
【0029】
配列番号7は、プライマーHiNK529のヌクレオチド配列を示す。
【0030】
配列番号8は、プライマーHiNK792のヌクレオチド配列を示す。
【0031】
配列番号9は、プライマーHiNK793のヌクレオチド配列を示す。
【0032】
配列番号10は、プライマーHiNK794のヌクレオチド配列を示す。
【0033】
配列番号11は、プライマーHiNK795のヌクレオチド配列を示す。
【0034】
配列番号12は、プライマーHiNK796のヌクレオチド配列を示す。
【0035】
配列番号13は、プライマーHiNK624のヌクレオチド配列を示す。
【0036】
配列番号14は、プライマーHiNK619のヌクレオチド配列を示す。
【0037】
配列番号15は、プライマーHiNK725のヌクレオチド配列を示す。
【0038】
配列番号16は、プライマーHiNK729のヌクレオチド配列を示す。
【0039】
配列番号17は、プライマーHiNK2617のヌクレオチド配列を示す。
【0040】
配列番号18は、プライマーHiNK2618のヌクレオチド配列を示す。
【0041】
配列番号19は、センス方向にサトウダイコンAGL20ホモログの断片を含む発現カセットを有する、バイナリーベクターpHiNK440のヌクレオチド配列を示す。
【0042】
配列番号20は、アンチセンス方向にサトウダイコンAGL20ホモログの断片を含む発現カセットを有する、バイナリーベクターpHiNK441のヌクレオチド配列を示す。
【0043】
配列番号21は、内在性サトウダイコンFLC遺伝子のスプライシングバリアント1のコード領域を同定する、contig_71+ESTのヌクレオチド配列を示す。
【0044】
配列番号22は、内在性サトウダイコンFLC遺伝子のスプライシングバリアント1のコード領域の発現産物のアミノ酸配列を示す。
【0045】
配列番号23は、内在性サトウダイコンFLC遺伝子のスプライシングバリアント2のコード領域を同定する、contig_78+ESTのヌクレオチド配列を示す。
【0046】
配列番号24は、内在性サトウダイコンFLC遺伝子のスプライシングバリアント2のコード領域の発現産物のアミノ酸配列を示す。
【0047】
配列番号25は、内在性サトウダイコンFLC遺伝子のスプライシングバリアント3のコード領域を同定する、contig_79+ESTのヌクレオチド配列を示す。
【0048】
配列番号26は、内在性サトウダイコンFLC遺伝子のスプライシングバリアント3のコード領域の発現産物のアミノ酸配列を示す。
【0049】
配列番号27は、contig_71+ESTのヌクレオチド配列を示す。
【0050】
配列番号28は、contig_78+ESTのヌクレオチド配列を示す。
【0051】
配列番号29は、contig_79+ESTのヌクレオチド配列を示す。
【0052】
配列番号30は、プライマーHiNK5277のヌクレオチド配列を示す。
【0053】
配列番号31は、プライマーHiNK5279のヌクレオチド配列を示す。
【0054】
配列番号32は、プライマーAGL20 Aのヌクレオチド配列を示す。
【0055】
配列番号33は、プライマーAGL20 Bのヌクレオチド配列を示す。
【0056】
配列番号34は、プライマーHiNK023のヌクレオチド配列を示す。
【0057】
配列番号35は、プライマーgapCex5/6Fのヌクレオチド配列を示す。
【0058】
配列番号36は、プライマーgapCex8Rのヌクレオチド配列を示す。
【0059】
配列番号37は、プライマーHiNK HiNK 819のヌクレオチド配列を示す。
【0060】
定義
本願明細書の範囲内で使用される技術用語および表現は、下記の本明細書中に他に記載がなければ、一般に、植物育種および栽培の関連技術分野でそれらに対して通常適用される意味を与えられるべきである。
【0061】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用するとき、単数形は、内容がはっきりと他のものを示していなければ、複数対象を含む。したがって、例えば、“植物“なる記載は、1個またはそれ以上の植物を含み、“細胞”なる記載は、細胞、組織などの混合物を含む。
【0062】
“サトウダイコン”は、Beta属内のあらゆる種および亜種ならびにあらゆる種類のBeta vulgarisの栽培ビートのことを言う。栽培ビートは、4つの群に分類されている: チャード、赤カブ、飼料用ビートおよびテンサイ。“サトウダイコン”はまた、糖の産生以外の目的、例えば、エタノール、プラスチックまたは他の工業製品の産生のために育てたものを含む、あらゆる栽培ビートのことを言う。特に“サトウダイコン”は、飼料用ビートおよびテンサイ、とりわけ、テンサイのことを言う。
【0063】
“抽薹”は、栄養成長期から花もしくは生殖成長期への遷移のことを言う。
【0064】
“春化”は、ある植物における開花誘導が、該植物を、ある期間低温に曝すことにより促進される過程のことを言う。
【0065】
“コード配列”は、RNA、例えば、mRNA、rRNA、tRNA、snRNA、センスRNAまたはアンチセンスRNAに転写される核酸配列である。好ましくは、RNAは、次いで、生物中で翻訳され、タンパク質を産生する。
【0066】
“遺伝子”は、ゲノム内に位置する定義された領域であり、上記したコード核酸配列に加えて、発現の制御、すなわち、コード部分の転写および翻訳に関与する、他の、主な制御核酸配列を含む。遺伝子はまた、他の5'および3'非翻訳配列ならびに終結配列を含み得る。存在し得るさらなる要素は、例えば、イントロンである。
【0067】
“核酸”なる用語は、糖、リン酸およびプリンもしくはピリミジンである塩基を含むモノマー(ヌクレオチド)からなる、一本鎖または二本鎖形態でのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマーのことを言う。特に制限がなければ、該用語は、参照核酸と類似した結合特性を有し、自然に生じるヌクレオチドと同様の方法で代謝される天然のヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。他に記載がなければ、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたその変異型(例えば、縮重コドン置換)および相補的な配列ならびに暗に示された配列を包含するものとする。特に、縮重コドン置換は、1個またはそれ以上の選択された(またはすべての)コドンの第3ポジションを、混合した塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換した配列を作製することにより、達成し得る。“核酸断片”は、特定の核酸分子の断片である。高等植物では、デオキシリボ核酸(DNA)は、遺伝物質であり、一方で、リボ核酸(RNA)は、DNA内に含まれた情報のタンパク質への変換に関与する。“ヌクレオチド配列”なる用語は、一本鎖または二本鎖であり得て、所望により、DNAもしくはRNAポリマー中に組み込み得る合成、非天然または変えられたヌクレオチド塩基を含む、DNAまたはRNAのポリマーのことを言う。“核酸”または“核酸配列”なる用語はまた、cDNA、DNAおよび遺伝子によりコードされたRNAと同じ意味で使用し得る。
【0068】
遺伝子または核酸に関連して使用する“異種”なる用語は、その天然環境に存在しない(すなわち、ヒトの手により変えられた)因子をコードする遺伝子のことを言う。例えば、異種遺伝子は、他の種へ導入された1つの種由来の遺伝子を含み得る。異種遺伝子はまた、ある方法で変えられた(例えば、突然変異した、複数コピーが加わった、非生得的プロモーターもしくはエンハンサー配列へ結合した、など)、生物にもともとある遺伝子を含み得る。異種遺伝子はさらに、植物遺伝子のcDNA型を含む植物遺伝子配列を含み得て;cDNA配列は、センス(mRNAを発現するために)またはアンチセンス方向(mRNA転写産物に相補的なアンチセンスRNA転写産物を産生するために)で発現し得る。本発明の1つの局面では、異種遺伝子は、異種遺伝子配列が、基本的に、制御エレメント、例えば、異種遺伝子によりコードされるタンパク質のための遺伝子と、もしくは染色体中の植物遺伝子配列と関連するか、または天然に見出されない染色体の部分と関連して、自然に見出されないプロモーターを含むヌクレオチド配列に加わる(例えば、遺伝子が、通常は発現しない場所で発現する、遺伝子)という点で、内在性植物遺伝子とは異なる。
【0069】
“逆位反復”は、同じ核酸配列上ではあるが、反対の方向での2つのサイトで見出されたヌクレオチド配列のことを言う。
【0070】
本明細書で使用する“発現カセット”は、適当な宿主細胞内で、特定のヌクレオチド配列の発現を誘導することが可能な核酸分子を意味し、終結シグナルに操作可能に結合した興味のあるヌクレオチド配列に操作可能に結合したプロモーターを含む。それはまた、典型的には、ヌクレオチド配列の適当な翻訳のために必要とされる配列を含む。発現カセットはまた、興味のあるヌクレオチド配列の直接の発現には必要とされないが、発現ベクターからのカセットの除去のための便利な制限サイトのために存在する配列を含み得る。興味のあるヌクレオチド配列を含む発現カセットは、少なくとも1個のその構成要素が少なくとも1個のその他の構成要素に関して異種であることを意味する、キメラであり得る。発現カセットはまた、自然に生じるが、異種発現のために有用な組換え形態で取得されたものであり得る。典型的には、しかしながら、発現カセットは、宿主に関して異種であり、すなわち、発現カセットの特定の核酸配列は、宿主細胞内で自然には生じず、当業者に既知の形質転換工程により、宿主細胞もしくは宿主細胞の祖先に導入しなければならない。発現カセットでのヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーターまたは宿主細胞がある特定の刺激に曝されたときのみ転写を開始する誘導性プロモーターの制御下にあり得て、該刺激は、外部刺激であり得るか、または宿主自身から提供される内部刺激であり得る。植物のような多細胞生物の場合には、プロモーターはまた、特定の組織、または器官、または成長の段階に特異的であり得る。発現カセットまたはその断片は、また、植物に形質転換したとき、“挿入された配列”または“挿入配列”と呼ばれ得る。
【0071】
“操作可能に結合した”とは、1つの機能が他の機能に影響するような一本鎖核酸断片上での核酸配列の結合のことを言う。例えば、プロモーターは、それがコード配列または機能的RNAのの発現に影響を与えることができるとき、そのコード配列または機能的RNAと操作可能に結合する(すなわち、コード配列または機能的RNAは、プロモーターの転写制御下にある)。センスもしくはアンチセンス方向でのコード配列を、制御配列に操作可能に結合させ得る。
【0072】
本明細書で使用する“プライマー”は、核酸ハイブリダイゼーションにより相補性標的DNA鎖にアニールし、プライマーと標的DNA鎖間でハイブリッドを形成し、次いで、ポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼにより標的DNA鎖を伸張することができる、単離した核酸である。プライマー対またはセットは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の慣用的な核酸増幅法により、核酸分子の増幅のために使用し得る。
【0073】
“抑制”は、標的遺伝子からのタンパク質および/またはmRNA産物レベルにおける、非存在または観察可能な減少のことを言う。特に、“抑制”は、20%から100%、とりわけ、40%から80%、より特には、50%から90%、さらにより特には、60%から95%、さらに特には、75%から98%および100%までの範囲内での、標的遺伝子からのタンパク質および/またはmRNA産物レベルにおける減少のことを言う。阻害の結果は、細胞もしくは生物の外面的な特性の試験によるか、または当業者に既知の生化学的および遺伝子発現技術により確認し得る。例えば、AGL20遺伝子発現の抑制は、成長しているサトウダイコン植物での春化応答の非存在または遅延により示される。
【0074】
2個の核酸もしくはタンパク質配列の内容で、実質的に同一または相同は、最大一致のために比較し、並べ、下記の配列比較アルゴリズムの1つを用いるか、または外観試験により測定したとき、少なくとも60%、好ましくは、80%、より好ましくは、90%、さらにより好ましくは、95%、および最も好ましくは、99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有する2個またはそれ以上の配列または部分配列のことを言う。特に、実質的同一性は、少なくとも約50残基長である配列の領域にわたって、より特には、少なくとも約100残基の領域にわたって存在し、特には、配列は、実質的に、少なくとも約150残基にわたって同一である。特定の態様では、配列は、コード領域の全長にわたって、実質的に同一である。さらに、実質的に同一の核酸またはタンパク質配列は、実質的に同じ機能を果たす。
【0075】
配列比較のために、典型的には、1個の配列は、試験配列を比較するための参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを用いるとき、試験および参照配列をコンピューターにインプットし、所望により、配列座標(coordinates)を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。配列比較アルゴリズムは、次いで、指定したプログラムパラメーターに基づき、参照配列と比較した試験配列に関して、配列同一性割合を計算する。
【0076】
比較のための配列の最適アライメントは、例えば、Smith & Waterman (1981)の局所的相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch (1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad Sci. USA 85: 2444 (1988)の類似性探索法、これらのアルゴリズムの電子化実行(the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または外観検査(一般には、下記のAusubel et al.を参照のこと)で行い得る。配列同一性割合および配列類似性を決定するために適当なアルゴリズムの1つの例は、BLASTアルゴリズムであり、それは、Altschul et al. (1990)に記載されている。
【0077】
2個の核酸配列が実質的に同一である他の指標は、2個の分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。“特異的にハイブリダイズする”なる句は、ストリンジェントな条件下で、特定のヌクレオチド配列に対してのみの分子の結合、二本鎖化、またはハイブリダイズのことを言い、配列が複雑な混合(例えば、全細胞)DNAまたはRNAで存在するとき、“実質的に結合する”は、プローブ核酸と標的核酸間の相補的なハイブリダイゼーションのことを言い、標的核酸配列の望む検出を達成するために、ハイブリダイゼーション培地のストリンジェンシーを減少させることにより適応させ得るマイナーミスマッチを包含する。
【0078】
核酸ハイブリダイゼーション実験、例えば、サザンおよびノザンハイブリダイゼーションの内容における“ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件”および“ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件”は、配列依存的であり、異なる環境パラメーター下で異なる。より長い配列は、特に、より高い温度でハイブリダイズする。核酸ハイブリダイゼーションの広範囲にわたる手引きは、Tijssen (1993)に見出される。
【0079】
2個の核酸配列もしくはタンパク質が実質的に同一であることのさらなる指標は、第1核酸にコードされたタンパク質が、第2核酸にコードされたタンパク質と免疫学的な交差反応を起こすか、またはそれに特異的に結合することである。したがって、タンパク質は、例えば、2個のタンパク質が保存的置換によってのみ異なるとき、典型的には、第2タンパク質と実質的に同一である。
【0080】
“合成”は、天然配列に存在しない構造特性を含むヌクレオチド配列のことを言う。例えば、双子葉植物および/または単子葉植物遺伝子のG+C含有量および正常なコドン分布に非常に似ている人工配列は、合成であると言われる。
【0081】
“形質転換”は、異種核酸を宿主細胞または生物に導入する工程である。特に、“形質転換”は、興味のある生物のゲノム中へのDNA分子の安定的な統合を意味する。
【0082】
“形質転換した/トランスジェニック/組換え”は、異種核酸分子を導入した細菌または植物のような宿主生物のことを言う。核酸分子は、宿主ゲノムへ安定的に統合し得るか、または核酸分子はまた、染色体外分子として存在し得る。そのような染色体外分子は、自己複製し得る。形質転換した細胞、組織、もしくは植物は、形質転換工程の最終産物およびそのトランスジェニック子孫を包含するものと理解される。“非形質転換”、“非トランスジェニック”、または“非組換え”宿主は、野生型生物、例えば、異種核酸分子を含まない細菌または植物のことを言う。
【0083】
トランスジェニック“イベント”なる用語は、異種DNA、例えば、興味のある遺伝子を含む発現カセットを用いた単一植物細胞の形質転換および再生により作製された、組換え植物のことを言う。“イベント”なる用語は、異種DNAを含むもとの形質転換体および/またはその形質転換体の子孫のことを言う。“イベント”なる用語はまた、形質転換体と他のサトウダイコン株間の生殖交配(sexual outcross)により作製された子孫のことを言う。反復親への繰り返し戻し交配の後でも、形質転換した親由来の挿入されたDNAおよび隣接DNAは、交配の子孫で、同じ染色体位置に存在する。通常は、植物組織の形質転換は、複数のイベントを生じ、その各々は、植物細胞ゲノム中の異なる位置へのDNA構築体の挿入を示す。トランスジーンの発現または他の望む特性に基づいて、特定のイベントが選択される。
【0084】
“トランスジーン”は、生物の遺伝子型を変えるために、遺伝学的操作により、そのゲノムに導入された遺伝子のことを言う。
【0085】
“トランスジェニック植物”は、発現ベクターを含む1個またはそれ以上の植物細胞を有する植物である。
【0086】
“メッセンジャーRNA(mRNA)”なる用語は、イントロンが無く、細胞でタンパク質に翻訳され得るRNAのことを言う。
【0087】
“cDNA”は、mRNAに相補的であり、それに由来する、一本鎖または二本鎖DNAのことを言う。
【0088】
核酸配列、例えば、遺伝子に関連して使用される“発現”なる用語は、遺伝子にコードされた遺伝学的情報の、遺伝子の転写を介した(すなわち、RNAポリメラーゼの酵素学的作用による)RNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA、またはsnRNA)への変換、および所望により(遺伝子がタンパク質をコードするとき)、mRNAの“翻訳”を介したタンパク質への変換工程のことを言う。遺伝子発現は、該工程の多くの段階で制御され得る。
【0089】
“過剰発現”は、正常なもしくは非形質転換(非トランスジェニック)細胞または生物における発現レベルを超える、トランスジェニック細胞または生物における発現レベルのことを言う。
【0090】
“アンチセンス阻害”は、内在性遺伝子またはトランスジーン由来のタンパク質の発現を抑制できるアンチセンスRNA転写産物の産生のことを言う。
【0091】
“遺伝子サイレンシング”は、ウイルス遺伝子、トランスジーン、または内在性核遺伝子の相同依存性抑制のことを言う。遺伝子サイレンシングは、抑制が影響する遺伝子の減少した転写によるものであるとき、転写的であり得て、抑制が影響する遺伝子に相同なRNA種の増加したターンオーバ(分解)によるものであるとき、転写後的であり得る。遺伝子サイレンシングは、ウイルス誘導遺伝子サイレンシングを含む。
【0092】
“RNA干渉”(RNAi)は、低分子干渉RNAs(siRNAs)により仲介される植物および動物での配列特異的転写後遺伝子サイレンシング過程のことを言う。siRNA、標的RNA分子、ダイサーもしくはリボヌクレアーゼIII酵素のようなさまざまな用語は、当業者に既知の概念であり、RNAiに関連するこれらの用語および概念の十分な記載が、文献中に見出し得る。参照のために、RNAiに関連するいくつかの用語を下記で定義する。しかしながら、RNAiのメカニズムを記載したあらゆる特定の仮説は、本発明を実施するのに必要ないものと理解されるべきである。
【0093】
“siRNA”なる用語は、低分子干渉RNAのことを言う。ある態様では、siRNAは、約21-23ヌクレオチド長の二本鎖、または二本鎖領域を含み;しばしば、siRNAは、各鎖の3'末端に、約2個から4個の不対ヌクレオチドを含む。siRNAの二本鎖、または二本鎖領域の少なくとも1本の鎖は、標的RNA分子と実質的に相同であるか、または実質的に相補的である。標的RNA分子に相補的な鎖は、“アンチセンス鎖”であり;標的RNA分子と相同な鎖は、“センス鎖”であり、それはまた、siRNAアンチセンス鎖に相補的である。siRNAはまた、さらなる配列を含み得て;そのような配列の非限定的な例は、架橋配列、すなわちループ、ならびにステムおよび他の折り畳み構造を含む。siRNAは、無脊椎動物および脊椎動物におけるRNA干渉を誘導し、植物における転写後遺伝子サイレンシング時の配列特異的RNA分解を誘導する重要な仲介物質として機能するように思われる。
【0094】
“標的RNA分子”なる用語は、siRNAの小分子二本鎖領域の少なくとも1個の鎖が相同であるか、または相補的である、RNA分子のことを言う。典型的には、そのような相同性または相補性が約100%であるとき、siRNAは、標的RNA分子の発現をサイレンシングさせるか、または阻害することができる。加工されたmRNAがsiRNAの標的であると考えられているが、本発明は、あらゆる特定の仮説に限定されるものではなく、そのような仮説は、本発明を実施するのに必要ではない。したがって、他のRNA分子はまた、siRNAの標的であり得ることが意図される。そのようなRNA標的分子は、非加工mRNA、リボソームRNA、およびウイルスRNAゲノムを含む。
【0095】
“RNA誘導サイレンシング複合体”(RISC)は、siRNA二本鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を仲介する。標的RNAの切断は、siRNA二本鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中間で起こる(Elbashier et al. 2001)。
【0096】
“十分に相補的な”なる用語は、植物細胞に導入されたRNAの第1もしくは第2鎖配列が、該植物細胞の細胞質で見出される条件下で、標的遺伝子により産生されたRNA(mRNA)に十分にハイブリダイズするか、またはアニールすることができ、その結果、標的遺伝子の発現の抑制が誘導されることを意味する。例えば、標的遺伝子により産生されたmRNAに結合するRNAの第1もしくは第2鎖配列の鎖が、標的遺伝子の相当するmRNA配列に少なくとも50%同一、より望ましくは、70%同一、またさらに望ましくは、90%同一、さらにより望ましくは、少なくとも95%同一である。
【0097】
少なくとも70%同一性から少なくとも95%同一性の範囲内にある、RNAの第1もしくは第2鎖配列と標的遺伝子により産生されたmRNA間の同一性割合は、本範囲内のあらゆる数値であるものと理解されるべきである。
【0098】
発明の詳細な説明
本発明は、サトウダイコンで、FLC遺伝子を過剰発現させることにより、および/またはAGL20遺伝子発現を抑制することにより、サトウダイコン春化応答を調節するトランスジェニックサトウダイコン植物およびそのための方法を含む。
【0099】
本発明の1つの態様は、サトウダイコンで、構成的にFLC遺伝子を発現させ、その結果、抽薹耐性の調節を生じることを含む。本発明によると、FLC遺伝子を過剰発現させたトランスジェニックサトウダイコン植物は、もはや、18週の典型的な春化期間に抽薹およびその後の開花により応答せず、それとは反対に、栄養成長を続け(非抽薹)、主根を発達させる。
【0100】
本発明は、そのゲノム中に、異種FLC遺伝子のコード領域を含むトランスジェニックサトウダイコン植物を含み、ここで、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。遺伝子は、発現率が、
天然の、非形質転換サトウダイコン植物に通常見出される基本的発現レベルを超えるとき、過剰発現していると考えられる。特に、過剰発現は、少なくとも10%、とりわけ、少なくとも20%、より特には、少なくとも30%、さらにより特には、少なくとも40%、さらに特には、少なくとも50%から100%またはそれ以上の、天然の、非形質転換サトウダイコン植物に通常見出される基本的発現レベルを超える発現率のことを言う。
【0101】
本発明の特定の態様では、異種FLC遺伝子が、とりわけ、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する異種構成的プロモーターの制御下で、受託番号AF537203 (http://ftp.dna.affrc.go.jp/pub/dna_all/A/F5/37/20/AF537203/AF537203)で示されたFLC cDNAからなる異種FLCコード領域を含むサトウダイコン植物を提供する。
【0102】
本発明はまた、配列番号3で示した異種FLC遺伝子を含むトランスジェニックサトウダイコン植物を含み、ここで、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。
【0103】
本発明はまた、とりわけ、内在性遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する異種構成的プロモーターの制御下で、配列番号27、28および29で示した内在性FLC遺伝子またはそのコード部分を含むトランスジェニックサトウダイコン植物を含む。
【0104】
本発明はまた、とりわけ、内在性遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する異種構成的プロモーターの制御下で、配列番号21、23および25で示した内在性FLC遺伝子またはそのコード部分を含むトランスジェニックサトウダイコン植物を含む。
【0105】
本発明はまた、とりわけ、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する異種構成的プロモーターの制御下で、受託番号AF537203で示されたFLC cDNAのヌクレオチド配列と、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%または93%の配列同一性を有する異種FLC遺伝子を含むトランスジェニックサトウダイコン植物を含む。
【0106】
特定の態様では、配列番号3で示したFLC cDNAのヌクレオチド配列と、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%または93%の配列同一性を有する異種FLC遺伝子が提供され、ここで、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。
【0107】
本発明はまた、配列番号27、28および29で示したヌクレオチド配列またはそのコード部分(コード部分は、異種構成的プロモーターの制御下にあり得る)と、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%または93%の配列同一性を有する内在性FLC遺伝子を含むトランスジェニックサトウダイコン植物を含み、ここで、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。
【0108】
本発明はまた、配列番号21、23および25で示したヌクレオチド配列またはそのコード部分(コード部分は、異種構成的プロモーターの制御下にあり得る)と、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%または93%の配列同一性を有する内在性FLC遺伝子を含むトランスジェニックサトウダイコン植物を含み、ここで、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。
【0109】
本発明はまた、とりわけ、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する異種構成的プロモーターの制御下で、受託番号AF537203で示されたFLC cDNAからなるコード領域を含む異種FLC遺伝子を含むトランスジェニックサトウダイコン植物の種子を含む。
【0110】
特定の態様では、配列番号3で示した異種FLC遺伝子を提供し、ここで、該種子から成長する植物において、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。
【0111】
本発明はまた、配列番号27、28および29で示した内在性FLC遺伝子またはそのコード部分(とりわけ、内在性FLC遺伝子のコード部分は、異種構成的プロモーターの制御下にある)を含むトランスジェニックサトウダイコン植物の種子を含み、ここで、該種子から成長する植物において、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。
【0112】
本発明はまた、配列番号21、23および25で示した内在性FLC遺伝子またはそのコード部分(とりわけ、内在性FLC遺伝子のコード部分は、異種構成的プロモーターの制御下にある)を含むトランスジェニックサトウダイコン植物の種子を含み、ここで、該種子から成長する植物において、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。
【0113】
本発明はまた、トランスジェニックサトウダイコン植物の種子を含み、ここで、該種子は、とりわけ、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する異種構成的プロモーターの制御下で、受託番号AF537203で示されたFLC cDNAのヌクレオチド配列と、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%または93%の配列同一性を有する異種FLC遺伝子を含む。
【0114】
特定の態様では、配列番号3で示したFLC cDNAのヌクレオチド配列と、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%または93%の配列同一性を有する異種FLC遺伝子を提供し、ここで、該種子から成長する植物において、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。
【0115】
本発明はまた、トランスジェニックサトウダイコン植物の種子を含み、ここで、該種子は、配列番号27、28および29で示したヌクレオチド配列またはそのコード部分(コード部分は、異種構成的プロモーターの制御下にあり得る)と、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%または93%の配列同一性を有する内在性FLC遺伝子を含み、ここで、該種子から成長する植物において、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。
【0116】
本発明はまた、トランスジェニックサトウダイコン植物の種子を含み、ここで、該種子は、配列番号21、23および25で示したヌクレオチド配列またはそのコード部分(コード部分は、異種構成的プロモーターの制御下にあり得る)と、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%または93%の配列同一性を有する内在性FLC遺伝子を含み、ここで、該種子から成長する植物において、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。
【0117】
本発明の1つの態様は、上記本明細書に開示したとおり、発現カセット、とりわけ、配列番号1のヌクレオチド配列786-2817で示した発現カセットに組み込まれた異種FLC遺伝子を含む、本発明に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を含む。
【0118】
本発明の1つの態様は、上記本明細書に開示したとおり、発現カセット、とりわけ、配列番号1のヌクレオチド配列786-2817で示した発現カセットに組み込まれた異種FLC遺伝子を含み、ここで、発現カセットが構成的プロモーターを含む、本発明に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を含む。
【0119】
本発明の1つの態様は、上記本明細書に開示したとおり、発現カセット、とりわけ、配列番号1のヌクレオチド配列786-2817で示した発現カセットに組み込まれた異種FLC遺伝子を含み、ここで、発現カセットがCaMV35Sプロモーターを含む、本発明に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を含む。
【0120】
他の特定の態様では、本発明は、上記本明細書に開示したとおり、とりわけ、構成的プロモーター、とりわけ、構成的CaMV 35Sプロモーターおよびターミネーター、とりわけ、Agrobacterium tumefaciens由来のマンノピンシンターゼ(mas)ターミネーターの制御下で発現カセットに組み込まれた異種FLC遺伝子を含む、トランスジェニックサトウダイコン植物に関する。
【0121】
1つの態様では、本発明は、内在性FLC遺伝子のコード領域、とりわけ、配列番号27、28および29で示したFLC遺伝子を含んだ発現カセットを含む、トランスジェニックサトウダイコン植物に関する。
【0122】
1つの態様では、本発明は、内在性FLC遺伝子のコード領域、とりわけ、配列番号21、23および25で示したFLC遺伝子を含んだ発現カセットを含む、トランスジェニックサトウダイコン植物に関する。
【0123】
特定の態様では、内在性FLC遺伝子の該コード領域は、構成的プロモーターの制御下、とりわけ、構成的CaMV 35Sプロモーターの制御下、さらにとりわけ、構成的CaMV 35Sプロモーターおよびターミネーターの制御下、とりわけ、Agrobacterium tumefaciens由来のマンノピンシンターゼ(mas)ターミネーターの制御下にある。
【0124】
本発明の他の態様は、
−異種または内在性植物FLC遺伝子コード領域に操作可能に結合した制御配列を含むトランスジーンで、サトウダイコン植物細胞を形質転換し;
−挿入したトランスジーンを有するサトウダイコン植物細胞を同定し;そして
−b)で同定した植物細胞からトランスジェニック植物を再生すること
を含む、本発明に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法である。
【0125】
本発明はさらに、そのゲノム中に異種の、または内在性FLC遺伝子のコード領域を含む、上記のトランスジェニックサトウダイコン植物に由来するバイオ燃料、例えば、エタノール、ブタノール、メタノール、バイオガスおよびディーゼルを製造することを含み、ここで、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。
【0126】
本発明はさらに、そのゲノム中に異種の、または内在性FLC遺伝子のコード領域を含む、上記のトランスジェニックサトウダイコン植物に由来する他の産業応用、例えば、プラスチックを製造することを含み、ここで、FLC遺伝子の発現は、FLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、サトウダイコン植物の春化応答を抑制する。
【0127】
本発明はまた、サトウダイコン植物細胞に第1RNA鎖および第2RNA鎖を導入することを含む該植物細胞の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、該第1RNA鎖または該第2鎖は、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2ヌクレオチド配列が二本鎖RNAを形成し、ここで、二本鎖RNAが該内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する。
【0128】
本発明の1つの態様は、第1RNA鎖および第2RNA鎖を該植物細胞へ導入することを含むサトウダイコン植物細胞の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、第1RNA鎖および第2RNA鎖を該植物細胞に導入することは、異種DNAで該細胞を形質転換し、植物細胞で転写されると、該第1RNA鎖に相当するヌクレオチド配列および該第2RNA鎖に相当するヌクレオチド配列を産生することを含む。
【0129】
本発明の他の態様では、該異種DNAは、転写されると、該第1RNA鎖に相当するヌクレオチド配列および該第2RNA鎖に相当するヌクレオチド配列を産生する、逆位反復を含む。
【0130】
特定の態様では、本発明は、上記の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法に関し、該第1RNA鎖が、5'-CCRATGAACARTTSNGTCTCNACWTC-3' (配列番号14)を用いた逆転写反応で、サトウダイコンの葉から抽出した全RNAから得たサトウダイコンcDNAから取得可能である、サイズがおよそ0.6 KbのサトウダイコンAGL20遺伝子断片のRNA部分と一定の相補性を有し、ここで、cDNAは、ATGコドンで始まり、コドン1から9にわたる、極端なNH2末端と配列相同性を共有するヌクレオチド配列5'-ATGGTKMGRGGNAARACNCAGATGA-3'(配列番号13)を有する縮重フォワードプライマー;および、COOH末端に相補的であり、エクソン8のストップコドンのちょうど上流にハイブリダイズする、ヌクレオチド配列5'-CCRATGAACARTTSNGTCTCNACWTC-3'(配列番号14)を有する縮重リバースプライマーを使用するPCR反応での鋳型として使用され、例えば、該第1RNA鎖が、該AGL20遺伝子断片のRNA鎖にハイブリダイズするか、またはアニールすることを可能にし、その結果、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じる。
【0131】
また本発明の他の態様は、本明細書に上記したとおり、内在性AGL20遺伝子の発現を抑制することを含み、ここで、該第1RNA鎖は、配列番号6に示したサトウダイコンAGL20遺伝子断片のRNA部分に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じる。
【0132】
このAGL20遺伝子の抑制は、成長しているサトウダイコン植物での春化応答の遅延を生じるか、またはサトウダイコン植物が非抽薹表現型を生じるようにし、それは、サトウダイコン植物が、もはや抽薹および次の開花による18週間の典型的な春化応答に応答せず、それとは反対に、栄養成長(非抽薹)を継続し、正常な主根を発達させることを意味する
【0133】
該遅延した春化応答または該非抽薹表現型を発現する植物は、標準的な成長条件を用いた表現型解析実験を適用することにより、容易に、同定および選択し得る。
【0134】
本発明はまた、本明細書で上記したとおり、内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、該第1RNA鎖は、該サトウダイコンAGL20遺伝子のRNAの一部に十分相補的な約21から約23ヌクレオチド長の配列断片を含み、その結果、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じる。
【0135】
本発明は、本明細書で上記したとおり、内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、該第1RNA鎖は、該サトウダイコンAGL20遺伝子のRNAの一部に十分相補的な約21から約25ヌクレオチド長の配列断片を含み、その結果、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じる。
【0136】
本発明はさらに、本発明に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、該第1RNA鎖は、該サトウダイコンAGL20遺伝子のRNAの一部に十分相補的な約21から約30ヌクレオチド長の配列断片を含み、その結果、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じる。
【0137】
本発明の1つの態様は、さらに、本発明に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、該第1RNA鎖は、該サトウダイコンAGL20遺伝子のRNAの一部に十分相補的な約18から約23ヌクレオチド長の配列断片を含み、その結果、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じる。
【0138】
本発明の1つの態様は、さらに、本発明に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、該第1RNA鎖は、該サトウダイコンAGL20遺伝子のRNAの一部に十分相補的な約18から約25ヌクレオチド長の配列断片を含み、その結果、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じる。
【0139】
本発明の1つの態様は、さらに、本発明に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、該第1RNA鎖は、該サトウダイコンAGL20遺伝子のRNAの一部に十分相補的な約18から約30ヌクレオチド長の配列断片を含み、その結果、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じる。
【0140】
1つの態様では、本発明は、上記の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法に関し、ここで、該第1RNA鎖を転写する異種DNAは、プライマー5'-CCRATGAACARTTSNGTCTCNACWTC-3'(配列番号14)を用いた逆転写反応で、サトウダイコンの葉から抽出した全RNAから取得したサトウダイコンcDNAから取得可能な、大きさがおよそ0.6 KbのAGL20遺伝子断片のエクソン3から7からなる0.28 Kb cDNAから取得し得て、cDNAは、ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC-3'(配列番号8)を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'-GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'(配列番号9)を有するリバースプライマーを用いたPCR反応で、ATGコドンで始まる極端なNH2末端と配列相同性を共有し、コドン1から9にわたるヌクレオチド配列5'-ATGGTKMGRGGNAARACNCAGATGA-3'(配列番号13)を有する縮重フォワードプライマー;および、COOH末端に相補的であり、エクソン8のストップコドンのちょうど上流にハイブリダイズするヌクレオチド5'-CCRATGAACARTTSNGTCTCNACWTC-3'(配列番号14)を有する縮重リバースプライマーを使用するPCR反応での鋳型として使用する。
【0141】
本発明の1つの態様は、さらに、AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、該第1RNA鎖を転写する異種DNAは、配列番号5で示す。
【0142】
1つの局面では、本発明は、第1RNA鎖および第2RNA鎖を含む異種DNAを含む発現カセットに関し、ここで、該第1RNA鎖は、内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部と一定の相補性を有し、それにより、該第1RNA鎖が該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖にハイブリダイズするか、またはアニールすることを可能にし、ここで、該第1RNA鎖および該第2RNA鎖は、二本鎖RNAを形成し、その結果、植物での発現に関して、内在性AGL20遺伝子の抑制が生じる。
【0143】
本発明の特定の態様では、逆位反復を含む発現カセットを提供し、それは、サトウダイコン細胞で転写されると、該植物細胞で、該第1および第2RNA鎖を含む二本鎖RNA分子を形成する。
【0144】
本発明の他の特定の態様では、該逆位反復が、構成的プロモーター、特に、CaMVプロモーターに操作可能に結合した発現カセットを提供する。
【0145】
1つの態様では、本発明は、該第1RNA鎖を転写する異種DNAを含む本明細書に上記した発現カセットに関し、異種DNAは、プライマー5'-CCRATGAACARTTSNGTCTCNACWTC-3'(配列番号14)を用いた逆転写反応で、サトウダイコンの葉から抽出した全RNAから取得したサトウダイコンcDNAから取得可能な、大きさがおよそ0.6 KbのAGL20遺伝子断片のエクソン3から7からなる0.28 Kb cDNAから取得し得て、cDNAは、ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC-3'を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'-GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'を有するリバースプライマーを用いたPCR反応で、ATGコドンで始まる極端なNH2末端と配列相同性を共有し、コドン1から9にわたるヌクレオチド配列5'-ATGGTKMGRGGNAARACNCAGATGA-3'(配列番号13)を有する縮重フォワードプライマー;および、COOH末端に相補的であり、エクソン8のストップコドンのちょうど上流にハイブリダイズするヌクレオチド5'-CCRATGAACARTTSNGTCTCNACWTC-3'(配列番号14)を有する縮重リバースプライマーを使用するPCR反応での鋳型として使用する。
【0146】
本発明の他の特定の態様では、発現カセットは、配列番号5で示した異種DNAを含む。
【0147】
1つの態様では、上記の発現カセットは、逆位反復を含み、それは、サトウダイコン細胞で転写されると、該植物細胞で、該第1および第2RNA鎖を含む二本鎖RNA分子を形成する。
【0148】
特定の態様では、該逆位反復は、構成的プロモーター、とりわけ、CaMVプロモーターに操作可能に結合する。
【0149】
1つの態様では、本発明は、上記した発現カセットに関し、ここで、該異種DNAは、異種DNAが、
a. ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC -3'(配列番号8)を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'- GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC -3'(配列番号9)を有するリバースプライマーを用いた組換えPCR反応で、上記した0.6 Kb AGL20遺伝子断片のエクソン3から7からなる0.28 Kb cDNAを増幅させ;
b. フォワードプライマー 5'- ATCCAACCGCGGACCTGCACATCAACAA -3'(配列番号7)およびリバースプライマー5'- GTTCGAGACTTTTTAACTTCTTAGGTAAGTTTCTGCTTCTAC -3'(配列番号12)を用いて、ST-LS1イントロンおよび隣接スプライシングサイトを含む0.19 Kb断片を増幅させ;
c. 配列番号8および配列番号7のプライマーならびに鋳型として両増幅産物の混同物を使用する2回のPCRにより、互いに工程a)およびb)で取得した増幅産物を融合させ、0.47 Kb長の融合産物を産生し;
d. それらのリンカーに関して工程a)で使用したプライマーとは異なるフォワードプライマー5'-TAAATCCGCGGAAGAAGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'(配列番号10)およびリバースプライマー5'-CTATTTGTCGACGCATGCTGATCTCCTGATC-3'(配列番号11)を用いて、2回目、0.28 Kb BvAGL20断片を増幅させ;
e. Sac II制限サイトで両断片を融合させ、ジャガイモST-LS1遺伝子由来のイントロンにより分離されるBvAGL20配列のための逆位反復を作製すること
により取得され得る、プロモーターおよびターミネーター間に挿入される。
【0150】
特定の態様では、配列番号2のヌクレオチド配列233-2657で示した発現カセットを提供する。
【0151】
本発明の1つの態様はさらに、本発明に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、該第1および第2RNA鎖を導入することは、該異種DNAの該植物細胞ゲノムへの挿入を含む、上記の発現カセットの挿入による。
【0152】
本発明の1つの態様はさらに、本発明に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、該発現カセットは、配列番号2のヌクレオチド配列233-2657により示される。
【0153】
本発明の1つの態様はさらに、本発明に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、該第1および第2RNA鎖を導入することは、インジェクションによる植物細胞への該鎖の挿入による。
【0154】
本発明の1つの態様はさらに、本発明に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、さらに、転写されると、該第1および第2RNA鎖を含む該植物細胞中に二本鎖RNA分子を形成する逆位反復を含む発現カセットを植物のゲノム中に導入することを含む。
【0155】
本発明の1つの態様はさらに、本発明に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、ここで、該第1RNA配列は、配列番号6で示した核酸配列のRNA配列に十分に相補的である。
【0156】
本発明はさらに、該逆位反復が構成的プロモーターに操作可能に結合する、本発明に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含む。
【0157】
本発明は、さらに該第1と第2鎖間に位置するイントロンを含む、本発明に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含む。
【0158】
本発明はまた、該イントロンが配列番号2の817-1009で示したヌクレオチド配列で示された、本発明に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含む。
【0159】
本発明は、サトウダイコン細胞で転写されると、第1RNAヌクレオチド配列および第2RNAヌクレオチド配列を産生し、ここで、該第1RNAヌクレオチド配列が、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2ヌクレオチド配列が二本鎖RNAを形成し、ここで、二本鎖RNAが該内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する異種DNAを含む異種遺伝子構築体を含む、トランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、トランスジェニックサトウダイコン植物を含む。
【0160】
1つの態様では、トランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、異種DNAが、ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC-3'(配列番号8)を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'-GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'(配列番号9)を有するリバースプライマーを用いたPCR反応で、上記のAGL20遺伝子断片のエクソン3から7からなる0.28 Kb cDNA断片から取得可能であるトランスジェニックサトウダイコン植物を提供する。
【0161】
特定の態様では、本発明に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、トランスジェニックサトウダイコン植物は、異種DNAが配列番号5で示される異種遺伝子構築体を含む。
【0162】
また他の特定の態様では、本発明に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、トランスジェニックサトウダイコン植物は、転写されると、該第1および第2RNA鎖を含む該植物細胞中に二本鎖RNA分子を形成し、ここで、該二本鎖RNA分子がAGL20遺伝子サイレンシングを誘導する逆位反復を含む異種遺伝子構築体を含む。
【0163】
本発明の特定の態様では、プロモーターとターミネーター間に挿入された異種DNAを含むトランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、トランスジェニックサトウダイコン植物を提供し、異種DNAは、
a. ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC -3'(配列番号8)を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'- GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC -3'(配列番号9)を有するリバースプライマーを用いた組換えPCR反応で、上記した0.6 Kb AGL20遺伝子断片のエクソン3から7からなる0.28 Kb cDNAを増幅させ;
b. フォワードプライマー 5'- ATCCAACCGCGGACCTGCACATCAACAA -3'(配列番号7)およびリバースプライマー5'- GTTCGAGACTTTTTAACTTCTTAGGTAAGTTTCTGCTTCTAC -3'(配列番号12)を用いて、ST-LS1イントロンおよび隣接スプライシングサイトを含む0.19 Kb断片を増幅させ;
c. 配列番号8および配列番号7のプライマーならびに鋳型として両増幅産物の混同物を使用する2回のPCRにより、互いに工程a)およびb)で取得した増幅産物を融合させ、0.47 Kb長の融合産物を産生し;
d. それらのリンカーに関して工程a)で使用したプライマーとは異なるフォワードプライマー5'-TAAATCCGCGGAAGAAGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'(配列番号10)およびリバースプライマー5'-CTATTTGTCGACGCATGCTGATCTCCTGATC-3'(配列番号11)を用いて、2回目、0.28 Kb BvAGL20断片を増幅させ;
e. Sac II制限サイトで両断片を融合させ、ジャガイモST-LS1遺伝子由来のイントロンにより分離されるBvAGL20配列のための逆位反復を作製すること
により取得可能である。
【0164】
他の特異的な態様では、本発明に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、トランスジェニックサトウダイコン植物は、異種遺伝子構築体を含み、ここで、該遺伝子構築体は、配列番号2のヌクレオチド配列233-2657で示した発現カセットを含む。
【0165】
本発明の他の特定の態様では、上記の発現カセットを含む、トランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、トランスジェニックサトウダイコン植物を提供する。
【0166】
1つの態様では、本発明は、上記のトランスジェニックサトウダイコンを製造する方法に関し、
a. 上記の発現カセットでサトウダイコン細胞を形質転換し;
b. 異種DNAを含むサトウダイコン細胞を同定し、
c. 工程b)で同定した該植物細胞からトランスジェニック植物を再生させ、
d. 春化応答の遅延または春化応答の完全な抑制を示し、その結果、非抽薹(NB)表現型を生じるサトウダイコン植物を同定し、
e. 所望により、工程a)で導入した植物細胞ゲノム中の異種DNAの存在を確認すること
を含む。
【0167】
本発明はまた、サトウダイコン植物細胞でAGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み、AGL20遺伝子の部分と十分に同一であるか、または相補的である第1RNA断片、第1RNA断片と十分に相補的である第2RNA断片を植物細胞に導入し、その結果、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じることを含み、ここで、第1および第2RNA断片は、植物細胞で二本鎖RNA分子を形成し、二本鎖RNA分子は、siRNA仲介サイレンシングにより、AGL20遺伝子の発現を抑制する。
【0168】
本発明はまた、サトウダイコン植物中の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法を含み:
a)サトウダイコン植物細胞に第1RNA鎖を導入し;
b)該植物細胞を第1植物に成長させ;
c)第2サトウダイコン植物細胞に第2RNA鎖を導入し(ここで、該第1RNA鎖は、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNA鎖および該第2RNA鎖が二本鎖RNAを形成することができる);
d)該第2サトウダイコン植物細胞を第2植物に成長させ;
e)該第1植物を該第2植物と交雑して種子を産生し;そして、
f)該種子から植物を成長させること(ここで、該第1および第2RNA鎖は、該内在性AGL20遺伝子発現のRNA干渉に参加する二本鎖RNAを形成する)
を含む。
【0169】
特定の局面では、本発明は、トランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、トランスジェニックサトウダイコン植物に関し、そのゲノム中に、
i. 異種または内在性FLC遺伝子のコード領域を含む第1異種遺伝子構築体、および
ii.転写されると第1RNAヌクレオチド配列および第2RNAヌクレオチド配列を産生し、ここで、該第1RNAヌクレオチド配列は、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2ヌクレオチド配列が二本鎖RNAを形成し、ここで、二本鎖RNAが該内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する異種DNAを含む、RNA組成物をコード可能な第2異種遺伝子構築体
を含む。
【0170】
本発明の1つの態様では、該第1異種遺伝子構築体が受託番号AF537203のFLC cDNAからなるFLCコード領域を含む、トランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、トランスジェニックサトウダイコン植物を提供する。
【0171】
本発明の特定の態様では、該FLC遺伝子は、配列番号3で示される。
【0172】
本発明の他の態様では、該FLCが、受託番号AF537203のFLC cDNAのヌクレオチド配列と、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%または93%配列同一性を有するFLCコード領域を含む、トランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、トランスジェニックサトウダイコン植物が提供される。
【0173】
本発明の特定の態様では、該FLC遺伝子は、配列番号3で示したヌクレオチド配列と少なくとも93%から99%の配列同一性を有する。
【0174】
他の特定の態様では、該FLC遺伝子は、配列番号21、23および25で示した内在性FLC遺伝子のFLCコード領域を含む。
【0175】
また他の特定の態様では、該FLC遺伝子は、配列番号21、23および25で示した内在性FLC遺伝子のFLCコード領域のヌクレオチド配列と、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%または93%の配列同一性を有するFLCコード領域を含む。
【0176】
1つの態様では、本発明は、トランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、上記のトランスジェニックサトウダイコン植物に関し、ここで、第2遺伝子構築体に含まれる該異種DNAは、ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC-3'(配列番号8)を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'-GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'(配列番号9)を有するリバースプライマーを用いたPCR反応で、上記のAGL20遺伝子断片のエクソン3から7からなる0.28 Kb cDNA断片から取得可能である。
【0177】
1つの態様では、本発明は、該第1RNA鎖を転写する異種DNAが配列番号5で示される、トランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、上記のトランスジェニックサトウダイコンに関する。
【0178】
1つの態様では、本発明は、上記のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物に関し、ここで、第2遺伝子構築体に含まれる該異種DNAは、転写されると、該第1および第2RNA鎖を含む該植物細胞中で二本鎖RNAを形成する逆位反復を含む(ここで、該二本鎖RNA分子は、AGL20遺伝子サイレンシングを誘導する)。
【0179】
1つの態様では、本発明は、第2遺伝子構築体にプロモーターとターミネーターの間に挿入された異種DNAを含む上記のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物に関し、異種DNAは、
a. ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC -3'(配列番号8)を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'- GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC -3'(配列番号9)を有するリバースプライマーを用いた組換えPCR反応で、上記した0.6 Kb AGL20遺伝子断片のエクソン3から7からなる0.28 Kb cDNAを増幅させ;
b. フォワードプライマー 5'- ATCCAACCGCGGACCTGCACATCAACAA -3'(配列番号7)およびリバースプライマー5'- GTTCGAGACTTTTTAACTTCTTAGGTAAGTTTCTGCTTCTAC -3'(配列番号12)を用いて、ST-LS1イントロンおよび隣接スプライシングサイトを含む0.19 Kb断片を増幅させ;
c. 配列番号8および配列番号7のプライマーならびに鋳型として両増幅産物の混同物を使用する2回のPCRにより、互いに工程a)およびb)で取得した増幅産物を融合させ、0.47 Kb長の融合産物を産生し;
d. それらのリンカーに関して工程a)で使用したプライマーとは異なるフォワードプライマー5'-TAAATCCGCGGAAGAAGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'(配列番号10)およびリバースプライマー5'-CTATTTGTCGACGCATGCTGATCTCCTGATC-3'(配列番号11)を用いて、2回目、0.28 Kb BvAGL20断片を増幅させ;
e. Sac II制限サイトで両断片を融合させ、ジャガイモST-LS1遺伝子由来のイントロンにより分離されるBvAGL20配列のための逆位反復を作製すること
により取得可能である。
【0180】
1つの態様では、本発明は、第2遺伝子構築体に含まれる該異DNAが、配列番号2のヌクレオチド配列233-2657で示される、上記のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物に関する。
【0181】
本発明の1つの態様では、該第2異種遺伝子構築体が、上記の発現カセットに含まれる、トランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、トランスジェニックサトウダイコン植物を提供する。
【0182】
特定の局面では、本発明は、該第1および第2異種遺伝子構築体の共発現が、該サトウダイコン植物での春化応答の相乗的遅延を生じる、本明細書に上記したトランスジェニックサトウダイコン植物に関する。
【0183】
1つの態様では、本発明は、したがって、相乗的有効量のAGL20およびFLC発現産物を含む、トランスジェニックサトウダイコン細胞、とりわけ、トランスジェニックサトウダイコン植物に関する。
【0184】
他の特定の局面では、本発明は、第1および第2異種遺伝子構築体の共発現が、該サトウダイコンでの春化応答の完全な抑制を生じ、その結果、非抽薹(NB)表現型を生じる、本明細書に上記したトランスジェニックサトウダイコン植物に関する。
【0185】
また他の特定の局面では、本発明は、上記したトランスジェニックサトウダイコン植物に関し、該植物は、第1異種遺伝子構築体が親1により提供され、第2異種遺伝子構築体が親2により提供され、少なくとも1個の親植物が非抽薹(NB)表現型を示さない2個の親植物の交雑により取得し得る。
【0186】
1つの態様では、本発明は、上記のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法に関し、
a. 異種FLC遺伝子を含む発現カセットでサトウダイコン細胞を形質転換し(ここで、該FLC遺伝子は、内在性AGL20遺伝子の発現を抑制することが可能な異種遺伝子構築体を含む上記の制御配列および/または発現カセットに操作可能に結合する);
b. 異種DNA含むサトウダイコン細胞を同定し、
c. 所望により、工程b)で同定したサトウダイコン細胞を、異種FLC遺伝子を含む発現カセットで形質転換し(ここで、該FLC遺伝子は、内在性AGL20遺伝子の発現を抑制することが可能な異種遺伝子構築体を含む上記の制御配列および/または発現カセットに操作可能に結合する)、導入した異種DNAの両方を含むサトウダイコン細胞を同定し;
d. 工程b)で同定した該植物細胞から、トランスジェニック植物を再生し、
e. 春化応答の遅延または春化応答の完全な抑制を示し、その結果、非抽薹(NB)表現型を生じるサトウダイコン植物を同定し、
f. 所望により、工程a)、および、所望により、工程c)で導入した植物細胞ゲノム中の異種DNAの存在を確認すること
を含む。
【0187】
特定の態様では、トランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法は、2個の親植物を交雑することを含み、ここで、第1異種遺伝子構築体は、上記のFLC遺伝子を含むサトウダイコン植物により示される親1により提供され、第2異種遺伝子構築体は、上記の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制することが可能な異種遺伝子構築体を含むサトウダイコン植物により示される親2により提供され;該交雑から生じた植物、とりわけ、親1および親2の両方により提供される遺伝子構築体を含む植物、よりとりわけ、親1および親2の両方により提供される遺伝子構築体を含み、遅延した春化応答または非抽薹表現型を示す植物を含む。
【0188】
特定の態様では、本発明は、少なくとも1個の親植物が、非抽薹(NB)表現型を示さないトランスジェニックサトウダイコンを製造する方法に関する。
【0189】
本発明は、上記のトランスジェニックサトウダイコン植物の根を含み、ここで、該根は、トランスジェニックサトウダイコン細胞に由来する植物に由来し、該トランスジェニックサトウダイコン細胞に由来する植物は、
a) サトウダイコン細胞で転写されると第1RNAヌクレオチド配列および第2RNAヌクレオチド配列を産生し、ここで、該第1RNAヌクレオチド配列は、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2ヌクレオチド配列が二本鎖RNAを形成し、ここで、二本鎖RNAが該内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する異種DNAを含む、異種遺伝子構築体、
b) 異種もしくは内在性FLC遺伝子を含む異種遺伝子構築体
c) a)およびb)の組合せ
を含む。
【0190】
本発明は、異種遺伝子構築体を含む上記のトランスジェニックサトウダイコン細胞に由来する植物を含み、該構築体は、
a) サトウダイコン細胞で転写されると第1RNAヌクレオチド配列および第2RNAヌクレオチド配列を産生し、ここで、該第1RNAヌクレオチド配列は、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2ヌクレオチド配列が二本鎖RNAを形成し、ここで、二本鎖RNAが該内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する異種DNA、
b) 異種もしくは内在性FLC遺伝子を含む異種遺伝子構築体
c) a)およびb)の組合せ
を含む。
【0191】
本発明はまた、異種遺伝子構築体を含む上記のトランスジェニックサトウダイコン植物に由来する子孫植物を含み、該構築体は、
a) サトウダイコン細胞で転写されると第1RNAヌクレオチド配列および第2RNAヌクレオチド配列を産生し、ここで、該第1RNAヌクレオチド配列は、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2ヌクレオチド配列が二本鎖RNAを形成し、ここで、二本鎖RNAが該内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する異種DNA、
b) 異種もしくは内在性FLC遺伝子を含む異種遺伝子構築体
c) a)およびb)の組合せ
を含む。
【0192】
本発明は、異種遺伝子構築体を含むトランスジェニックサトウダイコン根に由来する糖を含み、該構築体は、
a) サトウダイコン細胞で転写されると第1RNAヌクレオチド配列および第2RNAヌクレオチド配列を産生し、ここで、該第1RNAヌクレオチド配列は、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2ヌクレオチド配列が二本鎖RNAを形成し、ここで、二本鎖RNAが該内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する異種DNA、
b) 異種もしくは内在性FLC遺伝子を含む異種遺伝子構築体
c) a)およびb)の組合せ
を含む。
【0193】
本発明は、バイオ燃料、例えば、異種遺伝子構築体を含むトランスジェニックサトウダイコン根に由来するエタノール、ブタノール、メタノール、バイオガスおよびディーゼルを含み、該構築体は、
a) サトウダイコン細胞で転写されると第1RNAヌクレオチド配列および第2RNAヌクレオチド配列を産生し、ここで、該第1RNAヌクレオチド配列は、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2ヌクレオチド配列が二本鎖RNAを形成し、ここで、二本鎖RNAが該内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する異種DNA、
b) 異種もしくは内在性FLC遺伝子を含む異種遺伝子構築体
c) a)およびb)の組合せ
を含む。
【0194】
本発明は、他の産業適用、例えば、異種遺伝子構築体を含むトランスジェニックサトウダイコン根に由来するプラスチックを含み、該構築体は、
a) サトウダイコン細胞で転写されると第1RNAヌクレオチド配列および第2RNAヌクレオチド配列を産生し、ここで、該第1RNAヌクレオチド配列は、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2ヌクレオチド配列が二本鎖RNAを形成し、ここで、二本鎖RNAが該内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する異種DNA、
b) 異種もしくは内在性FLC遺伝子を含む異種遺伝子構築体
c) a)およびb)の組合せ
を含む。
【0195】
本発明はまた、上記のサトウダイコン植物を加工し、異種遺伝子構築体を含むサトウダイコン植物から糖を誘導することを含む、糖、エタノール、バイオガスおよび/またはディーゼル燃料を製造する方法を含み、該構築体は、
a) サトウダイコン細胞で転写されると第1RNAヌクレオチド配列および第2RNAヌクレオチド配列を産生し、ここで、該第1RNAヌクレオチド配列は、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2ヌクレオチド配列が二本鎖RNAを形成し、ここで、二本鎖RNAが該内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する異種DNA、
b) 異種もしくは内在性FLC遺伝子を含む異種遺伝子構築体、
c) a)およびb)の組合せ
を含む。
【0196】
本発明はさらに、RNA干渉(RNAi)に関する新規組成物および方法に向けられる。組成物は、標的mRNA、例えば、AGL20 mRNAに十分に相補的であるか、または同一である、RNA鎖を含むdsRNAを含む。現在理解されているとおり、dsRNAは、Dicerにより、dsRNAを小分子干渉RNA(siRNA)に切断することで加工される。本発明の1つの態様にしたがって、新規siRNA組成物は、標的遺伝子mRNA、例えば、サトウダイコンAGL20遺伝子mRNAのRNA干渉のために、RISC複合体に組み込まれる。サトウダイコンAGL20遺伝子mRNA発現を妨害すると、サトウダイコン春化応答の抑制または遅延を生じる。春化応答の遅延は、その栄養成長を継続し、正常な主根を発達させるサトウダイコン植物を生じる。
【0197】
本発明の1つの態様では、siRNAは、21から23ヌクレオチド長である第1RNA鎖および生物学的条件下、例えば、細胞で見られる条件下、とりわけ、細胞の細胞質および/または核で、第1配列にハイブリダイズする第2RNA鎖を含む。
【0198】
また、本発明の他の態様では、siRNAは、19から30ヌクレオチド長である第1RNA鎖および生物学的条件下、例えば、細胞で見られる条件下、とりわけ、細胞の細胞質および/または核で、第1配列にハイブリダイズする第2RNA鎖を含む。
【0199】
本発明は、新規siRNAが、標的遺伝子mRNA、例えば、サトウダイコンAGL20遺伝子mRNAのRNA干渉を誘導する機能を果たすという条件で、あらゆる長さのsiRNAを含む。
【0200】
本発明の他の態様では、siRNA第1もしくは第2鎖は、AGL20遺伝子により産生されるRNAのヌクレオチド配列と十分に相補的であるか、または同一であり、RNAサイレンシングを誘導する。“十分に相補的な”なる用語は、siRNAの第1もしくは第2鎖配列が、細胞質で見られる条件下で、標的遺伝子(mRNA)により産生されるRNAと十分にハイブリダイズするか、もしくはアニールすることができ、その結果、RNAiが誘導され、標的遺伝子の発現の抑制を生じることを意味する。このAGL20遺伝子の抑制は、サトウダイコン植物が非抽薹表現型を生じるようにし、それは、サトウダイコン植物が、もはや抽薹および次の開花による18週間の典型的な春化応答に応答せず、それとは反対に、栄養成長(非抽薹)を継続し、正常な主根を発達させることを意味する。
【0201】
該非抽薹表現型を発現する植物は、標準的な成長条件を用いた表現型解析実験を適用することにより、容易に、同定および選択し得る。
【0202】
1つの態様では、本発明のsiRNA分子は、AGL20遺伝子の少なくとも一部に十分に相補的であるか、または同一である核酸鎖を含む。siRNA鎖が同一であるとき、標的mRNAは、無用なRNA断片に切断されることは既知である。しかしながら、対が同一に満たないとき、RISC複合体がmRNAに結合し、天然のmRNAに沿ったリボソーム移動を妨害できるが、mRNAを小断片に切断することはできない。にもかかわらず、いずれの場合にも、mRNAに転写される遺伝子の発現は、抑制され、AGL20タンパク質は、形成されない。本発明は、したがって、さらに、発現が変えられる遺伝子から転写されるmRNAの相当する配列に十分に相補的であるか、または同一である、siRNAの1個の鎖を含む。例えば、mRNAに結合するsiRNAの鎖は、標的遺伝子の相当するmRNA配列に少なくとも50%同一、より望ましくは、少なくとも70%同一、またさらに望ましくは、少なくとも90%同一、さらにより望ましくは、少なくとも95%同一である。
【0203】
発現が変えられる遺伝子から転写されるmRNAの相当する配列に十分に相補的であるか、または同一であるsiRNAの一本鎖と標的遺伝子により産生されるmRNAの同一性割合は、少なくとも70%から少なくとも95%の同一性の範囲内にあり、この範囲内で、あらゆる数値をとり得るものと理解されるべきである。
【0204】
標的配列に対して、挿入、欠失、および単一点突然変異を有するRNAが、また、標的遺伝子発現抑制のために有効であることは既知である。siRNA分子と標的遺伝子転写産物(例えば、標的遺伝子mRNA)間の配列同一性は、当業者に既知のアライメントアルゴリズムで、ヌクレオチド配列間の類似性割合を計算することにより最適化し得る。あるいは、本発明のsiRNA分子は、標的分子に対する配列類似性により、および標的配列にハイブリダイズし、その発現を抑制する能力により同定し得る。
【0205】
本発明の他の態様にしたがって、新規siRNA組成物は、新規dsRNAを製造するために、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)により使用し得て、次いで、より多くのsiRNAを形成するために加工し得る。
【0206】
また本発明の他の態様は、RISCと結合しない本発明の一本鎖siRNA組成物が、それらの相当するmRNA、例えば、AGL20転写mRNAに結合するときに生じ、ここで、RNA依存性RNAポリメラーゼは、dsRNAを作製するためのプライマーとして使用する。
【0207】
また、他の本発明の態様では、遺伝子サイレンシング法は、標的遺伝子、例えば、AGL20のセンスRNA断片および同じ遺伝子のアンチセンスRNA断片を、別々に、植物細胞に導入することを含み、ここで、センスRNA断片およびアンチセンスRNAは、二本鎖RNA分子を形成することができ、細胞内での標的遺伝子の発現が変えられる。好ましい態様では、RNA断片は、2個の異なるRNA分子を含む。他の好ましい態様では、RNA断片は、それらが二本鎖RNA分子を形成することが可能な条件下で、細胞に導入する前に混合される。他の好ましい態様では、RNA断片は、該細胞に連続して導入される。また他の態様では、RNA断片は、1個のRNA分子に含まれる。そのような場合には、RNA分子は、好ましくは、折り畳むことが可能であり、その結果、そこに含まれた該RNA断片は、二本鎖RNA分子を形成する。標的遺伝子を抑制するセンスおよびアンチセンスRNA断片を使用するさまざまな方法は、WO99/61631に記載されている。
【0208】
本発明はさらに、植物細胞に、標的遺伝子mRNAのセンスおよびアンチセンス断片からなるdsRNA分子を導入する方法を提供する。
【0209】
しかしながら、RNAiサイレンシングの根本的な機構は、全体的には理解され得ず、したがって、本発明は、いずれか特定のRNAiサイレンシング理論に固執しないものと理解されるべきである。したがって、本発明の内容において、“siRNA仲介サイレンシング”なる用語は、特定のRNA干渉細胞機構に限定されない。
【実施例】
【0210】
実施例
実施例1: トランスジェニックサトウダイコンにおけるFLCの構成的発現のためのバイナリー形質転換ベクターの構築
FLC遺伝子カセットを、構成的CaMV 35Sプロモーターの制御下におく。FLCコード領域は、Arabidopsis thaliana(受託番号AF537203、配列番号3)由来のFLC cDNA、その後のAgrobacterium tumefaciens由来のマンノピンシンターゼ(mas)ターミネーターからなる。遺伝子カセットを、サトウダイコンでのマンノース選択のためのSuperMAS::PMI::NOS選択マーカー遺伝子を有する所有の(独自の)バイナリー形質転換ベクターpVictorHiNKのT-DNA上に2.4 Kb Asc I − Pac I断片として導入し(Joersbo et al, 1998)、バイナリーベクターpHiNK260を作製した(図1)。pHiNK260の完全なヌクレオチド配列は、配列番号1で開示する。完成後、バイナリーベクターpHiNK260を、Holsters et al., 1978に記載された熱ショックにより、Agrobacterium tumefaciens株EHA101(Hood et al., 1986)に形質転換した。
【0211】
実施例2: サトウダイコンBeta vulgaris由来のホモログの増幅およびクローニング
2.1 サトウダイコンからの推定されるFLCホモログの増幅およびクローニング
サトウダイコン由来のFLCホモログを増幅およびクローン化するために、縮重プライマーを、FLCが属する転写因子のMADSボックスファミリーのあらゆる2型メンバーのNH2末端に存在する保存されたMADS_MEF2様ドメインに対して設計した(Parenicova et al, 2003)。縮重プライマーHiNK5277(5'-CGNCGNAAYGGNCTNCTNAARAARGC-3'、配列番号30)は、保存されたアミノ酸配列“RRNGLLKKA”を標的とし; プライマーHiNK5279(5'- GCNTAYGARCTNTCNGTNCTNTGYGAYGCNGA-3'、配列番号31)は、HiNK5277のすぐ下流にハイブリダイズし、アミノ酸配列モチーフ“AYELSVLCDAE”を標的とする。
【0212】
全RNAを、QiagenからのRNeasy Plant Mini kitを用いて、サトウダイコンの葉および頂部から抽出し、Ambion, IncからのFirstChoice RLM-RACEキットを用いてcDNAに変換した。実験条件は、基本的に、逆転写反応でのプライマーとして3' RACEアダプターを用いたキットで提供される3' RLM-RACEプロトコールに記載されたとおりであった。推定されるFLCホモログを、次いで、縮重プライマーHiNK5277と組合せた3' RACE Outer Primer、その後の典型的なPCR反応での、縮重プライマーHiNK5279と組合わせた3' RACE Inner Primerを用いて、2回の継続したPCRのラウンドで、最初の鋳型としてcDNA反応から出発して増幅した。したがって、取得した増幅断片は、Brassica種からのFLCホモログの配列にしたがって、予期したとおり、およそ0.6 Kbの大きさを測定した。しかしながら、取得したDNAの存在バンドは、基本的に、MADSボックスファミリーの転写因子の複数メンバーの増幅を可能にするプライマーHiNK5277およびHiNK5279の縮重性質のために、複数の配列を含むことが予期される。PCR産物を切り取り、精製し、クローン化し、次いで、配列解析のために提供した。取得したさまざまな配列の中で、MADSボックスモチーフのすべての共有部分を予期したとおり、3個の高い相同性配列を、FLCの推定されるホモログとして同定し、contig_71、_78および_79と呼んだ。これらの3個のcDNA断片は、小さなインフレーム欠失により互いに異なり、それは、それらが、1個の同じ遺伝子のオルタナティブスプライシングバリアントを表していることを示す。5'末端で、3個すべてのcDNA断片は、受託番号BQ595637を有する公共のサトウダイコンESTと拡張した配列相同性を示す。EST配列と3個のcDNA断片の結合は、推定されるFLCホモログ(配列番号21、23および25)から転写される全長cDNAおよび相当する翻訳産物(配列番号22、24および26)の再構築を可能にした。3個の推定されるFLCタンパク質のアライメントを図9に示す。
【0213】
2.2 サトウダイコンからのAGL20ホモログの増幅およびクローニング
サトウダイコン由来のAGL20ホモログを増幅およびクローン化するために、シロイヌナズナ由来のAGL20 cDNAをカラシおよびタバコ由来のAGL20ホモログと並べたとき、保存されたヌクレオチド配列に対する縮重プライマーを設計した(図2)。AGL20は、MADSボックス転写因子の大ファミリーに属するので、プライマーを、さまざまなAGL20ホモログ間で保存されているが、他のMADSボックスファミリーメンバーの多くとは異なる領域に対して設計した。プライマーHiNK624(5'-ATGGTKMGRGGNAARACNCAGATGA -3'、配列番号3)は、ATGコドンで始まる極端なNH2末端と配列相同性を共有し、それは、コドン1から9にわたり; プライマーHiNK619(5'-CCRATGAACARTTSNGTCTCNACWTC -3'、配列番号14)は、COOH末端に相補的であり、エクソン8のストップコドンの上流にのみハイブリダイズし、シロイヌナズナ由来のAGL20配列にしたがって、コドン198から206にわたる。
【0214】
全RNAを、QiagenからのRNeasy Plant Miniキットを用いて、サトウダイコンの葉から抽出し、Life TechnologiesからのSuperscript(商標) II RNase H- reverse trancriptaseを用いて、cDNAに変換した。実験条件は、基本的に、供給者により記載されたとおりであるが、逆転写反応でのプライマーとしてHiNK619を用いた。推定されるAGL20ホモログを、鋳型としてcDNA反応から出発し、典型的なPCR反応でのプライマーHiNK619およびHiNK624を用いて増幅した。したがって、取得した増幅断片は、およそ0.6 Kbの大きさを測定し、異種種からのAGL20ホモログの配列にしたがって予期したとおりであった。クローン化および配列解析で、図3に示したサトウダイコンホモログのヌクレオチド配列は、シロイヌナズナからのAGL20遺伝子と強い相同性を共有することが示され(図4)、今後、BvAGL20(配列番号6)と呼ぶ。BvAGL20断片は、マツおよびエンドウを含む他の種由来のAGL20ホモログに関して観察された程の強い相同性は共有しなかったが、AGL20との相同性は、シロイヌナズナ由来のMADSボックス転写因子の他のどのメンバーよりも強かった。イントロン2から6を含む部分ゲノム配列は、エクソン2および7に対する各々のプライマーHiNK725(5'-ACTAAGACAATTATCGGTACCAAAAGC-3'、配列番号15)およびHiNK729(5'-AAGGTAGCAGATCTGGTGAAGAATTGAG -3'、配列番号16)を設計することにより取得し得て、典型的なPCR反応で、鋳型としてサトウダイコンDNAを用いて取得したゲノム断片を、増幅および塩基配列決定を行うために使用した。サトウダイコンホモログの部分ゲノム配列(配列番号4)は、サトウダイコンのイントロンがシロイヌナズナよりも相当長いという事実にもかかわらず、シロイヌナズナ配列と比較して、介入配列の位置に関して、強い保存を示した。
【0215】
実施例3: トランスジェニックサトウダイコンにおけるAGL20遺伝子のRNAi誘導抑制のためのバイナリー形質転換ベクターの構築
‘組換えPCR’(Higuchi, 1990)として既知の戦略により、サトウダイコン由来のAGL20ホモログのエクソン3から7からなる0.28 Kb cDNA断片(配列番号5)を、ジャガイモST-LS1遺伝子由来の第2イントロンと融合させた(Eckes et al., 1986; Vancanneyt et al., 1990)。MADSボックス転写因子のファミリー内のMADSドメインの強い配列保存による他のMADSボックス転写因子の抑制を妨害するために、MADSドメインを含まないように注意した。BvAGL20断片を、プライマーHiNK792(5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC-3'、配列番号8)および793(5'-GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'、配列番号9)を用いて増幅し、前者は、BamH I制限サイトを加える短いリンカーを有し、後者は、ST-LS1イントロンの5'末端に相補的な17個のヌクレオチドテールを有する。ST-LS1イントロンおよび隣接するスプライシングサイトを含む0.19 Kb断片を、プライマーHiNK529(5'-ATCCAACCGCGGACCTGCACATCAACAA-3'、配列番号7)および796(5'-GTTCGAGACTTTTTAACTTCTTAGGTAAGTTTCTGCTTCTAC-3'、配列番号12)、Sac IIの認識配列を含むリンカーを有するHiNK529ならびに0.28 Kb BvAGL20断片の5'末端と同一の22ヌクレオチドのテールを有するHiNK796を用いて増幅させた。加えたテールの結果として、プライマーHiNK793および796ならびにそれらの関連増幅産物は、39ヌクレオチド長を超えて、互いに相補的である。この重複により、両増幅産物を、プライマーHiNK792および529を用いて、ならびに鋳型として、両増幅産物の混合物を用いて、PCRの2ラウンドにより互いに融合させ、0.47 Kb長の融合産物を産生した。0.28 Kb BvAGL20断片を、本研究で、各々、それらのリンカーに関してのみHiNK793、HiNK792とは異なるプライマーHiNK794(5'-TAAATCCGCGGAAGAAGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'、配列番号10)および795(5'-CTATTTGTCGACGCATGCTGATCTCCTGATC-3'、配列番号11)を用いて、2回目増幅させた; HiNK794および795は、各々、Sac IIおよびSal I制限配列を加えるための5'リンカーを有する。両断片を、Sac II制限サイトで融合させ、ジャガイモST-LS1遺伝子由来のイントロンにより分離されるBvAGL20配列のための逆位反復を作製した。イントロンは、逆位反復を安定化させるためのスペーサー断片として含まれ、将来のトランスジェニックイベントにおけるRNAi現象の効率を改善した(Wang and Waterhouse, 2001; Smith et al., 2000)。したがって、取得したおよそ0.75 Kbの逆位反復を、次いで、シロイヌナズナに由来するUbi3プロモーター(Norris et al., 1993)とAgrobacterium tumefaciensに由来するnosターミネーターの間に、BamH I - Sal I断片として導入した。その後、遺伝子カセットを、マンノース選択のためのSuperMAS::PMI::NOS選択可能マーカー遺伝子の隣に、2.5 Kb Asc I - Pac I断片として、独自のバイナリー形質転換ベクターpVictorHiNKのT-DNAに移し、pHiNK382を作製した(図4)。pHiNK382の完全なヌクレオチド配列は、配列番号2に示す。
【0216】
本発明の他の態様は、2個以上のバイナリーベクターを含む: サトウダイコンでのBvAGL20 cDNA断片のトランスジェニック発現のために構築したpHiNK440およびpHiNK441。BvAGL20cDNA 断片のための逆位反復を有し、遺伝子カセットの発現で、dsRNAまたはヘアピンの即座の形成を生じるpHiNK382とは対照に、pHiNK440および441は、BvAGL20 cDNA断片の、各々、センスもしくはアンチセンス方向のみを発現する。BvAGL20のためのdsRNAは、したがって、互いに一方のベクターのための交雑イベント後、取得され、cDNA断片のセンスおよびアンチセンス方向の同時の蓄積、ならびに、次のdsRNAの形成を生じる。センス(pHiNK440)およびアンチセンス(pHiNK441)発現のための遺伝子カセットは、各々、プライマーHiNK2617(5'-TAAATGGATCCAAGAAGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'、配列番号17)およびHiNK795、プライマーHiNK2618(5'-GAAGCAGAAACTTACCTGTCGACAAGAAGTTAAAAAGTCT CGAAC -3'、配列番号18)およびHiNK792を用いて、同じ0.28 Kb BvAGL20断片(配列番号5)を増幅させ、次に、Ubi3プロモーターとnosターミネーター間のBamHI - SalI断片として増幅産物をクローン化することにより取得した。pHiNK382の場合と同様に、遺伝子カセットを、次いで、Asc I - Pac I断片として、すでにマンノース選択のためのSuperMAS::PMI::NOS選択可能マーカーを有した独自のバイナリー形質転換ベクターpVictorHiNKのT-DNAに移し、pHiNK440および441を作製した(図7および8)。バイナリーベクターpHiNK440および441の完全なヌクレオチド配列は、各々、配列番号19および配列番号20で示す。完成後、すべてのバイナリーベクターを、Holsters et al., 1978に記載された熱ショックプロトコールにより、Agrobacterium tumefaciens株EHA101に形質転換した。
【0217】
したがって、本発明はさらに、センス方向に向けられたBvAGL20 cDNA断片を含む発現カセットおよびアンチセンス方向に向けられたBvAGL20 cDNA断片を含む第2発現カセットを提供することを含む。1つの態様では、センス方向に向けられたBvAGL20 cDNA断片を含む発現カセットは、pHiNK440であり、アンチセンス方向に向けられたBvAGL20 cDNA断片を含む発現カセットは、pHiNK441である。
【0218】
本発明はさらに、内在性サトウダイコンAGL20発現のコンディショナルRNAi抑制のための方法を含み、該方法は、(a) 雌雄サトウダイコン親近交株をセンス方向に向けられたBvAGL20 cDNA断片で形質転換し、雌雄親近交株をアンチセンス方向に向けられたBvAGL20 cDNA断片で形質転換し;(b) (a)の雌雄親株を交雑して雑種サトウダイコン植物を作製し、ここで、センスおよびアンチセンスcDNA断片は、雑種サトウダイコン植物でdsRNAを形成し、その結果、該雑種植物の抽薹制御を生じることを含む。
【0219】
本発明は、センスまたはアンチセンスの一方のBvAGL20 cDNA断片のみを含む親株が、AGL20発現のRNAiを受けず、したがって、子孫の産出のための花および種子を産生するように成長すると認識される。センスおよびアンチセンス断片が雑種植物で組み合わされると、RNAi機構が抽薹の抑制を生じ、それにより、サトウダイコンを、次の季節での抽薹および開花の危険なしに、北半球で秋に播くことが可能になる。これは、伝統的な春作から冬作へサトウダイコンを移し、栽培者が、秋にそれらの作物の畝を作り、次の年の夏に収穫することを可能にする。それは、冬品種が、典型的に、春品種と比べて高い収量を産生することを示している。
【0220】
実施例4: 形質転換
インタクトサトウダイコン種子を、インビトロで、表面滅菌し、発芽させ、前処理した。移植片を、次いで、WO 02/14523 A2に開示された複数シュートプロトコールを用いて、Agrobacterium tumefaciens仲介遺伝子転移により形質転換した。
【0221】
4.1 種子滅菌および発芽
サトウダイコンの種子(Beta vulgaris L.)を表面滅菌し、無菌培養で種子発芽培地(GM)に播種した。GMは、約30 g/Lのスクロース、myo-イノシトール(100 mg/L)、パントテン酸(1 mg/L)および適当なゲル化剤を含有するムラシゲ・スクーグ(MS)塩を含み得て、また、サイトカイニンのような機能を有する植物成長レギュレーターをGMに含み得た。サイトカイニンレベルは、一般に、0.5 mg/Lから5 mg/Lの典型的な範囲内、通常は、1.0から2.0 mg/Lである。オーキシン阻害剤TIBAをまた、加える。
【0222】
4.2 切除およびシュート分裂組織培養の開始
10-20日齢の苗の茎頂を切除し、シュート増殖培地(SMM)にプレーティングする。この場合には、SMMは、30 g/L スクロースおよび適当なゲル化剤を含有するムラシゲ・スクーグ塩を含んだ。さらに、SMMは、少なくとも1個のサイトカイニン成長レギュレーター、例えば、BA、カイネチン、2-ipまたはゼアチンを、一般には、約1から10 mg/Lの濃度範囲で、通常は、1-5 mg/Lの濃度範囲で含んだ。シュート先端は、頂端および腋窩シュート分裂領域、葉原基、5 mmの胚軸ならびにさらなる伸長を減らすために切り取られる子葉節からなった。プレーティング後、7-10日おきに、すべての新規伸長葉材料を除去した後、標的外植片を新鮮なSMMでサブクローン化した。複数のシュート標的外植片は、典型的には、平均21-22℃で、低光量(10-30 μEinsteins)下、16時間日長、培養した。4から7週間後、複数のシュート培養は、小型ロゼットに似ており、形質転換の準備が整う。
【0223】
4.3 複数シュート培養の植菌およびインキュベーション
Agrobacterium tumefaciens仲介形質転換を、複数シュート培養の形質転換のために使用する。本発明に記載のバイナリーベクター(例えば、pHiNK260; pHiNK382; pHiNK440および441)を含むA. tumefaciens株EHA101を、1 g/L酵母エキス、5 g/Lペプトンおよび適当なゲル化剤からなる固体培養培地で、28℃で2-3日間、増殖させる。形質転換の1日前に、複数シュート培養を、すべての残った伸長葉材料を除去することにより、植菌のために調製する。
【0224】
植菌を始めるために、A. tumefaciensの単一コロニーを、滅菌ループ(loop)を用いて、もとのYEB培養プレート上で、一緒に収集する。各標的外植片の実際の植菌のために、滅菌した外科用メスの刃を、収集したA. tumefaciensのコロニーにつけ、各標的の頂端および腋窩分裂組織に、切り目を入れるように使用する。この植菌工程のすぐ後、約7 μlのMSMG Induction Medium (MS塩、2 g/Lグルコース、MES、および200 μMアセトシリンゴン)を、いくつかの実験で、各標的の傷ついた表面に適用する。シュート分裂組織産生細胞に遺伝子送達を向けるために、できるだけ多くの分裂組織領域の中心をとおして切り取るように努力する。20個の標的培養のうち10個を、典型的には、順に処理し、次いで、層流フードの滅菌条件下で、10分間、空気乾燥を行う。空気乾燥処理後、処理した標的外植片を、MSCC共栽培培地(MS塩、B5ビタミン、2 mg/L BA、30 g/Lスクロース、適当なゲル化剤を有する200 μMアセトシリンゴン)に移す。処理した移植片を、次いで、2-4日間、21-22℃で、継続した暗培養で、MSCC培地上でインキュベートする。
【0225】
4.4 標的培養および選択
植菌および共栽培後、複数シュート移植片を、マンノース選択圧を適用する最短4日前に、2 mg/L BAおよび適当な抗生物質およびゲル化剤を含有する新鮮なSMM培地に移す。形質転換した組織を、形質転換後、段階的に増やしたマンノースの量(2.5 g/L − 15 g/L)および減らしたスクロースの量(20 g/L - 3 g/L)で選択する。マンノース選択レベルは、段階的な方法で、2.5 g/Lマンノース + 20 g/Lスクロースから4 g/Lマンノース + 20 g/Lスクロース、次いで、5 g/Lマンノース + 20 g/Lスクロース、次いで、6 g/Lマンノース + 18 g/Lスクロースおよび8 g/Lマンノース + 15 g/Lスクロースまで増やす。複数のシュート培養を成長させ続け、十分な選択圧を働かせるように、各継代培養で、注意深く分割する。この期間、BAレベルを0.25 mg/Lまで減らし、次いで、シュート伸長を促進するまで除去する。生存した形質転換組織の領域を、継続して、もとの標的外植片の死んだ非形質転換区分から除去し、生存区分を、再び、ストリンジェントな選択を働かせるために、注意深く分割する。選択およびシュート再生は、典型的には、10から約30週の期間にわたって進行する。若いシュートが出現すると、形質転換シュートの最も効率的な選択のための選択下で、それらを分離および単離する。
【0226】
4.5 形質転換したシュートの伸張
若いシュートが、およそ0.5-1.5 cmに到達すると、それらを、上記したマンノース選択を含むシュート伸長培地を含有する容器に移す(成長するシュートの伸長は、サイトカイニンレベルの減少により高められる)。MS塩、適当なゲル化剤および低レベルのサイトカイニンを含むシュート伸長培地は、0.1から1.0mg/lの典型的な範囲内で、伸長培地に組み込まれる。サトウダイコンのための最適なサイトカイニン適用は、0.2 mg/Lカイネチンである。
【0227】
4.6 形質転換植物の再生
トランスジェニックサトウダイコンシュートの選択は、選択剤としてマンノース-6-ホスフェートを含有する、標準的な再生培地で行った(WO 94/20627)。
【0228】
形質転換したシュートを、MSに基づくクローニング培地+5-15 g/Lのマンノースでクローン化する。1個のもとのトランスジェニックシュートからの複数のシュートが、ときどき望ましく、このために、本MS培地でのサイトカイニンおよびオーキシンの組合せを、クローン化を誘導するために使用した。低レベルの両成長レギュレーターは、典型的に、0.1mg/Lから0.5mg/Lの範囲にある。サトウダイコンのために、MS塩、30g/Lスクロースおよび0.2mg/Lカイネチンを含有する適当なゲル化剤、ならびに0.1mg/L NAAを使用する。数ヶ月のインキュベーション後、トランスジェニックシュートは、PMIアッセイまたはPCR解析により確認した。トランスジェニックシュートのクローン増殖および発根は、選択手順を逃れたキメラ植物を除去するための維持したマンノース選択下、標準的な増殖および発根培地で行った。最後に、植物を、表現型試験のために温室に移した。
【0229】
単一シュートは、オーキシン、例えば、0.5mg/Lから5 mg/LのIBAを補充したMS基本培地を含む発根培地に移すと、十分に発根する。1つの例では、発根培地は、5mg/L IBAおよび約12-15 g/Lマンノースを含む
【0230】
植物種の形質転換は、現在、双子葉類および単子葉類の両方を含む多数の植物種のために一般的であると理解されるべきである。原則として、あらゆる形質転換法は、細胞が植物本体に再生可能である限り、本発明に記載のキメラDNAを、適当な祖先細胞に導入するために使用し得る。方法は、プロトプラストのためのカルシウム/ポリエチレングリコール法(Krens, F. A. et al., 1982; Negrutiu I. et al, 1987)、プロトプラストのエレクトロポレーション(Shillito R. D. et al., 1985)、植物材料へのマイクロインジェクション(Crossway A. et al., 1986)、さまざまな植物材料のDNAもしくはRNA被覆粒子照射(Klein T. M. et al., 1987)、(非統合)ウイルスを用いた感染などから適当に選択し得る。本発明に記載の1つの方法は、Agrobacterium仲介DNA転移を含む。本発明に記載の他の方法は、EP A 120 516および米国特許第4940838号に開示された、いわゆるバイナリーベクター技術の使用である。
【0231】
実施例5: T0世代植物のための成長条件
プラスミドpHiNK260を、一年生および越年生サトウダイコンアクセプター遺伝子型に形質転換し、一方で、pHiNK382を、越年生材料のみで基質転換した。形質転換植物の最初の世代は、いわゆるT0である。より後の世代は、T1、T2などと呼ばれる。種子は、T1、T2などの世代を用いた実験のために使用した。
【0232】
非トランスジェニック(NT)コントロール植物を作製するために、インビトロ再生サトウダイコンシュートを作製した。実際の形質転換および選択手順に加えて、これらのNTシュートを、形質転換シュートと同様に処理し、発根させた。温室へのトランスジェニック植物のすべての送達は、同じ遺伝子型の少なくとも1個のNTコントロール植物を伴った。
【0233】
温室に移した後、形質転換したT0およびNTコントロールシュートを、発根段階に移した(were submitted)。小さい植物を、土壌と共に小鉢に植え替え、高めたCO2条件下で2週間育てた。これらの2週間後、発根した植物を、12 cm(0.7リットル)の鉢に移した。
【0234】
発根段階後、一年生サトウダイコン植物を、バイオチャンバーKK3(17時間人工光; 日中18℃ + 夜間温度)に移した。KK3への到達日を‘0日目’として、表現型解析実験の開始を考えた。
【0235】
発根段階後、越年生サトウダイコンを、春化前、温室VH113(17時間光、日中18-25℃および夜間15℃の温度)に2週間移した。春化は、人工光下で数週間、6℃の一定の温度で12時間、コールドルームKK6で生じた。一般に、遺伝的背景G018を有するサトウダイコン植物を、14週間春化処理し、一方で、G024材料は、16週間春化処理した。植物を春化室から取り出した日を‘0日目’として、表現型解析実験の開始を考えた。植物を、最初、バイオチャンバーKK5で2週間、ゆっくりと順化させ、段階的に、10℃から18℃まで温度を上げ、次いで、より大きい16 cm(2リットル)の鉢に再び植え、バイオチャンバーKK3に移した。
【0236】
T0世代イベントの表現型解析を継続して開始し、一般に、3ヶ月間(90日)または植物が抽薹を開始するまでの間続けた。3ヶ月後にまだ抽薹を開始していない植物を非抽薹(NB)と呼び、次の世代の産生のために、抽薹および開花を誘導する試みで、再び、春化処理した。
【0237】
実施例6: T1、T2、T3世代の成長条件
成長条件の要約:表現型解析実験は、種子から開始した。種子を96形式プラグポットトレイで発芽させた。均一発芽および根形成を確立するために、トレイを、17時間の光で、日中18-25℃および夜間16℃の温度で育てた。2週間後、PCR解析のために、植物をサンプリングした。
【0238】
PCR解析を、子孫集団のNTおよびトランスジェニック植物を同定するために行った。これは、トランスジーンカセットまたは選択可能マーカーPMIのためのPCR反応により達成した。一年生および越年生植物に分離する集団を、また、一年生傾向を制御するB遺伝子のためのマーカーで試験した。
【0239】
PCR結果を用いて、トランスジーンとNT植物の両方を選択した。NT植物は、内部コントロール植物として機能し、実験の間、トランスジェニック植物に伴った。元気な植物のみを選択し、一年生植物の表現型解析のために、鉢植えにした(0日目)。越年生植物を、プラグポットで維持し、実験に入る前に、人工的に春化処理した。記載した第2準フィールド試行で、越年生植物を春化前に植え替えた。
【0240】
植物の選択後、表現型解析実験は、下記に詳述したとおり、異なる成長条件を使用した:実験02-703は、2002年に温室VH113で行った。一年生植物は、PCR解析で直接、表現型解析に入り、一方で、越年生植物は、KK6で14週間、最初の春化処理を行った。KK5での春化および順化のための手順は、T0世代に関して同一であった。
【0241】
実験02-741および735を合わせて、温室VH113で行った。越年生植物のみを選択し、これらを、KK6で、17週から19週間春化処理した。KK5で、2週間の順化後、元気な植物を再び鉢に植え、2003年5月の第1週に、温室VH113に移した。
【0242】
実験03-753は、温室VH114で行った。春化は、KK6で、7週から19週の間、人工的に生じ、順化は、KK5で、2週間生じた。植物を、2004年4月末から5月初旬に、VH114に移植した。この温室で、越年生植物を、鉢の代わりに土壌で育てた。実験は、したがって、準フィールド試行と呼ばれた。
【0243】
実験04-754および755を合わせて、2004年9月から2005年5月まで、温室VH114で、準フィールド試行として行った。春化は、加熱しないが、凍結のない温室VH114で、自然に生じる。植物を、13週間の穏やかな春化(7 - 12 ℃)および15週間の強い春化(3 - 7℃)に曝した。元気な残った植物を、KK6で、6℃で18週間、人工的に春化処理し、KK5での順化の2週間後、2005年3月の中旬にVH113に移した。
【0244】
実験04-766および767を合わせて、人工気候室KK11で行った(16時間の光、日中18℃および夜間12℃の温度)。元気な越年生植物を、KK6で、6℃で15週間、春化処理し、再び鉢に植える前に、KK5で2週間、順化させ、KK11に移した(16時間の光、日中18℃および夜間12℃の温度)。
【0245】
抽薹を、表現型解析実験の間、週3回まで記録した。抽薹の日は、分裂組織の節間の伸長が最初に観察可能な最初の日として定義した。
【0246】
上記の実験をより詳細に下記する。
【0247】
準フィールド試行VH114 2004年9月−2005年5月
実験04-754および755
種子を、天然光および人工光および熱を有する温室で発芽させ、均一な発芽を得た。2週間後、96形式プラグトレイの植物を、より天然の秋作条件に移した。
【0248】
6週間後、2004年10月20日および21日に、選択した植物を、慣用的なフィールド試行配置で、土壌に、VH114に植え替えた。温度測定は、林冠高度(大気)および10 cmの土壌深度(土壌)で行った。
【0249】

【表1】

【0250】
春化前
【表2】

【0251】
春化
【表3】

【0252】
順化
非特定温度順化
【0253】
春化後
【表4】

【0254】
温室VH113 2004年9月-2005年5月
実験04-754および755
種子を、追加の光および熱を有する温室で発芽させ、均一発芽を得た(VH114実験に関して同じバッチ)。2週間後、96形式プラグトレイの植物を、より天然の秋作条件に移した。
【0255】
6週間後、準フィールド試行実験からの植物の残りを、6℃で18週間、人工的に春化処理した。18℃の工程での人工順化後、植物を再び鉢に植え、追加のおよび天然の光ならびに熱を有する温室に移した。気温の測定は、人工気候室および温室のデーブルの上50 cmで行った。
【0256】

【表5】

【0257】
春化前
【表6】

【0258】
春化
【表7】

【0259】
順化
【表8】

【0260】
春化後
【表9】

【0261】
人工気候室KK11(2004年11月-2005年6月)
実験04-766および767
種子を、追加の光および熱を有する温室で発芽させ、均一な発芽を得た。3週間後、96形式プラグトレイ中の植物を、6℃で16週間、人工的に春化処理した。18℃の工程での人工順化後、植物を再び鉢に植え、人工春化後条件を有し、400 ppmでの大気CO2レベルに近い人工気候室に移した。スペースの欠如のために、植物を、12 cm(0.7リットル)の鉢に植えた(VH113実験においてよりも小さい)。気温測定は、テーブルの上130 cmおよび人工気候室の林冠高度で行った。
【0262】

【表10】

【0263】
春化前
【表11】

【0264】
春化
【表12】

【0265】
順化
【表13】

【0266】
春化後
【表14】

【0267】
実施例7: AGL20(pHiNK382)およびFLC(pHiNK260)イベントの抽薹習性
FLC遺伝子を過剰発現する155個のpHiNK260イベントのうち、34個が、一年生または越年生背景のどちらかで、抽薹の遅延を示し; 内在性AGL20遺伝子を抑制する148個のpHiNK382イベントのうち、22個が、典型的な春化処理後、抽薹の遅延を示した。最も強いイベントの種子を固定させ、13個のpHiNK260および21個のpHiNK382イベントの子孫集団を、T0世代のために取得した結果を確認するために、再び、抽薹耐性を試験した。4つの最良のpHiNK260およびpHiNK382イベントの結果を、各々、図5および6に示し、さまざまな世代および表現型実験で取得した結果を要約した。
【0268】
トランスジェニック植物の平均抽薹日を、NTコントロール植物の平均抽薹日と比較した。抽薹の遅延を、これらの2つの平均間の差異として計算した(図5)。例えば、実験T3-2 04-755では、イベント260#1の24個のNT植物が、平均して、21日後に抽薹を開始した。12個のトランスジーン260#1植物は、平均して、61日後に抽薹を開始した。この実験におけるこのイベントのための抽薹の遅延は、したがって、61 − 21 = 40日であった。さらに、Duncan分類を、NTおよびトランスジーン抽薹時間の相違が重要であるか否かを試験するために行い、それを、図5および6の最後の列で示す。
【0269】
植物が、実験の最後に、なお抽薹を開始していないとき、結果をNB(非抽薹)として記録した。ある場合には、いくつかの植物は、実験の間、抽薹を開始したが、他のものはしなかった。例えば、実験T3-1 04-755では、イベント260#1の19 NT植物が、平均して20日後に、抽薹を開始した。17個のうち16個のトランスジーン260#1植物が、平均して61日後に、抽薹を開始した。しかしながら、1個のトランスジーン植物は、抽薹を開始しなかった。このイベントの結果は、したがって、17個の植物として記録した; 61 & 1xNB。この実験におけるこのイベントのための抽薹の遅延は、したがって、61 − 20 = 41日 & 1xNBであった。
【0270】
当然のことながら、異なるバイオチャンバーおよび温室で異なる条件下でイベントを試験するとき、異なる結果が得られた。このために、トランスジェニック植物の抽薹データを、常に、NTコントロール植物の抽薹データと比較した。
【0271】
人工気候室KK11は、最少の抽薹誘導であった。NT植物の抽薹の追加の遅延が、また、観察された。200 μmol/m2の低光量が、おそらく、この人工気候室での素早い抽薹誘導のための限界要因である。にもかかわらず、KK11で試験した4個中3個のpHiNK382イベントで、抽薹がかなり遅延した(図6)。
【0272】
温室VH113で行われた実験は、特に、pHiNK260イベント#1、#2および#3に関して、最も頻繁に、非抽薹植物を示した(図5)。例えば、イベントpHiNK260 #1のT2世代のために解析した54個の植物のうち、すべての植物が、抽薹を示さなかった(図5、実験T2-1 02-741およびT2-2 02-735)。また、pHiNK382イベント#1Bは、T1世代で、非抽薹植物を示した(図6、実験T1-2 04-755、21個中3個)。
【0273】
VH114における準フィールド試行の条件は、最大の抽薹誘導であった。土壌は、温室のテーブル上の鉢で、その後のコールドルームでの人工的春化条件と比較して、ずっと長い低温であった。特に、2004-2005年の冬期にわたる準フィールド試行は、かなり抽薹を誘導した。この準フィールド試行の植物は、多くの蓄積した低温(平均5.2℃)での春化温度を、22週間(5ヶ月)受けた。かなりの長期春化期間にもかかわらず、FLCまたはAGL20イベントを含む植物は、かなりの抽薹遅延を示した。
【0274】
実施例8: 高抽薹誘導条件下での抽薹制御
記載する下記の実験は、推定される2005-2006年の冬ビート成長シーズンの間に行われた。抽薹制御はさらに、高い抽薹誘導条件下で、pHiNK260およびpHiNK382イベントでモニターされた。
【0275】
8.1 親材料
導入は、T2からT4世代からなり、それは、非トランスジェニック植物を有する選択したイベントの個々の半接合体トランスジェニック植物を交雑することにより作製した。したがって、各世代を、トランスジェニックおよび非トランスジーン(NT)植物に分離した。表現型スクリーニングは、常に、同様に扱われ、育てられた、両クラスの植物からなる。そのようにして、トランスジェニック植物の抽薹習性を調べ、同じ遺伝学的背景のNT植物と比較し得る。分離子孫のトランスジェニックおよびNT植物の同定は、上記したとおり、PCR解析を用いて行った。研究目的のために使用する送粉者に加えて、最高の2個のAtFLCイベント#1および#2Bをまた、潜在的な市販の送粉者を用いて交雑した。
【0276】
8.2 成長条件
地理情報システム(GIS)温度曲線は、以前の準フィールド試行よりもフィールド条件により近づくように使用した。過去12年(1994 − 2005)にわたって取得した平均週最大、最少および平均温度を考慮した。
【0277】
サトウダイコンの春化は、3から12℃の間で生じ、フランス北部/中部で選択したGISデータは、ヨーロッパでの平均した春化温度で、最も長い期間を有するものである。そのようにして、抽薹実験を、極端なストリンジェント抽薹条件下で行った。
【0278】
8.3 成長条件の要約
種子は、バイオチャンバーKK14で、96形式プラグポットトレイのトレイで、畝立てし、発芽させた。均一発芽および根形成を確立するために、トレイを18時間の光および18-21℃の温度で育てた。2週間後、植物を、PCRにより、トランスジェニックおよびNT植物の同定のためにサンプリングした。段階的に、バイオチャンバーの温度を、4週齢の植物が春化期間に入る前に下げた。植物を、温室VH114の土壌に、直接移植した。この準フィールド試行の温度設定は、フランス北部/中部の平均冬季気候を模倣した: 0 - 3℃の平均週温度で4週間および3 - 12℃で25週間。試行は、凍結なしで維持した。全体で、植物は、かなり抽薹が誘導されると考えられる12℃以下の週温度を29週経験した。春の期間、温度はゆっくりと上昇するので、特別な順化期間は、導入しなかった。
【0279】
8.3.1 詳細な成長条件

【表15】

【0280】
春化前
【表16】

【0281】
春化
【表17】

【0282】
春化後
【表18】

【0283】
8.4 結果および考察
表1: 準フィールド試行2005-2006における選択したpHiNK260(FLC)およびpHiNK382(AGL20)イベントの表現型結果
抽薹を、頂端分裂組織の最初の可視可能伸長として、記録および定義した。1日目は、2006年3月30日であり、NTコントロールでの抽薹が検出された最初の日であった。抽薹の記録は、12週後の84日で停止した。遺伝子効果の有意性は、統計のDuncan's Multiple Range Testを適用することにより評価した。
【0284】
【表19】

*) 同じ遺伝学的背景を有する他の項目の参照NT植物からのデータ
NT 非トランスジェニックコントロール植物
GM FLCプラスミドpHiNK260またはAGL20プラスミドpHiNK382で形質転換した、トランスジェニック植物
【0285】
すべての植物は、準フィールド試行の冬季条件に生き残り、3月に非常に元気であった。3月の好天により、抽薹のための条件が有利になり、最初の抽薹非トランスジーン(NT)植物は、3月30日に発見された。この日は、継続する抽薹時間の最初の日であった。準フィールド試行の条件が高い抽薹誘導性を有するという事実は、1個の単一植物のみが実験をとおして非抽薹であった観察により証明される(84日間の計測)。以前の実験で非抽薹であった最大のpHiNK26イベントの植物でさえ、結局は、抽薹した。
【0286】
すべてのFLC導入は、内部NTコントロールと比較してかなり遅延した。最少の遅延イベントは、FLC 260 #5であり、9日の遅延を示した;最大の遅延は、FLC 260 #1および#2Bであり、各々、31日と22日の遅延を示した。これらの2つのFLCイベントを、また、雑種背景における抽薹習性を研究するために、市販の送粉者を用いて交雑した。雑種は、研究遺伝子型よりも元気であり、抽薹は、NT雑種コントロールでより早く誘導された。にもかかわらず、トランスジェニック雑種は、なお、各々、28日および26日の抽薹における同様の遅延を示した。
【0287】
また、4個中3個のAGL20イベント(pHiNK382)が、これらの極端なストリンジェント抽薹条件下で、かなり抽薹を遅延させたが、FLCイベントと同じ程度ほどは遅延させなかった(最大6日)。
【0288】
実施例9: RNAi雑種構想
9.1 植物材料
ベクターpHiNK440および441は、実施例3に記載したとおり、BvAGL20 dsRNA断片の一本鎖のみを、各々、センスおよびアンチセンス方向に発現させる。BvAGL20のためのdsRNAは、したがって、互いにどちらかのベクターのための交雑イベント後、雑種においてのみ取得される。
【0289】
このRNAi雑種概念を試験するために、pHiNK440を雌性(雄性不稔)サトウダイコン株に形質転換し、一方で、pHiNK441をサトウダイコン送粉者株に形質転換した。得たT0イベントを、RT-PCRにより、トランスジーンの発現のために試験し、交雑により、pHiNK440 x pHiNK441を合わせた。T1集団を、4クラスに分類した: 1) NT、2) pHiNK440のみ、3) pHiNK441のみ、および4) 雑種pHiNK440 x 441。4クラスすべてをPCRにより同定し、トランスジーンの発現を、RT-PCRにより調べた。
【0290】
9.2 材料および方法
DNAを、SigmaからのGenElute Plant Genomic DNA Miniprepキットを用いて単離した。RNAを、AmbionからのRNAqueous-4PCRキットを用いて単離した。RNAを、Dnase Iで処理し、次いで、Dnaseを、cDNA産生前に除去した。RNA濃度を、分光光度計を用いて測定した。
【0291】
cDNAは、QiagenからのOmniscript Reverse TranscriptaseキットおよびHotStart Taq-polymeraseを用いて産生した。1 μgの全RNAを各反応のために使用し、オリゴ-dTプライマーを全容量20 μlで使用した。逆転写後、cDNAサンプルを40 μlまで希釈し、3つの異なる濃度(0.5、1.0および2.0 μl)でのRT-PCR反応のために使用した。
【0292】
(RT-)PCR設定は、すべての植物のDNAまたはcDNAアリコートが各PCR反応に関して同一であるような方法で行った。PCR反応バルクを作製し、その結果、すべての植物が、同一のPCR混合物で試験されるであろう。
【0293】
プラスミドpHiNK 440を、プライマー対AGL20 A(5'GTC TCG AAC TTT CTA AAC GGA)およびnosターミネータープライマーHiNK023(5'CGC AAG ACC GGC AAC AGG ATT C)を用いて同定した。プラスミドpHiNK 441を、プライマー対AGL20 B(5' GAT CAT CTG CTC GTT GTT GG)およびプライマーHiNK023を用いて同定した。
【0294】
RNAハウスホールドおよび内部ポジティブコントロール遺伝子として、遺伝子GAPC、細胞質グリセルアルデヒド-3-ホスファターゼデヒドロゲナーゼを、プライマー対gapCex5/6F(5'GCTGCTGCTCACTTGAAGGGTGG)およびgapCex8R(5'CTTCCACCTCTCCAGTCCTT)と共に用いた(Reeves et al, 2006)。
【0295】
上の3つのPCRによる反応は、95℃で15分のホットスタート、その後、35サイクルの94℃で30秒の変性; 55℃で30秒のアニーリングおよび72℃で30秒(+2秒/サイクル)の伸長工程でのPCRプログラムを用いて行った。PCRは、72℃の5分工程で終了した。
【0296】
内在性BvAGL20遺伝子は、推定されるエクソン3から8の遺伝子を覆うBvAGL20特異的プライマーHiNK 729(5' AAG GTA GCA GAT CTG GTG AAG AAT TGA G)およびHiNK 819 (5' TCT GCG TGG AGT GAA AAG TAA AGT G)を用いて増幅した。BvAGL20のためのPCRプログラムは、95℃で15分のホットスタート、その後、30サイクルの92℃で30秒の変性; 57℃で30秒のアニーリングおよび72℃で2分間の伸長工程からなった。PCRは、72℃の5分工程で終了した。
【0297】
PCR断片を、レーンにつき1個の植物の異なるサンプルの組成で、電気泳動ゲルに流した: 1) 水: PCR混合物が汚染されているか否かを試験するための、ネガティブ、非増幅コントロール、2) DNA (50 ng / 反応): 植物がトランスジーンであることを確認するための、植物DNAのポジティブコントロール、3) RNA (200 ng / 反応): DNAが完全に除去されているか否かを調べるためのネガティブ、非RT-PCRコントロール、および4) cDNA (0.5、1.0および2.0 μl): RNAを表し、発現レベルを与える試験サンプル。
【0298】
9.3 結果
この例は、トランスジーンの高発現を有する親pHiNK440株およびpHiNK441株間の交雑の雑種を示す。各クラスの1つ、子孫の4個の植物のRT-PCR結果を、図11に示す。結果は、内在性BvAGL20遺伝子が、NTまたは単一dsRNA構成要素を有する植物においてではなく、雑種においてのみダウンレギュレートされたことを示す。
【0299】
実施例10: FLC(pHiNK260)およびAGL20(pHiNK382)イベントの積層雑種
10.1 植物材料
FLCおよびAGL20イベントの抽薹習性を個々にモニタリングすることに加えて、限られた数の両イベントの型間の積層雑種を作製した。FLCおよびAGL20イベントの個々の植物間の交雑は、下記の異なる4つのクラスに分類される分離集団を生じた: 1) FLCのみ、2) AGL20のみ、3) 積層雑種FLC & AGL20または4) NT。すべての若い植物を、それらの同一性に関してPCRによりスクリーニングし、4つすべてのクラスは、表現型スクリーニングに入った。
【0300】
10.2 成長条件
これらの分離した積層雑種集団の植物を、16週間、バイオチャンバーで、人工的に春化した。4月の中旬に、植物は、実施例8に記載した準フィールド試行実験に入った。4つのクラスすべての植物を、温室VH114の土壌に、直接移植した。
【0301】
10.3 積層ハイブリッドの詳細な成長条件

【表20】

【0302】
春化前
【表21】

【0303】
春化
【表22】

【0304】
春化後
温室 VH114; 16 - 24週(2006年4月-6月中旬)
植物は、実施例8に記載した実験に入った。抽薹時間を数える最初の日は、植物が春化バイオチャンバーを出た日であった。
【0305】
10.4 結果および考察
表2: 人工的春化後の積層ハイブリッドの表現型結果。抽薹を、頂端分裂組織の最初の可視的な伸長として記録し示した。1日目は、植物が人工春化を終え、実施例8の準フィールド試行に入った日であった。抽薹の記録は、98日後、停止した。遺伝子効果の有意性は、統計のDuncan's Multiple Range Testにより評価した。
【0306】
【表23】

*) 同じ実験において、同じ遺伝学的背景を有する他の存在の参照NT植物からのデータ
NT 非トランスジーン植物
NB 非抽薹植物: 98日間の実験をとおして、どの抽薹シグナルも示さなかった植物
【0307】
AGL20イベントpHiNK382#1および4個の異なるFLCイベントの積層ハイブリッドは、抽薹制御に関するFLCおよびAGL20効果の相乗的相互作用を示した(表2)。例えば、第1組合せのための個々のイベントの効果は、AGL20イベント382#1に関して7日間およびFLCイベント260#1に関して10日間遅延し、それは、理論的には、雑種に関して17日間の遅延となる。しかしながら、積層ハイブリッドは、抽薹におけるさらなる遅延を示した:17日ではなく24日。さらに、6個の雑種植物が、98日間の実験をとおして非抽薹(NB)のままであったが、非抽薹植物は、個々のイベントのどれにおいても観察されなかった。同様の相乗効果が、また、他の3個の雑種組合せに関して得られた。とりわけ、解析したすべてのFLCイベントの1個の単一植物のみが非抽薹のままであったが、積層ハイブリッドの大多数は、3ヶ月後に抽薹を開始せず、したがって、2個の抽薹コントロール遺伝子に関する組合せイベントは、抽薹における非常に重要で相乗的な遅延を引き起こしたことを証明する。
【0308】
実施例11: 産業適用
本発明はさらに、本発明のサトウダイコンからエタノールおよび/または糖を誘導する方法を含み、ここで、サトウダイコン植物の根は、エタノールおよび/または糖の主な起源である。本発明のサトウダイコン植物およびサトウダイコン植物の根から誘導可能な糖およびエタノールは、また、本発明の範囲内にある。サトウダイコンのような起源からの糖およびエタノールの抽出法は、当業者に既知である。
【0309】
要約すると、エタノール製造は、第1の洗浄および次のサトウダイコンスライス、その後の抽出工程を含む。抽出工程は、2つの生成物を産生する:抽出した糖ジュースおよびビートスライス。ビートパルプを、典型的には、試験し、ペレット化し、動物飼料として販売する。したがって、ビートパルプおよびサトウダイコン植物に由来する動物飼料および本発明の根は、本発明の範囲内にある。スクロース画分を、典型的には、洗浄し、滅菌し、またはあるいは、微生物混入を予防するために処理する。スクロース画分を、次いで、発酵させる。当業者に既知の多くの発酵方法が存在する。例示としての1つの態様では、Saccharomyces cerevisiaeが、発酵工程で使用される生物である。発酵の間、大量のCO2が発生する。CO2は、飲料、消化器、食品加工での製造のために使用される。容量が8-15%のアルコール量での発酵産物は、蒸留装置を通過し、そこで、それは、95%まで濃縮される。最終の脱水工程は、エタノールから、残りの水を除去するために必要とされる。エタノール製造は、当業者に既知であり、さまざまな異なる方法論を、最終エタノール燃料を製造するために使用し得る。エタノールはまた、サトウダイコン糖液、糖ジュース、乾燥サトウダイコン粉末および糖の発酵により製造し得る。
【0310】
バイオガスはまた、当業者に既知の方法を用いて、サトウダイコンから製造し得る。バイオガスは、メタン、二酸化炭素ならびに少量のH2Sおよびアンモニアからなり、有機物質の嫌気的発酵の間に産生される。発酵工程は、約1ヶ月間起こる。たいていの場合には、バイオガスは、複合熱および発電のために使用される。ガスを直接燃やし、家庭暖房または発電のために使用し得る熱を産生する。それはまた、乗り物のための燃料として使用し得る。
【0311】
バイオディーゼルはまた、サトウダイコンから製造し得る。フィッシャー・トロプシュ合成を用いて、バイオガスは、液体燃料、すなわちFTディーゼルに変換し得る。現状では、バイオマスからの製造は、試験的段階においてのみ行われており、大規模フィッシャー・トロプシュ変換導入は、もっぱら、化石燃料、たいていは、天然ガスを用いる。FTディーゼルの利点は、その組成を、モーターの燃焼作用のために最適化し得ることである。燃料は、硫黄および芳香族化合物フリーであり、通常のディーゼルと比べて、排気は、8%以下の窒素酸化物、30%以下の粒子状物質、30%以下の炭化水素(HC)、75%以下の一酸化炭素および90%以下の汚染物質を含む。
【0312】
参照
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【図面の簡単な説明】
【0315】
【図1】図1は、バイナリーベクターpHiNK260のプラスミドマップである。
【図2】図2は、Arabidopsis thaliana (AtAGL20)、Nicotiana tabacum (NtAGL20)およびSinapsis alba (SaAGL20)に由来するAGL20ホモログのcDNA配列のアライメントである。縮重プライマーHiNK624およびHiNK619を保存された領域に対して設計し、下線で示す。
【図3】図3は、Arabidopsis thaliana、Pinus taeda、Pisum sativum、Sinapsis albaおよびNicotiana tabacum由来のAGL20ホモログに対するサトウダイコン由来のAGL20ホモログのコード領域のアライメントから推論される系統樹である。
【図4】図4は、バイナリーベクターpHiNK382のプラスミドマップである。
【図5】図5は、FLCイベントの表現型結果を含む表である。
【図6】図6は、AGL20イベントの表現型結果を含む表である。
【図7】図7は、バイナリーベクターpHiNK440のプラスミドマップである。
【図8】図8は、バイナリーベクターpHiNK441のプラスミドマップである。
【図9】図9は、3個の異なるスプライシングバリエント間を区別するINDELを示す、Beta vulgaris FLC 遺伝子(BvFLC)のための3個のタンパク質配列のアライメントを示す。
【図10】図10は、2個のインフレームINDELを示すサトウダイコンからの推定されるFLCホモログの3個のスプライシングバリアントのアライメントを示す。これら3個のcDNA断片を増幅するために使用した縮重プライマーHiNK5279の配列を囲っている。
【図11】図11は、pHiNK 440および441のRNAi構成要素、コントロール遺伝子GAPCならびに内在性サトウダイコン遺伝子BvAGL20の発現結果を、RT-PCRにより示す。内在性BvAGL20遺伝子は、雑種(A)ではダウンレギュレートしたが、一方のdsRNA構成要素のみを導入した植物(BおよびC)、またはNT(D)ではダウンレギュレートしなかった。W = 水; D = DNA; R = RNA; 0.5、1および2 = RT-PCR反応あたり1μlでのcDNAの量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サトウダイコン植物細胞に第1RNA鎖および第2RNA鎖を導入することを含む、該植物細胞の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法であって、該第1RNA鎖が該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に一定の相補性を有し、それにより、該第1RNA鎖が該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖にハイブリダイズするか、またはアニールすることを可能にし、ここで、該第1RNA鎖および該第2RNA鎖は二本鎖RNAを形成し、その結果、植物での発現に関して、内在性AGL20遺伝子の抑制が生じる、方法。
【請求項2】
二本鎖RNAが内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する、請求項1に記載のサトウダイコン植物細胞の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のサトウダイコン植物細胞の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法であって、該植物細胞に第1RNA鎖および第2RNA鎖を導入することが、該細胞を異種DNAで形質転換することを含み、植物細胞で転写されると、該第1RNA鎖に相当するヌクレオチド配列および該第2RNA鎖に相当するヌクレオチド配列を産生する方法。
【請求項4】
請求項3に記載のサトウダイコン植物細胞の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法であって、該異種DNAが植物細胞で転写されると、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2RNAヌクレオチド配列を産生する逆位反復を含む方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法であって、該第1RNA鎖が、5'-CCRATGAACARTTSNGTCTCNACWTC-3'(配列番号14)を用いた逆転写反応で、サトウダイコンの葉から抽出した全RNAから得たサトウダイコンcDNAから取得可能であるサイズがおよそ0.6 KbのサトウダイコンAGL20遺伝子断片のRNA部分と一定の相補性を有し、ここで、cDNAは、ATGコドンで始まり、コドン1から9にわたる極端なNH2末端と配列相同性を共有するヌクレオチド配列5'-ATGGTKMGRGGNAARACNCAGATGA-3'(配列番号13)を有する縮重フォワードプライマー;および、COOH末端に相補的であり、エクソン8のストップコドンのちょうど上流にハイブリダイズするヌクレオチド配列5'-CCRATGAACARTTSNGTCTCNACWTC-3'(配列番号14)を有する縮重リバースプライマーを使用するPCR反応での鋳型として使用され、例えば、該第1RNA鎖が、該AGL20遺伝子断片のRNA鎖にハイブリダイズするか、またはアニールすることを可能にし、その結果、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じる、方法。
【請求項6】
該第1RNA鎖が、配列番号6に示したサトウダイコンAGL20遺伝子断片のRNA部分と一定の相補性、例えば、該第1RNA鎖が、該AGL20遺伝子断片のRNA鎖にハイブリダイズするか、またはアニールすることを可能にする相補性を有し、その結果、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じる、請求項5に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項7】
該第1RNA鎖が、該第1RNA鎖が、該AGL20遺伝子断片のRNA鎖にハイブリダイズするか、またはアニールすることを可能にする、該サトウダイコンAGL20遺伝子のRNA部分と一定の相補性を有する約18から30ヌクレオチド長の配列断片を含み、その結果、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じる、請求項1から6のいずれか1項に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項8】
該第1RNA鎖が、該サトウダイコンAGL20遺伝子のRNA部分に十分に相補的である約21から23ヌクレオチド長の配列断片を含み、その結果、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じる、請求項7に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項9】
異種DNAが、ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC-3'を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'-GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'を有するリバースプライマーを用いたPCR反応で、請求項5に記載のAGL20遺伝子断片のエクソン3から7よりなる0.28 Kb cDNA断片から取得可能である、請求項1から8のいずれか1項に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項10】
異種DNAが配列番号5で示される、請求項9に記載のAGL20遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項11】
第1RNA鎖が、内在性AGL20遺伝子のRNA鎖にハイブリダイズするか、またはアニールすることを可能にする、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部と一定の相補性を有し、該第1RNA鎖および該第2RNA鎖が二本鎖RNAを形成し、その結果、植物における発現で、内在性AGL20遺伝子の抑制が生じる、該第1RNA鎖および該第2RNA鎖を含んだ異種DNAを含む発現カセット。
【請求項12】
転写されると、該植物細胞で、該第1および第2RNA鎖を含む二本鎖RNA分子を形成する逆位反復を含む、請求項11に記載の発現カセット。
【請求項13】
該逆位反復が構成的プロモーターに操作可能に結合する、請求項12に記載の発現カセット。
【請求項14】
ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC-3'を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'-GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'を有するリバースプライマーを用いたPCR反応で、請求項5に記載のAGL20遺伝子断片のエクソン3から7よりなる0.28 Kb cDNA断片から取得し得る異種DNAを含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項15】
配列番号5で示した異種DNAを含む、請求項14に記載の発現カセット。
【請求項16】
転写されると、該植物細胞で、該第1および第2RNA鎖を含む二本鎖RNA分子を形成する逆位反復を含む、請求項11から15のいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項17】
該逆位反復が構成的プロモーターに操作可能に結合する、請求項11から16のいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項18】
異種DNAがプロモーターとターミネーター間に挿入される請求項11から17のいずれか1項に記載の発現カセットであって、該異種DNAが、
a. ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC -3'(配列番号8)を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'- GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC -3'(配列番号9)を有するリバースプライマーを用いた組換えPCR反応で、本発明に記載のおよび本明細書に記載した0.6 Kb AGL20遺伝子断片のエクソン3から7よりなる0.28 Kb cDNAを増幅させ;
b. フォワードプライマー 5'- ATCCAACCGCGGACCTGCACATCAACAA -3'(配列番号7)およびリバースプライマー5'- GTTCGAGACTTTTTAACTTCTTAGGTAAGTTTCTGCTTCTAC -3'(配列番号12)を用いて、ST-LS1イントロンおよび隣接スプライシングサイトを含む0.19 Kb断片を増幅させ;
c. 配列番号8および配列番号7のプライマーならびに鋳型として両増幅産物の混同物を使用する2回のPCRにより、互いに工程a)およびb)で取得した増幅産物を融合させ、0.47 Kb長の融合産物を産生し;
d. それらのリンカーに関して工程a)で使用したプライマーとは異なるフォワードプライマー5'-TAAATCCGCGGAAGAAGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'(配列番号10)およびリバースプライマー5'-CTATTTGTCGACGCATGCTGATCTCCTGATC-3'(配列番号11)を用いて、2回目、0.28 Kb BvAGL20断片を増幅させ;
e. Sac II制限サイトで両断片を融合させ、ジャガイモST-LS1遺伝子由来のイントロンにより分離されるBvAGL20配列のための逆位反復を作製すること
により取得可能な、発現カセット。
【請求項19】
配列番号2のヌクレオチド配列233-2657で示した、請求項18に記載の発現カセット。
【請求項20】
該第1および第2RNA鎖を導入することが、請求項11から19のいずれか1項に記載の発現カセットの挿入による、請求項1に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項21】
サトウダイコン植物での内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法であって、
a. 第1サトウダイコン植物細胞に第1RNA鎖を導入し;
b. 該植物細胞を第1植物に成長させ;
c. 第2サトウダイコン植物細胞に第2RNA鎖を導入し(ここで、該第1RNA鎖は、AGL20遺伝子により産生されるRNAにハイブリダイズするか、またはアニールするために、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を生じるために、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、該第1RNA鎖および該第2RNA鎖は、二本鎖RNAを形成することが可能である);
d. 該第2サトウダイコン植物細胞を第2植物に成長させ;
e. 該第1植物を該第2植物と交雑して種子を産生し;そして
f. 該種子から植物を成長させること(ここで、該第1および第2RNA鎖は、内在性AGL20遺伝子発現のRNA干渉に参加する二本鎖RNAを形成する)
を含む、方法。
【請求項22】
該第1および第2RNA鎖を導入することが、インジェクションによる該鎖の植物細胞への挿入による、請求項1から21のいずれか1項に記載の内在性AGL20遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項23】
RNA組成物をコードすることができる異種遺伝子構築体を含む、トランスジェニックサトウダイコン細胞または植物であって、該構築体が、転写されると、第1RNAヌクレオチド配列および第2RNAヌクレオチド配列を産生し、ここで、該第1RNAヌクレオチド配列が、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2ヌクレオチド配列が二本鎖RNAを形成し、ここで、二本鎖RNAが該内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する異種DNAを含む、トランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項24】
異種DNAが、ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC-3'を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'-GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'を有するリバースプライマーを用いたPCR反応で、請求項5に記載のAGL20遺伝子断片のエクソン3から7よりなる0.28 Kb cDNA断片から取得し得る、請求項23に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項25】
該第1RNA鎖を転写する異種DNAが配列番号5で示される、請求項2に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項26】
該遺伝子構築体が、転写されると、該第1および第2RNA鎖を含む該植物細胞で二本鎖RNA分子を形成する逆位反復を含み、ここで、該二本鎖RNA分子は、AGL20遺伝子抑制を誘導する、請求項23から25のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項27】
プロモーターとターミネーターの間に挿入された異種DNAを含む請求項23に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物であって、異種DNAが、
a. ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC -3'(配列番号8)を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'- GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC -3'(配列番号9)を有するリバースプライマーを用いた組換えPCR反応で、本発明に記載のおよび本明細書に記載した0.6 Kb AGL20遺伝子断片のエクソン3から7よりなる0.28 Kb cDNAを増幅させ;
b. フォワードプライマー 5'- ATCCAACCGCGGACCTGCACATCAACAA -3'(配列番号7)およびリバースプライマー5'- GTTCGAGACTTTTTAACTTCTTAGGTAAGTTTCTGCTTCTAC -3'(配列番号12)を用いて、ST-LS1イントロンおよび隣接スプライシングサイトを含む0.19 Kb断片を増幅させ;
c. 配列番号8および配列番号7のプライマーならびに鋳型として両増幅産物の混同物を使用する2回のPCRにより、互いに工程a)およびb)で取得した増幅産物を融合させ、0.47 Kb長の融合産物を産生し;
d. それらのリンカーに関して工程a)で使用したプライマーとは異なるフォワードプライマー5'-TAAATCCGCGGAAGAAGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'(配列番号10)およびリバースプライマー5'-CTATTTGTCGACGCATGCTGATCTCCTGATC-3'(配列番号11)を用いて、2回目、0.28 Kb BvAGL20断片を増幅させ;
e. Sac II制限サイトで両断片を融合させ、ジャガイモST-LS1遺伝子由来のイントロンにより分離されるBvAGL20配列のための逆位反復を作製すること
により取得可能な、トランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項28】
配列番号2のヌクレオチド配列233-2657で示した異種DNAを含む、請求項2に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項29】
請求項11から19のいずれか1項に記載の発現カセットを含む、トランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項30】
請求項1から29のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物の根。
【請求項31】
請求項1から30のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物の子孫植物。
【請求項32】
請求項23から29のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法であって、
a. 請求項11から19のいずれか1項に記載の発現カセットでサトウダイコン細胞を形質転換し;
b. 異種DNAを含むサトウダイコン細胞を同定し、
c. 工程b)で同定した該植物細胞からトランスジェニック植物を再生させ、
d. 春化応答の遅延または春化応答の完全な抑制を示し、その結果、非抽薹(NB)表現型を生じるサトウダイコン植物を同定し、
e. 所望により、工程a)で導入した植物細胞ゲノム中の異種DNAの存在を確認すること
を含む、方法。
【請求項33】
該FLC遺伝子の発現がFLC遺伝子産物の過剰発現を引き起こし、それにより、該サトウダイコン植物の春化応答を抑制する、ゲノム中に異種FLC遺伝子のコード領域を含むトランスジェニックサトウダイコン植物。
【請求項34】
該異種FLC遺伝子が受託番号AF537203のFLC cDNAからなるFLCコード領域を含む、請求項33に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物。
【請求項35】
該FLC遺伝子が配列番号3で示される、請求項34に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物。
【請求項36】
配列番号21、23および25で示した内在性FLC遺伝子またはそのコード部分を含む、請求項33に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物。
【請求項37】
該異種FLC遺伝子が、受託番号AF537203のFLC cDNAのヌクレオチド配列と少なくとも93%から99%の配列同一性を有するFLCコード領域を含む、請求項33に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物。
【請求項38】
該異種FLC遺伝子が、配列番号3で示したヌクレオチド配列と少なくとも93%から99%の配列同一性を有する、請求項33に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物。
【請求項39】
該異種FLC遺伝子が、配列番号21、23および25で示したヌクレオチド配列またはそのコード部分と少なくとも93%から99%の配列同一性を有する、請求項33に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物。
【請求項40】
該異種FLC遺伝子が、構成的プロモーター、とりわけ、構成的CaMV 35Sプロモーター、およびターミネーター、とりわけ、Agrobacterium tumefaciens由来のマンノピンシンターゼ(mas)ターミネーターの制御下で発現カセットに組み込まれた、請求項33から39のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物。
【請求項41】
該異種または内在性FLC遺伝子が、配列番号1のヌクレオチド配列786-2817で示した発現カセットに組み込まれた、請求項33から40のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物。
【請求項42】
請求項33から39のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法であって、
a. 操作可能に制御配列に結合した異種もしくは内在性FLC遺伝子を含む発現カセットでサトウダイコン細胞を形質転換し;
b. トランスジーンを有するサトウダイコン植物細胞を同定し;そして
c. 上記工程b)で同定した該植物細胞からトランスジェニック植物を再生させること
を含む、方法。
【請求項43】
該FLC遺伝子が配列番号3で示される、請求項42に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法。
【請求項44】
該FLC遺伝子が、配列番号3で示したヌクレオチド配列と少なくとも93%から98%の配列同一性を有する、請求項42に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法。
【請求項45】
該FLC遺伝子が配列番号21、23および25で示される、請求項42に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法。
【請求項46】
該FLC遺伝子が、配列番号21、23および25で示したヌクレオチド配列またはそのコード部分と少なくとも93%から98%の配列同一性を有する、請求項42に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法。
【請求項47】
該トランスジーンが、配列番号1のヌクレオチド配列786-2817で示した発現カセットに組み込まれる、請求項42に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法。
【請求項48】
該発現カセット中の該トランスジーンが、構成的プロモーターに操作可能に結合する、請求項47に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法。
【請求項49】
該発現カセット中の該トランスジーンが、CaMV35Sプロモーターに操作可能に結合する、請求項48に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法。
【請求項50】
トランスジェニックサトウダイコン細胞または植物のゲノム中に、
i. 異種FLC遺伝子のコード領域を含む第1異種遺伝子構築体、および
ii.転写されると第1RNAヌクレオチド配列および第2RNAヌクレオチド配列を産生し、ここで、該第1RNAヌクレオチド配列は、該内在性AGL20遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部に十分に相補的であり、AGL20遺伝子により産生されたRNAとハイブリダイズするか、またはアニールし、例えば、内在性AGL20遺伝子の発現の抑制を引き起こし、該第1RNAヌクレオチド配列および該第2ヌクレオチド配列が二本鎖RNAを形成し、ここで、二本鎖RNAが該内在性AGL20遺伝子の発現のRNA干渉に参加する異種DNAを含む、RNA組成物をコード可能な第2異種遺伝子構築体
を含む、トランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項51】
該第1異種遺伝子構築体が、FLC cDNA(受託番号AF537203)からなるFLCコード領域を含む、請求項50に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項52】
配列番号21、23および25で示した内在性FLC遺伝子またはそのコード部分を含む、請求項50に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項53】
該内在性FLC遺伝子が、配列番号21、23および25で示したヌクレオチド配列またはそのコード部分と少なくとも93%から99%の配列同一性を有する、請求項50に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項54】
該FLC遺伝子が配列番号3で示される、請求項51に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項55】
該FLC遺伝子が、FLC cDNA(受託番号AF537203)のヌクレオチド配列と少なくとも93%から99%の配列同一性を有するFLCコード領域を含む、請求項50に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項56】
該FLC遺伝子が、配列番号3で示したヌクレオチド配列と少なくとも93%から99%の配列同一性を有するFLCコード領域を含む、請求項50に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項57】
第2遺伝子構築体に含まれる該異種DNAが、ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC-3'を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'-GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'を有するリバースプライマーを用いたPCR反応で、請求項5に記載のAGL20遺伝子断片のエクソン3から7よりなる0.28 Kb cDNA断片から取得し得る、請求項50に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項58】
該第1RNA鎖を転写する異種DNAが配列番号5で示される、請求項57に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項59】
第2遺伝子構築体に含まれる該異種DNAが、転写されると、該第1および第2RNA鎖を含む該植物細胞で二本鎖RNA分子を形成する逆位反復を含み、ここで、該二本鎖RNA分子は、AGL20遺伝子抑制を誘導する、請求項50から58のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項60】
第2遺伝子構築体にプロモーターとターミネーターの間に挿入された異種DNAを含む請求項59に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物であって、異種DNAが、
a. ヌクレオチド配列5'-CTATGGATCCGCATGCTG ATCTCCTGATC -3'(配列番号8)を有するフォワードプライマーおよびヌクレオチド配列5'- GAAGCAGAAACTTACCTAAGA AGTTAAAAAGTCTCGAAC -3'(配列番号9)を有するリバースプライマーを用いた組換えPCR反応で、本発明に記載のおよび本明細書に記載した0.6 Kb AGL20遺伝子断片のエクソン3から7よりなる0.28 Kb cDNAを増幅させ;
b. フォワードプライマー 5'- ATCCAACCGCGGACCTGCACATCAACAA -3'(配列番号7)およびリバースプライマー5'- GTTCGAGACTTTTTAACTTCTTAGGTAAGTTTCTGCTTCTAC -3'(配列番号12)を用いて、ST-LS1イントロンおよび隣接スプライシングサイトを含む0.19 Kb断片を増幅させ;
c. 配列番号8および配列番号7のプライマーならびに鋳型として両増幅産物の混同物を使用する2回のPCRにより、互いに工程a)およびb)で取得した増幅産物を融合させ、0.47 Kb長の融合産物を産生し;
d. それらのリンカーに関して工程a)で使用したプライマーとは異なるフォワードプライマー5'-TAAATCCGCGGAAGAAGTTAAAAAGTCTCGAAC-3'(配列番号10)およびリバースプライマー5'-CTATTTGTCGACGCATGCTGATCTCCTGATC-3'(配列番号11)を用いて、2回目、0.28 Kb BvAGL20断片を増幅させ;
e. Sac II制限サイトで両断片を融合させ、ジャガイモST-LS1遺伝子由来のイントロンにより分離されるBvAGL20配列のための逆位反復を作製すること
により取得可能な、トランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項61】
第2遺伝子構築体に含まれる該異種DNAが、配列番号2のヌクレオチド配列233-2657で示される、請求項60に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項62】
該第2遺伝子構築体が、請求項11から19のいずれか1項に記載の発現カセット中に含まれる、請求項50から61のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。
【請求項63】
第1および第2異種遺伝子構築体の共発現が、該サトウダイコン植物における春化応答の相乗的遅延を生じる、請求項50から62のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物。
【請求項64】
第1および第2異種遺伝子構築体の共発現が、該サトウダイコン植物における春化応答の完全な抑制を生じ、その結果、非抽薹(NB)表現型となる、請求項50から62のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物。
【請求項65】
2個の親植物の交雑により取得される請求項50から64のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物であって、第1異種遺伝子構築体が、請求項32から38のいずれか1項に記載のサトウダイコン植物で示される親1により提供され、第2異種遺伝子構築体が、請求項23から29のいずれか1項に記載のサトウダイコン植物で示される親2により提供され、ここで、少なくとも1個の親植物が非抽薹(NB)表現型を示さない、トランスジェニックサトウダイコン植物。
【請求項66】
さらに根が、各請求項に記載した該サトウダイコン植物の発明関連特徴を示す、請求項50から65のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコンの根。
【請求項67】
さらに該子孫が、各請求項に記載した該サトウダイコン植物の発明関連特徴を示す、請求項50から65のいずれか1項に記載のサトウダイコン植物の子孫。
【請求項68】
さらに該種子が、各請求項に記載した該サトウダイコン植物の発明関連特徴を示す、請求項50から65のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物の種子。
【請求項69】
請求項50から65のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法であって、
a. 操作可能に制御配列に結合したFLC遺伝子をコードする第1異種DNAを含む発現カセットおよび/または請求項11から19のいずれか1項に記載の第2異種DNAを含む発現カセットでサトウダイコン細胞を形質転換し;
b. 該異種DNAの1個または両方を含むサトウダイコン細胞を同定し、
c. 所望により、該異種DNAの1個のみを含む工程b)で同定したサトウダイコン細胞を、工程b)で同定した植物細胞中にまだ存在していない他の異種DNAを含む発現カセットで形質転換し、第1および第2異種DNAの両方を含むサトウダイコン細胞を同定し;
d. 工程b)で同定した該植物細胞から、トランスジェニック植物を再生し、
e. 春化応答の遅延または春化応答の完全な抑制を示し、その結果、非抽薹(NB)表現型を生じるサトウダイコン植物を同定し、
f. 所望により、工程a)で導入した植物細胞ゲノム中の異種DNAの存在を確認すること
を含む、方法。
【請求項70】
2個の親植物を交雑することを含む、請求項50から65のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法であって、第1異種遺伝子構築体が、請求項33から41のいずれか1項に記載のサトウダイコン植物で示される親1により提供され、第2異種遺伝子構築体が、請求項23から29のいずれか1項に記載のサトウダイコン植物で示される親2により提供される、方法。
【請求項71】
少なくとも1個の親植物が非抽薹(NB)表現型を示さない、請求項1から70のいずれか1項に記載のトランスジェニックサトウダイコン植物を製造する方法。
【請求項72】
請求項1から71のいずれか1項に記載のサトウダイコン植物を加工し、該サトウダイコン植物から糖を誘導することを含む、糖を製造する方法。
【請求項73】
請求項1から72のいずれか1項に記載のサトウダイコン植物を加工し、該サトウダイコン植物からエタノールを誘導することを含む、エタノールを製造する方法。
【請求項74】
請求項1から73のいずれか1項に記載のサトウダイコン植物を加工し、該サトウダイコン植物からバイオガスを誘導することを含む、バイオガスを製造する方法。
【請求項75】
請求項1から74のいずれか1項に記載のサトウダイコン植物を加工し、該サトウダイコン植物からディーゼル燃料を誘導することを含む、ディーゼル燃料を製造する方法。
【請求項76】
相乗的に有効量でAGL20およびFLC発現産物を含む、トランスジェニック細胞または植物。
【請求項77】
AGL20およびFLC発現産物が、請求項51から62のいずれか1項に記載の第1および第2遺伝的構築体から発現する、請求項76に記載のトランスジェニックサトウダイコン細胞または植物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−534019(P2009−534019A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505833(P2009−505833)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053325
【国際公開番号】WO2007/122086
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(501016559)シンジェンタ・パティシペーションズ・アクチェンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】Syngenta Participations AG
【Fターム(参考)】