説明

サンドイッチパネル及びその積重体

【課題】積み重ねた際の全方向への滑りが防止されるサンドイッチパネルと、このサンドイッチパネルの積重体とを提供する。
【解決手段】サンドイッチパネル10は、前面側の金属板11と裏側の金属板12との間に断熱材13を介在させたものである。表側の金属板11には多数の凹穴14が設けられている。裏側の金属板12には、この凹穴14に係入する多数の凸部15が設けられている。複数枚積み重ねられて積重体Sとされた場合、凹穴14に凸部15とが係入するので、サンドイッチパネル10が全方向に滑ることがない。凹穴14と凸部15とが面対称配置されているので、各サンドイッチパネル10の辺をぴったりと揃えてサンドイッチパネル10を積み重ねることができ、積重体Sがコンパクトとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対の金属板間に断熱材を介在させたサンドイッチパネルと、このサンドイッチパネルを複数枚積み重ねてなる積重体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1対の金属板同士の間に断熱材を介在させてなるサンドイッチパネルを用いて壁を構築したり改修することが行われている。
【0003】
このサンドイッチパネルを積み重ねて運搬や保管を行う場合、サンドイッチパネルの表面が平坦であると、サンドイッチパネル同士が滑ることがある。
【0004】
なお、特開平9−60152号公報の図4には、サンドイッチパネル(同号公報では建築用パネルと称されている)の表裏の金属板に、互いに同方向に延在する波形の凹凸リブを設けることが記載されている。
【特許文献1】特開平9−60152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開平9−60152号公報のサンドイッチパネルを積み重ねた場合、波形凹凸リブと直交方向におけるサンドイッチパネルの滑りは防止されるが、凹凸リブの延在方向への滑りは防止できない。
【0006】
本発明は、積み重ねた際の全方向への滑りが防止されるサンドイッチパネルと、このサンドイッチパネルの積重体とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサンドイッチパネルは、1対の金属板の間に断熱材が介在されてなるサンドイッチパネルにおいて、一方の該金属板に凹穴を設けると共に、他方の該金属板に、該凹穴に嵌入しうる大きさの凸部を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、該凸部及び凹穴がそれぞれ複数個設けられており、該凸部は、高さ0.2〜2mm、基底部の面積3〜20mmであり、金属板の10cm当り5〜130個の割合で設けられていることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様では、凹穴と凸部とが1個ずつ設けられており、該凹穴及び凸部が非円形である。
【0010】
本発明のサンドイッチパネルでは、一方の金属板の凹穴と他方の金属板の凸部とが面対称配置されていることが望ましい。
【0011】
本発明のサンドイッチパネルでは、凸部の少なくとも先端面が湾曲面よりなることが望ましい。
【0012】
本発明のサンドイッチパネル積重体は、複数枚のサンドイッチパネルを積み重ねたサンドイッチパネル積重体において、該サンドイッチパネルはかかる本発明のサンドイッチパネルであり、隣接するサンドイッチパネルにあっては、一方のサンドイッチパネルの凸部が他方のサンドイッチパネルの凹穴に嵌入していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のサンドイッチパネルを積み重ねて積重体とした場合、隣接する一方のサンドイッチパネルの凸部が他方のサンドイッチパネルの凹穴に係入することにより、サンドイッチパネルの全方向への滑りが防止される。
【0014】
凸部及び凹穴を複数個設ける場合、凸部の高さを0.2〜2mmとし、凸部の基底部の面積を3〜20mmとし、金属板10cm当りの個数を5〜130個とすることが望ましい。これにより、凸部が過度に高くなく、従って凹穴も過度に深くなく、金属板のいずれを前面側とする場合でも塗り仕上げやタイル張り仕上げを支障なく容易に行うことが可能となる。また、凸部が過度に低くなく、しかも凸部及び凹穴の数も十分であるため、サンドイッチパネルの滑りも確実に防止される。なお、サンドイッチパネルの回転滑りも防止される。
【0015】
本発明では、凹穴と凸部とを1個ずつ設けてもよく、この場合には、該凹穴及び凸部を非円形とする。これにより、全方向への滑りが防止されると共に、サンドイッチパネルの回転滑りも防止される。
【0016】
本発明では、一方の金属板の凹穴と他方の金属板の凸部とを面対称配置とすることにより、複数枚のサンドイッチパネルを、各々の辺をぴったりと揃えて積み重ねて凹穴に凸部を係入させることが可能となる。これにより、積重体が極めてコンパクトなものとなる。
【0017】
本発明では、凸部の少なくとも先端面を湾曲面とすることにより、サンドイッチパネルを積み重ねるときにサンドイッチパネル同士が摺動しても、該サンドイッチパネルに傷がつくことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図(a)は、実施の形態に係るサンドイッチパネルの裏側からの斜視図、第1図(b)は、このサンドイッチパネルの表側からの斜視図、第1図(c)はサンドイッチパネル積重体を示す側面図、第2図(a)はサンドイッチパネルの縦断面図、第2図(b),(c)は第2図(a)の上部及び下部の拡大図、第3図はサンドイッチパネルを設置した壁の下部の縦断面図、第4図は別の実施の形態を示す斜視図である。
【0019】
第1図及び第2図の通り、このサンドイッチパネル10は、前面側の金属板11と裏側の金属板12との間に断熱材13を介在させたものである。金属板11,12としては厚さ0.27〜1mm程度の鋼板やアルミ板が好適であり、断熱材13としては厚さ15〜100mm程度の合成樹脂発泡体が好適であるが、これに限定されるものではない。
【0020】
このサンドイッチパネル10の上端側には、厚みを小さくするようにして雄実10aが形成されている。また、サンドイッチパネル10の下端面には、厚み方向の中央部分から上方に凹陥する雌実10bが形成され、この雌実10bの奥面(天井面)にゴム等よりなるパッキン10cが接着等により固着されている。下段側に配設されたサンドイッチパネル10の雄実10aと、上段側に配設されたサンドイッチパネル10の雌実10bとが係合するようにしてこのサンドイッチパネル10が壁に設置される。なお、雄実、雌実の形状は図示以外であってもよい。
【0021】
表側の金属板11には多数の凹穴14が設けられている。裏側の金属板12には、この凹穴14に嵌入する多数の凸部15が設けられている。この凹穴14及び凸部15は、金属板12をプレス処理することによって形成することができるが、形成方法はこれに限定されるものではない。
【0022】
この凸部15の高さ(凸部15同士の間の平坦な箇所と凸部15の先端の高低差)は0.2〜20mm程度が好適である。凸部15の基底部の面積は3〜20mm程度が好適である。基底部が円形の場合、その直径は約1〜5mm程度が好適である。
【0023】
凸部15は、少なくとも先端部が湾曲しているものが好適であり、これにより、サンドイッチパネル10同士を積み重ねる際にサンドイッチパネル10同士が摺動しても、サンドイッチパネル10に傷がつくことが防止される。具体的には、凸部15は、半球状又はそれよりも小さい球の一部の形状であることが好ましい。
【0024】
なお、このような先端が湾曲した凸部15は、先端が尖っていないので、透湿防水シート2を突き破るおそれもなく、好適である。
【0025】
この凸部15の配置密度は、金属板12の10cm当り5〜130個程度が好適である。
【0026】
このように構成されたサンドイッチパネル10は、第1図(c)のように複数枚積み重ねられて積重体Sとされた場合、凹穴14に凸部15とが係入するので、サンドイッチパネル10が全方向に滑ることがない。
【0027】
この実施の形態にあっては、凹穴14と凸部15とが面対称配置されているので、各サンドイッチパネル10の辺をぴったりと揃えてサンドイッチパネル10を積み重ねることができ、積重体Sがコンパクトとなる。
【0028】
このサンドイッチパネル10を用いて構築された壁の一例を第3図に示す。第3図の通り、布基礎5の上に土台6が設置され、複数の柱1が立設されている。複数の柱1にまたがって透湿防水シート2が張り渡されている。
【0029】
この透湿防水シート2の前面側にサンドイッチパネル10が配置されている。左右に隣接するサンドイッチパネル10,10の継目は柱1の前面に位置している。
【0030】
このサンドイッチパネル10は、柱1に留め付けられ、上下多段に且つ左右多列に配設される。このサンドイッチパネル10の留め付けにはビス、釘等を用いることができるが、ビスの方が耐荷重が大きく、好適である。
【0031】
なお、この実施の形態では、最下段のサンドイッチパネル10の下部の裏側から水を抜くために、水抜き用パイプ20が最下段のサンドイッチパネル10の下部を貫通して設けられている。
【0032】
このサンドイッチパネル10の前面には、仕上げ塗装が施されるか、又はタイルが接着される。なお、左右に隣接するサンドイッチパネル10,10の継目を覆うように、該継目に跨って前面側から防水テープが貼着される。
【0033】
このように構成されたサンドイッチパネル10の設置構造にあっては、サンドイッチパネル10の裏側の金属板12に多数の凸部15が設けられており、サンドイッチパネル10の裏側と透湿防水シート2との間には流水間隙が形成される。従って、サンドイッチパネル10の裏側に入り込んだ水は、この流水間隙を介してスムーズに流れ落ち、パイプ20を介してサンドイッチパネル10の前方へ排出される。なお、湿気を含んだ空気もこの流水間隙を流れるようになる。
【0034】
この結果、サンドイッチパネル10の裏側に湿気がこもることが防止される。特に、柱1の前面にあっても、サンドイッチパネル10,10同士の継目を通して雨水が流入した場合、この水は柱1の前面側の透湿防水シート2とサンドイッチパネル10との間の流水間隙を素早く流れ落ち、パイプ20を通って排出される。
【0035】
第4図(a)は本発明の別の実施の形態に係るサンドイッチパネル10Aの表側の斜視図、第4図(b)はこのサンドイッチパネル10Aの裏側の斜視図である。この実施の形態では、サンドイッチパネル10Aの表側に1個の非円形の凹穴21が設けられ、サンドイッチパネル10Aの裏側に1個の非円形の凸部22が設けられている。この凹穴21は一文字状の凹条であり、凸部22は一文字状の凸条である。このサンドイッチパネル10Aを積み重ねた場合、凸部22が凹穴21に係入することにより、サンドイッチパネル10Aの全方への滑りが防止されると共に、回転滑りも防止される。
【0036】
第4図では、凹穴21及び凸部22が一文字形であるが、角形、楕円形等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1図(a)は、実施の形態に係るサンドイッチパネルの裏側からの斜視図、第1図(b)は、このサンドイッチパネルの表側からの斜視図、第1図(c)はサンドイッチパネル積重体を示す側面図である。
【図2】第2図(a)はサンドイッチパネルの縦断面図、第2図(b),(c)は第2図(a)の上部及び下部の拡大図である。
【図3】サンドイッチパネルを設置した壁の下部の縦断面図である。
【図4】別の実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 柱
2 透湿防水シート
10,10A サンドイッチパネル
11,12 金属板
13 断熱材
14,21 凹穴
15,22 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の金属板の間に断熱材が介在されてなるサンドイッチパネルにおいて、
一方の該金属板に凹穴を設けると共に、他方の該金属板に、該凹穴に嵌入しうる大きさの凸部を設けたことを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項2】
請求項1において、前記凹穴と凸部とが1個ずつ設けられており、該凹穴及び凸部が非円形であることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項3】
請求項1又は2において、一方の金属板の凹穴と他方の金属板の凸部とが面対称配置されていることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該凸部の少なくとも先端面が湾曲面よりなることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項5】
複数枚のサンドイッチパネルを積み重ねたサンドイッチパネル積重体において、
該サンドイッチパネルは請求項1ないし4のいずれか1項に記載のサンドイッチパネルであり、
隣接するサンドイッチパネルにあっては、一方のサンドイッチパネルの凸部が他方のサンドイッチパネルの凹穴に嵌入していることを特徴とするサンドイッチパネル積重体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−45848(P2006−45848A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226892(P2004−226892)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】