説明

サンドイッチパネル及びその設置構造

【課題】胴縁を用いなくてもサンドイッチパネルの裏側に流水間隙を形成することができるサンドイッチパネルと、このサンドイッチパネルの設置構造とを提供する。
【解決手段】複数の柱1にまたがって透湿防水シート2が張り渡されている。透湿防水シート2の前面側にサンドイッチパネル10が取り付けられている。サンドイッチパネル10は、前面側の金属板11と裏側の金属板12との間に断熱材13を介在させたものである。裏側の金属板12には、多数の突起15が設けられている。最下段のサンドイッチパネル10の下部の裏側から水を抜くために、水抜き用パイプ20が設けられている。サンドイッチパネル10の裏側に入り込んだ水は、スムーズに流れ落ち、パイプ20を介してサンドイッチパネル10の前方へ排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対の金属板間に断熱材を介在させたサンドイッチパネルと、このサンドイッチパネルを壁に設置してなるサンドイッチパネル設置構造とに関するものであり、特にサンドイッチパネルの裏側の水や湿気の抜けを改善したサンドイッチパネルとその設置構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
I.1対の金属板同士の間に断熱材を介在させてなるサンドイッチパネルを用いて壁を構築したり改修することが行われている。特公平7−30608号公報の第1図には、既存モルタル壁に胴縁を介してサンドイッチパネル(同号公報では乾式外壁材と称している。)を取り付けて改修し、該胴縁により、該サンドイッチパネルとモルタル壁との間に通気層を形成することが記載されている。
【0003】
II.特開平9−60152号公報の図4及び第0014段落には、金属薄板の間に発泡合成樹脂体を介在させた建築パネルとして、表裏の該金属薄板に、横方向に延在する凹凸リブを設けることが記載されている。
【特許文献1】特公平7−30608号公報
【特許文献2】特開平9−60152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(i)上記特公平7−30608号公報では、通気層を形成するために胴縁が必要である。本発明は、胴縁を用いなくてもサンドイッチパネルの裏側に流水間隙を形成することができるサンドイッチパネルと、このサンドイッチパネルの設置構造とを提供することを目的とする。
【0005】
(ii)なお、上記特開平9−60152号公報の図4の建築パネルは、凹凸リブが横方向(水平方向)に延在するものであるため、該建築パネルの裏側に入り込んだ水を下方へ流し落すことができない。この建築パネルの裏側に流水間隙を形成するには、やはり特公平7−30608号公報の如く胴縁が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1)のサンドイッチパネルは、表側及び裏側の金属板の間に断熱材が介在されてなるサンドイッチパネルにおいて、該裏側の金属板に、該サンドイッチパネルが壁に設置された際に該裏側の金属板に沿って空気及び水が通過可能な間隙を形成するための突起を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明(請求項2)のサンドイッチパネルは、表側及び裏側の金属板の間に断熱材が介在されてなるサンドイッチパネルにおいて、該突起が散点状に設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
この突起は高さ0.2〜10mm、基底部の面積3〜20mmであり、裏側金属板の10cm当り5〜130個の割合で設けられていることが好ましい。また、突起は、略半球形、円錐台形、又は円柱形であることが好ましい。
【0009】
このサンドイッチパネルにあっては、裏側の金属板は該突起の部分も含めて前記断熱材と密着していることが望ましい。
【0010】
本発明のサンドイッチパネル設置構造は、かかる本発明のサンドイッチパネルを壁に設置したものである。
【0011】
本発明のサンドイッチパネル設置構造の一態様にあっては、サンドイッチパネルが透湿防水シートを介して柱に取り付けられている。
【0012】
また、本発明のサンドイッチパネル設置構造にあっては、サンドイッチパネルが上下方向に2段以上設けられている場合、最下段のサンドイッチパネルの下部に水抜き口が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のサンドイッチパネル及びサンドイッチパネル設置構造にあっては、サンドイッチパネルの裏側の金属板に突起が設けられており、このサンドイッチパネルを柱、壁等に取り付けた場合、この裏側の金属板と柱、壁等との間に間隙が形成される。この間隙は、胴縁を用いるまでもなく、裏側金属板の突起によって形成される。この間隙が形成されることにより、サンドイッチパネルの裏側に入り込んだ水がサンドイッチパネルの裏側を伝って流れ落ちる。また、湿気を含んだ空気もこの間隙を流通する。これにより、サンドイッチパネルの裏側に湿気がこもることが防止される。
【0014】
この突起を散点状に設けることにより、間隙を水が流れ落ち易くなる。
【0015】
突起の高さが0.2〜10mm、基底部の面積が3〜20mm、裏側金属板の10cm当りの個数が5〜130個程度であると、十分で且つ過大でない流水間隙がサンドイッチパネルの裏側に形成される。
【0016】
突起を略半球形、円錐台形、又は円柱形とした場合、サンドイッチパネルの裏側に透湿防水シートを配材したときにこの透湿防水シートに突起が貫通することがなく、好適である。
【0017】
裏側の金属板は該突起の部分も含めて前記断熱材と密着している構成とした場合には、サンドイッチパネルを釘、ビス等で柱や壁などに固定した際に突起が柱や壁等に強く押し付けられても、突起が圧潰したりサンドイッチパネル内に押し込まれたりする変形が防止される。
【0018】
なお、最下段のサンドイッチパネルの下部に水抜き口を設けることにより、サンドイッチパネルの裏側を流れ落ちてきた水がサンドイッチパネルの前面側へ排出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図(a)は、実施の形態に係るサンドイッチパネルの裏側からの斜視図、第1図(b)はこのサンドイッチパネルの設置構造を示す縦断面図、第2図(a)はサンドイッチパネルの縦断面図、第2図(b),(c)は第2図(a)の上部及び下部の拡大図、第3図はサンドイッチパネルを設置した壁の下部の縦断面図、第4図は別の実施の形態に用いられる水抜きボックスの斜視図である。
【0020】
第3図の通り、布基礎5の上に土台6が設置され、複数の柱1が立設されている。複数の柱1にまたがって透湿防水シート2が張り渡されている。
【0021】
この透湿防水シート2の前面側にサンドイッチパネル10が取り付けられている。左右に隣接するサンドイッチパネル10,10の継目は柱1の前面に位置している。
【0022】
第2図の通り、このサンドイッチパネル10は、前面側の金属板11と裏側の金属板12との間に断熱材13を介在させたものである。金属板11,12としては厚さ0.15〜0.5mm程度の鋼板やアルミ板が好適であり、断熱材13としては厚さ25〜50mm程度の合成樹脂発泡体が好適であるが、これに限定されるものではない。
【0023】
このサンドイッチパネル10の上端側には、厚みを小さくするようにして凸部10aが形成されている。また、サンドイッチパネル10の下端面には、厚み方向の中央部分から上方に凹陥する凹部10bが形成され、この凹部10bの奥面(天井面)にゴム等よりなるパッキン10cが接着等により固着されている。下段側に配設されたサンドイッチパネル10の凸部10aと、上段側に配設されたサンドイッチパネル10の凹部10bとが係合するようにしてこのサンドイッチパネル10が壁に設置される。
【0024】
裏側の金属板12には、多数の突起15が散点状に設けられている。この突起15は、金属板12をプレス処理することによって形成することができるが、形成方法はこれに限定されるものではない。
【0025】
第2図(b),(c)の通り、裏側の金属板12は、突起15の部分も含めて断熱材13と密着している。このように突起15の部分も断熱材13で裏打ちされた構造となっているので、サンドイッチパネル10を釘やビスで柱等に留め付けた際に、突起15が圧潰したりサンドイッチパネル10内に押し込まれたりする変形が防止される。
【0026】
この突起15の高さ(突起15同士の間の平坦な箇所と突起15の先端の高低差)は0.2〜10mm特に0.5〜5mm程度が好適である。突起15の基底部の面積は3〜20mm程度が好適である。基底部が円形の場合、その直径は約2〜5mm程度が好適である。
【0027】
図示の突起15の形状は、先端が平面となっている略半球状であるが、先端も丸い半球状であってもよく、半球よりも小さい球の一部の形状であってもよい。また、突起15は円錐台形状、角錐台形状、円柱形、角柱形であってもよい。プレス加工が容易である点からは、略半球状を含めた半球状、円錐台、円柱形が好適である。また、これらの半球状、円錐台、円柱形の突起は、先端が尖っていないので、透湿防水シート2を突き破るおそれもなく、好適である。
【0028】
突起15は均一に散点状に分散配置されることが望ましい。この突起15の配置密度は、金属板12の10cm当り5〜130個程度が好適である。
【0029】
前述の通り、このサンドイッチパネル10は、柱1に留め付けられ、上下多段に且つ左右多列に配設される。このサンドイッチパネル10の留め付けにはビス、釘等を用いることができるが、ビスの方が耐荷重が大きく、好適である。
【0030】
なお、最下段のサンドイッチパネル10の下部の裏側から水を抜くために、水抜き用パイプ20が最下段のサンドイッチパネル10の下部を貫通して設けられている。
【0031】
このサンドイッチパネル10の前面には、仕上げ塗装が施されるか、又はタイルが接着される。なお、左右に隣接するサンドイッチパネル10,10の継目を覆うように、該継目に跨って前面側から防水テープが貼着される。
【0032】
このように構成されたサンドイッチパネル10及びその設置構造にあっては、サンドイッチパネル10の裏側の金属板に多数の突起15が設けられており、サンドイッチパネル10の裏側と透湿防水シート2との間には流水間隙が形成される。従って、サンドイッチパネル10の裏側に入り込んだ水は、第1図の矢印の如くこの流水間隙を介してスムーズに流れ落ち、パイプ20を介してサンドイッチパネル10の前方へ排出される。なお、湿気を含んだ空気もこの流水間隙を流れるようになる。
【0033】
この結果、サンドイッチパネル10の裏側に湿気がこもることが防止される。特に、柱1の前面にあっても、サンドイッチパネル10,10同士の継目を通して雨水が流入した場合、この水は柱1の前面側の透湿防水シート2とサンドイッチパネル10との間の流水間隙を素早く流れ落ち、パイプ20を通って排出される。
【0034】
この実施の形態ではパイプ20を最下段のサンドイッチパネル10の下部に設置しているが、第4図の水抜きボックス30を最下段のサンドイッチパネルの下部に設けてもよい。
【0035】
この水抜きボックス30は、略長方形の箱状であり、一側面に水の流入口31が設けられ、反対側の一側面に水の流出口32が設けられ、内部には迷路状に邪魔板33が立設されている。なお、第4図では水抜きボックス30の天井面部分が開放しているが、実際には蓋が設けられ、前記流入口31及び流出口32のみが開いている構成となっている。
【0036】
サンドイッチパネル10の裏側の水は、流入口31から流出口32を経てサンドイッチパネル10の前面側へ流れ出る。邪魔板33は、流入口31から入り込んだ虫が裏側へ入り込むことを防止するためのものである。なお、前記パイプ20や水抜きボックス30に、虫が入り込むのを防止するための防虫網を設けてもよい。
【0037】
水抜きボックス30の代りに、第5図のように水抜き部材40を用いてもよい。41はシールを示す。
【0038】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の構成とされてもよい。例えば、サンドイッチパネル10の上部及び下部の凸部と凹部は、図示以外の雄実、雌実形状とされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)図は、実施の形態に係るサンドイッチパネルの裏側からの斜視図、(b)図はサンドイッチパネル設置構造を示す縦断面図である。
【図2】(a)図はサンドイッチパネルの縦断面図、(b),(c)図は(a)図の上部及び下部の拡大図である。
【図3】サンドイッチパネル設置構造の下部の縦断面図である。
【図4】水抜きボックスの斜視図である。
【図5】水抜き部材を用いた構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 柱
2 透湿防水シート
10 サンドイッチパネル
11,12 金属板
13 断熱材
15 突起
20 パイプ
30 水抜きボックス
40 水抜き部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側及び裏側の金属板の間に断熱材が介在されてなるサンドイッチパネルにおいて、
該裏側の金属板に、該サンドイッチパネルが壁に設置された際に該裏側の金属板に沿って空気及び水が通過可能な間隙を形成するための突起を設けたことを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項2】
表側及び裏側の金属板の間に断熱材が介在されてなるサンドイッチパネルにおいて、該突起が散点状に設けられていることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項3】
請求項1又は2において、該突起は、高さ0.2〜10mm、基底部の面積3〜20mmであり、裏側金属板の10cm当り5〜130個の割合で設けられていることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該突起は、略半球形、円錐台形、又は円柱形であることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、該裏側の金属板は該突起の部分も含めて前記断熱材と密着していることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項6】
サンドイッチパネルが壁に設置されたサンドイッチパネル設置構造において、
該サンドイッチパネルが請求項1ないし5のいずれか1項に記載のサンドイッチパネルであることを特徴とするサンドイッチパネル設置構造。
【請求項7】
請求項6において、該サンドイッチパネルが透湿防水シートを介して柱に取り付けられていることを特徴とするサンドイッチパネル設置構造。
【請求項8】
請求項6又は7において、該サンドイッチパネルが上下方向に2段以上設置されており、最下段のサンドイッチパネルの下部に水抜き口が設けられていることを特徴とするサンドイッチパネル設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−45823(P2006−45823A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225739(P2004−225739)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】