説明

サンプリングクロック発生装置およびサンプリングクロック発生システム

【課題】共振スキャナの往路側および復路側に取得された信号を両方とも利用して、画像ズレのない鮮明な画像を取得する。
【解決手段】光源からの光を振動しながら反射または屈折して試料に照射する走査手段の速度信号S5を生成する速度信号生成部2と、生成された速度信号S5をA/D変換するA/D変換部6と、該A/D変換された速度信号S6を絶対値化してディジタル絶対値速度信号S7を生成するディジタル演算部7と、絶対値化された速度信号S7をD/A変換してアナログ絶対値速度信号S9を生成するD/A変換部9と、生成されたアナログ絶対値速度信号値S9に応じた周波数のサンプリングクロックSCを生成する発振手段10と、生成されたサンプリングクロックSCに基づいて、所定数のサンプリングクロックSCを含む画像化区間の区間情報HDを生成する区間情報生成部16とを備えるサンプリングクロック発生装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリングクロック発生装置およびサンプリングクロック発生システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、共振スキャナを用いた走査型観察装置用のサンプリングクロック発生装置として、VCO(Voltage Controlled Oscillator)に共振スキャナの速度信号を表す正弦波電圧を入力して、電圧値に応じた周波数でパルス信号を発生させる装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このサンプリングクロック発生装置は、正の電圧信号によってパルス信号を発生させるVCOを利用するために、正弦波電圧をアナログ信号処理により絶対値化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−344781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のサンプリングクロック発生装置では、アナログ信号処理により共振スキャナの速度信号の絶対値化を行っているので、信号の立ち上がり部分と立ち下がり部分とにおいて絶対値化後の速度信号波形に僅かな歪みが発生するという不都合がある。信号の立ち上がり部分と立ち下がり部分とにおいて速度信号波形に歪みが発生すると、この速度信号波形を元にVCOによって発生されるサンプリングクロックの間隔は画像の共振スキャナによる走査方向に微妙に変化してしまうことになる。
【0005】
共振スキャナの往路側のみあるいは復路側のみに取得された信号を利用して画像を形成する場合には、サンプリングクロックの間隔が微妙に変化しても問題はないが、往路側および復路側に取得された信号を両方とも利用して画像を形成する場合には、サンプリングクロックの間隔の微妙な変化が顕在化して画像ズレが発生するという問題がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、共振スキャナの往路側および復路側に取得された信号を両方とも利用して、画像ズレのない鮮明な画像を取得することを可能とするサンプリングクロック発生装置およびサンプリングクロック発生システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、光源からの光を振動しながら反射または屈折して試料に照射する走査手段の速度信号を生成する速度信号生成部と、該速度信号生成部により生成された速度信号をA/D変換するA/D変換部と、該A/D変換された速度信号を絶対値化してディジタル絶対値速度信号を生成するディジタル演算部と、該ディジタル演算部により絶対値化された速度信号をD/A変換してアナログ絶対値速度信号を生成するD/A変換部と、該D/A変換部により生成されたアナログ絶対値速度信号値に応じた周波数のサンプリングクロックを生成する発振手段と、該発振手段により生成されたサンプリングクロックに基づいて、所定数のサンプリングクロックを含む画像化区間の区間情報を生成する区間情報生成部とを備えるサンプリングクロック発生装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、速度信号生成部により生成された走査手段の速度信号が、A/D変換部においてA/D変換された後、ディジタル演算部において絶対値化されてディジタル絶対値速度信号が生成される。ディジタル演算部によれば、アナログ信号処理する場合のように、信号の立ち上がり部分と立ち下がり部分での絶対値化後の信号波形における非対称な歪みを発生させずに済む。
【0009】
その結果、非対称な歪みのないディジタル絶対値化速度信号からD/A変換部において生成されたアナログ絶対値速度信号にも歪みがなく、アナログ絶対値速度信号値に応じた周波数で生成されるサンプリングクロックの間隔も非対称に変化しない。したがって、共振スキャナの往路側および復路側に取得された信号を両方とも利用して画像を形成しても画像ズレのない鮮明な画像を取得することができる。
【0010】
そして、区間情報生成部により所定数のサンプリングクロックを含む画像化区間の区間情報が生成されることにより、共振スキャナによる走査が有効に行われる画像化区間において、精度よく画像情報のサンプリングが行われ、サンプリングされた画像情報に基づいて鮮明な画像を生成することができる。
【0011】
上記発明においては、前記ディジタル演算部が、前記ディジタル絶対値速度信号のオフセット量を調節する線形性補正演算を行うこととしてもよい。このようにすることで、付与するオフセット量に応じて、発振手段に入力されるディジタル絶対値速度信号が嵩上げまたは嵩下げされることにより、発振手段により生成されるサンプリングクロックの周波数を調節するようにディジタル絶対値速度信号の波形を調節することができる。これにより、共振スキャナの個体差により生じる非線形性によって、サンプリングクロックの間隔が対称的に変化するのを抑制して、画像ズレのない鮮明な画像を取得することを可能とするサンプリングクロックを発生させることができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記ディジタル演算部が、A/D変換によりディジタルサンプリングされた複数の速度信号値を加算平均してディジタル絶対値速度信号を生成してもよい。
このようにすることで、ディジタルサンプリングに由来するノイズの発生を抑制することができ、さらに精度よく、画像ズレのない鮮明な画像を取得することを可能とするサンプリングクロックを発生させることができる。
【0013】
また、本発明は、前記走査手段の往路走査期間と復路走査期間において、それぞれサンプリングクロックと画像化区間とを出力する2つの並列接続された上記サンプリングクロック発生装置と、該サンプリングクロック発生装置により出力された往路走査期間におけるサンプリングクロックおよび画像化区間と、前記復路走査期間におけるサンプリングクロックおよび画像化区間とを合成するクロック情報合成部とを備えるサンプリングクロック発生システムを提供する。
【0014】
本発明によれば、往路走査期間と復路走査期間とにおいて、並列接続された2つのサンプリングクロック発生装置を用いるので、共振スキャナが往路と復路とで異なる速度を有する場合に、それぞれの走査期間で別個のサンプリングクロックを発生させることができる。そして、生成されたサンプリングクロックおよび画像化区間は、クロック情報合成部において合成されることにより、往復の走査期間全体にわたって、画像ズレのない鮮明な画像を取得することを可能とするサンプリングクロックを発生させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、共振スキャナの往路側および復路側に取得された信号を両方とも利用して、画像ズレのない鮮明な画像を取得することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るサンプリングクロック発生装置を適用する走査型観察装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るサンプリングクロック発生装置を示すブロック図である。
【図3】図1のサンプリングクロック発生装置において生成される速度信号と再生位置信号との同期関係を示すグラフである。
【図4】図1のサンプリングクロック発生装置において生成される再生位置信号、サンプリングクロック、画像化区間情報およびアップダウン信号を示すグラフである。
【図5】図1のサンプリングクロック発生装置のリニア補正部におけるオフセット処理を説明するグラフであり、(a)補正前のディジタル絶対値速度信号、(b)オフセット処理前後のディジタル絶対値速度信号、(c)フィードバックによるゲインの訂正動作が行われた後のディジタル絶対値速度信号である。
【図6】ゲージを用いたリニア補正部におけるオフセット処理の設定を説明するグラフであり、(a)補正前のディジタル絶対値速度信号、(b)補正後のディジタル絶対値速度信号である。
【図7】本発明の一実施形態に係るサンプリングクロック発生システムを示すブロック図である。
【図8】図7のサンプリングクロック発生システムにより生成されたサンプリングクロックおよび画像化区間情報を示すグラフであり、(a)往路側のディジタル絶対値速度信号、サンプリングクロックおよび画像化区間情報、(b)復路側のディジタル絶対値速度信号、サンプリングクロックおよび画像化区間情報、(c)往復合成後のディジタル絶対値速度信号、サンプリングクロックおよび画像化区間情報である。
【図9】図1のサンプリングクロック発生装置において共振スキャナの速度がスキャナの振幅中心に対して、左右で非対称に歪んで変化する場合の補正を説明する(a)補正前、(b)補正後のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、図1に示されるように、走査型観察装置100において使用される。
【0018】
走査型観察装置100は、照明光を発生する光源101と、光源101からの照明光を変調する光変調素子102と、照明光をXY2次元方向に走査する走査ユニット103と、走査された照明光を集光する瞳投影レンズ104、結像レンズ105および対物レンズ106と、対物レンズ106により集光され、結像レンズ105、瞳投影レンズ104および走査ユニット103を介して戻る試料Aからの戻り光を分岐するダイクロイックミラー107と、分岐された戻り光を検出する光検出器108とを備えている。符号109はミラー、符号110はバリアフィルタ、符号111は共焦点レンズ、符号112は共焦点ピンホール、符号113はステージである。
【0019】
走査ユニット103は、照明光をY方向に偏向するガルバノミラー103aと、X方向に偏向する共振スキャナ103bとを備えている。
図中、符号114は、光変調素子102、走査ユニット103、光検出器108およびステージ113を制御して画像を生成する制御装置、符号115は生成された画像を表示するモニタである。
【0020】
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、共振スキャナ103aから出力される矩形波S1から共振スキャナ103aの動作に同期したサンプリングクロックSCを発生し制御装置114に出力するようになっている。制御装置114は、光検出器108により検出された試料Aからの戻り光の強度を、サンプリングクロック発生装置1から送られてきたサンプリングクロックSCに応じたタイミングでサンプリングして並べることにより、試料Aの2次元的な画像を生成するようになっている。
【0021】
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、約8kHzで共振振動させられる共振スキャナ103aから出力された、その共振振動に同期した矩形波S1が入力されて、サンプリングクロックSCおよび画像化区間信号(以下、HDという。)を出力する装置である。
【0022】
このサンプリングクロック発生装置1は、図2に示されるように、矩形波S1が入力されるとその矩形波S1に同期した正弦波信号からなる入力位置信号S2を出力する入力信号生成部2と、該入力信号生成部2から出力された入力位置信号S2にかけるゲインを調節する可変ゲイン調節部3と、ゲイン調節された入力位置信号S3からジッターノイズを除去するように、共振スキャナ103aの共振周波数に中心波長を有するバンドパスフィルタ(BPF)4と、バンドパスフィルタ4を通過した入力位置信号S4を速度信号S5に変換する位置帰還部5とを備えている。位置帰還部5は、入力された入力位置信号S4から、後述するVCO10から出力されたサンプリングクロックSCに基づく位置再生信号S11を減算することにより、速度信号S5を算出するようになっている。
【0023】
また、サンプリングクロック発生装置1は、生成された正弦波信号からなるアナログの速度信号S5を80MHzのサンプリングレートでディジタルサンプリングしてディジタル速度信号S6に変換するA/D変換器6と、該A/D変換器6により変換されたディジタル速度信号S6の内、負の振幅部分を正の振幅として折り返してディジタル絶対値速度信号S7を生成する絶対値処理部7と、ディジタル絶対値速度信号S7に予め設定された量だけオフセット処理を行うリニア補正部8と、オフセット処理されたディジタル絶対値速度信号S8をD/A変換してアナログ絶対値速度信号S9を生成するD/A変換部9と、アナログ絶対値速度信号S9の電圧値に応じた周波数のサンプリングクロックSCを発生するVCO10とを備えている。
これにより、VCO10からは共振スキャナ103aの速度変化に応じて間隔の変化する不等間隔のサンプリングクロックSCが生成されるようになっている。
【0024】
また、サンプリングクロック発生装置1は、VCO10により発生されたサンプリングクロックSCをカウントするアップダウンカウンタ11を備えている。アップダウンカウンタ11は、VCO10から出力されたサンプリングクロックSCを、例えば、カウント値が0〜582までアップカウントし、582の後は0までダウンカウントすることを繰り返すことにより、図3に示されるような共振スキャナ103aの位置に相当する再生位置信号S10を生成するようになっている。
【0025】
アップダウンカウンタ11により生成された再生位置信号S10はD/A変換器12に入力されることによりアナログの位置再生信号S11に変換されて位置帰還部5に入力されるようになっている。
また、アップダウンカウンタ11は、アップカウントのときにはHIGH、ダウンカウントのときにはLOWとなる矩形波からなるアップダウン信号S12およびカウント値S13も出力するようになっている。
【0026】
A/D変換器6により変換されたディジタル速度信号S6はコンパレータ13にも出力されるようになっている。コンパレータ13は、入力されたディジタル速度信号S6の符号を判定し、符号が負の場合にはHIGH、正の場合にはLOWとなる矩形波からなるコンパレータ信号S14を出力するようになっている。
【0027】
また、サンプリングクロック発生装置1は、コンパレータ13から出力されたコンパレータ信号S14とアップダウンカウンタ11から出力されたアップダウン信号S12との位相ズレを検出する位相検出部(以下、PDという。)14と、PD14から出力された位相ズレの検出信号S15を鈍らせて可変ゲイン調節部3に入力するローパスフィルタ(以下、LPFという。)15とを備えている。
【0028】
コンパレータ信号S14は、図3に示されるように、共振スキャナ103aの位置信号から生成したディジタル速度信号S6の位相を表し、アップダウン信号S12は、VCO10により生成されたサンプリングクロックSCから再生される再生位置信号S10の位相を表している。したがって、これらの位相が一致していない場合には、可変ゲイン調節部3のゲインを調節し、一致している場合には、ゲインを固定することにより、共振スキャナ103aの1周期中に存在するサンプリングクロックSCの数を固定することができるようになっている。上記の例では、アップダウンカウンタ11による往復のカウント値S13によって、582+582=1164個のサンプリングクロックSCが、正確に共振スキャナ103aの1周期中に入るゲインに固定されるようになっている。
【0029】
また、サンプリングクロック発生装置1は、アップダウンカウンタ11から出力されるカウント値S13に基づいて、画像化区間の情報を表す画像化区間信号HDを生成するHD生成部16を備えている。
HD生成部16は、上記の例では、図4に示されるように、アップダウンカウンタ11のカウント値が、往路中の0〜34までの35クロックを無効区間、35〜547までの512クロックを有効区間、548〜582までの35クロックを無効区間とするようになっている。また、HD生成部は、アップダウンカウンタのカウント値が、復路中の582〜548までの35クロックを無効区間、547〜35までの512クロックを有効区間、34〜0までの35クロックを無効区間とするようになっている。
【0030】
これにより、本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、共振スキャナ103aの動作に同期した不等間隔の1164個のサンプリングクロックSCと、当該サンプリングクロックSCの内の画像化区間を示す矩形波の画像化区間信号HDとを出力するようになっている。
走査型観察装置100の光検出器108により検出される試料Aからの戻り光をサンプリングクロック発生装置1により発生された画像化区間内のサンプリングクロックSCに従ってサンプリングすることにより、共振スキャナ103aの往復動作の両方において画像情報を取得することができるようになっている。
【0031】
このように構成された本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1によれば、VCO10に入力するアナログ絶対値速度信号S9を生成する際に、アナログ信号処理によることなくディジタル信号処理によって絶対値化するので、アナログ信号処理において発生していた信号の立ち上がり部分と立ち下がり部分における絶対値化後の速度信号波形の僅かな歪みの発生をも防止することができる。
【0032】
その結果、VCO10によってアナログ絶対値速度信号S9に応じた周波数で生成されるサンプリングクロックSCの間隔が非対称に変化するのを防止することができる。これにより、共振スキャナ103aの往路側および復路側に取得された信号を両方とも利用して画像を形成しても画像ズレのない鮮明な画像を取得することができるという利点がある。
【0033】
また、ディジタル信号処理によって絶対値化されたディジタル絶対値速度信号S7に対してリニア補正部8において、オフセットをディジタル信号処理により簡易に付与することができるという利点もある。例えば、オフセット量を増加させると、その瞬間のディジタル絶対値速度信号S7の振幅もオフセット量分だけ増加するので、VCO10から出力される共振スキャナ103aの1周期中のサンプリングクロックSCの数も1164個以上となる。
【0034】
しかし、上述したように、共振スキャナ103aの1周期中のサンプリングクロックSCの数は正確に1164個となるように可変ゲイン調節部3にフィードバックする制御がなされているので、位置帰還部5に入力される入力位置信号S4の振幅は直ちに減少するようにゲインの調節が行われる。
これにより、図5に示されるように、(a)に示されるディジタル絶対値速度信号S7は、(b)に示されるようなオフセット処理を施されることにより、(c)に破線で示されるように、厳密な正弦波形状から変形して各部の曲率が微妙に変化した信号となる。その結果、このようなリニア補正処理されたディジタル絶対値速度信号S8をD/A変換して得られたアナログ絶対値速度信号S9がVCO10に入力されると、発生するサンプリングクロックSC間の間隔が微妙に変化する。
【0035】
すなわち、例えば、図6に示されるように、正確に刻まれた目盛を有するゲージの画像G1を予め取得して、その画像G1上における目盛の間隔を測定する。これにより、図6(a)に示されるように、共振スキャナ103aの個体差や各部光学系の特性による画像G1の歪みを、走査方向に対するゲージの目盛の変化として検出する。そして、その歪みを補正するオフセット量を求めてリニア補正部8に設定しておくことにより、図6(b)に示されるように、共振スキャナ103aや光学系の特性に基づくサンプリングクロックSCの間隔のズレを微調整することができる。オフセット量の設定は、手動で行ってもよいし自動的に行うように構成してもよい。
【0036】
なお、本実施形態においては、HD生成部16において、往路中において0〜34までの35クロックを無効区間、35〜547までの512クロックを有効区間、548〜582までの35クロックを無効区間としたが、この関係を変化させることで共振スキャナ103aの1周期中における画像化区間を変化させてもよい。
【0037】
例えば、アップダウンカウンタ11におけるカウント数を往復で592+592=1184個とし、0〜39までの40クロックを無効区間、40〜552までの512クロックを有効区間、553〜592までの40クロックを無効区間とすることにより、全体の86.5%を画像化区間とすることができる。これにより、共振スキャナ103aの1周期中における画像化区間の長さ、画像化区間内に存在するサンプリングクロックSCの数およびそれらサンプリングクロックSCの間隔を自由に設定することができる。
【0038】
また、入力信号生成部2においては、共振スキャナ103aから出力された矩形波S1からなる同期信号に一致する位相を有する正弦波からなる入力位置信号S2を生成することとしたが、同期信号が入力されてから最終的なサンプリングクロックSCが生成されるまでには、無視できない遅延時間が発生する。また、共振スキャナ103aの現実の位置と同期信号との間にも遅延時間が存在する。さらに、サンプリングクロックSCに基づいて光検出器108により検出された戻り光の強度をサンプリングする制御装置114においても遅延時間が発生する。したがって、入力信号生成部2においては、これらの様々な遅延時間を考慮して、入力信号生成部2から出力される入力位置信号S2の位相を調節することにしてもよい。これにより、最終的に得られる画像への遅延時間の影響を抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態においては、単一のサンプリングクロック発生装置1によって、共振スキャナ103aの往路および復路のサンプリングクロックSCと画像化区間情報HDとを生成することとした。これに代えて、図7に示されるように、2つのサンプリングクロック発生装置1A,1Bを並列に接続したサンプリングクロック発生システム20を採用してもよい。
【0040】
このサンプリングクロック発生システム20には、各サンプリングクロック発生装置1A,1Bで発生した往路側および復路側のサンプリングクロックSCA,SCBと、往路側および復路側の画像化区間の情報HDA,HDBとを合成する合成部21が設けられている。これにより、図8(a),(b)に示されるように往路および復路のサンプリングクロックSCA,SCBと画像化区間情報HDA,HDBとを別々に発生させ、後段の合成部21において、図8(c)に示されるように、合成された往復のサンプリングクロックSCおよび画像化区間情報HDを出力することができる。
【0041】
このようなサンプリングクロック発生システム20によれば、共振スキャナ103aの走査時間や速度変化が往路と復路とで異なっていても、往路側と復路側で異なるゲイン調整およびオフセット量調整を行って、往路に取得した戻り光の光強度と復路に取得した戻り光の光強度とを用いて画像ズレのない良好な画像を取得することができるという利点がある。
【0042】
また、本実施形態においては、速度信号S5をディジタルサンプリングしてA/D変換し、絶対値化処理を行っているが、ディジタルサンプリングに際して信号にノイズが乗ってしまうことがあるため、ディジタルサンプリングされた複数の速度信号値を加算平均して各ディジタル速度信号S6を生成することにしてもよい。例えば、時刻Tにおけるディジタル速度信号S6(T)は、時刻Tよりも以前の2以上のディジタル信号S6(T−1),S6(T−2)を加算平均して求めることにすればよい。
【0043】
これにより、生成されるディジタル速度信号S6およびディジタル絶対値速度信号S7におけるノイズを大幅に低減することができる。
なお、この場合にも、遅延時間が発生するので、入力位置信号S2の位相の調整にこの演算における遅延時間に対する調整をも加えることより、最終的に得られる画像への遅延時間の影響を抑えることにすればよい。
【0044】
また、本実施形態においては、ディジタル信号に変換した状態で、絶対値化およびリニア補正を行っているが、ディジタル信号処理によれば、絶対値化およびリニア補正に限らず、比較的簡易に種々の信号調整を行うことができる。例えば、リニア補正では調整しきれない波形の歪み、例えば、図9(a)に示されるように、共振スキャナ103aの速度が正弦波形状から非対称に歪んで変化する場合に、図9(b)に示されるように、立ち上がり側と立ち下がり側において異なる波形調整を行うようにディジタル信号処理することにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
A 試料
HD 区間情報(画像化区間情報)
S5 速度信号
S7 ディジタル絶対値速度信号
S9 アナログ絶対値速度信号
SC サンプリングクロック
1,1A,1B サンプリングクロック発生装置
2 入力信号生成部(速度信号生成部)
6 A/D変換器(A/D変換部)
7 絶対値処理部(ディジタル演算部)
8 リニア補正部(ディジタル演算部)
9 D/A変換器(D/A変換部)
10 VCO(発振手段)
16 HD生成部(区間情報生成部)
20 サンプリングクロック発生システム
21 合成部(クロック情報合成部)
101 光源
103a 共振スキャナ(走査手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を振動しながら反射または屈折して試料に照射する走査手段の速度信号を生成する速度信号生成部と、
該速度信号生成部により生成された速度信号をA/D変換するA/D変換部と、
該A/D変換された速度信号を絶対値化してディジタル絶対値速度信号を生成するディジタル演算部と、
該ディジタル演算部により絶対値化された速度信号をD/A変換してアナログ絶対値速度信号を生成するD/A変換部と、
該D/A変換部により生成されたアナログ絶対値速度信号値に応じた周波数のサンプリングクロックを生成する発振手段と、
該発振手段により生成されたサンプリングクロックに基づいて、所定数のサンプリングクロックを含む画像化区間の区間情報を生成する区間情報生成部とを備えるサンプリングクロック発生装置。
【請求項2】
前記ディジタル演算部が、前記ディジタル絶対値速度信号のオフセット量を調節する線形性補正演算を行う請求項1に記載のサンプリングクロック発生装置。
【請求項3】
前記ディジタル演算部が、A/D変換によりディジタルサンプリングされた複数の速度信号値を加算平均してディジタル絶対値速度信号を生成する請求項1または請求項2に記載のサンプリングクロック発生装置。
【請求項4】
前記走査手段の往路走査期間と復路走査期間において、それぞれサンプリングクロックと画像化区間の区間情報とを出力する2つの並列接続された請求項1から請求項3のいずれかに記載のサンプリングクロック発生装置と、
該サンプリングクロック発生装置により出力された往路走査期間におけるサンプリングクロックおよび区間情報と、前記復路走査期間におけるサンプリングクロックおよび区間情報とを合成するクロック情報合成部とを備えるサンプリングクロック発生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−134846(P2012−134846A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286301(P2010−286301)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】