説明

サーマルプリンタの印字方法、コンピュータプログラムおよびサーマルプリンタ装置

【課題】サーマルプリンタにおいて、印字する時間を延ばすことなく、スティキングを改善する。
【解決手段】ステップ的に行われる感熱用紙の紙送り間隔の時間と、印字するデータに対応してサーマルヘッドに通電を行う通電時間に基づいて、感熱用紙の紙送りが完了してからサーマルヘッドに通電を開始するまでの遅延時間を算出する通電開始遅延時間算出手順と、感熱用紙の紙送りが完了した後の経過時間を計測する計測手順と、記計測手順による計測結果が、通電開始遅延時間算出手順が算出した遅延時間を経過した後に、サーマルヘッドに通電を行う通電手順と、通電手順によってサーマルヘッドへの通電が完了した後にステップ的に感熱用紙を移動させる紙送り手順と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタにおいて用紙とサーマルヘッドの張り付きを改善する印字方法、コンピュータプログラムおよびサーマルプリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レシート等に使用されるロール状の感熱用紙に印字するサーマルプリンタでは、ステッピングモータを駆動することによって印字中の用紙を紙送りしている。そして、紙送りが完了すると、サーマルヘッドに通電を行うことによってサーマルヘッドに熱を印加して印字を行っている。すなわち、サーマルヘッドに通電するタイミングは、紙送りのためにステッピングモータを駆動した直後のタイミングであり、現ラインにおけるサーマルヘッドへの通電(印字)終了から次のラインへの紙送りがされるまでの間、サーマルヘッドの発熱体と感熱用紙の加熱部分が同じ場所で保持されている状態となる。この状態において、サーマルヘッドへの通電(印字)終了からステッピングモータの駆動(紙送り)までの時間が長いと、サーマルヘッドの発熱体と感熱用紙の印字部分が感熱用紙に含まれている発色成分によって張り付くという、いわゆるスティキングが発生しやすくなってしまう。現ラインでの印字によるサーマルヘッドの熱印加量(発熱するサーマルヘッドの発熱体の比率)が多いほど、また、サーマルプリンタのおかれている環境が低温環境であるほど、このスティキングが発生しやすくなってしまう。
【0003】
このようなスティキングを改善するため、特許文献1では、スティキングが発生する状態にあると判定すると、サーマルヘッドに張り付いた感熱用紙の発色成分を溶解するためにサーマルヘッドに微少な通電(感熱用紙に印字されるほどではないが、サーマルヘッドの発熱体によって感熱用紙の発色成分を溶かすことができる発熱を得られる通電)を行い、その後に紙送りをするということが開示されている。
【特許文献1】特開平10−109435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようにスティキングを判定してサーマルヘッドに張り付いた感熱用紙の発色成分を溶解するためにサーマルヘッドに微少な通電を追加すると、印字する時間が延びるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の課題認識に基づいてなされたものであり、サーマルヘッドに通電を行うことによって印字を行うサーマルプリンタにおいて、印字する時間を延ばすことなく、スティキングを改善するサーマルプリンタの印字方法、コンピュータプログラムおよびサーマルプリンタ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明のサーマルプリンタ装置の印字方法は、サーマルヘッドに通電を行うことによって発熱体を発熱させ、前記発熱によって感熱用紙に印字を行うサーマルプリンタ装置の印字方法において、ステップ的に行われる前記感熱用紙の紙送り間隔の時間と、印字するデータに対応して前記サーマルヘッドに通電を行う通電時間に基づいて、前記感熱用紙の紙送りが完了してから前記サーマルヘッドに通電を開始するまでの遅延時間を算出する通電開始遅延時間算出手順と、前記感熱用紙の紙送りが完了した後の経過時間を計測する計測手順と、前記計測手順による計測結果が、前記通電開始遅延時間算出手順が算出した遅延時間を経過した後に、前記サーマルヘッドに通電を行う通電手順と、前記通電手順によってサーマルヘッドへの通電が完了した後にステップ的に前記感熱用紙を移動させる紙送り手順と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の前記通電開始遅延時間算出手順は、前記感熱用紙の紙送り間隔の時間から、印字するデータに対応して前記サーマルヘッドに通電を行う通電時間を減算することによって、サーマルヘッドに通電を開始するまでの遅延時間を算出する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の前記通電開始遅延時間算出手順は、印字するデータに対応して前記感熱用紙の同じラインにおいて複数の領域に分けられ、前記サーマルヘッドに順次通電が行われる全ての通電時間を合算し、前記感熱用紙の紙送り間隔の時間から、前記合算した通電時間を減算することによって、前記感熱用紙の紙送りが完了してから前記サーマルヘッドに通電を開始するまでの遅延時間を算出する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のコンピュータプログラムは、サーマルヘッドに通電を行うことによって発熱体を発熱させ、前記発熱によって感熱用紙に印字を行うサーマルプリンタ装置を制御するコンピュータに、ステップ的に行われる前記感熱用紙の紙送り間隔の時間と、印字するデータに対応して前記サーマルヘッドに通電を行う通電時間に基づいて、前記感熱用紙の紙送りが完了してから前記サーマルヘッドに通電を開始するまでの遅延時間を算出する手段と、前記感熱用紙の紙送りが完了した後の経過時間を計測する手段と、前記計測した経過時間が、前記算出した遅延時間を経過した後に、前記サーマルヘッドに通電を行う手段と、前記サーマルヘッドへの通電が完了した後にステップ的に前記感熱用紙を移動させる手段と、を実行させる。
【0010】
また、本発明のサーマルプリンタ装置は、サーマルヘッドに通電を行うことによって発熱体を発熱させ、前記発熱によって感熱用紙に印字を行うサーマルプリンタ装置において、ステップ的に行われる前記感熱用紙の紙送り間隔の時間と、印字するデータに対応して前記サーマルヘッドに通電を行う通電時間に基づいて、前記感熱用紙の紙送りが完了してから前記サーマルヘッドに通電を開始するまでの遅延時間を算出する通電開始遅延時間算出手段と、前記感熱用紙の紙送りが完了した後の経過時間を計測する計測手段と、前記計測手段による計測結果が、前記通電開始遅延時間算出手段が算出した遅延時間を経過した後に、前記サーマルヘッドに通電を行う通電手段と、前記通電手段によってサーマルヘッドへの通電が完了した後にステップ的に前記感熱用紙を移動させる紙送り手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サーマルヘッドに通電を行うことによって印字を行うサーマルプリンタにおいて、サーマルヘッドへの通電(印字)終了からステッピングモータの駆動(紙送り)までの時間を短くすることにより、サーマルヘッドの発熱体と感熱用紙の加熱部分が同じ場所で保持されている時間を短くすることができるので、印字する時間を延ばすことなく、スティキングを改善することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態によるプリントシステムにおける印字制御部の概略構成を示したブロック図である。図1において、印字制御部100は、プログラムメモリ200、印字処理部201、プリンタ制御部202から構成される。なお、印字制御部100は、図示しない制御手段から入力された印字指示に従って、接続されている図示しないサーマルプリンタ装置に該制御手段から入力された印字データを印字させるため、サーマルヘッドへの通電(印字)およびステッピングモータの駆動(感熱用紙の紙送り)を制御する。
【0013】
プログラムメモリ200は、本実施形態のプリントシステムの全体制御を行うためのシステムプログラムを記憶し、後述する印字処理部201から読み出されるメモリである。
【0014】
印字処理部201は、制御手段から入力された印字指示に従って後述するプリンタ制御部202を制御する例えばCPU(Central Processing Unit)等の処理手段である。
印字処理部201は、本実施形態のプリントシステムの電源がオンされたときにプログラムメモリ200からシステムプログラムを読み出し、印字待機状態となる。印字処理部201は、印字指示が入力されると、後述するプリンタ制御部202に印字開始命令を出力すると共に、入力された印字データを後述するプリンタ制御部202に出力し、印字の処理を行う。なお、印字処理部201による印字処理は、入力された印字データを印字する1ライン毎に分割し、その分割した1ライン毎の印字データを後述するプリンタ制御部202からの印字完了信号が入力される毎に順次出力する。
【0015】
プリンタ制御部202は、印字処理部201から入力された印字開始命令および印字データに応じてサーマルプリンタ装置を制御するブロックである。
プリンタ制御部202は、印字処理部201から印字開始命令が入力されると、ステッピングモータのステップ時間(今回印字を行うラインから次のラインまでの間隔)を算出する。また、印字処理部201から入力された印字データからヘッドストローブ時間(サーマルヘッドの熱を感熱用紙に印加するためのサーマルヘッドへの通電時間)を算出する。また、該算出したステッピングモータのステップ時間から、該算出したヘッドストローブ時間を減算して、該プリンタ制御部202が制御するサーマルプリンタ装置のサーマルヘッドへの通電開始遅延時間(ヘッドストローブ出力開始時間)を算出する。
【0016】
プリンタ制御部202は、該プリンタ制御部202が制御するサーマルプリンタ装置にステッピングモータ制御信号を出力し、次のラインの印字位置まで紙を移動(紙送り)する。続いて、該算出したサーマルヘッドへの通電開始遅延時間が経過した後に、印字する1ライン毎にプリントデータおよびヘッドストローブ信号を該プリンタ制御部202が制御するサーマルプリンタ装置に出力する。
【0017】
次に、本実施形態における印字方法について説明する。図2は、本発明の実施形態によるプリントシステムによるサーマルプリンタの印字方法の概略を示したタイミングチャートである。また、図5は、従来の印字方法の概略を図2と対応付けて示したタイミングチャートである。また、本発明においては、印字を行うためのサーマルヘッドへの通電方法や印字するデータの処理方法は、規定しない。また、図2および図5において、ステッピングモータの駆動は2相駆動としているが、本発明においては、紙送りに関するステッピングモータの駆動方法は、規定しない。
【0018】
図2に示すように、図示しない印字命令が入力されると、t0期間において、プリンタ制御部202は、次のt1期間の時間(t1期間の始まりから次のラインを印字するために紙送りを開始するまでの時間:ステッピングモータのステップ時間)から、t1期間の印字においてサーマルヘッドに通電している時間(ヘッドストローブ時間)を減算して、サーマルヘッドへの通電開始遅延時間を算出する。続いて、プリンタ制御部202は、t1期間の印字をするため、ステッピングモータを駆動して紙送りを行う。
【0019】
用紙位置が印字を行う位置(用紙位置=1)になると、プリンタ制御部202は、t1期間において、現時点(t1期間の始まり)からの経過時間の計測を開始し、計測した経過時間が算出されたサーマルヘッドへの通電開始遅延時間となったときにヘッドストローブに“H”レベルを出力してサーマルヘッドへの通電を行う。このことにより、サーマルヘッドの発熱体が発熱して、感熱用紙に含まれている発色成分が溶解することによって印字がされる。続いて、プリンタ制御部202は、サーマルヘッドへの通電時間が経過するとヘッドストローブに“L”レベルを出力(ヘッドストローブ出力終了)する。続いて、プリンタ制御部202は、次の期間(t2期間)で印字するためのサーマルヘッドへの通電開始遅延時間を算出して、次の印字(t2期間の印字)をするためにステッピングモータを駆動して紙送りを行う。
【0020】
用紙位置が印字を行う位置(用紙位置=2)になると、プリンタ制御部202は、t2期間において、t1期間と同様に、t2期間の始まりからの経過時間がt1期間で算出したサーマルヘッドへの通電開始遅延時間となったときにヘッドストローブに“H”レベルを出力してサーマルヘッドへの通電を行い、感熱用紙に印字する。その後、プリンタ制御部202は、サーマルヘッドへの通電時間が経過したときにヘッドストローブに“L”レベルを出力し、次の期間(t3期間)でのサーマルヘッドへの通電開始遅延時間を算出して、紙送りを行う。t3期間以降も感熱用紙への印字、サーマルヘッドへの通電開始遅延時間の算出、紙送りを繰り返し、印字完了まで同様に動作する。
【0021】
一方、図5に示すように従来の印字方法では、用紙位置が印字を行う位置(用紙位置=1)になったときに、ヘッドストローブを出力して感熱用紙への印字を行う。続いて、次のライン(t2期間)を印字するために紙送りをする時間になったときに、次の印字のためにステッピングモータを駆動して紙送りを行う。
【0022】
ここで、スティキングは、ヘッドストローブを出力してサーマルヘッドに通電を行うことによって感熱用紙に印字した後のサーマルヘッドが冷却される期間に、サーマルヘッドの発熱体と感熱用紙の印字部分が感熱用紙に含まれている発色成分によって張り付くことによって発生する。すなわち、ヘッドストローブを“L”レベルにした後のサーマルヘッドの冷却期間中に、サーマルヘッドと感熱用紙が同じ位置にある時間が長いとスティキングが発生しやすくなる。
図5に示す従来の印字方法では、ヘッドストローブ出力が終了した後もステッピングモータを駆動せず用紙位置を変更していないため、サーマルヘッドの冷却期間がヘッドストローブを出力した期間と同じ用紙位置の期間、例えばt1期間となっている。図2に示す本実施形態においては、ヘッドストローブの出力が終了した後にステッピングモータを駆動して用紙位置を変更しているため、サーマルヘッドの冷却期間がヘッドストローブを出力した期間と異なる用紙位置の期間、例えば、t2期間となるため、スティキングが発生しにくい状態となる。
【0023】
次に、本実施形態における印字方法の処理手順について説明する。図3は、本実施形態の印字方法の処理手順を示したフローチャートである。
【0024】
まず、ステップS100において、印字処理部201は、制御手段から印字指示が入力されたか否かを確認し、印字指示が入力された場合は、ステップS110において、印字開始命令をプリンタ制御部202に出力し、印字を開始する。また、ステップS100において、印字指示が入力されていない場合は、ステップS100を繰り返す。
【0025】
続いて、印字処理部201は、ステップS200において、印字する1ライン分の印字データをプリンタ制御部202に出力する。
【0026】
続いて、プリンタ制御部202は、ステップS210において、次のラインのステッピングモータのステップ時間を算出する。また、プリンタ制御部202は、印字処理部201から入力された1ライン分の印字データから、例えば、サーマルヘッドの特性に応じて次のラインのヘッドストローブ時間(サーマルヘッドへの通電時間)を算出する。
【0027】
続いて、プリンタ制御部202は、ステップS220において、ステップ210で算出したステッピングモータのステップ時間から、ステップ210で算出した次のラインのヘッドストローブ時間を減算し、サーマルヘッドへの通電開始遅延時間を算出する。
【0028】
続いて、プリンタ制御部202は、ステップS230において、現在のラインのステッピングモータのステップ時間(次のラインまでの時間)が経過したか否かを判断し、ステッピングモータのステップ時間が経過した場合は、ステップS300において、ステッピングモータを駆動して次のラインの印字位置まで紙を移動(紙送り)する。ステップS230において、ステッピングモータのステップ時間が経過していない場合は、ステップS230を繰り返し、ステッピングモータのステップ時間が経過するまでの時間の計測を継続する。
【0029】
続いて、プリンタ制御部202は、ステップS300において、ステッピングモータの駆動が完了して、今回印字を行うラインに感熱用紙が紙送りされると、ステップS400において、サーマルヘッドへの通電開始遅延時間までの時間が経過したか否かを判断し、通電開始遅延時間までの時間が経過した場合は、ステップS410において、ヘッドストローブに“H”レベルを出力して、サーマルヘッドへの通電を行う。ステップS400において、通電開始遅延時間までの時間が経過していない場合は、ステップS400を繰り返し、通電開始遅延時間までの時間の計測を継続する。
【0030】
続いて、プリンタ制御部202は、ステップS420において、ヘッドストローブ=“H”を出力している期間が経過したか否かを判断し、ヘッドストローブ=“H”を出力している期間が経過した場合は、ステップS430において、ヘッドストローブに“L”レベルを出力して、サーマルヘッドへの通電を停止する。また、プリンタ制御部202は、印字完了信号を印字処理部201に出力する。ステップS420において、ヘッドストローブ=“H”を出力している期間が経過していない場合は、ステップS420を繰り返し、ヘッドストローブ=“H”を出力している期間が経過するまでの時間の計測を継続する。これらステップS410からステップS430までの期間にヘッドストローブ=“H”を出力することにより、サーマルヘッドの発熱体が発熱して、感熱用紙に熱が印加されることによって感熱用紙に含まれている発色成分が溶解し、印字がされる。
【0031】
続いて、印字処理部201は、ステップS500において、次に印字する印字データがあるか否かを確認し、次に印字する印字データがある場合は、ステップS200に戻って次の印字処理を行う。ステップS500において、次に印字する印字データがない場合は、印字処理を完了する。
【0032】
次に、本実施形態におけるプリントシステムにおいて、サーマルヘッドを複数の領域に分割し、対応する領域のヘッドストローブを順次出力することによりサーマルヘッドに通電する場合について説明する。図4は、本発明の実施形態によるプリントシステムによるサーマルプリンタの印字方法の概略を示したタイミングチャートである。また、図6は、従来の印字方法の概略を図4と対応付けて示したタイミングチャートである。なお、図4および図6に示すように印字を行うためのヘッドストローブは、4分割されている場合について説明を行うが、本発明においては、ヘットストローブの分割数は、規定しない。
【0033】
図4に示すように、図示しない印字命令が入力されると、t0期間において、プリンタ制御部202は、図2のt0期間と同様に、次のt1期間の時間から、t1期間の印字においてサーマルヘッドに通電している時間を減算して、サーマルヘッドへの通電開始遅延時間を算出する。ただし、図4では、サーマルヘッドを4つの領域に分割しているため、算出に用いるサーマルヘッドに通電している時間は、分割された4つの領域に対応する4つのヘッドストローブの出力時間を合計した時間となる。続いて、プリンタ制御部202は、t1期間の印字をするため、ステッピングモータを駆動して紙送りを行う。
【0034】
用紙位置が印字を行う位置(用紙位置=1)になると、プリンタ制御部202は、t1期間において、現時点(t1期間の始まり)からの経過時間の計測を開始し、計測した経過時間が算出されたサーマルヘッドへの通電開始遅延時間となったときにヘッドストローブ1に“H”レベルを出力してサーマルヘッドへの通電を行う。続いて、プリンタ制御部202は、ヘッドストローブ1によるサーマルヘッドへの通電時間が経過するとヘッドストローブ1に“L”レベルを出力し、次のヘッドストローブ2に“H”レベルを出力してサーマルヘッドへの通電を行う。以降ヘッドストローブ3、ヘッドストローブ4を出力する。このヘッドストローブ1から4によって、それぞれ対応したサーマルヘッドの領域の発熱体が発熱して印字が行われる。続いて、プリンタ制御部202は、全てのヘッドストローブの出力が完了(全てのヘッドストローブに“L”レベルを出力し、ヘッドストローブ出力が終了)すると、次の期間(t2期間)で印字するためのサーマルヘッドへの通電開始遅延時間を算出して、次の印字(t2期間の印字)をするためにステッピングモータを駆動して紙送りを行う。
【0035】
用紙位置が印字を行う位置(用紙位置=2)になると、プリンタ制御部202は、t2期間において、t1期間と同様に、t2期間の始まりからの経過時間がt1期間で算出したサーマルヘッドへの通電開始遅延時間となったときにヘッドストローブ1からヘッドストローブ4まで順に出力して、感熱用紙に印字する。t3期間以降も同様に感熱用紙への印字、サーマルヘッドへの通電開始遅延時間の算出、紙送りを繰り返し、印字完了まで動作する。
【0036】
一方、図6に示すように従来の印字方法では、用紙位置が印字を行う位置(用紙位置=1)になったときに、ヘッドストローブ1からヘッドストローブ4まで順に出力して印字を行い、次のライン(t2期間)を印字するために紙送りをする時間になったときに、ステッピングモータを駆動して紙送りを行う。
【0037】
ここで、前述したように、スティキングは、サーマルヘッドが冷却される期間に発生する。
図6に示す従来の印字方法では、ヘッドストローブ1=“H”レベルの出力が終了してからヘッドストローブ4=“H”レベルの出力が終了するまでの差によって、ヘッドストローブの出力が終了してから紙送りをするまでの期間が一番長い、ヘッドストローブ1に対応するサーマルヘッドの領域が最もスティキングが発生しやすい状態である。本実施形態による印字方法においても、図5に示すようにヘッドストローブ1=“H”レベルの出力が終了してからヘッドストローブ4=“H”レベルの出力が終了するまでの時間は、図6に示す従来の印字方法と同じ時間であり、サーマルヘッドの冷却期間も同じ時間である。従って、ヘッドストローブの出力が終了してから紙送りをするまでの期間が一番長い、ヘッドストローブ1に対応するサーマルヘッドの領域が最もスティキングが発生しやすい状態である。しかし、図4においては、ヘッドストローブ4=“H”レベルの出力が終了後にステッピングモータを駆動して用紙位置を変更しているため、ヘッドストローブ1=“H”レベルの出力が終了してから用紙位置が同じである期間、例えばt1期間が図6に比べて短い。すなわち、ヘッドストローブ1に対応するサーマルヘッドの領域の冷却期間の途中でヘッドストローブを出力した期間と異なる用紙位置、例えば、t1期間からt2期間に移動するため、スティキングが発生しにくい状態となる。
【0038】
上記に述べたとおり、本発明を実施するための最良の形態によれば、サーマルヘッドの冷却期間中にステッピングモータを駆動して紙送りを行うことによって、スティキングを改善することができる。また、従来の印字方法に対してステッピングモータを駆動して紙送りを行うタイミングを変更するのみであるため、印字する時間を延ばすことがない。
【0039】
また、サーマルヘッドへの通電開始遅延時間の算出を行ってからステッピングモータを駆動して紙送りをしているため、ヘッドストローブ出力が終了した後に紙送りをするまでの待ち時間を活用することができる。
【0040】
なお、本発明においては、サーマルヘッドへの通電手段、印字するデータの処理方法、用紙の紙送り手段は規定しない。
【0041】
なお、上述した実施形態におけるプリントシステムの一部、例えば、印字制御部100の機能をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0042】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態によるプリントシステムにおける印字制御部の概略構成を示したブロック図である。
【図2】本実施形態の印字方法の概略を示したタイミングチャートである。
【図3】本実施形態の印字方法の処理手順を示したフローチャートである。
【図4】本実施形態の印字方法の概略を示したタイミングチャートである。
【図5】従来の印字方法の概略を示したタイミングチャートである。
【図6】従来の印字方法の概略を示したタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0044】
100 印字制御部 200 プログラムメモリ 201 印字処理部 202 プリンタ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドに通電を行うことによって発熱体を発熱させ、前記発熱によって感熱用紙に印字を行うサーマルプリンタ装置の印字方法において、
ステップ的に行われる前記感熱用紙の紙送り間隔の時間と、印字するデータに対応して前記サーマルヘッドに通電を行う通電時間に基づいて、前記感熱用紙の紙送りが完了してから前記サーマルヘッドに通電を開始するまでの遅延時間を算出する通電開始遅延時間算出手順と、
前記感熱用紙の紙送りが完了した後の経過時間を計測する計測手順と、
前記計測手順による計測結果が、前記通電開始遅延時間算出手順が算出した遅延時間を経過した後に、前記サーマルヘッドに通電を行う通電手順と、
前記通電手順によってサーマルヘッドへの通電が完了した後にステップ的に前記感熱用紙を移動させる紙送り手順と、
を含むことを特徴とするサーマルプリンタ装置の印字方法。
【請求項2】
前記通電開始遅延時間算出手順は、
前記感熱用紙の紙送り間隔の時間から、印字するデータに対応して前記サーマルヘッドに通電を行う通電時間を減算することによって、サーマルヘッドに通電を開始するまでの遅延時間を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ装置の印字方法。
【請求項3】
前記通電開始遅延時間算出手順は、
印字するデータに対応して前記感熱用紙の同じラインにおいて複数の領域に分けられ、前記サーマルヘッドに順次通電が行われる全ての通電時間を合算し、
前記感熱用紙の紙送り間隔の時間から、前記合算した通電時間を減算することによって、前記感熱用紙の紙送りが完了してから前記サーマルヘッドに通電を開始するまでの遅延時間を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載のサーマルプリンタ装置の印字方法。
【請求項4】
サーマルヘッドに通電を行うことによって発熱体を発熱させ、前記発熱によって感熱用紙に印字を行うサーマルプリンタ装置を制御するコンピュータに、
ステップ的に行われる前記感熱用紙の紙送り間隔の時間と、印字するデータに対応して前記サーマルヘッドに通電を行う通電時間に基づいて、前記感熱用紙の紙送りが完了してから前記サーマルヘッドに通電を開始するまでの遅延時間を算出する手段と、
前記感熱用紙の紙送りが完了した後の経過時間を計測する手段と、
前記計測した経過時間が、前記算出した遅延時間を経過した後に、前記サーマルヘッドに通電を行う手段と、
前記サーマルヘッドへの通電が完了した後にステップ的に前記感熱用紙を移動させる手段と、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項5】
サーマルヘッドに通電を行うことによって発熱体を発熱させ、前記発熱によって感熱用紙に印字を行うサーマルプリンタ装置において、
ステップ的に行われる前記感熱用紙の紙送り間隔の時間と、印字するデータに対応して前記サーマルヘッドに通電を行う通電時間に基づいて、前記感熱用紙の紙送りが完了してから前記サーマルヘッドに通電を開始するまでの遅延時間を算出する通電開始遅延時間算出手段と、
前記感熱用紙の紙送りが完了した後の経過時間を計測する計測手段と、
前記計測手段による計測結果が、前記通電開始遅延時間算出手段が算出した遅延時間を経過した後に、前記サーマルヘッドに通電を行う通電手段と、
前記通電手段によってサーマルヘッドへの通電が完了した後にステップ的に前記感熱用紙を移動させる紙送り手段と、
を備えることを特徴とするサーマルプリンタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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