説明

シュガーレスチューイングソフトキャンディおよびその製法

【課題】優れた食味・食感およびチューイング性が、製造後、長期間保存しても維持されるシュガーレスチューイングソフトキャンディおよびその製法の提供。
【解決手段】糖アルコールを主成分として含む糖質を含むチューイングソフトキャンディベースに、前記糖アルコールと同じ糖アルコールおよび/または異なる糖アルコールを使用したフォンダンを必須成分としてその結晶を損なうことなく所定量配合してなるシュガーレスチューイングソフトキャンディであって、チューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度が、製造後、長期間保存してもいずれもそれぞれ所定の範囲内に維持されるシュガーレスチューイングソフトキャンディにより課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシュガーレスチューイングソフトキャンディおよびその製法に関するものであり、さらに詳しくは、長期間保存後も優れた食味・食感およびチューイング性が維持された新規シュガーレスチューイングソフトキャンディおよびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にキャンディは、砂糖を主原料とする洋風飴菓子の総称で、砂糖などの煮詰め方によってハードキャンディとソフトキャンディに大別される。
すなわちキャンディは砂糖や水飴などの糖類に乳製品、油脂、果汁、澱粉、小麦粉、酸味料、気泡剤、結合剤、ゲル化剤、香料、着色料、などの副原料を所要に応じて適宜加えて煮詰めるのであるが、高温で加熱して水分含量を1から2質量%程度に調製して、硬く仕上げたものをハードキャンディと称し、ドロップ、タフィー、ブリットル、あめ玉などを代表例に挙げることができる。
【0003】
一方、低温で加熱して水分含量5〜20質量%、好ましくは6〜10質量%程度に柔らかく仕上げたものをソフトキャンディと称し、代表例としてキャラメルやヌガー、ゼリービーンズなどを挙げることができる。
【0004】
これらのソフトキャンディは口の中で適当に噛んで、そのチューイング性や弾力を楽しむことが多い。
糖アルコールの粉末を使用したソフトキャンディが多数提案されている(特許文献1〜5参照)。
【0005】
フォンダンとは、古くは砂糖を水に加熱・溶解して、煮詰めて濃縮し、これを冷却しながら、撹拌することにより微細な砂糖結晶を析出させて得られる半流動性で、適度の性状安定性のあるものをいい、一般的にはパンや洋菓子のデコレーション、ソフトケーキ、キャラメルなどに用いられる。
一方、砂糖による虫歯や血糖値上昇などを防ぐ目的でメソーエリスリトールを用いたフォンダン(特許文献6参照)、キシリトールを用いたフォンダン(特許文献7参照)、マルチトールを用いたフォンダン(特許文献8参照)、ラクチトールを用いたフォンダン(特許文献9参照)などの糖アルコールを用いたフォンダンが提案されている。
しかし、マンニトールは結晶化が速いために粗大結晶となり、砂糖フォンダンに匹敵するなめらかさを有するマンニトールフォンダンが得られない上、水への溶解度が低いので結晶濃度が高くならず、適度な性状安定性を備えたマンニトールフォンダンが得られていなかった。
そこでこの状況に鑑み、本発明者は、先に砂糖フォンダンに匹敵するなめらかさおよび性状安定性を備えたマンニトールフォンダンおよびそのようなマンニトールフォンダンを容易に製造する方法を提案した(特許文献10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−006171号公報
【特許文献2】特開平09−075005号公報
【特許文献3】特開平07−123923号公報
【特許文献4】特開平07−067537号公報
【特許文献5】特表2002−543817号公報
【特許文献6】特開平1−225458号公報
【特許文献7】特開平7−155109号公報
【特許文献8】特開平9−224577号公報
【特許文献9】特開昭64−2534号公報
【特許文献10】特願2006−037910号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように従来、糖アルコールを使用したシュガーレスソフトキャンディはあったが、長期間保存中に糖アルコールの結晶粗大化により、チューイング性や弾力性が低下し、食味・食感が劣化してしまう問題があった。
従来、糖アルコールのフォンダン(平均粒子径約30μm以下の微細結晶からなり砂糖フォンダンに匹敵するなめらかさおよび性状安定性を備えた半流動性物質)、特にマンニトールを用いたフォンダンを使用して、長期間保存後も糖アルコールの結晶粗大化を起こさず、チューイング性や弾力性を保持でき、食味・食感を維持できるシュガーレスチューイングソフトキャンディはなかった。
【0008】
本発明の第1の目的は、製造後、長期間保存しても、糖アルコールの結晶粗大化を起こさず、優れた食味・食感を維持できるとともに、優れたチューイング性や弾力性を維持できる新規シュガーレスチューイングソフトキャンディを提供することであり、
本発明の第2の目的は、そのような新規シュガーレスチューイングソフトキャンディを容易に製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解消するための本発明の請求項1記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディは、糖アルコールを主成分として含む糖質を含むチューイングソフトキャンディベースに、前記糖アルコールと同じ糖アルコールおよび/または異なる糖アルコールを使用したフォンダンを必須成分としてその結晶を損なうことなく所定量配合してなるシュガーレスチューイングソフトキャンディであって、チューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度が、製造後、長期間保存してもいずれもそれぞれ所定の範囲内に維持されることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディは、請求項1記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディにおいて、破断強度が25〜95N、付着強度が11N以下および引張強度が5〜50Nに維持されることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディは、請求項1あるいは請求項2記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディにおいて、糖アルコールを使用したフォンダンが、マンニトールを主成分とする針状微細結晶およびマンニトール以外の結晶析出調整剤としての非結晶性糖質を必須成分として所定量含むマンニトールフォンダンであることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディは、請求項1から請求項3のいずれかに記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディにおいて、キャンディ中の前記フォンダンの配合量が1〜20質量%であることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディの製法であって、糖アルコールを主成分として含む糖質に加水して加熱して煮詰温度まで煮詰めた糖液を、冷却した後必要な添加物を添加・混合した後、50〜70℃に冷却してソフトキャンディベースを調製し、この50〜70℃に冷却したソフトキャンディベースに、前記糖アルコールと同じ糖アルコールおよび/または異なる糖アルコールを使用したフォンダンを所定量配合・混合し、必要に応じて適宜カットして製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディは、糖アルコールを主成分として含む糖質を含むチューイングソフトキャンディベースに、前記糖アルコールと同じ糖アルコールおよび/または異なる糖アルコールを使用したフォンダンを必須成分としてその結晶を損なうことなく所定量配合してなるシュガーレスチューイングソフトキャンディであって、チューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度が、製造後、長期間保存してもいずれもそれぞれ所定の範囲内に維持されることを特徴とするものであり、前記チューイングソフトキャンディベースに、前記糖アルコールを使用したフォンダン(平均粒子径約30μm以下の微細結晶からなり砂糖フォンダンに匹敵するなめらかさおよび性状安定性を備えた半流動性物質)をその結晶を損なうことなく所定量配合してなるものであるので、製造後、長期間保存しても糖アルコールの結晶粗大化を起こさず、優れた食味・食感が維持されるとともに、チューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度がいずれもそれぞれ所定の範囲内に維持され、優れたチューイング性および弾力性が維持されるという顕著な効果を奏する。
【0015】
本発明の請求項2記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディは、請求項1記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディにおいて、破断強度が25〜95N、付着強度が11N以下および引張強度が5〜50Nに維持されることを特徴とするものであり、製造後、長期間保存しても優れた食味・食感が確実に維持されるとともに、優れたチューイング性および弾力性が確実に維持されるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0016】
本発明の請求項3記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディは、請求項1あるいは請求項2記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディにおいて、糖アルコールを使用したフォンダンが、マンニトールを主成分とする針状微細結晶およびマンニトール以外の結晶析出調整剤としての非結晶性糖質を必須成分として所定量含むマンニトールフォンダンであることを特徴とするものであり、 前記のようにマンニトールは結晶化が速いために従来の方法では粗大結晶となり、砂糖フォンダンに匹敵するなめらかさが得られなかったが、前記特許文献10記載のマンニトールフォンダンは砂糖フォンダンに匹敵するなめらかさおよび性状安定性などを備えたフォンダンであり、このマンニトールフォンダンを用いれば長期間保存後も優れた食味・食感およびチューイング性が容易に確実に維持されるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0017】
本発明の請求項4記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディは、請求項1から請求項3のいずれかに記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディにおいて、キャンディ中の前記フォンダンの配合量が1〜20質量%であることを特徴とするものであり、この特定の配合量範囲内であると、長期間保存後も優れた食味・食感およびチューイング性が確実に維持されるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0018】
本発明の請求項5は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディの製法であって、糖アルコールを主成分として含む糖質に加水して加熱して煮詰温度まで煮詰めた糖液を、冷却した後必要な添加物を添加・混合した後、50〜70℃に冷却してソフトキャンディベースを調製し、この50〜70℃に冷却したソフトキャンディベースに、前記糖アルコールと同じ糖アルコールおよび/または異なる糖アルコールを使用したフォンダンを所定量配合・混合し、必要に応じて適宜カットして製造することを特徴とするものであり、前記チューイングソフトキャンディベースに、前記糖アルコールを使用したフォンダンの結晶を損なうことなく所定量配合して混合できるので、製造後、長期間保存しても糖アルコールの結晶粗大化を起こさず、優れた食味・食感が維持されるとともに、チューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度が、所定の範囲内に維持され、優れたチューイング性および弾力性が維持されるシュガーレスチューイングソフトキャンディを容易に製造できるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明で用いるマンニトールフォンダンの1例の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明で用いるマンニトールフォンダンの1例の顕微鏡写真である。
図1において本発明で用いるマンニトールフォンダン1は、マンニトールを主成分とする針状微細結晶2およびこの針状微細結晶2の周辺に存在するマンニトール以外の結晶析出調整剤としての非結晶性糖質3からなっている。非結晶性糖質3を必須成分として所定量添加して結晶析出調整剤として用いたので、マンニトールの結晶化速度を調整できた結果、マンニトールを主成分とする針状微細結晶2を得ることができ、マンニトールフォンダン1は結晶濃度が高く、かつ砂糖フォンダンに匹敵するなめらかさおよび性状安定性を備えている。
【0021】
図1に示したマンニトールの針状微細結晶の平均長さLおよび直径DやL/Dは特に限定されるものではない。しかし平均長さLが30〜40μmの針状微細結晶が含まれていると、ざらつきは少ないが舌触りが悪く、フォンダンとしてはやや難点があり、また平均長さLが50μm以上の針状微細結晶が含まれていると、ざらつきがあり、フォンダンとして実用性に乏しくなる。一方、針状微細結晶の平均長さLが30μm以下であるとフォンダンがざらついた感じにならず、舌触りが良く、できたフォンダンが砂糖フォンダンに匹敵するなめらかさを有するので好ましい。
【0022】
マンニトールフォンダン中のマンニトールと非結晶性糖質の質量比は、(マンニトール:非結晶性糖質)=80:20〜10:90が好ましく、さらに好ましくは、70:30〜20:80である。
マンニトールの質量比が80を越えると、その結晶性の良さと溶解度の低さから結晶化速度が速く粗大結晶が析出してフォンダンがざらつき、固くなり砂糖フォンダンに匹敵する実用性に欠けるので好ましくない。一方、マンニトールの質量比が10を下回ると、結晶濃度が低く良好なフォンダンにならない。
【0023】
本発明でマンニトールフォンダンの製造に用いる非結晶性糖質は、水溶液の状態でいかなる濃度、温度域においても結晶化しない糖質をいう。
非結晶性糖質の例としては、具体的には水飴、還元水飴、還元麦芽糖水飴、カップリングシュガー、オリゴ糖類(例えば、乳果オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖など)などの他に、グルコマンナン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、セルロース、アラビアガム、プルラン、寒天、ビートファイバー、アルギン酸ナトリウムなどの食物繊維、デンプン、プルラン、デキストリンなどの多糖類が挙げられる。
【0024】
マンニトールフォンダンの製造例を次に示す(前記特許文献10参照)。
マンニトールに前記非結晶性糖質と水を必須成分として所定量加えて混合液とした後、この混合液を昇温して各成分を均一に溶解しそして煮詰めた後、約95℃程度の所定の温度まで冷却し、冷却を続けながら高速攪拌下に約30分〜約1時間微細な結晶が得られるまで続けて、マンニトールを主成分とする平均長さ30μm以下の針状微細結晶を得ることにより、砂糖フォンダンに匹敵するなめらかさおよび性状安定性を備えた結晶濃度の高いマンニトールフォンダンが得られる。
【0025】
本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディ中には、マンニトールの針状微細結晶が損なわれることなく分散して存在することを顕微鏡により確認することができる。
【0026】
本発明において、マンニトールを主成分とする針状微細結晶およびマンニトール以外の結晶析出調整剤としての非結晶性糖質を必須成分として所定量含む前記特許文献10記載のマンニトールフォンダンを用いると、本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディを長期間保存後も糖アルコールの結晶粗大化を起こさず、優れた食味・食感およびチューイング性が容易に維持されるので好ましい。
【0027】
糖アルコールを用いたフォンダンを使用せず、糖アルコールの粉末(平均粒子径約30〜40μmの結晶からなる粉末)を用いた従来のシュガーレスチューイングソフトキャンディは、後述するように37℃、80%RH条件下において包装状態で加速保存試験をすると1週間と経たずに糖アルコールの結晶粗大化が起り、食味・食感が変化し、長期間保存後チューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度が変化してしまう。
【0028】
それに対して糖アルコールを用いたフォンダンとして、例えばマンニトールフォンダンを使用した本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディは、後述するように37℃、80%RH条件下において包装状態で加速保存試験をすると糖アルコールの結晶粗大化を起こさず、優れた食味・食感が1ヶ月以上維持されるとともに、チューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度が安定しており、1ヶ月以上の加速保存試験に耐えうる。
【0029】
このように、糖アルコールの粉末を使用した従来のシュガーレスチューイングソフトキャンディが長期間保存後、糖アルコールの結晶粗大化が起り、食味・食感およびチューイング性が低下するのに対して、本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディは、長期間保存しても糖アルコールの結晶粗大化が起らず、食味・食感が維持されるとともに、チューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度がそれぞれ所定の範囲内に維持される。
【0030】
なお前記破断強度、付着強度および引張強度は下記の方法で測定したものである。試料の製造直後および試料を所定の条件下に長期間保存した後に測定する。
測定機器:サン科学社製、SUN RHEO METER、モデル:COMPAC−100アダプター:破断強度・付着強度にはアダプターNo.35を使用し、引張強度にはアダプターNo.36(特注)を使用する。
試料重量:1.2g
【0031】
破断強度の測定法:
上記試料を直径9mm×高さ10mmの円柱に成型し、25℃の環境下において試料の中央部に前記アダプターを速度1mm/sで当接して剪断破断していく。その際の強度を縦軸に、横軸に時間を記載したグラフを作成し、このグラフから試料の破断時の強度の最低値および最高値を求める。
【0032】
付着強度の測定法:
上記試料を直径9mm×高さ10mmの円柱に成型し、25℃の環境下において試料の中央部に前記アダプターを速度1mm/sで当接して剪断破断させた後、アダプターを同じ速度で戻す。この際にアダプターに試料が付着する強度を縦軸に、横軸に時間を記載したグラフを作成し、このグラフから試料の付着時の強度の最低値および最高値を求める。
【0033】
引張強度の測定法:
上記試料を直径7mm×高さ20mmの円柱に成型し、30℃の環境下において試料の両端部を前記アダプターではさみ、速度1mm/sでアダプターの一方を引っ張り、その際の強度を縦軸に、横軸に時間を記載したグラフを作成し、このグラフから試料の切断時の強度の最低値および最高値を求める。
【0034】
製造後の破断強度が25N未満であると、容易に剪断破断されてしまいチューイング性が劣る恐れがあり、95Nを超えると硬過ぎてソフトさが失われる恐れがある。
付着強度は0Nでもよいが11Nを超えると歯へ付着し過ぎる恐れがある。
同様に引張強度が5N未満であると、チューイング性が劣る恐れがあり、50Nを超えると弾性が強過ぎて噛み切れない恐れがある。
【0035】
そして、シュガーレスチューイングソフトキャンディの製造後、長期間保存した際に、破断強度が25〜95N、付着強度が11N以下、引張強度が5〜50Nの範囲を外れるとチューイング性および食味・食感が良好な状態に維持されない。
【0036】
本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディ中の、糖アルコールを用いたフォンダンの配合量は1〜20質量%の範囲であることが好ましい。
糖アルコールを用いたフォンダンの配合量がこの範囲外であると食味・食感およびチューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度が、長期間保存した際に維持されない恐れがある。
【0037】
本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディを製造するには例えば次のようにして製造する。
先ず、糖アルコールを主成分として含む糖質に加水をして加温しながら煮詰め温度まで糖液を煮詰め、その後冷却しながら油脂、乳化剤、水で膨潤させたゼラチン、香料、酸味料、たんぱく質などを加え混合した後、50〜70℃まで冷却してソフトキャンディベースを調製し、このソフトキャンディベースに、前記糖アルコールと同じ糖アルコールおよび/または異なる糖アルコールのフォンダンを所定量配合・混合してソフトキャンディ生地とする。そしてこのソフトキャンディ生地をシート状にして30℃程度まで冷却後、カットしてソフトキャンディを得る。
【0038】
本発明の製法によれば、前記チューイングソフトキャンディベースに、前記糖アルコールと同じ糖アルコールおよび/または異なる糖アルコールを使用したフォンダンの結晶を損なうことなく所定量配合して混合できるので、優れた食味・食感が得られそして維持されるとともに、チューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度が、製造後、長期間保存してもそれぞれ所定範囲内に維持される。
【0039】
本発明の製法において、50〜70℃まで冷却せず、70℃を超え例えば約100℃のソフトキャンディベースに、糖アルコールのフォンダンを配合・混合すると糖アルコールのフォンダンの結晶が損なわれる恐れがあり、その結果食味・食感およびチューイング性が長期間保存した際に維持されない恐れがある。
逆に、本発明の製法において、50℃未満で例えば30℃まで冷却したソフトキャンディベースに、糖アルコールのフォンダンを配合・混合しようとすると、フォンダンが混じり難い上、混合時の剪断力により糖アルコールのフォンダンの結晶が損なわれる恐れがあり、その結果、食味・食感およびチューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度が、長期間保存した際に、維持されない恐れがある。
【0040】
本発明において、チューイングソフトキャンディベースおよびフォンダンを製造する際に使用する糖アルコールとは、自然界にも存在する糖アルコールでもよく、一般的には糖を高圧接触還元(水素添加)することでカルボニル基( >C=O) がヒドロキシル基(水酸基。=OH)に変化した多価アルコールでもよく、これらの2つ以上の混合物でもよい。具体的には、例えば、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、還元パラチノース、ラクチトール、マルトテトラオース、マトトリイトール、還元水飴、還元麦芽糖水飴などを挙げることができる。
グルコース(ブドウ糖)からソルビトール、マンノースからマンニトール、エリスロースからエリスリトール、果糖(フルクトース)からソルビトールとマンニトールがえられる。
これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0041】
糖アルコールは、熱にも安定した化合物で、もとの糖にくらべて酸、アルカリによる分解や着色、メイラード反応とよばれる褐色化、酸素による酸化がおきない。そのほか、保湿性、粘性、難発酵性、非う蝕性(虫歯になりにくい)、タンパク質変性防止作用、低カロリーなどの性質があるため、甘味用途のほかにも広く食品製造にもちいられている。
【0042】
キシリトール、ソルビトール、マルチトール(還元麦芽糖)は、おもに低カロリー甘味料として利用されている。溶解時に吸熱作用があり口腔内で冷涼感があるため、非う蝕性とともに爽快な甘味料として、シュガーレス・チューインガム、菓子、飲料、卓上甘味料などに広くもちいられている。また食品以外にも、医薬品、合成原料(ソルビトールはアスコルビン酸の原料)、化粧品など用途が広い。
【0043】
自然界では、ソルビトールはナシに3.3%、マンニトールは海藻やキノコ、エリスリトールはブドウ、ナシ、スイカ、メロンなどの果実に微量、キノコに0.3〜5%、醤油、ワイン、清酒など発酵生産物にも含まれている。またシラカバの木糖キシロースから作られるキシリトールは、野菜や果物に多く含まれている。
【0044】
本発明で用いるマンニトールは、D−マンニトール、L−マンニトール、D,L−マンニトールから選ばれる少なくとも1種であればよく、特に限定されるものではない。
しかし、L−マンニトールやD,L−マンニトールは天然界に存在せず、現時点では合成も難しく入手困難であるのに対して、D−マンニトールは下記のように日本において食品添加物として認可されており、安全性が高く、市販品もあり容易に入手できるので、本発明において好ましく使用できる。
【0045】
本発明で用いる乳化剤としては食用乳化剤を好ましく用いることができる。食用乳化剤の具体例としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンなどを挙げることができる。これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0046】
本発明で用いる油脂、ゼラチン、香料、酸味料、たんぱく質などの成分については、通常キャンディの生産に用いられるものを用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下に本発明を実施例および比較例により更に具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
糖質としてマンニトール粉末8質量部、還元麦芽糖水飴75質量部を混合して十分量の水を加え煮詰め温度140℃まで加温する。煮詰め温度到達後に糖質100質量部に対して油脂としてショートニング5質量部、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル1.8質量部を入れて混合し、3倍量の水で膨潤させたゼラチン水溶液8.8質量部を加えて混合し、適宜香料、色素、酸味料を加えた後、60℃まで冷却しソフトキャンディベースを調製した。
そして、この60℃まで冷却したソフトキャンディベースに別途前記特許文献10に従って調製したマンニトールフォンダンを7質量部加えて混合し、ソフトキャンディ生地を調製した。このソフトキャンディ生地をシート状にして30℃まで冷却後、一口大にカットし、本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディ(A)を作った。
【0048】
前記の試験法により、本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディ(A)の製造直後およびアルミ袋で密閉し37℃、80%RHの条件下で恒温恒湿機中に35日保管した後の破断強度、付着強度および引張強度を10回測定し、その最低値と最高値を表1に示す。
【0049】
(実施例2)
糖質としてマンニトール粉末8質量部、還元水飴(HS−20:(株)林原製)75質量部を混合して十分量の水を加え煮詰め温度125℃まで加温する。煮詰め温度到達後に糖質100質量部に対して油脂としてショートニング5質量部、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル1.8質量部を入れて混合し、3倍量の水で膨潤させたゼラチン水溶液8.8質量部を加えて混合し、適宜香料、色素、酸味料を加えた後、60℃まで冷却しソフトキャンディベースを調製した。
そして、この60℃まで冷却したソフトキャンディベースに別途前記特許文献10に従って調製したマンニトールフォンダンを15質量部加えて混合し、ソフトキャンディ生地を調製した。このソフトキャンディ生地をシート状にして30℃まで冷却後、一口大にカットし、本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディ(B)を作った。
前記の試験法により、本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディ(B)の製造直後およびアルミ袋で密閉し37℃、80%RHの条件下で恒温高湿機中に35日保管した後の破断強度、付着強度および引張強度を10回測定し、その最低値と最高値を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
糖質としてキシリトール粉末8質量部、還元水飴HS−20 75質量部を混合して十分量の水を加え煮詰め温度130℃まで加温する。煮詰め温度到達後に油脂としてショートニング5質量部、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル1.8質量部を入れて混合し、3倍量の水で膨潤させたゼラチン水溶液8.8重量部を加えて混合し、適宜香料、色素、酸味料を加えた後60℃まで冷却してソフトキャンディベースを調製した。
そして、このソフトキャンディベースに別途公知の方法に従って調製したキシリトールとソルビトールのフォンダンを7質量部加えて混合しソフトキャンディ生地を調製した。このソフトキャンディ生地をシート状にして30℃まで冷却後、一口大にカットし、本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディ(D)を作った。
前記の試験法により、本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディ(D)の製造直後およびアルミ袋で密閉し37℃、80%RHの条件下で恒温恒湿機中に35日保管した後の破断強度、付着強度および引張強度を10回測定し、その最低値と最高値を表1に示す。
【0051】
(比較例1)
実施例1で使用したマンニトールフォンダンの替わりにマンニトール粉末[マンニトール粉末(商品名)、東和化成工業(株)製]を用いた以外は実施例1と同様にして比較のためのシュガーレスチューイングソフトキャンディ(C)を作り、実施例1と同様にして破断強度、付着強度および引張強度を10回測定し、その最低値と最高値を表1に示す。
【0052】
表1から、実施例1および実施例2および実施例3のマンニトールフォンダンを使用した本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディ(A)および(B)および(D)は、糖アルコールの結晶粗大化を起こさず、破断強度、付着強度および引張強度が、製造後、長期間保存しても破断強度が25〜95N、付着強度が11N以下および引張強度が5〜50Nに維持されチューイング性に優れていることが判る。
それに対して比較例1のマンニトールフォンダンの替わりにマンニトール粉末を用いたシュガーレスチューイングソフトキャンディ(C)は製造後、長期間保存すると糖アルコールの結晶粗大化が起こり、破断強度は20〜95Nの範囲内にあるものの高くなる傾向にあり、その結果固くなることが判る。また付着強度は11N以下に維持されるが、引張強度が所定の範囲に維持されず、その結果、チューイング性に劣ることが判る。
【0053】
【表1】

【0054】
また、本発明の実施例1および実施例3のシュガーレスチューイングソフトキャンディ(A)および(D)と、比較例1のシュガーレスチューイングソフトキャンディ(C)を、アルミ袋で密封し、37℃、80%RHの条件下の恒温恒湿機中にそれぞれ7日、14日、21日、28日、35日間保管し、下記の試験法により食味・食感を評価した。比較対照として、シュガーレスチューイングソフトキャンディ(A)をアルミ袋で密封し、20℃、66%RHの条件下の恒温恒湿機中に保管したものを用い、食味・食管の違いを評価した。その評価結果を表2に示す。
【0055】
評価方法:官能評価法
評価結果:◎;20℃、66%RHに保管品したシュガーレスチューイングソフトキャンディ(A)に比べ食味・食感が変化なし。
○;20℃、66%RHに保管品したシュガーレスチューイングソフトキャンディ(A)に比べ食味・食感が変化を起こしかけている。
△;20℃、66%RHに保管品したシュガーレスチューイングソフトキャンディ(A)に比べ食味・食感が確実に変化をしているのが判る。
×;20℃、66%RHに保管品したシュガーレスチューイングソフトキャンディ(A)に比べて食味・食感が変わってしまった。
【0056】
【表2】

【0057】
表2から、実施例1および実施例3のシュガーレスチューイングソフトキャンディ(A)および(D)は、長期間保存しても、糖アルコールの結晶粗大化を起こさず、20℃66%RH保管品と同様の優れた食味・食感を維持していることが判る。
しかし、比較例1のシュガーレスチューイングソフトキャンディ(C)は、7日で20℃66%RH保管品に比べて変化を起こしかけており、14〜28日で20℃66%RH保管品に比べて確実に変化を起こしており、35日で20℃66%RH保管品に比べて、糖アルコールの結晶粗大化により、食感は固く、かつ、ポサポサになり食味・食感が変わってしまい、保存安定性に劣ることが判った。
【0058】
(比較例2)
前記特許文献2の実施例1に記載の方法に従ってチューイングキャンディー(E)を調製した。
すなわち、還元澱粉糖化物(BX=70.0)500gとマルチトールシロップ(BX=75.0)450gおよびマンニトール200gを加え、加熱撹拌しながら完全に溶解する。これに乳化剤3.0gを植物硬化油80gに溶解したものを添加し、温度が約130〜約135℃になるまで煮詰め、チューイングキャンディーベース1,000gを調製した。これを約70〜約80℃に保温したニーダーに入れ、水30gにゼラチン20gを溶解したものを加え良く混捏し、結晶を充分析出させた。
さらに、クエン酸15g、オレンジフレーバー1.5gおよびβ−カロチン色素製剤2gを添加し良く混捏した。冷却後、成型、切断し、チューイングキャンディーを調製した。
【0059】
前記チューイングキャンディーベースを約70〜約80℃に保温したニーダーに入れ、水30gにゼラチン20gを溶解したものを加え良く混捏し、結晶を充分析出させた後、常温まで冷却した試料を顕微鏡で観察するとともに、化学分析を行った結果、結晶はマンニトール粉末(平均粒子径約30〜40μmの結晶からなる粉末)であった。
【0060】
調製したチューイングキャンディー(E)について、実施例1と同様にして製造後、破断強度、付着強度および引張強度を10回測定し、その最低値と最高値を表3に示す。
【0061】
【表3】

表3から、製造直後において、破断強度、および引張強度が所定の範囲に維持されず、チューイング性劣ることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のシュガーレスチューイングソフトキャンディは、糖アルコールを主成分として含む糖質を含むチューイングソフトキャンディベースに、前記糖アルコールと同じ糖アルコールおよび/または異なる糖アルコールを使用したフォンダンをその結晶を損なうことなく所定量配合してなるものであるので、製造後、長期間保存しても糖アルコールの結晶粗大化を起こさず、優れた食味・食感が維持されるとともに、チューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度がいずれもそれぞれ所定の範囲内に維持され、優れたチューイング性および弾力性が維持されるという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0063】
1 マンニトールフォンダン
2 針状微細結晶
3 非結晶性糖質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖アルコールを主成分として含む糖質を含むチューイングソフトキャンディベースに、前記糖アルコールと同じ糖アルコールおよび/または異なる糖アルコールを使用したフォンダンを必須成分としてその結晶を損なうことなく所定量配合してなるシュガーレスチューイングソフトキャンディであって、
チューイング性を表す破断強度、付着強度および引張強度が、製造後、長期間保存してもいずれもそれぞれ所定の範囲内に維持されることを特徴とするシュガーレスチューイングソフトキャンディ。
【請求項2】
破断強度が25〜95N、付着強度が11N以下および引張強度が5〜50Nに維持されることを特徴とする請求項1記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディ。
【請求項3】
糖アルコールを使用したフォンダンが、マンニトールを主成分とする針状微細結晶およびマンニトール以外の結晶析出調整剤としての非結晶性糖質を必須成分として所定量含むマンニトールフォンダンであることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディ。
【請求項4】
キャンディ中の前記フォンダンの配合量が1〜20質量%であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のシュガーレスチューイングソフトキャンディの製法であって、
糖アルコールを主成分として含む糖質に加水して加熱して煮詰温度まで煮詰めた糖液を、冷却した後必要な添加物を添加・混合した後、50〜70℃に冷却してソフトキャンディベースを調製し、この50〜70℃に冷却したソフトキャンディベースに、前記糖アルコールと同じ糖アルコールおよび/または異なる糖アルコールを使用したフォンダンを所定量配合・混合し、必要に応じて適宜カットして製造することを特徴とするシュガーレスチューイングソフトキャンディの製法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−55960(P2013−55960A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−280611(P2012−280611)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2006−123647(P2006−123647)の分割
【原出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(508293162)三星食品株式会社 (4)
【Fターム(参考)】