説明

シングルレバー式混合水栓

【課題】止水位置且つ冷水吐水位置に配置されているハンドルを最大吐水位置に向けて回動操作する際に、ハンドルを意図せず温水吐水位置に向けて回動させてしまうことを防止することができるシングルレバー式混合水栓を提供する。
【解決手段】把持部4dは、冷水吐水位置において水栓本体3の正面側を向くように延設され、且つ、冷水吐水位置における止水位置から最大吐水位置まで回動することで、正面視でガイド体の軸心Cを超えないよう近接するように延設され、使用者がハンドル4を意図せず温水吐水位置に向けて回動させてしまうことを防ぎ、吐水管から吐水される水に温水を混合させてしまうことなく所望の冷水のみを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水路及び冷水路と、温水路と冷水路とからの水流を吐水可能な吐水管と、温水路と冷水路との少なくとも一方から吐水管への水流の流量を調整する弁体と、上部に係止部を有するとともに下部が弁体に接続され、水平方向を向く軸心によって回動可能に枢支されるレバーと、から構成された水栓本体と、係止部に係止する被係止部及び使用者が把持可能に延設された把持部を有し、水栓本体の正面視の右側で弁体が冷水路のみを開放する冷水吐水位置及び、水栓本体の正面視の左側で弁体が温水路のみを開放する温水吐水位置の間で、冷水と温水との混合比を調整しながら水平方向に回動可能であるとともに、吐水管からの吐水を停止させる下方側の止水位置と吐水管からの吐水量が最大となる上方側の最大吐水位置との間で、吐水管からの吐水量を調整しながら垂直方向に回動可能であるハンドルと、を備えたシングルレバー式混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐水を行うための吐水管と、下方側から上方側に向けて垂直方向に回動操作することで吐水管から吐水する水の水量調節を行うとともに、水平方向の回動操作によって吐水管から吐水される熱水(温水)と冷水の混合比の調節を行う操作レバー(ハンドル)と、を備えるシングルレバー式混合水栓がある。このようなシングルレバー混合水栓には、操作レバーの操作者のほぼ正面に向き合う位置を吐水管から冷水のみが吐水される位置(冷水吐水位置)としているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−62787号公報(第5頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の実施例2に記載の「逆くの字」形シングルレバー式混合水栓にあっては、所望の冷水のみが吐水される位置で使用者が操作レバー(ハンドル)を上方側に向けて回動操作すると、把持部がレバーの軸心位置よりも右方に位置することから、レバーを上方側に向けて回動操作する力が左方向にもはたらくことで、勢い余って操作レバーが水平方向にも回動し、吐水管から吐水される水に熱水(温水)が混入してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、止水位置且つ冷水吐水位置に配置されているハンドルを最大吐水位置に向けて回動操作する際に、ハンドルを意図せず温水吐水位置に向けて回動させてしまうことを防止することができるシングルレバー式混合水栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のシングルレバー式混合水栓は、
温水路及び冷水路と、前記温水路と前記冷水路とからの水流を吐水可能な吐水管と、前記温水路と前記冷水路との少なくとも一方から前記吐水管への水流の流量を調整する弁体と、上部に係止部を有するとともに下部が前記弁体に接続され、水平方向を向く軸心によって回動可能に枢支されるレバーと、から構成された水栓本体と、
前記係止部に係止する被係止部及び使用者が把持可能に延設された把持部を有し、前記水栓本体の正面視の右側で前記弁体が前記冷水路のみを開放する冷水吐水位置及び、前記水栓本体の正面視の左側で前記弁体が前記温水路のみを開放する温水吐水位置の間で、冷水と温水との混合比を調整しながら水平方向に回動可能であるとともに、前記吐水管からの吐水を停止させる下方側の止水位置と前記吐水管からの吐水量が最大となる上方側の最大吐水位置との間で、前記吐水管からの吐水量を調整しながら垂直方向に回動可能であるハンドルと、
を備えたシングルレバー式混合水栓であって、
前記把持部は、前記冷水吐水位置において前記水栓本体の正面側を向くように延設され、且つ、前記冷水吐水位置における前記止水位置から前記最大吐水位置まで回動することで、正面視で前記ガイド体の前記軸心の右側から該軸心を超えないように、該軸心に近接していくように延設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、使用者がシングルレバー式混合水栓を使用する際に、冷水吐水位置に配置された把持部が水栓本体の正面に向かう使用者と対向するので、使用者は、把持部を止水位置から最大吐水位置に向けて上方に回動させるだけの操作で冷水のみを使用することができるとともに、使用者が把持部を把持してハンドルを冷水吐水位置における止水位置から最大吐水位置に向けて回動させ、最大吐水位置で回動が規制され停止した瞬間に勢い余った使用者の手の動きを止められたことによる慣性力によって、ハンドルに平面視で時計回り向きにはたらくモーメントを最小限に抑えることができるため、使用者がハンドルを意図せず温水吐水位置に向けて回動させてしまうことを抑制し、吐水管から吐水される水に温水を混合させてしまうことなく所望の冷水のみを使用することができる。
【0007】
本発明のシングルレバー式混合水栓は、
前記把持部の下部は、正面視で下方に向けて突出する弧状に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、把持部が正面視で矩形状に形成された場合、使用者の手が把持部の底面及び左右側面に接触することで、使用者がハンドルを止水位置から最大吐水位置に向けて回動させるにつれて使用者の手の把持姿勢が変わってしまうが、把持部の下部を正面視で下方に向けて突出する弧状に形成することで、使用者がハンドルを止水位置から最大吐水位置に向けて回動させるにつれて、把持部を把持している使用者の手を把持部の下部に沿って摺動させ、使用者の手の把持姿勢を止水位置から最大吐水位置にかけて維持することができるので、最大吐水位置に向けてハンドルを垂直方向に回動させる力を、温水吐水位置に向けて回動させる水平方向に変化させることを防止することができる。
【0008】
本発明のシングルレバー式混合水栓は、
前記水栓本体の外周面には、第1認識部が配置されており、前記ハンドルの外周面には、前記把持部が前記冷水吐水位置に配置されることで前記第1認識部と合致する第2認識部が配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、第1認識部と第2認識部とが合致していない場合、使用者に対して吐水管から温水と冷水との混合水が吐水されると認識させることができるので、使用者が温水を使用しない場合には、使用者に両認識部が合致するように把持部を冷水吐水位置まで水平回動させて所望の冷水のみを使用させるよう注意喚起できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例におけるシングルレバー式混合水栓を示す斜視図である。
【図2】図6(a)におけるハンドル及び水栓本体のA−A断面図である。
【図3】水栓本体及びハンドルを示す正面図である。
【図4】ハンドルを示す側面図である。
【図5】冷水吐水位置且つ止水位置におけるハンドルを示す平面図である。
【図6】(a)は、冷水吐水位置且つ止水位置におけるハンドルを示す正面図であり、(b)は、(a)と同じくケース体内における弁体の位置を示す概略の平面断面図である。
【図7】(a)は、冷水吐水位置且つ最大吐水位置におけるハンドルを示す正面図であり、(b)は、(a)と同じくケース体内における弁体の位置を示す概略の平面断面図である。
【図8】(a)は、最大吐水位置において冷水吐水位置から温水吐水位置に向けてハンドルを回動させる際のケース体内における弁体の位置を示す概略の平面断面図であり、(b)は、(a)と同じくハンドルを温水吐水位置まで回動させた際のケース体内における弁体の位置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るシングルレバー式混合水栓を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0011】
実施例に係るシングルレバー式混合水栓につき、図1から図8を参照して説明する。以下、図2及び図4の紙面左側をシングルレバー式混合水栓の正面側(前方側)とし、図3、図6(a)、図7(a)の紙面手前側をシングルレバー式混合水栓の正面側(前方側)とし、図5、図6(b)、図7(b)、図8(a)、図8(b)の紙面下方側をシングルレバー式混合水栓の正面側(前方側)として説明する。
【0012】
図1の符号1は、本発明の適用されたシングルレバー式混合水栓である。このシングルレバー式混合水栓1は、使用者の正面側に向けて伸びるとともに先端から水を吐水する吐水管2と、吐水管2から吐水される水の流量及び水温を調整するための水栓本体3と、水栓本体3の上部に取り付けられ、使用者が操作することで水栓本体3における吐水管2から吐水される水の流量及び水温の調整を可能とするハンドル4と、を備えており、例えば、家庭内のキッチンにおけるシンクに取り付けられ、調理や食器の洗浄時に使用されている。
【0013】
このハンドル4は、水栓本体3に対して水平方向に略90度回動して吐水管2から吐水される水の温度を調整可能となっているとともに、水栓本体3に対して垂直方向に回動して吐水管2から吐水される水の吐水量を調整可能となっている。以下、水栓本体3について詳述する。
【0014】
図1及び図2に示すように、上水管から冷水を供給する冷水路6と、給湯器等の加熱装置を介して上水管等に接続され、ケース体5内に加熱装置で加熱された温水を供給する温水路7とは、水栓本体3が備えた上方に向けて開口する略円筒形状のケース体5に接続されている(図示せず)。
【0015】
ケース体5の下方には、ケース体5内に供給された冷水と温水とを吐水するための吐水管2が取り付けられている。また、ケース体5の外方には、ケース体5を外面視から被覆するためのカバー体8が配置されており、このカバー体8が図示しないシンク本体に固定されている。図3に示すように、カバー体8の正面には、第1認識部8aが形成されている。この第1認識部8aは、正面視で下方から上方にかけて左方側に傾斜するように形成されているとともに、使用者が視認し易いようにカバー体8及びハンドル4の他の箇所とは異なる色で彩色が施されている。
【0016】
図6(b)に示すように、ケース体5の底面の正面側の右部には、冷水路6に連通した冷水口5aが形成されている。一方、ケース体5の底面の正面側の左部には、温水路7に連通した温水口5bが形成されている。図2及び図6(b)に示すように、ケース体5の底面の略中央部には、吐水管2の配管2aが連通した吐水口5cが形成されている。
【0017】
また、ケース体5の底面上には、セラミック等の材質によって構成され、ケース体5の内径よりも小径に形成された平面視で円形状の弁体9が配置されている。この弁体9の上部には、後述するレバー11の下端部が嵌合する嵌合穴9aが形成されており、弁体9の下部には、下方に向けて開口する流路9bが形成されている。
【0018】
ケース体5の上端部には、略円筒形状(図示せず)に形成されたガイド体10がケース体5内に挿入配置されている。このガイド体10は、後述するレバー11の水平方向の回動とともに、ケース体5と同一の垂直方向を向く軸心C周りにケース体5に対して平面視における時計回り方向及び反時計回り方向に所定角度回動可能となっている(図5参照)。尚、本実施例におけるシングルレバー式混合水栓1は、構成は省略するが、ガイド体10の平面視における反時計回り方向側の回動限界位置において、ガイド体10に平面視における時計回り方向に力がはたらいても流路9bと温水口5bとが連通しないよう、約5度の遊びを有している。
【0019】
このガイド体10内には、軸心Cと直交するように、ガイド体10内で水平方向を向く枢軸10aによって垂直方向に回動可能にレバー11が枢支されている。このレバー11の上端部は、本実施例における係止部として平面視で正方形状の凸部11aが形成されるとともに、下端部は、球状に形成され、弁体9の上部に形成された嵌合穴9aに嵌合されている。
【0020】
このため、弁体9は、レバー11とともにガイド体10が水平方向に回動することで、ケース体5内でガイド体10と同一方向に水平回動するとともに、レバー11が垂直方向に回動することで、ケース体5内で前後方向に水平移動するようになっている。
【0021】
このようにすることで、弁体9は、前述のハンドル4の水平方向及び垂直方向の回動によってケース体5の底面上を移動し、冷水口5a、温水口5b及び吐水口5cを所望の開度で開状態若しくは閉状態とすることで、冷水口5a、温水口5bと吐水口5cとを連通可能として、吐水管2から使用者の所望する温度及び流量の水を吐水させることができるようになっている。
【0022】
図3、図4及び図5に示すように、ハンドル4は、円筒状のハンドル本体4aを備えている。このハンドル本体4aの下部における平面視での中央には、平面視でレバー11の凸部11aと補完形状をなす本発明における被係止部としての凹部4bが形成されている。
【0023】
また、ハンドル本体4aの正面側の下端縁は、ハンドル本体4aの他の下端部よりも僅かに下方に向けて延設されており、その正面には、第2認識部4cが形成されている。この第2認識部は、使用者が視認し易いように、第1認識部8aと同一の色で彩色が施されている。
【0024】
尚、本実施例では、第1認識部8a及び第2認識部4cは、前述のようにカバー体8及びハンドル4の他の部分とは異なる彩色が施されることで、使用者が視認し易いようにしたが、これに代えて、第1認識部8a及び第2認識部4cにブランドロゴやエコマーク等の環境ラベルを施すようにしてもよい。
【0025】
また、ハンドル本体4aの上端右部からは、正面側にかけて上方に傾斜をなす把持部4dが、使用者が把持可能なように延設されている。特に、把持部4dの先端側の下部4fは、使用者が把持部4dを把持し易いように、正面視で下方に向けて突出する弧状に形成されている。
【0026】
このように構成されたハンドル4は、図3に示すように、水栓本体3の上方から凸部11aに凹部4bを嵌合させることで、把持部4dが後述する冷水吐水位置において正面側に向くように配置できる。このとき、図5、図6(a)及び図6(b)に示すように、水栓本体3において、弁体9は、冷水口5a及び温水口5bを閉塞した状態で流路9bを冷水口5aの近傍に配置されるとともに、枢軸10aは、平面視で正面側左方から背面側右方を向くように配置される。更にこのとき、第1認識部8aと第2認識部4cとの上下位置及び左右位置が合致し、第1認識部8aは、第2認識部4cに完全に被覆される。
【0027】
この把持部4dが正面側を向くとともに弁体9の流路9bが冷水口5aと温水口5bとのいずれの上方にも移動しておらず、吐水管2から水が吐水されないハンドル4の位置が、ガイド体10の平面視における反時計回り方向側の回動限界位置であり、本実施例の水平方向における冷水吐水位置且つ、垂直方向における止水位置である。
【0028】
また、この状態から、図7(a)及び図7(b)に示すように、使用者が把持部4dを把持するとともに、ハンドル4を垂直上方向に回動させ、弁体9の流路9bを冷水口5aの上方の略全体に亘って配置させ、すなわち、流路9bを介して冷水口5aと吐水口5cとを連通させる。このハンドル4の位置を、本実施例の水平方向における冷水吐水位置且つ、垂直方向における最大吐水位置とする。
【0029】
この冷水吐水位置における最大吐水位置においては、流路9bが平面視で冷水口5aの略全体と吐水口5cの双方に亘って上方に配置されているため、冷水口5aから流路9bを介して吐水口5cに冷水が流れ込む。このため、吐水管2からは、冷水のみが最大量吐水されるようになっており、使用者が止水位置から最大吐水位置にかけてハンドル4を垂直回動させることによって、吐水管2からの吐水量を調整可能となっている。
【0030】
尚、最大吐水位置において使用者がハンドル4を止水位置から最大吐水位置にかけて枢軸10a周りに垂直回動させることによって、把持部4dは、正面視で軸心Cに近接する軌跡を描きながら上方に移動するとともに、ハンドル4が最大吐水位置に到達することで、把持部4dにおける最も冷水吐水位置側である右端部4eが軸心Cを超えない位置で規制され停止する。
【0031】
その際には、勢い余った使用者の手の動きが止められたことによる慣性力によって平面視で時計回り向きにモーメントがはたらくが、このモーメントの大きさは右端部4eが正面視で軸心Cを超えない位置において最小限に抑えることができる。
【0032】
その結果、弁体9の底面とケース体5の底面との間で生じる摩擦力も相俟って、温水口5bからと水口5cへの温水の供給が阻止され、吐水管2から冷水のみを吐水可能となっている。また、ハンドル4が前記平面視で時計回り向きのモーメントによって僅かに時計回り向きに回動しても、その回動角度が前述したガイド体10の有する遊びの範囲に収まることで、温水口5bから吐水口5cへの温水の供給を阻止し、吐水管2から冷水のみを吐水可能となっている。
【0033】
また、第1認識部8aは、前述のように使用者がハンドル4を最大吐水位置において止水位置から最大吐水位置にかけて垂直回動させることによって、ハンドル4の回動とともに正面視で左上方に向けて移動し、第1認識部8aは、第2認識部4cの移動した軌跡に沿って下部から上部にかけて順次露出していくようになっている。
【0034】
尚、吐水管2から冷水のみではなく、冷水と温水との混合水や温水のみを吐水させたい場合には、使用者は、ハンドル4を前述の冷水吐水位置における最大吐水位置から、図5、図8(a)及び図8(b)に示すように、平面視で時計周りに回動(本実施例では約90度)回動させればよい。
【0035】
このハンドル4の水平方向の回動の途上では、弁体9は、ハンドル4とともに回動することで、順次流路9bを冷水口5aの上方から平面視で時計回りに移動させていく。同時に、温水口5bの上方に流路9bの左部が配置され、図8(a)に示すように、流路9bが平面視で冷水口5a及び温水口5bの対向する端部と吐水口5cと双方に亘って上方に配置されているため、冷水口5aと温水口5bの双方から流路9bに所望の混合比で冷水と温水とが流れ込み、これら冷水と温水との混合水が吐水管2から吐水される。
【0036】
そして、更にハンドル4を平面視で時計回りに回動させることで、冷水口5aから流路9bに流れ込む冷水の水量を減少させながら温水口5bから流路9bに流れ込む温水の水量を増加させることで吐水管2から吐水される水の温度を調整しつつ、最終的に流路9bを温水口5bの上方の略全体に亘って配置させる。このとき、流路9bには温水口5bから温水のみが流れ込むため、吐水管2からは最も水温の高い温水が最大量吐水される。この温水のみが最大量で吐水される位置が、ガイド体10の平面視における時計回り方向側の回動限界位置であり、本実施例の水平方向における温水吐水位置且つ、垂直方向における最大吐水位置とする。
【0037】
以上、本実施例におけるシングルレバー式混合水栓1にあっては、把持部4dは、冷水吐水位置において水栓本体3の正面側を向くように延設され、且つ、冷水吐水位置における止水位置から最大吐水位置まで回動することで、正面視でガイド体10の軸心Cを超えないよう近接するように延設されているので、使用者がシングルレバー式混合水栓1を使用する際に、冷水吐水位置に配置された把持部4dが水栓本体の正面に向かう使用者と対向するので、使用者は、把持部4dを止水位置から最大吐水位置に向けて回動させ、最大吐水位置で回動が規制され停止した瞬間に勢い余った使用者の手の動きを止められたことによる慣性力によって、ハンドル4に平面視で時計回り向きにはたらくモーメントを最小限に抑えることができるため、使用者がハンドル4を意図せず温水吐水位置に向けて回動させてしまうことを抑制し、吐水管2から吐水される水に温水を混合させてしまうことなく所望の冷水のみを使用することができる。特に、ハンドル4が冷水吐水位置から温水吐水位置に向けて回動することで作動する給湯器等の加熱装置が温水路7に接続されている場合には、加熱装置を作動させることなく所望の冷水のみを使用することができるので、余計な二酸化炭素の排出や、ガスや電力の消費を抑えることができる。
【0038】
また、把持部4dの下部4fは、正面視で下方に向けて突出する弧状に形成されているので、把持部が正面視で矩形状に形成された場合、使用者の手が把持部の底面及び左右側面に接触することで、使用者がハンドルを止水位置から最大吐水位置に向けて回動させるにつれて使用者の手の把持姿勢が変わってしまうが、把持部4dの下部を正面視で下方に向けて突出する弧状に形成することで、使用者がハンドル4を止水位置から最大吐水位置に向けて回動させるにつれて、把持部4dを把持している使用者の手を把持部4dの下部に沿って摺動させ、使用者の手の把持姿勢を止水位置から最大吐水位置にかけて維持することができるので、最大吐水位置に向けてハンドルを垂直方向に回動させる力を、温水吐水位置に向けて回動させる水平方向に変化させることを防止することができる。
【0039】
また、水栓本体3の外周面には、第1認識部8aが配置されており、ハンドル4の外周面には、把持部4dが冷水吐水位置に配置されることで第1認識部8aと合致する第2認識部4cが配置されているので、第1認識部8aと第2認識部4cとが合致していない場合、使用者に対して吐水管2から温水と冷水との混合水が吐水されると認識させることができるので、使用者が温水を使用しない場合には、使用者に両認識部4c,8aが合致するように把持部4dを冷水吐水位置まで水平回動させて所望の冷水のみを使用させるよう注意喚起できる。
【0040】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0041】
例えば、前記実施例では、冷水吐水位置における最大吐水位置から使用者が把持部4dを把持し、ハンドル4を平面視で時計回りに回動させることで、ハンドル4を吐水管2から温水のみが最大量で吐水される温水吐水位置における最大吐水位置に移動させたが、使用者が最初から温水のみを最大量で使用したい場合には、冷水吐水位置における止水位置に配置されているハンドル4を平面視で時計回りに回動させることで、本実施例の水平方向における温水吐水位置且つ、垂直方向における止水位置である位置に移動させた後、ハンドル4を止水位置から最大吐水位置にかけて垂直回動させることでハンドル4を温水吐水位置における最大吐水位置に配置させ、温水のみを使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 シングルレバー式混合水栓
2 吐水管
2a 配管
3 水栓本体
4 ハンドル
4b 凹部(被係止部)
4c 第2認識部
4d 把持部
4e 右端部
4f 下部
5 ケース体
6 冷水路
7 温水路
8a 第1認識部
9 弁体
10 ガイド体
11 レバー
11a 凸部(係止部)
C 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水路及び冷水路と、前記温水路と前記冷水路とからの水流を吐水可能な吐水管と、前記温水路と前記冷水路との少なくとも一方から前記吐水管への水流の流量を調整する弁体と、上部に係止部を有するとともに下部が前記弁体に接続され、水平方向を向く軸心によって回動可能に枢支されるレバーと、から構成された水栓本体と、
前記係止部に係止する被係止部及び使用者が把持可能に延設された把持部を有し、前記水栓本体の正面視の右側で前記弁体が前記冷水路のみを開放する冷水吐水位置及び、前記水栓本体の正面視の左側で前記弁体が前記温水路のみを開放する温水吐水位置の間で、冷水と温水との混合比を調整しながら水平方向に回動可能であるとともに、前記吐水管からの吐水を停止させる下方側の止水位置と前記吐水管からの吐水量が最大となる上方側の最大吐水位置との間で、前記吐水管からの吐水量を調整しながら垂直方向に回動可能であるハンドルと、
を備えたシングルレバー式混合水栓であって、
前記把持部は、前記冷水吐水位置において前記水栓本体の正面側を向くように延設され、且つ、前記冷水吐水位置における前記止水位置から前記最大吐水位置まで回動することで、正面視で前記ガイド体の前記軸心の右側から該軸心を超えないように、該軸心に近接していくように延設されていることを特徴とするシングルレバー式混合水栓。
【請求項2】
前記把持部の下部は、正面視で下方に向けて突出する弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシングルレバー式混合水栓。
【請求項3】
前記水栓本体の外周面には、第1認識部が配置されており、前記ハンドルの外周面には、前記把持部が前記冷水吐水位置に配置されることで前記第1認識部と合致する第2認識部が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシングルレバー式混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−252303(P2011−252303A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125940(P2010−125940)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】