説明

シーズヒータ

【課題】被加熱物とは反対側に付着した脂等の温度上昇を抑制することができるとともに、脂等が吸着されにくいシーズヒータを提供する。
【解決手段】
シーズヒータ11は、電熱線12と、電熱線12の外側面を絶縁体13を介して覆う金属管14とを備え、金属管14の一側に被加熱物120を対向させて加熱するシーズヒータであって、金属管14の被加熱物120とは反対側に一部が連結され、金属管14に沿って延び、両端部が閉塞された中空の断熱管16を備え、金属管14と断熱管16との間には空隙が形成されている。断熱管16は、金属管14との接触面積が小さいので断熱管16に伝導する熱が小さく、断熱効果が高い。シーズヒータ11の被加熱物120とは反対側に対向する物体144がシーズヒータ11から受ける熱は小さいので、被加熱物120とは反対側に付着した脂等121の温度上昇を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーズヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚や肉等の食材を加熱することにより調理する加熱調理器においては、熱源としてシーズヒータが用いられるものがある。この種の加熱調理器では、例えば食材を載置するための網の下方にシーズヒータが配置され、その下方に食材を加熱した際に食材から垂れ落ちる脂や水分を受けるための受け皿(グリルパン)が設けられている。
【0003】
しかし、この種の加熱調理器によると、シーズヒータがその全周から熱を放射するために、その上方にある食材だけではなく、その下方の受け皿上に溜まる脂等も加熱されてしまい、受け皿から発煙したり、受け皿への強固な汚れのこびり付き等が生じたりすることがあるという不都合があった。
【0004】
そこで、シーズヒータの外部表面の一部を断熱部材で覆うことにより、不要な方向への熱の放射を抑制したものが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。このようなシーズヒータを前述の加熱調理器に採用することにより、食材に対しては十分な加熱が得られるとともに、受け皿に対する加熱を防止して、受け皿での発煙や汚れのこびり付きを少なくすることができる。
【0005】
しかし、前記従来のシーズヒータの一部を覆う断熱部材は、金属管の外部表面に、多孔質耐火物、耐熱無機繊維等のような断熱性及び耐熱性が高い物質を、溶射、塗装、ディッピングする、或いは、無機バインダー、金属板によって接着、押圧することにより形成されている。このため、食材から落下する脂等がシーズヒータに付着すると、その脂等や臭気が断熱部材に吸着されることがあるという不都合がある。
【特許文献1】特開昭59−171488号公報
【特許文献2】特開昭59−167986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる不都合を解消して、被加熱物とは反対側に付着した脂等の温度上昇を抑制して、不要な発煙や汚れの固着等を防止することができるシーズヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明のシーズヒータは、電熱線と、該電熱線の外側面を絶縁体を介して覆う金属管とを備え、前記金属管の一側に被加熱物を対向させて加熱するシーズヒータにおいて、前記金属管の前記被加熱物とは反対側に対向して一部が連結され、該金属管に沿って延び、両端部が閉塞された中空の断熱管を備え、前記金属管と前記断熱管との間には空隙が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のシーズヒータは、前記断熱管の一部が前記金属管に連結されていることにより、前記金属管と前記断熱管との接触面積が小さく、また、前記金属管と前記断熱管との間に空隙が形成されているために、前記金属管から前記断熱管に熱が伝導しにくい。一方、前記金属管から放射する熱は、前記被加熱物とは反対側では前記断熱管によってその放射が遮断される。前記断熱管は、中空であって、両端部が閉塞されていることにより、断熱効果が高いものとなっている。そして、前記断熱管から放射する熱は、該断熱管そのものの断熱効果により、極めて小さい。したがって、本発明のシーズヒータによれば、シーズヒータの前記被加熱物とは反対側に対向する物体がシーズヒータから受ける熱は小さいので、前記被加熱物とは反対側に付着した脂等の温度上昇を抑制し、不要な発煙や汚れの固着等を防止することができる。しかも、本発明のシーズヒータは、従来のシーズヒータのように断熱部材を外部表面に設けることが不要であるので、脂等や臭気が吸着されない。
【0009】
また、本発明のシーズヒータにおいて、前記空隙内に断熱部材が設けられることが望ましい。前記金属管から放射する熱が該断熱部材によって遮断されることにより、シーズヒータの前記被加熱物とは反対側に対向する物体がシーズヒータから受ける熱はさらに小さくなるので、前記被加熱物とは反対側に付着した脂等の温度上昇を抑制し、不要な発煙や汚れの固着等を防止することができる。前記断熱部材は、前記金属管と前記断熱管との間の空隙内に設けられており、その露出面積が小さいので、従来の一部が断熱部材で覆われたシーズヒータとは異なり、脂等や臭気が吸着されにくい。
【0010】
また、本発明のシーズヒータにおいて、前記金属管と前記断熱管とは、その互いに対向する外面の両方又はいずれか一方から突出する突起部を介して連結されていることが好ましい。前記突起部は、前記金属管と前記断熱管とが対向する位置において、その両方又はいずれか一方から突出し、シーズヒータの外部表面に露出しないように形成されているので、該突起部に脂等が付着しにくい。なお、前記断熱部材が前記空隙内に設けられる場合には、前記突起部を回避して設けられる。
【0011】
また、前記断熱管は、内部が真空であってもよいし、真空でなくてもよい。しかし、真空でない場合には、前記断熱管は、内部の空気が前記金属管から伝導した熱によって温められて膨張することにより、破損することが考えられる。そこで、本発明のシーズヒータにおいて、前記断熱管は、外壁部に内部と外部とを連通する通気口を有することが望ましい。前記断熱管の内部の温められた空気の一部が前記通気口を通って前記断熱管の外部に放出するので、前記断熱管が破損することを防ぐことができる。
【0012】
さらに、本発明のシーズヒータは、前記金属管と前記断熱管とは、共に三角管により形成されて、一側面同士が互いに対向することが好ましい。これによって、例えば、シーズヒータの上方に被加熱物を配置して調理する加熱調理器に好適なものとなる。
【0013】
すなわち、前記断熱管は前記金属管の前記被加熱物とは反対側に対向し、前記被加熱物はシーズヒータの上方に配置されることから、前記金属管及び前記断熱管の互いに対向する一側面同士以外の側面は、いずれも前記加熱物に対して斜め下方向へ傾斜した状態となる。したがって、前記被加熱物から出た脂等が前記金属管上に落下しても、斜め下方向へ傾斜する前記金属管及び前記断熱管の側面の案内によってさらに下方に流下させ、円滑に落下排除させることができるので、前記被加熱物から出た脂等が前記金属管や前記断熱管の外部表面に付着することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態のシーズヒータを備える加熱調理器の一構成例を示す説明図であり、図1(a)は加熱調理器の正面断面図、図1(b)は本実施形態のシーズヒータの平面図、図1(c)は本実施形態のシーズヒータの端部の断面を示す正面拡大断面図である。また、図1(a)では、円Aで囲んだ部分の断面を拡大して示す。
【0015】
図1(a)示の加熱調理器141は、グリル本体142内に、本実施形態のシーズヒータ11と、シーズヒータ11の上方に設けられ、被加熱物120となる食材を載せるための焼き網143と、シーズヒータ11の下方に設けられ、加熱により温度上昇した被加熱物120から出る脂等121を受けるためのグリルパン144とを備え、上部にグリル蓋145が設けられている。
【0016】
本実施形態のシーズヒータ11は、電熱線12と、電熱線12の外側面を絶縁体13を介して覆う金属管14と、金属管14の被加熱物120とは反対側に対向して、溶接による連結部15を介して一部が連結された断熱管16とを備える。金属管14と断熱管16とは、共に三角管により形成されていて、金属管14の一側面19aと断熱管16の一側面20aとが互いに対向している。金属管14の一側面19aと断熱管16の一側面20aとの間には空隙が形成されており、その空隙には断熱部材17が設けられている。
【0017】
電熱線12は、螺旋状のニクロム線である。電熱線12の両端は、グリル本体142の外部まで延設され、図示しない電源に接続されている。なお、図では螺旋状の記載を省略している。
【0018】
絶縁体13は、高温での電気絶縁性に優れるとともに熱伝導率が高い材料が用いられ、本実施形態ではマグネシア粉末の焼結体を用いている。
【0019】
金属管14は、Ni−Cr−Fe合金、例えばインコネル600(登録商標)製の円管である。インコネル600製であることにより、高温での耐腐食性が高いものとなっている。金属管14は、図1(b)示のように、長手方向の途中で折り曲げられた状態でグリル本体142内に配設されている。金属管14は、側面19aに対向する稜線18を被加熱物120すなわち上方に向けている。また、金属管14の側面19a以外の側面19b,19cは、斜め下方向へ傾斜している。また、金属管14の両端部は、図1(c)示のように、耐熱ガラス製の遮蔽部材21によって閉塞されている。
【0020】
断熱管16は、Ni−Cr−Fe合金、例えばインコロイ800(登録商標)製の管であって、金属管14と同程度の長さ及び断面積を有し、金属管14に沿って延びている。断熱管16の両端部は、耐熱ガラス製の遮蔽部材22によって閉塞されている。断熱管16は、中空であって、両端部が閉塞されていることにより、断熱効果が高いものとなっている。
【0021】
断熱管16の側面20a以外の側面20b,20cは、斜め下方向へ傾斜している。さらに、側面20bには、断熱管16の内部と外部とを連通する通気口23が設けられている。この通気口23は、断熱管16が高い断熱効果を保つために断熱管16の内部の空気が断熱管16の外部の空気と対流しにくいように、口径が小さく形成されている。
【0022】
断熱部材17は、発泡メタル製の矩形状の板であり、金属管14の側面19a及び断熱管16の側面20aと同程度の断面積を有している。断熱部材17は、金属管14の側面19aと断熱管16の側面20aとの間の空隙内に設けられるとともに、複数の連結部15によってその空隙から脱落しないように係止されている。
【0023】
次に、本実施形態のシーズヒータ11の作動について説明する。電熱線12の両端に接続された電源をONにすると、電流が電熱線12に流れ、電熱線12が発熱する。電熱線12が発した熱は、絶縁体13を介して金属管14に伝導する。金属管14に伝導した熱は、金属管14の外部表面から放射するとともに、連結部15を介して断熱管16に伝導する。
【0024】
金属管14の被加熱物120側の外部表面から放射した熱は、被加熱物120の温度を上昇させる。また、被加熱物120の温度上昇に伴って被加熱物120から脂等121が出る。この脂等121は、落下、飛散等することにより、グリルパン144の上面、グリル本体142の内壁面等に付着する。このとき、金属管14上に落下、飛散した脂等121は、斜め下方向へ傾斜する側面19b,19c,20b,20cの案内によってさらに下方に流下し、円滑に落下除去される。また、金属管14の被加熱物120とは反対側の外部表面(側面19a)から放射した熱は、空隙内に存在する空気、断熱部材17、及び断熱管16によってその放射が遮断される。
【0025】
一方、断熱管16が連結部15によって一部が金属管14に連結されていることにより、金属管14と断熱管16との接触面積が小さく、また、金属管14と断熱管16との間に空隙及び断熱部材17が設けられていることにより、金属管14から断熱管16に熱が伝導しにくい。従って、断熱管16に伝導し断熱管16の外部表面から放射する熱は、断熱管16そのものの断熱効果により、極めて小さくなる。これにより、シーズヒータ11の被加熱物120とは反対側に対向するグリルパン144がシーズヒータ11から受ける熱は小さいので、グリルパン144に付着した脂等121の温度上昇を抑制し、グリルパン144からの発煙や、グリルパン144への汚れの固着を抑制することができる。
【0026】
また、シーズヒータ11において、断熱部材17は、金属管14と断熱管16との間の空隙内に設けられており、その露出面積が小さいので、従来の一部が断熱部材で覆われたシーズヒータとは異なり、被加熱物から発生した脂等や臭気が吸着されにくい。
【0027】
また、断熱管16は、内部の空気が金属管14から断熱管16に伝導した熱によって温められて膨張するものの、一部の空気が通気口23を通って断熱管16の外部に放出するので、断熱管16が破損することを防ぐことができる。
【0028】
また、シーズヒータ11では、斜め下方向へ傾斜する外部表面19b,19c,20b,20cの案内により、被加熱物120から落下、飛散した脂等121は落下排除されるので、被加熱物120から出た脂等121が外部表面に付着しにくくなっている。
【0029】
本実施形態のシーズヒータ11では、金属管14と断熱管16との間の空隙内に断熱部材17を設けているが、この断熱部材17を設けずに空隙のみとしてもよい。断熱部材17を設けた場合に比べて断熱効果は低下するものの、金属管14の外部表面から被加熱物120とは反対側に放射する熱は、空隙内に存在する空気及び断熱管16によってその放射が遮断されるので、グリルパン144がシーズヒータ11から受ける熱を小さくすることができる。
【0030】
また、シーズヒータ11では、金属管14及び断熱管16を三角管としたが、円管や他の形状であってもよく、さらにはそれぞれの形状が異なっていてもよい。また、金属管14及び断熱管16の両端部を遮蔽部材21,22によって閉塞しているが、各両端部を圧着することにより閉塞するようにしてもよい。
【0031】
また、金属管14を円管としたが、他の形状であってもよい。金属管14は、長手方向の途中で折り曲げられた状態で配設されるとしたが、複数の直線状の金属管14を用いて平行に配設させるようにしてもよい。さらに、金属管14の外部表面にシリコーン系、フッ素系等の撥水コーティング処理を施すようにしてもよい。このようにすることにより、シーズヒータ11への脂等121の付着を抑制し、脂等121からの発煙を防ぐことができるとともに、シーズヒータ11の耐腐食性を向上させることができる。
【0032】
また、断熱管16は発泡メタル製であるとしたが、代わりに、セラミックファイバー、セラミックバルク等を用いるようにしてもよい。また、断熱管16は金属管14と同程度の断面積を有するとしたが、異なる断面積を有していてもよい。また、断熱管16は、溶接により形成された連結部15を介して一部が金属管14に連結されるようにしたが、図示しないが、金属管14及び断熱管16の互いに対向する外面の両方又はいずれか一方から突出する突起部を設け、突起部の頂部を溶接することにより両者を連結するようにしてもよい。さらに、断熱管16の側面20bに通気口23を設けたが、側面20a,20cに設けるようにしてもよいし、遮蔽部材22に設けるようにしてもよい。また、断熱管16の内部を真空とするとともに通気口27を設けないようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態のシーズヒータを備える加熱調理器の一構成例を示す説明図。
【符号の説明】
【0034】
11…シーズヒータ、 12…電熱線、 13…絶縁体、 14…金属管、 16…断熱管、 17…断熱部材、 19a…金属管の断熱管に対向する一側面、 20a…断熱管の金属管に対向する一側面、 23…通気口、 120…被加熱物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電熱線と、該電熱線の外側面を絶縁体を介して覆う金属管とを備え、前記金属管の一側に被加熱物を対向させて加熱するシーズヒータにおいて、
前記金属管の前記被加熱物とは反対側に対向して一部が連結され、該金属管に沿って延び、両端部が閉塞された中空の断熱管を備え、
前記金属管と前記断熱管との間には空隙が形成されている
ことを特徴とするシーズヒータ。
【請求項2】
請求項1記載のシーズヒータにおいて、
前記空隙内に断熱部材が設けられることを特徴とするシーズヒータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のシーズヒータにおいて、
前記金属管と前記断熱管とは、その互いに対向する外面の両方又はいずれか一方から突出する突起部を介して連結されていることを特徴とするシーズヒータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載のシーズヒータにおいて、
前記断熱管は、外壁部に内部と外部とを連通する通気口を有することを特徴とするシーズヒータ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちのいずれか1項に記載のシーズヒータにおいて、
前記金属管と前記断熱管とは、共に三角管により形成されて、一側面同士が互いに対向することを特徴とするシーズヒータ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−130406(P2008−130406A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315062(P2006−315062)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】