説明

シート

【課題】複数の大人とともに子供も好適に着席可能なシートを提供する。
【解決手段】シート1は、左右方向Xに長い座部2及び背凭れ部3を備えて、複数人が着席可能なもので、座部2は、大人少なくとも一名が着席可能な幅を有するとともに、背凭れ部3から張り出して上面に着座可能とした着席位置Aと着席位置Aから起き上がった収納位置Bとの間で背凭れ部31に対して回転可能に、左右方向Xに複数配設された大人用座21と、大人用座21の間に設けられ、子供少なくとも一名が着席可能な幅を有するとともに、大人用座21よりも小さい奥行きを有して背凭れ部3から張り出す子供用座22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数人が着席可能なシートに関し、特に、大人と子供とが着席可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数人が着席可能なシートとして、座部及び背凭れ部が左右方向に長いペアシートや長椅子などが使用されてきている。近年、多数の観客を収容する映画館などにおいても、従来のように各人が着席可能な椅子を並べるのではなく、ペアあるいはグループが一体感をもって着席可能なペアシートあるいは長椅子が使用されてきている。ここで、このようなシートに子供を着席させる場合には、座部にチャイルドシートを載置し、当該チャイルドシート上に着席させるようにして使用していた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−192859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のように、複数人着席可能なシートの座部にチャイルドシートを使用して子供を着席させる場合、当該シートの各人が着席する各座の寸法が大人用に設定されているので、子供が着席するには大きかった。すなわち、子供にとって幅寸法が大きいことで、同伴する大人との距離感が生じてしまう問題があった。また、奥行き寸法が大きいので、チャイルドシート上で背凭れに体を預けて着席した子供の足が、座の前端に引っ掛かってしまい着席しづらい問題があった。
【0004】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、複数の大人とともに子供も好適に着席可能なシートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明は、左右方向に長い座部及び背凭れ部を備えて、複数人が着席可能なシートであって、前記座部は、大人少なくとも一名が着席可能な幅を有するとともに、前記背凭れ部から張り出して上面に着座可能とした着席位置と該着席位置から起き上がった収納位置との間で前記背凭れ部に対して回転可能に、左右方向に複数配設された大人用座と、該大人用座の間に設けられ、子供少なくとも一名が着席可能な幅を有するとともに、前記大人用座よりも小さい奥行きを有して前記背凭れ部から張り出す子供用座とを備えることを特徴としている。
【0006】
この構成によれば、各大人は、座部において、複数配設された大人用座のいずれかを選択し、当該大人用座を収納位置から着席位置となるように背凭れ部に対して回転させることで、着席することができる。また、子供は、座部において、子供用座を選択して着席することができる。ここで、子供用座は、子供一名が着席可能な幅を有するので、子供と、隣接する大人用座に着席する大人とは、一体感をもって着席することができる。また、子供用座は、大人用座よりも小さい奥行きを有して背凭れ部から張り出していることから、子供は、大人用座の間で、足が当該子供用座の前端に引っ掛かってしまうことなく、好適に着席することができる。一方、不使用時には、大人用座を収納位置とすることで、前後方向における奥行き寸法を小さくしてコンパクトな状態とすることができる。特に、映画館のようにシートを前後方向に並べて配設するようにして使用したとしても、不使用時において必要な通路幅を確実に確保することができる。
【0007】
また、前記座部の前記子供用座は、前記背凭れ部に対して固定されていることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、子供用座は、背凭れ部に対して固定されていて、収納位置から着席位置まで回転させるなどの操作が不要であることから、小さな子供でも好適に使用し、当該子供用座に着席することができる。
【0009】
また、前記座部の前記子供用座は、上面の高さが、前記大人用座の上面と略等しく設定されているとともに、嵩上げ用シートを載置することで、着座位置を上方に調整可能であることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、子供用座の上面と大人用座の上面との高さが略等しいことで、大人のみで使用する際に、間に段差などが無く、隣り合う者同士で一体感をもって着席することができる。また、子供用座が嵩上げ用シートを載置することで着座する高さを上方に調整可能であることで、子供が着席した時に目線の位置を高くすることができる。
【0011】
また、前記背凭れ部は、前記子供用座が設けられる位置で前面に凹部が形成されているとともに、該凹部に収納された第一の位置から前方に向かって突出した第二の位置まで回転可能に取り付けられ、該第二の位置で前記テーブルとしても使用可能である肘置きを有することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、大人のみで使用する際に、肘置きを第二の位置とすることで、子供が着席する空間を肘を配置する場所として有効利用することができる。また、当該肘置きはテーブルとして使用可能であることで、使用者の飲み物等を載置することもできる。また、子供が着席する際には、肘置きを回転させて第一の位置とすることで、肘置きは背凭れ部の凹部に収納され、支障無く着席することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシートによれば、大人用座と子供用座とを具備する座部を備えることで、複数の大人とともに子供も好適に着席することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1から図4は、この発明に係る実施形態を示している。図1から図4に示すように、この実施形態のシート1は、子供を含む複数人、例えば大人2名と、子供1名とが大人の間に子供を配置して着席可能なものである。シート1は、大人と子供とで構成される使用者らが着席する座部2と、着席した使用者の上半身を後方で支持する背凭れ部3と、座部2及び背凭れ部3を床面Fに対して支持する脚部4とで概略構成されている。脚部4は、左右方向X両側で立設されている一対の第一の脚体41と、中央で左右方向Xに並べて立設されている一対の第二の脚体42の計四脚で構成されている。
【0015】
ここで、座部2は、大人一名が着席可能に、左右方向Xにおける幅寸法及び前後方向Yにおける奥行き寸法を有して左右方向X両側にそれぞれ配設された大人用座21と、大人用座21の間に配設された子供用座22とを具備している。そして、大人用座21は、各第一の脚体41と第二の脚体42との間で中心軸周りに回転可能に配設された軸部材23に固定されていて、これにより、背凭れ部3から張り出して上面21aに着座可能な着席位置Aと、着席位置Aから起き上がった収納位置Bとの間で脚部4及び背凭れ部3に対して回転可能となっている。ここで、軸部材23は、図示しない付勢手段によって軸回りに付勢されていて、これにより大人用座21は、着座していない状態で収納位置Bとなるようになっている。また、子供用座22は、幅寸法及び奥行き寸法が、子供一名が着席可能な寸法に設定されていて、背凭れ部3に対して固定されていて、上面22aに着座可能に張り出している。
【0016】
また、背凭れ部3は、左右方向Xに延設された背凭れ本体31と、子供用座22と対応する位置に配設された子供用背凭れ32とを具備している。また、背凭れ本体31の左右方向X両側には、前方へ突出する側板33が固定されており、側板33の上端部には、肘置き板34が設けられている。なお、肘置き板34にはカップホルダ34aなども設けられている。そして、側板33の下端部に第一の脚体41がそれぞれ固定されていることで、背凭れ部3において背凭れ本体31は、床面Fに対して支持されている。また、背凭れ本体31の前面において、子供用座22及び子供用背凭れ32と対応する位置には、上下方向Zに延びる凹部31aが形成されていて、肘置き35が収容されている。肘置き35は、背凭れ本体31に回転可能に軸支されており、これにより凹部31aに収容された第一の位置Cから背凭れ本体31から突出した第二の位置Dまで回転可能となっている。また、肘置き35は、第二の位置Dにおいて、上面35aとなる部分が樹脂などの硬質の部材で形成されており、下面35bとなる部分が背凭れ本体31の前面側と同じクッション材などで形成されている。
【0017】
また、本実施形態では、子供用座22は、子供用背凭れ32と一体となっており、略L字状に形成されている。そして、子供用背凭れ32の下端部に一対の第二の脚体42が固定されていることで、子供用座22及び子供用背凭れ32は床面Fに対して支持されている。ここで、背凭れ本体31の下端部には、子供用座22と対応する位置で切欠き部31bが形成されていて、子供用背凭れ32は、前面32aが背凭れ本体31の前面31cと略一致するようにして、切欠き部31bに収容されている。また、子供用座22は、上面22aの高さが、着席位置Aにおける大人用座21の上面21aと略等しく設定されている。
【0018】
次に、この実施形態のシート1の作用について説明する。図1に示すように、このシート1に大人2名及び子供1名が着席する際には、大人は、収納位置Bにある大人用座21を図示しない付勢手段に抗して回転させて着席位置Aとすることで着席することができる。また、子供は、子供用座22が背凭れ部3に対して固定されていることで、大人用座21のように収納位置Bから着席位置Aまで回転させるなどの操作をする必要なく着席することができ、小さな子供でも好適に使用し着席することができる。また、必要に応じて子供用座22の上面22aに嵩上げ用シート5を載置することで、着座する高さを上方に調整し、子供が着席した時の目線の位置を高くすることができる。なお、上記のように、子供用座22が背凭れ部3に固定されて回転しないことから、嵩上げ用シート5を載置して着座する高さを調整する際にも、子供用座22が回転するなどして嵩上げ用シート5がずれてしまうことなく、好適に調整して着席することができる。
【0019】
図3は、このシート1に大人2名、子供1名が着席した状態を示している。図3に示すように、子供用座22は、子供一名が着席可能な幅を有するので、子供と、隣接する大人用座21に着席する同伴の大人とは、離間距離を小さくして一体感をもって着席することができる。また、大人も子供も背凭れ部3によって前後方向Yに略同じ位置で支えられていることから、より一体感をもって着席することができる。また、子供用座22は、大人用座21よりも小さい奥行きを有して背凭れ部3から張り出していることから、子供は、大人用座21の間で、足が当該子供用座22の前端22bに引っ掛かってしまうことなく、好適に着席することができる。
【0020】
一方、不使用時には、図4に示すように、大人用座21は、図示しない付勢手段により収納位置Bまで起き上がることとなり、奥行き寸法を小さくしてコンパクトな状態とすることができる。また、子供用座22は、背凭れ部3から張り出したままであるが奥行き寸法が大人用座21よりも小さく設定されており、前端22bが着席位置Aの大人用座21よりも背凭れ部3側となるように設定されている。このため、図4に示し、映画館などのように前後方向Yに複数のシート1を並べる場合でも、前後のシート1の離間寸法について、使用時には、上記効果を奏しつつ、使用者の足が配置可能な最小限の大きさ(例えば、20cm程度)に抑えることができる一方、不使用時には、必要な通路幅(例えば、消防法上で35cm以上)を確実に確保することができる。
【0021】
また、本実施形態のシート1では、子供用座22の上面22aと大人用座21の上面21aとの高さが略等しく設定されている。このため、大人のみで使用する際に、間に段差などが無く、隣り合う者同士で一体感をもって着席することができる。さらに、本実施形態のシート1では、肘置き35を回転して第二の位置Dとすることで、子供が着席する位置に肘を配置してより好適に使用することが可能となる。また、肘置き35は、上面35aが樹脂などの硬質の材質で形成され、テーブルとしても使用することができ、使用者の飲み物等も載置することができてより好適に使用可能となる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0023】
なお、上記実施形態では、大人用座21を二つとし、その間に一つの子供用座22を配置するものとしたが、これに限る事無く、大人用座21及び子供用座22いずれも多数連結するものとしても良い。また、大人用座21及び子供用座22は、一名が着席可能な幅寸法を有するものとしたが、これに限るものでは無く、複数名同時に着席可能な幅としても良い。また、背凭れ部3において、背凭れ本体31は左右方向Xに延設されているものとしたが、各大人用座21及び子供用座と対応して分割されたものが連結されているものとしても良い。また、背凭れ本体31と子供用背凭れ32とが一体となっていても良い。また、子供用座22は、背凭れ部3に対して固定されているものとしたが、これに限るものでは無く、大人用座21と同様に回転可能な構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施形態のシートの斜視図である。
【図2】この発明の実施形態のシートの正面図である。
【図3】この発明の実施形態のシートの上面図である。
【図4】この発明の実施形態のシートを前後に配置して使用した場合の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 シート
2 座部
3 背凭れ部
5 嵩上げシート
21 大人用座
22 子供用座
31a 凹部
35 肘置き板
A 着席位置
B 収納位置
C 第一の位置
D 第二の位置
X 左右方向
Y 前後方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に長い座部及び背凭れ部を備えて、複数人が着席可能なシートであって、
前記座部は、大人少なくとも一名が着席可能な幅を有するとともに、前記背凭れ部から張り出して上面に着座可能とした着席位置と該着席位置から起き上がった収納位置との間で前記背凭れ部に対して回転可能に、左右方向に複数配設された大人用座と、
該大人用座の間に設けられ、子供一名が着席可能な幅を有するとともに、前記大人用座よりも小さい奥行きを有して前記背凭れ部から張り出す子供用座とを具備することを特徴とするシート。
【請求項2】
請求項1に記載のシートにおいて、
前記座部の前記子供用座は、前記背凭れ部に対して固定されていることを特徴とするシート。
【請求項3】
請求項2に記載のシートにおいて、
前記座部の前記子供用座は、上面の高さが前記大人用座の上面と略等しく設定されているとともに、嵩上げ用シートを載置することで、着座する高さを上方に調整可能であることを特徴とするシート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシートにおいて、
前記背凭れ部は、前記子供用座が設けられる位置で前面に凹部が形成されているとともに、該凹部に収納された第一の位置から前方に向かって突出した第二の位置まで回転可能に取り付けられ、該第二の位置で前記テーブルとしても使用可能である肘置きを有することを特徴とするシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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