説明

シーム溶接装置

【課題】 簡単な構成でもって先行板材と後行板材の端部間の重ね合わせ部分を溶接する際に、溶接終了端側の溶接による広がりを補正して大きくすること。
【解決手段】 入側クランプ5の前進量を例えば100mmとすると、入側クランプ5と共に移動する下側のストッパ部43と、ベース33側に固定されているストッパ片55との距離を100mmに設定する。上側のストッパ部43と、ストッパ片56との距離を(100mm+α)に設定する。入側クランプ5を前進させると先ず下側のストッパ部43とストッパ片55が当接する。この時点では、上側のストッパ部43とストッパ片56とは、まだαの隙間がある。さらに上側のシリンダ41を駆動させると、ストッパ片56にストッパ部43が当接し、これにより、後行板材3の溶接終了端側は1mm前進して、溶接終了端側の重ね合わせ部分を広くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄鋼プロセスラインで前後する板材の端部同士を僅かに重ね合わせて、回転する一対の円板電極により加圧通電し、重ね合わせた端部を抵抗発熱により溶接するようにしたシーム溶接装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼プロセスラインにおける工程で、メッキ処理、焼き鈍し処理、カラー鋼板処理などの熱処理を行なう場合、処理を行なう板材は連続して搬送されて行なうようになっている。特にロールに巻回されている板材が途切れることなく処理工程に搬送するために、先行する板材の後端部と、連続して送るための後行板材の前端部とをシーム溶接装置で重ね合わせて溶接を行なうようにしている。
【0003】図7は上記先行板材2の後端部と、後行板材3の前端部とを溶接するシーム溶接装置1と、後行板材3等を搬送する工程を示している。図示する先行板材2の左方側で上記熱処理等を行なっており、先行板材2が途切れる前に別に配置しているロール(図示せず)からの後行板材3をシーム溶接装置1へ搬送し、このシーム溶接装置1で先行板材2の後端部と後行板材3の前端部とを溶接するものである。なお、先行板材2及び後行板材3は図9に示すように一定の幅を有している。
【0004】シーム溶接装置1は周知のように、先行板材2の後端部をクランプする出側クランプ4と、後行板材3の前端部をクランプする入側クランプ5を備えている。出側クランプ4は斜め上方に回動可能であり、上クランプ4aと下クランプ4bとで構成され、上クランプ4aはシリンダにより上下動可能に設けられている。また、入側クランプ5は出側クランプ4に対して前後動可能に設けられており、上クランプ5aと下クランプ5bとで構成され、上クランプ5aは同様にシリンダにより上下動可能に設けられている。
【0005】図10及び図11は、上記シーム溶接装置1により先行板材2の後端部と後行板材3の前端部とを僅かに重ね合わせて溶接を行なう場合の工程図を示しているものである。図10(a)に示すように先行板材2の後端部を一旦停止させて、後行板材3の前端部を移送させ、次に図10(b)に示すように出側クランプ4の上クランプ4aと、入側クランプ5の上クランプ5aとをそれぞれ下降させて、出側クランプ4により先行板材2をクランプし、入側クランプ5により後行板材3をクランプする。次に、図10(c)に示すように、先行板材2及び後行板材3をクランプした状態でシアー( shear )と呼ばれる上下一対の切断機6(6a、6b)により先行板材2と後行板材3の端部を切断する。
【0006】そして、図11(a)に示すように切断機6を上方、下方へと移動させて、さらに図11(b)に示すように出側クランプ4を少し斜め上方に傾斜させると共に、入側クランプ5でクランプした後行板材3の前端部が先行板材2の後端部の下方に位置するように入側クランプ5を所定量前進させる。そして、図11(c)に示すように、出側クランプ4を元の状態に復帰させて、後行板材3の前端部の上面に先行板材2の後端部の下面を重ね合わせ、この重ね合わせ部分に上下の円板電極7、8により回転させながら溶接を行なう。この先行板材2と後行板材3の溶接により板材は途切れることなく連続して後工程へと搬送されていく。
【0007】ところで、図8は上記シーム溶接を行なう場合の説明図であり、先行板材2と後行板材3の重ね合わせ寸法をLとした場合、先行板材2と後行板材3の板厚をtとすると、重ね合わせ寸法Lは、一般的にL=(1.0〜1.5)×tとしている。この重ね合わせ寸法は、一般的にミリ単位であり、重ね合わせ部分は上下の円板電極7、8により上下から所定の圧力で加圧され、さらに、高電流で溶接される。しかも、先行板材2の後端部と後行板材3の前端部とは、出側クランプ4及び入側クランプ5でもって所定の圧力でクランプされている。
【0008】そのため、溶接時に板材の材質や厚さにより、図8の二点鎖線で示すように湾曲してしまうことがあり、先行板材2の溶接終了端側が後行板材3の端部より離れていき、重ね合わせ量がとれず、溶接が十分にできなかったり、溶接終了端側の板材2、3の端部間が離れて溶接ができないという問題が発生する。
【0009】そのため、従来では図9に示すように、先行板材2の後端部をずらせて円板電極7、8による溶接開始部分と比べて溶接終了部分の重ね合わせ量を広くするようにしている。この従来例としては、例えば、特許第2677097号が挙げられる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】この特許第2677097号に記載されている技術は、出側クランプ4でクランプしている先行板材2の溶接終了端側の重ね合わせが広くなるように強制的に行なっている。出側クランプ4側を強制的に駆動する手段としては、モータや油圧シリンダなどを用いており、これにより、先行板材2と後行板材3の重ね合わせる部分の幅を溶接開始端より溶接終了端へ溶接する広がりを補正して大きくしている(図9参照)。
【0011】ところが、この従来技術では、板材をカットした後に出側クランプ4側を入側クランプ5側に移動させようとしているので、無理が生じることになる。すなわち、出側クランプ4でクランプしている先行板材2の溶接終了端側を右方へ移動させるので、先行板材2にテンションがかかり、そのため、先行板材2にシワが寄ったり、駆動源に大きな動力が必要となる。また、この問題を解決するためには、図7の二点鎖線で示すように、ローラ10によるループ11が別途必要となる。また、出側クランプ4側を駆動するためのモータや油圧シリンダも別途必要となり、シーム溶接装置1全体のコストをアップさせることになる。
【0012】本発明は上述の点に鑑みて提供したものであって、簡単な構成でもって先行板材と後行板材の端部間の重ね合わせ部分を溶接する際に、溶接終了端側の溶接による広がりを補正して大きくする手段を入側クランプ側に設けて確実に溶接できるようにしたシーム溶接装置を提供することを目的としているものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明の請求項1記載のシーム溶接装置では、先行板材2の後端部側を上下からクランプする出側クランプ4と、この出側クランプ4と対向配置され後行板材3の前端部側を上下からクランプする入側クランプ5と、この入側クランプ5を上記出側クランプ4側に前進、後退させる付勢手段と、この付勢手段により後行板材3をクランプしている入側クランプ5を一定量前進させて上記先行板材2の後端部と後行板材3の前端部との重ね合わせ部分を板幅に沿って溶接する一対の円板電極7、8とを備え、上記円板電極7、8により先行板材2と後行板材3の重ね合わせ部分を加圧通電して抵抗発熱により溶接を行なうシーム溶接装置において、上記先行板材2の後端部に上記後行板材3の前端部の重ね合わせ部分の幅を溶接開始端より溶接終了端へ溶接による広がりを補正して大きくする補正手段を上記入側クランプ5側に設けていることを特徴としている。
【0014】かかる構成とすることで、後行板材3をクランプしている入側クランプ5側を駆動して先行板材2との溶接終了端側の重ね合わせ部分を広くするようにしているので、後行板材3を補正量分を前進させる場合も後行板材3に負荷をかけることなく容易に前進させて補正を行なうことができる。これにより、簡単な構成でもって先行板材2と後行板材3の端部同士の溶接を綺麗に行なうことができる。また、従来とは異なり、先行板材2側にループを設ける必要もない。
【0015】請求項2記載のシーム溶接装置では、入側クランプ5側に設けた一対のストッパ部43、43と、上記入側クランプ5を一定量前進させた後に上記一対のストッパ部43、43にそれぞれ当接して入側クランプ5を停止させる一対のストッパ片55、56とを設け、一方のストッパ部43とストッパ片55との間の距離より、他方のストッパ部43とストッパ片56との間の距離を若干広く設定して上記補正手段を構成していることを特徴としている。
【0016】これにより、一方のストッパ部43とストッパ片55との間の距離より、他方のストッパ部43とストッパ片56との間の距離を若干広く設定するだけで、溶接終了端側の重ね合わせ部分の広がりを容易に設定でき、また、当該距離を任意に変えて、板材の鋼種、板厚、板幅に応じて溶接終了端側の重ね合わせ部分の広がりを容易に変えることができる。
【0017】請求項3記載のシーム溶接装置では、上記ストッパ部43の当接面を傾斜面46にすると共に、ストッパ片56の当接面を上記傾斜面46と同方向に傾斜する傾斜面61とし、ストッパ片56を後行板材3の板幅方向にスライド自在としていることを特徴としている。
【0018】これにより、溶接終了端側の重ね合わせ部分の広がり寸法を容易に無段階で変更でき、板材の鋼種、板厚、板幅に応じて容易に対応することができる。
【0019】請求項4記載のシーム溶接装置では、出側クランプ4側の方向に沿って敷設されたガイドレール34と、このガイドレール34に跨がってスライド自在とし、上記入側クランプ5側に固定されているローラー部36とを備え、このローラー部36にはガイドレール34の面に沿って転動する複数の鋼球63を内蔵し、この鋼球63とガイドレール34の接触面のクリアランスを利用して上記補正手段を構成していることを特徴としている。
【0020】これにより、特に別途の部材や装置を用いることなく、溶接終了端側の重ね合わせ部分の広がりを持たせて、先行板材2と後行板材3の端部同士を綺麗に溶接を行なうことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。本発明は先行板材2と後行板材3の重ね合わせ部分を補正するために、今までに存在している部材を利用して、従来とは異なり出側クランプ4側ではなく入側クランプ5側で行なうようにしたものである。
【0022】先行板材2と後行板材3とを溶接する際に、図7に示すように後行板材3を所定量だけ前進させるので、従来においてもシーム溶接装置1の前にローラ12によりループ13を形成している。このループ13により後行板材3を前進させるのに余裕を持たせるようにしている。本発明では、この余裕を持たせたループ13の存在を利用して後行板材3の前端部の溶接終了端側を送り出し易くしている。なお、上記ローラ12がない場合もあるが、かかる場合には、シーム溶接装置1のすぐ前段と、さらに前方にローラやピンチローラが配設されており、後行板材3にテンションがかからないようにこの両ローラ間にある程度の余裕を持たせている。
【0023】次に、シーム溶接装置1の構成について説明していくが、シーム溶接装置1自体の構成は周知なので、概略的に説明していく。また、シーム溶接装置1の構成も従来とは基本的には同様の構成なので、同一の機能を発揮する要素には同一の番号を付している。図1はシーム溶接装置1の正面図を示し、図2は入側クランプ5側の要部正面図を、図3はシーム溶接装置1の平面図をそれぞれ示している。図1において基台14の上面の一方には出側クランプ4を設けている出側装置15が配置され、他方には入側クランプ5を設けている入側装置16が配置されている。
【0024】出側装置15を構成している架台17の上部にはシリンダ20の基部がピン21により回動自在に連結されており、シリンダ20のロッドの先端は上端を出側クランプ4の上クランプ4aの下面に固着されているアーム22の下部とピン23を介して回動自在に連結されている。アーム22の上部の側面には支持片24が一体的に設けてあり、この支持片24の端部と架台17の上面より突設した支柱26とが軸25により回動自在に連結してある。また、出側クランプ4を構成している上クランプ4aの上面はシリンダ31のロッドの先端側と連結されており、このシリンダ31の動作により上クランプ4aが上下動するようになっている。そして、シリンダ31を駆動して上クランプ4aを下降させて、下クランプ4bとで先行板材2をクランプするようになっている。
【0025】また、架台17及びアーム22にはそれぞれストッパ27、28が設けてあり、両ストッパ27、28が当接している図1に示す状態で出側クランプ4が位置決めされている。そして、溶接時に図11(b)に示すように出側クランプ4を傾動させる場合には、シリンダ20を駆動するとアーム22を付勢し、アーム22は軸25を中心に反時計方向に回転し、これにより、出側クランプ4を傾動させることができる。なお、下クランプ4bや上クランプ4aを駆動するシリンダ20、31は架台17の両側にそれぞれ設けているが、それ以上設けても良い。
【0026】次にシーム溶接装置1の入側装置16を説明する。架台32の上面にはベース33が配設されており、このベース33の上面の両側にはガイドレール34がそれぞれ敷設してある。入側クランプ5の下クランプ5bの下面の両側にはそれぞれホルダー35が固定されており、このホルダー35の下面にローラー部36が設けてある。このローラー部36は断面を略コ字型として上記ガイドレール34を跨がって該ガイドレール34を出側クランプ4側に前進後退が可能となっている。また、入側クランプ5の上クランプ5aの上面には、シリンダ37のロッドの先端が固定されていて、このシリンダ37により上クランプ5aが上下動可能に設けられている。
【0027】ホルダー35の下部の外側面より図3に示すような押接片40が設けられており、この押接片40にロッドの先端を固定したシリンダ41が配設されている。このシリンダ41を駆動することで、押接片40を介してホルダー35を前進または後退させるようになっている。この前進後退可能なホルダー35の後部の下部側には図2に示すような略L型のストッパアーム42が固定されており、さらにストッパアーム42の下部の前面にはストッパ部43が固定されている。また、図3に示すように、このストッパ部43の前面は傾斜面46としてある。なお、ホルダー35はレール状の略工字型に形成されていて、上部の横方向に突設した水平片44に下クランプ5bがボルト止めされており、同様に、下部の横方向に突設した水平片45にホルダー35やローラー部36がボルト止めされている。
【0028】一方、図3に示すように、ベース33側にはモータ50が配設されており、このモータ50の出力軸51はギア部52と接続されている。このギア部52は軸方向を変えるものであり、ギア部52の両側に接続されている回転軸53、54を互いに逆向きに回転させるようにしている。なお、回転軸53、54の端部はベース33側に軸支されている。また、回転軸53、54にはそれぞれストッパ片55、56が装着されていて、回転軸53、54の回転によりストッパ片55、56は互いに近づいたり、離れたりするように回転軸53、54上を移動するようになっている。
【0029】すなわち、ストッパ片55、56にはねじ穴(図示せず)が螺刻されており、このねじ穴に回転軸53、54が螺着され、回転軸53、54の回転によりストッパ片55、56が軸方向に移動自在となっている。この場合、ストッパ片55、56自体が回転しないように、ベース33側の部材(図示せず)により規制されている。また、ホルダー35側のストッパ部43の傾斜面46に対応して、両ストッパ片55、56にも傾斜面60、61が形成してある。
【0030】図4は本発明の動作が分かり易いように図3R>3の配置構成を模式的に記載したものである。先行板材2と後行板材3の端部の重ね合わせ部分を溶接する所謂ナローラップマッシュシーム溶接では従来例で説明したように、溶接終了端側を広く重ね合わせる必要がある。そこで、本発明では図4に示すように、例えば後行板材3の溶接終了端側を約1mm広く重ね合わせるとすると、後行板材3をクランプした入側クランプ5をシリンダ41により出側クランプ4へ前進させる場合には以下のようにしている。
【0031】すなわち、入側クランプ5の前進量を例えば100mmとすると、入側クランプ5と共に移動する一方のストッパ部43(図4では下側のストッパ部43)の傾斜面46と、ベース33側に固定されているストッパ片55の傾斜面60との間の距離を100mmに設定しておく。さらに、他方のストッパ部43(図4では上側のストッパ部43)の傾斜面46と、ベース33側に固定されているストッパ片56の傾斜面61との距離を(100mm+α)に設定しておく。このストッパ片56の設定は、ストッパ片56自体を回転軸54の軸方向に移動させることで、無段階で設定することができる。なお、このαは1mmより小さな値であり、溶接終了端の位置とストッパ部43とストッパ片56とが当接する位置が左右方向で異なるので、その角度により決まるからである。
【0032】今、後行板材3を前進させていくと、まず、図4の下側のストッパ部43の傾斜面46とストッパ片55の傾斜面60が当接する。この時点では、上側のストッパ部43の傾斜面46とストッパ片56の傾斜面61とは、まだαの隙間が生じている。そこで、さらに上側のシリンダ41を駆動させると、ストッパ片56の傾斜面61にストッパ部43の傾斜面46が当接するまで入側クランプ5の端部側が駆動される。これにより、図4に示すように、後行板材3の溶接終了端側は1mm前進して、後行板材3の溶接終了端側は、先行板材2の端部との重ね合わせ部分を広くすることができる。
【0033】ここで、入側クランプ5を前進させる場合、図7に示すようにループ13が存在しているので、もともと前進が可能であり、しかも、溶接終了端側を前進させる場合にも、ループ13の存在により後行板材3にテンションをかけることなく、容易に前進させることができる。また、ローラ12がない場合では、上述したように、シーム溶接装置1の前段側の後行板材3にはある程度の余裕を持たせてテンションがかからないようにしているので、後行板材3を前進させるのも容易である。
【0034】なお、後行板材3の溶接終了端側の重ね合わせ部分を広くする補正量は、溶接する先行板材2や後行板材3の鋼種や、板厚、板幅により異なるものであり、これらの条件は予めテストをしておいて決定するものである。そして、その補正量に応じて、図4に示すαを決定すべくストッパ片56をストッパ片55より差を付けて位置決めを行なうものである。
【0035】このように本実施形態では、後行板材3をクランプしている入側クランプ5側を駆動して先行板材2との溶接終了端側の重ね合わせ部分を広くするようにしているので、後行板材3を補正量分を前進させる場合も後行板材3に負荷をかけることなく容易に前進させて補正を行なうことができる。これにより、簡単な構成でもって先行板材2と後行板材3の端部同士の溶接を綺麗に行なうことができる。また、従来とは異なり、先行板材2側にループを設ける必要もない。
【0036】(第2の実施の形態)後行板材3の先行板材2との溶接終了端側の補正量は、1mm前後であるので、部材間のクリアランスを利用して補正を行なうようにしたのが本実施形態である。図5及び図6に示すように、ガイドレール34上を移動させるためのローラー部36には、該ガイドレール34の側面と転動する鋼球63が複数個内蔵されている。入側クランプ5を前進、後退させる場合に、ローラー部36の各鋼球63がガイドレール34の面を転動して入側クランプ5をスムーズに移動させるものである。
【0037】入側クランプ5を前進させていき、図4に示すストッパ部43とストッパ片55、56とがそれぞれ同時に当接した時に入側クランプ5はその位置で停止することになる。そして、図4に示す上側のシリンダ41をさらに駆動すると各ローラー部36の各鋼球63のクリアランスや、鋼球63自体の若干の弾性により溶接終了端側の入側クランプ5を移動させることができる。
【0038】すなわち、ローラー部36を1つとした場合、各鋼球63のクリアランスにより入側クランプ5の移動量を多くすることができるが、入側クランプ5の四隅にローラー部36を設けているので、入側クランプ5を片側にずらせようとした場合、鋼球63全体のクリアランスは余り多くない。しかし、溶接終了端側をずらせようとする補正量は1mm前後であるので、シリンダ41を駆動して後行板材3の溶接終了端側を移動させることは可能である。
【0039】このように、この実施形態では、ローラー部36のクリアランスを利用しているので、特に別途の部材や装置を用いることなく、溶接終了端側の重ね合わせ部分の広がりを持たせて、先行板材2と後行板材3の端部同士を綺麗に溶接を行なうことができる。
【0040】
【発明の効果】本発明の請求項1記載のシーム溶接装置によれば、後行板材をクランプしている入側クランプ側を駆動して先行板材との溶接終了端側の重ね合わせ部分を広くするようにしているので、後行板材を補正量分を前進させる場合も後行板材に負荷をかけることなく容易に前進させて補正を行なうことができる。これにより、簡単な構成でもって先行板材と後行板材の端部同士の溶接を綺麗に行なうことができる。また、従来とは異なり、先行板材側にループを設ける必要もない。
【0041】請求項2記載のシーム溶接装置によれば、一方のストッパ部とストッパ片との間の距離より、他方のストッパ部とストッパ片との間の距離を若干広く設定するだけで、溶接終了端側の重ね合わせ部分の広がりを容易に設定でき、また、当該距離を任意に変えて、板材の鋼種、板厚、板幅に応じて溶接終了端側の重ね合わせ部分の広がりを容易に変えることができる。
【0042】請求項3記載のシーム溶接装置によれば、上記ストッパ部の当接面を傾斜面にすると共に、ストッパ片の当接面を上記傾斜面と同方向に傾斜する傾斜面とし、ストッパ片を後行板材の板幅方向にスライド自在としているので、溶接終了端側の重ね合わせ部分の広がり寸法を容易に無段階で変更でき、板材の鋼種、板厚、板幅に応じて容易に対応することができる。
【0043】請求項4記載のシーム溶接装置によれば、出側クランプ4側の方向に沿って敷設されたガイドレールと、このガイドレールに跨がってスライド自在とし、上記入側クランプ側に固定されているローラー部とを備え、このローラー部にはガイドレールの面に沿って転動する複数の鋼球を内蔵し、この鋼球とガイドレールの接触面のクリアランスを利用しているので、特に別途の部材や装置を用いることなく、溶接終了端側の重ね合わせ部分の広がりを持たせて、先行板材と後行板材の端部同士を綺麗に溶接を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のシーム溶接装置の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態の入側クランプ側の拡大正面図である。
【図3】本発明の実施の形態のシーム溶接装置の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態の溶接終了端側を補正する場合の説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるローラー部の拡大断面図である。
【図7】シーム溶接装置における先行板材と後行板材とを溶接する場合の工程を示す図である。
【図8】従来例の問題点を説明するための溶接時の説明図である。
【図9】従来例の溶接終了端側の補正を示す図である。
【図10】(a)〜(c)は先行板材と後行板材とを溶接する場合の工程を示す図である。
【図11】(a)〜(c)は先行板材と後行板材とを溶接する場合の工程を示す図である。
【符号の説明】
1 シーム溶接装置
2 先行板材
3 後行板材
4 出側クランプ
5 入側クランプ
7 円板電極
8 円板電極
34 ガイドレール
36 ローラー部
43 ストッパ部
46 傾斜面
55 ストッパ片
56 ストッパ片
60 傾斜面
61 傾斜面
63 鋼球

【特許請求の範囲】
【請求項1】先行板材(2)の後端部側を上下からクランプする出側クランプ(4)と、この出側クランプ(4)と対向配置され後行板材(3)の前端部側を上下からクランプする入側クランプ(5)と、この入側クランプ(5)を上記出側クランプ(4)側に前進、後退させる付勢手段と、この付勢手段により後行板材(3)をクランプしている入側クランプ(5)を一定量前進させて上記先行板材(2)の後端部と後行板材(3)の前端部との重ね合わせ部分を板幅に沿って溶接する一対の円板電極(7)(8)とを備え、上記円板電極(7)(8)により先行板材(2)と後行板材(3)の重ね合わせ部分を加圧通電して抵抗発熱により溶接を行なうシーム溶接装置において、上記先行板材(2)の後端部に上記後行板材(3)の前端部の重ね合わせ部分の幅を溶接開始端より溶接終了端へ溶接による広がりを補正して大きくする補正手段を上記入側クランプ(5)側に設けていることを特徴とするシーム溶接装置。
【請求項2】入側クランプ(5)側に設けた一対のストッパ部(43)(43)と、上記入側クランプ(5)を一定量前進させた後に上記一対のストッパ部(43)(43)にそれぞれ当接して入側クランプ(5)を停止させる一対のストッパ片(55)(56)とを設け、一方のストッパ部(43)とストッパ片(55)との間の距離より、他方のストッパ部(43)とストッパ片(56)との間の距離を若干広く設定して上記補正手段を構成していることを特徴とする請求項1記載のシーム溶接装置。
【請求項3】上記ストッパ部(43)の当接面を傾斜面(46)にすると共に、ストッパ片(56)の当接面を上記傾斜面(46)と同方向に傾斜する傾斜面(61)とし、ストッパ片(56)を後行板材(3)の板幅方向にスライド自在としていることを特徴とする請求項2記載のシーム溶接装置。
【請求項4】出側クランプ(4)側の方向に沿って敷設されたガイドレール(34)と、このガイドレール(34)に跨がってスライド自在とし、上記入側クランプ(5)側に固定されているローラー部(36)とを備え、このローラー部(36)にはガイドレール(34)の面に沿って転動する複数の鋼球(63)を内蔵し、この鋼球(63)とガイドレール(34)の接触面のクリアランスを利用して上記補正手段を構成していることを特徴とする請求項1記載のシーム溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2002−321061(P2002−321061A)
【公開日】平成14年11月5日(2002.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−131743(P2001−131743)
【出願日】平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願人】(000110594)ナストーア株式会社 (9)