説明

シーリング方法

【課題】 サイディングで形成された目地のシーリング方法において、大気中の水分や酸素などにより硬化するシーリング材を充填し、硬化させたとき、シーリング材の表面と底面の両側から均一に硬化することにより、硬化途中にシーリング材が変位を受けても、損傷のないゴム状弾性体硬化物を形成するシーリング方法を提供する。
【解決手段】 通気性の成形体からなる目地底を有するサイディング目地に、シーリング材を充填し硬化させるシーリング方法である。通気性の成形体としては、通気性の連続気泡発泡成形体が好ましい。シーリング材は、大気に接触する面から硬化するシーリング材一液湿気硬化型ウレタン系シーリング材、一液湿気硬化型変成シリコーン系シーリング材、一液湿気硬化型シリコーン系シーリング材などの大気に接触する面から硬化するシーリング材が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイディング目地においてシーリング材が硬化途中に変位を受けても、大気に接する表面と接しない裏面の両方から均一に硬化することにより、損傷のないゴム状弾性体硬化物を形成するシーリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築の分野において、主に戸建用や集合住宅用の建築物の外壁を形成する部材として、窯業系や金属系のサイディングと呼ばれる、予め工場において製造された乾式の板を貼り付けて外壁を形成する建築方法が、木質の骨組みにビスなどで留めて張り付けるだけの乾式工法であるため、短期間に施工でき低コストで建築できる利点を有しているので、広く採用されている。
このサイディングで形成された外壁においては、サイディングとサイディングとの突合せ部分、或いはサッシ回りとサイディングとの突合せ部分などに目地が形成され、この目地には雨漏りを防止するため、シーリング材を充填し硬化、接着させて防水する必要があり、各種シーリング材が使用されている。このサイディング外壁建築の分野においては、主剤と硬化剤を混合する手間がなく作業性に優れていることにより、1成分形湿気硬化型のウレタン系や変成シリコーン系などの空気に接触する表面から硬化するシーリング材が広く使用されている。
【0003】
一般に、サイディングで形成された目地においては、サイディングの乾燥による収縮や昼夜の温度差による膨張と収縮の繰り返し或いは風圧などにより、モルタルやコンクリート等の他の建築物外壁に比べて動きが大きいため、その目地の幅も大きく変動し、この目地に充填されるシーリング材もまた、硬化途中に目地幅の変動による大きな変位を受けることとなる。また、前記の1成分形湿気硬化型のシーリング材などの場合は、大気中の水分(湿気)に接触するシーリング材の大気に開放された表面から内部へと硬化が進行し、さらに従来、サイディング部材を構成部材とする目地の目地底を形成する材料としては、金属製のハットジョイナーや、図10に示すような独立気泡のポリエチレン製バックアップ材15などの通気しない材料が用いられており、シーリング材の底部となる面からは硬化が進行せず未硬化の状態にあり、表面と内部の硬化速度に差が生じるため、シーリング材が硬化途中に目地幅の変動による変位を受けたとき、内部の未硬化部分が変位に追従できず亀裂などの損傷が生じ、硬化後のシーリング材表面の皺等の外観悪化や漏水事故につながる不具合を起こしてしまう問題がある。この問題は特に、春秋の昼夜の温度差が大きな時期に発生しやすい傾向がある。
【0004】
なお、シーリング材の表面に隆起する楕円形状の膨らみを効果的に制御することを目的とした通気性を有しない表面層を形成したバックアップ材を、表面層が目地部の開口側に向くように目地部の奥部に装填した窯業系サイディングボードの目地構造が提案されているが(特許文献1参照)、硬化途中に変位を受けたときに亀裂などの損傷を生じる不具合を防止することが依然としてできず、この問題の解決が求められている。
【特許文献1】特開平10−219960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来公知技術の問題点に鑑み、サイディングで形成された目地のシーリング方法において、大気中の水分や酸素などにより硬化するシーリング材を充填し、硬化させたとき、シーリング材の表面と底面の両側からほぼ均一に硬化することにより、硬化途中にシーリング材が変位を受けても、損傷のないゴム状弾性体硬化物を形成するシーリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、サイディングで形成された建築物の主として外壁の目地において、目地の底部分となる箇所に通気性の成形体を装填して目地底を形成し、その目地に建築用シーリング材を充填、施工し硬化させることにより、シーリング材が硬化する途中において、目地幅方向の変動により変位を受けても、実質的に損傷のないシーリング材硬化物を得ることができる建築のシーリング方法を見出し、本発明を完成したものである。
すなわち本発明は、以下の(1)〜(12)に示されるものである。
【0007】
(1) 通気性の成形体からなる目地底を有するサイディング目地に、シーリング材を充填し硬化させること、を特徴とするシーリング方法。
(2) 前記の通気性の成形体が、通気性の連続気泡発泡成形体である、前記(1)のシーリング方法。
(3) 前記の通気性の成形体が、通気性の接着防止部材である、前記(1)のシーリング方法。
(4) 前記の通気性の成形体が、通気性のバックアップ材である、前記(1)のシーリング方法。
(5) 前記の通気性の成形体が、通気性のジョイナーである、前記(1)のシーリング方法。
(6) 前記の通気性の成形体の通気する面が、シーリング材に接触する向きに目地底を形成している、前記(1)〜(5)のいずれかのシーリング方法。
(7) 前記の通気性の連続気泡発泡成形体が、ポリウレタン系連続気泡発泡成形体である、前記(2)のシーリング方法。
(8) 前記シーリング材が、大気に接触する面から硬化するシーリング材である、前記(1)〜(7)のいずれかのシーリング方法。
(9) 前記の大気に接触する面から硬化するシーリング材が、一液湿気硬化型ウレタン系シーリング材である、前記(8)のシーリング方法。
(10) 前記の大気に接触する面から硬化するシーリング材が、一液湿気硬化型変成シリコーン系シーリング材である、前記(8)のシーリング方法。
(11) 前記の大気に接触する面から硬化するシーリング材が、一液湿気硬化型シリコーン系シーリング材である、前記(8)のシーリング方法。
(12) 前記シーリング材の大気に開放された表面側からの硬化速度と、底面側からの硬化速度がほぼ同じである、前記(1)〜(11)のいずれかのシーリング方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により初めて、サイディングで形成された目地のシーリング方法において、シーリング材、特に大気中の水分や酸素などにより大気に接触する面から硬化するシーリング材を充填し硬化させたとき、シーリング材の表面と底面の両側からほぼ均一に硬化が進行することにより、硬化途中にシーリング材が大きな変位を受けても、損傷のないゴム状弾性体硬化物を形成するシーリング方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明におけるサイディング目地について説明する。
サイディングを主として外壁材として用いる(内壁材として用いる場合も含めて)建築物においては、外壁となる部分の柱や胴縁などの主に木質材料の下地に、窯業系や金属系のサイディング部材をビスなどで張り付けて外壁を構成している。このサイディング外壁においては、サイディング部材とサイディング部材の突合せ部分、或いはサイディング部材とサッシ部材との突合せ部分などには、部材相互の膨張による反りや破壊を防止するため、緩衝部分となる目地が設けられる。このサイディングを構成部材の少なくとも一つとして形成される目地がサイディング目地である。
このサイディング目地に通気性の(通気性を有するとも称す)成形体を装填して目地底を形成し、次いで防水とサイディングの伸縮や反り等による歪みを吸収する目的で、シーリング材、特に大気に接触する面から硬化する弾性シーリング材を充填し、硬化させてシールをした目地を形成する方法が本発明のシーリング方法である。
本発明のシーリング方法をとることにより、硬化途中にシーリング材が大きな変位を受けても、損傷のないゴム状弾性体硬化物となり、漏水等の不具合のないシールしたサイディング目地を形成することができるものである。これは、目地に充填したシーリング材の大気に開放された表面に硬化した皮膜が形成されるのとほぼ同時に、通気性の成形体に接触するシーリング材の底面側にも硬化した皮膜が形成されるため、応力や歪などの集中に伴う亀裂などの損傷が発生しないためである。
【0010】
具体的に、通気性の成形体として通気性の連続気泡発泡成形体を目地底に用いるシーリング方法を図を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。図1の(1)に示すように、サイディング部材2とサイディング部材3とをWの間隔を有するように離して対向させ、胴縁部材20にビスなどを用いて張り合わせて外壁を形成するとともに目地1を形成する。次いで、この目地1に通気性を有する連続気泡発泡成形体からなる平板状のバックアップ材4を目地の深さがDとなるように装填して目地の底を形成する。このサイディング部材2と3のそれぞれの端面2aと3aならびにバックアップ材4の表面4aの三面に囲まれた空間にシーリング材が充填される。前記Wが目地幅となり、通常Wは好ましくは5〜15mmの範囲で設定される。なお、図1においてビスの図示は省略している。次いで、シーリング材が充填されたとき被接着面となる2aと3aにプライマーを刷毛などで塗布し、20分間〜1時間程度の所定時間放置してオープンタイムをとった後、大気に接触する面から硬化する弾性シーリング材を充填し、目地からはみ出た余分なシーリング材をヘラでかきとって表面を平らに仕上げ、硬化させて、図1の(2)に示すシールをした目地を形成する。なお、硬化後のシーリング材表面は通常ヘラ仕上げと溶剤の揮発により少し窪んでいる。
図3は、連続気泡発泡成形体からなるハットジョイナー6を使用した例であり、図4は、サイディング部材2とサッシ回り8との突合せの部分に設けた目地に、連続気泡発泡成形体からなる丸棒状のバックアップ材7を用い目地底を形成し、この目地にシーリング材5を充填し、硬化させてシールした目地を形成した例である。図4において、サイディング部材2は柱21に取り付けられた胴縁20にビス止めされており、このビスの図示は省略している。
なお、図1において、通気性を有する連続気泡は黒の点で示しているが、図1の連続気泡発泡成形体の一部分Aを拡大して、連通した連続気泡の状態を模式的に示したのが図2のAである。図2においては、白抜きの部分が気泡を示している。図3、図4ならびに後述する図6〜図9においても同様である。
前記バックアップ材4、7或いはハットジョイナー6は目地の底を形成するとともに、目地の深さDを調節する目的で使用するものであり、本発明においては、これらの目地底を形成する材料として通気性を有する成形体である通気性を有する連続気泡発泡成形体を用いることを特徴とし、この通気性を有する連続気泡発泡成形体が、その通気する面がシーリング材に接触する向きとなるように装填される。このような構成をとることにより、シーリング材の大気に開放された面とは反対側の底面が、成形体の通気する面と接触することにより、シーリング材の底面からも大気中の水分(湿気)や酸素を供給することが可能となる。
なお、本発明において、バックアップ材、ハットジョイナー、後述のボンドブレーカーは目地底を形成する成形体の部品名である。
【0011】
さらに具体的に説明すると、前記目地に、例えば一液湿気硬化型のウレタン系シーリング材などの、大気に接触する表面から硬化が進行するシーリング材を充填し硬化させたとき、シーリング材の大気に開放された表面から、大気中の水分(湿気)により硬化が進行するとともに、シーリング材の底面となる連続気泡発泡体の通気する面と接触する境界面からも通気により大気中の水分が供給されることにより、シーリング材の底面からも硬化が進行する。したがって、シーリング材全体としてより均一に硬化が進行することにより、シーリング材が硬化する途中に、サイディング部材などの収縮や膨張による目地幅方向の変動(これを目地幅方向のムーブメントとも称す)により、シーリング材が変位を受けても、硬化後のシーリング材に実質的に亀裂や表面の皺などの損傷のないシーリング材硬化物となり、サイディングを構成部材のひとつとし、通気性を有する成形体からなる目地底と、シーリング材硬化物とから構成された建築物のシールした目地を形成することができる、硬化途中のムーブメント追従性のよいシーリング方法である。また、ここにおいて、シーリング材の大気に開放された表面側からの硬化速度と、底面側からの硬化速度がほぼ同じであることが好ましい。「ほぼ同じ」とは、底面側から硬化する硬化膜の厚さが、表面側から硬化する硬化膜の厚さの50%以上、さらに70%以上、特に80%以上となることが損傷防止から好ましいことを意味する。
なお、本発明において、「実質的に損傷のない」とは、シーリング材の充填、施工の仕方、或いは硬化の状況により、硬化後のシーリング材の内部に小さな気泡や硬化物表面に少しの皺が生じることがあるが、長期に亘って漏水などの事故につながる損傷ではないことを意味する。
【0012】
次に、本発明において用いられる通気性の連続気泡発泡成形体について説明する。
連続気泡発泡成形体は、具体的には例えば、発泡剤等を利用して発泡させて多数の気泡を形成させた合成樹脂製や合成ゴム製のものであり、本発明の目的を達成するために、この気泡は連通した連続気泡であって通気性を有することが必要である。その種類としては、前述のハットジョイナーに代表されるジョイナー或いはバックアップ材と呼ばれるものなどが挙げられる。
ジョイナーは、前述したように目地の深さを調節する以外に、目地の幅が一定となるようにサイディング部材を張り合わせる作業を容易にさせる目的で使用され、図3で表すような、帽子の形状をしたものが代表的なものとして挙げられる。図3、図8で表すように、ジョイナーの全部が連続気泡発泡体からできていても良いし、図9で表すように、ジョイナーの目地底となるシーリング材と接触する部分12だけが連続気泡発泡体からできていて、他の部分13と14は鋼板やポリプロピレンなどの非発泡体でできていてもよい。
バックアップ材は、前述したように、目地が所定の深さとなるように目地に挿入して目地底を形成する目的で使用され、その形状は、図1及び図6に示すような平板状、図4及び図7に示すような丸棒状の他に、半円棒状、角棒状、紐状など各種挙げられる。連続気泡発泡成形体の材質としての合成樹脂としては、熱硬化性、熱可塑性のどちらでも構わず、例えばポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂など各種挙げられ、材質としての合成ゴムとしては、EPDMゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、SBR、NBR、シリコーンゴムなど各種挙げられる。
また、前記バックアップ材やジョイナーは、通気性の連続気泡発泡成形体以外に、前記合成樹脂などの成形体に針等の工具で物理的に多数の穴を開けたもの、極めて径の小さな穴のあいた合成樹脂製等のパイプを集合し接着剤や加熱融着などで成形したもの、合成樹脂や無機物等の粒状物を集合して接着剤や加熱等で固めて成形したものなど各種挙げられるが、安価に製造でき使いやすい点で、通気性を有する連続気泡発泡成形体が好ましい。
なお、バックアップ材やジョイナーなどの目地底となる表面は、シーリング材が接着しない性質を有していることが好ましい。これは、図1を用いて説明すると、面2a、面3a及び面4aの三面にシーリング材が接着(いわゆる三面接着)すると、目地が変位したときに応力が三面の角部分に集中して接着破壊や凝集破壊を起こしやすくなるのを防止するためである。この非接着の性質は材料自身が非接着性であってもよいし、シーリング材と接触する表面がシリコーン系離型剤などで離型処理されてもよい。前記バックアップ材又はジョイナーは、目地の設計に応じて適宜使い分ければよい。
【0013】
次に、通気性を有する成形体として通気性を有する接着防止部材を用いるシーリング方法について、図5を用いて説明する。
図5は、サイディング9のオス型に成形した端部側と、サイディング10のメス型に成形した端部側とを組み合わせて形成した合いじゃくり目地の例である。目地の底となる部分にテープ状の通気性の接着防止部材11を、通気する面がシーリング材と接触する向きとなるように貼付し、目地底を形成する。次いで、シーリング材を充填したとき被接着面となる9aと10aにプライマーを刷毛などで塗布し、所定時間放置後、表面9aと10aならびに目地底の表面11aの三面に囲まれた空間に、大気に接触する面から硬化する弾性シーリング材を充填し、目地からはみ出た余分なシーリング材をヘラでかきとって表面を平らにし、硬化させてシールをした目地を形成する方法(シーリング方法)を行う。
この接着防止部材11はボンドブレーカーとも称し、フッソ樹脂系多孔質薄膜材料(商標ゴアテックス)等の前記バックアップ材の材料として挙げたのと同様の各種合成樹脂やその繊維などからなる多孔質薄膜状材料、織布もしくは不織布、或いは連続気泡発泡体からなる膜状材料などが挙げられ、その形状はテープ状が好ましい。そして接着防止部材11の表面11aは、接触するシーリング材5が接着しない性質を有することが必要であり、この非接着性の性質は材料自身が非接着性であってもよいし、シーリング材と接触する表面がシリコーン系離型剤などで離型処理されていてもよい。
【0014】
次に、本発明において用いられるシーリング材について説明する。
シーリング材は、前述したように、空気と接触する面から硬化する一液硬化型のシーリング材が、主剤と硬化剤を混合する手間がなく、更に混合不良による硬化不良の問題もなく作業性が良好な点及び本発明のシーリング方法の効果を最大限に発揮できる点で好適に挙げられるが、主剤と硬化剤とを混合して硬化させる二液硬化型シーリング材を使用することももちろん可能である。
一液硬化型のシーリング材としては、例えば、空気中の酸素と接触することにより硬化が進行する変成ポリサルファイド系の一液酸素硬化型のシーリング材、空気中の水分(湿気)と接触することにより硬化が進行する一液湿気硬化型のシーリング材が挙げられ、これらのうち、使い易く、低モジュラス、高伸びでゴム弾性に優れていることより、一液湿気硬化型のシーリング材が好ましい。
【0015】
前記一液湿気硬化型シーリング材としては、具体的には、一液湿気硬化型のウレタン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材、シリコーン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材などが挙げられる。これらのうち、作業性に優れ、硬化後低モジュラス、高伸びで接着性、耐候性などに優れている点で、ウレタン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材、シリコーン系シーリング材が好ましく、特に内部硬化性に優れ、表面汚染性が少ない点で、ウレタン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材が好ましい。
【0016】
一液湿気硬化型ウレタン系シーリング材は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを硬化成分として含有し、これに後述する各種添加剤を配合してシーリング材としたものである。イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基が湿気(水分)と反応し、尿素結合を形成して架橋、硬化するものであり、活性水素化合物と、有機イソシアネートとを、活性水素(基)に対してイソシアネート基過剰の条件で、或いは活性水素化合物としてアルコール性水酸基含有化合物を使用した場合は、水酸基に対してイソシアネート基過剰の条件で反応させて得られるものが好適である。
更に具体的には、活性水素化合物(特にアルコール性水酸基含有化合物)と有機イソシアネートとを、イソシアネート基/活性水素(基)(特に水酸基)の当量比が1.1〜10/1.0、特に1.3〜2.5/1.0となる範囲で同時或いは逐次に反応させて、好適に製造することができる。当量比が1.1/1.0を下回ると、得られるウレタンプレポリマーの粘度が高くなりすぎてゲル化の危険性が生じ、当量比が10/1.0を超えると、イソシアネート基が湿気と反応して生成する炭酸ガスの発生量が多くなって発泡の原因となるため好ましくない。
【0017】
前記活性水素化合物としては、ポリオール、アミノアルコール、ポリアミンなどが挙げられる。
ポリオールは、低分子のポリオールと高分子のポリオールがあり、このうち高分子のポリオールが好ましい。高分子のポリオールとしては、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテル・エステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、炭化水素系ポリオール等が挙げられ、数平均分子量500以上、好ましくは1,000以上のものである。
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、アルキレンオキシドを開環付加重合させたものや、活性水素を2個以上含有する化合物などの開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させたものなどが挙げられる。
開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の低分子多価アルコール類、ソルビトール、シュークロース、グルコース、ラクトース、ソルビタン等の糖類系低分子多価アルコール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の低分子多価フェノール類、エチレンジアミン、ブチレンジアミン等の低分子ポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類、アジピン酸、テレフタル酸等の低分子ポリカルボン酸類、これらの少なくとも1種にアルキレンオキシドを反応させて得られる分子量500未満の低分子量のポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
すなわち、ポリオキシアルキレン系ポリオールは、具体的には、ポリオキシエチレン系ポリオール、ポリオキシプロピレン系ポリオール、ポリオキシブチレン系ポリオール、ポリテトラメチレンエーテル系ポリオール、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)−ランダム或いはブロック共重合系ポリオール、ポリ(オキシプロピレン)−ポリ(オキシブチレン)−ランダム或いはブロック共重合系ポリオールなどを挙げることができ、また、これらの各種ポリオールと有機イソシアネートとを、イソシアネート基に対し水酸基過剰で反応させて、分子末端を水酸基としたものも挙げられる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールは、作業性などの点から、数平均分子量が500〜100,000、更に1,000〜30,000、特に1,000〜20,000のものが好ましく、また、1分子当たり平均のアルコール性水酸基の個数は2個以上、更に2〜4個が好ましく、2〜3個が最も好ましい。
更に、ポリオキシアルキレン系ポリオールは、その製造時に使用する触媒として、セシウム系化合物(水素化セシウム、セシウムメトキシド、セシウムエトキシド等のセシウムアルコキシド、水酸化セシウムなど)、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポルフィリン、ホスファゼニウム化合物、複合金属シアン化錯体など、なかでも亜鉛ヘキサシアノコバルテートのグライム錯体やジグライム錯体等の複合金属シアン化錯体を使用して得られる、総不飽和度が0.1meq/g以下、更に0.07meq/g以下、特に0.04meq/g以下のものが好ましく、分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比=Mw/Mn〕が1.6以下、特に1.0〜1.3の狭いものが、得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの粘度を低下でき、かつ硬化後のゴム弾性物性が良好となる点と、それから得られる1液湿気硬化型ウレタン系シーリング材の硬化途中のムーブメント追従性が良好となる点で好ましい。
ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオールとしては、例えば、公知のコハク酸、アジピン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、それらの酸エステル、酸無水物等と、前記のポリオキシアルキレン系ポリオールの合成に開始剤として使用される活性水素を2個以上含有する化合物との脱水縮合反応で得られる化合物が挙げられる。更に、ε−カプロラクトン等の環状エステル(すなわちラクトン)モノマーの開裂重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオール等が挙げられる。
ポリエーテル・エステルポリオールとしては、例えば、前記ポリオキシアルキレン系ポリオールと前記のジカルボン酸、酸無水物等とから製造される化合物が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前記のポリオキシアルキレン系ポリオールの製造に用いる低分子多価アルコール類と、ホスゲンとの脱塩酸反応、或いはジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応などから得られる化合物が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリルポリオールとしては、水酸基を含有するヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と共重合したものなどが挙げられる。
炭化水素系ポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオールや水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール、塩素化ポリエチレンポリオール、塩素化ポリプロピレンポリオールなどが挙げられる。
ポリオールとしては更に、前記ポリオキシアルキレン系ポリオールの製造原料として挙げた数平均分子量500未満の低分子多価アルコール類などが挙げられる。
ポリアミンとしては、ポリプロピレングリコールの末端ジアミノ化物などの、数平均分子量500以上でポリオキシアルキレン系ポリオールの末端がアミノ基となったポリオキシアルキレンポリアミン等の高分子ポリアミンが挙げられる。
ポリアミンとしては更に、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン等の数平均分子量500未満の低分子ポリアミンが挙げられる。
アミノアルコールとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等が挙げられる。
これらはいずれも単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
これらのうち、得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの粘度が低く、内部硬化性が良好なため、これらから得られる一液湿気硬化型ウレタン系シーリング材組成物の粘度が低く作業が良好な点と、硬化途中のムーブメント追従性が良好な点で、高分子のポリオールが好ましく、更にポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましく、特にポリオキシプロピレン系ポリオールが好ましい。
また、前記活性水素化合物として、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの変性用として、モノオール化合物も場合により使用できる。モノオール化合物としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低分子モノアルコール類の他、これら低分子モノアルコール類を開始剤として、前記プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを開環付加重合させた、後述の液状ポリオキシアルキレン系ウレタン樹脂の合成に使用されるポリオキシアルキレン系モノオールと同様の化合物が挙げられる。このうちポリオキシプロピレン系モノオールが好ましい。
なお、前記ポリオキシアルキレン系ポリオールとは、分子1モル中の水酸基を除いた部分の50質量%以上、更に80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上がポリオキシアルキレンで構成されていれば、残りの部分がウレタン、エステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィンなどで変性されていてもよいことを意味するが、水酸基を除いた部分の95質量%以上がポリオキシアルキレンからなるポリオールが最も好ましい。
【0018】
前記有機イソシアネートとしては、具体的には、有機ポリイソシアネートや、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの変性用として、場合により使用される有機モノイソシアネートなどが挙げられる。
有機ポリイソシアネートは、分子内にイソシアネート基を2個以上含有する化合物であり、具体的には例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート類、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート類、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等のフェニレンジイソシアネート類、2,4,6−トリメチルフェニル−1,3−ジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニル−1,3−ジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート類、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート類などの芳香脂肪族ポリイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。更に、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネートなどの有機ポリイソシアネートも使用できる。また、これらの有機ポリイソシアネートを変性して得られる、ウレトジオン結合、イソシアヌレート結合、アロファネート結合、ビュレット結合、ウレトンイミン結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合、ウレア結合などを1以上含有する変性イソシアネートも使用できる。
これらは単独で或いは2種以上組み合わせて使用できるが、これらのうち得られる1成分形ウレタン系シーリング材組成物の硬化後の接着性が良好な点で、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートが好ましく、さらにジフェニルメタンジイソシアネート類が好ましく、特に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
有機モノイソシアネートは、n−ブチルモノイソシアネート、n−ヘキシルモノイソシアネート、n−テトラデシルモノイソシアネート、n−ヘキサデシルモノイソシアネート、オクタデシルモノイソシアネートなどが挙げられる。これらは単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成の際には、後述の硬化促進触媒と同様の反応触媒を用いることができる。
また、更に公知の有機溶媒を用いることもできる。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量は0.3〜15.0質量%が好ましく、特に0.5〜5.0質量%が好ましい。イソシアネート基含有量が0.3質量%未満の場合は、ウレタンプレポリマー中の架橋点が少ないため、十分な接着性が得られない。イソシアネート基含有量が15.0質量%を超える場合は、ウレタンプレポリマー中の架橋点が多くなりゴム弾性が悪化する点と、湿気との反応による炭酸ガスの発生量が多くなり硬化物が発泡する点で好ましくない。
なお、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、GPCによる分子量分布測定において、主ピーク(ピーク面積の50%を超える面積を有するピーク)の分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下、特に1.0〜1.3の狭いものが得られるシーリング材の内部硬化性が良好で本発明の効果を最大限に発揮できる点で好ましい。
【0020】
前記一液湿気硬化型変成シリコーン系シーリング材は、架橋性シリル基含有樹脂を硬化成分として含有し、これに後述する各種添加剤を配合してシーリング材としたものである。架橋性シリル基含有樹脂(変成シリコーン樹脂とも称す)としては、例えば特開昭52−73998号公報、特開昭55−9669号公報、特開昭59−122541号公報、特開昭60−6747号公報、特開昭61−233043号公報、特開昭63−6003号公報、特開昭63−112642号公報、特開平3−79627号公報、特開平4−283259号公報、特開平5−287186号公報、特開平11−80571号公報、特開平11−116763号公報、特開平11−130931号公報中に開示されているもの、具体的には、分子内に架橋性シリル基を含有する、主鎖がビニル系重合体、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタンジエンなどの脂肪族炭水化水素系重合体、ポリエステル系重合体、ポリサルファイド重合体、これらの共重合体、混合物などが挙げられる。この架橋性シリル基が、湿気により加水分解、縮合して硬化が進行するものであり、架橋性シリル基は、組成物の硬化性や硬化後の物性などの点から、分子内に0.4個以上、特に1.0〜5.0個含まれるのが好ましい。更に架橋性シリル基は、架橋しやすく製造しやすい次の一般式で示されるものが好ましい。
【化1】

(式中、Rは炭化水素基であり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。Xで示される反応性基はハロゲン原子、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基及びアミノオキシ基より選ばれる加水分解性の基であり、Xが複数の場合には、Xは同じ基であっても異なった基であってもよい。このうちXはアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が最も好ましい。aは0、1又は2の整数であり、0又は1が最も好ましい。)
【0021】
架橋性シリル基の主鎖への導入は、例えば、以下の公知の方法で行うことができる。
(A)末端に水酸基などの官能基を有するポリオキシアルキレン系やビニル系などの重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物(例えばアリルイソシアネート)を反応させ、次いで、得られる反応生成物に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
(B)末端に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基などの官能基を有するポリオキシアルキレン系やビニル系などの重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基及び架橋性シリル基を有する化合物を反応させる。
この反応性官能基及び架橋性シリル基を有する化合物としては、アミノ基含有シラン類、メルカプト基含有シラン類、エポキシ基含有シラン類、ビニル型不飽和基含有シラン類、塩素原子含有シラン類、イソシアネート基含有シラン類、ハイドロシラン類などが挙げられる。
(C)重合性不飽和結合と架橋性シリル基を有する化合物(例えば、CH=CHSi(OCHやCH=CHCOO(CHSi(OCH)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とを共重合させる。
(D)重合性不飽和結合と官能基を有する化合物(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート或いは(メタ)アクリル酸アリルなど)を(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に添加して共重合させ、次いで生成する共重合体を前記の反応性官能基及び架橋性シリル基を有する化合物(例えば、イソシアネート基と−Si(OCH基を有する化合物や、トリメトキシシラン、トリエトキシシランなどの加水分解性基を有するヒドロシラン類)と反応させる。
【0022】
架橋性シリル基含有樹脂の具体的な商品例としては、主鎖がポリオキシプロピレン系のものとして、カネカ社製のカネカMSポリマーのS203やS303、旭硝子社製のエクセスターのES−S2410、ES−S2420、ES−S3610、ES−S3620、ES−S3630などが挙げられ、主鎖がアクリル変性したポリオキシプロピレンであるものとして、カネカ社製のカネカMSポリマーのS903、MSX908、MSX911などが挙げられる。
また、前述のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成で挙げたのと同様のポリオールとイソシアネート基含有シラン類とをウレタン化反応させて得られる架橋性シリル基含有樹脂も挙げられる。
架橋性シリル基含有樹脂のGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は1,000以上、特に6,000〜30,000で、主ピーク(ピーク面積の50%を超える面積を有するピーク)の分子量分布が1.6以下、特に1.0〜1.3、の狭いものが、シーリング材の粘度が低いため取り扱い易く、硬化後の強度、伸び、モジュラスなどの物性が優れており、かつ内部硬化性に優れ、本発明の効果を最大限に発揮できる点で好ましい。
【0023】
前記一液湿気硬化型シリコーン系シーリング材は、シリコーン樹脂を硬化成分として含有し、これに後述する各種添加剤を配合してシーリング材としたものである。シリコーン樹脂は主鎖がオルガノポリシロキサンであり、分子内に架橋性シリル基を含有する樹脂である。
【0024】
前記一液湿気硬化型ポリサルファイド系シーリング材は、液状ポリサルファイド樹脂を硬化成分として含有し、これに潜在性硬化剤としてBaO、CaO等のアルカリ又はアルカリ上類金属の過酸化物を配合し、さらに後述する各種添加剤を配合してシーリング材としたものである。
【0025】
前述の硬化成分に配合する添加剤としては、硬化促進触媒、耐候安定剤、充填剤、接着性付与剤、揺変性付与剤、貯蔵安定性改良剤(脱水剤)、着色剤などが挙げられる。
【0026】
硬化促進触媒は、前記各種シーリング材の湿気又は酸素との反応を促進し硬化速度を速めるために添加するものであり、具体的には、有機金属化合物、アミン類等が挙げられ、有機金属化合物としては、例えば、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の2価の有機錫化合物、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫系キレート化合物の旭硝子社製EXCESTAR C−501、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンビスマス等の各種金属のキレート化合物、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類、その他、オクチル酸鉛やオクチル酸ジルコニウム等のマンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、鉛、ビスマス等の錫以外の各種金属と、オクチル酸、ステアリン酸、ナフテン酸等の各種有機酸との金属有機酸塩などが挙げられ、アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン(DABCO)、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の第3級アミン類、或いはこれらのアミン類とカルボン酸等の塩類などが挙げられる。
これらのうち、反応速度が高く、毒性及び揮発性の比較的低い液体である点から有機金属化合物が好ましく、更に有機錫化合物や金属キレート化合物が好ましく、特にジブチル錫ジラウレートが好ましい。
硬化促進触媒は、硬化速度、硬化物の物性などの点から、硬化成分100質量部に対して、0.001〜10質量部、特に0.01〜2質量部配合するのが好ましい。
【0027】
耐候安定剤は、シーリング材の硬化後の酸化や光劣化、熱劣化を防止して、耐候性だけでなく耐熱性を更に向上させるために使用する。耐候安定剤としては具体的には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光硬化性化合物などを挙げることができる。
【0028】
酸化防止剤としては具体的には、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の酸化防止剤を挙げることができ、ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。また、三共社製の商品名サノールLS−292などの他、旭電化工業社製の商品名アデカスタブシリーズのLA−52、LA−57、LA−62、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87などの分子量1,000未満の低分子量ヒンダードアミン系酸化防止剤、同じくLA−63P、LA−68LD或いはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名CHIMASSORBシリーズの119FL、2020FDL、944FD、944LDなどの分子量1,000以上の高分子量ヒンダードアミン系酸化防止剤なども挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリストール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)]、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシC7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールなどが挙げられる。
【0029】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0030】
光硬化性化合物としては、アクリロイル基やメタクリロイル基等の光によって反応硬化する基を分子内に1個以上含有する化合物が挙げられ、具体的には例えば、イソシアネート基含有ウレタン樹脂に水酸基含有アクリレート化合物や水酸基含有メタクリレート化合物を反応させたウレタンアクリレートやウレタンメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートやトリメチロールプロパントリメタクリレート等のエステルアクリレートやエステルメタクリレート、ポリエチレンアジペートポリオールのアクリレートやメタクリレート等のポリエステルアクリレートやポリエステルメタクリレート、ポリエーテルポリオールのアクリレートやメタクリレート等のポリエーテルアクリレートやポリエーテルメタクリレート、或いはポリケイ皮酸ビニル類、アジド化樹脂などが挙げられ、分子量10,000以下、更に分子量5,000以下の単量体、オリゴマーが好ましく、特にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を1分子当たり平均して2個以上含有する物が好ましい。
【0031】
耐候安定剤は、硬化成分100質量部に対して、0〜30質量部、特に0.01〜10質量部配合するのが好ましい。
【0032】
充填剤、接着性付与剤、揺変性付与剤、貯蔵安定性改良剤(脱水剤)、着色剤などは、それぞれ補強や増量、接着性向上、揺変性向上、貯蔵安定性向上、着色などのために使用することができる。
【0033】
充填剤としては、例えば、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、珪藻土、白土、クレー、タルク、無水ケイ酸、石英微粉末、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、沈降性シリカなどの合成シリカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ等の無機粉末状充填剤、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状充填剤などの無機系充填剤、ゴム粉末、更にポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂の粉末などの有機系充填剤などの他、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の難燃性付与充填剤なども挙げられ、粒径0.01〜1,000μmのものが好ましい。
【0034】
接着性付与剤としては、カップリング剤のほか、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、アルキルチタネート類、有機ポリイソシアネート等が挙げられる。
カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系などの各種カップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物が挙げられる。これらのうちシラン系カップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物が接着性に優れている点で好ましい。
シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類やイソプロペノキシシラン類などの分子量500以下、好ましくは400以下の低分子化合物及び/又はこれらシランカップリング剤の1種又は2種以上の部分加水分解縮合物で分子量200〜3,000の化合物が挙げられる。
【0035】
揺変性付与剤は、シーリング材を垂直目地等に充填したとき垂れないように(スランプしないように)、揺変性を付与するために使用するものであり、例えば、コロイダルシリカ、有機表面処理炭酸カルシウム等の無機系揺変剤、有機ベントナイト、変性ポリエステルポリオール、脂肪酸アマイド等の有機系揺変剤などが挙げられる。しかし、シーリング材の内部硬化を促進するため、後述する硬化促進触媒を用いた場合、使用する揺変性付与剤によっては、硬化促進触媒が共存すると揺変付与構造が破壊され、外壁目地に充填、施工したとき垂れ(スランプ)が発生し施工できないという不具合を発生する。この防止のため、揺変性付与剤としては、有機表面処理炭酸カルシウムが好ましい。
【0036】
貯蔵安定性改良剤としては、シーリング材中に存在する水分と反応する、前記ビニルトリメトキシシランなどの低分子の架橋性シリル基含有化合物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、p−トルエンスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0037】
着色剤としては、酸化チタンや酸化鉄などの無機系顔料、銅フタロシアニンなどの有機系顔料、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0038】
充填剤、接着性付与剤、揺変性付与剤、貯蔵安定改良剤(脱水剤)及び着色剤の合計の配合量は、硬化成分100質量部に対して、1〜500質量部、更に10〜300質量部、特に10〜200質量部が好ましい。
【0039】
前記各添加剤成分はそれぞれ単独で或いは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
前記各種シーリング材の粘度を下げ、作業性を向上させる目的でさらに有機溶剤を配合することができるが、近年の環境保全意識の高まりのなかで、その使用量はできるだけ抑えることが好ましく、シーリング材中に10質量%未満となるように使用するのが好ましい。
有機溶剤としては、イソシアネート基や架橋性シリル基等の官能基に対して不活性であればどのようなものでもよいが、例えば、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル系溶剤、n−ヘキサン等の脂肪族系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族系溶剤、トルエンやキシレン等の芳香族系溶剤、ミネラルスピリットや工業ガソリン等の石油留分系溶剤などの従来公知の溶剤が挙げられる。
【0041】
前記各種シーリング材は、サイディング目地に充填し施工することを用途としているため、可塑剤はシーリング材硬化物の表面に移行(ブリード)し、硬化物の表面に粘着性を与えることにより塵埃等が付着し、表面汚染の原因にもなるため、シーリング材にはできるだけ配合しないことが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で使用することもできる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、ペンタエリスリトールの酢酸エステル類等の多価アルコールのエステル類、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、塩素化パラフィン等のパラフィン系炭化水素類、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、水素添加ポリブテン等のオレフィン系重合体類などが挙げられる。
【0042】
前記シーリング材の製造方法としては、例えば、鉄製、ステンレス製等のニーダーやプラネタリーミキサー等の攪拌容器に、前述のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー等の硬化成分のうちの1種類と、前述の添加剤で要求性能に応じて適宜選択したものを仕込み、窒素ガス気流中など湿気を遮断した状態で攪拌、混合して均一にした後、減圧して脱泡しシーリング材を調製する。
得られたシーリング材は、湿気との接触により増粘、硬化するものであるので、内容物の貯蔵安定性を保つため湿気を遮断できる容器に詰め、密封して貯蔵するのが好ましい。前記容器としては湿気を遮断できる容器であれば何でもよいが、例えばドラム缶、金属製や合成樹脂製のペール缶や袋状容器、紙製や合成樹脂製のカートリッジ状容器など各種の容器が挙げられる。
【0043】
次に本発明のシーリング方法について説明する。
本発明のシーリング方法はまず、例えば、前述したサイディングを構成部材の少なくとも一つとするサイディング目地部分を刷毛や布を用いて清掃する。次いで、この目地に前述の通気性を有する成形体としてのバックアップ材やハットジョイナーを装填して目地底を形成する、又は通気性を有する成形体としての接着防止部材(ボンドブレーカー)を目地の底となる部分に貼って目地底を形成する。なお、ハットジョイナーは、サイディングを張る際に装填しておく。次いで、目地に沿ってサイディング等の表面にマスキングテープを貼り、目地の被接着面に所定のプライマーを、刷毛などを用いて塗布し、サイディング目地に対してシーリング材の打設(充填、施工)準備を整える。次いで、プライマー乾燥時間を所定時間とった後、予め用意しておいた前記密封容器に詰めた大気に接触する表面から硬化するシーリング材を開封し、手動、電動或いは空気圧などで押出す方式のガンに装着し、準備を整えたサイディング目地に打設し、ヘラ等で余分のシーリング材をかき取って表面を平らにした後、速やかにマスキングテープを除去し硬化させることにより、硬化途中に目地が変動しても実質的に損傷のない硬化物を形成し、漏水事故を起こす心配の無い防水シーリング目地を形成するシーリング方法を好適に挙げることができる。
本発明のシーリング方法は、特に収縮の大きなサイディングで形成された目地において大きな効果を発揮する。
【実施例】
【0044】
以下、本発明について実施例などにより更に詳細に説明する。
【0045】
実施例1
一液湿気硬化型シーリング材として、一液湿気硬化型ウレタン系シーリング材(オート化学工業社製、オートンサイディングシーラント、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのGPCによる主ピークの分子量分布が1.6以下)と、プライマーとしてオート化学工業社製OP−2531を使用し、目地底を形成する成形体として、通気性を有するポリウレタン樹脂連続気泡発泡体からなるバックアップ材(サンゴバン社製、サーマルボンドV−2112、幅12mm×厚さ10mm)を用い、以下に記載の硬化途中のムーブメント追従性試験と深部硬化性試験をした。その結果を表1に記す。
【0046】
実施例2
実施例1において、一液湿気硬化型シーリング材として、一液湿気硬化型変成シリコーン系シーリング材(セメダイン社製、POSシールLM、架橋性シリル基含有樹脂のGPCによる主ピークの分子量分布が1.6以下)と専用プライマー(MP−1000)を用いた以外は同様にして、硬化途中のムーブメント追従性試験と深部硬化性試験をした。その結果を表1に記す。
【0047】
実施例3
実施例1において、一液湿気硬化型シーリング材として、一液湿気硬化型シリコーン系シーリング材(信越化学工業社製、シーラント45)と専用プライマー(プライマーMT)を用いた以外は同様にして、硬化途中のムーブメント追従性試験と深部硬化性試験をした。その結果を表1に記す。
【0048】
実施例4
一液湿気硬化型シーリング材として、一液湿気硬化型ウレタン系シーリング材(オート化学工業社製、オートンサイディングシーラント、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのGPCによる主ピークの分子量分布が1.6以下)と、プライマーとしてオート化学工業社製OP−2531を使用し、目地底を形成する成形体として、通気性を有するフッ素樹脂多孔質薄膜(テープ状)の接着防止部材(ジャパンゴアテックス社製、ピラーNo.3330、幅10mm)を用い、以下に記載のムーブメント追従性試験(厚さ12mmのラップタイプ合いじゃくり目地仕様のサイディング使用)と深部硬化性試験をした。その結果を表1に記す。
【0049】
比較例1
実施例1において、目地底を形成する材料として、非通気性もしくは難通気性のポリエチレン独立気泡発泡体からなるバックアップ材(光栄加工社製、パックバッカー、幅12mm、厚さ10mm)を用いた以外は同様にして、硬化途中のムーブメント追従性試験と深部硬化性試験をした。その結果を表2に記す。
【0050】
比較例2
実施例1において、一液湿気硬化型シーリング材として、一液湿気硬化型シリコーン系シーリング材(信越化学工業社製、シーラント45)と専用プライマー(プライマーMT)を用い、目地底を形成する材料として、非通気性もしくは難通気性のポリエチレン独立気泡発泡体からなるバックアップ材(光栄加工社製、パックバッカー、幅12mm、厚さ10mm)を用いた以外は同様にして、硬化途中のムーブメント追従性試験と深部硬化性試験をした。その結果を表2に記す。
【0051】
〔性能試験〕
前記実施例1において一液湿気硬化型ウレタン系シーリング材、実施例2において一液湿気硬化型変成シリコーン系シーリング材、実施例3において一液湿気硬化型シリコーン系シーリング材、実施例4において一液湿気硬化型ウレタン系シーリング材、比較例1において一液湿気硬化型ウレタン系シーリング材及び比較例2において一液湿気硬化型シリコーン系シーリング材をそれぞれ用いて、以下の試験を行った。
(1)硬化途中のムーブメント追従性試験
JIS A 1439(1997)「建築用シーリング材の試験方法」、4.17耐久性試験の4.17.1のd)繰返し試験機に準拠したもので、拡大・縮小のサイクルを1日当たり1〜14、400サイクルに設定できるように作製したものを繰返し試験機として用い、拡大・縮小の変位サイクルを1日当り1サイクル、変位幅を目地幅の±10%となるように設定した。
次いで、実施例1〜3及び比較例1、2については、厚さ24mmのサイディング(ニチハ社製、モエンエクセラード)を切り出し、厚さ24mm×縦50mm×横50mmの被着体を作製し、これを試験機の固定部と可動部のそれぞれに、1枚づつ小口面が相対するように固定し、試験機の動きがサイディングで作製した目地に伝わるようにした。一方の被着体の小口面にバックアップ材(幅12mm×厚さ10mm×長さ50mm)を目地深さが12mmとなるように装着し目地底を形成した後、他方の被着体を近づけ目地幅が12mmとなるように固定し目地を作製した。したがって、このときの目地の形状は幅12mm×深さ12mm×長さ50mmとなり、拡大及び縮小の変位をそれぞれ1.2mmとした。
また、実施例4については、厚さ12mmの合いじゃくり目地仕様のサイディング(ニチハ社製、モエンサイディングW)を切り出し、厚さ12mm×縦50mm×横50mmの被着体を作製し、これを試験機の固定部と可動部のそれぞれに1枚づつ、合いじゃくり面を組み合わせるように固定し、目地の底となる部分にテープ状の接着防止部材(ボンドブレーカー)を貼付して目地の底面を形成した。このときの目地の形状は幅10mm×深さ6mm×長さ50mmとなり、拡大及び縮小の変位をそれぞれ1.0mmとした。
次いで、目地に沿ってマスキングテープを貼り、所定のプライマーを塗布し、30分前後のオープンタイムをとってから、一液湿気硬化型のシーリング材を気泡が入らないように充填し、余分なシーリング材をヘラでかきとり、速やかにマスキングテープを剥がして仕上げたものを試験体とした。マスキングテープを剥がした後、直ちに試験機を稼動させ、目地の縮小・拡大の順で1サイクル/日の条件で、ムーブメントをかけながら硬化させた。このときの雰囲気温度は23℃、50%相対湿度とした。硬化途中の変形繰返しを3サイクル(3日間)で打ち切り、目地幅が動かないように慎重に試験機から取り外した後、35℃、70%相対湿度の促進条件で7日間かけて後養生させた。次いで、シーリング材硬化物を被着体から切り離し、中央付近を長さ方向に対して直角に切断し、断面の損傷の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
〔評価基準〕
○:防水上悪影響となる損傷がほとんど認められない状態。
△:防水上悪影響となる損傷が少し認められる状態。
×:防水上悪影響となる損傷が多く認められる状態。
(ここにおいて、防水上悪影響となる損傷とは、硬化物内部の亀裂や空洞、硬化物表面の窪みや盛り上がりなどを示す)
(2)深部硬化性試験
透湿性のない2〜3mm厚さのポリプロピレン製板を組み合わせて側面を形成し、底面に、実施例1〜3については厚さ10mmの連続気泡発泡体からなるバックアップ材を、実施例4については多孔質薄膜材料からなる接着防止部材(ボンドブレーカー)を、また比較例1、2については厚さ10mmの独立気泡発泡体からなるバックアップ材を張って底部分を形成し、長さ100mm×幅40mm×深さ40mmの直方体状の空間をそれぞれ作製した。この空間に一液湿気硬化型のシーリング材を充填し、余分なシーリング材をヘラでかきとって平らにし、23℃、50%相対湿度の雰囲気下で硬化、養生した。充填してから24時間、48時間、72時間経過後に長さ方向に対して直角に切り取り、未硬化部分を除去した後、表面側からと底部側から硬化した皮膜の厚さ(mm)をそれぞれ測定した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明において、サイディング目地に、通気性の連続気泡発泡成形体からなるバックアップ材で目地底を形成した一例を示す断面図である。
【図2】図1の通気性の連続気泡の状態を部分的に拡大して模式的に示した断面図である。
【図3】本発明において、サイディング目地に、連続気泡発泡成形体からなるハットジョイナーで目地底を形成した一例を示す断面図である。
【図4】本発明において、サイディング部材とサッシ部材との間に形成された目地に、連続気泡発泡成形体からなるバックアップ材で目地底を形成した一例を示す断面図である。
【図5】本発明において、サイディングの合いじゃくり目地にボンドブレーカーを貼付して目地底を形成した一例を示す断面図である。
【図6】本発明における、連続気泡発泡成形体からなる平板状バックアップ材の一部分を示す斜視図である。
【図7】本発明における、連続気泡発泡成形体からなる丸棒状バックアップ材の一部分を示す斜視図である。
【図8】本発明における、全部が連続気泡発泡成形体からなるハットジョイナーの一部分を示す斜視図である。
【図9】本発明における、シーリング材と接触する面が連続気泡発泡成形体からなるハットジョイナーの一部分を示す斜視図である。
【図10】従来の、通気性を有しない独立気泡発泡成形体からなるバックアップ材で目地底を形成した例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 目地
2、3 サイディング
2a、3a サイディングの被着面
4 通気性の連続気泡発泡成形体からなる平板状バックアップ材
4a 平板状バックアップ材のシーリング材と接触する面
5 シーリング材硬化物
6 全部が連続気泡発泡成形体からなるハットジョイナー
7 丸棒状バックアップ材
8 サッシ部分
9 オス型に成形した端部を有するサイディング
10 メス型に成形した端部を有するサイディング
9a、10a サイディングの被着面
11 ボンドブレーカー
11a ボンドブレーカーのシーリング材と接触する面
12 シーリング材と接触する面が連続気泡発泡成形体からなるハットジョイ
ナー
13、14 シーリング材と接触する面が連続気泡発泡成形体からなるハットジョイ
ナーのつば部分
15 従来の、通気性を有しない独立気泡発泡成形体からなるバックアップ材
20 胴縁
21 柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性の成形体からなる目地底を有するサイディング目地に、シーリング材を充填し硬化させること、を特徴とするシーリング方法。
【請求項2】
前記の通気性の成形体が、通気性の連続気泡発泡成形体である、請求項1に記載のシーリング方法。
【請求項3】
前記の通気性の成形体が、通気性の接着防止部材である、請求項1に記載のシーリング方法。
【請求項4】
前記の通気性の成形体が、通気性のバックアップ材である、請求項1に記載のシーリング方法。
【請求項5】
前記の通気性の成形体が、通気性のジョイナーである、請求項1に記載のシーリング方法。
【請求項6】
前記の通気性の成形体の通気する面が、シーリング材に接触する向きに目地底を形成している、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシーリング方法。
【請求項7】
前記の通気性の連続気泡発泡成形体が、ポリウレタン系連続気泡発泡成形体である、請求項2に記載のシーリング方法。
【請求項8】
前記シーリング材が、大気に接触する面から硬化するシーリング材である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシーリング方法。
【請求項9】
前記の大気に接触する面から硬化するシーリング材が、一液湿気硬化型ウレタン系シーリング材である、請求項8に記載のシーリング方法。
【請求項10】
前記の大気に接触する面から硬化するシーリング材が、一液湿気硬化型変成シリコーン系シーリング材である、請求項8に記載のシーリング方法。
【請求項11】
前記の大気に接触する面から硬化するシーリング材が、一液湿気硬化型シリコーン系シーリング材である、請求項8に記載のシーリング方法。
【請求項12】
前記シーリング材の大気に開放された表面側からの硬化速度と、底面側からの硬化速度がほぼ同じである、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシーリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−100378(P2007−100378A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291264(P2005−291264)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年7月31日 社団法人日本建築学会発行の「2005年度大会(近畿)学術講演梗概集 A−1分冊」に発表
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000103541)オート化学工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】