説明

シールドボックス

【課題】シールドボックス内における検査対象の配置位置を正確に位置決めでき、測定の再現性を高めることができるシールドボックスを提供すること。
【解決手段】内部に測定用アンテナが設けられ、検査対象である無線端末を収納するシールドボックスであって、内部には、前記検査対象を一定位置に載置するためのホルダが、測定用アンテナとの相対位置関係をあらかじめ設定された複数の位置に変更可能な位置決め機構を介して取り付けられていることを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機や無線IDタグ読取装置などの小型無線端末類の送受信機能検査に用いる電磁波のシールドボックスに関し、詳しくは、ボックス内に収納配置される検査対象の位置決め構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話や無線IDタグなどの普及に伴い、携帯電話機を販売する店頭や多数の無線IDタグ読取装置を用いる現場などにおいて、これら無線端末類の送受信をはじめとする各種の簡易動作機能確認試験を求められる機会が増加しつつある。
【0003】
図4は従来のシールドボックスの一例を示す構成図であり、蓋を外した状態を示している。図4において、シールドボックス1の内部には、検査対象2である携帯電話機などが載置されるプレート3が設けられている。このプレート3の下部には、検査対象2のアンテナとの間でエア結合により試験電波を授受するための測定用アンテナが配置されているが図示しない。
【0004】
シールドボックス1と蓋は高周波電磁界に対して遮蔽効果を有する金属で形成されていて、これらシールドボックス1と蓋の内壁全面には電波吸収体が貼り付けられている。プレート3は電磁波を透過させる素材で形成されている。
【0005】
シールドボックス1の一方の側面には、高周波コネクタ4,5や、外部接続端子6,7が設けられている。高周波コネクタ4は検査対象2が高周波端子を備えている場合のケーブル接続用であり、高周波コネクタ5は検査対象2が高周波端子を備えていない場合のアンテナ用である。外部接続端子6は、検査対象2に電源を供給したり、消費電流を測定するときに用いる。外部接続端子7は、検査対象2と図示しない外部機器とをUSB接続するためのものである。
【0006】
このように構成されたシールドボックス1は、高周波端子を備えていない検査対象2の送受信アンテナならびに測定用アンテナから電波が送信されて近隣の基地局に影響を与えることを防止するとともに、これらアンテナが近隣の基地局からの電波や雑音等の不要電波を受信してしまうことを防止し、さらに、これらアンテナから送信された電波が近接する建物等に当たって反射波を生じることも防止するものであり、高価な電波暗室に代わるものとして用いられる。
【0007】
【特許文献1】特許3673338号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来のこのような装置では、高周波端子を備えていない検査対象2をプレート3上の任意の位置に配置して測定するように構成されていた。
【0009】
このため、検査対象2のアンテナとプレート3の下部に配置されている測定用アンテナとの位置関係が定まらず、検査対象2の配置位置によって測定結果がばらつくことがあり、測定の再現が困難であるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に着目したものであり、その目的は、シールドボックス内における検査対象の配置位置を正確に位置決めでき、測定の再現性を高めることができるシールドボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を達成するために、請求項1の発明は、
内部に測定用アンテナが設けられ、検査対象である無線端末を収納するシールドボックスであって、
内部には、前記検査対象を一定位置に載置するためのホルダが、測定用アンテナとの相対位置関係をあらかじめ設定された複数の位置に変更可能な位置決め機構を介して取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1記載のシールドボックスにおいて、
前記ホルダの位置決め機構は、シールドボックス側に固定されている弾性部材よりなる位置決め部材と相互に嵌め合う凹凸部で構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1記載のシールドボックスにおいて、
前記ホルダの平面には、検査対象の配置位置を一義的に設定するL字形のストッパが設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3記載のシールドボックスにおいて、
前記ホルダのストッパで規定される区画には、滑り止め用シートが貼り付けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のシールドボックスにおいて、
前記測定用アンテナは、その取付位置を、あらかじめ設定された複数の任意の位置に外部から変更操作できるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項3に記載のシールドボックスにおいて、
前記ストッパの短辺内壁は、断面の上辺が下辺よりも長い斜面として形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1から請求項5の発明によれば、測定時における測定用アンテナと検査対象のアンテナとの相対位置関係を正確に把握再現することができ、測定の再現性を高めることができるシールドボックスが実現できる。
【0018】
請求項6の発明によれば、検査対象をその端部がストッパの短辺内壁斜面に当接するようにホルダの平面に載置することにより、折畳み形の検査対象が折畳みヒンジ部分を支点にして回動することを防止でき、測定の再現性を高めることができる安定な配置状態が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例を示す構成図、図2はその主要部の構成図であり、図4と共通する部分には同一符号を付けている。図1において、検査対象2は、ホルダ8を介してプレート3に配置されている。
【0020】
ホルダ8は、合成樹脂(例えばポリカーボネイト)でほぼ矩形に形成されている。ホルダ8の一方の長辺には、位置決め用の凹部9が複数個長手方向に沿って形成されていて、これら凹部9近傍には凹部9の位置を示す複数の目盛線a〜dが設けられている。これら凹部9の延長方向にはホルダ8を長手方向に沿って移動させるためのつまみ10が設けられている。ホルダ8の平面には他方の長辺に沿うようにしてL字形に形成されたストッパ11が設けられている。このストッパ11の長辺と短辺で規定される区画には、検査対象2との接触面間に大きな摩擦力を生じて検査対象2を安定に保持するように、滑り止め用シート12が貼り付けられている。検査対象2のホルダ8に対する配置位置は、図1に示すように検査対象2の一角をこのストッパ11の内角に押し付けることによって一義的に決定される。
【0021】
ホルダ8は、位置決め用の凹部9に嵌め合うように凸部が形成された弾性部材13を有する位置決め部材14と、他方の長辺をフランジ部分で摺動可能にガイドするようにプレート3に固着されたガイド部材15,16を介して、プレート3に対して移動可能に半固定される。なおプレート3には、位置決め部材14およびガイド部材15,16をホルダ8の短辺方向にずらした位置に取り付けるための取付穴も設けられていて、図1および図2ではガイド部材15,16を取り付けるための取付穴17,18を示している。また位置決め部材14には弾性部材13の凸部の位置を示す目盛線eが設けられている。
【0022】
このような構成において、ホルダ8の位置決め用の凹部9とこの位置決め用の凹部9に嵌め合うように凸部が形成された弾性部材13を有する位置決め部材14の相対的な位置関係は、検査対象2の一角をホルダ8のストッパ11の内角に押し付けることによって一義的に決定される所定の測定位置に配置固定される検査対象2について最適な測定結果が得られるように、実測値に基づいてあらかじめ設定されている。
【0023】
具体的な測定にあたり、ホルダ8の初期位置を、凹部9の位置を示す目盛線例えばcが位置決め部材14の目盛線eと一致するように設定する。この状態で、検査対象2を、その一角をストッパ11の内角に押し付けるようにして配置する。そして図示しない蓋を閉め、送信出力や受信感度などの所定の測定を行う。
【0024】
測定結果が所定の規格を満たす場合は良品と判断する。測定結果が規格を満たさない場合には、つまみ10をつまんでホルダ8を移動させて凹部9の位置を示すc以外の目盛線を位置決め部材14の目盛線eと一致させ、プレート3下部の測定用アンテナと検査対象2のアンテナとの相対位置を変更して測定を繰り返す。ホルダ8の位置を目盛線a〜dに基づき4ヶ所変更しても測定結果が規格を満たさない場合は、プレート3に対するホルダ8の取付位置を短辺方向にずらした状態でホルダ8の位置を目盛線a〜dに基づき4ヶ所変更して測定を行う。なお測定結果としては、これらプレート3に対するホルダ8の取付位置と、位置決め部材14の目盛線eに対するホルダ8の目盛線a〜dの位置も記録しておく。
【0025】
これにより、測定時における測定用アンテナと検査対象のアンテナとの相対位置関係を正確に把握再現することができ、検査対象について安定した測定が行えるとともに、同一検査対象に対する測定の再現性を高めることができる。
【0026】
なお、上記実施例では、ホルダ8の長辺に複数の凹部9を設けて位置決め部材14にこれら凹部9に嵌め合う凸部が形成された弾性部材13を設ける例を示したが、凹凸の組み合わせは反対であってもよい。
【0027】
また、プレート3下部に設けられている測定用アンテナの取付位置を、あらかじめ設定された複数の任意の位置に外部から変更操作できるように構成してもよい。
【0028】
これにより、測定時における測定用アンテナと検査対象のアンテナとの相対位置関係をさらに細かく設定することができる。
【0029】
ところで、折畳み形携帯電話機には、ホルダ8との接触面が密着としないように表面にザラザラ感を持たせるように加工されたものがある。図2の構成において、このような携帯電話機を検査対象とすると、ホルダ8のストッパ11で規定される区画には滑り止め用シート12が貼り付けられているにもかかわらず、ホルダ8との接触面と滑り止め用シート12との間の摩擦力が小さくなることから、携帯電話機は折畳みヒンジ部分を支点にして回動するおそれがある。この結果、測定用アンテナと携帯電話機のアンテナとの位置関係が不安定になってしまい、正確な測定が行えなくなる。
【0030】
このような問題点は、図3のように構成することで解決できる。図3において、L字形に形成されたストッパ11の高さは、折畳み形の携帯電話機2を開いた状態での厚さよりも高くなるように形成されている。そして、このストッパ11の短辺11aの内壁11bは、断面の上辺が下辺よりも長い斜面として形成されている。
【0031】
このような構成において、折畳み形携帯電話機2の測定に当たっては、その端部2aがストッパ11の短辺11aの内壁11bに形成された斜面に当接するように、ホルダ8の平面に載置する。
【0032】
この結果、折畳み形携帯電話機2が折畳みヒンジ部分2bを支点にして回動しようとしても、折畳み形携帯電話機2の端部2aがストッパ11の短辺11aの内壁11bに形成された斜面に当接していることによって回動は阻止され、折畳み形携帯電話機2のホルダ8との接触面がホルダ8に密着した安定な配置状態が維持される。
【0033】
これにより、ホルダ8との接触面が密着としないように表面にザラザラ感を持たせるように加工された折畳み形携帯電話機を検査対象とする場合であっても、測定の再現性を高めることができる安定な配置状態が実現できる。
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、測定時における測定用アンテナと検査対象のアンテナとの相対位置関係を正確に把握再現することができ、高周波端子を備えていない携帯電話機や各種無線端末類の検査対象の測定に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】図1の主要部の具体例を示す構成図である。
【図3】図1の主要部の他の具体例を示す構成図である。
【図4】従来のシールドボックスの一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 シールドボックス
2 検査対象
3 プレート
4,5 高周波コネクタ
6,7 外部接続端子
8 ホルダ
9 凹部
10 つまみ
11 ストッパ
12 滑り止め用シート
13 弾性部材
14 位置決め部材
15,16 ガイド部材
17,18 取付穴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に測定用アンテナが設けられ、検査対象である無線端末を収納するシールドボックスであって、
内部には、前記検査対象を一定位置に載置するためのホルダが、測定用アンテナとの相対位置関係をあらかじめ設定された複数の位置に変更可能な位置決め機構を介して取り付けられていることを特徴とするシールドボックス。
【請求項2】
前記ホルダの位置決め機構は、シールドボックス側に固定されている弾性部材よりなる位置決め部材と相互に嵌め合う凹凸部で構成されていることを特徴とする請求項1記載のシールドボックス。
【請求項3】
前記ホルダの平面には、検査対象の配置位置を一義的に設定するL字形のストッパが設けられていることを特徴とする請求項1記載のシールドボックス。
【請求項4】
前記ホルダのストッパで規定される区画には、滑り止め用シートが貼り付けられていることを特徴とする請求項3記載のシールドボックス。
【請求項5】
前記測定用アンテナは、その取付位置を、あらかじめ設定された複数の任意の位置に外部から変更操作できるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のシールドボックス。
【請求項6】
前記ストッパの短辺内壁は、断面の上辺が下辺よりも長い斜面として形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシールドボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−178415(P2007−178415A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21598(P2006−21598)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】