説明

シールド工法、及びトンネル掘削設備

【課題】 シールド工法において、推進反力確保のためだけに高価なセグメントを使用する事態を回避して、掘削作業を安価に行う。【解決手段】 掘削機2及びジャッキ4を有する略筒状の胴部1を掘削箇所に設置し、該掘削機2にて掘削を行い、支柱状の駆動力伝達部材5を複数繋ぎ合わせて駆動力伝達体40を形成し、前記ジャッキ4と駆動力受け部材3との間に配置する。前記ジャッキ4を駆動してその駆動力を前記駆動力伝達体40を介して前記駆動力受け部材3にて受けさせることにより前記胴部1を掘削方向Cに推進させる。駆動力伝達体40を徐々に長くしながら、このような工程を順次繰り返すことによりトンネルを掘削して行く。本発明によれば、前記胴部1を推進させるためのものとして、支柱状の駆動力伝達部材5を使用すれば足り、高価なセグメントを使用する必要が無い。したがって、その分、工事費を安価にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機を有する略筒状の胴部を用いて該掘削機による掘削と該胴部の推進とを順次繰り返しながらトンネルの掘削を行うシールド工法、及びトンネル掘削設備に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの掘削工法の1つにシールド工法がある。
【0003】
この工法は、掘削形状にあわせた形状の鋼製の胴部(シールド機)を地中に圧入しながら前面を掘削機により掘削し、同時に、後方にセグメントを組み立てるなどして地山保持を行いながらトンネルを構築していく工法である。
【0004】
このシールド工法の場合、胴部に推進用のジャッキを設けておき、該ジャッキ駆動時の推進反力をセグメントにて受けさせるようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−065289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このセグメント自体は高価であり、工事費が高くつくという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、高価なセグメントを用いずにトンネルの掘削を行うこのとのできるシールド工法、及びトンネル掘削設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、図1乃至3に例示するものであって、掘削機(2)及びジャッキ(4)を有する略筒状の胴部(1)を設置し、該掘削機(2)にてトンネルの掘削を行い、前記ジャッキ(4)を駆動してその駆動力を駆動力受け部材(図1の符号3参照)にて受けさせることにより前記胴部(1)を推進させるシールド工法において、
前記胴部(1)と前記駆動力受け部材(3)との間に、支柱状の駆動力伝達部材(例えば、図1(a)の符号5参照)を複数繋ぎ合わせて形成した駆動力伝達体(40)を複数本設置し、
前記ジャッキ(4)を縮めた状態のときに、前記駆動力伝達部材(5)を前記駆動力伝達体(40)の先端と前記ジャッキ(4)の間に配置する形で前記駆動力伝達体(40)に接続して、該駆動力伝達体(40)を延長する工程と、
前記掘削機(2)により前記胴部(1)の前方(C)が掘削された後に、前記ジャッキ(4)を伸ばしてその駆動力を前記駆動力伝達体(40)を介して前記駆動力受け部材(3)にて受けさせることにより前記胴部(1)を推進させる工程と、を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記胴部(1)を推進させた後、支保工(7)と矢板(図8の符号8参照)とによる地山の保持を行う工程、を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、図1乃至3に例示するものであって、略筒状の胴部(1)と、該胴部(1)の内部に配置されてトンネルの掘削を行う掘削機(2)と、該胴部(1)に取り付けられたジャッキ(4)と、前記胴部(1)のトンネル掘削方向後方に配置された駆動力受け部材(3)と、前記ジャッキ(4)の駆動力を前記駆動力受け部材(3)に伝達するように、前記ジャッキ(4)と前記駆動力受け部材(3)との間に、支柱状の駆動力伝達部材(5)を複数繋ぎ合わせる形で配置された駆動力伝達体(40)と、を設けたことを特徴とするトンネル掘削設備についてのものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記胴部(1)と前記駆動力受け部材(3)との間に配置されて地山の保持を行う支保工(7)及び矢板(図8の符号8参照)、を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、図4に示すように、前記駆動力伝達体(40)は前記支保工(7)により支持された、ことを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項4又は5に係る発明において、図7(b)に例示するように、隣り合う支保工(7)を連結する第1連結部材(30)を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の発明において、図6及び図7に示すように、互いに隣接する駆動力伝達体(40)は、離間距離が一定になるように第2連結部材(図6(b)の符号20、図7(b)の符号31参照)にて連結された、ことを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明において、前記第2連結部材(図7(b)の符号31参照)は、上下に配置された複数の駆動力伝達体(40)を連結するように配置された、ことを特徴とする。
【0016】
請求項9に係る発明は、請求項7に係る発明において、前記第2連結部材(図6(b)の符号20参照)は、ほぼ同じ高さに配置された複数の駆動力伝達体(40)を連結するように略水平に配置された、ことを特徴とする。
【0017】
請求項10に係る発明は、請求項3乃至9のいずれか1項に記載の発明において、図1(a)、図6(a)及び図7(a)に示すように、前記駆動力伝達体(40)は地山(9b)に近接するように配置された、ことを特徴とする。
【0018】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0019】
請求項1及び3に係る発明によれば、前記胴部を推進させるためのものとして、上述のような駆動力伝達体を使用すれば足り、高価なセグメントを使用する必要が無い。したがって、その分、工事費を安価にできる。また、請求項1及び3に係る発明によれば、掘削機は、特注品である必要はなく、胴部の内部に入るものであれば市販のどのようなタイプのものも使用できるので、設備費及び工事費を安くできる。
【0020】
請求項2及び4に係る発明によれば、支保工と矢板とによって覆工を行うため、セグメントを使用する場合に比べて工事費を安価にできる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、前記駆動力伝達体を前記支保工により支持させたため、該駆動力伝達体の座屈を防止して、前記胴部の推進を円滑に行うことができる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、隣り合う支保工を第1連結部材にて連結したため、各支保工はもちろんのこと、矢板や駆動力伝達体を適正位置に配置することができる。そして、矢板を適正位置に配置することに基づき地山保持を的確に行うことができ、駆動力伝達体を適正位置に配置することに基づき、前記ジャッキから前記駆動力受け部材への駆動力伝達を的確に行わせることができる。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、一の駆動力伝達体と他の駆動力伝達体との離間距離が第2連結部材にて一定に保持されているので、駆動力伝達体の座屈を防止でき、前記ジャッキから前記駆動力受け部材への駆動力伝達を的確に行わせることができる。
【0024】
請求項8に係る発明によれば、前記駆動力伝達体の鉛直面内での座屈を防止して、前記ジャッキから前記駆動力受け部材への駆動力伝達を的確に行わせることができる。
【0025】
請求項9に係る発明によれば、前記駆動力伝達体の略水平面内での座屈を防止して、前記ジャッキから前記駆動力受け部材への駆動力伝達を的確に行わせることができる。
【0026】
請求項10に係る発明によれば、前記駆動力伝達体は地山に近接するように配置されているため、トンネル掘削作業やズリの搬出作業の邪魔になりにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図1乃至図8に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明に係るシールド工法を用いてトンネルを掘削する様子を示す縦断面図であり、(a)は水平面で切断した状態の縦断面図、(b)は鉛直面で切断した状態の縦断面図である。また、図2(a)は、図1(a)の胴部1の部分を拡大した拡大断面図であり、図2(b)は、図1(b)の胴部1の部分を拡大した拡大断面図である。さらに、図3(a)は図2(a)のA−A断面図であり、図3(b)は図2(a)のB−B断面図である。また、図4は、支保工7や駆動力伝達部材5の形状等を示す正面図であり、図5は、トンネル内での支保工の使用状態を示す正面図である。さらに、図6(a)は、トンネルを湾曲させて掘削するときの様子を示す縦断面図であり、図6(b)は、図6(a)のD矢視図である。また、図7は、本発明に係るシールド工法の別の実施例を用いてトンネルを掘削する様子を示す縦断面図であり、(a)は水平面で切断した状態の縦断面図、(b)は鉛直面で切断した状態の縦断面図である。図8は、矢板8等が支持される様子を示す拡大断面図である。
【0029】
まず、本発明に係るシールド工法について、図1乃至図3等を参照して説明する。
【0030】
本発明に係るシールド工法は、掘削機2及びジャッキ4を有する略筒状の胴部1を設置し、該掘削機2にてトンネルの掘削を行い、前記ジャッキ4(つまり、該掘削機2が搭載された、シールドである筒状の胴部1に設けられたジャッキ4)を駆動してその駆動力を駆動力受け部材(図1(a)(b)の符号3参照)にて受けさせることにより前記胴部1を推進させるものであり、前記駆動力の伝達のために、支柱状の駆動力伝達部材(例えば、図1(a)の符号5参照)を複数繋ぎ合わせて形成した駆動力伝達体40を、前記胴部1と前記駆動力受け部材3との間に(掘削済みのトンネルの壁面に掘削方向に沿って)複数本設置しておき、
(a) 前記ジャッキ4を縮めた状態のときに、別の駆動力伝達部材5を駆動力伝達体40の先端部に接続する形でジャッキ4と駆動力伝達体40との間に配置して、該駆動力伝達体40を延長する工程(図1(a)参照)と、
(b) 前記掘削機2により前記胴部1の前方Cが掘削された後に、前記ジャッキ4を伸ばしてその駆動力を前記駆動力伝達体40を介して前記駆動力受け部材3にて受けさせることにより前記胴部1を掘削方向Cに推進させる工程と、
を有する。なお、前記ジャッキ4は、掘削方向Cに駆動可能となるように配置してある必要がある。本発明によれば、前記胴部1を推進させるためのものとして、支柱状の駆動力伝達体40を使用すれば足り、高価なセグメントを使用する必要が無い。したがって、その分、工事費を安価にできる。また、本発明によれば、掘削機2は、特注品である必要はなく、胴部1の内部に入るものであれば市販のどのようなタイプのものも使用できるので、設備費及び工事費を安くできる。なお、メッセル工法の場合には、メッセルプレートを1枚ずつ切羽に圧入したりしながら掘削工事を行う必要があるが、本発明の場合には、ジャッキ4の駆動力を前記駆動力伝達体40及び前記駆動力受け部材3に伝達させるだけで、瞬時に胴部1を推進させることができ、推進に要する時間を短縮できる。本発明によれば、前記(a)(b)の工程を順次実施することにより、トンネルを掘り進めることができる。
【0031】
なお、地山には、覆工を施しても施さなくても良い。覆工を行う場合は、トンネルを掘削して前記胴部1を推進させた後に、地山に対峙するように支保工7を配置する工程と、該支保工7に支持させることに基づき該地山に沿うように矢板(図8の符号8参照)を配置する工程と、を実施すると良い。このように支保工7と矢板8とによって覆工を行った場合には、セグメントを使用する場合に比べて工事費を安価にできる。また、吹付けコンクリートにより覆工を行っても良い。
【0032】
ところで、図1乃至図3では、トンネルは真っ直ぐに掘削されているが、もちろんこれに限られるものではなく、図6(a)に示すように、湾曲するように掘削(余堀りを行いながらの掘削)しても良い。なお、図6(a)で使用する胴部(シールド)は、前胴1a及び後胴1bからなる公知の2分割形シールドである。本発明に使用する胴部(シールド)は、図1に示すような単一の胴部1から構成されても、複数の胴部から構成される所謂中折れ式のシールドで構成されてもよい。なお、トンネルを湾曲するように掘削する場合には、左右のジャッキ4,4(図6(a)の平面視では上側のジャッキ4及び下側のジャッキ4)の駆動ストローク(掘削方向への突出ストローク)を異ならせると良い。
【0033】
次に、上述したシールド工法を実施するためのトンネル掘削設備について説明する。
【0034】
本発明に係るトンネル掘削設備は、図1乃至図3に示すように、略筒状の胴部1と、該胴部1の内部に配置されてトンネルの掘削を行う掘削機2と、該胴部1に取り付けられたジャッキ4と、前記胴部1のトンネル掘削方向後方(例えば、立坑41内)に配置された駆動力受け部材3と、前記ジャッキ4と前記駆動力受け部材3との間に、支柱状の駆動力伝達部材5を複数繋ぎ合わせる形で配置された駆動力伝達体40と、を設けて構成されていて、前記ジャッキ4が駆動されることに伴う駆動力を前記駆動力伝達体40が前記駆動力受け部材3に伝達するように構成されている。このようなトンネル掘削設備を用いた場合には、前記胴部1を推進させるためのものとして、上述のような駆動力伝達体40を使用すれば足り、高価なセグメントを使用する必要が無い。したがって、その分、工事費を安くできる。また、掘削機2は、特注品である必要はなく、胴部1の内部に入るものであれば市販のどのようなタイプのもの(例えば、バックホウ等)も使用できるので、設備費及び工事費を安くできる。
【0035】
上述した胴部1は、図3(a)(b)に詳示するように、掘削機2を設置するための空間を形成するフレーム10と、該フレームの掘削方向前方に設けられ、掘削された地山断面(掘削面9b)に沿うように前記フレーム10に取り付けられたプレート11と、により構成すると良い。なお、図3に示す胴部1の場合、フレーム10は矩形状をしており、プレート11は、該フレーム10の、上面、両側面及び底面に配置されているが、それらの形状や配置位置はもちろんこれに限られるものではなく、トンネル形状に応じて適宜変更すれば良い。また、図示のプレート11は、トンネル軸心CLに沿って延びた長尺状の部材が(上下、又はトンネルの幅方向に)併設されて構成されているが、地山に沿うように配置されるのであれば、どのような構造にしても良い。例えば、長尺状の部材を組み合わせて構成するのではなく、1枚の鋼板で形成しても良い。さらに、プレート11は、フレーム10に固定されていて、前記ジャッキ4が駆動されることに伴いフレーム10と一体的に移動するような構成で良い。
【0036】
上述した支柱状の駆動力伝達体40は、所定長さの駆動力伝達部材5を、トンネル掘削方向に連結して形成されるが、その駆動力伝達部材5としては、円柱状や角柱状や円筒状や角筒状の部材を挙げることができる。このように支柱状の細長い部材をトンネル軸心CLに沿って連結して駆動力伝達体40を構成した場合には、その他の形状の駆動力伝達体を使用する場合に比べて作業スペースを広く確保できる。
【0037】
ところで、立坑41に設置される図1(a)(b)に示す駆動力受け部材3は、複数の梁(フレーム)が組み合わされた形状をしているが、前記ジャッキ4の駆動力を受けることができるものであれば、どのような形状であっても良い。また、図7(a)(b)に示す駆動力受け部材3は、トンネルの坑口の壁面支保部材(トンネル軸心CLに略直交するような面を有する部材)9aに接するように配置されているが、そのようにした場合には、前記坑口の壁面支保部材9aにて前記ジャッキ4の駆動力を確実に受けることができ、前記胴部1を確実に推進させることができる。
【0038】
上述したように支保工7及び矢板(図8の符号8参照)を前記胴部1と前記駆動力受け部材3との間に配置してトンネル掘削中の地山の保持を行うようにすると良い。このように支保工7と矢板8とによって覆工を行った場合には、セグメントを使用する場合に比べて工事費を安価にできる。
【0039】
上述のように支保工7を配置する場合には、図4及び図5に例示するように、前記駆動力伝達体40をその支保工7に支持させると良い。そのようにした場合には、前記駆動力伝達体40をほぼ真っ直ぐに延設することが可能となり、該駆動力伝達体40の座屈を防止して、前記胴部1の推進を円滑に行うことができる。また、駆動力伝達体40を支持するための専用の部材を設ける必要がなく、作業が簡単で、工事費が安くつくという効果も奏する。また、図1(a)、図6(a)及び図7(a)に示すように、前記駆動力伝達体40を地山9bに近接するように(地山9bに沿って)配置すると良い。その場合には、該駆動力伝達体40がトンネル掘削作業やズリの搬出作業等の邪魔になりにくいという効果を奏する。
【0040】
ところで、このような支保工7を図7(b)に示すように複数配置する場合、隣り合う支保工7を第1連結部材30により連結するようにしても良い。そのようにした場合には、各支保工7はもちろんのこと、矢板8や駆動力伝達体40を適正位置に配置することができる。そして、矢板8を適正位置に配置することに基づき地山保持を的確に行うことができ、駆動力伝達体40を適正位置に配置することに基づき、前記ジャッキ4から前記駆動力受け部材3への駆動力伝達を的確に行わせることができる。
【0041】
一方、図6及び図7に示すように、前記駆動力受け部材3から伸延する複数の駆動力伝達体40の先端40aと対向する位置に前述のジャッキ4がそれぞれ配置される必要がある。かかる場合、駆動力伝達体40はトンネルの軸心CLに沿って略平行に配置されることになるが、互いに隣接(後述のように上下又は水平に隣接)される一の駆動力伝達体40と他の駆動力伝達体40とを第2連結部材(図6(b)の符号20、図7(b)の符号31参照)にて連結し、それらの離間距離が一定になるようにしておくと良い。なお、第2連結部材は、トンネル掘削方向である図7の水平方向に所定距離毎に設置すると良い。そのようにした場合には、駆動力伝達体40の座屈を防止でき、前記ジャッキ4から前記駆動力受け部材3への駆動力伝達を的確に行わせることができる。具体的には、第2連結部材は、
・ 図7(b)に符号31で示すように、上下に配置された複数の駆動力伝達体40を連結しても、
・ 図6(b)に符号20で示すように、ほぼ同じ高さに配置された複数の駆動力伝達体40を連結するようにトンネル空間を横切る形で略水平に配置しても、
いずれでも良い。前者によれば、前記駆動力伝達体40の鉛直面内での座屈を防止して、前記ジャッキ4から前記駆動力受け部材3への駆動力伝達を的確に行わせることができる。後者によれば、前記駆動力伝達体40の略水平面内での座屈を防止して、前記ジャッキ4から前記駆動力受け部材3への駆動力伝達を的確に行わせることができる。また、前記第2連結部材20は、図6に示すようにトンネルを湾曲させて掘削する場合はもちろん、トンネルを真っ直ぐに掘削する場合に使用しても良い。
【実施例1】
【0042】
本実施例では、図1乃至図3に示すトンネル掘削設備にてシールド工法によりトンネルの掘削を行った。なお、シールド機(胴部)1には、掘削機2として、バケット容量が0.033mのバックホウを配置した。また、ジャッキ4には、最高出力が30tで、ストロークが400mmのものを8個使用した。さらに、駆動力伝達部材5には、長さが350mmの円柱状ストラットを使用した。また、トンネル掘削方向に互いに隣接される支保工7,7は、図7(b)に符号30で示すようにタイロッド(第1連結部材)で結合し、上下方向に互いに隣接する駆動力伝達部材5、5のストラットは、図7(b)に符号31で示すような鋼管(第2連結部材)で結合した。なお、支保工7の内部には、図5に示すように、ベルトコンベアー6やビニール風管50や蛍光灯51や電線類52や制御盤53や材料台車54やプレーントロリー55やベビーホイスト56を配置した。
【0043】
本実施例では、次の手順によりトンネルの掘削を行った。
【0044】
まず、掘削機2により切羽を機械掘削した。次に、ピックハンマーを使用して、手掘りでの整形を行った。その後、ジャッキ4を駆動して、シールド機1を400mmだけ推進させた。そして、ジャッキ4を縮め、駆動力伝達部材であるストラット5を継ぎ足した。その後、掘削部分の測量を行った。
【0045】
このような工程(機械掘削、手掘り整形、シールド機1の推進、ストラット5の取り付け、及び測量)を再度行った。なお、機械掘削や手掘り整形で生じたズリは、適宜ベルトコンベアー6等で導坑外に搬出した。
【0046】
次に、上述した機械掘削、手掘り整形、シールド機1の推進を行った後、ジャッキ4を縮め、シールド機1の近傍の、2ストローク分(つまり、8本×2ストローク=16本)のストラット5を取り外した。
【0047】
一方、坑口からは、材料台車54で鋼製支保工7を運搬してきて、プレーントロリー55により設置した(支保工建て込み)。そして、支保工間にはタイロッド30を上述のように配置し、上下のストラット連結体(駆動力伝達体)40間には鋼管31を上述のように配置した。さらに、支保工間に矢板8を嵌め(土留)、矢板8と地山との間隙には砂を入れた(裏込め)。
【0048】
これらの作業が終了した時点でベルトコンベアー6の移動及び測量を行った。その後、上述の機械掘削以降の作業を繰り返した。
【0049】
本実施例によれば、ジャッキ4やストラット5によりシールド機1を推進させてトンネルの掘削を効率良く行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明に係るシールド工法を用いてトンネルを掘削する様子を示す縦断面図であり、(a)は水平面で切断した状態の縦断面図、(b)は鉛直面で切断した状態の縦断面図である。
【図2】図2(a)は、図1(a)の胴部1の部分を拡大した拡大断面図であり、図2(b)は、図1(b)の胴部1の部分を拡大した拡大断面図である。
【図3】図3(a)は図2(a)のA−A断面図であり、図3(b)は図2(a)のB−B断面図である。
【図4】図4は、支保工7や駆動力伝達部材5の形状等を示す正面図である。
【図5】図5は、トンネル内での支保工の使用状態を示す正面図である。
【図6】図6(a)は、トンネルを湾曲させて掘削するときの様子を示す縦断面図であり、図6(b)は、図6(a)のD矢視図である。
【図7】図7は、本発明に係るシールド工法の別の実施例を用いてトンネルを掘削する様子を示す縦断面図であり、(a)は水平面で切断した状態の縦断面図、(b)は鉛直面で切断した状態の縦断面図である。
【図8】図8は、矢板8等が支持される様子を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 シールド機(胴部)
2 掘削機
3 駆動力受け部材
4 ジャッキ
5 ストラット(駆動力伝達部材)
7 支保工
8 矢板
9a 坑口の壁面
9b 地山
20 第2連結部材
30 タイロッド(第1連結部材)
31 鋼管(第2連結部材)
40 ストラット連結体(駆動力伝達体)
C 掘削方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機及びジャッキを有する略筒状の胴部を設置し、該掘削機にてトンネルの掘削を行い、前記ジャッキを駆動してその駆動力を駆動力受け部材にて受けさせることにより前記胴部を推進させるシールド工法において、
前記胴部と前記駆動力受け部材との間に、支柱状の駆動力伝達部材を複数繋ぎ合わせて形成した駆動力伝達体を複数本設置し、
前記ジャッキを縮めた状態のときに、前記駆動力伝達部材を前記駆動力伝達体の先端と前記ジャッキの間に配置する形で前記駆動力伝達体に接続して、該駆動力伝達体を延長する工程と、
前記掘削機により前記胴部の前方が掘削された後に、前記ジャッキを伸ばしてその駆動力を前記駆動力伝達体を介して前記駆動力受け部材にて受けさせることにより前記胴部を推進させる工程と、
を設けたシールド工法。
【請求項2】
前記胴部を推進させた後、支保工と矢板とによる地山の保持を行う工程、
を設けたことを特徴とする請求項1に記載のシールド工法。
【請求項3】
略筒状の胴部と、
該胴部の内部に配置されてトンネルの掘削を行う掘削機と、
該胴部に取り付けられたジャッキと、
前記胴部のトンネル掘削方向後方に配置された駆動力受け部材と、
前記ジャッキの駆動力を前記駆動力受け部材に伝達するように、前記ジャッキと前記駆動力受け部材との間に、支柱状の駆動力伝達部材を複数繋ぎ合わせる形で配置された駆動力伝達体と、
を設けたことを特徴とするトンネル掘削設備。
【請求項4】
前記胴部と前記駆動力受け部材との間に配置されて地山の保持を行う支保工及び矢板、
を設けたことを特徴とする請求項3に記載のトンネル掘削設備。
【請求項5】
前記駆動力伝達体は前記支保工により支持された、
ことを特徴とする請求項4に記載のトンネル掘削設備。
【請求項6】
隣り合う支保工を連結する第1連結部材、
を設けたことを特徴とする請求項4又は5に記載のトンネル掘削設備。
【請求項7】
互いに隣接する駆動力伝達体は、離間距離が一定になるように第2連結部材にて連結された、
ことを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載のトンネル掘削設備。
【請求項8】
前記第2連結部材は、上下に配置された複数の駆動力伝達体を連結するように配置された、
ことを特徴とする請求項7に記載のトンネル掘削設備。
【請求項9】
前記第2連結部材は、ほぼ同じ高さに配置された複数の駆動力伝達体を連結するように略水平に配置された、
ことを特徴とする請求項7に記載のトンネル掘削設備。
【請求項10】
前記駆動力伝達体は地山に近接するように配置された、
ことを特徴とする請求項3乃至9のいずれか1項に記載のトンネル掘削設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−77487(P2006−77487A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263569(P2004−263569)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(598060659)三建機材株式会社 (2)
【出願人】(301074333)株式会社コンテックス (1)
【Fターム(参考)】