説明

シールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置とその荷重検出方法

【課題】 掘進作業過程における前面荷重、即ちカッタ駆動軸に作用するスラスト荷重を精度よく検出することにより、作業中における前面荷重の正確な値を把握する。
【解決手段】 掘進作業過程におけるカッタ駆動軸3に作用するスラスト荷重を検出するシールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置であって、カッタ駆動軸3の内部に設けた、スラスト荷重を検出する荷重せンサ6を具備する駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド5と、シールド掘進機操作盤に設けた、実測荷重値を明示するために、ひずみ測定器を内蔵した荷重監視・記録装置12と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置とその荷重検出方法に係り、特にシールド掘進機において、掘進作業時の前面荷重(掘削面反力)により、カッタ駆動軸に作用する実働スラスト荷重を検出し、これを遠く離れた場所で監視することにより安全に操業することができるシールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置とその荷重検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】シールド工法は、軟弱な地盤に適用するトンネル工法の1つであり、シールド掘進機(又はシールド機)と呼ばれる掘進機を、地中における周囲の土砂の崩壊を防ぎながら地盤を掘削しつつ推進させ、シールド機の内部で安全に、掘削した土砂の取込み・搬出作業、覆工作業を行い、トンネルを構築してゆく工法である。
【0003】このシールド掘進機は、主に、カッタ、シールドジャッキ、土砂取込み装置及びエレクターで構成されている。このカッタは回転しながら地盤を掘削する装置であり、シールドジャッキはシールド掘進機を前進させる装置であり、土砂取込み装置は掘進速度に合せて、掘削した土砂を取り出す装置であり、エレクターは掘進する背後で、鋳鉄或はコンクリート製のブロック(シールドセグメント)を組み立て、トンネル壁を構築する装置である。
【0004】上述したシールド掘進機を使用するシールド工法の掘削作業計画において、掘進の経路となる地盤の土質に関しては、事前に調査が行われ、工事の目的と土質の性状に適応したシールド機とカッタ形状が経験的に選定される。更に掘削作業においては、土質の性状に応じたカッタ回転数と、シールドジャッキの油圧(推進速度)が経験値をもとに設定され、経験と勘をもとにした掘進操作が行われてきた。
【0005】従来、シールド機の掘進操作は、経験を主体とした操作方法と熟練者の勘に依存するところが多かった。即ち、掘進作業中の各場面において、前面荷重(掘削面反力)は、極めて重要であり、常時定量的に把握されているべきものである。しかし、従来は、実測する方法が無いため、前面荷重の把握なしに経験に頼って掘進操作をせざるを得ず、時として、シールドジャッキの推進力と前面荷童(掘削面反力)とのバランスが崩れ、カッタ駆動軸のスラスト軸受に過大なスラスト荷重の発生を招くことがあった。言い換えれば、シールド機の完全自動化が進まない理由の1つに、制御対象のモデル化が難しいことが指摘されている。元来、土の種類そのものが千差万別であり、仮に、土の組成が特定できたとしても、機械的特性を単純に決定できないところが、この分野における常識とされていた。
【0006】ここで、シールド工法における掘削・掘進工程を列記すると以下のようになる。
(1)まず、円弧状のシールドセグメントを組立て、さらにこれを結合して構築した円筒剛体(トンネル壁)から反力をとり、シールドジャッキ・ピストンのストロークにより、シールド機全体を前進する。
(2)この前進により、シールド機前面の土層は、回転するカッタにより掘削され、掘り出した土砂はスクリュウコンベアでシールド機内に取込まれ、さらにベルトコンベアでトンネル外に排除される。
(3)シールド機が前進しその後方にシールドセグメントの組立てに要する空間(ジャッキのストローク)が確保された時点で、シールドジャッキのピストンを収納し、得られた空間で新たにセグメントを組立て、前段階で構築した円筒部と結合し、トンネル壁を延長する。
以上のサイクルを繰り返すことにより、シールドセグメントを順次継ぎ足し、トンネル壁は更に長さを増すことになる。
【0007】掘進作業中に直面する土固有の特性に起因する事象について次に列記する。
(1)シールド機の掘進作業において、シールドジャッキが発生する推力は、シールド機本体が周囲の土層から常時受ける土圧による摩擦力、および、掘削時に前方土層から受ける反力等にロス成分として消費され、残りの成分(推力の一部)のみが、カッタ軸において掘削に寄与する。
(2)これらのロス成分は、必ずしも一定値をとるものではなく、時々刻々変化する土質の性状に左右される。
(3)土層の機械的性質が、掘削経路について必ずしも一定でないため、掘削条件を一定値に設定することができず、土質の性状に応じ、逐次、条件の設定を変えることを必要とする。
(4)土の組成を特定しても、機械的性質を単純に決定することが難しいため、掘削条件を一定に設定することができない。
(5)掘削前面の土層に土圧分布がある場合、或いは、圧力勾配が存在する場合にも、掘削条件を一定に設定することができない。
(6)掘削前面の土層に密度差が存在し、掘削反力が部分的に異なる場合にも、掘削条件を一定に設定することができない。
(7)掘削前面の土層の性状が不均質の場合、掘進量に部分的な差が生じ、シールド機に横力(サイドフォース)が作用し、首振り・蛇行に移行することが懸念される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の掘進作業工程においては、図7に示すように、前面荷重1(カッタ駆動軸3に作用する推力)の実働荷重値を逐次検出し、これを定量的に表示し、記録する荷重検出器と測定装置が装備されていなかった。掘進経路における種々の土質の変化に逐次対応し、最適な掘進操作を行うには、前面荷重1(掘削面反力)を常時検出し、荷重値を監視しつつ、土質の変化に対応した掘削操作を行うための装置を装備することが不可欠であった。
【0009】カッタ駆動軸1に作用する、スラスト荷重の実働値を検出するには、軸径の大きな駆動軸に装着可能で、大荷重に対応し、長期間に稼働に耐え得る荷重検出器の考案が不可欠であった。カッタ駆動軸1の推力に制限値を設定し、過大推力の発生を防止するシステムが不備であるという問題があった。
【0010】また、シールド機本体に生じる摩擦力等に不確定要因が内在するため、シールドジャッキの推力に対する制限値の設定は、前記の理由から確定しがたいものであった。ジャッキ油圧(推力)、ピストンストローク、カッタ駆動トルク、カッタ軸推力等の物理量を検出し、これらの事象の相関性を体系付ける技術が未開発であるという問題があった。
【0011】本発明は、上述した従来の問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、掘進作業過程における前面荷重、即ちカッタ駆動軸に作用するスラスト荷重を精度よく検出することにより、作業中における前面荷重の正確な値を把握することができるシールド掘進機カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置とその荷重検出方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明のスラスト荷重検出装置によれば、掘進作業過程におけるカッタ駆動軸(3)に作用するスラスト荷重を検出するシールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置であって、前記カッタ駆動軸(3)の内部に設けた、前記スラスト荷重を検出する荷重せンサ(6)を具備する駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)と、シールド掘進機操作盤に設けた、実測荷重値を明示するために、ひずみ測定器を内蔵した荷重監視・記録装置(12)と、を備えた、ことを特徴とするシールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置が提供される。
【0013】前記駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)は、カッタ(2)とスラスト軸受(4)との間に位置するカッタ駆動軸(3)の軸心部内に設置され、その両端は、内装軸受(3−1,3−2)で支持され、該前後の内装軸受(3−1,3−2)の外輪は、前記カッタ駆動軸(3)の軸心に穿った円筒に嵌合され、該前後の内装軸受(3−1,3−2)の内輪は、前記駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)の外径と嵌合されたものであり、該駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)の軸端から延長した静止軸(5−1)の軸端を、静止軸・固定端(5−2)に固定することにより、該駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)を静止状態に維持するように構成されたものである。
【0014】この駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)の軸端から延長した静止軸(5−1)の軸端を、静止軸・固定端(5−2)に固定することにより、駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)を静止状態に維持することができる。
【0015】前記荷重せンサ(6)は、前記カッタ駆動軸(3)の軸方向に発生する微小変位(ΔL)を機械的に増幅すると共に、電気的にはブリッジ回路上において感度増加を図り、ひずみ信号として処理し、ひずみ検出素子として、半導体ひずみゲージ(6−1)を使用し、感度増加を図るものである。
【0016】上記構成のスラスト荷重検出装置では、カッタ駆動軸(3)に生じた微小変位(ΔL)は、カッタ駆動軸(3)の軸心に穿った円筒に内装軸受(3−1,3−2)を介して嵌合した駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)に伝わり、この駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)内に設けた荷重せンサ(6)に集中する。荷重せンサ(6)部分は、駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)の剛性に対し、極めて低い剛性に設定するため、微小変位(ΔL)は殆ど荷重せンサ(6)部に集中する。そこで、前面荷重(1)を検出し、その実測された荷重値を明示することにより、掘削作業中における力の釣り合いが常時把握され、目に見える形で掘進操作を実施することができる。
【0017】前面荷重(1)の作用に伴う、カッタ駆動軸(3)の軸方向変位そのものを検出するものであるから、より正確な荷重形態を把握することができる。また、荷重せンサ(6)が静止側に位置するため、有線による信号配線を行うことで、システム全体の簡素化が可能になり、故障発生の度合いを低減することができる。
【0018】本発明のスラスト荷重検出方法によれば、掘進作業過程におけるシールド掘進機・カッタ駆動軸(3)に作用するスラスト荷重を検出する方法であって、前面荷重(1)が直接作用するカッタ駆動軸(3)において、この軸方向に発生する微小変位量を、該カッタ駆動軸(3)内部に設置した駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)により検出・定量化して、前面荷重(1)に置換することにより、掘進作業過程における実働スラスト荷重を実測する、ことを特徴とするシールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出方法が提供される。
【0019】上記構成のスラスト荷重検出方法では、前面荷重(1)は、カッタ(2)の全受圧面に作用し、その総荷重はカッタ駆動軸(3)にスラスト荷重として集中的に作用する。スラスト荷重は、カッタ(2)とスラスト軸受(4)間のカッタ駆動軸(3)内において、力のバランスが保たれ、このカッタ(2)とスラスト軸受(4)には、スラスト荷重による微小変位(ΔL)が生じる。この微小変位(ΔL)を精度よく検出し、前面荷重値に置換することができる。
【0020】前記カッタ駆動軸(3)の軸心に穿った円筒を、カッタ(2)とスラスト軸受(4)との間の距離に相当する長さの標点距離(L)とし、前面荷重作用で、カッタ駆動軸(3)に生じる変位を微小変位(ΔL)とし、 荷重センサ(6)の受感部長さを(L’)とし、前記標点距離(L)は受感部長さ(L’)のN倍とし、前記カッタ駆動軸(3)に生じるひずみ量(ε)をε=ΔL/Lとし、前記カッタ駆動軸(3)に生じた微小変位(ΔL)が、すべて荷重センサ(6)に移行し、受感部長さ(L’)に対して、微小変位(ΔL)が生じたものとすれば、荷重せンサ(6)に生じるひずみ(ε’)をε’=ΔL/L’とし、標点距離(L)の長さを、受感部長さ(L’)のN倍(L=N・L’)とし、ひずみ増幅率(ε’/ε)を、ε’=N・εとするものである。
【0021】荷重せンサ(6)において、ひずみ出力に変換された電気信号を取り出すリード線が、静止軸(5−1)内部の配線孔(8−1)を貫通して、静止軸・固定端(5−2)から外部に引き出され、ひずみ増幅器(10−3)を経て、荷重監視・記録装置(12)に入力され、荷重値として表示するものである。
【0022】この場合、駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)及び静止軸(5−1)は、静止側にあるため、有線による配線処理は可能となり、簡素化に寄与するものである。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。図1は本発明のシールド掘進機カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置とその荷重検出方法におけるシールド掘進機の側断面図である。図2は計測システムのブロック図である。この図に示すように、本発明のシールド掘進機は、掘進作業工程における前面荷重1、即ち、カッタ2、カッタ駆動軸3に作用する推力の実働荷重値を逐次検出し、これを定量的に表示し、記録する荷重センサ6を内蔵した駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド5と図2に示すような測定装置とを装備したものである。
【0024】本発明のシールド掘進機には、カッタ駆動軸3の内部に駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド5を設けている。この駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド5内にスラスト荷重を検出する荷重センサ6を設置し、前面荷重1の実測を可能にしている。カッタ2に作用する前面荷重1により、カッタ駆動軸3に発生する軸方向のスラスト荷重は、荷重センサ6に伝わり、この荷重センサ6の底面と接するスラスト軸受4を反力点として力のバランスが保たれる。荷重センサ6に加えられたスラスト荷重は、荷重センサ6を構成するひずみゲージ6−1で電気信号に変換され、カッタ駆動軸3に作用する分布荷重として検出される。
【0025】この荷重センサ6は、掘進経路における種々の土質の変化に逐次対応し、最適な掘進操作を行うために、前面荷重1、即ち掘削面反力を常時検出しながら、荷重値を監視しつつ、土質の変化に対応した掘削操作を行うことができる。また、この荷重センサ6は、カッタ駆動軸1に作用する、スラスト荷重の実働値を検出することができ、軸径の大きな駆動軸に装着可能で、大荷重に対応し、長期間に稼働に耐え得るものである。
【0026】駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド5は、カッタ2とスラスト軸受4の間に位置するカッタ駆動軸3の軸心部に設置されたものである。その両端は、内装軸受3−1,3−2により支持される。前後の内装軸受3−1,3−2の外輪は、カッタ駆動軸3の軸心に穿った円筒に嵌合し、内輪は、駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド5の外径と嵌合するので、この駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド5の軸端から延長した静止軸5−1の軸端を、静止軸・固定端5−2に固定することにより、駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド5は静止状態を維持することが可能となる。
【0027】カッタ駆動軸3に生じた微小変位ΔLは、このカッタ駆動軸3の軸心に穿った円筒に内装軸受3−1,3−2を介して嵌合した駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド5に伝わり、この駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド5内に設けた荷重センサ6に集中するようになっている。この荷重センサ6部分は、駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド5の剛性に対し、極めて低い剛性に設定するため、微小変位ΔLは殆ど荷重センサ6に集中する。7はひずみ信号出力であり、8−1はリード線配線孔である。
【0028】各荷重センサ6の出力は、図2に示すように、信号ケーブル保護管内に内装されたセンサケーブルを介して、全密閉・防水型保護ケース9内に格納されたプリアンプ10に入力される。荷重センサ6に接続したプリアンプ10は、荷重センサ6の電圧入力を電流出力に変換し、変換された電流信号は、信号ケーブル保護管11内に内装した信号線を介して荷重監視・記録装置12に入力される。
【0029】荷重監視・記録装置12は、以下の機能を具備する。
(1)荷重センサ6の信号は、ディジタル指示計13において、ピークホールドを設定することにより、作業中の最大前面荷重値を表示する。さらにアナログ指示計14においては、スラスト荷重の制限値を設定し、制限値以内は青色系の発光表示、制限値を超える荷重は赤色系の発光表示を行い、さらに制限値を超える荷重の発生時にはアラームを発し、操作員の注意を喚起する。ディジタル指示計13では、作業中の最大前面荷重値を数字で表示する。
【0030】(2)荷重センサ6の個々の信号をアナログ信号に変換し、データレコーダ等のデータ収録装置16により信号を記録し、必要に応じ頻度解析装置17による解析も可能としている。
(3)荷重センサ6の信号は制御信号15として、シールドジャッキの油圧制御回路にインプットし、過大なスラスト荷重発生時における緊急停止信号として使用するようになっている。
【0031】上述したように、図2の制御システムに示すように、本発明では、掘削作業時の前面荷重(掘削面反力)を常時実測するため、シールド掘進機カッタ駆動・カッタ駆動軸のスラスト荷重を監視・記録するための装置を装備している。この装置を装備することにより、従来、経験と勘に依存してきた前面荷重の定量化が可能となり、荷重の大きさに対応したジャッキ推進速度の適合条件を維持することにより、安全で最適なシールド機の掘進操作が可能になる。
【0032】図3は圧縮梁変位センサの構造例を示すものであり、側面図(a)、断面図(b)及び回路図である(c)。図4は曲がり梁型変位センサの構造例を示すものであり、側面図(a)、断面図(b)及び回路図である(c)。図5は剪断梁型変位センサの構造例を示すものであり、側面図(a)、断面図(b)及び回路図である(c)。荷重センサ6の形態としては、圧縮梁変位センサ(図3)、曲がり梁型変位センサ(図4)又は剪断梁型変位センサ(図5)等を採用することができる。この微小変位を機械的に増幅すると共に、電気的には、図示するようなブリッジ回路上において感度増加を図り、ひずみ信号として処理することができる。
【0033】図6はひずみ増幅機構を備えた荷重センサ6の他の発明の実施の形態を示すシールド掘進機の側断面図である。上述した各形態の荷重センサ6を用いたスラスト荷重検出方法をもってしても、出力感度が不足し、S/N比が確保されない場合は、ひずみ検出素子として、半導体ひずみゲージ6−1を使用し、感度増加を図ることができる。
【0034】このひずみ検出素子を使用して感度増加を図るときは、次の手順でスラスト荷重を検出する。カッタ駆動軸3の軸心に穿った円筒は、カッタ2とスラスト軸受4の間の距離に相当する長さになり、これを標点距離Lとする。また、前面荷重作用で、カッタ駆動軸3に生じる微小変位ΔLとする。さらに、荷重センサ6の受感部長さをL’とし、標点距離Lは受感部長さL’のN倍とする。ここで、カッタ駆動軸に生じるひずみ量をεとすると、ε=ΔL/Lとなり、さらに、カッタ駆動軸に生じた微小変位ΔLが、すべて荷重センサ部に移行し、受感部長さL’に対して、微小変位ΔLが生じたものとすれば、荷重センサ6に生じるひずみε’は、ε’=ΔL/L’となる。また、ここで、標点距離Lの長さは、受感部長さL’のN倍とすると、L=N・L’であるからひずみ増幅率ε’/εは、

∴ ε’=N・εとなり、受感部長さL’に対する標点距離L長さの倍率分、ひずみ感度が増加する。即ち、カッタ駆動軸3に生じるひずみのN倍、荷重センサ6におけるひずみ量が増加することになる。
【0035】荷重センサ6において、ひずみ出力に変換された電気信号を取り出すリード線は、静止軸5−1内部の配線孔を貫通して、静止軸・固定端5−2から外部に引き出され、ひずみ増幅器10−3を経て、荷重監視・記録装置12に入力され、荷重値として表示される。この場合、駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド5及び静止軸5−1は、静止側にあるため、有線による配線処理は可能となり、簡素化に寄与する。
【0036】なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0037】
【発明の効果】上述したように、本発明のシールド掘進機カッタ駆動カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置とその荷重検出方法は、以下の効果を有する。
(1)前面荷重を検出し、その実測された荷重値を明示することにより、掘削作業中における力の釣り合いが常時把握され、目に見える形で掘進操作を実施することができる。
(2)前面荷重の作用に伴う、カッタ駆動軸の軸方向変位そのものを検出するものであるから、より正確な荷重形態を把握することができる。また、荷重センサが静止側に位置するため、有線による信号配線を行うことで、システム全体の簡素化が可能になり、故障発生の度合いを低減することができる。
(3)前面荷重の大きさ、及び、カッタ駆動軸の軸径の太さや長さに応じて、「駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド」の寸法を任意に対応でき、荷重センサの定格変位と受感部長さの最適化により、異なる条件に対応し得ることができる。
(4)原理的に極めて単純であり、構造的には非常に簡素であるため、故障に結びつく要因は極めて少ない。従って、稼働状態に入れば、長期にわたる操業を余儀なくされるシールド掘進機において、故障の心配の少ないことは、導入するうえで優位を保つことができる。
(5)カッタ駆動軸の軸方向変位そのものを検出するものであるから、より正確な荷重形態を把握することができる。また、荷重センサが静止側に位置するため、有線による信号配線を行うことで、システム全体の簡素化が可能になり、故障発生の度合いを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシールド掘進機カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置とその荷重検出方法におけるシールド掘進機の側断面図である。
【図2】計測システムのブロック図である。
【図3】圧縮梁変位センサの構造例を示すものであり、側面図(a)、断面図(b)及び回路図である(c)。
【図4】曲がり梁型変位センサの構造例を示すものであり、側面図(a)、断面図(b)及び回路図である(c)。
【図5】剪断梁型変位センサの構造例を示すものであり、側面図(a)、断面図(b)及び回路図である(c)。
【図6】ひずみ増幅機構を備えた荷重センサの他の実施の形態を示すシールド掘進機の側断面図である。
【図7】従来のシールド掘進機の構成図である。
【符号の説明】
1 前面荷重
2 カツタ
3 カッタ駆動軸
3−1 カッタ駆動軸の内装軸受(前)
3−2 カッタ駆動軸の内装軸受(後)
4 スラスト軸受
5 駆動軸変位/ひずみ変換増幅ロッド
5−1 ピニオン
6 荷重センサ
6−1 ひずみゲージ
7 ひずみ信号出力
8−1 リード線配線孔
9 全密閉・防水型保護ケース
10 プリアンプ
11 信号ケーブル保護管
12 荷重監視・記録装置
13 ディジタル指示計
14 アナログ指示計
15 制御信号出力
16 データ収録装置
17 頻度解析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 掘進作業過程におけるカッタ駆動軸(3)に作用するスラスト荷重を検出するシールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置であって、前記カッタ駆動軸(3)の内部に設けた、前記スラスト荷重を検出する荷重せンサ(6)を具備する駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)と、シールド掘進機操作盤に設けた、実測荷重値を明示するために、ひずみ測定器を内蔵した荷重監視・記録装置(12)と、を備えた、ことを特徴とするシールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置。
【請求項2】 前記駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)は、カッタ(2)とスラスト軸受(4)との間に位置するカッタ駆動軸(3)の軸心部内に設置され、その両端は、内装軸受(3−1,3−2)で支持され、該前後の内装軸受(3−1,3−2)の外輪は、前記カッタ駆動軸(3)の軸心に穿った円筒に嵌合され、該前後の内装軸受(3−1,3−2)の内輪は、前記駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)の外径と嵌合されたものであり、該駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)の軸端から延長した静止軸(5−1)の軸端を、静止軸・固定端(5−2)に固定することにより、該駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)を静止状態に維持するように構成された、ことを特徴とする請求項1のシールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置。
【請求項3】 前記荷重せンサ(6)は、前記カッタ駆動軸(3)の軸方向に発生する微小変位(ΔL)を機械的に増幅すると共に、電気的にはブリッジ回路上において感度増加を図り、ひずみ信号として処理し、ひずみ検出素子として、半導体ひずみゲージ(6−1)を使用し、感度増加を図るものである、ことを特徴とする請求項1又は2のシールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出装置。
【請求項4】 掘進作業過程におけるシールド掘進機・カッタ駆動軸(3)に作用するスラスト荷重を検出する方法であって、前面荷重(1)が直接作用するカッタ駆動軸(3)において、この軸方向に発生する微小変位量を、該カッタ駆動軸(3)内部に設置した駆動軸変位/ひずみ変換・増幅ロッド(5)により検出・定量化して、前面荷重(1)に置換することにより、掘進作業過程における実働スラスト荷重を実測する、ことを特徴とするシールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出方法。
【請求項5】 前記カッタ駆動軸(3)の軸心に穿った円筒を、カッタ(2)とスラスト軸受(4)との間の距離に相当する長さの標点距離(L)とし、前面荷重作用で、カッタ駆動軸(3)に生じる変位を微小変位(ΔL)とし、荷重センサ(6)の受感部長さを(L’)とし、前記標点距離(L)は受感部長さ(L’)のN倍とし、前記カッタ駆動軸(3)に生じるひずみ量(ε)をε=ΔL/Lとし、前記カッタ駆動軸(3)に生じた微小変位(ΔL)が、すべて荷重センサ(6)に移行し、受感部長さ(L’)に対して、微小変位(ΔL)が生じたものとすれば、荷重せンサ(6)に生じるひずみ(ε’)をε’=ΔL/L’とし、標点距離(L)の長さを、受感部長さ(L’)のN倍(L=N・L’)とし、ひずみ増幅率(ε’/ε)を、ε’=N・εとする、ことを特徴とする請求項4のシールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出方法。
【請求項6】 前記荷重せンサ(6)において、ひずみ出力に変換された電気信号を取り出すリード線が、静止軸(5−1)内部の配線孔(8−1)を貫通して、静止軸・固定端(5−2)から外部に引き出され、ひずみ増幅器(10−3)を経て、荷重監視・記録装置(12)に入力され、荷重値として表示する、ことを特徴とする請求項5のシールド掘進機・カッタ駆動軸のスラスト荷重検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2002−201894(P2002−201894A)
【公開日】平成14年7月19日(2002.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−399720(P2000−399720)
【出願日】平成12年12月28日(2000.12.28)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】