説明

シールド機における流動性の測定装置及びこの測定装置を備えたシールド機

【課題】小型で、かつ、安価に製作が可能で、チャンバ内の土砂による荷重を精度よく検出することが可能な測定装置等を提供する。
【解決手段】測定装置25は、混合物の流動による荷重を受ける第1の荷重伝達部材31と、第1の荷重伝達部材31に後方側に接続されてガーダー部5内に配置される第2の荷重伝達部材33と、第2の荷重伝達部材33の後方側に設けられた複数のロードセル35a〜35dと、第2の荷重伝達部材33と各ロードセル35a〜35dとをそれぞれ連結するための複数の連結部材37と、チャンバ19内の混合物に含まれる水が、第1の荷重伝達部材31が隔壁17を貫通する部分を通して、土圧式シールド機の隔壁17より後方の部分へ流入するのを防止するシール剤41とを備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド機のチャンバ内における掘削土砂、若しくは、掘削土砂と加泥材とを含む混合物の流動性を測定するための測定装置及びその測定装置を備えたシールド機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部では地下構造物を構築する際に、交通量の多い道路でのトンネル建設工事をスムーズに行うとともに、周辺住民に与える工事の影響を軽減するために、シールド工法が採用されている。また、都市部の地上には十分な作業基地面積を確保することが難しいために、シールド工法として、設備配置スペースの必要面積の大きい泥水式シールドに比べて設備配置スペースの必要面積の小さい土圧式シールドによる施工のニーズが高まっている。
【0003】
土圧式シールドによる掘削工法では、切羽の安定を保持するうえでチャンバ内における掘削土砂の流動状態を把握することが重要であり、例えば、特許文献1及び2には、掘削土砂の流動性を測定するための測定装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の測定装置は、土圧式シールド機のチャンバ内に掘削土砂の流動方向と対向するように設けられた板状の回転板と、回転板を駆動するためのモータと、モータの駆動力を回転板に伝達するロッドと、モータの電流値を測定するための電流測定器と、回転板の回転角度を検出するための角度検出器と、を備え、モータを駆動させて回転板を所定角度だけ回転させ、回転抵抗が最大位置において、回転板の主面の直交する方向を掘削土砂の流動方向とし、そのときの回転トルクに対応した値を流速として所定の方法にて算出するものである。
【0005】
また、特許文献2に記載の測定装置は、チャンバとシールド機本体とを隔てる隔壁を貫通して、チャンバ内に出没可能に設置される中空で棒状の計測ロッドと、当該計測ロッドの基端側の内面に設けられた複数の歪ゲージと、を備え、混合物が流動する際の計測ロッドの変形量を歪ゲージで測定し、その測定結果に基づいて混合物の流動方向とその大きさとを算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−191878号公報
【特許文献2】特開2008−169692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の測定装置では、モータやトルク検出器を設置するための広いスペースが必要になるため、シールド機の設計を大幅に変更しなければならず、また、小型のシールド機には設置することができない。さらに、モータやトルク検出器は高価なため、シールド機の設備投資費が高くなってしまう。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の測定装置では、計測ロッドが変形し易いように計測ロッドの肉厚を薄くすると、計測ロッドが摩耗により早期に寿命に達してして交換が必要になるが、計測ロッドの交換作業には多大な時間を要するので、掘削工程が長くなってしまう。一方、計測ロッドの寿命を長くするため計測ロッドの肉厚を厚くすると、計測ロッドの変形量が少なくなって歪み量の検出が困難になる。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、小型で、かつ、安価に製作できると共に、チャンバ内の土砂による荷重を精度よく検出することが可能な測定装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シールド機のチャンバ内における掘削土砂、若しくは、掘削土砂と加泥材とを含む混合物の流動性の測定装置であって、
隔壁に設けられた貫通孔内を貫通して延在するように設けられる第1の荷重伝達部材と、
前記第1の荷重伝達部材の前記チャンバ側とは反対側の端部に接続され、前記第1の荷重伝達部材の延在方向に対して側方に突出する第2の荷重伝達部材と、
前記第1の荷重伝達部材が前記チャンバ内において前記掘削土砂若しくは前記混合物の流動による荷重を受けるのに応じて、前記第2の荷重伝達部材に作用する荷重を、前記第2の荷重伝達部材の複数の位置でそれぞれ計測する複数のロードセルと、
前記チャンバ内の前記掘削土砂若しくは前記混合物に含まれる水が、前記貫通孔を通して、前記シールド機の前記隔壁よりも後方の部分へ流入するのを防止するシール手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明において、前記貫通孔内には、前記第1の荷重伝達部材を揺動可能に支持するための支持部材を備えることとしてもよい。
【0012】
また、本発明において、前記第2の荷重伝達部材は、板状の形状を有することとしてもよい。
【0013】
また、本発明のシールド機は、上述した流動性の測定装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小型で、かつ、安価に製作が可能で、チャンバ内の土砂による荷重を精度よく検出することが可能な測定装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る土圧式シールド機の側断面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る測定装置の側断面図である。
【図4】図3のB−B’断面図である。
【図5】第1の荷重伝達部材の一端に荷重が作用している状態を正面から示す模式図である。
【図6】測定装置を構成している各部材の寸法を示す概略模式図である。
【図7】測定装置に水圧が作用している状態を示す模式図である。
【図8】測定装置の他の実施例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る土圧式シールド機の側断面図であり、 図2は、図1のA矢視図である。
【0017】
両図に示すように、土圧式シールド機1は、進行方向前部で切羽の掘削を行うフード部3と、後部で覆工を行うテール部(図示しない)と、フード部3及びテール部を結ぶとともに推進設備等を内方に装備するガーダー部5とから構成され、外部から作用する荷重に対し前述した各部を保護するための矩形筒状の鋼殻からなるスキンプレート9とを備える。
【0018】
土圧式シールド機1の前部は、土圧式シールド機1の前面側にカッタービットを有するカッター11と、カッター11を駆動するための駆動源13と、駆動源13の駆動力をカッター11に伝達する回転軸15と、カッター11の後方に設けられ、カッター11との間に掘削土砂と加泥材とを含む混合物に一定の圧力を与えてこれを保持するための密閉されたチャンバ19を形成する隔壁17と、混合物をチャンバ19から排出するための排土機構21と、チャンバ19内の混合物を撹拌、混練するための撹拌装置23と、掘削土砂と加泥材との混練効果を高めるための固定翼24と、チャンバ19内の混合物の流動状態を把握するための測定装置25とから構成される。
なお、隔壁17より前方側がフード部3となり、隔壁17より後方側がガーダー部5となる。
【0019】
回転軸15のチャンバ19内の部分には、外周面から突出するようにアジテータ27が設けられており、このアジテータ27は、ガーダー部5内に設置された駆動モータ29により、カッター11と独立して回転駆動される。
【0020】
撹拌装置23は、カッター11の背面側からチャンバ19内へ突出するように複数設けられている。この複数の撹拌装置23は、土圧式シールド機1の回転軸15と同心で、かつ径が異なる3つの円周上にそれぞれ周方向に所定の間隔で配置されている。
【0021】
固定翼24は、隔壁17の前面側にチャンバ19内へ突出するように複数設けられている。この複数の固定翼24も撹拌装置23と同様、土圧式シールド機1の回転軸15と同心で、かつ径が異なる3つの円周上にそれぞれ周方向に所定の間隔で配置されている。
【0022】
測定装置25は、土圧式シールド機1の回転軸15と同心の円周上に、それぞれ周方向に所定の間隔で、撹拌装置23及びアジテータ27との相互干渉を避ける位置に配置され、第1の荷重伝達部材31(後述する)がガーダー部5側から隔壁17を貫通してチャンバ19内に突出するように複数台設けられている。
【0023】
なお、本実施形態においては、測定装置25は、土圧式シールド機1の回転軸15と同心の円周上で、周方向に所定の間隔で設置した場合について説明したが、この位置に限定されるものではなく、任意の位置に設置することが可能である。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係る測定装置25の側断面図であり、 図4は、図3のB−B’断面図である。
両図に示すように、測定装置25は、混合物の流動による荷重を受ける第1の荷重伝達部材31と、第1の荷重伝達部材31の後方側に接続されてガーダー部5内に配置される第2の荷重伝達部材33と、第2の荷重伝達部材33の後方側に設けられた複数のロードセル35a〜35dと、第2の荷重伝達部材33と各ロードセル35a〜35dとをそれぞれ連結するための複数の連結部材37と、を備える。
【0025】
第1の荷重伝達部材31は、棒状の鋼材からなり、ガーダー部5側から隔壁17を貫通してチャンバ19内に突出するように設けられている。
【0026】
第1の荷重伝達部材31が貫通する隔壁17の貫通孔17aの内周面のガーダー部5の端部には自動調心ころ軸受39(以下、単に軸受39という)が設けられており、当該第1の荷重伝達部材31は、軸受39を支点として任意の向きに揺動可能に支持されている。
【0027】
また、貫通孔17aの内周面の軸受39よりチャンバ19側の部位には、グリス孔17bを通してグリスからなるシール剤41が供給されており、第1の荷重伝達部材31の外周面と貫通孔17aの内周面との間の隙間を通ってチャンバ19内から土圧式シールド機1本体内へ混合物に含まれる水が流入することを防止している。
【0028】
なお、本実施形態では、後述するように、第1の荷重伝達部材31の後方側に接続された第2の荷重伝達部材33がガーダー部5内の支持板10に固定されているので、その固定強度が、第1の荷重伝達部材31に上記混合物から作用する荷重に対して十分に大きい場合は、第1の荷重伝達部材31を支持するための軸受39は不要であり、貫通孔17aをシールするシール剤41のみが設けられていればよい。また、貫通孔17aの内面部分にシール剤を設ける構成に限らず、チャンバ19内から貫通孔17aを通って土圧式シールド機1本体内(隔壁17よりも後方の部分、すなわち、ガーダー部5)へ混合物に含まれる水が流入するのを防止するための任意のシール手段が設けられればよい。
【0029】
第2の荷重伝達部材33は、円盤状の鋼板からなり、その中心部が第1の荷重伝達部材31の他端31bに接続されて、第1の荷重伝達部材31の延在方向に対して側方に突出した状態でガーダー部5内に配置されている。
【0030】
連結部材37は、第2の荷重伝達部材33及びロードセル35a〜35dをそれぞれ貫通するボルト43と、第2の荷重伝達部材33及びロードセル35a〜35dをそれぞれ両側から挟み込んでボルト43に螺合するナット45と、から構成されている。
なお、本実施形態では、第2の荷重伝達部材33とボルト43とをナット45で連結する方法について説明したが、この方法に限定されるものではなく、例えば、ボルト43やナット45では強度が不足する場合には、ボルト43の代わりに棒鋼を用いて、この棒鋼と円盤状の鋼板とを溶接等により接続し、当該円盤状の鋼板の周方向に所定の間隔で配置された複数のボルトで鋼板を第2の荷重伝達部材33に連結する構造、すなわちフランジ構造としてもよい。
【0031】
第2の荷重伝達部材33とロードセル35a〜35dとの間の隙間Sの長さは、第1の荷重伝達部材31に荷重が作用せず、土圧式シールド機1の軸心方向に向いた状態(以下、基準状態という)で、ロードセル35a〜35dに所定の圧縮荷重(以下、基準荷重という)が作用するように(すなわち、ロードセル35a〜35dが、図3中左側のナット45により上記基準荷重で同図中右向きに押圧されるように)設定されている。これにより、ロードセル35a〜35dに作用する引張荷重及び圧縮荷重の両方を計測することができる。
【0032】
ロードセル35a〜35dは、第1の荷重伝達部材31の中心軸CLと同心の円周上に、それぞれ周方向に所定の間隔で配置されて、ガーダー部5内に固定された支持板10にボルト49で固定されている。これにより、ロードセル35a〜35dに圧縮荷重や引張荷重が作用した際に、その反力を支持板10にて受けることができる。
本実施形態では、4台のロードセル35a〜35dを周方向に90°間隔で配置したが、この台数、配置間隔に限定されるものではなく、設計等により適宜決定されるものであり、混合物の流向をより正確に把握したい場合には、周方向の間隔を狭くして多くのロードセル35を配置することとしてもよい。
【0033】
上述した構成からなる測定装置25の第1の荷重伝達部材31に作用する荷重は、チャンバ19内を流動する混合土が第1の荷重伝達部材31に衝突することにより発生し、この混合土の衝突によって、第1の荷重伝達部材31には混合土の流動方向と同じ向きの荷重が作用する。そして、本実施形態では、上記複数のロードセル35a〜35dにより荷重を計測しているので、それら計測値を用いることで、第1の荷重伝達部材31に作用する荷重の大きさのみならず、荷重の向きも計測できるので、それら計測値に基づいて、混合土の流速の大きさ及び流動方向を算出することができる。
具体的には、第1の荷重伝達部材31の一端31a側の部位に、混合土の流動による、例えば、下向きの荷重が作用すると、第2の荷重伝達部材33の上部が、上側に配置されたロードセル35bから離間する方向へ、また、第2の荷重伝達部材33の下部が、下側に配置されたロードセル35dに近接する方向へ移動しようとすることによって、第2の荷重伝達部材33からロードセル35bには引張荷重が作用し、ロードセル35dには圧縮荷重が作用する。これらの荷重の大きさは各ロードセル35a〜35dにより計測されて、PC等(図示しない)により第1の荷重伝達部材31に作用する荷重の大きさ及び流動方向が算出される。なお、上記のとおり、ロードセル35a〜35dには基準状態で基準荷重が作用するように構成されているので、第2の荷重伝達部材33から作用する引張荷重は基準荷重からの減少量として、また、圧縮荷重は基準荷重からの増加量として、それぞれ計測することができる。
【0034】
以下、第2の荷重伝達部材33からロードセル35a〜35dに作用する荷重の大きさから第1の荷重伝達部材31に作用する荷重の大きさ及び流動方向を算出する算出方法について説明する。
測定装置25には、(I)隔壁17の面内方向に混合物の流動によって生じる荷重のみが作用する場合と、(II)この面内方向に作用する荷重に加えて、隔壁17に後方側へ向かって土水圧が作用する場合がある。そこで、まず、(I)の場合における算出方法について説明し、次に、(II)の場合について説明する。
【0035】
図5及び図6は、それぞれ第1の荷重伝達部材31の一端31aに荷重が作用している状態を正面から示す模式図、測定装置25を構成している各部材の寸法を示す概略模式図である。
なお、以下の説明では、図5中の左右方向、上下方向をそれぞれx軸、y軸として説明する。
図5及び図6に示すように、混合土が第1の荷重伝達部材31に衝突して荷重が第1の荷重伝達部材31に作用しているとき、水平面内におけるモーメントの釣り合い(図6(a)参照)及び鉛直面内におけるモーメントの釣り合いより、それぞれ、次の(1)式及び(2)式が成り立つ。
Pcosθ×L−Rr+Rr=0 ・・・(1)式
Psinθ×L−Rr+Rr=0 ・・・(2)式
ここで、P:第1の荷重伝達部材31に作用する荷重の大きさ、θ:第1の荷重伝達部材31に作用する荷重のx軸に対する角度、L:第1の荷重伝達部材31の長さ、r:第1の荷重伝達部材31の中心軸CLからロードセル35a〜35dまでの長さ、R、R、R、R:各ロードセル35a〜35dの計測値である。
また、(I)の場合は、第1の荷重伝達部材31の軸方向に作用する力はゼロであるから、次の(3)式及び(4)式が成り立つ。
+R=0 ・・・(3)式
+R=0 ・・・(4)式
これら(3)式及び(4)式をそれぞれ変形すると、次の(5)式及び(6)式となる。
=−R ・・・(5)式
=−R ・・・(6)式
続いて、(5)式及び(6)式をそれぞれ(1)式及び(2)式に代入すると、次の(7)式及び(8)式となる。
=(L/2r)×Pcosθ ・・・(7)式
=(L/2r)×Psinθ ・・・(8)式
これら(7)式及び(8)式より、荷重の大きさP及び角度θは、次の(9)式及び(10)式にてそれぞれ算出される。
P=(2r/L)×(R+R1/2 ・・・(9)式
θ=tan−1(R/R) ・・・(10)式
なお、上記(7)、(8)式から分かるように、荷重Pが同じであっても(L/2r)の値が大きいほど、ロードセルによる計測値R,Rは大きくなる。したがって、rに対してLを大きく設定することで、荷重Pの測定感度を高くすることができる。
【0036】
次に、上記(II)の場合の算出方法について説明する。
【0037】
図7は、隔壁17に土水圧が作用している状態を側方から見た場合を示す模式図である。なお、第1の荷重伝達部材31には、上述した荷重(図5参照)も作用している。
本図に示すように、隔壁17に土水圧が作用すると、その土水圧による荷重Wsが第1の荷重伝達部材31の一端31aに作用し、この荷重は、第1の荷重伝達部材31により第2の荷重伝達部材33にスラスト力として伝達される。この状態では、まず、上記(I)の場合と同様に、モーメントの釣り合いにより次の(11)式及び(12)式が成り立つ。
Pcosθ×L−R’r+R’r=0 ・・・(11)式
Psinθ×L−R’r+R’r=0 ・・・(12)式
ここで、R’、R’、R’、R’:ロードセル35a〜35dの計測値である。
各ロードセル35a〜35dの計測値R’、R’、R’、R’は、図7より、それぞれ次の(13)式〜(16)式で表される。
’=R +Ws ・・・(13)式
’=R +Ws ・・・(14)式
’=R +Ws ・・・(15)式
’=R +Ws ・・・(16)式
そして、上記(3)式及び(4)式は、今回の場合でも成り立つので、これらの式を変形した(5)式及び(6)式をそれぞれ(15)式及び(16)式に代入すると、次の(17)式及び(18)式となる。
’=−R +Ws ・・・(17)式
’=−R +Ws ・・・(18)式
そして、(13)式及び(17)式より、次の(19)式が算出される。
’−R’=2R ・・・(19)式
同様に、(14)式及び(18)式より、次の(20)式が算出される。
’−R’=2R ・・・(20)式
続いて、(19)式及び(20)式をそれぞれ(11)式及び(12)式に代入すると、次の(21)式及び(22)式となる。
Pcosθ×L−2rR =0 ・・・(21)式
Psinθ×L−2rR =0 ・・・(22)式
これら(21)式及び(22)式より、荷重の大きさP及び角度θは、次の(23)式及び(24)式にてそれぞれ算出される。
P=(2r/L)×(R+R1/2 ・・・(23)式
θ=tan−1(R/R) ・・・(24)式
ここで算出された(23)式及び(24)式は、上記(9)式及び(10)式と同一となる。
なお、(21)式及び(22)式を変形すると上記(7)式及び(8)式と同一になるため、これら(7)式及び(8)式について上述したのと同様に、rに対してLを大きく設定することで、荷重Pの測定感度を高くすることができる。
【0038】
これらの結果より、第1の荷重伝達部材31に作用する土水圧による荷重Wsの有無にかかわらず、第1の荷重伝達部材31に作用する荷重の大きさ及び角度の算出結果は、同じ値となることが確認できた。したがって、第1の荷重伝達部材31に作用する荷重の大きさ及び流動方向を算出する場合、土水圧の影響を考慮する必要がないことが分かる。
【0039】
続いて、上述した算出方法によって算出された第1の荷重伝達部材31に作用する荷重の大きさ及び流動方向を、予め設計等によって実施されたチャンバ19内の流動解析に基づく解析結果と比較する。
具体的には、土圧式シールド機1のチャンバ19に関する機械モデルを設定するとともに、混合物の粘性式を、現場掘削土、砂地盤、粘土地盤など各種地質に応じて設定し、その後、チャンバ19内における混合土の流動解析を実施して、複数の流動解析結果を予め求める。そして、上述した算出方法によって算出された荷重の大きさ及び流動方向を流動解析の結果と照合して、測定装置25の設置個所(図1及び図2参照)において、最も相関のよいものを選択して、その流動解析結果を、測定装置25での測定時点における流動状態とする。
【0040】
このようにして流動解析結果を利用すると、チャンバ19内における混合土の流動状態が可視化されるので、掘削現場において、チャンバ19内における混合土の閉塞、噴発を容易に検知することができる。
【0041】
上述した本実施形態に係る測定装置25によれば、第1の荷重伝達部材31、第2の荷重伝達部材33及びロードセル35から構成されるので、小型化することができる。これにより、土圧式シールド機1の所望の位置に測定装置25を配置することができる。また、測定装置25は小型化されているので、土圧式シールド機1内に設置しても作業用のスペースを広く確保することができる。
【0042】
また、第1の荷重伝達部材31、第2の荷重伝達部材33及びロードセル35は、それぞれ一般的な資機材であり、容易に入手できるので、測定装置25を安価に製作することができる。
【0043】
さらに、貫通孔17aの内周面と第1の荷重伝達部材31との間の隙間にグリスを充填しているので、この隙間を通過して土圧式シールド機1本体内に混合物に含まれる水が流入することを防止できる。
【0044】
なお、本実施形態では、第1の荷重伝達部材31として棒鋼を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、チャンバ19内において一方向の流れのみを検知すればよい場合には、平板状の鋼板を用いてその主面を混合土の流動方向と対向するように配置してもよい。例えば、上方方向への流れのみを検知すればよい場合には、図8に示すように、平板状の鋼板47を水平に配置し、当該鋼板47の上下にそれぞれ1台ずつロードセル35e、35fを配置する。
【0045】
なお、本実施形態では、第1の荷重伝達部材31を揺動可能に支持する支持部材として軸受39を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、弾性体であるゴムリング等を用いてもよい。要するに第1の荷重伝達部材31を揺動可能に支持できるものであればよい。
【0046】
また、本実施形態では、第2の荷重伝達部材33として円盤状の鋼板を用いた場合について説明したが、この形状に限定されるものではなく、円盤状以外の板状部材としてもよいし、板状部材に限らず、第1の荷重伝達部材31の他端31bから放射状に突出するように配置された複数の梁状部材を用いてもよい。要するに第2の荷重伝達部材33は、第1の荷重伝達部材31に作用した荷重を各ロードセル35a〜35dに伝達可能な形状のものであればよい。ただし、第2の荷重伝達部材33を板状部材とすれば、ロードセル35の設置位置を任意に選定できる点で、梁状部材とするよりも有利である。
さらに、本実施形態では、チャンバ19内における掘削土砂と加泥材の混合物の流動状態を計測するものとしたが、本発明は、これに限らず、チャンバ19内に加泥材が供給されず掘削土砂のみが存在し、この掘削土砂の流動状態を計測する場合にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 土圧式シールド機
3 フード部
5 ガーダー部
9 スキンプレート
10 支持板
11 カッター
13 駆動源
15 回転軸
17 隔壁
17a 貫通孔
17b グリス孔
19 チャンバ
21 排土機構
23 撹拌装置
24 固定翼
25 測定装置
27 アジテータ
29 駆動モータ
31 第1の荷重伝達部材
31a 一端
31b 他端
33 第2の荷重伝達部材
35(=35a〜35f) ロードセル
37 連結部材
39 軸受
41 シール剤
43 ボルト
45 ナット
47 平板状の鋼板
49 ボルト
S 隙間
CL 第1の荷重伝達部材の中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機のチャンバ内における掘削土砂、若しくは、掘削土砂と加泥材とを含む混合物の流動性の測定装置であって、
隔壁に設けられた貫通孔内を貫通して延在するように設けられる第1の荷重伝達部材と、
前記第1の荷重伝達部材の前記チャンバ側とは反対側の端部に接続され、前記第1の荷重伝達部材の延在方向に対して側方に突出する第2の荷重伝達部材と、
前記第1の荷重伝達部材が前記チャンバ内において前記掘削土砂若しくは前記混合物の流動による荷重を受けるのに応じて、前記第2の荷重伝達部材に作用する荷重を、前記第2の荷重伝達部材の複数の位置でそれぞれ計測する複数のロードセルと、
前記チャンバ内の前記掘削土砂若しくは前記混合物に含まれる水が、前記貫通孔を通して、前記シールド機の前記隔壁よりも後方の部分へ流入するのを防止するシール手段と、
を備えることを特徴とするシールド機における流動性の測定装置。
【請求項2】
前記貫通孔内には、前記第1の荷重伝達部材を揺動可能に支持するための支持部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のシールド機における流動性の測定装置。
【請求項3】
前記第2の荷重伝達部材は、板状の形状を有することを特徴とする請求項1に記載のシールド機における流動性の測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうち何れか一項に記載のシールド機における流動性の測定装置を備えることを特徴とするシールド機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−162945(P2012−162945A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25141(P2011−25141)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】