説明

シール材

【課題】 高圧縮された状態でも柔軟性を有することができるとともに、優れた止水性を有するシール材を提供する。
【解決手段】本発明のシール材は、連続気泡構造又は半連続半独立構造のシート状樹脂発泡体により構成されたシール材であって、上面及び下面は溶融止水処理されておらず、且つ側面全体が溶融止水処理されていることを特徴とする。前記溶融止水処理は、レーザー照射を用いる樹脂の溶融固化処理であることが好ましい。本発明のシール材は、さらに、上面及び下面のうち少なくとも一方の面に、止水層を有していることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状樹脂発泡体により構成されているシール材に関する。より詳細には、止水やその他液状物質の封止を目的として電子機器等に使用される、シート状樹脂発泡体から構成され、側面全体が溶融止水処理されているシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に使用されるシール材には、緩衝性や防塵性、衝撃吸収性といった機能が必要とされ、止水性を必要とされることは少なかった。しかし、対象電子機器の使用環境とともに、機器自体に防水性が必要される場合が多くなり、シール材にも防水性が求められるようになった。
【0003】
従来、止水性が必要されるシール材には、独立気泡構造を有する発泡体(特許文献1参照)や、未発泡のゴムシート等が使用されてきた。しかし、薄型化の傾向にある電子機器において、シール材が使用されるクリアランス(空隙)は小さく、シール材を高圧縮で使用する必要があり、それらのシール材は、圧縮時の反発力が大きく、高圧縮で使用することは困難であった。
【0004】
さらに、シール材を高圧縮で使用する必要があることから、高圧縮された状態でも柔軟性を有する連続気泡構造/半連続半独立構造の発泡シール材の使用が望ましいが、このような連続気泡構造/半連続半独立構造の発泡シール材は、止水性が低かった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−263963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、高圧縮された状態でも柔軟性を有することができるとともに、優れた止水性を有するシール材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、連続気泡構造又は半連続半独立構造のシート状樹脂発泡体により構成されるシール材に、上面及び下面には溶融止水処理を施さず、側面全体に溶融止水処理を施すと、高圧縮された状態でも柔軟性を保持することができるとともに、シール材としての止水性能を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、連続気泡構造又は半連続半独立構造のシート状樹脂発泡体により構成されたシール材であって、上面及び下面は溶融止水処理されておらず、且つ側面全体が溶融止水処理されていることを特徴とするシール材を提供する。
【0009】
前記溶融止水処理は、レーザー照射を用いる樹脂の溶融固化処理であることが好ましい。
【0010】
前記シール材は、さらに、上面及び下面のうち少なくとも一方の面に、止水層を有していることが好ましい。また、止水層として、スキン層、コート層、粘着剤層を有していることが好ましい。コート層としては樹脂層が好ましい。
【0011】
前記シール材は、吸水率が450wt%未満であることが好ましく、また50%圧縮反発力が5.5N/cm2以下であることが好ましい。
【0012】
本発明は、さらに前記シール材の少なくとも一方の面に、粘着剤層が設けられている構成を有する粘着シール材を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシール材によれば、前記構成を有しているので、高圧縮された状態でも柔軟性を保持することができるとともに、溶融止水処理された側面全体で水やその他液状物質に対する封止性を発揮して、シール材として良好な止水性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のシール材(シーリング材)は、連続気泡構造又は半連続半独立構造のシート状樹脂発泡体により構成されたシール材であって、上面及び下面は溶融止水処理されておらず、且つ側面全体が溶融止水処理されている。つまり、本発明のシール材の側面は、側面全体が溶融止水処理されている溶融止水処理面である。このような溶融止水処理面では、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、水蒸気などの気体、水やその他液状物質(例えば、アルコール類など)、粉塵などの固体に対する封止性を発揮する。
【0015】
このため、本発明のシール材は、シート状樹脂発泡体からなるシール材が本来有している緩衝性、防塵性、衝撃吸収性、気密性、防音性、断熱性などに加えて、良好な止水性(止水効果)を有する。
【0016】
また、本発明のシール材は、クリアランスの形状に応じて、所定の形状(例えば、四角柱状、窓枠状、L字状など)に加工(例えば、切断加工、打ち抜き加工など)して用いられてもよい。
【0017】
(シート状樹脂発泡体)
シート状樹脂発泡体は、本発明のシール材を構成する連続気泡構造又は半連続半独立構造の樹脂発泡体であって、シート状の形態及び連続気泡構造又は半連続半独立構造の気泡構造(発泡構造)を有する限り特に制限されず、例えば上面及び/又は下面(前面及び/又は後面)に、水やその他液状物質に対する止水性を発揮する層である止水層を有していてもよい。
【0018】
半連続半独立気泡構造は、独立気泡構造と連続気泡構造とが混在している気泡構造であって、通常、気泡構造全体に占める独立気泡構造が30%以下(好ましくは20%以下)の気泡構造を意味する。なお、独立気泡構造とは個々の気泡構造が独立している構造を意味し、連続気泡構造とは気泡が連通された構造を意味する。
【0019】
つまり、本発明のシール材におけるシート状樹脂発泡体は、少なくとも70%(好ましくは80%)を超える連泡率の気泡構造を有する。連泡率は、下記のように定義される。
【0020】
シート状樹脂発泡体の比重と質量(Wa)を測定する。次に、シート状樹脂発泡体を真空容器に置いた容器中の水に沈め、その状態で真空容器内を10mmHg以下に減圧する。減圧後、真空容器内を常圧に戻し、5分間放置してシート状樹脂発泡体に吸水させる。吸水した状態で、シート状樹脂発泡体の重量(Wb)を測定し、下記計算式から連泡率を定義する。
連泡率(%)=[(Wb−Wa)/水の比重(1.00)]/[1−(シート状樹脂発泡体の比重)/(発泡前のシート状樹脂発泡体の比重)×(Wa)/シート状樹脂発泡体の比重]×100
【0021】
シート状樹脂発泡体は、このように連続気泡構造又は半連続半独立構造の気泡構造を有するので、応力緩和性が高く、高圧縮された状態でも柔軟性を保持することができる。従って、本発明のシール材は、微小なクリアランス(例えば、0.10〜0.20mm程度のクリアランス)(以下、「微小クリアランス」と称する場合がある)に用いることができる。
【0022】
シート状樹脂発泡体は、物理的方法、化学的方法など通常の発泡成形に用いられる方法により得ることができる。
【0023】
化学的方法は、ポリマーベースに添加された化合物(発泡剤)の熱分解により生じたガスによりセルを形成し、発泡体を得る方法である。この発泡方法では、発泡ガスの残渣が発泡体中に残存するので、特に低汚染性の要求が高い電子機器用途においては、腐食性ガスやガス中の不純物による汚染が問題となる。微細な気泡構造(特に300μm以下の微細気泡)を形成することが困難であるという問題がある。
【0024】
また、物理的方法は、低沸点液体(発泡剤)をポリマーに分散させ、次に加熱し発泡剤を揮発させることにより気泡を形成させる発泡成形方法である。この発泡方法では、発泡剤として用いられる物質によっては、該物質の可燃性や毒性、及びオゾン層破壊などの環境への影響が懸念される。
【0025】
例えば、発泡剤として、クロロフルオロカーボン類又は炭化水素類などの低沸点液体を用いた場合、上記のような物質の可燃性や毒性、及びオゾン層破壊などの環境への悪影響の問題や、微細な気泡構造(特に300μm以下の微細気泡)を形成することが困難であるという問題がある。
【0026】
このため、本発明では、セル径が小さく、且つセル密度の高い発泡体が得られることから、高圧の不活性ガスを発泡剤として用いる物理的発泡方法が好適に用いられる。また、高圧の不活性ガス(特に二酸化炭素)を発泡剤として用いる物理的発泡方法を用いれば、不純物の少ないクリーンな樹脂発泡体を得ることができる。
【0027】
本発明において、シート状樹脂発泡体の素材である熱可塑性ポリマーとしては、高圧の不活性ガスを発泡剤として用いる物理的発泡方法により気泡構造を形成することができる限り特に制限されず、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン又はプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール等)との共重合体などのオレフィン系重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系重合体;6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどのポリアミド;ポリアミドイミド;ポリウレタン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニル;アルケニル芳香族樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ビスフェノールA系ポリカーボネートなどのポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。
【0028】
前記熱可塑性ポリマーには、常温ではゴムとしての性質を示し、高温では熱可塑性を示す熱可塑性エラストマーも含まれる。このような熱可塑性エラストマーとして、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体、それらの水素添加物ポリマーなどのスチレン系エラストマー;熱可塑性ポリエステル系エラストマー;熱可塑性ポリウレタン系エラストマー;熱可塑性アクリル系エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、例えば、ガラス転移温度が室温以下(例えば20℃以下)であるため、防水材又はシール材としたとき柔軟性及び形状追随性に著しく優れる。
【0029】
熱可塑性ポリマーは単独で又は2種以上混合して使用できる。また、発泡体の素材(熱可塑性ポリマー)として、熱可塑性エラストマー、熱可塑性以外の熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマーと熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性ポリマーとの混合物の何れを用いることもできる。
【0030】
前記熱可塑性エラストマーと熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性ポリマーとの混合物として、例えば、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系エラストマーとポリプロピレン等のオレフィン系重合体との混合物などが挙げられる。熱可塑性エラストマーと熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性ポリマーとの混合物を用いる場合、その混合比率は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1程度(好ましくは10/90〜90/10程度、さらに好ましくは20/80〜80/20程度)である。
【0031】
本発明で用いられる不活性ガスとしては、上記熱可塑性ポリマーに対して不活性で且つ含浸可能なものであれば特に制限されず、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気等が挙げられる。これらのガスは混合して用いてもよい。これらのうち、発泡体の素材として用いる熱可塑性ポリマーへの含浸量が多く、含浸速度の速い二酸化炭素が特に好適である。
【0032】
熱可塑性ポリマーに含浸させる際の不活性ガスは超臨界状態であるのが好ましい。超臨界状態では、熱可塑性ポリマーへのガスの溶解度が増大し、高濃度の混入が可能である。又、含浸後の急激な圧力降下時には、前記のように高濃度であるため、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度が気孔率が同じであっても大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0033】
発泡体を形成する際、熱可塑性ポリマーに、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤の種類は特に限定されず、発泡成形に通常使用される各種添加剤を用いることができる。このような添加剤として、例えば、気泡核剤、結晶核剤、可塑剤、滑剤、着色剤(顔料、染料等)、収縮防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、加硫剤、表面処理剤などが挙げられる。添加剤の添加量は、気泡の形成等を損なわない範囲で適宜選択でき、通常の熱可塑性エラストマー等の熱可塑性ポリマーの成形に用いられる添加量を採用できる。
【0034】
前記滑剤は熱可塑性ポリマーの流動性を向上させるとともに、ポリマーの熱劣化を抑制する作用を有する。本発明において用いられる滑剤としては、熱可塑性ポリマーの流動性の向上に効果を示すものであれば特に制限されず、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、硬化ヒマシ油、ステアリン酸ステアリルなどのエステル系滑剤などが挙げられる
【0035】
又、前記収縮防止剤は、発泡体の気泡膜の表面に分子膜を形成して発泡剤ガスの透過を効果的に抑制する作用を有する。本発明において用いられる収縮防止剤としては、発泡剤ガスの透過を抑制する効果を示すものであれば特に限定されず、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。
【0036】
熱可塑性ポリマーに、高圧の不活性ガスを含浸させることにより、発泡体を製造する方法としては、具体的には、熱可塑性ポリマーに、不活性ガスを高圧下で含浸させるガス含浸工程、該工程後に圧力を低下させて樹脂を発泡させる減圧工程、及び必要に応じて加熱により気泡を成長させる加熱工程を経て形成する方法などが挙げられる。この場合、予め成形した未発泡成形物を不活性ガスに含浸させてもよく、又、溶融した熱可塑性ポリマーに不活性ガスを加圧状態下で含浸させた後、減圧の際に成形に付してもよい。これらの工程は、バッチ方式、連続方式の何れの方式で行ってもよい。
【0037】
バッチ方式によれば、例えば以下のようにして発泡体を形成できる。即ち、まず、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用してポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性ポリマーを押し出すことにより、未発泡成形物(発泡体成形用樹脂シート等)を形成する。或いは、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型の羽根を設けた混練機を使用して、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性ポリマーを均一に混練しておき、これを熱板のプレス機を用いてプレス成形し、熱可塑性ポリマーを基材樹脂として含む未発泡成形物(発泡体成形用樹脂シート等)を形成する。そして、得られた未発泡成形物を耐圧容器中に入れ、高圧の不活性ガスを導入し、該不活性ガスを未発泡成形物中に含浸させる。この場合、未発泡成形物の形状は特に限定されず、ロール状、板状等の何れであってもよい。又、高圧の不活性ガスの導入は連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。十分に高圧の不活性ガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、基材樹脂中に気泡核を発生させる。気泡核はそのまま室温で成長させてもよく、又、必要に応じて加熱することによって成長させてもよい。加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知乃至慣用の方法を採用できる。このようにして気泡を成長させた後、冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化する。
【0038】
一方、連続方式によれば、例えば以下のようにして発泡体を形成できる。即ち、熱可塑性ポリマーを単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して混練しながら高圧の不活性ガスを注入し、十分にガスを熱可塑性ポリマー中に含浸させた後、押し出して圧力を解放し(通常、大気圧まで)、発泡と成形とを同時に行い、場合によっては加熱することにより気泡を成長させる。気泡を成長させた後、冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化する。
【0039】
なお、バッチ方式や連続方式によって形成された樹脂発泡体の形状がシート状でない場合(例えば円環状など)、通常、シート状となるように切断加工される。
【0040】
前記ガス含浸工程における圧力は、例えば6MPa以上(例えば6〜100MPa程度)、好ましくは8MPa以上(例えば8〜100MPa程度)である。圧力が6MPaより低い場合には、発泡時の気泡成長が著しく、気泡が大きくなりすぎて、前記範囲の小さな平均セル径(平均気泡径)を得ることができず、効果が低下する。これは、圧力が低いとガスの含浸量が高圧時に比べて相対的に少なく、気泡核形成速度が低下して形成される気泡核数が少なくなるため、1気泡あたりのガス量が逆に増えて気泡径が極端に大きくなるからである。又、6MPaより低い圧力領域では、含浸圧力を少し変化させるだけで気泡径、気泡密度が大きく変わるため、気泡径及び気泡密度の制御が困難になりやすい。
【0041】
ガス含浸工程における温度は、用いる不活性ガスや熱可塑性ポリマーの種類等によって異なり、広い範囲で選択できる。操作性等を考慮した場合、例えば、10〜350℃程度である。例えば、シート状などの未発泡成形物に不活性ガスを含浸させる場合の含浸温度は、バッチ式では10〜200℃程度、好ましくは40〜200℃程度である。又、ガスを含浸させた溶融ポリマーを押し出して発泡と成形とを同時に行う場合の含浸温度は、連続式では60〜350℃程度が一般的である。
【0042】
上記の中でも、不活性ガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度は32℃以上、特に40℃以上であるのが好ましい。
【0043】
前記減圧工程において、減圧速度は、特に限定されないが、均一な微細気泡を得るため、5〜300MPa/秒程度が好ましい。又、前記加熱工程における加熱温度は、例えば、40〜250℃程度、好ましくは60〜250℃程度である。
【0044】
また、このようなシート状樹脂発泡体の製造方法によれば、高発泡倍率のシート状樹脂発泡体を製造することができるので、厚いシート状樹脂発泡体を製造することが出来るという利点を有する。例えば、連続方式で樹脂発泡体を製造する場合、混練含浸工程において押出し機内部での圧力を保持するためには、押出し機先端に取り付けるダイスのギャップを出来るだけ狭く(通常0.1〜1.0mm)する必要がある。従って、厚い樹脂発泡体を得るためには、狭いギャップを通して押出された樹脂発泡体組成物を高い倍率で発泡させなければならないが、従来は、高い発泡倍率が得られないことから、形成される発泡体の厚みは薄いもの(例えば0.5〜2.0mm程度)に限定されてしまっていた。これに対して、高圧の不活性ガスを用いて製造される樹脂発泡体は、最終的な厚みで0.50〜5.00mmの発泡体を連続して得ることが可能である。なお、このような厚い樹脂発泡体を得るためには、樹脂発泡体の相対密度(発泡後の密度/未発泡状態での密度)が0.02〜0.3(好ましくは0.05〜0.25)であることが望ましい。前記相対密度が0.3を超えると発泡が不十分であり、また0.02未満では発泡体の強度が著しく低下する場合があり好ましくない。
【0045】
本発明では、シート状樹脂発泡体の見掛け密度は、使用目的などに応じて適宜設定することができるが、0.2g/cm3以下(好ましくは0.15g/cm3以下、さらに好ましくは0.13g/cm3以下)であることが好ましい。なお、シート状樹脂発泡体の見掛け密度の下限としては、0.02g/cm3以上(好ましくは0.03g/cm3以上)であることが好ましい。シート状樹脂発泡体の見掛け密度は、含浸させる不活性ガスの量や圧力により発泡倍率を調節することにより、制御することができる。また、減圧工程の樹脂温度を適宜調整することで、シート状樹脂発泡体の独立気泡構造や連続気泡構造、これらが混在した気泡構造などの発泡構造を制御することができる。シート状樹脂発泡体の見掛け密度が0.20g/cm3を超えると、発泡が不十分となり、一方、0.02g/cm3未満であると、シート状樹脂発泡体の強度が著しく低下する場合があり、好ましくない。
【0046】
なお、シート状樹脂発泡体の見掛け密度は、40mm×40mmの打抜き刃型にて、シート状樹脂発泡体を打抜き、打抜いた試料の寸法を測定する。また、測定端子の直径(φ)20mmである1/100ダイヤルゲージにて厚みを測定する。これらの値からシート状樹脂発泡体の体積を算出する。次に、シート状樹脂発泡体の重量を最小目盛り0.01g以上の上皿天秤にて測定する。これらの値よりシート状樹脂発泡体の見掛け密度(g/cm3)を算出する。
【0047】
シート状樹脂発泡体の厚みとしては、特に制限されず、微小クリアランスの形状や大きさなどに応じて適宜選択することができる。例えば、0.5〜5mm(好ましくは0.8〜3mm)程度の範囲から選択することができる。
【0048】
シート状樹脂発泡体の平均セル径(平均気泡径)、圧縮した時の対反発荷重、見掛け密度、気泡構造等は、用いる不活性ガス及び熱可塑性ポリマーや熱可塑性エラストマーの種類、用いる添加剤、作製方法や作製時の発泡条件などにより調整することができる。例えば、ガス含浸工程における温度、圧力、時間などの操作条件、減圧工程における減圧速度、温度、圧力などの操作条件、減圧後の加熱温度などを適宜選択、設定することにより調整することができる。
【0049】
なお、このような方法で作製されるシート状樹脂発泡体は、作製中に熱可塑性ポリマーからエア抜けが生じるので、通常上面及び下面にスキン層を有するシート状樹脂発泡体である。
【0050】
(溶融止水処理)
溶融止水処理は、シート状樹脂発泡体の側面全体に施される処理であり、樹脂の溶融固化によって、シート状樹脂発泡体の側面全体に気体、水やその他液状物質、粉塵などの固体に対する封止性を付与する処理である。
【0051】
シート状樹脂発泡体の側面全体の表面に、樹脂の溶融固化を伴う溶融止水処理を施すと、シート状樹脂発泡体の側面全体の表面において気泡構造が消失し、樹脂の連続構造が形成される。このため、溶融止水処理が施された側面では止水性を発揮する。なお、本発明において、溶融止水処理により、シート状樹脂発泡体の側面表面における気泡構造が消失して樹脂の連続構造が形成された部分を、「溶融止水処理部」と称する場合がある。
【0052】
溶融止水処理は、樹脂の溶融固化を生じさせる処理であれば特に制限されないが、例えば、加熱した金属刃を用いて樹脂の溶融固化を生じさせる処理、レーザー照射を用いて樹脂の溶融固化を生じさせる処理などが挙げられる。より具体的には、例えば、(i)シート状発泡体を加熱した金属刃で打ち抜き加工を行いつつ、側面を溶融して、樹脂の溶融固化を生じさせること、(ii)シート状発泡体に、上面又は下面から、レーザーを照射して、所定の形状に切断しつつ、側面を溶融して、樹脂の溶融固化を生じさせること等が挙げられる。
【0053】
中でも、上記(i)のような加熱した金属刃を用いる方法では、シート状樹脂発泡体の側面と金属刃とが樹脂の溶融に起因して、べたついたり、くっついたりすること、樹脂ダレが生じること、金属刃に樹脂が固着して残存すること等により、作業性に問題が生じたり、シール材の形態に悪影響を及ぼす場合があることから、このような問題が生じることがない、上記(ii)のようなレーザーを用いる方法が好ましい。また、上記(ii)のようなレーザーを用いる方法では、より精密な加工を行うことができる点や加工速度の点でも、加熱した金属刃を用いる方法に比べて有利である。
【0054】
上記(ii)のようなレーザーを用いる方法で使用されるレーザー光としては、特に限定されず、従来公知の種々のものを採用することができる。例えば、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザー、YAGレーザー等の第3高調波若しくは第4高調波、YLF若しくはYVO4の固体レーザーの第3高調波若しくは第4高調波、Ti:Sレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー又は炭酸ガスレーザー等を使用することができる。これらのレーザー光のうち、半導体レーザーは、赤外線領域の波長を有し、レーザースポット面内のパワー密度の均一性も高く、加工精度向上の面で好ましい。
【0055】
レーザー光の集光径(スポット径)は、シート状樹脂発泡体に施す加工の種類に応じて適宜設定され得るが、上記(ii)の切断加工の場合、集光径を調節することにより、切断幅の制御や、溶融止水処理部(シール材側面における溶融止水処理されている部分)の側面から中心に向かう方向の厚さを制御することができる。集光径(切断幅)は、通常2mm〜0.5mmが好ましく、1.0mm〜0.5mmがより好ましい。集光径が、0.5mm未満であると、パワー密度の微小な制御が困難な場合がある。その一方、2.0mmを超えると、微細な加工が困難な場合がある。
【0056】
本発明において、「溶融止水処理部の厚さ」は、側面から中心に向かう方向の厚さのことを意味する。なお、本発明において、溶融止水処理部の上面から下面へ向かう方向(下面から上面へ向かう方向)の厚さは、通常シール材全体の上面から下面へ向かう方向(下面から上面へ向かう方向)の厚さと同一である。
【0057】
レーザー光のパワー密度は、シート状樹脂発泡体の物性、切断速度に応じて適宜設定されうる。シート状樹脂発泡体の光吸収率はレーザー光の波長に左右される。レーザー光は発振媒体や結晶を選択することで紫外線から近赤外線まで波長を発振できる。従って、シート状樹脂発泡体の光吸収波長に合わせたレーザー光を使用することにより、低いパワー密度で効率よく加工できる。例えば、シート状発泡体の上面又は下面からレーザー光を照射して、所定の形状に切断しつつ、側面を溶融させて溶融止水処理部を形成する場合、レーザー密度は、1000〜2000W(好ましくは1500〜2000W)である。
【0058】
溶融止水処理部の厚さとしては、側面から中心に向かう方向の厚さで、通常10〜100μm(好ましくは10〜30μm)である。10μm未満であると、シール材として用いた場合に溶融止水処理部の破損が生じて、止水性の低下が生じる場合があり、一方、100μmを超えると、溶融止水処理部がシール材のシール性能に悪影響を及ぼす場合がある。
【0059】
なお、溶融止水処理部の厚さは、止水性を発揮し、シール材のシール性能に悪影響を及ぼさない限り特に制限されないため、シール材の側面により、又はシール材の同一側面の部位により、厚さが異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0060】
(止水層)
止水層は、シール材の上面表面及び/又は下面表面に設けられる止水性を発揮する層であり、通常シール材として良好な止水性を得る観点から上面表面及び下面表面の両方に設けられる。
【0061】
止水層としては、スキン層やコート層が好ましい。また、止水層は粘着剤層(感圧接着剤層)であってもよい。なお、止水層は単層構造であってもよいし、積層構造であってもよいので、止水層は、例えばスキン層上にコート層を設けた積層構造の止水層や、スキン層やコート層上に粘着剤層を設けた積層構造の止水層であってもよい。このような積層構造の止水層を有するシール材では、例えばコート層の厚さを薄くできる利点やシール材の強度を向上させることができる利点がある。
【0062】
止水層の厚さ(上面から下面へ向かう方向における厚さ)は、層表面で止水性を発揮する限り特に制限されないが、通常シール材全体の厚さ(上面から下面へ向かう方向での厚さ)に対して40%以下(好ましくは30%以下)の厚さを占めることが好ましい。止水層はシール材中の発泡層(発泡体層)に比べて硬いので、シール材全体の厚さに対して40%を超える厚さを占めると、シール材としての柔軟性(柔らかさ)に悪影響を及ぼし、クリアランスに対する追従性が低下するおそれがあるためである。
【0063】
例えば、上面及び下面に止水層を有するシール材における止水層の厚さは、両方の止水層の合わせた厚さが、シール材全体の厚さに対して上記範囲内の厚さを占めることが好ましい。また、止水層の厚さを上面及び下面で異なる厚さとするとシール材のシール機能に悪影響を及ぼすおそれがあり、上面及び下面で厚さは同一であることが好ましいので、通常上面又は下面それぞれの止水層の厚さは、シール材全体の厚さ(上面から下面へ向かう方向での厚さ)に対して20%以下(好ましくは15%以下)の厚さである。
【0064】
止水層の厚さ(上面から下面へ向かう方向における厚さ)は、層表面で止水性を発揮する限り特に制限されないが、気泡の封止効果を高める観点から、シール材内部の気泡構造部分の気泡の平均気泡径より大きいことが好ましい。
【0065】
スキン層とは、シート状樹脂発泡体を製造する際に発生する、上面表面及び下面表面の密度の高い層のことであり、該層は未発泡部分を非常に多く含む部分(発泡倍率が非常に低い部分)である。スキン層では気泡構造がほとんど存在せず、存在していても発泡倍率が著しく小さいため、スキン層の大部分が樹脂の未発泡部分(連続構造)からなる。このため、スキン層は、層表面で止水性を発揮する。
【0066】
シール材がスキン層を有していると、強度がより向上する。
【0067】
コート層とは、樹脂を塗工して形成される層であり、層表面で止水性を発揮する層である。シール材にコート層を設けると、強度や意匠性が向上する。
【0068】
このようなコート層を形成する樹脂としては、特に制限されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の何れを用いてもよい。また、樹脂は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0069】
熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0070】
熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、セルロース樹脂、及びこれらの架橋体などのポリマーなどが挙げられる。
【0071】
特に、コート層を形成する樹脂としては、シール材としての柔軟性に悪影響を与えることを防止するために応力緩和特性が大きい樹脂が好ましいことから、熱可塑性エラストマー樹脂が好適に用いられる。すなわち、コート層としては、熱可塑性エラストマー樹脂層が好ましい。
【0072】
熱可塑性エラストマー樹脂としては、公知の熱可塑性エラストマー樹脂の中から適宜選択することができる。熱可塑性エラストマー樹脂は、通常、ハードセグメント部と、ソフトセグメント部とにより構成されている。具体的には、例えば、熱可塑性エラストマー樹脂が、スチレン−イソプレン−スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂である場合、スチレン−イソプレン−スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂中のスチレン成分による繰り返し単位(モノマー単位又は構成単位)がハードセグメント部に相当しており、イソプレン成分による繰り返し単位がソフトセグメント部に相当している。本発明では、熱可塑性エラストマー樹脂におけるハードセグメント部とソフトセグメント部との割合としては、特に制限されないが、熱可塑性エラストマー樹脂中のハードセグメント部の含有比率としては、50モル%未満であることが好ましく、特に30モル%未満であることが好適である。熱可塑性エラストマー樹脂として、ハードセグメント部の含有比率が50モル%未満の熱可塑性エラストマー樹脂を用いれば、シール材の柔軟性への悪影響をより有効に抑制又は防止することができる。
【0073】
具体的には、熱可塑性エラストマー樹脂としては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー樹脂、ポリアミド系熱可塑性エラストマー樹脂、ウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー樹脂、ジエン系熱可塑性エラストマー樹脂などが挙げられる。熱可塑性エラストマー樹脂としては、特に、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂を好適に用いることができる。
【0074】
前記スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂(SIS系熱可塑性エラストマー樹脂)、スチレン−ブタジエン−スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂(SBS系熱可塑性エラストマー樹脂)、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂(SEBS系熱可塑性エラストマー樹脂)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂(SEPS系熱可塑性エラストマー樹脂)などが挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂としては、特に、SIS系熱可塑性エラストマー樹脂が好適である。
【0075】
本発明では、熱可塑性エラストマー樹脂としては、例えば、JSR社製の商品名「SIS」のシリーズ[例えば、商品名「SIS5405」(SIS系熱可塑性エラストマー樹脂;スチレン成分の含有比率:18モル%)、商品名「SIS5002」(SIS系熱可塑性エラストマー樹脂;スチレン成分の含有比率:22モル%)など]や、クラレ社製の商品名「セプトン」のシリーズ[例えば、商品名「セプトン2104」(SIS系熱可塑性エラストマー樹脂;スチレン成分の含有比率:65モル%)など]を好適に用いることができる。なお、SIS系熱可塑性エラストマー樹脂におけるスチレン成分の含有比率とは、SIS系熱可塑性エラストマー樹脂中の全繰り返し単位に対するスチレン成分による繰り返し単位の割合(モル%)を意味している。
【0076】
熱可塑性エラストマー樹脂層を形成するための熱可塑性エラストマー樹脂組成物中には、必要に応じて、公知の添加剤(例えば、充填剤、難燃剤、老化防止剤、帯電防止剤、架橋剤など)が配合されていてもよい。
【0077】
熱可塑性エラストマー樹脂層は、熱可塑性エラストマー樹脂と、必要に応じて各種添加剤とを含有する熱可塑性エラストマー樹脂組成物を、所定の面上に塗布し、必要に応じて乾燥や硬化を行うことにより形成することができる。
【0078】
なお、熱可塑性エラストマー樹脂又はその組成物を塗布して熱可塑性エラストマー樹脂層を形成する際には、熱可塑性エラストマー樹脂又はその組成物の塗布量(固形分又は乾燥重量)としては、特に制限されず、例えば1〜25g/m2(好ましくは5〜20g/m2)の範囲から適宜選択することができる。
【0079】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。中でも、被着体への汚染防止などの観点から、アクリル系粘着剤が好適に用いられる。なお、粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
粘着剤層は、公知乃至慣用の形成方法を利用して形成することができ、例えば、所定の部位又は面上に粘着剤を塗布する方法(塗布方法)、剥離ライナーなどの剥離フィルム上に、粘着剤を塗布して粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を、所定の部位又は面上に転写する方法(転写方法)などが挙げられる。なお、粘着剤層の形成に際しては、公知乃至慣用の塗布方法(流延方法、ロールコーター方法、リバースコータ方法、ドクターブレード方法など)を適宜利用することができる。
【0081】
止水層として粘着剤層を有するシール材は、粘着シール材、粘着テープ又はシート、粘着部材としても用いることができる。
【0082】
(シール材)
本発明のシール材は、前記作製方法により得られるシート状樹脂発泡体に、少なくとも溶融止水処理を施すことにより作製することができる。なお、前記作製方法により得られるシート状樹脂発泡体は、作製中に熱可塑性ポリマーからエア抜けが生じるので、通常上面表面及び下面表面にスキン層を有するシート状樹脂発泡体である。このようなスキン層は刃物(例えば、スプリッティングカッター、ハンドソーなど)を用いてスライス加工することにより除去することができる。従って、上面表面及び下面表面にスキン層を有するシート状樹脂発泡体に、スキン層を除去するスライス加工を行えば、気泡構造が露出し、気泡構造(発泡構造)のみから構成されるシート状樹脂発泡体を得ることができる。
【0083】
本発明のシール材では、上面及び下面は溶融止水処理が施されていない。ゆえに、本発明のシール材は、気泡構造が露出していてもよいが、通常上面及び下面には止水層が設けられている。気泡構造が連続構造又は半連続半独立構造であることから、気泡構造が露出していると止水性に悪影響を及ぼすためである。
【0084】
なお、本発明のシール材の上面及び下面に溶融止水処理を施すと、内部にも熱が伝わって樹脂が溶融し、気泡構造が消失して、シール材としての機能を失う場合がある。特に、厚さの薄いシール材ではこのようなことが生じやすい。
【0085】
連続気泡構造又は半連続半独立気泡構造の気泡構造を有し、側面全体に溶融止水処理が施されたシール材は、例えば、前記作製方法により得られる、上面及び下面にスキン層を有するシート状樹脂発泡体に、スキン層を除去するスライス加工を行ってから、側面全体に溶融止水処理を施すことにより作製することができる。
【0086】
連続気泡構造又は半連続半独立気泡構造の気泡構造、上面及び下面にスキン層を有し、側面全体に溶融止水処理が施されたシール材は、例えば、前記作製方法により得られる、上面及び下面にスキン層を有するシート状樹脂発泡体の側面全体に溶融止水処理を施すことにより作製することができる。
【0087】
連続気泡構造又は半連続半独立気泡構造の気泡構造、上面及び下面にコート層を有し、側面全体に溶融止水処理が施されたシール材は、例えば、前記作製方法により得られる、上面及び下面にスキン層を有するシート状樹脂発泡体に、スキン層を除去するスライス加工を行い、気泡構造を露出させた後、この気泡構造が露出した上面及び下面にコート層を設けてから側面全体に溶融止水処理を施すことにより作製することができる。
【0088】
本発明のシール材は、450wt%未満(好ましくは300wt%未満、より好ましくは100wt%未満)の吸水率を有することが好ましい。吸水率が450wt%を超えると、シール材の止水性が低下し、止水性が要求される用途に用いることが困難となるためである。
【0089】
シール材の吸水率は、「シール材の重量」に対する「蒸留水中に1日間浸漬させた後のシール材が吸収した蒸留水の重量とシール材の重量とを合計した重量」の百分率で定義される。
【0090】
本発明のシール材は、5.5N/cm2以下(好ましくは4.5N/cm2以下、より好ましくは3.5N/cm2以下)の50%圧縮反発力を有することが好ましい。50%圧縮反発力が5.5N/cm2を超えると、柔軟性の低下により、シール材としての機能が低下し、微小クリアランスに対して用いることができない場合がある。
【0091】
本発明のシール材の形状や厚みなどとしては、特に制限されず、用途などに応じて適宜選択することができる。例えば、0.10〜0.20mmの微小クリアランスに最適なシール材の厚みとしては、0.2〜1.0mm、好ましくは0.3〜0.8mm、更に好ましくは0.3〜0.4mm程度の範囲から選択することができる。
【0092】
本発明のシール材は、前述のような特性を有しているので、気泡が非常に微細であり、また柔軟性が良好であり、且つ見掛け密度が低い。即ち、セル径(気泡径)を小さく保持させたまま、微小なクリアランスに対応可能な優れた柔軟性を有している。そのため、止水性能を発揮しつつ、更なる微小なクリアランスに対しても良好に追従することができる。しかも、高発泡であり、軽量である。
【0093】
また、シート状樹脂発泡体が熱可塑性エラストマー等の熱可塑性ポリマーからなるため柔軟性に優れており、発泡剤として二酸化炭素等の不活性ガスを用いると、従来の物理発泡法及び化学発泡法と異なり、有害物質が発生したり汚染物質が残存することがなくクリーンである。そのため、特に電子機器等の内部に用いるシール材としても好適に利用できる。
【0094】
従って、本発明のシール材は、各種部材又は部品(例えば、光学部材など)を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられるシール材として有用である。特に、小型の部材又は部品(例えば、小型の光学部材など)を、薄型化の製品に装着する際であっても好適に用いることができる。
【0095】
シール材を利用した取付(装着)可能な光学部材としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置に装着される画像表示部材(特に、小型の画像表示部材)や、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等の移動体通信の装置に装着されるカメラやレンズ(特に、小型のカメラやレンズ)などが挙げられる。
【0096】
(光学部材を有する構造体)
本発明のシール材によれば、光学部材が、前記シール材を介して所定の部位に取り付けられている(装着されている)構造体を得ることができる。このような構造体としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置(特に、小型の画像表示部材が光学部材として装着されている画像表示装置)や、カメラやレンズ(特に、小型のカメラ又はレンズ)が光学部材として装着されている、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等の移動体通信の装置などが挙げられる。前記構造体は、従来より薄型化された製品であってもよく、その厚みや形状などは特に制限されない。
【0097】
(止水シール構造)
本発明のシール材によれば、光学部材が、前記シール材を介して取り付けられている(装着されている)シール構造を得ることができる。止水シール構造としては、光学部材を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に、前記シール材が用いられていれば、他の構造は特に制限されない。従って、光学部材や、該光学部材を取り付ける所定の部位などは特に制限されず、適宜選択することが可能であり、例えば、光学部材としては、前述のような光学部材などが挙げられる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0099】
(実施例1)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:45重量部、ポリオレフィン系エラストマー[メルトフローレート(MFR):6g/10min、JIS A硬度:79°]:45重量部、ポリエチレン:10重量部、水酸化マグネシウム:10重量部、カーボン(商品名「旭♯35」旭カーボン株式会社製):10重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13(注入後12)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、ポリマー全量に対して5重量%の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、半連続半独立気泡構造のシート状発泡体[「シート状発泡体(A)」と称する]を得た。
シート状発泡体(A)の上面表面及び下面表面には、スキン層が形成されており、また該発泡体において、見掛け密度は0.05g/cm3、気泡構造層(発泡体層)の厚さは2mm、上面表面及び下面表面のスキン層の厚さはともに0.02mmであった。またスキン層を除いた発泡体中心部の連泡率は、80%であった。
シート状発泡体(A)を、上面又は下面から、下記表1の条件で垂直にレーザーを照射して、切断加工することにより、上面及び下面にスキン層を有するとともに、側面全体が溶融処理された発泡体を得た。
【0100】
【表1】

【0101】
(実施例2)
実施例1と同様にしてシート状発泡体(A)を得てから、シート状発泡体(A)の上面及び下面のスキン層をスプリッティングカッターで除去して、上面及び下面のスキン層を除去したシート状発泡体を得た。
熱可塑性エラストマー樹脂(商品名「SIS5405」JSR社製;スチレン−イソプレン−スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂;スチレン成分の含有比率:18モル%)に、トルエン溶剤を加えて、固形分濃度を20重量%に希釈し、メイヤバーにより、スキン層を除去したシート状発泡体の上面及び下面に、乾燥重量(固形分重量)で15g/m2となる塗布量で塗布し、その後80℃で3分間、加熱乾燥して、熱可塑性エラストマー樹脂層(コート層、SIS層)を形成した。
上面及び下面にコート層を有するシート状発泡体を、上面又は下面から、上記表1の条件でレーザーを照射して切断加工することにより、上面及び下面にコート層を有するとともに、側面全体が溶融処理された発泡体を得た。
該発泡体において、見掛け密度は0.05g/cm3、気泡構造層(発泡体層)の厚さは0.5mm、上面表面及び下面表面のコート層の厚さはともに0.02mmであった。
【0102】
(比較例1)
実施例1と同様にしてシート状発泡体(A)を得てから、シート状発泡体(A)の上面及び下面のスキン層をスプリッティングカッターで除去して、トムソン刃にて所定の形状に切断して、発泡体を得た。
なお、該発泡体は、側面に樹脂溶融部を有することはなかった。
【0103】
(比較例2)
実施例1と同様にしてシート状発泡体(A)を得てから、トムソン刃にて所定の形状に切断して、発泡体を得た。
なお、該発泡体は、上面及び下面にスキン層を有するが、側面に樹脂溶融部を有することはなかった。
【0104】
(比較例3)
発泡体として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)を主成分とするシート状発泡体[商品名「エプシトーラー」日東電工株式会社製、シール材(シーリング材料)、独立気泡構造]を用いた。
【0105】
(評価)
実施例及び比較例の発泡体について、「吸水率」を測定することにより止水性を評価し、さらに「50%圧縮時の反発力(50%圧縮反発力)」を測定することにより柔軟性を評価した。
【0106】
止水性の評価
下記の(吸水率の測定方法)により吸水率を測定し、下記の基準で評価した。
非常に良好(◎):1日浸漬させたものの吸水率が100wt%未満
良好(○):1日浸漬させたものの吸水率が450wt%未満
不良(×):1日浸漬させたものの吸水率が450wt%以上
【0107】
(吸水率の測定方法)
発泡体を23℃の雰囲気下30分エージングさせた後、発泡体の重量を測定し、「浸漬前の発泡体の重量」とした。
次に、発泡体を、70℃に調整された蒸留水中に、それぞれ1日間(24時間)浸漬させた。浸漬後、発泡体の重量を測定し、「浸漬後の発泡体の重量」とした。
そして、下記式から「水に浸漬する前の重量に対する、水に1日間(24時間)浸漬した後の重量の変化で表される発泡体の重量変化(吸水率)」を求めた。
吸水率(%)=(浸漬後の発泡体の重量−浸漬前の発泡体の重量)/(浸漬前の発泡体の重量)×100
【0108】
柔軟性の評価
下記の(50%圧縮反発率の測定方法)により50%圧縮反発率を測定し、下記の基準で評価した。
良好(○):50%圧縮反発率が5.5N/cm2未満
不良(×):50%圧縮反発率が5.5N/cm2以上
【0109】
(50%圧縮反発率の測定方法)
50%圧縮反発力(50%圧縮時反発力)は、JIS K 6767に基づき測定した。具体的には、発泡体を圧縮速度2.54mm/minで体積が50%になるまで圧縮し、その時の応力を(N)を単位面積(cm2)当たりに換算して求めた。
【0110】
【表2】

【0111】
また、走査型電子顕微鏡(SEM)で、実施例の断面を観察した。なお、走査型電子顕微鏡(SEM)として、株式会社日立ハイテクノロジーズ製S−3400Nを使用した。それぞれの実施例の断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM像)を、図1〜図2に示した。走査型電子顕微鏡写真の倍率は、200倍である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、実施例1の断面の電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、実施例2の断面の電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0113】
1 溶融止水処理部
2 スキン層
3 コート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡構造又は半連続半独立構造のシート状樹脂発泡体により構成されたシール材であって、上面及び下面は溶融止水処理されておらず、且つ側面全体が溶融止水処理されていることを特徴とするシール材。
【請求項2】
溶融止水処理が、レーザー照射を用いる樹脂の溶融固化処理である請求項1記載のシール材。
【請求項3】
さらに、上面及び下面のうち少なくとも一方の面に、止水層を有していることを特徴とする請求項1又は2記載のシール材。
【請求項4】
止水層として、スキン層を有している請求項3記載のシール材。
【請求項5】
止水層として、コート層を有している請求項3記載のシール材。
【請求項6】
コート層が、樹脂層である請求項5記載のシール材。
【請求項7】
止水層として、粘着剤層を有している請求項3記載のシール材
【請求項8】
吸水率が、450wt%未満である請求項1〜7の何れかの項に記載のシール材。
【請求項9】
50%圧縮反発力が、5.5N/cm2以下である請求項1〜8の何れかの項に記載のシール材。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかの項に記載のシール材の少なくとも一方の面に、粘着剤層が設けられている構成を有する粘着シール材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−280640(P2009−280640A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131553(P2008−131553)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】