説明

ジャンパ線付プリント基板

【課題】プリント配線のジャンパ線への導通部分において基板端子を立設することができると共に、複数のプリント配線の接続を高い設計自由度で行うことができる、新規な構造のジャンパ線付プリント基板を提供すること。
【解決手段】プリント基板12には、プリント配線とジャンパ線18との接続部分においてランド部22を備えた基板端子用スルーホール20を貫設すると共に、ジャンパ線18には、ランド部22に向かって突出する導通突部42と、導通突部42を貫通する挿通孔46を形成し、ジャンパ線18の導通突部42をランド部22に重ね合わせると共に、導通突部42の挿通孔46と基板端子用スルーホール20とに対して基板端子20の半田付け部32を挿通して半田付けするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に設けられた複数のプリント配線がジャンパ線で接続されたジャンパ線付プリント基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車用電気接続箱等の内部回路材として使用されるプリント基板として、プリント基板に設けられた複数のプリント配線をジャンパ線で接続したジャンパ線付プリント基板が知られている。例えば、特開2005−6474号公報(特許文献1)に記載のものがそれである。このように任意のプリント配線間をジャンパ線で接続することにより、車両グレート等の仕様違いによる回路変更を容易に行うことができ、また、プリント基板に回路間を接続するプリント配線を設けるスペースがない場合にも回路間の接続が可能となる。
【0003】
ところで、このような従来構造のジャンパ線付プリント基板においては、相互に接続される二つのプリント配線にそれぞれ設けられたランド部(スルーホール)間に亘って延びるジャンパ線が配設されている。そして、ジャンパ線の両端部がそれらランド部にそれぞれ半田付けされて接続されることにより、プリント配線間の導通が図られるようになっている。
【0004】
ところが、このような従来構造では、ジャンパ線を用いた一対一のプリント配線間の接続しか行うことができない。それ故、回路構成に応じて、多数のプリント配線間の接続を行う場合に、多数の独立したジャンパ線が必要となる等、効率的な回路間接続を行うには限界があった。
【0005】
特に、ジャンパ線の両端部をプリント配線に導通させることしかできないことから、例えば、プリント配線のジャンパ線への導通部分に基板端子を設けることは困難であった。それ故、ジャンパ線の両端部が半田付けされるランド部やスルーホールと、基板端子が半田付けされるランド部やスルーホールを別途設けて、それぞれ別々に半田付けすることが行われており、部品点数の増加や構造の複雑化、製造工程の煩雑さ等を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−6474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の如き事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、プリント配線とジャンパ線との接続部分において基板端子を立設することができると共に、複数のプリント配線の接続を高い設計自由度で行うことができる、新規な構造のジャンパ線付プリント基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、プリント基板における複数のプリント配線がジャンパ線で接続されたジャンパ線付プリント基板において、前記プリント基板には、前記プリント配線と前記ジャンパ線との接続部分において、ランド部が設けられた基板端子用スルーホールが貫設されていると共に、前記ジャンパ線には、前記ランド部に向かって突出する導通突部と該導通突部を貫通する挿通孔が形成されており、前記ジャンパ線の前記導通突部が前記ランド部に重ね合わされると共に、前記導通突部の前記挿通孔と前記基板端子用スルーホールとに対して基板端子の半田付け部が挿通されて半田付けされていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、プリント配線とジャンパ線との接続部分において、基板端子の半田付け部が、プリント基板の基板端子用スルーホールとジャンパ線の挿通孔の両者に挿通されて半田付けされていることから、ジャンパ線に対して直接に基板端子を立設させることができる。これにより、従来のように、基板端子とプリント配線との接続用スルーホールおよびランド部と、ジャンパ線とプリント配線との接続用スルーホールおよびランド部を、それぞれ別々に設けて半田付けする必要がない。従って、部品点数の削減や、構造および製造工程の簡素化を図ることが出来る。また、導通突部は、ジャンパ線の任意の箇所に複数設けることが出来ることから、ジャンパ線の中間部分に回路構成に合わせた任意の数の導通突部を設けたり、それらとジャンパ線の両端部分を組み合わせることで、一対一の回路接続のみでなく、より複雑な回路間接続が可能となり、ジャンパ線による回路設計自由度の大幅な向上を図ることができる。
【0010】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記ジャンパ線の端部が前記プリント基板に向かって屈曲されており、前記プリント基板に設けられたジャンパ線用スルーホールに挿通されて半田付けされているものである。
【0011】
本態様によれば、ジャンパ線の端部をプリント基板のジャンパ線用スルーホールに挿通させて半田付けすることにより、プリント基板上に配設されたジャンパ線を強固に位置決め固定することができる。ジャンパ線の端部が挿通されるジャンパ線用スルーホールは、プリント配線に接続された導通スルーホールでも良いし、プリント配線に接続されていない非導通スルーホールでもよい。導通スルーホールの場合は、更なる回路の分岐などが可能となる。
【0012】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記ジャンパ線の前記導通突部を貫通する前記挿通孔の周縁部が、前記プリント基板に設けられた前記基板端子用スルーホールの周縁部よりも外側で且つ、前記基板端子用スルーホールの前記ランド部の外周縁部より内側に位置されているものである。
【0013】
本態様によれば、ジャンパ線の導通突部に設けられた挿通孔がプリント基板に設けられた基板端子用スルーホールよりも大径とされていることにより、挿通孔を通じた半田上がりが良好となると共に、目視による半田上がりの確認も容易となる。また、ジャンパ線の挿通孔の周縁部が基板端子用スルーホールのランド部の外周縁部よりも小径とされていることにより、導通突部の底面とランド部との当接領域が確保され、ジャンパ線とランド部との導通が担保される。その結果、ジャンパ線とプリント基板のプリント配線との接続安定性を向上させることができる。
【0014】
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか1つの態様に記載されたものにおいて、前記ジャンパ線が、外周面にめっき層が施された線材端子により構成されており、前記ジャンパ線の中間部分が潰し加工されて前記ランド部に向かって突出されることにより前記導通突部が形成されている一方、前記導通突部を貫通する前記挿通孔において、前記ランド部側の開口縁部が前記挿通孔の内方に向かって傾斜して鍛圧された傾斜面とされているものである。
【0015】
本態様によれば、挿通孔のプリント基板側の開口縁部を、挿通孔の内方に向かって傾斜して鍛圧した傾斜面とすることで、傾斜面にまで線材の外周面のメッキ層を延出させることができる。その結果、基板端子用スルーホールを通じて挿通孔内に上がってくる半田を、傾斜面の傾斜とめっき層との相乗効果により更に挿通孔側に誘い込んで、挿通孔の上方にまで至らせることができる。
【0016】
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか1つの態様に記載されたものにおいて、前記基板端子が合成樹脂製の支持台座に貫通固定されており、前記支持台座を挟んで一方の側に前記半田付け部が突出している一方、他方の側に接続部側が突出していると共に、前記半田付け部が前記接続部側よりも狭幅とされており、前記支持台座が前記プリント基板に載置された状態で、前記接続部側と前記半田付け部との間に設けられた段差面と前記ランド部との間で前記導通突部が挟まれているものである。
【0017】
本態様によれば、支持台座をプリント基板上に載置した状態で、基板端子を位置決めしつつランド部と基板端子の段差面の間にジャンパ線の導通突部を挟み込んで半田付けすることができる。それ故、ジャンパ線とランド部の導通安定性を安定して確保することができる。
【0018】
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか1つの態様に記載されたものにおいて、前記ジャンパ線には、長さ方向で相互に離隔した複数箇所にそれぞれ前記導通突部が形成されており、該導通突部の間において、前記ジャンパ線が前記プリント基板から離隔する方向に屈曲されているものである。
【0019】
本態様によれば、導通突部間においてジャンパ線を更にプリント基板の上方に屈曲して離隔配置することができることから、絶縁性を更に安定して確保することができる。またプリント基板とジャンパ線間の空所に電気部品を載置してプリント基板のスペース利用効率を向上させることもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に従うジャンパ線付プリント基板によれば、ジャンパ線とプリント配線とを導通する導通突部を設けると共に、この導通基板に基板端子の半田付け部を挿通する挿通孔を設けたことにより、ジャンパ線に対して直接に基板端子を立設させて、基板端子とジャンパ線とプリント配線とを簡単な構造で省スペースに導通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態としてのジャンパ線付プリント基板の要部を示す斜視図。
【図2】図1のII−II拡大断面図。
【図3】図1のIII−III拡大断面図。
【図4】図1のジャンパ線を示す斜視図及び側面図。
【図5】図1の別のジャンパ線を示す斜視図及び側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
先ず、図1〜3に、本発明の一実施形態としてのジャンパ線付プリント基板10の要部を示す。ジャンパ線付プリント基板10は、プリント基板12上に、図示しない複数のプリント配線が形成されると共に、複数の基板端子14を備えたコネクタ台座16や、図示しない別のコネクタやリレー等の各種の電気部品が実装された構造とされている。また、プリント基板12には、図示しない複数のプリント配線を相互に接続するジャンパ線18が設けられている。なお、図1およびその他の各図面においては、図面を明瞭とする為、半田の図示は省略している。また、以下の説明において、特に断りの無い限り、上方とは図2および図3における上側を言い、下方とは図2および図3における下側を言うものとする。
【0024】
プリント基板12は、従来公知のように、紙フェノールやガラスエポキシ等により構成された絶縁性基板とされている。プリント基板12には、銅箔等の導電材料による図示しないプリント配線が複数設けられており、これらのプリント配線上において、基板端子14が挿通される複数の基板端子用スルーホール20a,20bが貫設されている。基板端子用スルーホール20a,20bは、コネクタ台座16の複数の基板端子14が挿通される位置に形成されており、このうち、各基板端子用スルーホール20aは、後述するジャンパ線18の導通突部42が載置される位置に形成されている。各基板端子用スルーホール20a,20bの周囲には、銅箔からなるランド部22がそれぞれ設けられている。各ランド部22は、図2および図3に示すように、基板端子用スルーホール20a,20bの内周面を構成する円筒状部24と、基板端子用スルーホール20a,20bの上下両側の各開口端部においてプリント基板12の上面および下面上に鍔状に広がる円環状部26を備えている。なお、基板端子用スルーホール20aのランド部22は、基板端子用スルーホール20bのランド部22に比して、円環状部26の外周縁部の直径D1がやや大きくされている。
【0025】
また、プリント基板12には、図示しないプリント配線上の位置において、複数のジャンパ線用スルーホール28が貫設されている。このジャンパ線用スルーホール28にも、基板端子用スルーホール20a,20bのランド部22と略同様の構造のランド部22が設けられている。なお、本実施形態においては、各ジャンパ線用スルーホール28は、何れも図示しないプリント配線に接続された導通スルーホールとされているが、回路構成によっては、プリント配線に接続されていない非導通スルーホールとされていてもよい。
【0026】
コネクタ台座16は従来公知のものであり、複数の基板端子14が合成樹脂製の支持台座30により貫通固定された構造とされている。各基板端子14は、銅合金等の導電性金属材料で形成されている。基板端子14の一方の端部は、プリント基板12に挿通されて半田付けされる半田付け部32とされており、基板端子14の他方の端部は、図示しない雌コネクタが接続される接続部34とされている。また、図3に示すように、半田付け部32は、基板端子14のその他の接続部34側の部分よりも狭幅とされており、半田付け部32と接続部34側との間には段差面36が形成されている。
【0027】
支持台座30には、プリント基板12上に載置される四つの脚部38が設けられている。また、支持台座30には複数の貫通孔が設けられており、支持台座30の上面側から基板端子14がそれぞれ挿通されている。図1に示すように、各基板端子14は、支持台座30を挟んだ一方の側(図1中、下側)に半田付け部32が突出する一方、他方の側(図1中、上側)に接続部34側が突出した状態で、支持台座30に貫通固定されている。
【0028】
ジャンパ線付プリント基板10には、四本のジャンパ線18a,18b,18c,18dが設けられており、プリント基板12における図示しない複数のプリント配線が、ジャンパ線18a〜18dにより相互に接続されている。このうち、ジャンパ線18aおよびジャンパ線18cを、図4および図5にそれぞれ単体で示す。ジャンパ線18a〜18dは、何れも、外周面にめっき層が施された矩形断面を有する線材端子により構成されている。このような線材端子からなるジャンパ線18a〜18dは、例えば、銅や鉄等の金属線材からなる母材に、錫や金などの導電性金属材料からなるめっき層を形成した後、線材を所定長さで切断することにより、安価且つ簡単に製造される。
【0029】
以下、理解を容易とする為、先ず図4に示すジャンパ線18aについて説明する。図2および図4に示すように、ジャンパ線18aの両端部はプリント基板12に向かって下方に屈曲されており、プリント基板12に設けられたジャンパ線用スルーホール28に挿通されて半田付けされる挿通部40とされている。また、ジャンパ線18aには、長さ方向で相互に離隔した二箇所に、ランド部22に向かって突出する導通突部42がそれぞれ形成されている。さらに、ジャンパ線18aは、二箇所の導通突部42の間において、ジャンパ線18aがプリント基板12から離隔する方向に屈曲されて形成された上方屈曲部44が設けられている。
【0030】
ジャンパ線18aの導通突部42は、図2に示されるように、プリント基板12の基板端子用スルーホール20aのランド部22に重ね合わされる位置に設けられている。各導通突部42は、ジャンパ線18aの中間部分がそれぞれ鍛圧等により潰し加工されてランド部22に向かって突出されることにより形成されている。これにより、ジャンパ線18aは、導通突部42の底面のみが基板端子用スルーホール20aのランド部22に重ね合わされてプリント基板12上に載置されると共に、導通突部42において、ランド部22を介してプリント基板12の図示しないプリント配線と導通されている。このことから明らかなように、本実施形態では、プリント基板12のプリント配線とジャンパ線18aとの接続部分において、基板端子用スルーホール20aが貫設されている。
【0031】
各導通突部42には、導通突部42を上下方向に貫通する挿通孔46が形成されている。図3に示すように、挿通孔46の上下の開口縁部は、何れも挿通孔46の内方に向かって導通突部42の板圧寸法が小さくなるように傾斜して鍛圧されている。これにより、ランド部22側となる挿通孔46の下側開口縁部と、反対側の上側開口縁部が、何れも挿通孔46の内方に向かって傾斜する傾斜面48とされている。なお、これらの傾斜面48は、めっき層を有するジャンパ線18aの表面を鍛圧して形成されていることから、表面にめっき層が残されており、半田濡れ性が良好とされている。また、図3に示すように、開口縁部の傾斜面48を除く挿通孔46の直径D2は、ランド部22の円筒状部24の内周面により規定される基板端子用スルーホール20aの直径D3よりも大径とされている。さらに、挿通孔46の直径D2は、ランド部22の外周縁部、即ち、円環状部26の外周縁部の直径D1よりも小径とされている。
【0032】
一方、図5に示すジャンパ線18cは、ジャンパ線18aと略同様の構造とされているが、このジャンパ線18cにおいては、長さ方向で相互に離隔した三箇所に導通突部42が形成されている。また、ジャンパ線18cでは、それぞれの導通突部42の間において二箇所の上方屈曲部44が設けられており、その内の一方の上方屈曲部44は、平面視でクランク形状になるように長さ方向の中間部分で水平方向に屈曲されている。
【0033】
詳細な図示は省略するが、ジャンパ線18bは、ジャンパ線18aと同一の構造とされている。また、ジャンパ線18dは、ジャンパ線18aと同様に二つの導通突部42と一つの上方屈曲部44とを有しており、上方屈曲部44は、平面視でクランク形状になるように長さ方向の中間部分で水平方向に屈曲されている。
【0034】
このようなジャンパ線18a〜18dとコネクタ台座16は、例えば、次のようにしてプリント基板12上に搭載されて半田付けされる。先ず、各ジャンパ線18a〜18dが、プリント基板12上にそれぞれ配置される。ジャンパ線18aを例に挙げると、先ず、図2に示すように、ジャンパ線18aの両端部分に形成された各挿通部40が、プリント基板12のジャンパ線用スルーホール28に上側から挿通される。すると、ジャンパ線18aの各導通突部42の底面が、プリント基板12の基板端子用スルーホール20aの周囲に設けられたランド部22上にそれぞれ重ね合わされて載置される。これにより、各導通突部42に形成された挿通孔46は、それぞれの基板端子用スルーホール20aの上側に配置される。
【0035】
ここにおいて、挿通孔46の直径D2が、基板端子用スルーホール20aの直径D3よりも大径とされていることにより、挿通孔46の周縁部は、プリント基板12に設けられた基板端子用スルーホール20aの周縁部よりも外側に位置されている。それ故、半田付け前の状態において、挿通孔46を通じて基板端子用スルーホール20aの上側の開口端部の周辺が目視可能とされている。また、挿通孔46の直径D2が、ランド部22の外周縁部(円環状部26の外周縁部)の直径D1よりも小径とされていることにより、挿通孔46の周縁部が、基板端子用スルーホール20aのランド部22の外周縁部より内側に位置されている。その結果、挿通孔46周辺の導通突部42の底面は、ランド部22の上面に対して充分に広い領域で載置されて当接支持されている。なお、このようにしてジャンパ線18aがプリント基板12に対して配設されると、ジャンパ線18aの導通突部42の間に設けられた上方屈曲部44は、プリント基板12から上方に離隔した状態で配置される。
【0036】
このようなジャンパ線18aの配設と略同様にして、その他のジャンパ線18b,18c,18dも、プリント基板12上にそれぞれ配設される。即ち、各挿通部40がそれぞれプリント基板12のジャンパ線用スルーホール28に挿通されると共に、二個又は三個の導通突部42の底面が、それぞれ基板端子用スルーホール20aのランド部22上に重ね合わされて載置される。また、各ジャンパ線18b〜18dの上方屈曲部44が、何れもプリント基板12から上方に離隔した状態となる。
【0037】
プリント基板12に対する全てのジャンパ線18a〜18dの配設が完了すると、その上側から、複数の基板端子14を備えたコネクタ台座16が配設される。コネクタ台座16は、各基板端子14が支持台座30に貫通固定されて、支持台座30を挟んだ下側に半田付け部32側が、上側に接続部34側が突出された状態でプリント基板12に搭載される。コネクタ台座16の支持台座30がプリント基板12に載置されると、各基板端子14の半田付け部32は、プリント基板12の基板端子用スルーホール20aまたは20bにそれぞれ挿通される。このとき、プリント基板12上の各基板端子用スルーホール20aには、何れもジャンパ線18a〜18dの導通突部42がそれぞれ重ね合わされて配置されていることから、コネクタ台座16の複数の基板端子14のうちの一部の基板端子14aは、基板端子用スルーホール20a上に重ね合わされた導通突部42の上側から基板端子用スルーホール20aに向かって挿入される。その結果、基板端子14aの半田付け部32は、導通突部42の挿通孔46と基板端子用スルーホール20aとに対して順次挿通されて、プリント基板12の下面側へと貫通される。これにより、ジャンパ線18a〜18dにおけるプリント配線との接続部分である導通突部42において、それぞれ基板端子14aが立設される。一方、コネクタ台座16のその他の基板端子14bは、ジャンパ線18a〜18dを介することなく、直接に基板端子用スルーホール20bに対して挿通され、プリント基板12上に立設される。
【0038】
図1に示すように、本実施形態においては、それぞれのジャンパ線18a〜18dに設けられた二個または三個の導通突部42に対して、それぞれ別の支持台座30に支持された基板端子14aが挿通される。また、このように、ジャンパ線18a〜18dの上側から各基板端子14aが挿通されると、支持台座30がプリント基板12に載置された状態において、各基板端子14aに設けられた段差面36の外方側の隅部と、基板端子用スルーホール20aのランド部22との間で、導通突部42が上下方向に挟まれた状態となり、各ジャンパ線18a〜18dが位置決めされる。
【0039】
このようにして各ジャンパ線18a〜18dとコネクタ台座16の搭載が完了すると、各ジャンパ線18a〜18dとコネクタ台座16は、図示しない位置決め用治具等によってプリント基板12に対して位置決め状態で保持される。そして、これらジャンパ線18a〜18dおよびコネクタ台座16は、プリント基板12上に載置された図示しないコネクタやリレー等の他の電気部品と同時に、公知のフロー方式等によってプリント基板12に対して半田付けされる。その結果、基板端子用スルーホール20a,20b及びジャンパ線用スルーホール28や、各ジャンパ線18a〜18dの挿通孔46の内部に図示しない半田が充填されて、各基板端子14a,14bおよびジャンパ線18a〜18dがそれぞれプリント基板12に対して固定される。
【0040】
このとき、例えばジャンパ線18aは、両端部の挿通部40がそれぞれジャンパ線用スルーホール28に対して半田付けされて、それぞれプリント基板12の図示しないプリント配線と導通される。さらに、ジャンパ線18aの導通突部42においては、基板端子用スルーホール20a側から導通突部42の挿通孔46内にまで半田が進入することにより、導通突部42と、基板端子用スルーホール20aと、これらに挿通された基板端子14aの半田付け部32とが一体的に半田付けされる。その結果、ジャンパ線18aとプリント基板12のプリント配線と基板端子14aとが相互に電気的に導通される。
【0041】
なお、このような導通突部42における半田付けにおいては、ジャンパ線18a側の挿通孔46の直径D2がプリント基板12側の基板端子用スルーホール20aの直径D3よりも大径とされて、挿通孔46の周縁部が基板端子用スルーホール20aの周縁部よりも外側に位置されていることにより、半田が挿通孔46の内部にまで上がり易くなっている。また、特に挿通孔46においてランド部22と重ね合わされる側の開口縁部が、挿通孔46の内方に向かって傾斜する傾斜面48とされており、且つ、傾斜面48にめっき層が形成されていることによっても、挿通孔46内への半田上がりが促進されている。
【0042】
また、このような基板端子用スルーホール20aおよび導通突部42における半田付けは、基板端子用スルーホール20aのランド部22と導通突部42と基板端子14aとが相互に導通されて固定された状態となっていればよく、例えば、導通突部42の底面とランド部22の円環状部26の上面の間にも半田が進入して、導通突部42とランド部22の対向面が半田を介して相互に固着されていてもよいし、導通突部42の底面とランド部22の円環状部26は直接に当接したままの状態とされて、基板端子用スルーホール20aおよび挿通孔46内の半田により両部材が固定されていてもよい。本実施形態では、挿通孔46のランド部22側の開口縁部にめっき層を備えた傾斜面48が形成されていることにより、挿通孔46内への半田上がりだけでなく、導通突部42の底面とランド部22の上面の間への半田の進入が促進されるようになっている。なお、例えば、導通突部42の底面を粗面化しておくことにより、導通突部42の底面とランド部22の円環状部26の間への半田上がりをさらに促してもよい。
【0043】
また、本実施形態では、導通突部42が、基板端子14aに設けられた段差面36とランド部22の円環状部26との間に挟まれていることにより、フロー半田による半田付け時においてプリント基板12の下面側から溶融半田の噴流圧力を受けても、導通突部42がランド部22の上面から浮き上がって位置ずれ等を起こすことが防止されており、導通突部42と基板端子用スルーホール20aと基板端子14aとの接続安定性が良好に確保されるようになっている。
【0044】
また、本実施形態では、フロー半田等による一回の半田付け工程により、各ジャンパ線18a〜18dおよび基板端子14a,14bが何れも半田付けされて固定される。これにより、上述のジャンパ線18aと同様に、その他の各ジャンパ線18b,18c,18dにおいても、各ジャンパ線18b〜18dの各導通突部42と、プリント基板12のプリント配線と、基板端子14aとがそれぞれ相互に電気的に導通される。また、各ジャンパ線18b〜18dの挿通部40が、ジャンパ線用スルーホール28と相互に半田付けされて導通される。更にまた、導通突部42に挿通されない基板端子14bは、半田付け部32が基板端子用スルーホール20bのみと直接に相互に半田付けされる。
【0045】
その結果、基板端子14a,14bの半田付け部32、ジャンパ線18a〜18dの導通突部42および挿通部40が、何れも、それぞれプリント基板12の図示しない複数のプリント配線のうちの何れかと電気的に接続されて、プリント基板12上の電気回路が完成される。こうして、プリント基板12における複数のプリント配線がジャンパ線18a〜18dで相互に接続されたジャンパ線付プリント基板10が完成される。
【0046】
以上のように、本実施形態に従うジャンパ線付プリント基板10においては、ジャンパ線18a〜18dにおけるプリント基板12のプリント配線との接続部分において、挿通孔46を有する導通突部42が形成され、そこに基板端子14aの半田付け部32が挿通されて半田付けされている。これにより、ジャンパ線18a〜18dとの接続部分において、基板端子14aを直接に立設することができる。それ故、従来のジャンパ線付プリント基板のように、基板端子とプリント配線との接続用スルーホールと、ジャンパ線とプリント配線との接続用スルーホールをそれぞれ別々に設けて、別個に半田付けする必要がない。従って、プリント基板12上に省スペースに電気回路を構成することができると共に、部品点数の削減や、構造及び製造工程の簡素化による省コスト化を図ることが出来る。
【0047】
また、導通突部42は、ジャンパ線18a〜18dの任意の箇所に複数設けることが出来ることから、ジャンパ線18a〜18dの中間部分において、回路構成に合わせた任意の数の導通突部42を設けることができる。従って、これらの導通突部42と各ジャンパ線18a〜18dの両端部分の挿通部40とを組み合わせることで、各プリント配線同士の一対一の回路接続のみでなく、多数の分岐等を備えたより複雑な回路間接続が可能となる。それ故、各ジャンパ線18a〜18dによる回路設計の自由度を大きく向上させることができる。
【0048】
さらに、ジャンパ線18a〜18dの導通突部42をランド部22に向かって突出させて、ランド部22の上面に対して重ね合わせていることから、ランド部22との導通を図る必要がある部位のみを確実にプリント基板12に当接させることができ、導通安定性を確保することができる。加えて、導通突部42以外の部分では、ジャンパ線18a〜18dをプリント基板12から離隔させて、絶縁性を担保することができる。
【0049】
特に、本実施形態のジャンパ線18a〜18dにおいては、複数の導通突部42の間に、プリント基板12から離隔する方向に屈曲されて形成された上方屈曲部44が設けられていることにより、導通突部42以外の部分におけるジャンパ線18a〜18dの絶縁性がより有効に確保されている。
【0050】
また、本実施形態のジャンパ線18a〜18dにおいては、両端部がプリント基板12に向かって屈曲された挿通部40とされて、プリント基板12のジャンパ線用スルーホール28に挿通されて半田付けされていることにより、プリント基板12上に配設されたジャンパ線18a〜18dを強固に位置決めして確実に固定することが可能とされている。また、ジャンパ線18a〜18dは、導通突部42だけでなく、これら挿通部40によっても図示しないプリント配線に導通されることにより、更なる回路の分岐や延長等が可能となり、回路構成の自由度がさらに向上されている。
【0051】
さらに、本実施形態では、挿通孔46の直径D2が基板端子用スルーホール20aの直径D3よりも大径とされることにより、ジャンパ線18a〜18dの導通突部42を貫通する挿通孔46の周縁部が、プリント基板12に設けられた基板端子用スルーホール20aの周縁部よりも外側となる位置に配置されている。これにより、挿通孔46内への半田上がりが促進されて、導通突部42と基板端子用スルーホール20aと基板端子14aの三者の半田付けをより確実に行うことが可能とされている。また、挿通孔46の周縁部が基板端子用スルーホール20aの周縁部よりも外側に配置されていることにより、基板端子用スルーホール20aおよび挿通孔46における半田上がりが不十分で、基板端子用スルーホール20aの上側の開口端縁部にまで半田が至っていない場合には、半田が付着していないままの基板端子用スルーホール20aの開口端縁部が挿通孔46を通じて見えることとなる。従って、基板端子用スルーホール20aおよび挿通孔46における半田不良を目視により簡単に発見することができ、導通突部42と基板端子用スルーホール20aと基板端子14aの接続安定性を確保することができる。
【0052】
加えて、本実施形態においては、挿通孔46の直径D2がランド部22の外周縁部の直径D3よりも小径とされることにより、挿通孔46の周縁部が、ランド部22の外周縁部よりも内側に位置されている。これにより、導通突部42の底面がランド部22の上面に充分な面積で接触し、ジャンパ線18a〜18dとランド部22ひいてはプリント配線との導通性が充分に確保されるようになっている。
【0053】
また、本実施形態では、ジャンパ線18a〜18dが外周面にめっき層が施された線材端子により構成されていることから、金属製の平板をプレス打ち抜き加工等してジャンパ線18a〜18dを製造する場合に比べて歩留まりがよく、ジャンパ線18a〜18dを安価に製造することができる。また、金属製の線材端子からなるジャンパ線18a〜18dの中間部分が潰し加工されることにより導通突部42が形成されていることから、導通突部42を有するジャンパ線18a〜18dを簡単且つ低コストに形成することができる。また、挿通孔46におけるランド部22側の開口縁部が、挿通孔46の内方に向かって傾斜する傾斜面48とされていることにより、挿通孔46内への半田上がりがより促進されている。さらに、このような挿通孔46の開口縁部の傾斜面48が、めっきが施された線材端子を鍛圧することで形成されており、傾斜面48がめっき層を備えていることにより、充分な半田濡れ性が確保されている。
【0054】
さらに、本実施形態では、各基板端子14aが支持台座30に貫通固定されており、接続部34側と半田付け部32との間に設けられた段差面36とランド部22との間で導通突部42が挟まれていることにより、導通突部42およびジャンパ線18a〜18d全体の位置ずれが防止されている。特に、フロー半田による半田付け時等においても、導通突部の42の浮き上がりや傾斜が防止されることにより、導通突部42とランド部22が相互に接触した状態で確実に半田付けを行うことができ、ジャンパ線18とプリント配線および基板端子14aとの接続安定性が確保される。
【0055】
以上、本発明の幾つかの実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、ジャンパ線18が線材端子により構成されるものに限定されないのは勿論であって、導通突部42を形成し得るものであれば、任意のものが採用可能である。例えば、金属製の平板をプレス打ち抜き加工すると共に、屈曲加工等を施すことによって、ジャンパ線18を構成してもよい。
【0056】
また、ジャンパ線18の具体的な形状も、特に限定されず、回路構成に応じて任意に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、ジャンパ線18の両端部がそれぞれ下方に屈曲されて挿通部40が形成されていたが、このような挿通部40は形成されていなくてもよいし、ジャンパ線18の一方の端部にのみ形成されていてもよい。即ち、本発明に従えば、導通突部42においてプリント配線との導通が充分に図られることから、挿通部40を形成することなく、ジャンパ線18を設けることができる。
【0057】
各ジャンパ線18における導通突部42の形成個数や具体的な形状等も、特に限定されない。例えば、挿通孔46の開口端部に形成される傾斜面48は設けられていなくてもよいし、ランド部22側の開口端部にのみ傾斜面48が形成されていてもよい。
【0058】
なお、回路構成によっては、複数のジャンパ線18を立体的に交差するように配置してもよい。このような場合には、上方屈曲部44を用いて各ジャンパ線18を上下方向に充分に離隔して交差させることができる。一方、交差する複数のジャンパ線18の導通突部42を互いに重ね合わせて、複数の導通突部42と、基板端子14aと、基板端子用スルーホール20aとを一度に半田付けするようにしてもよい。また、ジャンパ線18はプリント基板12の裏表両面にそれぞれ配設してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10:ジャンパ線付プリント基板、12:プリント基板、14a,14b:基板端子、18a,18b,18c,18d:ジャンパ線、20a,20b:基板端子用スルーホール、22:ランド部、28:ジャンパ線用スルーホール、30:支持台座、32:半田付け部、34:接続部、36:段差面、42:導通突部、46:挿通孔、48:傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板における複数のプリント配線がジャンパ線で接続されたジャンパ線付プリント基板において、
前記プリント基板には、前記プリント配線と前記ジャンパ線との接続部分において、ランド部が設けられた基板端子用スルーホールが貫設されていると共に、
前記ジャンパ線には、前記ランド部に向かって突出する導通突部と該導通突部を貫通する挿通孔が形成されており、
前記ジャンパ線の前記導通突部が前記ランド部に重ね合わされると共に、前記導通突部の前記挿通孔と前記基板端子用スルーホールとに対して基板端子の半田付け部が挿通されて半田付けされている
ことを特徴とするジャンパ線付プリント基板。
【請求項2】
前記ジャンパ線の端部が前記プリント基板に向かって屈曲されており、前記プリント基板に設けられたジャンパ線用スルーホールに挿通されて半田付けされている請求項1に記載のジャンパ線付プリント基板。
【請求項3】
前記ジャンパ線の前記導通突部を貫通する前記挿通孔の周縁部が、前記プリント基板に設けられた前記基板端子用スルーホールの周縁部よりも外側で且つ、前記基板端子用スルーホールの前記ランド部の外周縁部より内側に位置されている請求項1又2に記載のジャンパ線付プリント基板。
【請求項4】
前記ジャンパ線が、外周面にめっき層が施された線材端子により構成されており、前記ジャンパ線の中間部分が潰し加工されて前記ランド部に向かって突出されることにより前記導通突部が形成されている一方、
前記導通突部を貫通する前記挿通孔において、前記ランド部側の開口縁部が前記挿通孔の内方に向かって傾斜して鍛圧された傾斜面とされている請求項1〜3の何れか1項に記載のジャンパ線付プリント基板箱。
【請求項5】
前記基板端子が合成樹脂製の支持台座に貫通固定されており、前記支持台座を挟んで一方の側に前記半田付け部が突出している一方、他方の側に接続部側が突出していると共に、前記半田付け部が前記接続部側よりも狭幅とされており、前記支持台座が前記プリント基板に載置された状態で、前記接続部側と前記半田付け部との間に設けられた段差面と前記ランド部との間で前記導通突部が挟まれている請求項1〜4の何れか1項に記載のジャンパ線付プリント基板。
【請求項6】
前記ジャンパ線には、長さ方向で相互に離隔した複数箇所にそれぞれ前記導通突部が形成されており、該導通突部の間において、前記ジャンパ線が前記プリント基板から離隔する方向に屈曲されている請求項1〜5の何れか1項に記載のジャンパ線付プリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−134399(P2012−134399A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286807(P2010−286807)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】