説明

スイッチングアンプ

【課題】 スイッチ素子が同時にオン状態になり貫通電流によりスイッチ素子が破損することを防止するスイッチングアンプを提供すること。
【解決手段】 スイッチングアンプ10は、入力信号に応答して、PWM信号A1およびPWM信号B1を出力するPWM回路11と、トランジスタ18とトランジスタ19とを有するスイッチング出力回路15と、PWM信号A1がトランジスタ18をオン状態にする信号(ハイレベル)であり、かつ、PWM信号B1がトランジスタ19をオン状態にする信号(ハイレベル)である場合に、PWM信号A1をトランジスタ18をオフ状態にする信号(ローレベル)に変換し、かつ、PWM信号B1をトランジスタ19をオフ状態にする信号(ローレベル)に変換する信号変換回路12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングアンプに関し、詳細にはスイッチ素子の破壊を防止するスイッチングアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
図7は従来のスイッチングアンプ710を示すブロック図である。スイッチングアンプ710は、パルス幅変調(PWM;Pulse Width Modulation)回路711と、ドライバ714と、スイッチング出力回路715と、ローパスフィルタ(LPF;Low Pass Filter)716と、負帰還回路717とを備える。PWM回路711は、入力信号のレベルに応じたパルス幅を有するPWM信号AおよびBを出力する。ドライバ714は、PWM信号AおよびBに応じて駆動信号DRV1およびDRV2を出力する。スイッチング出力回路715は、正の電源+VDに接続されたパワーMOSトランジスタ718と、負の電源−VDに接続されたパワーMOSトランジスタ719と含む。ドライバ714は、PWM信号AおよびBに応答してトランジスタ718,719を選択的にオン状態にし、スイッチング出力回路715に正または負の電源電圧を出力させる。
【0003】
スイッチングアンプ710において、通常は、PWM信号Aがハイレベルの場合には、PWM信号Bはローレベルであり、PWM信号Aがローレベルの場合には、PWM信号Bはハイレベルである。そのため、トランジスタ718および719は交互にオン状態になる。しかし、タイミングのずれ等により、PWM信号AおよびBが共にハイレベルになると、トランジスタ718および719が同時にオン状態になる。トランジスタが同時にオン状態になると、電源+VDからトランジスタ718および719を介して電源−VDに電流が流れる(この電流を一般に貫通電流と言う)。トランジスタ718および719のオン抵抗は非常に小さい(通常0.1オーム以下)ので、非常に大きな貫通電流が流れ、トランジスタ718および719が破損するという問題がある。
【特許文献1】特開2003−264436号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、スイッチ素子が同時にオン状態になり貫通電流が発生しスイッチ素子が破損することを防止するスイッチングアンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい実施形態によるスイッチングアンプは、入力信号に応答して、第1のパルス変調信号および第2のパルス変調信号を出力するパルス変調回路と、該第1のパルス変調信号に応答してオン状態またはオフ状態になる第1のスイッチ素子と、該第2のパルス変調信号に応答してオン状態またはオフ状態になる第2のスイッチ素子とを有するスイッチング出力回路と、該第1のパルス変調信号が該第1のスイッチ素子をオン状態にする信号であり、かつ、該第2のパルス変調信号が該第2のスイッチ素子をオン状態にする信号である場合に、該第1のパルス変調信号を該第1のスイッチ素子をオフ状態にする信号に変換し、かつ、該第2のパルス変調信号を該第2のスイッチ素子をオフ状態にする信号に変換する信号変換回路とを備える。
【0006】
第1のパルス変調信号および第2のパルス変調信号が、第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子を同時にオン状態にする信号となった場合であっても、第1および第2のスイッチ素子は、同時にオフ状態になる。そのため、第1および第2のスイッチ素子が同時にオン状態になることはないので、貫通電流が発生せず、スイッチ素子の破損を確実に防止できる。
【0007】
好ましくは、上記信号変換回路は、上記第1のパルス変調信号および前記第2のパルス変調信号が共にハイレベルの信号である場合に、検出信号を出力する検出部と、該検出部から該検出信号が与えられた場合に、該第1のパルス変調信号をローレベルの信号に変換し、かつ、該第2のパルス変調信号をローレベルの信号に変換する変換部とを有する
【0008】
第1および第2のスイッチ素子がハイレベルの信号に応答してオン状態になる素子である場合に、検出部は第1および第2のパルス変調信号が共にハイレベルであることを検出し、その旨を示す検出信号を出力する。変換部は検出部からの検出信号を受けると、第1および第2のパルス変調信号をローレベルに変換する。そのため、第1および第2のパルス変調信号が共にハイレベルの信号であっても、変換部がローレベルの信号に変換した信号をスイッチ素子に入力するので、第1および第2のスイッチ素子は同時にオフ状態になり、貫通電流は発生せず、スイッチ素子の破損は防止される。
【0009】
好ましくは、上記検出部は前記第1のパルス変調信号および前記第2のパルス変調信号が入力される第1NAND回路を含む。上記変換部は、該第1のパルス変調信号および該第1NAND回路の出力が入力される第2NAND回路と、該第2NAND回路の出力を反転して出力する第1反転回路と、該第2のパルス変調信号および該第1NAND回路の出力が入力される第3NAND回路と、該第3NAND回路の出力を反転して出力する第2反転回路とを含む。
【0010】
第1および第2のパルス変調信号が共にハイレベルのときには、第1NAND回路はローレベルの信号を出力する。第2および第3NAND回路は第1NAND回路からローレベルの信号が入力され、第1および第2のパルス変調信号をそのまま(ハイレベルの信号を)出力する。第1および第2のパルス変調信号は第1および第2反転回路でそれぞれ反転され、ローレベルの信号が出力される。
【0011】
好ましくは、スイッチングアンプは、上記第1のパルス変調信号が前記第1のスイッチ素子をオン状態にする信号であり、かつ、上記第2のパルス変調信号が前記第2のスイッチ素子をオン状態にする信号である状態が所定時間継続した場合、および/または、該第1のパルス変調信号が該第1のスイッチ素子をオフ状態にする信号であり、かつ、該第2のパルス変調信号が該第2のスイッチ素子をオフ状態にする信号である状態が所定時間継続した場合に、報知信号を出力する不正信号報知回路をさらに備える。
【0012】
スイッチ素子が所定時間以上オフ状態であれば、スイッチングアンプは入力信号に応じた増幅信号を出力できず、正常に動作できない。そのため、不正信号報知回路は、その旨を検出して報知信号を出力する。報知信号に基づいて、スイッチングアンプの電源を自動的にオフ状態にしたり、マイコンをリセットして再起動させたり、または操作者にスイッチングアンプが正常に動作していないことをインジケータ等によって報知することができる。
【0013】
好ましくは、上記不正信号報知回路は、上記第1のパルス変調信号が前記第1のスイッチ素子をオン状態にする信号であり、かつ、前記第2のパルス変調信号が前記第2のスイッチ素子をオン状態にする信号である場合、および/または、該第1のパルス変調信号が該第1のスイッチ素子をオフ状態にする信号であり、かつ、該第2のパルス変調信号が該第2のスイッチ素子をオフ状態にする信号である場合に、検出信号を出力する第2検出部と、該第2検出部から検出信号が与えられると、所定の時定数に基づいて出力電圧を徐々に減少させる時定数回路と、
該時定数回路の出力電圧が所定の閾値を下回った時に、前記報知信号としてハイレベルの信号を出力する第3反転回路とを有する。
【0014】
第2検出部からの信号がローレベルである場合に、所定の時定数に基づいて時定数回路が出力する電圧が次第に減少する。時定数回路の出力電圧は第3反転回路に入力されており、この電圧が第3反転回路の閾値を下回ると第3反転回路は入力信号がローレベルになったことを検出し、ハイレベルの信号を出力する。このハイレベルの信号が報知信号として使用される。従って、時定数および閾値を適当に設定することにより、報知信号を出力するまでの時間を設定可能である。なお、第2検出部は、信号変換回路の検出部と共通に構成されていてもよく、別々に構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスイッチングアンプは、第1および第2のパルス変調信号が第1および第2のスイッチ素子を同時にオン状態にする信号である場合にも、第1および第2のスイッチ素子を同時オフ状態にする。従って、貫通電流の発生によるスイッチ素子の破損を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図1は、本発明の好ましい実施形態によるスイッチングアンプ10を説明するブロック図である。スイッチングアンプ10は、パルス変調回路11、信号変換回路12、不正信号報知回路13、ドライバ14、スイッチング出力回路15、LPF(Low Pass Filter)16および負帰還回路17を備える。
【0017】
パルス変調回路11は、入力信号をパルス変調してパルス変調信号を生成する。パルス変調回路11は、代表的には、PWM(Pulse Width Modulation)回路またはPDM(Pulse Density Modulation)回路である。以下は、PWM回路の場合について説明する。PWM回路11は、入力信号に応じて、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1を出力する。第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1は、通常、一方がハイレベルの信号である場合に他方がローレベルの信号となる。
【0018】
信号変換回路12は、PWM回路11から第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共に後述するスイッチ素子をオン状態にする信号であるかを検出する。そして、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にスイッチ素子をオン状態にする信号であれば、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1を共にスイッチ素子をオフ状態にする信号に変換して出力する。
【0019】
不正信号報知回路13は、PWM信号が不正信号である旨を示す報知信号を出力する。不正信号とは、本例では、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にスイッチ素子をオン状態にする信号である場合をいう。すなわち、不正信号は、スイッチ素子を同時にオン状態にして貫通電流を発生させるPWM信号をいう。まず、不正信号報知回路13は、PWM回路11から第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共に後述するスイッチ素子をオン状態にする信号であるかを検出する。そして、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にスイッチ素子をオン状態にする信号であれば、PWM信号が不正信号である旨を示す報知信号を出力する。報知信号は、例えば、インジケータに表示することにより操作者に不正信号であることを知らせたり、スイッチングアンプ10の電源を自動的にオフ状態にしたり、あるいはマイコンをリセットして再起動させたりすることに用いられる。
【0020】
ドライバ14は、信号変換回路12から第1および第2のPWM信号が入力されており、電源電圧に基づいて、後述のスイッチ素子を駆動するための駆動信号DRV1およびDRV2を出力する。
【0021】
スイッチング出力回路15は、第1の電源(例えば正の電源+VD)と第2の電源(例えば負の電源−VD)との間に接続され、駆動信号に応答して正の電源+VD又は負の電源−VDを出力する。スイッチング出力回路15は、スイッチ素子(例えばパワーMOSトランジスタ、以下単にトランジスタとする)18およびスイッチ素子(例えばパワーMOSトランジスタ、以下単にトランジスタとする)19を有する。トランジスタ18は、正の電源+VDに接続されたドレインと、出力端子20に接続されたソースとドライバ14の出力端子に接続されたゲートとを含む。トランジスタ19は、負の電源−VDに接続されたソースと、出力端子20に接続されたドレインと、ドライバ14の出力端子に接続されたゲートとを有する。
【0022】
LPF16は、スイッチング出力回路15の出力端子20とスイッチングアンプ10の出力端子21との間に接続され、高周波成分を除去して、スピーカー等の負荷に出力する。LPF16は、例えば、コイル22およびコンデンサ23を有する。
【0023】
負帰還回路17は、スイッチング出力回路15の出力端子20とPWM回路11の入力との間に接続され、例えば、スイッチング出力回路15の出力に含まれる歪み成分を低減するために用いられる。
【0024】
図2は、信号変換回路12および不正信号報知回路13の詳細を示す回路図である。信号変換回路12は、検出部24、変換部25および遅延部26を有する。検出部24は、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にハイレベルであることを検出し、検出信号を出力する。検出部24は、NAND回路27を含む。NAND回路27の一方の入力端子には第1のPWM信号A1が入力され、他方の入力端子には第2のPWM信号B1が入力される。NAND回路27は、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にハイレベルのときのみローレベルの検出信号を出力する。
【0025】
変換部25は、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にハイレベルである場合に、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1を共にローレベルの信号に変換して出力する。変換部25は、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にハイレベルである場合以外は、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1を変換せずにそのまま出力する。変換部25は、NAND回路28,29およびNOT(インバータ)回路30,31を含む。NAND回路28の一方の入力端子には入力端子35から第1のPWM信号A1が入力され、他方の入力端子にはNAND回路27からの信号が入力される。NOT回路30は、NAND回路28からの信号を反転して出力する。NAND回路29の一方の入力端子には入力端子36から第2のPWM信号B1が入力され、他方の入力端子にはNAND回路27からの信号が入力される。NOT回路31は、NAND回路29からの信号を反転して出力する。つまり、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にハイレベルである場合に、NAND回路27からローレベルの信号がNAND回路28,29に入力されるので、NAND回路28,29の出力は共にハイレベルの信号になり、そのため、NOT回路30,31の出力は共にローレベルの信号となる。
【0026】
遅延部26は、時定数回路(抵抗R1およびコンデンサC1,抵抗R2およびコンデンサC2)を含み、第1のPWM信号Aおよび第2のPWM信号Bを遅延させ、NAND回路27からの信号と同期をとる。具体的には、第1のPWM信号Aおよび第2のPWM信号BがNAND回路27で演算される時間は代表的には約5ナノ秒であるので、その時間が時定数になるように抵抗およびコンデンサの値が設定されている。
【0027】
不正信号報知回路13は、検出部32および報知部33を有する。検出部32は、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にハイレベルであることを検出し、検出信号を出力する。検出部32は、NAND回路27を含む。NAND回路27は、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にハイレベルのときのみローレベルの検出信号を出力する。すなわち、図2の回路構成では、信号変換回路12の検出部24と、不正信号報知回路13の検出部32とが、NAND回路27を共有する。
【0028】
報知部33は、NAND回路27からの信号が所定時間(後述する)以上の間、ローレベルを継続した場合に、PWM回路11からの信号が不正信号であることを報知するための報知信号を出力する。報知部33は、抵抗R3、ダイオードD1、コンデンサC3およびNOT回路34を含む。抵抗R3とダイオードD1とはNAND回路27の出力とNOT回路34の入力との間に並列に接続されている。コンデンサC3は、一端が抵抗R3とダイオードD3との並列回路と、NOT回路34の入力との間に接続され、他端が電源VDDに接続されている。抵抗R3とコンデンサC3とは時定数回路を構成する。NAND回路27の出力がハイレベルの信号である場合に、NAND回路27の出力端子からダイオードD1を介してNOT回路34の入力端子に電流が流れ、NOT回路34の入力電圧は電源電圧VDDになる。一方、NAND回路27の出力がローレベルの信号である場合に、電源VDDからコンデンサC3および抵抗R3を介してNAND回路27の入力端子に電流が流れ、抵抗R3およびコンデンサC3によって決定される時定数に従い、コンデンサC3の両端電圧が増加し、NOT回路34の入力電圧が徐々に減少する。そして、NOT回路34は、入力電圧が閾値を下回ると、報知信号であるハイレベルの信号を出力する。従って、NAND回路27の出力がローレベルの信号になってから、NOT回路34の入力電圧が閾値を下回るまでの時間が、先述の所定時間として設定されている。
【0029】
図3は、スイッチングアンプ10の動作を示すタイミングチャートである。各符号は、図2の各位置における信号を示す。期間T1において、第1のPWM信号A1はローレベルであり、第2のPWM信号B1はハイレベルである。このとき、NAND回路27の出力Cはハイレベルである。NAND回路28は、入力端子35からローレベルの信号が入力され、NAND回路27からハイレベルの信号が入力されて、ハイレベルの信号Dを出力する。NOT回路30はハイレベルの信号を反転して、ローレベルの信号A2を出力する。一方、NAND回路29は、入力端子36からハイレベルの信号が入力され、NAND回路27からハイレベルの信号が入力されて、ローレベルの信号Eを出力する。NOT回路31はローレベルの信号を反転して、ハイレベルの信号B2を出力する。その結果、信号変換回路12は、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1を反転せずに、そのまま出力することになる。なお、NOT回路34の入力電圧FはVDD(ハイレベル)を維持しているので、NOT回路34はローレベルの信号Gを出力する(すなわち、報知信号を出力しない。)
【0030】
期間T2において、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1は共にハイレベルである。このとき、NAND回路27の出力Cはローレベルの信号となる。NAND回路28は、入力端子35からハイレベルの信号が入力され、NAND回路27からローレベルの信号が入力されて、ハイレベルの信号Dを出力する。NOT回路30は、ハイレベルの信号Dを反転して、ローレベルの信号A2を出力する。NAND回路29は、入力端子36からハイレベルの信号が入力され、NAND回路27からローレベルの信号が入力されて、ハイレベルの信号Eを出力する。NOT回路31はハイレベルの信号Eを反転して、ローレベルの信号B2を出力する。その結果、信号変換回路12は、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1を共にローレベルの信号A2,B2に変換して出力する。
【0031】
なお、NAND回路27の出力がローレベルの信号になることによって、NOT回路34の入力電圧Fは徐々に減少する。しかし、NOT回路34が出力を反転させる閾値に達する前に、次の期間T3において入力電圧FがVDDまで増加するので、期間T2にはNOT回路34の入力電圧Fは閾値を下回らない。そのため、NOT回路34は、ローレベルの信号を出力する(すなわち、報知信号を出力しない。)
【0032】
期間T3において、第1のPWM信号A1はハイレベルであり、第2のPWM信号B1はローレベルである。このとき、NAND回路27の出力Cはハイレベルである。NAND回路28は、入力端子35からハイレベルの信号が入力され、NAND回路27からハイレベルの信号が入力されて、ローレベルの信号Dを出力する。NOT回路30はローレベルの信号を反転して、ハイレベルの信号A2を出力する。一方、NAND回路29は、入力端子36からローレベルの信号が入力され、NAND回路27からハイレベルの信号が入力されて、ハイレベルの信号Eを出力する。NOT回路31はハイレベルの信号を反転して、ローレベルの信号B2を出力する。その結果、信号変換回路12は、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1をそのまま出力することになる。なお、NOT回路34の入力電圧FはVDD(ハイレベル)であるので、NOT回路34はローレベルの信号Gを出力する(すなわち、報知信号を出力しない。)
【0033】
期間T4において、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1は共にローレベルである。このとき、NAND回路27の出力Cはハイレベルの信号となる。NAND回路28は、入力端子35からローレベルの信号が入力され、NAND回路27からハイレベルの信号が入力されて、ハイレベルの信号Dを出力する。NOT回路30は、ハイレベルの信号Dを反転して、ローレベルの信号A2を出力する。NAND回路29は、入力端子36からローレベルの信号が入力され、NAND回路27からハイレベルの信号が入力されて、ハイレベルの信号Eを出力する。NOT回路31はハイレベルの信号Eを反転して、ローレベルの信号B2を出力する。その結果、信号変換回路12は、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1をそのまま出力することになる。なお、NOT回路34の入力電圧FはVDD(ハイレベル)であるので、NOT回路34はローレベルの信号Gを出力する(すなわち、報知信号を出力しない。)
【0034】
期間T5は、期間T1と同じであるので説明を省略する。
【0035】
期間T6およびT7において、期間T2と同様に、第1および第2のPWM信号が共にハイレベルである。そのため、信号変換回路12は、第1のPWM信号および第2のPWM信号を共にローレベルの信号に変換して出力する。期間T2と異なり、期間T6およびT7では、第1および第2のPWM信号が共にハイレベルの信号である状態が所定期間以上継続する。そのため、不正信号報知回路13は報知信号を出力する。具体的には、NAND回路27の出力Cがローレベルの信号であるので、NOT回路34の入力電圧Fは徐々に減少していき、期間T7になると、NOT回路34の閾値電圧を下回る。そのため、期間T7において、NOT回路34は、ハイレベルの信号Fを出力する(すなわち、報知信号を出力する)。
【0036】
以上のように、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にハイレベルである場合(期間T2,T6,T7)には、信号変換回路12は第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1をローレベルの信号に反転して出力する。そのため、トランジスタ18および19が同時にオン状態になり、貫通電流が流れることはない。さらに、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にハイレベルである期間が、所定時間以上続くと(期間T7)、不正信号報知回路13が不正信号を出力する。
【0037】
次に、本発明の別の好ましい実施形態を説明する。本実施形態は、不正信号報知回路が、第1および第2のPWM信号が共にローレベルである状態が所定時間以上続く場合にも、報知信号を出力するという点が図2の実施形態と異なる。すなわち、本例で、不正信号は、第1および第2のPWM信号が共にトランジスタをオン状態にする信号であるか、または共にオフ状態にする信号が所定時間続く信号であることをいう。この場合には、トランジスタ18,19は共にオフ状態になるので、スイッチングアンプとして正常に信号を出力できないからである。図4は、本実施形態の不正信号報知回路413および信号変換回路12を示す回路図である。なお、信号変換回路12は図2と同じである。図2と比較して、不正信号報知回路413の検出部432と信号変換回路12の検出部24とが、別々のNAND回路427,27を有している。NAND回路427は、入力端子がNAND回路28,29の出力端子に接続されており、NAND回路28,29からの信号が入力される。第1および第2のPWM信号A1,B1が共にハイレベルのとき、または共にローレベルのときに、NAND回路28,29は共にハイレベルの信号を出力する。そのため、NAND回路427は、NAND回路28,29からハイレベル信号が入力されて、ローレベルの検出信号を出力する。NAND回路427からのローレベルの信号が所定時間続くと、先の実施形態と同様に、NOT回路34がハイレベルの信号(報知信号)を出力する。
【0038】
図5は本実施形態の動作を示すタイミングチャートである。図3と異なる点は、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にハイレベルである場合(T2)、または共にローレベルである場合(T4,T6,T7)において、NAND回路427の出力Hがローレベルの信号になる。これらの期間、NOT回路34の入力電圧は徐々に減少するが、T2およびT4では期間が短いのでNOT回路34の入力電圧Fは閾値を下回らない。そして、T6において、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にローレベルの信号である状態が所定期間以上続くと、NOT回路34の入力電圧Fが閾値を下回り、T7において不正信号報知回路413から報知信号であるハイレベルの信号Gが出力される。その他の動作は図3と同じであるので、省略する。図6は、本実施形態において第1および第2のPWM信号が共にハイレベルの状態が所定時間以上続いた場合を説明するタイミングチャートである。図6の期間T6およびT7に示す通り、第1のPWM信号A1および第2のPWM信号B1が共にハイレベルの信号である状態が所定時間以上続いた場合にも、NOT回路34の入力電圧Fが閾値を下回り、T7において不正信号報知回路413から報知信号であるハイレベルの信号Gが出力される。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。第1および第2の電源は、両方正の電源であってもよく、一方の電源が接地電位であってもよい。スイッチ素子もパワーMOSトランジスタに限定されず、バイポーラトランジスタ、FET等の任意の適切な素子が適用可能である。本発明は、第1および第2のスイッチ素子が共にローレベルの信号に応答してオンするスイッチ素子であてもよく、一方のスイッチ素子のみがローレベルの信号に応答してオンするスイッチ素子であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えばオーディオ用のパワーアンプとして特に好適に採用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるスイッチングアンプを示すブロック図である。
【図2】図1における信号変換回路および不正信号報知回路を示す回路図である。
【図3】図2の信号変換回路および不正信号報知回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】別の好ましい実施形態による信号変換回路および不正信号報知回路を示す回路図である。
【図5】図4の信号変換回路および不正信号報知回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図6】図4の信号変換回路および不正信号報知回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】従来のスイッチングアンプを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0042】
10 スイッチングアンプ
11 PWM回路
12 信号変換回路
13 不正信号報知回路
14 ドライバ
15 スイッチング出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に応答して、第1のパルス変調信号および第2のパルス変調信号を出力するパルス変調回路と、
該第1のパルス変調信号に応答してオン状態またはオフ状態になる第1のスイッチ素子と、該第2のパルス変調信号に応答してオン状態またはオフ状態になる第2のスイッチ素子とを有するスイッチング出力回路と、
該第1のパルス変調信号が該第1のスイッチ素子をオン状態にする信号であり、かつ、該第2のパルス変調信号が該第2のスイッチ素子をオン状態にする信号である場合に、該第1のパルス変調信号を該第1のスイッチ素子をオフ状態にする信号に変換し、かつ、該第2のパルス変調信号を該第2のスイッチ素子をオフ状態にする信号に変換する信号変換回路とを備える、スイッチングアンプ。
【請求項2】
前記信号変換回路が、前記第1のパルス変調信号および前記第2のパルス変調信号が共にハイレベルの信号である場合に、検出信号を出力する検出部と、
該検出部から該検出信号が与えられた場合に、該第1のパルス変調信号をローレベルの信号に変換し、かつ、該第2のパルス変調信号をローレベルの信号に変換する変換部とを有する、請求項1に記載のスイッチングアンプ。
【請求項3】
前記検出部が前記第1のパルス変調信号および前記第2のパルス変調信号が入力される第1NAND回路を含み、
前記変換部が、該第1のパルス変調信号および該第1NAND回路の出力が入力される第2NAND回路と、該第2NAND回路の出力を反転して出力する第1反転回路と、該第2のパルス変調信号および該第1NAND回路の出力が入力される第3NAND回路と、該第3NAND回路の出力を反転して出力する第2反転回路とを含む、請求項2に記載のスイッチングアンプ。
【請求項4】
前記第1のパルス変調信号が前記第1のスイッチ素子をオン状態にする信号であり、かつ、前記第2のパルス変調信号が前記第2のスイッチ素子をオン状態にする信号である状態が所定時間継続した場合、および/または、該第1のパルス変調信号が該第1のスイッチ素子をオフ状態にする信号であり、かつ、該第2のパルス変調信号が該第2のスイッチ素子をオフ状態にする信号である状態が所定時間継続した場合に、報知信号を出力する不正信号報知回路をさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載のスイッチングアンプ。
【請求項5】
前記不正信号報知回路が、
前記第1のパルス変調信号が前記第1のスイッチ素子をオン状態にする信号であり、かつ、前記第2のパルス変調信号が前記第2のスイッチ素子をオン状態にする信号である場合、および/または、該第1のパルス変調信号が該第1のスイッチ素子をオフ状態にする信号であり、かつ、該第2のパルス変調信号が該第2のスイッチ素子をオフ状態にする信号である場合に、検出信号を出力する第2検出部と、
該第2検出部から検出信号が与えられると、所定の時定数に基づいて出力電圧を徐々に減少させる時定数回路と、
該時定数回路の出力電圧が所定の閾値を下回った時に、前記報知信号としてハイレベルの信号を出力する第3反転回路とを有する、請求項4に記載のスイッチングアンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−165687(P2006−165687A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350226(P2004−350226)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】