説明

スクリーン印刷用版及びその製造方法並びに電子部品の製造方法

【課題】薄膜化・微小化された電極を良好に作製することができるスクリーン印刷用版であって、かつ、簡易な製造工程により得られるスクリーン印刷用版を提供する。
【解決手段】メッシュを圧延加工又はプレス加工することによって縦糸4と横糸5の交点部の印刷面側及びスキージ面側の両面にメッシュの面と平行な印刷面側平坦部7A及びスキージ面側平坦部を形成した後、印刷面側平坦部7A及びスキージ面側平坦部のうち少なくとも印刷面側平坦部7Aについて、印刷面側平坦部7Aの幅w1を減じる加工を行い、w1が0<w1≦0.8w2(w2は、前記交点部において印刷面側に位置する線材の線径であって、前記交点部において、前記線材の長手方向と直交し、かつ、前記メッシュの面と平行する方向の最大の線径)を満たすようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷用版及びその製造方法並びに電子部品の製造方法に関し、特に積層セラミックチップコンデンサ及び積層チップインダクタ等の電極をスクリーン印刷により作製する際に用いるスクリーン印刷用版及びその製造方法並びに電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックチップコンデンサ及び積層チップインダクタは、携帯電話、パソコン等の種々の電子機器に組み込まれ、その需要は年々増加してきている。
【0003】
一方、携帯電話、パソコン等の電子機器は小型化・軽量化が進んでおり、それらに用いられる積層セラミックチップコンデンサ及び積層チップインダクタの電極も、薄膜化・微小化が強く求められてきている。
【0004】
この要求に対しては、前記電極を作製するためのスクリーン印刷用版を構成するメッシュの線材の線径を細くするとともに、さらに前記メッシュにカレンダー(圧延)処理を施すことで対応が取られてきた。
【0005】
しかし、このようにしてスクリーン印刷用版を作製することには多くの技術課題があり、積層セラミックチップコンデンサ及び積層チップインダクタ等の電極の薄膜化・微小化には困難が伴っているのが現状である。
【0006】
例えば、積層セラミックチップコンデンサC0402サイズ等のように面積が小さい電極を、カレンダー(圧延)処理を施したメッシュを用いてスクリーン印刷法により作製する場合、電極印刷時に電極形状の角が丸くなったり、電極形状にくびれが出たり、電極形状が途切れて分断してしまう等の電極形状の欠け(以下、印刷パターン欠けと記載する。)が発生してしまうことがあった。
【0007】
また、電極の薄膜化・微小化を実現するためには、スクリーン印刷用版のメッシュを薄くし、かつ、メッシュの大きさを小さくすることが必要であり、スクリーン印刷用版のメッシュの線材の径を細くするとともに、メッシュの大きさを小さくすることが必要であるが、現状の技術では限界があった。
【0008】
これに対し、特許文献1では、メッシュ部を構成するメッシュ線状部の長手方向に直交する方向のメッシュ線状部の断面形状を、印刷面側に円弧部分が向くような略半円又は略半楕円形状とし、他方の面を平坦とするスクリーン印刷版が提案されている。このスクリーン印刷版を用いると、メッシュ線状部の下面が被印刷体に当接する場合にも、メッシュ線状部の下面と被印刷体の接触状態が線接触の状態となり、メッシュ開口穴を通過したペーストが入り込むスペースが確保されることになり、薄膜のペースト印刷膜を形成すべき場合にも、被印刷体のペーストを印刷すべき領域に、いわゆるメッシュ跡のない、均一なペースト印刷膜を形成することができると記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のスクリーン印刷版を作製するためには、複数回のレジストの配設及び複数回の電気めっきを行い、さらにレジストの除去と基板の除去を行う必要があり、手間がかかる。
【0010】
【特許文献1】特開2002−1909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、薄膜化・微小化された電極を良好に作製することができるスクリーン印刷用版であって、かつ、簡易な製造工程により得られるスクリーン印刷用版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究開発を進めた。その結果、金属の細線を編んだ構造のメッシュを圧延加工又はプレス加工し、該メッシュの交点部に平坦部を形成して該メッシュの紗厚hを所定量以上薄くした後、該メッシュの少なくとも印刷面側を研磨し、印刷面側の平坦部の幅w1を所定の値以下にすることで、上記目的を達成できるスクリーン印刷用版が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づき完成されたものである。即ち、上記目的は、以下の実施例により達成される。
【0013】
(1)線材が編まれてなるメッシュを有するスクリーン印刷用版であって、前記メッシュを圧延加工又はプレス加工することによって前記線材の交点部の印刷面側及びスキージ面側の両面に前記メッシュの面と平行な印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部を形成した後、該印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部のうち少なくとも印刷面側平坦部について、印刷面側平坦部の幅w1を減じる加工を行い、w1が0<w1≦0.8w2(w2は、前記交点部において印刷面側に位置する線材の線径であって、前記交点部において、前記線材の長手方向と直交し、かつ、前記メッシュの面と平行する方向の最大の線径)を満たすようにしたことを特徴とするスクリーン印刷用版。
【0014】
ここで、印刷面側とは、スクリーン印刷をする際に被印刷体に面する側のことであり、スキージ面側とはスクリーン印刷をする際にスキージを押し付ける側のことであり、メッシュの面とは、メッシュの各部の厚さを二分する平面のことである。また、w1は、前記メッシュを構成する線材の交点部において、印刷面側に位置する線材の印刷面側平坦部の幅であって、該線材の長手方向と直交し、かつ、該平坦部と平行する方向の最大の幅のことである。
【0015】
(2)線材が編まれてなるメッシュを有するスクリーン印刷用版であって、前記メッシュは、前記線材の交点部において、印刷面側及びスキージ面側の両面に前記メッシュの面と平行な印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部を有し、前記メッシュの紗厚をhとしたとき、0.5w2≦h/2≦0.7w2(w2は、前記交点部において印刷面側に位置する線材の線径であって、前記交点部において、前記線材の長手方向と直交し、かつ、前記メッシュの面と平行する方向の最大の線径)を満たし、かつ、前記印刷面側平坦部の幅w1は、0<w1≦0.8w2であることを特徴とするスクリーン印刷用版。
【0016】
ここで、メッシュの紗厚とは、メッシュの面と直交する方向におけるメッシュの最大の厚さのことである。
【0017】
(3)前記印刷面側平坦部の幅w1が、前記スキージ面側平坦部の幅w3よりも小さいことを特徴とする(1)または(2)に記載のスクリーン印刷用版。
【0018】
ここで、w3は、前記メッシュを構成する線材の交点部において、スキージ面側に位置する線材のスキージ面側平坦部の幅であって、該線材の長手方向と直交し、かつ、該平坦部と平行する方向の最大の幅のことである。
【0019】
(4)線材が編まれてなるメッシュを有するスクリーン印刷用版であって、前記メッシュを圧延加工又はプレス加工することによって前記線材の交点部の印刷面側及びスキージ面側の両面に前記メッシュの面と平行な印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部を形成した後、前記印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部のうち少なくとも前記印刷面側平坦部に加工を行い、前記交点部において、印刷面側の線材が印刷面側に凸な曲面又は印刷面側に凸な多角形形状を有するようにしたことを特徴とするスクリーン印刷用版。
【0020】
ここで、印刷面側の方向に凸な多角形形状を有するとは、前記線材の交点部において印刷面側に位置する線材を、その長手方向と直交する面で切断したときに得られる断面の印刷面側の形状が多角形の一部となることをいう。
【0021】
(5)線材が編まれてなるメッシュを有するスクリーン印刷用版であって、前記メッシュは、前記線材の交点部において、スキージ面側には前記メッシュの面と平行な平坦部を有し、前記メッシュの紗厚をhとしたとき、0.5w2≦h/2≦0.7w2(w2は、前記交点部において印刷面側に位置する線材の線径であって、前記交点部において、前記線材の長手方向と直交し、かつ、前記メッシュの面と平行する方向の最大の線径)を満たし、かつ、印刷面側には前記メッシュの面と平行な平坦部を有さず、印刷面側に凸な曲面又は印刷面側に凸な多角形形状を有することを特徴とするスクリーン印刷用版。
【0022】
(6)前記線材が金属からなることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のスクリーン印刷用版。
【0023】
(7)線材が編まれてなるメッシュを有するスクリーン印刷用版の製造方法であって、前記メッシュを圧延加工又はプレス加工することによって前記線材の交点部の印刷面側及びスキージ面側の両面に前記メッシュの面と平行な印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部を形成した後、該印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部のうち少なくとも印刷面側平坦部について、印刷面側平坦部の幅w1を減じる加工を行い、w1が0<w1≦0.8w2(w2は、前記交点部において印刷面側に位置する線材の線径であって、前記交点部において、前記線材の長手方向と直交し、かつ、前記メッシュの面と平行する方向の最大の線径)を満たすようにすることを特徴とするスクリーン印刷用版の製造方法。
【0024】
(8)前記w1を減じる加工が研磨であることを特徴とする(7)に記載のスクリーン印刷用版の製造方法。
【0025】
ここで、研磨とは、物理的な手法によるもの以外に、化学的なエッチングによるものも含む。
【0026】
(9)印刷面側の前記平坦部の幅w1を、スキージ面側の前記平坦部の幅w3よりも小さくすることを特徴とする(7)または(8)に記載のスクリーン印刷用版の製造方法。
【0027】
(10)線材が編まれてなるメッシュを有するスクリーン印刷用版の製造方法であって、前記メッシュを圧延加工又はプレス加工することによって前記線材の交点部の印刷面側及びスキージ面側の両面に前記メッシュの面と平行な印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部を形成した後、前記印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部のうち少なくとも印刷面側平坦部に加工を行い、前記交点部において、印刷面側の線材が印刷面側に凸な曲面又は印刷面側に凸な多角形形状を有するようにすることを特徴とするスクリーン印刷用版の製造方法。
【0028】
(11)前記印刷面側平坦部に行う加工が研磨であることを特徴とする(10)に記載のスクリーン印刷用版の製造方法。
【0029】
(12)前記線材を金属とすることを特徴とする(7)乃至(11)のいずれかに記載のスクリーン印刷用版の製造方法。
【0030】
(13)(1)乃至(6)のいずれかに記載のスクリーン印刷用版を用いることを特徴とする電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るスクリーン印刷用版においては、メッシュの紗厚が薄くなっているので、スクリーン印刷によって得られる電極において、薄膜化が可能となる。また、線材の交点部における印刷面側平坦部の幅w1が、0<w1≦0.8w2を満たすので、スクリーン印刷用版のメッシュがスクリーン印刷の際に上方からの押圧力を受けて被印刷体が接触しても、交点部の印刷面側の線材と被印刷体との間に、メッシュ開口部を通過した電極塗料が入り込むスペースが確保されることとなり、印刷パターン欠けが防止される。
【0032】
さらに、スキージ面側平坦部の幅w3はあまり減少させず印刷面側平坦部の幅w1をより大きく減少させれば、線材の強度低下を抑えつつ、印刷パターン欠けを防止できるので、線径の小さい線材を使用しやすくなり、電極の微小化にも対応しやすくなる。
【0033】
また、本発明に係るスクリーン印刷用版は、例えば、圧延加工又はプレス加工によってメッシュの交点部に平坦部を形成した後、該メッシュの少なくとも印刷面側を研磨するという簡易な方法により製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係るスクリーン印刷用版1の概略を示す平面図である。図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るスクリーン印刷用版1は、メッシュ2と、メッシュ2の周囲を取り囲む支持部材3とから構成される。
【0036】
図2は、メッシュ2の一部を拡大して示す平面図であり、図2(A)は印刷面側であり、図2(B)はスキージ面側である。メッシュ2は、圧延加工又はプレス加工がなされている。図2からわかるように、メッシュ2は、縦糸4と横糸5とを編んで構成され、電極塗料が通過する開口部6が設けられている。メッシュ2の織り方としては、平織り(縦糸と横糸を交互に交差させる織り方)、綾織り(縦糸や横糸が2本又はそれ以上連続して織られる織り方)等を用いることができる。
【0037】
縦糸4と横糸5との交点部には、圧延加工又はプレス加工により、メッシュ2の面と平行な印刷面側平坦部7A(図2(A)参照)及びスキージ面側平坦部7B(図2(B)参照)を設け、さらに、少なくとも印刷面側平坦部7Aに加工を施すことにより、前記メッシュの紗厚をhとしたとき、0.5w2≦h/2≦0.7w2となるようにする(図3参照)。このようにすることで、スクリーン印刷によって得られる電極において、薄膜化が可能となる。h/2の値が0.7w2を上回ると、スクリーン印刷によって得られる電極の薄膜化が不十分となり、h/2の値が0.5w2を下回ると、スクリーン印刷の際の電極塗料の通過面積が小さくなりすぎ、印刷パターン欠けが発生する可能性が高くなる。印刷パターン欠けが発生する可能性をより低くする観点からは、h/2の値の範囲の下限を0.6w2とすることが好ましく、得られる電極をより薄膜化する観点からは、h/2の値の範囲の上限を、0.65w2とすることが好ましい。
【0038】
また、先に述べた、交点部における印刷面側平坦部の幅w1とは、図2に示す印刷面側平坦部7Aの幅w1のことであり、メッシュ2を構成する縦糸4と横糸5との交点部において、印刷面側に位置する線材(図2では縦糸4)の印刷面側平坦部7Aの幅のことであって、該線材の長手方向と直交し、かつ、該平坦部と平行する方向の最大の幅のことである。また、先に述べたw2とは、図2に示すw2のことであり、縦糸4と横糸5との交点部において、印刷面側に位置する線材(図2では縦糸4)の線径であって、前記交点部において、前記線材の長手方向と直交し、かつ、印刷面側平坦部7Aと平行する方向(メッシュ2の面と平行する方向)の最大の線径のことである。
【0039】
印刷面側平坦部7Aの幅w1は0<w1≦0.8w2とする。このようにすることで、スクリーン印刷用版1がスクリーン印刷の際に上方からの押圧力を受けて、メッシュ2の印刷面側と被印刷体8が接触しても、図3に示すように、メッシュ2を構成する縦糸4と横糸5との交点部において、印刷面側に位置する線材(図3では縦糸4)と被印刷体8との間に、スペース9が確保され、開口部6を通過した電極塗料はスペース9に入り込むことができる。その結果、被印刷体8の印刷面において電極塗料が回り込みやすくなり、印刷パターン欠けが防止される。なお、図3は、図2(A)のIII−III線に沿う断面の一部を示したものであって、縦糸4を中心にし、かつ、印刷面側を下側にして示したものである。また、説明の都合上、図3には、被印刷体8も描いている。
【0040】
また、図4に示すように、印刷面側平坦部7Aに加工を施し、縦糸4と横糸5との交点部において、印刷面側に位置する縦糸4の印刷面側の外観形状を印刷面側に凸な曲面としてもよい。この場合は、メッシュ部の印刷面側が被印刷体8と接触しても、線接触に止まり、スペース9が確保されやすくなる。
【0041】
また、図5及び図6に示すように、印刷面側平坦部7Aに加工を施し、縦糸4と横糸5との交点部において、印刷面側に位置する縦糸4の印刷面側の外観形状を印刷面側に凸な多角形の一部としてもよい。図5及び図6の場合も、メッシュ部の印刷面側が被印刷体8と接触しても、線接触に止まり、スペース9が確保されやすくなる。
【0042】
なお、図3〜図6では、縦糸4と横糸5との交点部において、縦糸4が印刷面側に位置する場合を示しているが、横糸5が印刷面側に位置する場合も同様である。
【0043】
縦糸4と横糸5の材質としては、圧延加工又はプレス加工により、縦糸4と横糸5との交点部にメッシュ2の面と平行な平坦部を設けることができる材質であれば用いることができ、例えば金属や樹脂を好適に用いることができる。金属としては、例えばステンレス、真鍮、りん青銅、銅等の金属線を用いることができるが、引張強度及び伸びの点でステンレスを用いることが好ましい。
【0044】
縦糸4と横糸5の線径(メッシュ2に圧延加工又はプレス加工を行う前)は、10〜30μmとすることが好ましい。縦糸4と横糸5の径の好ましい範囲の上限値が30μmであるのは、それを上回ると、スクリーン印刷によって得られる電極の薄膜化が困難となるからであり、また、縦糸4と横糸5の径の好ましい範囲の下限値が10μmであるのは、それを下回ると、現状では縦糸4及び横糸5の必要な引張強度を確保することが困難になるからである。
【0045】
スクリーン印刷用版1を用いてスクリーン印刷を行う場合は、支持部材3の近傍のメッシュ2の外周部を含む電極を印刷しない部分を乳剤12でマスキングした後、図7に示すように、スクリーン印刷用版1の上に電極塗料11を供給し、スキージ10をスクリーン印刷版1に押し付けて水平方向に移動させる。これにより、電極塗料11は被印刷体8の表面に転写される。
【0046】
次に、縦糸4及び横糸5として金属を用いた場合について、スクリーン印刷用版1を製造する方法について、図8により説明する。図8は、メッシュ2を圧延加工又はプレス加工して、縦糸4と横糸5の交点部に、メッシュ2の面と平行な印刷面側平坦部7A及びスキージ面側平坦部7Bを設けた後、印刷面側平坦部7に対して加工を施している状況を示したものである。
【0047】
線径が10〜30μmであるステンレス、真鍮、りん青銅、銅等の金属線を平織り、綾織り等の織物状に織ってメッシュ2とする。メッシュ2の紗厚は23〜60μm程度になる。得られたメッシュ2に、圧延加工又はプレス加工を施して、紗厚を16〜42μm程度にまで薄くする。
【0048】
そして、圧延加工又はプレス加工をした後のメッシュ2の印刷面側を加工し、圧延加工又はプレス加工により縦糸4と横糸5の交点部に生じた印刷面側平坦部7Aの幅w1を0<w1≦0.8w2(w2は、縦糸4と横糸5との交点部において、印刷面側に位置する線材の線径であって、前記交点部において、前記線材の長手方向と直交し、かつ、印刷面側平坦部7Aと平行する方向(メッシュ2の面と平行する方向)の最大の線径)にまで減じる(図8(A)参照)。また、印刷面側平坦部7Aに加工を行い、前記交点部において、印刷面側の線材が、印刷面側に凸な曲面(図8(B)参照)又は印刷面側に凸な多角形形状(図8(C)、(D)参照)を有するようにしてもよい。
【0049】
印刷面側平坦部7Aの幅を小さくするための加工方法、並びに、前記交点部において、印刷面側の線材が印刷面側に凸な曲面を有するようにする加工方法、及び印刷面側に凸な多角形形状を有するようにする加工方法は特に限定されず、物理的に研磨する方法や、化学的にエッチングする方法等を用いることができる。物理的に研磨する方法としては、例えば流体研磨をあげることができる。また、化学的に研磨する方法としては電解研磨をあげることができる。
【0050】
図9(A)及び(B)は、圧延加工又はプレス加工がなされたメッシュ2の少なくとも印刷面側を研磨した後のメッシュ2の一部を拡大して印刷面側から示す平面図である。研磨量が少ない場合は、図9(A)に示すように、印刷面側平坦部7Aがある程度の大きさで残る。研磨量を適切に増やすと、印刷面側平坦部7Aはほとんど残らなくなり、印刷面側平坦部7Aの幅w1を0に近づけることができる。さらに、図9(B)に示すように、最終的には交点部の印刷面側を曲面にして平坦部をなくすこともできる。
【0051】
ただし、研磨量が多くなるにしたがい、メッシュ2を構成する縦糸4及び横糸5の引張強度は低下する。したがって、研磨量は少なくしたほうが縦糸4及び横糸5の引張強度を維持する点では好ましい。
【0052】
しかし、前述のように、印刷パターン欠けを生じさせないようにするためには、メッシュの印刷面側をある程度以上研磨し、交点部の印刷面側の平坦部の幅w1を0.8w2以下にする必要がある。
【0053】
したがって、メッシュ2の印刷面側を多く研磨し、スキージ面側の研磨を少なくすることが好ましい。これにより、線材の強度低下を抑えつつ、印刷パターン欠けを防止できるので、線径の小さい線材を使用しやすくなり、電極の微小化にも対応しやすくなる。
【0054】
なお、メッシュ2の印刷面側を研磨すれば、印刷面側に位置する線材の印刷面側の表面平滑性も高まり、被印刷体の印刷面においてさらに電極塗料が回り込みやすくなり、さらに印刷パターン欠けが防止されるという効果も得られる。
【実施例】
【0055】
材質がステンレスで、線径が18.0μmの縦糸と横糸を平織りし、#500のメッシュを得た。得られたメッシュの紗厚は38.0μmであった。得られたメッシュに対し、圧延加工を施し、メッシュの紗厚を29μm程度とした。メッシュの紗厚はマイクロメーターにより測定した。
【0056】
そして、印刷面となる面に流体研磨を施し、研磨量を違えたメッシュを作製した。そして、研磨後に、それぞれの研磨量のメッシュについて、図2のIII−III線に沿う断面の外縁を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK−9500(株式会社キーエンス製)を用いて計測し、w1とw2の値を5箇所について測定し、その測定値の平均値を算出した。紗厚hは5箇所についてマイクロメーター用いて測定し、その測定値の平均値を算出した。h、w1、w2の測定結果を表1に示す。
【0057】
次に、それぞれの研磨量のメッシュを用いて、グリーンシートの上に電極印刷を行った。それぞれの研磨量のメッシュを用いて、1.0mm×0.5mmの電極を印刷して各1,000個の印刷状態を確認した。そして、印刷パターン欠けが0個から10個以下のものを○、印刷パターン欠けが11個以上100個以下発生したものを△、印刷パターン欠けが101個以上発生したものを×として評価した。その評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1からわかるように、本発明の範囲内の実施例1〜5(いずれも(h/2)/w2の値が0.61〜0.64で、w1/w2の値が0.80以下)では、印刷パターン欠けが発生した電極が1,000個中10個以下と、良好な結果が得られた。
【0060】
それに対し、本発明の範囲に属さない比較例1〜3(いずれもw1/w2の値が0.80を上回っている)では印刷パターン欠けが11個以上発生し、特にw1/w2の値が0.96と大きい比較例3では101個以上発生した。
【0061】
なお、実施例1〜5は、いずれも紗厚が27.2〜28.1μmと薄くなっており、(h/2)/w2の値は0.61〜0.64であり、得られた乾燥後の電極の厚さは、レーザー顕微鏡で測定したところ、1.0〜1.1μmとなっており、薄膜化された電極が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係るスクリーン印刷用版の概略を示す平面図
【図2】メッシュ2の一部を拡大して示す平面図((A)は印刷面側、(B)はスキージ面側)
【図3】本発明の一実施形態の要部を示す部分断面図
【図4】本発明の別の実施形態の要部を示す部分断面図
【図5】本発明のさらに別の実施形態の要部を示す部分断面図
【図6】本発明のさらに別の実施形態の要部を示す部分断面図
【図7】本発明の一実施形態に係るスクリーン印刷用版を使用して電極塗料のスクリーン印刷を行っている状態を示す断面図
【図8】印刷面側平坦部7に対して加工を施している状況を示す部分断面図
【図9】研磨の程度のより印刷面側の平坦部の大きさが変わることを示す拡大平面図((A)は研磨量が少ない場合、(B)は研磨量を適切に増やした場合)
【符号の説明】
【0063】
1…スクリーン印刷用版
2…メッシュ
3…支持部材
4…縦糸
5…横糸
6…開口部
7A…印刷面側平坦部
7B…スキージ面側平坦部
8…被印刷体
9…スペース
10…スキージ
11…電極塗料
12…乳剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材が編まれてなるメッシュを有するスクリーン印刷用版であって、前記メッシュを圧延加工又はプレス加工することによって前記線材の交点部の印刷面側及びスキージ面側の両面に前記メッシュの面と平行な印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部を形成した後、該印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部のうち少なくとも印刷面側平坦部について、印刷面側平坦部の幅w1を減じる加工を行い、w1が0<w1≦0.8w2(w2は、前記交点部において印刷面側に位置する線材の線径であって、前記交点部において、前記線材の長手方向と直交し、かつ、前記メッシュの面と平行する方向の最大の線径)を満たすようにしたことを特徴とするスクリーン印刷用版。
【請求項2】
線材が編まれてなるメッシュを有するスクリーン印刷用版であって、前記メッシュは、前記線材の交点部において、印刷面側及びスキージ面側の両面に前記メッシュの面と平行な印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部を有し、前記メッシュの紗厚をhとしたとき、0.5w2≦h/2≦0.7w2(w2は、前記交点部において印刷面側に位置する線材の線径であって、前記交点部において、前記線材の長手方向と直交し、かつ、前記メッシュの面と平行する方向の最大の線径)を満たし、かつ、前記印刷面側平坦部の幅w1は、0<w1≦0.8w2であることを特徴とするスクリーン印刷用版。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記印刷面側平坦部の幅w1が、前記スキージ面側平坦部の幅w3よりも小さいことを特徴とするスクリーン印刷用版。
【請求項4】
線材が編まれてなるメッシュを有するスクリーン印刷用版であって、前記メッシュを圧延加工又はプレス加工することによって前記線材の交点部の印刷面側及びスキージ面側の両面に前記メッシュの面と平行な印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部を形成した後、前記印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部のうち少なくとも前記印刷面側平坦部に加工を行い、前記交点部において、印刷面側の線材が印刷面側に凸な曲面又は印刷面側に凸な多角形形状を有するようにしたことを特徴とするスクリーン印刷用版。
【請求項5】
線材が編まれてなるメッシュを有するスクリーン印刷用版であって、前記メッシュは、前記線材の交点部において、スキージ面側には前記メッシュの面と平行な平坦部を有し、前記メッシュの紗厚をhとしたとき、0.5w2≦h/2≦0.7w2(w2は、前記交点部において印刷面側に位置する線材の線径であって、前記交点部において、前記線材の長手方向と直交し、かつ、前記メッシュの面と平行する方向の最大の線径)を満たし、かつ、印刷面側には前記メッシュの面と平行な平坦部を有さず、印刷面側に凸な曲面又は印刷面側に凸な多角形形状を有することを特徴とするスクリーン印刷用版。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記線材が金属からなることを特徴とするスクリーン印刷用版。
【請求項7】
線材が編まれてなるメッシュを有するスクリーン印刷用版の製造方法であって、前記メッシュを圧延加工又はプレス加工することによって前記線材の交点部の印刷面側及びスキージ面側の両面に前記メッシュの面と平行な印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部を形成した後、該印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部のうち少なくとも印刷面側平坦部について、印刷面側平坦部の幅w1を減じる加工を行い、w1が0<w1≦0.8w2(w2は、前記交点部において印刷面側に位置する線材の線径であって、前記交点部において、前記線材の長手方向と直交し、かつ、前記メッシュの面と平行する方向の最大の線径)を満たすようにすることを特徴とするスクリーン印刷用版の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記w1を減じる加工が研磨であることを特徴とするスクリーン印刷用版の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8において、
前記印刷面側平坦部の幅w1を、前記スキージ面側平坦部の幅w3よりも小さくすることを特徴とするスクリーン印刷用版の製造方法。
【請求項10】
線材が編まれてなるメッシュを有するスクリーン印刷用版の製造方法であって、前記メッシュを圧延加工又はプレス加工することによって前記線材の交点部の印刷面側及びスキージ面側の両面に前記メッシュの面と平行な印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部を形成した後、前記印刷面側平坦部及びスキージ面側平坦部のうち少なくとも印刷面側平坦部に加工を行い、前記交点部において、印刷面側の線材が印刷面側に凸な曲面又は印刷面側に凸な多角形形状を有するようにすることを特徴とするスクリーン印刷用版の製造方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記印刷面側平坦部に行う加工が研磨であることを特徴とするスクリーン印刷用版の製造方法。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれかにおいて、
前記線材を金属とすることを特徴とするスクリーン印刷用版の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至6のいずれかに記載のスクリーン印刷用版を用いることを特徴とする電子部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−237618(P2007−237618A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64925(P2006−64925)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】