説明

スクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法

【課題】本発明は、印刷材料を印刷した直後の印刷部材の離版性が改善されたスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、一定のパターンの開口部と印刷材料が供給される印刷領域と被印刷体の一面に対し所定の位置関係にて位置合わせされる一面とを有する弾性及び軟磁性を具備した印刷部材と該印刷部材を支持する支持部を備えた印刷手段と、被印刷体に位置合わせされた印刷部材の他面側から印刷領域を加圧しつつ印刷材料を印刷領域に供給するとともに印刷部材の上方を少なくとも一方向に移動可能に配設された供給手段と、供給手段の移動方向に対し供給手段の後方に印刷領域を含むように配設され供給手段と同期して移動するとともに印刷部材を引上げる磁力発生手段とを有し、磁力発生手段は、印刷部材と相対する一面に複数の磁区を有するとともに隣合う磁区の磁極は相異なるスクリーン印刷装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷材料を被印刷体に印刷するスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に係り、特に半導体装置のウエハ又は電子素子が実装される回路基板等の電子部品に半田ペースト、フラックス等を所定のパターンで印刷するのに好適なスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、半田ペーストやフラックス等の印刷材料を電子部品に印刷する技術に基づいて本発明の背景を説明するが、本発明は、以下の説明のみに限定されるものではない。
【0003】
例えば、LSI・コンデンサ素子・抵抗素子等の電子素子を回路基板に実装するときには、まず、回路基板に半田ペーストを印刷し、その後、半田ペーストの上に電子素子を装着し、リフロによって半田ペーストを溶融して回路基板に接合している。また、半田ボールを用いてウエハ等に半田バンプを形成する場合には、まず、ウエハにフラックスを印刷し、次いで、フラックスの上に半田ボールを装着し、リフロによって半田ボールを溶融して半田バンプを形成している。
【0004】
上記半田ペーストやフラックス等(以下半田ペースト、フラックスも含めてペーストと言う場合がある。)を回路基板等に印刷する工程では、通常、スクリーン印刷装置が使用されており、印刷部材であるマスクに形成された開口部を通してペーストは回路基板等の所定の位置に供給される。
【0005】
上記した従来のスクリーン印刷装置は、図10(a)に示すように、回路基板W上に配置された電極等のパターンに対応する開口部913を有し枠部912に張設されたマスク911を回路基板Wに位置合わせをし、該マスク911の上面に供給されたペーストfをスキージ92で塗り広げながら開口部913に押圧し、供給するとともにマスク911を回路基板Wから離間してペーストfを回路基板Wに配置する構成である。ここで、上記従来のスクリーン印刷装置9は、いわゆるオフコンタクト方式の構成である。すなわち、スクリーン印刷装置9のマスク911は自体が弾性を有する、又は、弾性を有する部材を介して枠部912に張設されており、その下面は回路基板Wの上面との間に所定の初期間隙G(以下スナップオフと言う場合がある。)を有するように配設され、開口部913にペーストfを供給するときにはスキージ92の押圧力で回路基板Wに当接し、ペーストfの供給が終了した後には弾性により初期の形状に復元する。
【0006】
近年、電子素子の実装密度が高まりそのリードの狭ピッチ化等に対応し印刷精度を確保するためにスナップオフGが小さくなってきており、場合によってはマスク911を回路基板Wと接触させた状態、いわゆるコンタクト方式で印刷することも行なわれている。ここで、図10(b)に示すようにオフコンタクト方式において狭小なスナップオフGで印刷した場合、又は、図10(c)に示すようにコンタクト方式で印刷した場合には、開口部913に供給したペーストfが、密着したマスク911と回路基板Wの間隙に滲み出してマスク911を回路基板Wに粘着させてしまうため、マスク911が回路基板Wから離間し難くなる離版性の悪化という問題が生じる。
【0007】
一方で、図10(a)に示すように、上記ペーストfの滲みを回避するためスナップオフGを広くした場合には、初期の形状に復元するときの復元力が過大となるため印刷されたペーストfに形崩れが生じたり、印刷された個々のペーストfのピッチ寸法精度が許容範囲を超えたりする等の印刷精度の悪化を招く。
【0008】
上記問題を解決するため種々の検討がなされており、その一例が下記特許文献1、2に記載されている。特許文献1には、回路基板の表面に接触するようにセットされたマスクに対し、先端がマスクの上面に当接しかつマスク上面に平行なX軸の一端側から他端側へ移動してはんだをマスクの開口部に押し出すスキージがマスクの上方に設けられ、マスクの一端側を上方へ持ち上げて回路基板から順次剥離させる持ち上げ手段と、スキージの先端を中心とした回路基板に対するマスクの一端側の傾斜角度がほぼ一定になるように上記持ち上げ手段を昇降させる昇降装置とが備えられ、スキージの先端と持ち上げ手段とはそれぞれ、マスク上面に平行でかつX軸に直交するY軸方向にわたって延設されているコンタクト方式のスクリーン印刷装置が開示されている。
【0009】
このスクリーン印刷装置によれば、スキージがX軸の一端側から他端側へ移動してはんだをマスクの開口部に押し出すとともに、昇降装置が持ち上げ手段を上昇させることによって、マスクの一端側が持ち上げ手段で上方へ持ち上げられて回路基板から順次剥離される。この際、マスクはたわみを生じることはなく、スキージの先端を起点として他端側から回路基板の表面に対し斜め上方へ剥離するため、マスクの版離れ時の挙動はスキージの先端に沿い同様となり、マスクの離版性が良好となるという利点がある。
【0010】
しかしながら、特許文献1のスクリーン印刷装置には以下の解決すべき問題がある。すなわち、スクリーン印刷装置で使用されるマスクの厚みは数十〜数百μmと非常に薄く、可撓性がある。そのため、図10(d)に示すように、マスク911の一端部を常に持ち上げていても、ペーストfが開口部913に充填された直後のマスク911の部分aは、開口部913に供給されたペーストfの粘性により直ぐには回路基板Wから離間せず、暫くの間は回路基板Wに密着した状態が維持される。
【0011】
この密着している時間が比較的短時間であっても、開口部913にペーストfが充填されたマスク911が回路基板Wに密着していると、ペーストfがマスク911と回路基板Wとの間隙に滲み出すため、印刷されたペーストfの形崩れや滲み出したペーストfによるマスク911の汚染などの問題が生じる。
【0012】
また、特許文献2には、磁性材からなるマスクを被印刷体に位置あわせし、マスク上に供給されたインクをスキージにより塗り広げて被印刷体上にインクパターンを印刷するにあたり、スクリーンと被印刷体の間のインクによる粘着力を打ち消す方向に外力を加える磁石を用いてインクパターンが印刷された後にマスクを版離れさせる構成のスクリーン印刷装置が開示されている。
【0013】
かかる特許文献2のスクリーン印刷装置によれば、上記構成の磁石によって、スキージでインクを塗り広げた直後にマスクを被印刷体から即座に離間できるので、上記特許文献1のスクリーン印刷装置に係るマスクの離版性の問題を解消できるという利点がある。
【0014】
しかしながら、近年、印刷パターンの狭ピッチ化により単位面積当たりの開口部の数が増加していること、回路基板やウエハの大型化に対応しマスクが大判化していることから、マスクの離版性の問題が顕在化している。すなわち、上記特許文献2のスクリーン印刷装置の構成要素である磁石によれば、マスクを通る磁石の磁束密度がマスクの部位毎に不均一となり、マスクの一部が被印刷体から離間し他部は離間しないという離版性のバラツキという問題が生じる可能性がある。この問題はマスクが大判化し、マスクの中央部と端部の剛性が異なる場合に更に顕著となる。また、ペーストの印刷が完了した後にマスクを被印刷体から離版させる場合には、マスクの開口部に充填されたペーストと開口部の側面間には該ペーストの粘性力が働くので、マスクに対し、個々の開口部の粘性力の和以上の力を粘性力を打ち消す方向に作用させる必要がある。ここで、単位面積当たりの開口部の数が増加したりマスクが大判化すると上記粘性力の和も増加するため、より大きな力をマスクに作用させる必要が生じるが、上記特許文献2のスクリーン印刷装置の構成要素である磁石の磁力を単に大きくした場合には、スクリーン印刷装置の構成要素にも磁力による影響が出る問題があり、この問題を解消しようとすると装置構成が複雑になる。
【特許文献1】特開2000−85102号公報
【特許文献2】特開平8−34110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来の技術を鑑みてなされたものであり、電子部品等の被印刷体の一面に、半田ペーストやフラックス等の印刷材料を所定のパターンで印刷するスクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法において、印刷材料を印刷した直後の印刷部材の離版性が改善されたスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、被印刷体の一面に所定のパターンで印刷材料を印刷するスクリーン印刷装置において、前記パターンに対応する開口部、前記開口部を含み前記印刷材料が供給される印刷領域及び前記被印刷体の一面に対し所定の位置関係にて位置合わせされる一面とを有する弾性及び軟磁性を具備した印刷部材と該印刷部材を支持する支持部とを備えた印刷手段と、前記被印刷体に位置合わせされた前記印刷部材の他面側から前記印刷領域を加圧しつつ前記印刷材料を該印刷領域に供給するとともに前記印刷部材の上方を少なくとも一方向に移動可能に配設された供給手段と、前記供給手段の移動方向に対し前記供給手段の後方に前記印刷領域を含むように配設され前記供給手段と同期して移動するとともに前記印刷部材を引上げる磁力発生手段とを有し、前記磁力発生手段は、前記印刷部材と相対する一面に複数の磁区を有するとともに隣合う磁区の磁極は相異なるスクリーン印刷装置である。ここで、「磁区」とは、一の極性を有する区画のことをいう。また、上記において「印刷材料」とは主に液状のものであり、ペースト状又はゲル状等の粘性のある印刷材料を含むものとし、印刷部材を構成する軟磁性材料としては、例えば磁性ステンレスやニッケルなどの金属材料又は軟磁性粒子を含む樹脂材料等を使用することができる。
【0017】
かかるスクリーン印刷装置によれば、印刷手段は、その印刷部材の一面が所定の位置関係となるように被印刷体の一面に対し位置合わせされる。供給手段は、印刷部材の上方を該印刷部材の一方端から他方端に移動しつつ被印刷体に位置合わせされた印刷部材の他面側から印刷材料を印刷領域に供給するので、印刷領域の中に含まれる開口部には印刷材料が充填される。
【0018】
供給手段は、印刷材料が供給されている印刷領域を他面側から加圧しており、印刷部材は弾性と軟磁性を有している。供給手段の後方に配設され供給手段と同期して移動する磁力発生手段は、印刷材料が開口部に押圧し供給された直後に供給手段の後方の印刷部材を上方に引上げ、印刷部材は被印刷体から離間する。
【0019】
ここで、磁力発生手段の印刷部材と相対する一面には、隣合う磁区の磁極が相異なるよう配置されているので磁区間には磁束が形成され、各磁区には印刷部材を引上げる方向の磁力が発生する。そして、磁区は複数配設されているので上記磁力発生手段の一面には磁区に対応し複数の磁力が生じる。その結果、この複数の磁力により均一に印刷部材は引上げられるので、印刷部材を被印刷体から一様に離間させることができる。また、上記磁力発生手段によれば、上記磁束は磁区間の狭い空間に主に生じるので、印刷部材の大判化や開口部の増加に対応し磁気発生手段の磁力を増加させる場合でも周囲の部材への影響を低減することが可能となる。また、磁力によって印刷部材を引き上げるため、磁力発生手段と印刷部材とを接触または非接触の状態で使用することができる。
【0020】
このように、印刷材料が開口部に供給された直後に磁力発生手段により印刷部材は被印刷体から離間し、印刷直後の印刷部材の離版性が良好となるので、開口部に供給された印刷材料が被印刷体と印刷部材との間隙に滲み出すことが少ない。また、印刷領域を含むように磁力発生手段は設けられているので印刷領域は全体的に均一に上方に引上げられるので、被印刷体部位ごとの印刷状態のバラツキが少なく印刷の品質が安定する。さらに、上記構成の磁力発生手段により印刷部材の離版性をより均一にすることができ、更に印刷の品質が向上する。なお、永久磁石を上記構成に組み立てたものを磁力発生手段として使用すれば装置構成がシンプルとなり好ましい。
【0021】
なお、上記態様のスクリーン印刷装置において、前記隣接する磁区は接触した状態で配設されていることが好ましい。このような構成とすることにより、各磁区間で生じた漏洩磁束により各磁区ごとに磁力を生じさせることができる。また、その場合には、前記磁力発生手段の他面で生じる磁力の影響を抑制するため、該他面の側には該他面を包含可能な軟磁性片が配設されていることがより好ましい。このような構成とすれば、他面側の磁極間で生じた磁束は軟磁性片の中を通るので、周囲への磁力の影響を低減することができる。
【0022】
また、前記隣接する磁区は接触しない状態で配設されており、前記磁力発生手段の一面に対する他面の磁区は磁気的に結合されていることが好ましい。このような構成とすることでも、各磁区間で生じる磁束により各磁区ごとに磁力を生じさせることができ、前記他面は磁気的に結合されているので他面で生じる磁力の周囲への影響を低減することができる。
【0023】
また、前記磁区は、前記供給手段の移動方向に対し特定の方向に並設されていることが望ましい。このように磁区を設けることにより、磁区の並びに対応する印刷部材は均一に被印刷体から版離れすることとなる。なお、その磁区の並びの方向は、前記供給手段の移動方向に対し交差する方向であってもよいし、沿う方向であってもよい。
【0024】
なお、上記スクリーン印刷装置において、印刷部材に振動を付与する加振手段を設け、印刷部材を引上げるとき印刷部材を加振する構成とすれば、開口部の壁面と印刷材料との粘性力が低減され印刷部材は容易に版離れするので、印刷された印刷材料の形状が良好となり好ましい。また、印刷部材を引上げるときに複数パターンで引上動作を制御可能な引上制御手段を設け、印刷部材の引上げ中の引上動作を変更する構成としても同様な効果を奏することができる。さらに、印刷部材を加熱する加熱手段を設け、印刷部材を引上げるときに印刷部材を加熱する構成としても、同様な効果を奏することができる。
【0025】
また、上記スクリーン印刷装置の対象とする被印刷体、印刷材料は特に限定されないが、半田ペーストやフラックスなど少なくともフラックス成分を含む印刷材料を、被印刷体であるウエハ、回路基板等の電子部品に印刷する場合を対象とすれば、近年、配線回路等が狭ピッチ化している電子部品への印刷に対応することができるので望ましい。
【0026】
また、供給手段を移動させる移動手段を設ければ、供給手段を自動的に移動できるので生産の安定の面から好ましく、さらに、該移動手段による移動速度等を制御する移動制御手段を設けておけば、開口部の大きさ(すなわち印刷された印刷材料の大きさ)や印刷材料の粘度等により適宜供給手段の移動速度を制御でき、より確実に開口部に印刷材料を充填できるので好ましい。
【0027】
また、上記供給手段は、先端から印刷材料を噴射し印刷領域に供給するスプレー方式の噴射部と印刷領域を加圧する加圧部を備えた供給手段、又は、印刷部材の他面に供給された印刷材料を塗り広げて印刷領域に供給する回転自在なローラ方式の回転塗布部と加圧部とを備えた供給手段であってもよい。しかしながら、供給手段としては、一端が印刷部材の他面を押圧可能に配置されたスキージであることが望ましい。装置構成がシンプルとなり工業生産上好ましく、印刷材料を確実に開口部に供給できるからである。さらに、該スキージの印刷部材に対する押圧力を制御する押圧制御手段を設けておけば、印刷された印刷材料の粒度や印刷材料の粘度等によりスキージの押圧力を適宜に制御し、より確実に開口部に印刷材料を充填できるので好ましい。
【0028】
また、上記印刷部材の一面は被印刷体の一面に対し所定の間隙を有するように位置合わせされている、すなわちオフコンタクト方式とすることが望ましい。オフコンタクト方式とすることにより、磁力発生手段により引上げられた印刷部材は、被印刷体と所定間隙を有する初期の状態に復元される。このようにオフコンタクト方式を用いることで、離版した印刷部材と被印刷体との間隙を常に一定に維持することができるので、磁力発生手段は、供給手段の移動方向において印刷領域の一部分を含む構成とすればよく、装置構成がシンプルとなり好ましい。
【0029】
また、上記スクリーン印刷装置は、磁力発生手段による印刷部材の引上量を調整できるように、磁力発生手段による印刷部材の引上力を制御可能な引上力制御手段を有していれば好ましい。すなわち、支持部に支持されている印刷部材は各部位で剛性が異なり同一の引上力で印刷部材を引上げた場合には、支持部から離れ剛性の低い印刷部材の中央部では引上量や引上速度が大きくなり、支持部に近く剛性の高い端部では引上量や引上速度が小さくなる。上記引上力制御手段によれば、印刷部材の位置により、印刷部材の引上量や引上速度がほぼ同一となるように引上力を調整できるので、印刷部材の離版性を部位によらず均一にすることができる。かかる引上力制御手段としては、例えば、印刷部材の他面に対して磁気発生手段を昇降させる昇降手段により実現することができる。また、磁力発生手段として電磁石を使用する場合に、電磁石から生じる磁力を制御する制御手段を設け、印刷部材の位置により電磁石の磁力を調整する構成としても、上記と同様な効果を奏することができる。さらに、印刷部材の引上量や引上速度を計測する計測手段を設け、該計測手段により計測された引上量や引上速度に基づいて引上力を適宜制御する構成とすれば、離版性をさらに均一にすることができるので望ましい。
【0030】
さらに、磁力発生手段は、個々に引上力が制御される複数の磁力発生部から構成されていれば好ましい。すなわち、供給手段の移動方向に対し直交する方向においても、支持部から離れ剛性の低い印刷部材の中央部では引上量が大きくなり、支持部に近く剛性の高い端部では引上量が小さくなる。上記複数の磁力発生部で構成された磁力発生手段によれば、印刷部材の位置により、印刷部材の引上量や引上速度がほぼ同一となるように磁力発生手段の引上力を調整できるので、印刷部材の離版性を均一にすることができる。
【0031】
本発明の別の態様は、上記態様のスクリーン印刷装置にて実現されるものであり、被印刷体の一面に所定のパターンで液状の印刷材料を印刷するスクリーン印刷方法において、前記パターンに対応する開口部を有した弾性のある印刷部材の一面を前記被印刷体の一面と所定の位置関係となるように位置合わせし、前記開口部を含み前記印刷材料が供給される前記印刷部材の印刷領域を前記印刷部材の他面側から加圧するとともに、供給手段を前記印刷部材の一端から他端へ移動させて前記印刷材料を前記印刷領域に供給し、前記印刷領域に前記印刷材料が供給された直後に、前記印刷部材を、前記供給手段の移動方向と直角な方向において略均一となる引上量で、前記供給手段の移動と同期して引上げるスクリーン印刷方法である。このスクリーン印刷方法においては、前記の通り、複数の磁区による磁力によって前記印刷部材を引き上げれば好ましい。また、前記供給手段の一端から他端への移動に際して、前記印刷部材の引上量が略一定となるべく制御すれば、離版性を均一にすることができるため好ましい。
【発明の効果】
【0032】
上記本発明の態様であるスクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法によれば、被印刷体に位置合わせされ、供給手段によって加圧されながら印刷材料が供給される印刷部材の印刷領域に対し、供給手段の移動方向に対し該供給手段の後方に印刷領域を含むように配設され供給手段と同期して移動するとともに印刷部材を上方に引上げる上記構成の磁力発生手段を設けたので、印刷部材の開口部に印刷材料を充填した直後に磁力発生手段により印刷部材は引上げられ、印刷材料を印刷した直後の印刷部材の離版性が改善される。その結果、印刷部材と被印刷体との間に印刷材料が滲み出しにくく、被印刷体に印刷された印刷材料の形状や寸法精度が良好で印刷材料による印刷部材の汚染が少ないスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明について、その各種態様に基づき図面を参照しつつ説明する。なお、以下説明する態様のスクリーン印刷装置で対象とする被印刷体は、図2に示す所定パターンで配列された平板状電極pに直径が80〜150μm程度の半田ボールBが搭載されるウエハWであり、印刷材料であるペースト状のフラックスを平板状電極pに印刷するものとする。
【0034】
[第1態様]
本発明の第1態様について図1、3〜6、13に基づいて説明する。図1は第1態様のスクリーン印刷装置1の概略構成を示す斜視図、図3は図1のスクリーン印刷装置の拡大断面図及び平面図、図4は図1の磁力発生手段の態様を示す断面図、図5は図1のスクリーン印刷装置の動作を説明する図、図6は図1のスクリーン印刷装置の供給手段及び磁力発生手段の変形例を示す断面図、図13は図1のスクリーン印刷装置の磁力発生手段の断面図である。
【0035】
*印刷手段
第1態様のスクリーン印刷装置1において符号11は印刷手段である。印刷手段11は弾性を有するあるいは弾性を有する部材によって周囲から張設された平板状のマスク(印刷部材)111と該マスク111を支持する枠状の支持部112を有している。マスク111には、上記ウエハWの平板状電極pの配列パターンに対応する複数の開口部113が形成されている。また、マスク111は、フラックスfが充填される複数の開口部113を含む印刷領域114と、平板状電極pが配列されたウエハWの上面(一面)に対し所定の位置関係にて位置合わせされる裏面(一面)115とを有している。マスク111は軟磁性材である磁性ステンレス鋼で構成されており、その厚みは50μm程度である。なお、マスク111の厚みは半田ボールの大きさや平板状電極pの大きさ等を考慮し適宜設定される。開口部113は、例えばレーザ加工やエッチング加工、精密電気鋳造法など周知の加工方法で形成することができる。
【0036】
ここで、スクリーン印刷装置1はオフコンタクト方式を採用しているので、図3(a)に示すように、第1態様のマスク111は、ウエハWの上面に対し裏面115が所定の間隙すなわちスナップオフGを有するように位置合わせされている。なお、図1における符号15は上記ウエハWを載置する平板状のテーブルである。このテーブル15にウエハWを真空吸着する真空吸着手段等を組込めば、載置されたウエハWはテーブル15に吸着され固定されるので好ましい。
【0037】
*供給手段
符号12は、第1態様の供給手段であるプラスティック系やゴム系の材料から成る平板状のスキージである。スキージ12は、ウエハWに対して位置合わせされたマスク111の上面に、その下端が当接して印刷領域114を下方に加圧するように配設されている。また、スキージ12は、印刷領域114を包含可能な大きさを有している。スキージ12は、図1において矢示するように、マスク111の一端から他端に向かい水平に移動可能な水平移動手段14に取付けられており、マスク111の上面に供給されたフラックスfを印刷領域114に供給し、押圧し、開口部113にフラックスfを充填する。
【0038】
*磁力発生手段
符号13は、図3(a)において矢示するようにマスク111を上方に引上げる磁力発生手段である。磁力発生手段13は、水平移動手段14で駆動されるスキージ12の移動方向に対し該スキージ12の後方に位置するように水平移動手段14に固定されており、スキージ12と所定の間隔を維持しつつスキージ12と同期して移動する。また、磁力発生手段13は、図3(b)に示すように、スキージ12の移動方向に対し直交する方向においてはスキージ12とほぼ同じ大きさで、マスク111の印刷領域114を包含可能に設けられている。また、該移動方向に沿う方向に対しては印刷領域114の一部を含むように設けられている。
【0039】
なお、スキージと磁力発生手段とは上記のように離れている必要はなく、例えば図4(a)に示す磁力発生手段13aのように、開口部113にフラックスfが充填された直後にマスク11が引上げられるよう、水平移動手段の支持部材141に接続されたスキージ12aに密接するようスキージ12aの後方に設けておいてもよい。また、図4(b)に示すように、永久磁石13bの鉛直方向の位置や大きさを適宜設定することにより、磁力発生手段13bからマスク111に作用する磁力の大きさや磁力線の向かう方向を調整することができる。また、図4(c)に示すように、一対のスキージ12cが永久磁石13cを介して該永久磁石13cに密接する状態で水平移動手段の支持部材141に組み込むとともに、スキージ12cの往復動の方向に対応し、いずれかのスキージ12cの下端がマスク111に当接するように前記支持部材141を傾動可能な構成とすれば、スキージの往復動によりフラックスfを開口部113に充填する構成のスクリーン印刷装置に対応することができる。また、図4(d)に示すように、永久磁石13dの鉛直方向の位置や大きさを適宜設定することにより、永久磁石13dからマスク111に作用する磁力の大きさや磁力線の向かう方向を調整することができる。
【0040】
以下、磁力発生手段13について図13を参照して詳述する。
本態様の磁力発生手段13は、具体的にはその正面図である図13(a)及び底面図である同図(b)に示すように、複数の磁区132を形成するため、両端にN及びS極を有する複数の角柱状の棒磁石131が互いに接触する状態となるよう一列に並べたものであり、磁区132の並びの方向がスキージ12の移動方向と直交するよう配設されている。磁力発生手段13では、マスク111に相対する下面において隣接する磁区132の磁極が相異なるようN極,S極,N極,S極…の順に組み合わせ構成されており、図において符号Mで示すように各磁区132間には磁束が形成され、磁区132には矢印Fで示すように鉛直方向、すなわちマスク111を引上げる方向の磁力が発生する。この磁束Mは、具体的には磁区132間で漏れた漏洩磁束であり、各磁区132間に形成されている。したがって、上記構成の複数の磁区132にはそれぞれ個々に磁力Fが生じている。このように、マスク111を引上げる磁力Fが、局所に集中せず、磁力発生手段13の全体に渡り分散しているので、マスク111を均一に引上げ、基板Wから一様に離版させることができる。
【0041】
これに対し、図13(e)に示す水平方向にS極及びN極が配された磁石931により磁力発生手段93を構成した場合には、該磁力発生手段93から生じる磁力Fは、図示するように、磁石931の端部に比べ中央部になるほど弱くなる。その結果、磁石931の端部と中央部とに相対するマスク111の部分は、それぞれに引上げられる状態が相異することとなる。このように、上記構成の磁力発生手段93ではマスク111を均一に引上げることができず、マスク111を基板Wから一様に離版させることができない。また、マスク111の大判化や開口部113の数の増加に対応し磁力Fを大きくした場合には、マスク111に直接作用しない磁力Fも増加するため該磁力Fの周囲への影響も大きくなる。
【0042】
また、図13(f)に示す鉛直方向にS極及びN極が配された磁石941により磁力発生手段94を構成した場合には、該磁力発生手段94から生じる磁力Fは、図示するように、磁石931の端部に比べ中央部になるほど強くなり、上記磁力発生手段93と同様にマスク111を均一に引上げることができず、磁力Fを大きくした場合の磁力Fの周囲への影響も大きくなる。加えて、このような態様の磁石941は薄型化しがたいので、鉛直方向の大きさが厚くなるという問題もある。
【0043】
上記本態様の磁力発生手段13において、マスク111の厚みが薄い場合には、通常、各磁区132の磁力Fはほぼ同一となるよう設定されるが、必ずしも同一の大きさである必要はなく、マスク111を引上げる状態が均一になるよう適宜設定すればよい。すなわち、例えば、支持部112に近いマスク111の端部のように剛性が高く変形し難い部分に相対する磁区132の磁力Fは強く、剛性が低く変形しやすい中央部に相対する磁極の磁力Fは弱く設定すれば、マスク111は均一に引上げられることとなる。
【0044】
また、各磁区は、一体の磁性体に適宜着磁して設けてもよい。さらに、図13(c)に示すように、磁力発生手段13’の上面の磁区133から生じる磁力を抑制するため、上面側に該上面を包含できる大きさの軟磁性片134を設けておくことが好ましい。
【0045】
また、図13(a)に示すように、上記構成の磁力発生手段13でも各磁区132内において磁力Fは不均一になるので、磁区132は可能な限り小さくすることが望ましい。磁区132を小さくすることでより磁力Fの大きさを一定とすることができ、マスク111を一様に基板Wから離版させることが可能となる。
【0046】
*スクリーン印刷装置1の動作
上記構成のスクリーン印刷装置1の動作について図5を参照し説明する。
まず、図5(a)に示すように、テーブル15(不図示)の所定位置にウエハWを載置し、ウエハWの上面とマスク111の裏面115との間に所定のスナップオフGが形成されるようマスク111を位置合わせする。
【0047】
次いで、図5(b)に示すように、マスク111の上面にフラックスfを供給し、マスク111の右端(一端)にスキージ12の下端を当接しマスク111をウエハWに押し付けながらフラックスfを加圧する。マスク111は弾性を有するので、スキージ12が当接している部分が下方に湾曲し、当該部分がウエハWの上面に接触する。また、スキージ12の後方に設けられた磁力発生手段13は、該磁力発生手段13の下方にあるマスク111を上方に引上げている。
【0048】
次いで、図5(c)に示すように、マスク111の右端から左端(他端)に向かって水平移動手段14でスキージ12を移動させる。移動にともない、スキージ12はフラックスfを印刷領域114に塗り広げていき、印刷領域114の開口部113にフラックスfを充填し、押圧する。ここで、永久磁石13は、スキージ12とともに同期して該スキージ12の後方を移動している。したがって、フラックスfが開口部113に充填された直後のマスク111は磁力発生手段13で上方に引上げられ、スナップオフGを有する初期の状態に復元される。また、磁力発生手段13は、スキージ12の移動方向に対しスキージ12の後方の印刷領域114を包含可能な大きさに設けられ、さらに上記のように複数の磁区から構成されているので、磁力発生手段13の下方領域のマスク111は均一に上方へ引上げられる。
【0049】
次いで、図5(d)に示すように、マスク111の左端までスキージ12を移動し、フラックスfの印刷が終了する。
【0050】
*スクリーン印刷装置1の変形例
図6は、第1態様のスクリーン印刷装置1の供給手段及び磁力発生手段の変形例を有するスクリーン印刷装置である。なお、スクリーン印刷装置1と同一の構成要素については図1と同一符号を付すとともに、図6(c)(d)においては、磁力発生手段のみを示し印刷手段等他の構成要素は省略している。
【0051】
図6(a)のスクリーン印刷装置2の供給手段22は、マスク111の上面に供給されたフラックスfを塗り広げて印刷領域114に供給するため、マスク111に当接しマスク111をウエハWへ押し付ける回転自在な回転塗布部22から構成されている。
【0052】
図6(b)のスクリーン印刷装置3の供給手段32は、マスク111の上面側からフラックスfを印刷領域114に供給するため、先端からフラックスfを噴射し印刷領域114に供給する噴射部32と印刷領域114にてフラックスを開口部113に充填し押圧すると共にマスク111をウエハWに押し付ける加圧部321とから構成されている。
【0053】
図6(c)において符号43は磁力発生手段であり、2個の永久磁石431と軟磁性片444とで構成されている。略平板状の永久磁石431は、スキージ(不図示)の移動方向に対し直交する方向においてマスクの印刷領域(不図示)を包含可能な長さを有している。また、永久磁石431は、磁区432、すなわちマスクに相対する下面の磁極が相異なるように一方がN極、他方がS極として配設されている。ここで、磁区432は、スキージの移動方向に対し平行に、非接触となるよう離間した状態で並設されている。また、軟磁性片444は、前記磁区432に対する上面の磁区433同士を磁気的に結合するよう永久磁石431の上面に接した状態で設けられている。かかる構成の磁力発生手段43によれば、マスクが近接した2つの磁区432の間には、図において符号Mで示す磁束が形成され、個々の磁区432において磁力Fが生じることとなり、上記磁力発生手段13と同様にマスクを均一に離版させることが可能となる。なお、マスクの剛性等に対応して部分的に磁力の大きさを調整する必要のある場合には、符号435に示すように永久磁石431の下面に部分的に凹部を設け、マスクの上面と永久磁石431の下面とのギャップを調整することにより部分的に磁力を調整するようにしてもよい。また、磁区432は、スキージの移動方向に対して交差するように並設してもよい。さらに、広い範囲でマスクを引上げる必要のある場合には複数個の永久磁石で磁力発生手段を構成してもよい。
【0054】
図6(d)において符号43aは磁力発生手段であり、上記磁力発生手段43と磁気回路的に同一の構成となっている。すわなち、磁力発生手段43aは、1個の永久磁石431aと2個軟磁性片444aとで構成されている。略平板状の永久磁石431a及び軟磁性片444aは、スキージ(不図示)の移動方向に対し直交する方向においてマスクの印刷領域(不図示)を包含可能な長さを有している。永久磁石431aにはS、N極が水平方向に形成されており、永久磁石431aのそれぞれの極に軟磁性片444aの上部は密接されている。したがって、軟磁性片444aの下面、すなわち離間した磁区432aにはS又はN極が形成される。かかる構成の磁力発生手段43aによれば、磁力発生手段43と同様にマスクを均一に離版させることが可能となる。なお、上記のように単一の永久磁石を用いることなく、マスクの印刷領域を包含できるよう複数の永久磁石を適宜配置してもよい。
【0055】
[第2態様]
第1態様のスクリーン印刷装置1はオフコンタクト方式のスクリーン印刷装置であったが、本発明はコンタクト方式のスクリーン印刷装置で実施することが可能である。コンタクト方式のスクリーン印刷装置である本発明の第2態様について図7を参照し説明する。図7は、第2態様のスクリーン印刷装置5、6の概略構成を示す断面図であり、テーブル15及び水平移動手段14は省略している。なお、第1態様のスクリーン印刷装置1と同一の構成要素については図1と同一符号を付し、説明を省略する。
【0056】
図7(a)のスクリーン印刷装置5のマスク111は、その裏面115がウエハWの上面に密着するように位置合わせ可能に配設されている。符号53は本態様の磁力発生手段である。磁力発生手段53は、水平移動手段14で駆動されるスキージ12の移動方向に対し該スキージ12の後方に位置するように水平移動手段14に固定されており、スキージ12と所定の間隔を維持しつつスキージ12と同期して移動する。磁力発生手段53は、スキージ12の移動方向に対しスキージ12の後方の印刷領域114の全体を包含可能な大きさを有している。この磁力発生手段53も基本的には上記第1態様の磁力発生手段13と同様に構成されており、その底面図である図13(d)に示すように、各磁区531aには隣接する磁区531aの磁極が相異なるようS極及びN極が配置されているとともに、各極はスキージ12の進行方向に沿い伸びた棒状の磁石により構成されている。このスクリーン印刷装置5においては、磁力発生手段53とマスク111とを非接触の状態で、マスク111を引上げている。
【0057】
かかるスクリーン印刷装置5によれば、マスク111の上面に供給されたフラックスfがスキージ12で開口部113に充填された後、マスク111は磁力発生手段53により上方に引上げられる。ここで、磁力発生手段53は、スキージ12の移動方向に対しスキージ12の後方の印刷領域114全体を包含するように設けられているので、引上げられたマスク111は磁力発生手段53によりウエハWから離間した状態を維持される。したがって、コンタクト方式のスクリーン印刷装置5でも、印刷直後のマスク111の離版性が改善されるとともに一度離間したマスク111がウエハWの上面と再び接触することがない。
【0058】
図7(b)のスクリーン印刷装置6のマスク111は、その裏面115がウエハWの上面に密着するように位置合わせ可能に配設されている。また、本態様のスクリーン印刷装置6は上記第1態様と同様な磁力発生手段13と、マスク111の右端部に配設されマスク111の下方からマスク111を上方に押上げる押上手段66とを有している。
【0059】
押上手段66は、マスク111の右端部を上方へ押上げてウエハWから剥離させる押上部材661と押上部材661を昇降させる昇降部662とから構成されている。押上部材661は、紙面に垂直な方向に沿い平板状に形成されている。なお、符号120はマスク111の張力を制御する張力制御手段であり、押上手段66により押上げられたマスク111の張力を一定に保持することで印刷精度を維持するものである。
【0060】
かかるスクリーン印刷装置6によれば、マスク111の上面に供給されたフラックスfがスキージ12で開口部113に充填された後、マスク111は磁力発生手段13により上方に引上げられる。ここで、押上手段66は、スキージ12が右端から移動開始した時点でマスク111を上方に押上げ、磁力発生手段13で引上げられたマスク111がウエハWから離間した状態を維持する。したがって、コンタクト方式のスクリーン印刷装置6でも、印刷直後のマスク111の離版性が改善されるとともに一度離間したマスク111がウエハWの上面と再び接触することがない。なお、本実施態様の場合、枠状の支持部112は、スキージ12の移動方向と平行な部材が垂直面内で変形可能であることが望ましい。
【0061】
[第3態様]
本発明の第3態様について図8を参照し説明する。図8は、第3態様のスクリーン印刷装置7、8の概略構成を示す断面図であり、テーブル15及び水平移動手段14は省略している。なお、第1態様のスクリーン印刷装置1と同一の構成要素については図1と同一符号を付し、説明を省略する。
【0062】
図8(a)のスクリーン印刷装置7には、図において矢示するように磁力発生手段13を昇降させる昇降手段(引上力制御手段)77と磁力発生手段13の下方におけるマスク111の裏面115とウエハWの間の間隔tを計測する計測手段78とが配置されている。
【0063】
昇降手段77を設けた理由は次のとおりである。すなわち、支持部112に支持されているマスク111は各部位で剛性が異なるため同一の引上力でマスク111を引上げた場合には、図9(a)、(b)に示すように、支持部111から離れ剛性の低いマスク111の中央部では引上量t2が大きく、支持部111に近く剛性の高い端部では引上量t1が小さく、マスク111の部位ごとに離版性が異なることとなる。
【0064】
そこで昇降手段77を設けることにより、昇降手段77により磁力発生手段13の高さを調整し、磁力発生手段13のマスク111に及ぼす磁力を適量に制御することでマスク111の引上量をほぼ一定にすることが可能となる。なお、マスク111の部位による剛性の変化に再現性がある場合には昇降手段77を一定パターンで昇降させることにより、マスク111の引上量を一定にすることができるが、さらに計測手段により計測された引上量に基づいて上記昇降手段の位置を適宜制御する構成とすれば、より精度よく引上量をコントロールでき離版性を一定にすることができる。なお、図9においてはこの引上げの際に、磁力発生手段13とマスク111とが非接触となっているが、この制御は引上げの動作が接触または非接触であるかにかかわらず行うことが可能である。
【0065】
図8(b)のスクリーン印刷装置8には、磁力発生手段としての電磁石(磁力発生手段)83と該電磁石83の磁力を制御する磁力制御手段(引上力制御手段)89が設けられている。かかるスクリーン印刷装置8によれば、磁力制御手段89により電磁石83の生じる磁力を適宜コントロールすることにより、上記と同様にマスク111の引上量をほぼ一定にすることが可能となる。
【0066】
[第4態様]
本発明の第4態様について図11、12を参照して説明する。図11、12は、第4態様のスクリーン印刷装置7a、8aの概略構成を示す斜視図である。なお、図11、12において、第1態様のスクリーン印刷装置1と同一の構成要素については図1と同一符号を付して説明を省略するとともに、理解を容易にするため水平移動手段14の一部及びスキージ12は破線で示している。
【0067】
図11において符号73aはスクリーン印刷装置7aの磁力発生手段である。磁力発生手段73aは、水平移動手段14で駆動されるスキージ12の移動方向に対し該スキージ12の後方に位置するように水平移動手段14に取付けられており、スキージ12と所定の間隔を維持しつつスキージ12と同期して移動する。また磁力発生手段73aは、スキージ12の移動方向に対し直交する方向においては印刷領域114を包含可能な大きさに設けられている。この磁力発生手段73aは複数の磁力発生部731aで構成されており、各磁力発生部731aは、下記昇降手段(引上力制御手段)77aを介して一列に水平移動手段14に取付けられている。なお、磁力発生部731aは、上記第1態様の磁力発生手段13の構成と同様に隣接する磁極が相異なるように配設されている。
【0068】
図12において符号83aはスクリーン印刷装置8aの磁力発生手段である複数の電磁石(磁力発生部)であり、上記永久磁石73aと同様に設けられている。また、各電磁石83aには不図示の磁力制御手段(引上力制御手段)が接続されており、電磁石83aごとに磁力を制御可能な構成となっている。
【0069】
図11、12で示した第4態様のスクリーン印刷装置7a、8aによれば、スキージ12の移動方向に直交する方向においても昇降手段77aや磁力制御手段により、上記第3態様のスクリーン印刷装置7,8と同様に、マスク111の引上量を一定に調整することができ、マスク111の離版性を一定に保つことが可能となる。また、このスクリーン印刷装置7a、8aにおいても、磁力発生手段73a、83aとマスク111とを接触あるいは非接触とさせた状態で、マスク111を引上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1態様のスクリーン印刷装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1のスクリーン印刷装置で対象とするウエハの斜視図である。
【図3】図1のスクリーン印刷装置の拡大断面図、平面図である。
【図4】図1のスクリーン印刷装置の磁力発生手段の態様を示す断面図である。
【図5】図1のスクリーン印刷装置の動作を説明する図である。
【図6】図1のスクリーン印刷装置の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の第2態様のスクリーン印刷装置の概略構成を示す断面図である。
【図8】本発明の第3態様のスクリーン印刷装置の概略構成を示す断面図である。
【図9】図1のマスクが磁力発生手段で変形する状態を説明する図である。
【図10】従来のスクリーン印刷装置の動作を説明する図である。
【図11】本発明の第4態様のスクリーン印刷装置の概略構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の第4態様のスクリーン印刷装置の概略構成を示す斜視図である。
【図13】図1のスクリーン印刷装置の磁力発生手段の詳細を説明する図である。
【符号の説明】
【0071】
1(2,3):第1態様のスクリーン印刷装置
11:印刷手段
111:マスク
112:支持部
113:開口部
114:印刷領域
115:裏面
12:スキージ
13(13’):永久磁石
14:水平移動手段
15:テーブル
22:回転塗布部
32:噴射部
5(6):第2態様のスクリーン印刷装置
53:永久磁石
66:押上手段
7(8):第3態様のスクリーン印刷装置
7a(8a):第4態様のスクリーン印刷装置
77:昇降手段
78:計測手段
83:電磁石
89:磁力制御手段
9:従来のスクリーン印刷装置
911:マスク
912:枠部
913:開口部
G:スナップオフ
W:ウエハ
p:平板状電極
f:フラックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体の一面に所定のパターンで印刷材料を印刷するスクリーン印刷装置において、
前記パターンに対応する開口部、前記開口部を含み前記印刷材料が供給される印刷領域及び前記被印刷体の一面に対し所定の位置関係にて位置合わせされる一面とを有する弾性及び軟磁性を具備した印刷部材と該印刷部材を支持する支持部とを備えた印刷手段と、
前記被印刷体に位置合わせされた前記印刷部材の他面側から前記印刷領域を加圧しつつ前記印刷材料を該印刷領域に供給するとともに前記印刷部材の上方を少なくとも一方向に移動可能に配設された供給手段と、
前記供給手段の移動方向に対し前記供給手段の後方に前記印刷領域を含むように配設され前記供給手段と同期して移動するとともに前記印刷部材を引上げる磁力発生手段と、
を有し、前記磁力発生手段は前記印刷部材と相対する一面に複数の磁区を有するとともに隣合う磁区の磁極は相異なることを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記隣合う磁区は接触した状態で配設されていることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
前記磁力発生手段の他面の側には該他面を包含可能な軟磁性片が配設されていることを特徴とする請求項2に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
前記隣合う磁区は接触しない状態で配設されており、前記磁力発生手段の一面に対する他面の磁区は磁気的に結合されていることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
前記磁区は、前記供給手段の移動方向に対し特定の方向に並設されていることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】
前記磁区が永久磁石からなることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項7】
前記印刷部材が前記磁力発生手段によって引上げられる距離である引上量が、前記供給手段の移動方向と直角な方向において略均一となるべく、前記複数の磁区の磁力が制御されていることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項8】
前記供給手段は、一端が前記印刷部材の他面に当接可能に配設されたスキージであることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項9】
前記被印刷体は電子部品であり、前記印刷材料は少なくともフラックス成分を含むことを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項10】
前記印刷部材の一面は、前記被印刷体の一面に対し所定の間隙で位置合わせされていることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項11】
被印刷体の一面に所定のパターンで印刷材料を印刷するスクリーン印刷装置において、
前記パターンに対応する開口部、前記開口部を含み前記印刷材料が供給される印刷領域及び前記被印刷体の一面に対し所定の位置関係にて位置合わせされる一面とを有する弾性及び軟磁性を具備した印刷部材と該印刷部材を支持する支持部とを備えた印刷手段と、
前記被印刷体に位置合わせされた前記印刷部材の他面側から前記印刷領域を加圧しつつ前記印刷材料を該印刷領域に供給するとともに前記印刷部材の上方を少なくとも一方向に移動可能に配設された供給手段と、
前記供給手段の移動方向に対し前記供給手段の後方に前記印刷領域を含むように配設され前記供給手段と同期して移動するとともに非接触で前記印刷部材を引上げる磁力発生手段と、
を有し、前記磁力発生手段は前記印刷部材と相対する一面に複数の磁区を有するとともに隣合う磁区の磁極は相異なることを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項12】
前記隣合う磁区は接触した状態で配設されていることを特徴とする請求項11に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項13】
前記磁力発生手段の他面の側には該他面を包含可能な軟磁性片が配設されていることを特徴とする請求項12に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項14】
前記隣合う磁区は接触しない状態で配設されており、前記磁力発生手段の一面に対する他面の磁区は磁気的に結合されていることを特徴とする請求項11に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項15】

前記磁区は、前記供給手段の移動方向に対し特定の方向に並設されていることを特徴とする請求項11に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項16】
前記磁区が永久磁石からなることを特徴とする請求項11に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項17】
前記印刷部材が前記磁力発生手段によって引上げられる距離である引上量が、前記供給手段の移動方向と直角な方向において略均一となるべく、前記複数の磁区の磁力が制御されていることを特徴とする請求項11に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項18】
前記供給手段は、一端が前記印刷部材の他面に当接可能に配設されたスキージであることを特徴とする請求項11に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項19】
前記被印刷体は電子部品であり、前記印刷材料は少なくともフラックス成分を含むことを特徴とする請求項11に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項20】
前記印刷部材の一面は、前記被印刷体の一面に対し所定の間隙で位置合わせされていることを特徴とする請求項11に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項21】
被印刷体の一面に所定のパターンで印刷材料を印刷するスクリーン印刷方法において、
前記パターンに対応する開口部を有した弾性のある印刷部材の一面を前記被印刷体の一面と所定の位置関係となるように位置合わせし、
前記開口部を含み前記印刷材料が供給される前記印刷部材の印刷領域を前記印刷部材の他面側から加圧するとともに、供給手段を前記印刷部材の一端から他端へ移動させて前記印刷材料を前記印刷領域に供給し、
前記印刷領域に前記印刷材料が供給された直後に、前記印刷部材を、前記供給手段の移動方向と直角な方向において略均一となる引上量で、前記供給手段の移動と同期して引上げることを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項22】
複数の磁区による磁力によって前記印刷部材を引上げることを特徴とする請求項21に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項23】
前記供給手段の一端から他端への移動に際して、前記印刷部材の引上量が略一定となるべく制御することを特徴とする請求項21に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項24】
前記供給手段の一端から他端への移動に際して、前記印刷部材の引上量が略一定となるべく制御することを特徴とする請求項22に記載のスクリーン印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−137046(P2007−137046A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45712(P2006−45712)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】