説明

スクリーン印刷装置及び被印刷物の搬送・剥離方法

【課題】被印刷シートに印刷材料を印刷し、印刷材料の印刷された被印刷シートをスクリーン版から剥離する工程を、短時間で行えるようにする。
【解決手段】移動機構15によりスライド移動可能に設けられた版離れユニット10に被印刷シート2を支持する支持体を備え、スキージ5により印刷材料の印刷された被印刷シート2をスクリーン版4から剥離するに際し、スキージ5が被印刷シート2の搬送方向に摺動されてゆくとき、スキージ5の移動に追従させ、印刷ステージ3と共に前記支持体を同期させながら移動させることでスクリーン版4から印刷材料の転写された被印刷シート2を剥離する。これにより、印刷材料をスクリーン版4に転写する印刷工程と、印刷材料の転写された被印刷シートをスクリーン版4から剥離する剥離工程とを並行して行うことができるので、生産効率を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン版から印刷材料の印刷された被印刷物を剥離するスクリーン印刷装置及び被印刷物の搬送・剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルムや基板等に印刷材料たる導電パターンを転写する際にはスクリーン印刷が一般的に行なわれており、こうしたスクリーン印刷には、高精度に印刷を行なうことが可能なオンコンタクト式があり、特許文献1には、被印刷物たるフレキシブル基板(後述する本願の被印刷シートに相当)とスクリーン版とを密着させた状態で印刷材料を前記フレキシブル基板に転写した後、印刷材料の転写されたフレキシブル基板をスクリーン版から剥離するスクリーン印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−62233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1においては、その図2(c)に示すように、支持体を水平方向に移動されることに伴い、スクリーン版から被印刷物たるフレキシブル基板を剥離することは可能なものの、支持部材(符合4)の移動に伴いフレキシブル基板の剥離される、いわゆる版離れ角度が変化してしまうため、剥離されたフレキシブル基板の品質を一定に保つことができず好適とは言えない。また、特許文献1の図3には、支持部材(符合4)とテンションローラとを同時に移動させることでフレキシブル基板とスクリーン版との角度θを一定の角度に保持した状態で、スクリーン版からフレキシブル基板を剥離する点が開示されているが、図3においては、テンションローラが支持体と共に移動されるのに伴って、テンションローラに対しフレキシブル基板の印刷材料の転写された上面が接触されるため、その接触に伴い剥離されたフレキシブル基板の品質に悪影響を与えてしまう虞がある。
【0005】
また、特許文献1等の従来のスクリーン印刷装置においては、フレキシブル基板に印刷材料を転写する印刷工程、スクリーン版から印刷材料の転写されたフレキシブル基板を剥離する剥離工程、印刷材料を転写する印刷領域へ長尺上のフレキシブル基板の所定部位を搬送して移動させたり、転写の終えたフレキシブル基板の所定部位を印刷領域から移動させる搬送工程等、各種工程が行われるわけであるが、こうした一連の製造工程を如何に短時間で効率的に行えるようにして生産効率の向上を図れるかが、従来から重要な課題とされている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被印刷物の製造効率を向上させ、印刷材料の印刷された被印刷物たる被印刷シートをスクリーン版から剥離したとしても、印刷材料の印刷された被印刷シートの品質を高精度で一定に保つことができるスクリーン印刷装置及び被印刷物の搬送・剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係るスクリーン印刷装置は、
第1の回転ローラによって第2の回転ローラから巻き出された印刷ステージ上の印刷領域に配置された被印刷シートに対しスクリーン版を密着させた状態で、スキージを被印刷シートの搬送方向に摺動させながら前記被印刷シートに印刷材料を転写させ、前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートを剥離するスクリーン印刷装置であって、
前記搬送される被印刷シートを支持する支持体と、
前記被印刷シートの搬送方向と同じ方向へ、前記印刷ステージと共に前記支持体をスライド移動させる移動機構とを備え、
前記印刷領域に搬送されてくる被印刷シートが撓むことがないよう前記第2の回転ローラにより張力を与えながら、さらに前記支持体で前記被印刷シートを吸引した状態で、前記被印刷シートに印刷材料を転写させるために前記スキージが前記被印刷シートの搬送方向に摺動されてゆくとき、
前記スキージの移動に追従して該スキージの移動方向に前記印刷ステージと共に前記支持体を同期させながら移動させ、前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートを剥離する前記移動機構を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項1のスクリーン印刷装置の発明によれば、被印刷シートに対しスクリーン版を密着させた状態で、スキージを被印刷シートの搬送方向に摺動させながら被印刷シートに印刷材料を転写させているときに、印刷材料の転写された被印刷シートをスクリーン版から剥離することができる。
【0009】
請求項2に係るスクリーン印刷装置は、
前記印刷ステージ上には、前記スクリーン版に密着された被印刷シートに向かってエアーを送風するエアー放出手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2のスクリーン印刷装置の発明によれば、被印刷シートに対しスクリーン版を密着させた状態で、スキージを被印刷シートの搬送方向に摺動させながら被印刷シートに印刷材料を転写させているときに、エアー放出手段により被印刷シートに向かってエアーを送風することができるので、被印刷シートへの印刷材料の転写時及び剥離時に、エアーの送風力でスクリーン版側へ被印刷シートを押し上げて、被印刷シートが位置ずれしないよう保持を安定させることができる。しかも、被印刷シートへの転写時等において、被印刷シートが印刷ステージに摺動して傷や汚れが付着してしまうことを防止することができる。
【0011】
請求項3に係るスクリーン印刷装置は、請求項1又は2において、
前記支持体として、前記被印刷シートが面接触される回転自在な吸着ローラを備え、
該吸着ローラは前記面接触された被印刷シートを吸引しながら回転するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項3のスクリーン印刷装置の発明によれば、スクリーン版から印刷材料の転写された被印刷シートを剥離するに際し、移動機構により吸着ローラを被印刷シートの搬送方向にスライド移動させながら、該スライド移動に従い撓もうとする被印刷シートを吸着ローラで吸着しながら回転させ、吸着ローラで巻き取られてゆく被印刷シートを第2の回転ローラによりさらに巻き取り、被印刷シートに張力を与えることができるから、被印刷シートが位置ずれしないよう確実に保持させた状態で、被印刷シートに印刷材料を転写させているときに、印刷材料の転写された被印刷シートをスクリーン版から剥離することができる。
【0013】
請求項4に係るスクリーン印刷装置は、
第1の回転ローラによって第2の回転ローラから巻き出された被印刷シートに対しスクリーン版を密着させた状態で印刷材料を転写させ、前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートを搬送しながら剥離するスクリーン印刷装置であって、
前記搬送される被印刷シートを支持する支持体を備え、
前記印刷領域に搬送されてくる被印刷シートが撓むことがないよう前記第2の回転ローラにより張力を与えながら、さらに前記支持体で前記被印刷シートを吸引した状態で、該被印刷シートの搬送される前進方向と同じ方向へ前記支持体を構成した版離れユニットを移動機構によりスライド移動することにより、前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートの部位を剥離するようにし、
前記被印刷シートに張力を与える第2の回転ローラが前記剥離を終えた被印刷シートの部位に接触されない位置に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4のスクリーン印刷装置の発明によれば、印刷材料の転写された被印刷シートがスクリーン版から剥離された後、被印刷シートに張力を与えている第2の回転ローラが、剥離を終えた被印刷シートの部位に接触されてしまうことを回避することができる。
【0015】
請求項5に係るスクリーン印刷装置は、請求項4において、
前記版離れユニットに構成される前記支持体として、前記被印刷シートが面接触される回転自在な吸着ローラを備え、
前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートを剥離するに際し、
前記版離れユニットを前記前進方向にスライド移動させながら、該スライド移動に従い撓もうとする前記被印刷シートを前記吸着ローラで吸着させながら前記第2の回転ローラにより巻き取り該被印刷シートに張力を与え、
前記印刷材料の転写された被印刷シートを前記吸着ローラを介し前記スクリーン版から一定角度で剥離することを特徴とする。
【0016】
請求項5のスクリーン印刷装置の発明によれば、請求項4において、被印刷シートを吸着しながら支持する支持体として回転自在な吸着ローラを用いるので、被印刷シートが搬送されるのに伴い、被印刷シートを支持している吸着ローラが回転されることで、吸着ローラで案内される被印刷シートの表面に傷などが付かないよう防止できると共に、スクリーン版から印刷材料の転写された被印刷シートを一定角度で剥離することが可能なので、剥離を終えた印刷材料の転写された被印刷シートの部位に品質むらが生じぬよう抑止することができる。しかも、被印刷シートを一定角度で剥離する際、吸着ローラで被印刷シートを吸着することができるので、スクリーン版から剥離された部位を、剥離の直後等に位置ずれしないよう安定させることができる。
【0017】
請求項6に係るスクリーン印刷装置は、請求項4又は5において、
前記印刷領域よりも前進方向側に前記被印刷シートを巻き取ることで前進方向に搬送する前記第1の回転ローラを備えると共に、前記印刷領域よりも後退方向側に前記第1の回転ローラにより巻き取られた前記被印刷シートを巻き取り後退させることができる前記第2の回転ローラを備え、
前記被印刷シートに張力を与えるに際し、
該被印刷シートを前進方向に搬送する際には前記第1の回転ローラの回転により前記被印刷シートを巻き取りながら該被印刷シートに張力を与える一方で、
該被印刷シートを前記前進方向とは逆の後退方向に巻き取る際には前記第2の回転ローラの回転により前記被印刷シートを巻き取りながら該被印刷シートに張力を与えるように構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項6のスクリーン印刷装置の発明によれば、請求項4又は5において、第1の回転ローラの巻き取りにより被印刷シートを前進方向に搬送するときには第1の回転ローラで、第2の回転ローラの巻き取りにより被印刷シートを後退方向に巻き取るときには第2の回転ローラで被印刷シートに張力を与えることができるので、前進・後退搬送の何れのときであっても、被印刷シートの撓みを防止することができる。
【0019】
請求項7の被印刷物の搬送・剥離方法は、
第2の回転ローラに巻き取られた被印刷シートを第1の回転ローラにより前進方向に搬送することで印刷領域へ搬送し、該印刷領域に搬送されてきた被印刷シートに対しスクリーン版を密着させ、前記被印刷シートに印刷材料を転写する印刷工程を行い、
前記第2の回転ローラにより前記前進方向とは逆の後退方向に前記被印刷シートを巻き取り該被印刷シートが撓まないよう張力を与えた状態で、
前記印刷領域よりも後退方向側に配置された前記被印刷シートを支持しながら吸着する吸着ローラを前記印刷領域よりも前進方向にスライド移動させ、該スライド移動に従い前記スクリーン版から前記被印刷シートを一定角度で剥離する剥離工程を行い、
該剥離工程に伴い前記第2の回転ローラにより巻き取られてゆく被印刷シートのうちその印刷材料の転写された部位を、前記第1の回転ローラにより前記印刷領域よりも前進方向側の所定位置に前進搬送させる搬送工程を行った後、
前記吸着ローラを前記印刷領域よりも後退方向側にスライド移動させ、該吸着ローラを前記剥離工程で前記前進方向にスライド移動される前の元の位置に戻すことを特徴とする。
【0020】
請求項7の被印刷物の搬送・剥離方法の発明によれば、第2の回転ローラで被印刷シートを巻き取り張力を与えながら、被印刷シートを吸着している吸着ローラを印刷領域よりも前進方向にスライド移動させることで、このスライド移動に従ってスクリーン版から印刷材料の印刷された被印刷シートを一定角度で徐々に剥離することができる。
【0021】
請求項8の被印刷物の搬送・剥離方法は、請求項7において、
前記第1の回転ローラによる前記被印刷シートの前進方向側に搬送されるその寸法の長さを、前記印刷材料の転写された印刷領域の寸法と同じ若しくはそれ以上の所定寸法で前記搬送工程毎に行うことにより、前記被印刷シートに前記印刷材料を繰り返し転写できるようにすることを特徴とする。
【0022】
請求項8の被印刷物の搬送・剥離方法の発明によれば、請求項7において、印刷材料の転写された印刷領域の寸法と同じ若しくはそれ以上の所定寸法で搬送工程毎に被印刷シートが前進方向に繰り返し搬送されてゆくので、印刷領域に搬送されてきた長尺状の被印刷シートに対し印刷材料を継続的に印刷して剥離してゆくことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のスクリーン印刷装置によれば、第1の回転ローラによって第2の回転ローラから巻き出された印刷ステージ上の印刷領域に配置された被印刷シートに対しスクリーン版を密着させた状態で、スキージを被印刷シートの搬送方向に摺動させながら前記被印刷シートに印刷材料を転写させ、前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートを剥離するスクリーン印刷装置であって、前記搬送される被印刷シートを支持する支持体と、前記被印刷シートの搬送方向と同じ方向へ、前記印刷ステージと共に前記支持体をスライド移動させる移動機構とを備え、前記印刷領域に搬送されてくる被印刷シートが撓むことがないよう前記第2の回転ローラにより張力を与えながら、さらに前記支持体で前記被印刷シートを吸引した状態で、前記被印刷シートに印刷材料を転写させるために前記スキージが前記被印刷シートの搬送方向に摺動されてゆくとき、前記スキージの移動に追従して該スキージの移動方向に前記印刷ステージと共に前記支持体を同期して移動させ、前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートを剥離する前記移動機構を備えている。これにより、被印刷シートに対しスクリーン版を密着させた状態で、スキージを被印刷シートの搬送方向に摺動させながら被印刷シートに印刷材料を転写させているときに、印刷材料の転写された被印刷シートをスクリーン版から剥離することができる。よって、被印刷シートに印刷材料を転写(印刷)する印刷工程と、印刷材料の転写された被印刷シートをスクリーン版から剥離する剥離工程とを並行して行うことができるので製造効率を向上することができる。
【0024】
さらに、前記印刷ステージ上には、前記スクリーン版に密着された被印刷シートに向かってエアーを送風するエアー放出手段を備えることから、被印刷シートに対しスクリーン版を密着させた状態で、スキージを被印刷シートの搬送方向に摺動させながら被印刷シートに印刷材料を転写させているときに、エアー放出手段により被印刷シートに向かってエアーを送風することができるので、被印刷シートへの印刷材料の転写時に、エアーの送風力でスクリーン版側へ被印刷シートを押し上げて、被印刷シートが位置ずれしないよう保持を安定させることができる。よって、印刷工程、剥離工程の行われる被印刷シートの品質を高精度で安定的に一定に保つことができる。
【0025】
さらに、前記支持体として、前記被印刷シートが面接触される回転自在な吸着ローラを備え、該吸着ローラは前記面接触された被印刷シートを吸引しながら回転するものであることから、スクリーン版から印刷材料の転写された被印刷シートを剥離するに際し、移動機構により吸着ローラを被印刷シートの搬送方向にスライド移動させながら、該スライド移動に従い撓もうとする被印刷シートを吸着ローラで吸着しながら回転させ、吸着ローラで巻き取られてゆく被印刷シートを第2の回転ローラによりさらに巻き取り、被印刷シートに張力を与えることができるから、被印刷シートが位置ずれしないよう確実に保持させた状態で、被印刷シートに印刷材料を転写させているときに、印刷材料の転写された被印刷シートをスクリーン版から剥離することができる。よって、印刷工程、剥離工程の行われる被印刷シートの品質をより一層高めることができる。
【0026】
また、第1の回転ローラによって第2の回転ローラから巻き出された被印刷シートに対しスクリーン版を密着させた状態で印刷材料を転写させ、前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートを搬送しながら剥離するスクリーン印刷装置であって、前記搬送される被印刷シートを支持する支持体を備え、前記印刷領域に搬送されてくる被印刷シートが撓むことがないよう前記第2の回転ローラにより張力を与えながら、さらに前記支持体で前記被印刷シートを吸引した状態で、該被印刷シートの搬送される前進方向と同じ方向へ前記支持体を構成した版離れユニットを移動機構によりスライド移動することにより、前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートの部位を剥離するようにし、前記被印刷シートに張力を与える第2の回転ローラが前記剥離を終えた被印刷シートの部位に接触されない位置に設けたものであり、被印刷シートに張力を与えている第2の回転ローラが、剥離を終えた被印刷シートに接触されてしまうことを回避することができるので、スクリーン版から印刷材料の転写された被印刷シートを剥離する際に、従来のように、被印刷シート等に張力を与えるテンションローラ等の手段に、印刷材料の転写された被印刷シートが接触されてしまい、印刷材料の印刷された被印刷シートの品質が劣化してしまうことを防止することができる。
【0027】
さらに、被印刷シートを支持する支持体として、回転自在な吸着ローラを用いるので、被印刷シートが搬送されるのに伴い、被印刷シートを支持している吸着ローラが回転されることから、吸着ローラで案内される被印刷シートの表面に摺り傷などが付かないよう防止できると共に、スクリーン版から印刷材料の転写された被印刷シートを一定角度であって安定的に剥離することが可能なので、剥離を終えた印刷材料の転写された被印刷シートに品質むらが生じぬよう抑止することができる。よって、印刷材料の転写された被印刷シートの品質を安定的に維持することができる。
【0028】
さらに、被印刷シートに張力を与えるに際し、第1の回転ローラの巻き取りにより被印刷シートを前進方向に搬送するときには第1の回転ローラで、この前進方向とは逆の後退方向に巻き取るときには第2の回転ローラで被印刷シートに張力を与えるので、被印刷シートを搬送する何れのときにおいても、被印刷シートの撓みを防止することができるので、被印刷シートが撓むことにより印刷材料が転写された部分が品質劣化してしまうことを防止することができる。
【0029】
また、本発明の被印刷物の搬送・剥離方法によれば、第2の回転ローラに巻き取られた被印刷シートを第1の回転ローラにより前進方向に搬送することで印刷領域へ搬送し、該印刷領域に搬送されてきた被印刷シートに対しスクリーン版を密着させ、該スクリーン版により前記被印刷シートに印刷材料を転写する印刷工程を行い、前記第2の回転ローラにより前記前進方向とは逆の後退方向に前記被印刷シートを巻き取り該被印刷シートが撓まないよう張力を与えた状態で、前記印刷領域よりも後退方向側に配置された前記被印刷シートを支持しながら吸着する吸着ローラを前記印刷領域よりも前進方向にスライド移動させ、該スライド移動に従い前記スクリーン版から前記被印刷シートを一定角度で剥離する剥離工程を行い、該剥離工程に伴い前記第2の回転ローラにより巻き取られてゆく被印刷シートのうちその印刷材料の転写された部位を、前記第1の回転ローラにより前記印刷領域よりも前進方向側の所定位置に前進搬送させる搬送工程を行った後、前記吸着ローラを前記印刷領域よりも後退方向側にスライド移動させ、該吸着ローラを前記剥離工程で前記前進方向にスライド移動される前の元の位置に戻すことから、スクリーン版から被印刷シートの剥離されるその版離れ角度を一定に保ちながら剥離することで、剥離された印刷材料の印刷された被印刷シートの品質を均一化することができる。
【0030】
さらに、前記第1の回転ローラによる前記被印刷シートの前進方向側に搬送されるその寸法の長さを、前記印刷材料の転写された印刷領域の寸法と同じ若しくはそれ以上の所定寸法で前記搬送工程毎に行うことにより、前記被印刷シートに前記印刷材料を繰り返し転写できるようにしたので、被印刷シートに印刷材料を転写する印刷工程のほか、印刷工程後に行なわれる剥離工程を被印刷シートに対して継続的に行なうことが可能となり、ひいては生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1におけるオンコンタクト式のスクリーン印刷装置を示す概略構成図である。
【図2】実施例1におけるスクリーン印刷装置の動作を示す説明図である。
【図3】実施例2におけるオンコンタクト式のスクリーン印刷装置を示す概略構成図である。
【図4】実施例2におけるスクリーン印刷装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を実施するための形態としての実施例を以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施例において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【実施例1】
【0033】
図1のオンコンタクト式のスクリーン印刷装置1には、印刷領域Pに搬送されてきた被印刷シート2の下面に上部が当接されるようにして配置される印刷ステージ3、印刷ステージ3上に配置された印刷領域Pに有する被印刷シート2の上面にスクリーン版4を密着させ、その状態で印刷材料を被印刷シート2の上面に転写するスキージ5等を備えている。スキージ5は被印刷シート2の長手方向(図1に示す左右方向)に沿って移動可能に設けられており、高耐熱性樹脂からなる被印刷シート2へ印刷領域Pにて印刷材料(本実施例においては、導電性ペースト)を転写する。なお、前記印刷ステージ3には、スクリーン版4に密着されながらスキージ5で印刷材料の転写されている部位に向かってエアーを送風する図示しないエアー放出手段を備えており、印刷材料の転写された部位については、図1及び図2では把握し易いよう点線で表している。
【0034】
10は、印刷領域Pに有する印刷材料の転写された被印刷シート2をスクリーン版4から剥離する版離れユニットである。この版離れユニット10には、印刷領域Pに有する被印刷シート2を水平に支持する支持体たる吸着ローラ11と支持ローラ12、吸着ローラ11の下方に設けられると共にこの吸着ローラ11へ被印刷シート2を誘導する第1の反転ローラ13、第1の反転ローラ13へ被印刷シート2の搬送方向を反転させてから誘導する第2の反転ローラ14、移動機構15、前述した印刷ステージ3等を備えている。なお、前記ローラ11,12,13,14は円柱状をなしており図示しない版離れユニット10のフレームに回転自在に軸支されており、版離れユニット10は、スキージ5の前進・後退移動(図1に示す左右方向)に追従して移動されるよう、移動機構15により前後(図1に示す左右方向)に進退可能に設けられており、また、吸着ローラ11の外周面には被印刷シート2の表面を吸引する手段を備え、吸着ローラ11は被印刷シート2を吸引して吸着させながら回転できるようになっている。
【0035】
また、スクリーン印刷装置1には、第1のサーボモータ20により回転駆動される第1の回転ローラ21、第2のサーボモータ22により回転駆動される第2の回転ローラ23を備えており、これら第1,第2の回転ローラ21,23の回転駆動、前述した移動機構15による版離れユニット10の進退動作、エアー放出手段等は、制御手段25が動作制御を行なう。
【0036】
ここで、スクリーン印刷装置1の動作について図面に基づき説明する。先ず、オペレータが第2の回転ローラ23に巻き取られている被印刷シート2を引き出し、この被印刷シート2を、第2の反転ローラ14、第1の反転ローラ13、吸着ローラ11、支持ローラ12、第1の回転ローラ21の順序で所定位置にセットする(図1に示した状態)。
【0037】
次に、オペレータがスクリーン印刷装置1を稼動するための操作を行なうと、制御手段25が第1のサーボモータ20を介して第1の回転ローラ21を回転させることで、第1の回転ローラ21に被印刷シート2が巻き取られ、それにより被印刷シート2に張力を与えながら、被印刷シート2の所定部位を印刷領域Pまで前進搬送させ停止する(図2(a)に示した状態)。
【0038】
次に、図2(b)に示すように、印刷領域Pに有する被印刷シート2は、吸着ローラ11と支持ローラ12に支持された状態において、スクリーン版4の下部が被印刷シート2の上面に密着されると共に、印刷材料の転写されてゆく部位に向けてエアー放出手段からエアーを送風させることで保持され、その状態で、スキージ5が印刷領域Pの範囲で水平にスライド移動(図2に示す右側)されてゆき、印刷領域Pにおける被印刷シート2の上面に印刷材料が転写され(印刷工程)、且つ、版離れユニット10(より詳しくは版離れユニット10の吸着ローラ11)が、スキージ5の移動方向に追従して移動されてゆくと、それに従って、被印刷シート2の印刷材料の転写された部位は、スクリーン版4から吸着ローラ11を介してめくるようにして徐々に一定角度で剥離(版離れ)されてゆき、図2(c)に示すように、被印刷シート2の印刷材料の印刷された部位は、スクリーン版4から全て剥離される(剥離工程)。なお、印刷工程、剥離工程を行っているときには、吸着ローラ11により被印刷シート2が吸引されながら回転され、被印刷シート2に撓みが発生しないよう巻き取られ張力が与えられ、さらには、第2の回転ローラ23が回転されるなどして、第2の回転ローラ23と吸着ローラ11間の被印刷シート2に撓みが発生しないよう巻き取られ張力が与えられる。
【0039】
次に、印刷・剥離工程後において、制御手段25によりエアー放出手段の送風が停止され、第1のサーボモータ20の回転駆動により第1の回転ローラ21が回転され、図2(d)に示すように、スクリーン版4から剥離された、印刷材料の転写された被印刷シートの部位nは、印刷領域の寸法と同じ寸法で(若しくはそれ以上の所定寸法で)印刷領域Pよりも前進方向側に搬送され(搬送工程)、その後、吸着ローラ11等を構成する版離れユニット10やスキージ5が元の位置に後退して戻される(図2(a)に示した状態)。そして、こうした一連の作動を1サイクルとして繰り返し行なうことによって、図1に示すように、n、n−1、n−2、n−3、n−4・・・の順で、スクリーン印刷装置1にセットされた長尺状の被印刷シート2に対し印刷材料を印刷し、その直後に印刷された部位をスクリーン版4から剥離した後、所定の排出先へと順次前進搬送することができる。
【0040】
なお、図2(c)等に示すように、被印刷シート2の印刷材料の転写される部位は被印刷シート2の上面であり、その一方で、ローラ11,13に接触される部位は、被印刷シート2の上面ではなく下面のみ接触されるように配設していることから、搬送工程等において、印刷材料の転写部位が直接ローラ11,13に接触されるなどして傷等が付いてしまうことを防止でき、また、剥離工程において、被印刷シート2が第2の回転ローラ23に巻き取られても、被印刷シート2に張力を与える手段である第2の回転ローラ23や第2の反転ローラ14については、被印刷シート2の印刷材料の転写された部位に接触されない位置になるよう配設されていることから、従来のように、被印刷シート2に張力を与える手段に印刷材料の印刷された印刷部位が直接接触されるなどしてその部位に傷等が付いてしまうことを確実に防止できる。また、被印刷シート2の印刷材料の転写された部位を剥離する際には、この剥離される部位の反対面(下面)が吸着ローラ11の表面に吸着されることから、スクリーン版4から剥離された部位を、剥離の直後等に位置ずれしないよう安定させることができ、また、版離れユニット10には、被印刷シート2を案内するためのローラ11,12,13,14が構成されユニット化されていることから、これら被印刷シート2を案内するためのローラの位置関係が崩れることなく、版離れユニット10のスライド移動による前述した剥離工程を行なうことができることから、印刷・剥離工程の際に、被印刷シート2のたわみやうねりを可及的に抑え、繰り返し行なわれる印刷・剥離工程のその精度向上と安定化を図ることが可能になる。なお、本明細書中における「めくる」とは、平らなものやまっすぐなものが略弓型のように曲がる状態を指すものとして定義する。
【0041】
以上のように、実施例1のスクリーン印刷装置1は、第1の回転ローラ21によって第2の回転ローラ23から巻き出された、印刷ステージ3上の印刷領域Pに配置された被印刷シート2に対し、スクリーン版4を密着させた状態で、スキージ5を被印刷シート2の搬送方向に摺動させながら被印刷シート2に印刷材料を転写させ、スクリーン版4から印刷材料の転写された被印刷シート2を剥離するスクリーン印刷装置1であって、搬送される被印刷シート2を支持する吸着ローラ11、支持ローラ12等の支持体と、被印刷シート2の搬送方向と同じ方向へ、印刷ステージ3と共に前記支持体をスライド移動させる移動機構15とを備え、印刷領域Pに搬送されてくる被印刷シート2が撓むことがないよう、吸着ローラ11、第2の回転ローラ23、エアー放出手段により張力を与えた状態で、被印刷シート2に印刷材料を転写させるためにスキージ5が被印刷シート2の搬送方向に摺動されてゆくとき、スキージ5の移動に追従して該スキージ5の移動方向に、印刷ステージ3と共に前記支持体を同期して移動させ、スクリーン版4から印刷材料の転写された被印刷シート2を剥離する移動機構15を備えている。これにより、被印刷シート2に対しスクリーン版4を密着させた状態で、スキージ5を被印刷シート2の搬送方向に摺動させながら、該被印刷シート2に印刷材料を転写させているときに、印刷材料の転写された被印刷シート2をスクリーン版4から剥離することができる。よって、被印刷シート2に印刷材料を転写(印刷)する印刷工程と、印刷材料の転写された被印刷シート2をスクリーン版4から剥離する剥離工程とを並行して行うことができるので製造効率を向上することができる。
【0042】
さらに、印刷ステージ3上には、スクリーン版4に密着された被印刷シート2に向かってエアーを送風するエアー放出手段を備えることから、被印刷シート2に対しスクリーン版4を密着させた状態で、スキージ5を被印刷シート2の搬送方向に摺動させながら、被印刷シート2に印刷材料を転写させているときに、このエアー放出手段により被印刷シート2に向かってエアーを送風することができるので、被印刷シート2への印刷材料の転写時及び剥離時に、エアーの送風力でスクリーン版側へ被印刷シート2を押し上げて宙に浮かせたような状態で、被印刷シート2が位置ずれしないよう保持を安定させることができる。しかも、被印刷シート2への印刷材料の転写時及び/又は剥離時において、被印刷シート2が印刷ステージ3に摺動して傷や汚れが付着してしまうことを防止することができる。よって、印刷工程、剥離工程の行われる被印刷シート2の品質を高精度で安定的に一定に保つことができる。
【実施例2】
【0043】
次に、実施例2について説明する。図3のオンコンタクト式のスクリーン印刷装置101には、印刷領域Pに搬送されてきた被印刷シート102の下面を吸着する印刷テーブル103、印刷テーブル103に吸着された印刷領域Pに有する被印刷シート102の上面にスクリーン版104を密着させ、その状態で印刷材料を被印刷シート102の上面に転写するスキージ105を備えている。スキージ105は被印刷シート102の長手方向(図3に示す左右方向)に沿って移動可能に設けられており、高耐熱性樹脂からなる被印刷シート102へ印刷領域Pにて印刷材料(本実施例においては、導電性ペースト)を転写する。なお、図3及び図4においては、印刷材料の転写された部位について把握し易いよう点線で表している。
【0044】
10は、印刷領域Pに有する印刷材料の転写された被印刷シート102をスクリーン版104から剥離する版離れユニットである。この版離れユニット110には、印刷領域Pに有する被印刷シート102を水平に支持する支持体たる吸着ローラ111と支持ローラ112、吸着ローラ111の下方に設けられると共にこの吸着ローラ111へ被印刷シート102を誘導する第1の反転ローラ113、第1の反転ローラ113へ被印刷シート102の搬送方向を反転させてから誘導する第2の反転ローラ114、移動機構115、前述した印刷テーブル103等を備えている。なお、前記ローラ11,12,13,14は円柱状をなしており図示しない版離れユニット110のフレームに回転自在に軸支されており、版離れユニット110は移動機構115により前後(図3に示す左右方向)に進退可能に設けられており、また、吸着ローラ111の外周面には被印刷シート102の表面を吸引する手段を備え、吸着ローラ11は被印刷シート2を吸引し吸着させながら回転できるようになっている。
【0045】
また、スクリーン印刷装置101には、第1のサーボモータ120により回転駆動される第1の回転ローラ121、第2のサーボモータ122により回転駆動される第2の回転ローラ123を備えており、これら第1,第2の回転ローラ21,23の回転駆動、前述した移動機構115による版離れユニット110の進退動作、及び印刷テーブル103の昇降動作等は、制御手段125が動作制御を行なう。
【0046】
ここで、スクリーン印刷装置101の動作について図面に基づき説明する。先ず、オペレータが第2の回転ローラ123に巻き取られている被印刷シート102を引き出し、この被印刷シート102を、第2の反転ローラ114、第1の反転ローラ113、吸着ローラ111、支持ローラ112、第1の回転ローラ121の順序で所定位置にセットする(図3に示した状態)。
【0047】
次に、オペレータがスクリーン印刷装置101を稼動するための操作を行なうと、制御手段125が第1のサーボモータ120を介して第1の回転ローラ121を回転させることで、第1の回転ローラ121に被印刷シート102が巻き取られ、それにより被印刷シート102に張力を与えながら、被印刷シート102の所定部位を印刷領域Pまで前進搬送させ停止する(図4(a)に示した状態)。
【0048】
次に、図4(b)に示すように、印刷領域Pに有する被印刷シート102は、上昇位置にある印刷テーブル103(2点鎖線で示した符号3)の上部に下面が吸引されることで動かぬよう保持され、その状態でスクリーン版104の下部が被印刷シート102の上面に密着され、スキージ105が印刷領域Pの範囲で水平にスライド移動されることで被印刷シート102の上面に印刷材料が転写される(印刷工程)。
【0049】
次に、制御手段125により印刷テーブル103の吸引力が解除され、印刷テーブル103が僅かに下降(より詳しくは1〜2mm程度下降)された後、図4(c)に示すように、吸着ローラ111は、その外周面に被印刷シート102の表面(印刷材料の転写されない下面側)が吸引されながら回転され回転され、被印刷シート102に撓みが発生しないよう巻き取られ張力が与えられ、さらには、第2の回転ローラ123が回転されるなどして、第2の回転ローラ123と吸着ローラ111間の被印刷シート102が撓まぬよう巻き取られ張力が与えられてゆきながら、且つ版離れユニット110が前進移動(図4に示す右方向)されてゆくと、それに従って、被印刷シート102の印刷材料の転写された部位は、スクリーン版104から吸着ローラ111を介してめくるようにして徐々に一定角度で剥離(版離れ)されてゆく。そして、図4(d)に示すように、版離れユニット(より詳しくは版離れユニット110の吸着ローラ111)10を印刷領域Pよりも前進方向にスライド移動させ終わると、吸着ローラ111表面の被印刷シート102を吸着するための吸引力が解除され、印刷領域Pに配置されていた被印刷シート102の印刷材料の印刷された部位は、スクリーン版104から全て剥離されることになる(剥離工程)。なお、図4(d)に示すように、被印刷シート102の印刷材料の転写される部位は被印刷シート102の上面であり、その一方で、ローラ11,13に接触される部位は、被印刷シート102の上面ではなく下面のみ接触されるように配設していることから、搬送工程等において、印刷材料の転写部位が直接ローラ11,13に接触されるなどして傷等が付いてしまうことを防止でき、また、剥離工程において、被印刷シート102が第2の回転ローラ123に巻き取られても、被印刷シート102に張力を与える手段である第2の回転ローラ123や第2の反転ローラ114については、被印刷シート102の印刷材料の転写された部位に接触されない位置になるよう配設されていることから、従来のように、被印刷シート102に張力を与える手段に印刷材料の印刷された印刷部位が直接接触されるなどしてその部位に傷等が付いてしまうことを確実に防止できる。また、被印刷シート102の印刷材料の転写された部位を剥離する際には、この剥離される部位の反対面(下面)が吸着ローラ111の表面に吸着されることから、スクリーン版104から剥離された部位を、剥離の直後等に位置ずれしないよう安定させることができ、また、版離れユニット110には、被印刷シート102を案内するためのローラ11,12,13,14が構成されユニット化されていることから、これら被印刷シート102を案内するためのローラの位置関係が崩れることなく、版離れユニット110のスライド移動による前述した剥離工程を行なうことができることから、剥離工程の際に、被印刷シート102のたわみやうねりを可及的に抑え、繰り返し行なわれる剥離工程のその精度向上と安定化を図ることが可能になる。なお、本明細書中における「めくる」とは、平らなものやまっすぐなものが略弓型のように曲がる状態を指すものとして定義する。
【0050】
続いて、前記剥離工程後において、第1のサーボモータ120の回転駆動により第1の回転ローラ121が回転され、図4(e)に示すように、スクリーン版104から剥離された印刷材料の転写された被印刷シートの部位nは、印刷領域の寸法と同じ寸法で(若しくはそれ以上の所定寸法で)印刷領域Pよりも前進方向側に搬送され(搬送工程)、その後、吸着ローラ111を構成する版離れユニット110やスキージ105が元の位置に後退して戻される(図4(a)に示した状態)。そして、こうした一連の作動を1サイクルとして繰り返し行なうことによって、図3に示すように、n、n−1、n−2、n−3、n−4・・・の順で、スクリーン印刷装置101にセットされた長尺状の被印刷シート102に対し印刷材料を印刷し、スクリーン版104から剥離した後所定の排出先へと順次前進搬送することができる。
【0051】
以上のように、実施例2のスクリーン印刷装置101は、搬送される被印刷シート102を印刷領域Pで水平に支持する支持体としての吸着ローラ111と支持ローラ112を備え、印刷領域P等へと搬送される被印刷シート102が撓むことがないように、吸着ローラ111で吸引しながら回転して被印刷シート102に張力を与えながら、さらに、第2の回転ローラ123による巻き取りにより被印刷シート102に張力を与えながら、被印刷シート102の搬送される前進方向と同じ方向へ前記吸着ローラ111等を構成した版離れユニット110を移動機構115により前進方向にスライド移動させるだけで、被印刷物としての印刷材料の転写される被印刷シート102をスクリーン版104から剥離することができ、しかも、被印刷シート102に張力を与える第2の回転ローラ123は、少なくとも剥離を終えた被印刷シート102の部位には接触されない位置に配設しているので、被印刷シート102に張力を与える第2の回転ローラ123に印刷材料の転写された被印刷シート102の部位が接触されてしまうことを回避できるから、印刷材料の印刷されている被印刷シート102の品質に影響を及ぼすような不具合を防止することができる。
【0052】
さらに、被印刷シート102を水平に支持する支持体として回転自在な吸着ローラ111を用い、これ以外のローラ12,13,14,21,23も回転自在に設けられているので、被印刷シート102が搬送されるのに伴い、この被印刷シート102のセットされたローラの各々は連動して回転されることから、ローラ11,12,13,14,21,23により誘導される被印刷シート102の表面に摺り傷などが付かないよう防止できると共に、スクリーン版104から印刷材料の転写された被印刷シート102を一定角度でめくる(反り返す)ようにして剥離することが可能なので、剥離を終えた印刷材料の転写された被印刷シート102の部位に品質むらが生じてしまうことを抑止することができる。よって、印刷材料の転写された被印刷シート102の品質を安定的に維持することができる。
【0053】
さらに、被印刷シート102に張力を与えるに際し、第1の回転ローラ121の巻き取りにより被印刷シート102を前進方向に搬送するときには第1の回転ローラ23で、第2の回転ローラ123の巻き取りにより被印刷シート102を後退方向に巻き取るときには第2の回転ローラ21で被印刷シート102に張力を与えるので、被印刷シート102を前進・後退搬送等する何れのときにおいても、被印刷シート102の撓みを防止することができ、被印刷シート102が撓むことにより印刷材料が転写された部分が品質劣化してしまうことを防止することができる。
【0054】
また、本発明の被印刷物の搬送・剥離方法によれば、第2の回転ローラ123に巻き取られている被印刷シート102を第1の回転ローラ121により前進方向に搬送することで印刷領域Pへ搬送し、印刷領域Pに搬送されてきた被印刷シート102に対しスクリーン版104を密着させ、スクリーン版104の密着された被印刷シート102に対してスキージ105を用いて印刷材料を転写する印刷工程を行い、第2の回転ローラ123により前進方向とは逆の後退方向に被印刷シート102を巻き取りこの被印刷シート102が撓まないよう張力を与えた状態で、印刷領域よりも後退方向側に配置された被印刷シート102を支持しながら吸着する吸着ローラ111を印刷領域Pよりも前進方向に回転させながらスライド移動させ、このスライド移動に従いスクリーン版104から被印刷シート102を一定角度でめくるように剥離する剥離工程を行い、この剥離工程に伴い第2の回転ローラ123により巻き取られてゆく被印刷シート102のうち、その印刷材料Pの転写された部位を、第1の回転ローラ121により印刷領域Pよりも前進方向側の所定位置に前進搬送させる搬送工程を行った後、吸着ローラ111を印刷領域Pよりも後退方向側にスライド移動させ、この吸着ローラ111を剥離工程で前進方向にスライド移動される前の元の位置に戻すことから、これらにより、スクリーン版104から被印刷シート102の剥離されるその版離れ角度を一定に保ちながら剥離することができ、版離れ角度が一定に保たれないことにより印刷材料の印刷された被印刷シート102の品質が不均一にならないよう防止することができる。
【0055】
さらに、第1の回転ローラ121による被印刷シート102の前進方向側に搬送されるその長さを、前記印刷材料の転写される印刷領域Pの寸法と同じ若しくはそれ以上の所定寸法で搬送工程毎に行うので、印刷材料を転写する印刷工程と印刷工程後に行なわれる剥離工程を長尺状の被印刷シート102に対して継続的に行なうことが可能になるから、ひいては生産性を向上することができる。
【0056】
以上、実施例1、2について説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく種々の変形実施が可能であり、例えば、印刷材料の転写される対象物としては、可撓性のあるフィルム状のものであれば何れでもよく、適宜選定してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 スクリーン印刷装置
2 被印刷シート
3 印刷ステージ
4 スクリーン版
5 スキージ
11 吸着ローラ(支持体)
12 支持ローラ(支持体)
15 移動機構
21 第1の回転ローラ
23 第2の回転ローラ
101 スクリーン印刷装置
102 被印刷シート
104 スクリーン版
110 版離れユニット
111 吸着ローラ(支持体)
115 移動機構
121 第1の回転ローラ
123 第2の回転ローラ
P 印刷領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転ローラによって第2の回転ローラから巻き出された印刷ステージ上の印刷領域に配置された被印刷シートに対しスクリーン版を密着させた状態で、スキージを被印刷シートの搬送方向に摺動させながら前記被印刷シートに印刷材料を転写させ、前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートを剥離するスクリーン印刷装置であって、
前記搬送される被印刷シートを支持する支持体と、
前記被印刷シートの搬送方向と同じ方向へ、前記印刷ステージと共に前記支持体をスライド移動させる移動機構とを備え、
前記印刷領域に搬送されてくる被印刷シートが撓むことがないよう前記第2の回転ローラにより張力を与えながら、さらに前記支持体で前記被印刷シートを吸引した状態で、前記被印刷シートに印刷材料を転写させるために前記スキージが前記被印刷シートの搬送方向に摺動されてゆくとき、
前記スキージの移動に追従して該スキージの移動方向に前記印刷ステージと共に前記支持体を同期させながら移動させ、前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートを剥離する前記移動機構を備えることを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記印刷ステージ上には、前記スクリーン版に密着された被印刷シートに向かってエアーを送風するエアー放出手段を備えることを特徴とする請求項1記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
前記支持体として、前記被印刷シートが面接触される回転自在な吸着ローラを備え、
該吸着ローラは前記面接触された被印刷シートを吸引しながら回転するものであることを特徴とする請求項1又は2記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
第1の回転ローラによって第2の回転ローラから巻き出された被印刷シートに対しスクリーン版を密着させた状態で印刷材料を転写させ、前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートを搬送しながら剥離するスクリーン印刷装置であって、
前記搬送される被印刷シートを支持する支持体を備え、
前記印刷領域に搬送されてくる被印刷シートが撓むことがないよう前記第2の回転ローラにより張力を与えながら、さらに前記支持体で前記被印刷シートを吸引した状態で、該被印刷シートの搬送される前進方向と同じ方向へ前記支持体を構成した版離れユニットを移動機構によりスライド移動することにより、前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートの部位を剥離するようにし、
前記被印刷シートに張力を与える第2の回転ローラが前記剥離を終えた被印刷シートの部位に接触されない位置に設けられていることを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項5】
前記版離れユニットに構成される前記支持体として、前記被印刷シートが面接触される回転自在な吸着ローラを備え、
前記スクリーン版から前記印刷材料の転写された被印刷シートを剥離するに際し、
前記版離れユニットを前記前進方向にスライド移動させながら、該スライド移動に従い撓もうとする前記被印刷シートを前記吸着ローラで吸着させながら前記第2の回転ローラにより巻き取り該被印刷シートに張力を与え、
前記印刷材料の転写された被印刷シートを前記吸着ローラを介し前記スクリーン版から一定角度で剥離することを特徴とする請求項4記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】
前記印刷領域よりも前進方向側に前記被印刷シートを巻き取ることで前進方向に搬送する前記第1の回転ローラを備えると共に、前記印刷領域よりも後退方向側に前記第1の回転ローラにより巻き取られた前記被印刷シートを巻き取り後退させることができる前記第2の回転ローラを備え、
前記被印刷シートに張力を与えるに際し、
該被印刷シートを前進方向に搬送する際には前記第1の回転ローラの回転により前記被印刷シートを巻き取りながら該被印刷シートに張力を与える一方で、
該被印刷シートを前記前進方向とは逆の後退方向に巻き取る際には前記第2の回転ローラの回転により前記被印刷シートを巻き取りながら該被印刷シートに張力を与えるように構成したことを特徴とする請求項4又は5記載のスクリーン印刷装置。
【請求項7】
第2の回転ローラに巻き取られた被印刷シートを第1の回転ローラにより前進方向に搬送することで印刷領域へ搬送し、該印刷領域に搬送されてきた被印刷シートに対しスクリーン版を密着させ、前記被印刷シートに印刷材料を転写する印刷工程を行い、
前記第2の回転ローラにより前記前進方向とは逆の後退方向に前記被印刷シートを巻き取り該被印刷シートが撓まないよう張力を与えた状態で、前記印刷領域よりも後退方向側に配置された前記被印刷シートを支持しながら吸着する吸着ローラを前記印刷領域よりも前進方向にスライド移動させ、該スライド移動に従い前記スクリーン版から前記被印刷シートを一定角度で剥離する剥離工程を行い、
該剥離工程に伴い前記第2の回転ローラにより巻き取られてゆく被印刷シートのうちその印刷材料の転写された部位を、前記第1の回転ローラにより前記印刷領域よりも前進方向側の所定位置に前進搬送させる搬送工程を行った後、
前記吸着ローラを前記印刷領域よりも後退方向側にスライド移動させ、該吸着ローラを前記剥離工程で前記前進方向にスライド移動される前の元の位置に戻すことを特徴とする被印刷物の搬送・剥離方法。
【請求項8】
前記第1の回転ローラによる前記被印刷シートの前進方向側に搬送されるその寸法の長さを、前記印刷材料の転写された印刷領域の寸法と同じ若しくはそれ以上の所定寸法で前記搬送工程毎に行うことにより、前記被印刷シートに前記印刷材料を繰り返し転写できるようにすることを特徴とする請求項7記載の被印刷物の搬送・剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−178078(P2011−178078A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45841(P2010−45841)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(501376590)株式会社ジェイシーエム (20)
【Fターム(参考)】