説明

スクロール判定装置及び方法

【課題】フレーム内の画像の全体スクロールを的確に判定することができるスクロール判定装置を提供する。
【解決手段】動きベクトル検出部12は、フレーム内の所定の検出単位毎に画像の動きベクトルMVを検出する。境界判定信号生成部345は、異なる検出単位間の動きベクトルMVを比較し、異なる検出単位間に動きベクトルMVの境界が存在するか否かを判定して動きベクトル境界判定信号MV_EDGEを生成する。境界判定信号集計部16は、動きベクトル境界判定信号MV_EDGEを集計して、1フレーム内で動きベクトルの境界が存在する程度を示す集計値EDGE_SUM_NRMを生成する。全体スクロール判定部17は、集計値EDGE_SUM_NRMと閾値とを比較して、画像が全体的にスクロールしているか否かを示す全体スクロール判定信号DSを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーム内の画像が全体的にスクロールしているか否かを的確に判定することができるスクロール判定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等に動画像を表示する際に、動画ぼやけを低減させるために、動き補償フレーム生成方法を用いてフレームレートを変換することが行われている。動き補償フレーム生成方法においては、画像の動きを検出して補償フレームを生成することから、動きの検出を誤った場合には補償フレーム内に誤った補償によって生成された領域を含むことになる。従って、画質を劣化させてしまう。そこで、動き補償フレーム生成方法を用いたフレームレート変換装置等の映像信号処理装置においては、画像の動きを的確に検出して動き補償品質を高めることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4122279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動き補償品質を高めるための一手法として、フレーム内の全体で画像がどのように動いているかを判定して、補償フレームを生成する際に判定結果を反映させることが考えられる。フレーム内の画像が全体的にほぼ一方向にスクロールするいわゆる全体スクロールしているか否かを判定することができれば、補償フレームを生成する際の動き補償品質を高めることができる。
【0005】
そこで、本発明は、フレーム内の画像の全体スクロールを的確に判定することができるスクロール判定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、映像信号におけるそれぞれのフレーム内の所定の検出単位毎に画像の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部(12)と、前記動きベクトル検出部で検出された動きベクトルの内、1フレーム内の異なる検出単位間の動きベクトルを比較することによって、前記異なる検出単位間に動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して動きベクトル境界判定信号を生成する境界判定信号生成部(345)と、前記境界判定信号生成部が生成した動きベクトル境界判定信号を集計して、1フレーム内で動きベクトルの境界が存在する程度を示す集計値を生成する境界判定信号集計部(16)と、前記集計値と所定の閾値とを比較することによって、画像が全体的にスクロールしているか否かを示す全体スクロール判定信号を生成する全体スクロール判定部(17)とを備えることを特徴とするスクロール判定装置を提供する。
【0007】
上記のスクロール判定装置において、前記境界判定信号生成部は、注目する検出単位で検出した動きベクトルと、前記注目する検出単位の左方,右方,上方,下方に位置する少なくとも1つの検出単位で検出した動きベクトルとを比較することによって、注目する検出単位のそれぞれに対して動きベクトル境界判定信号を生成することが好ましい。
【0008】
上記のスクロール判定装置において、前記境界判定信号生成部は、1フレーム内の異なる検出単位で検出された動きベクトルの水平成分を比較することによって、前記異なる検出単位間に水平方向の動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して水平動きベクトル境界判定信号を生成する水平動きベクトル境界判定部(13)と、1フレーム内の異なる検出単位で検出された動きベクトルの垂直成分を比較することによって、前記異なる検出単位間に垂直方向の動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して垂直動きベクトル境界判定信号を生成する垂直動きベクトル境界判定部(14)と、前記水平動きベクトル境界判定信号と前記垂直動きベクトル境界判定信号とを混合する境界判定信号混合部(15)とを備えることが好ましい。
【0009】
上記のスクロール判定装置において、前記境界判定信号混合部は、前記水平動きベクトル境界判定信号と前記垂直動きベクトル境界判定信号との少なくとも一方が、動きベクトルの境界が存在することを示す場合に、前記動きベクトル境界判定信号として、動きベクトルの境界が存在することを示す値を生成することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、映像信号におけるそれぞれのフレーム内の所定の検出単位毎に画像の動きベクトルを検出するステップと、検出された動きベクトルの内、1フレーム内の異なる検出単位間の動きベクトルを比較することによって、前記異なる検出単位間に動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して動きベクトル境界判定信号を生成するステップと、前記動きベクトル境界判定信号を集計して、1フレーム内で動きベクトルの境界が存在する程度を示す集計値を生成するステップと、前記集計値と所定の閾値とを比較することによって、画像が全体的にスクロールしているか否かを示す全体スクロール判定信号を生成するステップとを含むことを特徴とするスクロール判定方法を提供する。
【0011】
上記のスクロール判定方法において、前記動きベクトル境界判定信号を生成するステップは、注目する検出単位で検出した動きベクトルと、前記注目する検出単位の左方,右方,上方,下方の少なくとも1つの検出単位で検出した動きベクトルとを比較することによって、注目する検出単位のそれぞれに対して動きベクトル境界判定信号を生成することが好ましい。
【0012】
上記のスクロール判定方法において、前記動きベクトル境界判定信号を生成するステップは、1フレーム内の異なる検出単位で検出された動きベクトルの水平成分を比較することによって、前記異なる検出単位間に水平方向の動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して水平動きベクトル境界判定信号を生成するステップと、1フレーム内の異なる検出単位で検出された動きベクトルの垂直成分を比較することによって、前記異なる検出単位間に垂直方向の動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して垂直動きベクトル境界判定信号を生成するステップと、前記水平動きベクトル境界判定信号と前記垂直動きベクトル境界判定信号とを混合するステップとを含むことが好ましい。
【0013】
上記のスクロール判定方法において、前記混合するステップは、前記水平動きベクトル境界判定信号と前記垂直動きベクトル境界判定信号との少なくとも一方が、動きベクトルの境界が存在することを示す場合に、前記動きベクトル境界判定信号として、動きベクトルの境界が存在することを示す値を生成することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスクロール判定装置及び方法によれば、フレーム内の画像の全体スクロールを的確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態のスクロール判定装置を示すブロック図である。
【図2】図1における動きベクトル検出部12における動きベクトル検出動作を説明するための図である。
【図3】図1における水平動きベクトル境界判定部13及び垂直動きベクトル境界判定部14における境界判定動作を説明するための図である。
【図4】境界判定動作の他の例を示す図である。
【図5】図1における境界判定信号集計部16における集計動作を説明するための図である。
【図6】図1における境界判定信号集計部16における集計動作を示すフローチャートである。
【図7】図1における全体スクロール判定部17が全体スクロール判定信号DSを生成する際の特性の一例を示す特性図である。
【図8】図1における全体スクロール判定部17が全体スクロール判定信号DSを生成する際の特性の他の例を示す特性図である。
【図9】図1における水平動きベクトル境界判定部13が境界判別値MV_H_LEFTを生成する際の特性の一例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のスクロール判定装置及び方法の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1において、一実施形態のスクロール判定装置10は、フレームメモリ11,動きベクトル検出部12,水平動きベクトル境界判定部13,垂直動きベクトル境界判定部14,境界判定信号混合部15,境界判定信号集計部16,全体スクロール判定部17を備える。水平動きベクトル境界判定部13,垂直動きベクトル境界判定部14,境界判定信号混合部15は、境界判定信号生成部345を構成している。
【0017】
図1において、映像信号はフレームメモリ11及び動きベクトル検出部12に入力される。フレームメモリ11及び動きベクトル検出部12に入力されるフレームを現在フレームF0とする。フレームメモリ11は、現在フレームF0の映像信号を1フレーム期間遅延させて出力する。フレームメモリ11より出力される現在フレームF0に対して1フレーム過去のフレームを過去フレームF1とする。過去フレームF1の映像信号は、動きベクトル検出部12に入力される。
【0018】
動きベクトル検出部12は、現在フレームF0と過去フレームF1の映像信号を用いて、過去フレームF1上の検出単位毎の動きベクトルを検出する。ここで、図2を用いて動きベクトル検出部12による動きベクトルの検出動作について説明する。図2において、過去フレームF1内の所定の座標(x,y)に位置する注目画素Piに対する動きベクトルを検出するとする。動きベクトル検出部12は、現在フレームF0上の所定の座標(x,y)のx,yそれぞれに対して例えば±40画素の範囲を探索範囲とする。動きベクトル検出部12は、注目画素Piから探索範囲内の全ての画素に向かう複数の動きベクトル候補MVcの中から、最も相関の高い現在フレームF0内の画素Pjに向かう動きベクトルMVsを検出する。
【0019】
本実施形態においては、相関を判断する指標の一例として、2フレーム間の輝度の差分絶対値和(SAD:Sum of Absolute Differences)を用いる。図2に示すように、動きベクトル検出部12は、SAD値を、一例として、注目画素Piの周辺の水平7画素及び垂直7画素のブロックBiと画素Pjの周辺の水平7画素及び垂直7画素のブロックBj内の各画素を用いて、式(1)により計算する。式(1)において、(mvx_c,mvy_c)は図2の動きベクトル候補MVcに相当する動きベクトル候補、SAD(mvx_c,mvy_c)は動きベクトル候補(mvx_c,mvy_c)に対するSAD値、L0(x,y),L1(x,y)はそれぞれ現在フレームF0、過去フレームF1内の座標(x,y)での画素の輝度値である。
【0020】
【数1】

【0021】
式(1)で計算したSAD値が最小となる画素が最も相関が高い。動きベクトル検出部12は、複数の動きベクトル候補MVcの中からSAD値が最小となる画素Pjに向かう動きベクトルMVsを抽出して、抽出した動きベクトルMVsを動きベクトルMVとして出力する。
【0022】
動きベクトル検出部12における動きベクトルMVの検出単位、動きベクトルMVの探索範囲、相関の指標は上記の例に限定されるものではない。相関の指標としてSAD値を用いる場合、ブロックBi,Bjのサイズ及び形状は上記の例に限定されるものではない。動きベクトルMVの検出単位が画素単位ではなく、ブロック単位の場合は、注目単位としては注目画素Piではなく、注目ブロックとなる。また、動きベクトル検出部12は図2に示すように隣接する2フレーム内の画素ではなく、隣接していない2フレーム内の画素を用いて動きベクトルMVを検出してもよい。さらに、動きベクトルMVの検出精度を高めるために2フレームより多いフレーム内の画素を用いて動きベクトルMVを検出してもよい。動きベクトル検出部12における動きベクトルMVの検出方法は任意である。
【0023】
図1に戻り、動きベクトル検出部12より出力された動きベクトルMVは、水平動きベクトル境界判定部13及び垂直動きベクトル境界判定部14に入力される。水平動きベクトル境界判定部13は、動きベクトルMVに基づいて、水平方向の動きベクトルの境界を判定する。垂直動きベクトル境界判定部14は、動きベクトルMVに基づいて、垂直方向の動きベクトルの境界を判定する。
【0024】
図3を用いて、水平動きベクトル境界判定部13で行われる水平方向の動きベクトルMVの境界を判定する方法について説明する。図3において、注目画素Piで検出された動きベクトルMVをMV_REF、注目画素Piの左側に隣接する画素Paで検出された動きベクトルMVをMV_LEFT、注目画素Piの上側に隣接する画素Pbで検出された動きベクトルMVをMV_ABOVEとする。まず、水平動きベクトル境界判定部13は、式(2)を用いて、注目画素Piと左側の画素Paとの間における水平方向の動きベクトルの境界の有無を判定する。式(2)において、MV_REF_H,MV_LEFT_HはMV_REF,MV_LEFTの水平成分、TH_Hは所定の閾値である。
【0025】
|MV_REF_H-MV_LEFT_H| > TH_H …(2)
【0026】
水平動きベクトル境界判定部13は、式(2)を満たす場合には、注目画素Piと左側の画素Paとの境界判別値MV_H_LEFTを“1”とし、式(2)を満たさない場合には、境界判別値MV_H_LEFTを“0”とする。境界判別値MV_H_LEFTが“1”であれば、注目画素Piと左側の画素Paとの間には、動きベクトルMVの水平成分に境界が存在することを示す。即ち、注目画素Piにおける動きベクトルMVの水平成分は、左側の画素Paにおける動きベクトルMVの水平成分に対して変化していることを示す。なお、閾値TH_Hの値は、動きベクトルMVの探索範囲の大きさ等に応じて適宜設定する。
【0027】
次に、水平動きベクトル境界判定部13は、式(3)を用いて、注目画素Piと、注目画素Piの直上に位置する上側の画素Pbとの間における水平方向の動きベクトルの境界の有無を判定する。式(3)において、MV_ABOVE_HはMV_ABOVEの水平成分である。
【0028】
|MV_REF_H-MV_ABOVE_H| > TH_H …(3)
【0029】
水平動きベクトル境界判定部13は、式(3)を満たす場合には、注目画素Piと上側の画素Pbとの境界判別値MV_H_ABOVEを“1”とし、式(3)を満たさない場合には、境界判別値MV_H_ABOVEを“0”とする。境界判別値MV_H_ABOVEが“1”であれば、注目画素Piと上側の画素Pbとの間には、動きベクトルMVの水平成分に境界が存在することを示す。即ち、注目画素Piにおける動きベクトルMVの水平成分は、上側の画素Pbおける動きベクトルMVの水平成分に対して変化していることを示す。
【0030】
ここでは、水平動きベクトル境界判定部13は、式(2)を用いて、注目画素Piと左側の画素Paとの間における水平方向の動きベクトルの境界の有無を判定し、次に、式(3)を用いて、注目画素Piと上側の画素Pbとの間における水平方向の動きベクトルの境界の有無を判定すると説明したが、順番は逆でもよく、両者を同時に判定してもよい。本実施形態では式(2)と式(3)とで同じ値の閾値TH_Hを用いているが、式(2)と式(3)とで異なる閾値を用いてもよい。
【0031】
水平動きベクトル境界判定部13は、境界判別値MV_H_LEFTと境界判別値MV_H_ABOVEとのOR演算を行って、水平動きベクトル境界判定信号MV_H_EDGEとして出力する。
【0032】
図3を用いて、垂直動きベクトル境界判定部14で行われる垂直方向の動きベクトルMVの境界を判定する方法について説明する。図3において、注目画素Piで検出された動きベクトルMVの垂直成分をMV_REF_V、注目画素Piの左側に隣接する画素Paで検出された動きベクトルMVの垂直成分をMV_LEFT_V、注目画素Piの上側に隣接する画素Pbで検出された動きベクトルMVの垂直成分をMV_ABOVE_Vとする。垂直動きベクトル境界判定部14は、式(4)を用いて、注目画素Piと左側の画素Paとの間における垂直方向の動きベクトルの境界の有無を判定する。また、垂直動きベクトル境界判定部14は、式(5)を用いて、注目画素Piと上側の画素Pbとの間における垂直方向の動きベクトルの境界の有無を判定する。TH_Vは所定の閾値である。本実施形態では式(4)と式(5)とで同じ値の閾値TH_Vを用いているが、式(4)と式(5)とで異なる閾値を用いてもよい。
【0033】
|MV_REF_V-MV_LEFT_V| > TH_V …(4)
【0034】
|MV_REF_V-MV_ABOVE_V| > TH_V …(5)
【0035】
垂直動きベクトル境界判定部14は、式(4)を満たす場合には、注目画素Piと左側の画素Paとの境界判別値MV_V_LEFTを“1”とし、式(4)を満たさない場合には、境界判別値MV_V_LEFTを“0”とする。境界判別値MV_V_LEFTが“1”であれば、注目画素Piと左側の画素Paとの間には、動きベクトルMVの垂直成分に境界が存在することを示す。即ち、注目画素Piにおける動きベクトルMVの垂直成分は、左側の画素Paにおける動きベクトルMVの垂直成分に対して変化していることを示す。なお、閾値TH_Vの値は、動きベクトルMVの探索範囲の大きさ等に応じて適宜設定する。
【0036】
垂直動きベクトル境界判定部14は、式(5)を満たす場合には、注目画素Piと上側の画素Pbとの境界判別値MV_V_ABOVEを“1”とし、式(5)を満たさない場合には、境界判別値MV_V_ABOVEを“0”とする。境界判別値MV_V_ABOVEが“1”であれば、注目画素Piと上側の画素Pbとの間には、動きベクトルMVの垂直成分に境界が存在することを示す。即ち、注目画素Piにおける動きベクトルMVの垂直成分は、上側の画素Pbおける動きベクトルMVの垂直成分に対して変化していることを示す。
【0037】
垂直動きベクトル境界判定部14は、境界判別値MV_V_LEFTと境界判別値MV_V_ABOVEとのOR演算を行って、垂直動きベクトル境界判定信号MV_V_EDGEとして出力する。
【0038】
図3に示す例では、注目画素Piにおける動きベクトルMVと、左側の画素Paと上側の画素Pbにおける動きベクトルMVとを比較したが、これに限定されることはない。図4(A)に示すように、左側の画素Paの代わりに右側に隣接する画素Pcを用いてもよく、図4(B)に示すように、上側の画素Pb代わりに注目画素Piの直下に位置する下側の画素Pdを用いてもよい。図4(C)に示すように、右側の画素Pcと下側の画素Pdを用いてもよく、図4(D)に示すように、上下左右の画素Pa,Pb,Pc,Pdを用いてもよい。さらに、図4(E)に示すように、左側の画素Paのみを用いたり、図4(F)に示すように、上側の画素Pbのみを用いたりして、簡略化することもできる。但し、全体スクロールの判定精度を向上させるためには、左または右と上または下との双方を用いることが好ましい。
【0039】
また、必ずしも、注目画素Piにおける動きベクトルMVと、注目画素Piと隣接する画素の動きベクトルMVとを比較しなくてもよい。図4(G)に示すように、注目画素Piにおける動きベクトルMVと、左側の画素Paのさらに左側の画素Peにおける動きベクトルMVとを比較し、注目画素Piにおける動きベクトルMVと、上側の画素Pbのさらに上側の画素Pfにおける動きベクトルMVとを比較してもよい。即ち、注目画素Piと注目画素Piに対して左方に位置する画素との動きベクトルMVどうし、注目画素Piと注目画素Piに対して右方に位置する画素との動きベクトルMVどうし、注目画素Piと注目画素Piに対して上方に位置する画素との動きベクトルMVどうし、注目画素Piと注目画素Piに対して下方に位置する画素との動きベクトルMVどうしの少なくとも1つを比較すればよい。さらに言えば、注目画素Piと異なる画素(互いに異なる検出単位)の動きベクトルMVを比較すればよい。
【0040】
再び図1に戻り、境界判定信号混合部15には、水平動きベクトル境界判定信号MV_H_EDGEと垂直動きベクトル境界判定信号MV_V_EDGEとが入力される。境界判定信号混合部15は、水平動きベクトル境界判定信号MV_H_EDGEと垂直動きベクトル境界判定信号MV_V_EDGEとをOR演算することによって両信号を混合し、動きベクトル境界判定信号MV_EDGEとして出力する。以上のようにして、境界判定信号生成部345は、動きベクトル境界判定信号MV_EDGEを生成する。動きベクトル境界判定信号MV_EDGEは、境界判定信号集計部16に入力される。
【0041】
境界判定信号集計部16は、動きベクトル境界判定信号MV_EDGEを集計する。本実施形態においては、動きベクトルMVは1画素単位で検出されるので、動きベクトル境界判定信号MV_EDGEは、図5に示すように、1画素単位で順次出力されることになる。図5において、それぞれの矩形は画素を示し、矩形内の“1”または“0”は動きベクトル境界判定信号MV_EDGEが示す値である。境界判定信号集計部16は、図6のステップS1にて、1フレーム内の動きベクトル境界判定信号MV_EDGEをカウントする。即ち、注目画素Piに対して得られた動きベクトル境界判定信号MV_EDGEが“1”のときカウンタをインクリメントして、1フレーム内の動きベクトル境界判定信号MV_EDGEを集計して総数EDGE_SUMを求める。
【0042】
次に、境界判定信号集計部16は、ステップS2にて、総数EDGE_SUMを式(6)を用いて正規化して正規化集計値EDGE_SUM_NRMを出力する。式(6)において、TOTAL_NUMは総数EDGE_SUMの取り得る最大値を意味し、本実施形態では動きベクトル境界判定信号MV_EDGEが2値で表されているため、動きベクトル境界判定信号MV_EDGEの検出単位の1フレーム内における総数である。即ち、動きベクトル境界判定信号MV_EDGEは1画素単位で出力されるので、TOTAL_NUMの値は1フレーム内の総画素数となる。
【0043】
EDGE_SUM_NRM = EDGE_SUM×255/TOTAL_NUM …(6)
【0044】
1フレーム内の全ての画素に対して得られる動きベクトル境界判定信号MV_EDGEを集計してもよいが、1フレーム内の部分的な画素に対して得られる動きベクトル境界判定信号MV_EDGEを集計してもよい。画面の上下または左右端部では動きベクトルMVの検出精度はさほどよくない。そこで、1フレーム内の上下左右の端部を除く、中央部の所定の範囲で動きベクトル境界判定信号MV_EDGEを集計して総数EDGE_SUMを求めてもよい。総数EDGE_SUMを式(6)を用いて正規化して正規化集計値EDGE_SUM_NRMとすれば、正規化集計値EDGE_SUM_NRMは、動きベクトル境界判定信号MV_EDGEの集計範囲に関係なく、0〜255の値となる。
【0045】
図6のステップS2による正規化は必須ではないが、動きベクトル境界判定信号MV_EDGEの集計範囲を変更した場合でも正規化集計値EDGE_SUM_NRMは0〜255の値となるので、後段の全体スクロール判定部17における判定処理に影響を与えることがない。そこで、ステップS2を設けて総数EDGE_SUMを正規化することが好ましい。
【0046】
正規化集計値EDGE_SUM_NRMは、全体スクロール判定部17に入力される。全体スクロール判定部17は、正規化集計値EDGE_SUM_NRMと所定の閾値TH1とを比較することによって、フレーム内の画像が全体スクロールしているか否かを判定して、全体スクロール判定信号DSを出力する。図7を用いて、全体スクロール判定部107が出力する全体スクロール判定信号DSの特性について説明する。全体スクロール判定部17は、図7に示すように、正規化集計値EDGE_SUM_NRMが閾値TH1以下であれば全体スクロールしていると判定して、全体スクロール判定信号DSとして“1”を出力し、閾値TH1を越えれば、全体スクロールしていないと判定して、全体スクロール判定信号DSとして“0”を出力する。
【0047】
正規化集計値EDGE_SUM_NRMが閾値TH1以下であるということは、図5に示す動きベクトル境界判定信号MV_EDGEの“1”が少ないということである。動きベクトル境界判定信号MV_EDGEの“1”が少ないということは、動きベクトルMVの1フレーム内での変化が少ないということであり、フレーム内の画像が全体的にほぼ一方向にスクロールする全体スクロールであると判断することができる。
【0048】
図7に示す例は、全体スクロール判定信号DSを“1”と“0”の2値としたが、図8に示すように、閾値TH1,TH2,TH3と3つの閾値を設け、全体スクロール判定信号DSを、正規化集計値EDGE_SUM_NRMが閾値TH1以下のとき“3”、閾値TH1を超えて閾値TH2以下のとき“2”、閾値TH2を超えて閾値TH3以下のとき“1”、閾値TH3を越えれば“0”としてもよい。全体スクロール判定信号DSを0〜3の4値とした場合には、フレームレート変換装置等の映像信号処理装置において、補償フレームを生成する際の動作を全体スクロール判定信号DSの値に応じて細かく段階的に異ならせることが可能となる。
【0049】
以上の説明より分かるように、本実施形態のスクロール判定装置及び方法においては、まず、動きベクトル検出部12が、それぞれのフレーム内の所定の検出単位毎に画像の動きベクトルMVを検出する。境界判定信号生成部345が、1フレーム内の異なる検出単位で検出された動きベクトルMVを比較することによって、異なる検出単位間に動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して動きベクトル境界判定信号MV_EDGEを生成する。境界判定信号集計部16が、動きベクトル境界判定信号MV_EDGEを集計して、1フレーム内で動きベクトルの境界が存在する程度を示す集計値(EDGE_SUMまたはEDGE_SUM_NRM)を生成する。
【0050】
そして、全体スクロール判定部17が、集計値と所定の閾値(TH1またはTH1,TH2,TH3)とを比較することによって、画像が全体的にスクロールしているか否かを示す全体スクロール判定信号DSを生成する。従って、本実施形態のスクロール判定装置及び方法おいては、動きベクトルMVの比較、集計、閾値との比較という比較的簡単な処理を行うだけでよいので、小さな回路規模で実現することができる。しかも、全体スクロールか否かを的確に判定することが可能である。
【0051】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、水平動きベクトル境界判定部13及び垂直動きベクトル境界判定部14は、境界判別値を“1”と“0”の2値で判定するようにしたが、3値以上で判定するようにしてもよい。
【0052】
水平動きベクトル境界判定部13が境界判別値を3値以上で判定する例を、図9を用いて説明する。図9は水平動きベクトル境界判定部13が境界判別値MV_H_LEFTを生成する際の一例を示す特性図である。閾値TH_H1,TH_H2,TH_H3と3つの閾値を設け、境界判別値MV_H_LEFTを、|MV_REF_H-MV_LEFT_H|が閾値TH_H3より大きいとき“3”、閾値TH_H3以下かつ閾値TH_H2より大きいとき“2”、閾値TH_H2以下かつ閾値TH_H1より大きいとき“1”、閾値TH_H1以下のとき“0”とした4値で表している。境界判別値MV_H_LEFTは、値が大きいほど境界度合いが大きいことを示す。図9は境界判別値MV_H_LEFTを生成する特性を示しているが、水平動きベクトル境界判定部13または垂直動きベクトル境界判定部14は図9と同様の特性で境界判別値MV_H_ABOVE,MV_V_LEFT,MV_V_ABOVEを生成する。
【0053】
水平動きベクトル境界判定部13は、求めた境界判別値MV_H_LEFTと境界判別値MV_H_ABOVEとを比較し、値の大きいもの、即ち、境界度合いの大きい値を選択して水平動きベクトル境界判定信号MV_H_EDGEとして出力する。境界判別値を3値以上で判定する場合には、OR演算は用いない。垂直動きベクトル境界判定部14も同様の方法で境界判定信号MV_V_EDGEを出力する。
【0054】
境界判定信号混合部15では、水平動きベクトル境界判定信号MV_H_EDGEと垂直動きベクトル境界判定信号MV_V_EDGEとをOR演算することで動き境界判定信号MV_EDGEを生成するのではなく、水平動きベクトル境界判定信号MV_H_EDGEと垂直動きベクトル境界判定信号MV_V_EDGEの内、値の大きい方、即ち、より境界度合いの大きい方を選択することで動き境界判定信号MV_EDGEとして出力する必要がある。また、境界判定信号集計部16にて1フレーム内の動きベクトル境界判定信号MV_EDGEを集計して総数EDGE_SUMを求める際に、動きベクトル境界判定信号MV_EDGEに応じてカウンタをインクリメントする必要がある。例えば動きベクトル境界判定信号MV_EDGEが2であればカウンタを2インクリメントし、3であればカウンタを3インクリメントする必要がある。
【符号の説明】
【0055】
10 スクロール判定装置
11 フレームメモリ
12 動きベクトル検出部
13 水平動きベクトル境界判定部
14 垂直動きベクトル境界判定部
15 境界判定信号混合部
16 境界判定信号集計部
17 全体スクロール判定部
345 境界判定信号生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号におけるそれぞれのフレーム内の所定の検出単位毎に画像の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、
前記動きベクトル検出部で検出された動きベクトルの内、1フレーム内の異なる検出単位間の動きベクトルを比較することによって、前記異なる検出単位間に動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して動きベクトル境界判定信号を生成する境界判定信号生成部と、
前記境界判定信号生成部が生成した動きベクトル境界判定信号を集計して、1フレーム内で動きベクトルの境界が存在する程度を示す集計値を生成する境界判定信号集計部と、
前記集計値と所定の閾値とを比較することによって、画像が全体的にスクロールしているか否かを示す全体スクロール判定信号を生成する全体スクロール判定部と、
を備えることを特徴とするスクロール判定装置。
【請求項2】
前記境界判定信号生成部は、
注目する検出単位で検出した動きベクトルと、前記注目する検出単位の左方,右方,上方,下方に位置する少なくとも1つの検出単位で検出した動きベクトルとを比較することによって、注目する検出単位のそれぞれに対して動きベクトル境界判定信号を生成する
ことを特徴とする請求項1記載のスクロール判定装置。
【請求項3】
前記境界判定信号生成部は、
1フレーム内の異なる検出単位で検出された動きベクトルの水平成分を比較することによって、前記異なる検出単位間に水平方向の動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して水平動きベクトル境界判定信号を生成する水平動きベクトル境界判定部と、
1フレーム内の異なる検出単位で検出された動きベクトルの垂直成分を比較することによって、前記異なる検出単位間に垂直方向の動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して垂直動きベクトル境界判定信号を生成する垂直動きベクトル境界判定部と、
前記水平動きベクトル境界判定信号と前記垂直動きベクトル境界判定信号とを混合する境界判定信号混合部と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール判定装置。
【請求項4】
前記境界判定信号混合部は、前記水平動きベクトル境界判定信号と前記垂直動きベクトル境界判定信号との少なくとも一方が、動きベクトルの境界が存在することを示す場合に、前記動きベクトル境界判定信号として、動きベクトルの境界が存在することを示す値を生成することを特徴とする請求項3記載のスクロール判定装置。
【請求項5】
映像信号におけるそれぞれのフレーム内の所定の検出単位毎に画像の動きベクトルを検出するステップと、
検出された動きベクトルの内、1フレーム内の異なる検出単位間の動きベクトルを比較することによって、前記異なる検出単位間に動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して動きベクトル境界判定信号を生成するステップと、
前記動きベクトル境界判定信号を集計して、1フレーム内で動きベクトルの境界が存在する程度を示す集計値を生成するステップと、
前記集計値と所定の閾値とを比較することによって、画像が全体的にスクロールしているか否かを示す全体スクロール判定信号を生成するステップと、
を含むことを特徴とするスクロール判定方法。
【請求項6】
前記動きベクトル境界判定信号を生成するステップは、
注目する検出単位で検出した動きベクトルと、前記注目する検出単位の左方,右方,上方,下方の少なくとも1つの検出単位で検出した動きベクトルとを比較することによって、注目する検出単位のそれぞれに対して動きベクトル境界判定信号を生成する
ことを特徴とする請求項5記載のスクロール判定方法。
【請求項7】
前記動きベクトル境界判定信号を生成するステップは、
1フレーム内の異なる検出単位で検出された動きベクトルの水平成分を比較することによって、前記異なる検出単位間に水平方向の動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して水平動きベクトル境界判定信号を生成するステップと、
1フレーム内の異なる検出単位で検出された動きベクトルの垂直成分を比較することによって、前記異なる検出単位間に垂直方向の動きベクトルの境界が存在するか否かを判定して垂直動きベクトル境界判定信号を生成するステップと、
前記水平動きベクトル境界判定信号と前記垂直動きベクトル境界判定信号とを混合するステップと、
を含むことを特徴とする請求項5または6に記載のスクロール判定方法。
【請求項8】
前記混合するステップは、前記水平動きベクトル境界判定信号と前記垂直動きベクトル境界判定信号との少なくとも一方が、動きベクトルの境界が存在することを示す場合に、前記動きベクトル境界判定信号として、動きベクトルの境界が存在することを示す値を生成することを特徴とする請求項7記載のスクロール判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−38490(P2013−38490A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170831(P2011−170831)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】