説明

ステアリング角度表示装置

【課題】ステアリング角度表示装置において、低コストな構成でありながら、ステアリングユニットが全油圧式でもって構成される場合であっても正確なステアリング角度を運転者に対し視認させる。
【解決手段】表示装置1は、ハンドルからの操舵入力に応じて操向車輪を換向させるステアリングユニットのステアリング角度を表示するものである。表示装置1は、車両本体に対し回転自在であって操向車輪が中立位置にあるときに車両前方を示すように設けられた方向指示板11と、方向指示板11とステアリングユニットの換向軸25とを連結するリンク機構12とを備える。リンク機構12は、換向軸25が回転駆動されるのに連動して方向指示板11を前記回動の方向と同方向に回転させる。これによりハンドルと操向車輪との間が機械的に連結されていない場合であっても、方向指示板の示す向きと操向車輪の向きとの間にずれが生じることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルからの操舵入力に応じて操向車輪を換向させるステアリングユニットのステアリング角度を表示するためのステアリング角度表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トラックやホイールローダ等の大型/特殊車両においては、運転席から操向車輪の向きが確認し難いことから、ステアリングユニットのステアリング角度を表示するための表示装置が設けられている。例えば、このような表示装置として、ハンドルの操舵角をセンサにより検出し、検出した操舵角を車両移動時に液晶表示器に表示させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−347229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような表示装置では、車両に搭載されるステアリングユニットの構成がハンドル操舵を一旦油圧に変換し油圧経路を介して操向車輪に伝達する、いわゆる全油圧式である場合、ステアリング動作に伴う油圧リークにより、検出される操舵角と操向車輪の向きとの間にずれが生じる。また、液晶表示器を用いると、映像表示を行うための電気的な回路構成が必要となり、装置のコストアップを招来する。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、低コストな構成でありながら、ステアリングユニットが全油圧式でもって構成される場合であっても正確なステアリング角度を運転者に対し視認させることができるステアリング角度表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、ハンドルからの操舵入力に応じて操向車輪を換向させるステアリングユニットのステアリング角度を表示するためのステアリング角度表示装置であって、車両本体に対し回転自在であって、操向車輪が中立位置にあるときに車両前方を示すように設けられた方向指示板と、前記方向指示板とステアリングユニットの換向軸とを連結し、該換向軸が回転駆動されるのに連動して前記方向指示板を前記回動の方向と同方向に回転させるリンク機構と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、方向指示板がリンク機構によりステアリングユニットの換向軸と連結され、換向軸の回動に伴いその回動方向と同方向に回転するので、全油圧式のステアリングユニットのように操向車輪との間が機械的に連結されていない場合であっても、方向指示板の示す向きと操向車輪の向きとの間にずれが生じることがない。従って、運転者に対し正確なステアリング角度を視認させることができる。また、電気的な構成要素を必要とせず、製造コストを低減することができる。また、方向指示板と換向軸とをチェーン機構を用いて連結する場合に比べて、テンション調整のためのアイドラ機構等を設ける必要がなく低コストであり、しかも低騒音である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るステアリング角度表示装置を備える運搬車両の平面図。
【図2】上記運搬車両の側面図。
【図3】上記運搬車両のステアリングユニット及びドライブユニットの平面図。
【図4】上記各ユニットの側断面図。
【図5】上記ステアリング角度表示装置の方向指示版の取り付け位置を示す図。
【図6】上記ステアリング角度表示装置を示す全体斜視図。
【図7】(a)は操向車輪が中立位置にあるときのハンドル及び方向指示板の向きを示す平面図、(b)は同状態のステアリングユニット及びステアリング角度表示装置を示す平面図。
【図8】(a)、(b)は操向車輪が右回りに操舵されたときの図7に対応する図。
【図9】(a)、(b)は操向車輪が左回りに操舵されたときの図7に対応する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係るステアリング角度表示装置について図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態に係るステアリング角度表示装置1(以下、表示装置という)は、貨物運搬用の運搬車両50に搭載されており、運搬車両50の操舵系として設けられたステアリングユニット2のステアリング角度を表示するためのものである。運搬車両50は、表示装置1及びステアリングユニット2が配される車両本体51と、車両本体51の後側に付設された荷台52とで構成され、車両本体51側に駆動操向輪である1軸単輪型の車輪51aを有し、荷台52側に従動輪である2軸複輪型の車輪52aを有している。車輪51aは、運搬車両50の駆動系として車両本体51に設けられたドライブユニット3に保持されている。また、車両本体51の上部には運転席51bが設けられ、運転席51bの前方にあるフロントパネル51cには、車輪51aを操舵するためのハンドル51dが装備されている。車両本体51には、表示装置1及びステアリングユニット2を覆うカバー51eが配置されている。
【0010】
次に、図3及び図4に示すように、ステアリングユニット2は、ハンドル51dからの操舵入力に応じて車輪51aを換向させるものであって、ハンドル操舵を一旦油圧に変換し油圧経路を介して車輪51aに伝達する全油圧式とされている。ステアリングユニット2は、ハンドル51dにより操作されその操作量に応じた作動油を出力するオービットロール21と、オービットロール21からの作動油により伸張動/収縮動するシリンダ22と、シリンダ22の動作により揺動されるホイール23と、ホイール23の回転力がチェーン24を介して伝達される車輪換向用の換向軸25とを有している。オービットロール21は、車両本体51内に設けられた油圧ポンプ51fと接続され、油圧ポンプ51fから供給される作動油をハンドル51dの回転量に応じて油量調整してシリンダ22に出力するものであり、シリンダ22に繋がる2つの出力ポート21a、21bを有している。出力ポート21aはシリンダ伸張動用のポートであり、油圧ホース21cを介してシリンダ22の一端に接続され、出力ポート21bはシリンダ収縮動用のポートであり、油圧ホース21dを介してシリンダ22の他端に接続されている。
【0011】
シリンダ22は、車両本体51の構成フレームとして設けられたベースプレート51gにブラケット26を介して回動自在に支持されている。ベースプレート51gは、ドライブユニット3を収用する空間を有した筐体51hに取り付けられる。ベースプレート51gは、換向軸25を挿通するための円形状の開口51iを有している。シリンダ22のピストン側は、ホイール23のレバー23aと連結軸27により回動自在に連結されている。ホイール23は、レバー23aとホイール軸23bとを有し、ベースプレート51gに対して回動自在に設けられ、ホイール軸23bと換向軸25との間にチェーン24が掛合される。なお、ホイール軸23bは、上端がベースプレート51g上に取り付けられたホイールホルダ28に遊装され、下端がベースプレート51gに埋設された軸受29により軸支されている。換向軸25は、チェーン24が掛合される掛合部25aを有した中空軸により構成され、軸基端側がドライブユニット3に螺設されている。
【0012】
ドライブユニット3は、車輪駆動用のモータ31と、モータ31の回転力がチェーン32を介して伝達されるスプロケット33aを有した車輪軸33と、チェーン32のテンションを調整するためのアイドラ34と、モータ31、車輪軸33及びアイドラ34を支持するケース部35とを有している。モータ31は、車両本体51内に搭載される電源部と電力線36により接続されており、この電力線36は、ケース部35の開口35aを通ってモータ31に配線されている。車輪軸33は、スプロケット33aと同軸上に車輪51aを軸通しており、ケース部35に回転自在に支持されている。ケース部35は、ベースプレート51gと旋回ベアリング37を介して取付けられる。旋回ベアリング37は、外輪がベースプレート51gに固定され、内輪がケース部35に固定されている。上記のような構成により、ステアリングユニット2のステアリング動作により換向軸25が回動されるとドライブユニット3全体が回動し、その結果、車輪51aが換向される。
【0013】
次に、図5及び図6に示すように、表示装置1は、運転席51b側方に設けられステアリングユニット2の角度方向を示す方向指示板11と、方向指示板11を駆動するためのリンク機構12とを有している。方向指示板11は、運転席51b側方のカバー51eを貫通して配置され、車輪51aが中立位置にあるときに車両前方を示すように設けられる。リンク機構12は、換向軸25が回転駆動されるのに連動して、方向指示板11を換向軸25の回動方向と同方向に回転させるものであり、軸受ボックス12aと、第1のレバー部材12bと、第1のリンク部材12cと、軸受ボックス12dと、第2のレバー部材12eと、第2のリンク部材12fとを有している。
【0014】
軸受ボックス12aは、ベースプレート51g上の開口51i側方に設置され、第1のレバー部材12bを回動自在に支持する。第1のレバー部材12bは、軸受ボックス12aに軸支される軸部と略三角形の板状部とを有している。第1のリンク部材12cは、その一端側が換向軸25と軸部材12gにより回転自在に連結され、他端側が第1のレバー部材12bの板状部と連結軸12hにより回転自在に連結される。軸受ボックス12dは、ベースプレート51g上に軸受ボックス12aから換向軸25側とは反対に離間して設置され、第2のレバー部材12eを回動自在に支持する。第2のレバー部材12eは、軸受ボックス12dに軸支される軸部とクランク状に折曲した板状部とで構成され、この板状部の上端に方向指示板11を有している。第2のリンク部材12fは、その一端側が第1のレバー部材12bの板状部と連結軸12iにより回転自在に連結され、他端側が第2のレバー部材12eの板状部と連結軸12jにより回転自在に連結される。上記のような構成により、換向軸25が所定の方向に回動されると第1のリンク部材12cを介して第1のレバーが回動し、これに伴って第2のリンク部材12fを介して第2のレバー部材12eが回動し、方向指示板11の示す向きが変更される。ここに、第1のレバー部材12bにおいて、軸受ボックス12aに軸支される軸部と連結軸12hとの軸間距離L1と、同軸部と連結軸12iとの軸間距離L2との比率を変えることで、換向軸25が回動したきの方向指示板11の回転角を設定できる。
【0015】
上記のように構成された表示装置1の作用について図7乃至図9を参照して説明する。図7は車輪51aが中立位置にある状態を示す。このような状態では、例えば、ハンドル51dはそのノブNの外縁側が車両後方を向く方向にある。また、ステアリングユニット2のホイール23はレバー23a先端が車両前方を向く方向にあり、換向軸25は軸部材12gの配設側が車両後方を向く方向にある。このとき、第1のレバー部材12b、第2のレバー部材12eが図示のような中立の姿勢にあって、方向指示板11はステアリング角度として車両前方を示す。
【0016】
図8はハンドル51dを右回りに回転させた状態を示す。このような状態では、シリンダ22の収縮動によるホイール23の回動に伴って換向軸25が右回りに回動し、その結果、車輪51aが右向きに換向される。このとき、第1のリンク部材12cにより第1のレバー部材12bが回動されるのに伴い、第2リンク部材により第2のレバー部材12eが右向きに回動され、これにより方向指示板11はステアリング角度として車両右斜め前方を示すようになる。
【0017】
図9はハンドル51dを左回りに回転させた状態を示す。このような状態では、シリンダ22の伸張動によるホイール23の回動に伴って換向軸25が左回りに回動し、その結果、車輪51aが左向きに換向される。このとき、第1のリンク部材12cにより第1のレバー部材12bが回動されるのに伴い、第2リンク部材により第2のレバー部材12eが左向きに回動され、これにより方向指示板11はステアリング角度として車両左斜め前方を示すようになる。
【0018】
このように本実施形態に係るステアリング角度表示装置1によれば、方向指示板11がリンク機構12によりステアリングユニット2の換向軸25と連結され、換向軸25の回動に伴いその回動方向と同方向に回転するので、ステアリングユニット2が全油圧式とされハンドル51dと車輪51aとの間が機械的に連結されていない場合であっても、方向指示板11の示す向きと車輪51aの向きとの間にずれが生じることがない。従って、運転者に対し正確なステアリング角度を視認させることができる。また、電気的な構成要素を必要とせず、製造コストを低減することができる。また、方向指示板11と換向軸25とをチェーン機構を用いて連結する場合に比べて、テンション調整のためのアイドラ機構等を設ける必要がなく低コストであり、しかも低騒音である。また、換向軸25の内部を通してモータ31への電力線36を配線できるので、車輪51aが換向されたとしても電力線36が絡まることがない。
【0019】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記においては換向車輪を1軸単輪型の車輪を用いて構成した例を示したが、これに限られず、車輪軸に軸通した一対の車輪により換向車輪を構成し、この車輪軸に連結された換向軸にリンク機構を設けることで方向指示板の向きを変えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 ステアリング角度表示装置
11 方向指示板
12 リンク機構
2 ステアリングユニット
50 運搬車両
51 車両本体
51a 車輪(操向車輪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルからの操舵入力に応じて操向車輪を換向させるステアリングユニットのステアリング角度を表示するためのステアリング角度表示装置であって、
車両本体に対し回転自在であって、操向車輪が中立位置にあるときに車両前方を示すように設けられた方向指示板と、
前記方向指示板とステアリングユニットの換向軸とを連結し、該換向軸が回転駆動されるのに連動して前記方向指示板を前記回動の方向と同方向に回転させるリンク機構と、を備えたことを特徴とするステアリング角度表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−105111(P2011−105111A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261428(P2009−261428)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】