説明

ステージ基台およびステージ機構

【課題】2方向に移動可能なステージ機構の構成を簡潔にする。
【解決手段】ステージ基台20は可動部21、固定部22、および支持部23を有する。可動部21、固定部22、および支持部23を一体的に形成する。ステージ基台20全体を弾性部材によって形成する。可動部21を板状の4辺形に形成する。固定部22を可動部の周囲を囲む枠状に形成する。支持部23を可動部21と固定部22とに連結する。支持部23を4本の腕部と4つの屈曲部により形成する。第1の屈曲部と可動部21とを連結する。第1の屈曲部に相対する屈曲部を固定部22に連結する。可動部21と固定部22とに第1、第2の圧電素子14a、14bを挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一平面上の2方向に微小移動可能で簡潔な構成のステージ機構および該ステージ機構に用いられるステージ基台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面を有するステージを平面上の2方向に移動させるステージ機構が知られている。ステージ機構は、例えば、微細な位置決めが求められる半導体の製造やデジタルカメラの撮像素子などを移動させるのに用いられる。
【0003】
従来のステージ機構においては、固定板に可動板などを係合させ、固定板等と可動板などの間に圧電素子を設け、2方向への移動を実行していた(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、このように2方向への移動が可能なステージ機構では、必要な部品数が多く、機構が大型化することが問題であった。また、部品数が多くなるため、製造が煩雑であり、製造コストも大きかった。
【特許文献1】特開平5−259263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明では、2方向に移動可能なステージ機構の部品数の低減化、構成の簡潔化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のステージ基台は、4つの屈曲部と4本の腕部とを有する4辺形に形成され4辺形に平行な平面である変形平面に沿って弾性変形する支持部と、第1の前記屈曲部に連結される可動部と、前記可動部の周囲に形成され第1の屈曲部と相対する第2の屈曲部に連結される固定部とを備え、可動部、固定部、および支持部が一体的に形成されることを特徴としている。
【0007】
なお、第1、第2の屈曲部は変形平面方向において腕部より薄く形成されることが好ましい。
【0008】
また、可動部には変形平面に平行な可動平面が形成されることが好ましい。
【0009】
また、可動部は変形平面に平行な4辺である第1〜第4の可動辺を有する4辺形に形成され、支持部は複数設けられ第1の可動辺と第1の可動辺に隣り合う第2の可動辺それぞれにおいて第1の支持部と第2の支持部とが可動部に連結されることが好ましい。
【0010】
また、第3、第4の可動辺それぞれにおいて第3、第4の支持部が可動部に連結されることが好ましい。
【0011】
また、第1〜第4の可動辺すべてにおいて複数の支持部が可動部に連結されることが好ましい。
【0012】
また、固定部には第1の可動辺および/または第2の可動辺に相対する位置に第1の可動辺および/または第2の可動辺との間隔を調整する位置調整部が設けられることが好ましい。
【0013】
本発明のステージ機構は、4つの屈曲部と4本の腕部とを有する4辺形に形成され4辺形に平行な平面である変形平面に沿って弾性変形する支持部と第1の屈曲部に連結される可動部と可動部の周囲に形成され第1の屈曲部と相対する第2の屈曲部に連結される固定部とが一体的に形成されるステージ基台と、変形平面に平行な第1、第2の方向に伸縮し可動部と固定部との間に挟持される第1、第2の圧電素子とを備えることを特徴としている。
【0014】
なお、固定部における第1、第2の圧電素子が設けられる位置に第1、第2の方向に沿った可動部と固定部との間隔を調整する第1、第2の位置調整部が設けられることが好ましい。
【0015】
また、第1、第2の方向に沿った可動部の位置を検出する第1、第2の変位センサを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品数の低減化、構成の簡潔化に寄与するステージ基台の作成が可能になる。したがって、本発明によるステージ基台を用いて、ステージ機構の部品数の低減化および構成の簡潔化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態を適用したステージ機構を有するステージ装置の全体構成を模式的に示すブロック図である。図1のステージ機構における下から上向きの方向を第1の方向、左から右向きの方向を第2の方向として表示する。
【0018】
ステージ装置10は、ステージ機構11、第1、第2の駆動回路12a、12b、制御回路13によって構成される。ステージ機構11は、ステージ基台(図1において図示せず)、第1、第2の圧電素子14a、14b、および第1、第2の変位センサ15a、15bによって構成される。
【0019】
後述するように、ステージ基台20には可動部(図1において図示せず)が設けられる。可動部は第1、第2の圧電素子14a、14bにより、第1、第2の方向に沿って移動可能である。また、第1、第2の方向に沿った可動部の位置は、第1、第2の変位センサ15a、15bによって検出される。
【0020】
第1、第2の圧電素子14a、14bは、それぞれ第1、第2の駆動回路12a、12bに接続される。第1、第2の駆動回路12a、12bにより、第1、第2の圧電素子14a、14bが駆動される。第1、第2の駆動回路12a、12bによる第1、第2の圧電素子14a、14bの駆動は、制御回路13に制御される。
【0021】
第1、第2の変位センサ15a、15bは、制御回路13に接続される。第1、第2の変位センサ15a、15bによって検出された第1、第2の方向に沿った可動部の変位が制御回路13にデータとして送られる。制御回路13による第1、第2の駆動回路12a、12bの制御は、第1、第2の方向に沿った可動部の変位に基づいて行なわれる。
【0022】
次に、ステージ基台の構成について図2〜図5を用いて説明する。図2はステージ基台の平面図である。図3、図4、図5は、それぞれステージ基台の中で可動部、固定部、支持部を注視した平面図である。図2〜図5における下から上向きの方向を第1の方向、左から右向きの方向を第2の方向として表示する。
【0023】
ステージ基台20は、可動部21、固定部22、および支持部23によって形成される。可動部21、固定部22、および支持部23は一体的に形成される。また、ステージ基台20は、全体的に弾性部材によって形成される。
【0024】
可動部21は、板状の4辺形に形成される(図3斜線部参照)。固定部22は、可動部21の周囲において、4辺を有する枠状に形成される(図4斜線部参照)。可動部21のそれぞれの辺には2つの支持部23が設けられる。また、それぞれの支持部23は、固定部22に連結される(図5斜線部参照)。なお、可動部21には、例えば撮像素子(図示せず)が載置される。
【0025】
図6に示すように、支持部23は4本の腕部23aと4つの屈曲部23bとによって4辺形状に形成される。互いに相対する2組の屈曲部23bの対のうちの一方の対、すなわち四辺形状の対角線方向にある屈曲部23bの対のうちの一方の対には連結部23cが形成される。一方の連結部23cが固定部22に連結され、他方の連結部23cは可動部21に連結される。別言すると、4つの屈曲部23bにおいて、A方向およびB方向の両方向に最も離間した2つの屈曲部23bに連結部23cが形成される。
【0026】
屈曲部23bは腕部23aより薄く形成され、屈曲部23bにおける可撓性は腕部23aの可撓性より大きくなる。そのため、屈曲部23bにおいて支持部23は可動可能である。したがって、支持部23によってリンク機構が形成される。
【0027】
また、前述のように支持部23は弾性部材により形成され、4辺形を形成する平面(変形平面)に沿って弾性変形可能である。支持部23には、連結部23cを介して可動部21および固定部22から2方向(図6矢印A、矢印B参照)の力がかけられる。可動部21および固定部22からの力がかかるとき、支持部23は弾性変形し、可動部21および固定部22に対して逆向きの力が加えられる。なお、支持部23の4辺形を形成する平面と可動部21の板状平面が平行となるように、ステージ基台20は形成される。
【0028】
次にステージ機構11の構成について図7を用いて説明する。図7は、ステージ機構11の平面図である。前述のように、ステージ機構11は、ステージ基台20、第1、第2の圧電素子14a、14b、および第1、第2の変位センサ15a、15bによって構成される。
【0029】
第1の圧電素子14aは、可動部21の下側辺部と固定部22の内壁面と間に挟持される。前述のように第1の圧電素子14aに電圧を印加することにより、第1の圧電素子14aにより、可動部21が固定部22に対して第1の方向に付勢される。一方、第1の圧電素子14aに印加する電圧を減少させるとき、弾性変形した支持部23の復元力により可動部21が固定部22に対して第1の方向の逆方向に付勢される。
【0030】
第2の圧電素子14bは、可動部21の右側辺部と固定部の内壁面との間に挟持される。前述のように第2の圧電素子14bに電圧を印加することにより、第2の圧電素子14bにより、可動部21が固定部22に対して第2の方向の逆方向に付勢される。一方、第2の圧電素子14bに印加する電圧を減少させるとき、弾性変形した支持部23の復元力により可動部21が固定部22に対して第2の方向に付勢される。
【0031】
固定部22における第1、第2の圧電素子14a、14bを設ける位置には、固定土台22b、第1、第2の孔部22h1、22h2が形成される。固定土台22bは固定部22の内側方向に突出し、固定土台22上に第1、第2の圧電素子14a、14bが固定される。第1の孔部22h1は、固定土台22bより外周方向の位置において固定部22の厚さ方向に貫通する。第2の孔部22h2は、第1の孔部22h1から固定部22の外壁面方向に貫通する。
【0032】
第2の孔部22h2の内面には螺子山が形成される。第2の孔部22h2へ螺子を捩じ込むことにより、螺子が固定土台22bを可動部21方向に押圧可能である。第2の孔部22h2への螺子の捩じ込み量を調整することにより、可動部21と固定土台22bとの間隔を調整可能である。したがって、螺子の捩じ込み量を調整することにより、可動部に対する第1、第2の圧電素子14a、14bの位置決めの微調整が可能である。
【0033】
第1の変位センサ15aは、可動部21の上側辺部に相対する固定部22の内壁面に設けられる。また、第2の変位センサ15bは、可動部21の左側辺部に相対する固定部22の内壁面に設けられる。前述のように、第1、第2の変位センサ15a、15bにより固定部22に対する可動部21の第1、第2の方向に沿った位置が検出される。
【0034】
以上のような構成であるステージ機構11によれば、2方向に移動可能なステージ機構を少ない部品数で形成することが可能になる。特に、本実施形態のステージ基台20を用いることにより部品数の削減と簡潔な構成が可能となる。
【0035】
なお、本実施形態において、支持部23は可動部21の各辺に2つずつ設けられるが、いくらであってもよい。例えば、各辺の中央部に1つの支持部23を設ける構成であってもよい。ただし、本実施形態のように、各辺の中央部を挟むように支持部23を2箇所設けることにより、安定した姿勢で可動部21を第1、第2の方向に移動させることが可能になる。
【0036】
また、本実施形態において、支持部23は可動部21の各辺に設けられるが、4辺の中のいずれか1〜3辺に設けられてもよい。1辺にのみ支持部23が設けられる構成であっても、支持部23は第1、第2の方向のいずれにも弾性変形可能である。したがって、可動部21を第1、第2の方向に移動させること、および移動させた後に元の形状に復元することが可能である。
【0037】
また、本実施形態において、支持部23を形成する屈曲部23bは腕部23aより薄くなるように形成されるが、同じ厚さであってもよい。同じ厚さであっても、支持部23が全体として第1、第2の方向に弾性変形可能で、かつ復元力を発揮することが出来るからである。ただし、本実施形態のように屈曲部23bを薄く形成することにより、支持部23をスムーズに弾性変形させることが可能になる。したがって、可動部21の第1、第2の方向に沿った移動をスムーズに行うことが可能になる。
【0038】
また、本実施形態において、固定部22には、固定土台22b、第1、第2の孔部22h1、22h2が設けられる構成であるが、設けられなくてもステージ装置を簡易な構成で形成することは可能である。ただし、前述のように圧電素子の位置決めの微調整のためには、固定土台22、第1、第2の孔部22h1、22h2が設けられることが好ましい。
【0039】
また、本実施形態において、可動部21および固定部22は4辺形に形成されるが、4辺形でなくてもよい。可動部21と固定部22とによって圧電素子を挟持可能であれば、いかなる形状であってもよい。
【0040】
また、本実施形態において、可動部21は板状に形成され平面を有するが、平面を有さなくてもよい。可動部に別の部品を固定させる場合などにおいて平面でなくても本実施形態と同様の効果を得ることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態を適用したステージ機構を有するステージ装置の全体構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】ステージ基台の平面図である。
【図3】ステージ基台における可動部を注視した平面図である。
【図4】ステージ基台における固定部を注視した平面図である。
【図5】ステージ基台における支持部を注視した平面図である。
【図6】支持部の拡大図である。
【図7】ステージ機構の平面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 ステージ装置
11 ステージ機構
14a、14b 第1、第2の圧電素子
15a、15b 第1、第2の変位センサ
20 ステージ基台
21 可動部
22 固定部
22b 固定土台
22h1、22h2 第1、第2の孔部
23 支持部
23a 腕部
23b 屈曲部
23c 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの屈曲部と4本の腕部とを有する4辺形に形成され、前記4辺形に平行な平面である変形平面に沿って弾性変形する支持部と、
第1の前記屈曲部に連結される可動部と、
前記可動部の周囲に形成され、前記第1の屈曲部と相対する第2の前記屈曲部に連結される固定部とを備え、
前記可動部、固定部、および支持部が一体的に形成される
ことを特徴とするステージ基台。
【請求項2】
前記第1、第2の屈曲部は、前記変形平面方向において前記腕部より薄く形成されることを特徴とする請求項1に記載のステージ基台。
【請求項3】
前記可動部には、前記変形平面に平行な可動平面が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のステージ基台。
【請求項4】
前記可動部は、前記変形平面に平行な4辺である第1〜第4の可動辺を有する4辺形に形成され、
前記支持部は複数設けられ、前記第1の可動辺と前記第1の可動辺に隣り合う第2の可動辺それぞれにおいて、第1の前記支持部と第2の前記支持部とが前記可動部に連結される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のステージ基台。
【請求項5】
前記第3、第4の可動辺それぞれにおいて、第3、第4の前記支持部が前記可動部に連結されることを特徴とする請求項4に記載のステージ基台。
【請求項6】
前記第1〜第4の可動辺すべてにおいて、複数の前記支持部が前記可動部に連結されることを特徴とする請求項4に記載のステージ基台。
【請求項7】
前記固定部には、前記第1の可動辺および/または前記第2の可動辺に相対する位置に、前記第1の可動辺および/または前記第2の可動辺との間隔を調整する位置調整部が設けられることを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載のステージ基台。
【請求項8】
4つの屈曲部と4本の腕部とを有する4辺形に形成され、前記4辺形に平行な平面である変形平面に沿って弾性変形する支持部と、第1の前記屈曲部に連結される可動部と、前記可動部の周囲に形成され前記第1の屈曲部と相対する第2の前記屈曲部に連結される固定部とが一体的に形成されるステージ基台と、
前記変形平面に平行な第1、第2の方向に伸縮し、前記可動部と前記固定部との間に挟持される第1、第2の圧電素子とを備える
ことを特徴とするステージ機構。
【請求項9】
前記固定部における前記第1、第2の圧電素子が設けられる位置に、前記第1、第2の方向に沿った前記可動部と前記固定部との間隔を調整する第1、第2の位置調整部が設けられることを特徴とする請求項8に記載のステージ機構。
【請求項10】
前記第1、第2の方向に沿った前記可動部の位置を検出する第1、第2の変位センサを備えることを特徴とする請求項8に記載のステージ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−32547(P2008−32547A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206620(P2006−206620)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】