説明

ステージ駆動装置

【目的】振動の発生を抑制したステージ駆動装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明の一態様のステージ駆動装置106は、上面と裏面に移動距離以上の範囲で平行な平面部を有し、基板を配置するXYステージ105に接続され、長手方向に移動することで当該方向にステージを移動させるレール状部材20と、レール状部材20における上面側の平面部に円形の外周面で接触し、接触した状態で回転することでレール状部材を長手方向に移動させる駆動側回転軸10と、駆動側回転軸10を支持する軸受30と、駆動側回転軸10の下部に配置され、駆動側回転軸10の外周面のうちレール状部材20と接触する部分よりも軸受30側に位置する部分に円形の外周面で接触し、駆動側回転軸10の回転により回転させられる軸受40と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ駆動装置に係り、例えば、電子ビームを用いて試料にパターンを描画する描画装置のステージを駆動する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、高精度の原画パターンの生産に用いられる。
【0003】
図11は、従来の可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。可変成形型電子線(EB:Electron beam)描画装置は、以下のように動作する。第1のアパーチャ410には、電子線330を成形するための矩形例えば長方形の開口411が形成されている。また、第2のアパーチャ420には、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子線330を所望の矩形形状に成形するための可変成形開口421が形成されている。荷電粒子ソース430から照射され、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子線330は、偏向器により偏向され、第2のアパーチャ420の可変成形開口421の一部を通過して、所定の一方向(例えば、X方向とする)に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340に照射される。すなわち、第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過できる矩形形状が、X方向に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340の描画領域に描画される。第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過させ、任意形状を作成する方式を可変成形方式という。
【0004】
ここで、高い描画精度が要求される電子ビーム描画装置に対して、その精度に関わる要因の1つとして振動の要素がある。精度良く描画を行なうためにはできる限り振動の要素は小さくすることが望ましい。描画対象となる基板を配置するステージを駆動する従来のステージ駆動機構では、回転軸を支持する軸受から流れ出た油による所定の厚みを持った油膜(油溜まり)に起因する振動が発生してしまうといった問題があった。従来、かかる振動問題については、描画装置のソフトウェア上で描画位置を補正することで対処することも検討されていたが、根本的な解決にはなっていない状況であった。
【0005】
また、ステージの駆動機構は上述した例と異なるが、真空チャンバ内で駆動するステージのステージ駆動装置に関連する技術として、従来、駆動モータでボールねじを回転させることで、ボールねじの送り方向である一軸方向にステージを駆動する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−118574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、回転軸を支持する軸受から流れ出た油による所定の厚みを持った油膜(油溜まり)に起因する振動が発生してしまうといった問題があった。かかる問題は、ステージに接続された細長の部材の上下を駆動側回転軸と従動側回転軸で挟持して、回転軸の回転により細長の部材を長手方向に送り出す、或いは引き戻すことで、かかる長手方向にステージを駆動する機構において発生する。かかる機構では、細長の部材の上面側に接触する回転軸を支持する軸受から流れ出た油が、細長の部材の上面にまで達し、かかる上面のある一部で所定の厚みを持った油膜(油溜まり)となる。そのため、上面に段差ができる。そして、回転軸が、描画中、油膜を乗り越えるたびに振動が発生してしまう。しかし、従来、かかる問題を解決する手法が確立されていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる問題を克服し、振動の発生を抑制したステージ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のステージ駆動装置は、
上面と裏面に移動距離以上の範囲で平行な平面部を有し、基板を配置するステージに接続され、長手方向に移動することで当該方向にステージを移動させるレール状部材と、
レール状部材における上面側の平面部に円形の外周面で接触し、接触した状態で回転することでレール状部材を長手方向に移動させる回転軸と、
回転軸を支持する軸受と、
回転軸の下部に配置され、回転軸の外周面のうちレール状部材と接触する部分よりも軸受側に位置する部分に円形の外周面で接触し、回転軸の回転により回転させられる回転体と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
かかる構成により、軸受から回転軸の外周面を伝って流れ出てきた油を回転体が均すことができる。その結果、レール状部材の表面の一部に油膜ができることを防止できる。
【0011】
また、回転体は、全体が一体となって回転するローラ部材と、内輪と外輪を有し、内輪の状態にかかわらず外輪が回転軸の回転により回転させられる軸受状部材とのうちの一方であると好適である。
【0012】
また、長手方向の前後で回転軸を挟むようにレール状部材における上面側の平面部と接触して配置され、レール状部材が移動することによりレール状部材における上面側の平面部に付着した油膜を均す第1と第2の均し部材をさらに備えると好適である。
【0013】
かかる第1と第2の均し部材は、それぞれ、ローラ部材と軸受状部材と板状部材とブロック状部材とのうちのいずれかであると好適である。
【0014】
また、回転軸を第1の回転軸とする場合に、
レール状部材を第1の回転軸とで挟持するように配置され、レール状部材における裏面側の平面部に円形の外周面で接触し、第1の回転軸と共に回転する第2の回転軸を更に備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転軸が、描画中、段差となる油膜を乗り越えることを抑制できる。よって、振動の発生を防止或いは抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1における電子ビーム描画装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1におけるステージ駆動装置の内部構成を示す概念図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】実施の形態1における回転軸下端の油膜除去機構の作用を説明するための概念図である。
【図6】実施の形態1におけるレール上の油膜除去機構の作用を説明するための概念図である。
【図7】実施の形態1におけるステージ移動の様子を説明するための図である。
【図8】実施の形態2におけるステージ駆動装置の内部構成を示す概念図である。
【図9】図8のC−C断面図である。
【図10】実施の形態2におけるレール上の油膜除去機構の作用を説明するための概念図である。
【図11】従来の可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における電子ビーム描画装置の構成を示す概念図である。図1において、描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例となる。描画装置100は、電子鏡筒102と描画室103を有している。電子鏡筒102内には、電子銃201(放出部)、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、及び偏向器208が配置されている。また、描画室103内には、XYステージ105が配置されている。XYステージ105上には、被描画対象基板となる試料101が配置される。
【0019】
また、電子鏡筒102内およびXYステージ105が配置された描画室103内は、図示していない真空ポンプにより真空引きされ、大気圧よりも低い圧力となる真空雰囲気となっている。
【0020】
描画室103内のXYステージ105には、細長のレール状部材20の一方の端部が接続され、レール状部材20は、描画室103外の駆動装置106内に他方の端部が延びている。駆動装置106は、駆動制御部112によって制御される。図1では、一方向分しか図示していないが、x方向とy方向にそれぞれ細長のレール状部材20が接続され、各レール状部材20は、描画室103外の各駆動装置106内に延びている。
【0021】
電子銃201から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形例えば長方形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形例えば長方形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像の位置は、偏向器205によって制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向器208により偏向されて、移動可能に配置されたXYステージ105上の試料101の所望する位置に照射される。このように描画動作がおこなわれるため、所望する位置に電子ビームが届く位置までXYステージ105が移動することが必要となる。
【0022】
図2は、実施の形態1におけるステージ駆動装置の内部構成を示す概念図である。
図3は、図2のA−A断面図である。
図4は、図2のB−B断面図である。
図2〜4において、レール状部材20は、一方の端部がXYステージ105に接続される。そして、他方の端部が駆動装置106内へと延びている。また、レール状部材20は、上面と裏面に移動距離以上の範囲で平行な平面部を有している。そして、レール状部材20は、駆動側回転軸10(第1の回転軸)の円形の外周面と従動側回転軸12(第2の回転軸)の円形の外周面により挟持される。駆動側回転軸10はレール状部材20における上面側の平面部に円形の外周面で接触する。そして、従動側回転軸12はレール状部材20における下面側の平面部に円形の外周面で接触する。ここでは、駆動側回転軸10が上方に従動側回転軸12が下方に配置した例が示されているが、駆動側と従動側が逆でも構わない。駆動側回転軸10は、外周面のうちレール状部材20に接する部分を挟んで、両側が軸受30,32で支持されている。ここでは、駆動側回転軸10は、外周面のうちレール状部材20に接する部分から2段階に細くなった部分が軸受30,32で支持されている。そして、駆動側回転軸10は、一方の端部側がモータ22に接続される。従動側回転軸12は、外周面のうちレール状部材20に接する部分を挟んで、両側が軸受34,36で支持されている。ここでは、駆動側回転軸10は、外周面のうちレール状部材20に接する部分から1段細くなった部分が軸受34,36で支持されている。軸受30,32,34,36には、例えば、外輪と内輪の間に複数のボールが配置されたころがり軸受が用いられる。軸受30,32,34,36には潤滑油が入っている。
【0023】
以上のように、レール状部材20が駆動側回転軸10の円形の外周面と従動側回転軸12の円形の外周面により挟持された状態でモータ22により駆動側回転軸10を回転させることでレール状部材20を長手方向に移動させる。言い換えれば、レール状部材20を長手方向に摩擦力で送り出す或いは引き戻す。かかる長手方向をx方向或いはy方向に設定することで、当該x方向或いはy方向にレール状部材20が移動することで当該方向にXYステージ105を移動させる。
【0024】
ここで、描画動作が行なわれず、XYステージ105が停止しているとき、停止時間が長いと、上方側の駆動側回転軸10を支持する軸受30,32から潤滑油が、駆動側回転軸10の外周面の下端を伝ってレール状部材20側に流れ出す。そのため、流れ出た油を遮るものがないとレール状部材20の上面に所定の膜厚を持った油膜(油溜まり)ができてしまう。かかる状態で描画動作を行なった際に試料101上にパターンを描画中に油膜を駆動側回転軸10が乗り越えると振動を発生し、描画位置に誤差が生じてしまうことになる。そのため、少なくとも試料101上への描画開始前に油膜を均す必要がある。
【0025】
実施の形態1では、2段階の対策を行なっている。第1の機構は、レール状部材20の上面に油膜が届く前に除去或いは均す機構を備える。もう1つの第2の機構は、第1の機構をかいくぐり仮にレール状部材20の上面に油膜が生成されてしまった場合でも描画開始前にかかる油膜を均す機構を備える。
【0026】
第1の機構では、上方側の駆動側回転軸10の下部に回転体の一例として軸受40,42(軸受状部材)を配置する。軸受40は、駆動側回転軸10の外周面のうちレール状部材20と接触する部分よりも軸受30側に位置する部分に円形の外周面(外輪の外周面)で接触する。軸受40は、軸44で支持される。軸受42は、駆動側回転軸10の外周面のうちレール状部材20と接触する部分よりも軸受32側に位置する部分に円形の外周面(外輪の外周面)で接触する。軸受42は、軸46で支持される。そして、軸受40,42では、外輪が内輪の状態にかかわらず駆動側回転軸10の回転により回転させられる。
【0027】
図5は、実施の形態1における回転軸下端の油膜除去機構の作用を説明するための概念図である。XYステージ105が停止しているとき、軸受32から流れ出た潤滑油は、図3及び図5(a)に示すように、駆動側回転軸10の外周面の下端を伝って軸受42と駆動側回転軸10とが接触する位置に油膜(油溜まり)14を形成する。同様に、軸受30から流れ出た潤滑油は、図3に示すように、駆動側回転軸10の外周面の下端を伝って軸受40と駆動側回転軸10とが接触する位置に油膜(油溜まり)16を形成する。かかる状態で駆動側回転軸10が回転すると、図5(b)に示すように、油膜14が軸受42内に流れ込む。或いは、軸受42と駆動側回転軸10の外周面との間で均される。これにより、油膜14が無くなり、或いは油膜14の膜厚が薄くなり、レール状部材20にまで達することを抑制できる。
【0028】
ここでは、第1の機構の回転体の一例として、ころがり軸受40,42を配置したが、これに限るものではない。例えば、軸44或いは軸46を回転軸として、全体が一体となって回転するローラ部材であっても好適である。
【0029】
以上のように、油膜14,16がレール状部材20に到達しないことで、駆動側回転軸10が回転する際に振動が発生しないようにすることができる。
【0030】
次に、第1の機構で防ぎきれず、仮に、レール状部材20の上面に振動を引き起こす程度の膜厚を持った油膜(油溜まり)18,19が形成されてしまった場合でも、第2の機構で描画開始前に油膜18,19を均す。第2の機構では、第1と第2の均し部材の一例となるローラ50,52が、レール状部材20の長手方向の前後で駆動側回転軸10を挟むようにレール状部材20の上面側の平面部と接触して配置される。ローラ50,52は、レール状部材20が移動することによりレール状部材20における上面側の平面部に付着した油膜18,19を略平らになるように均す。また、ローラ50,52の幅は、レール状部材20の幅よりも大きくすることで油膜均し洩れを防止できるため好適である。
【0031】
図6は、実施の形態1におけるレール上の油膜除去機構の作用を説明するための概念図である。図6(a)では、レール状部材20の上面に振動を引き起こす程度の膜厚を持った油膜(油溜まり)18が駆動側回転軸10とレール状部材20との接触位置におけるローラ50側に形成された状態を示している。かかる状態で、駆動側回転軸10が図6(b)上で向かって反時計周りに回転すると、図6(b)に示すように、レール状部材20がローラ50側に送り出される。そして、レール状部材20の移動により軸54を回転軸として回転させられるローラ50に油膜18が到達する。そして、ローラ50の外周面と駆動側回転軸10の外周面との間で油膜18が略平らになるように均される。逆に、図4に示すように、駆動側回転軸10とレール状部材20との接触位置におけるローラ55側に油膜19が形成された場合には、レール状部材20がローラ52側に送り出されることで、今度は、レール状部材20の移動により軸56を回転軸として回転させられるローラ52に油膜19が到達する。そして、ローラ52の外周面と駆動側回転軸10の外周面との間で油膜19が略平らになるように均される。
【0032】
ここでは、第2の機構の第1と第2の均し部材の一例として、ローラ50,52を配置したが、これに限るものではない。例えば、軸54或いは軸56を回転軸として、内輪と外輪とを有し、内輪に関わらず外輪が回転するころがり軸受状部材であっても好適である。
【0033】
以上のように、油膜18,19を略平らになるように均されることで、駆動側回転軸10が乗り越えたとしても振動が発生しないようにすることができる。
【0034】
図7は、実施の形態1におけるステージ移動の様子を説明するための図である。試料101の描画(露光)領域は、偏向器208によって電子ビーム200を偏向可能な短冊状の複数のストライプ領域に仮想分割される。各ストライプ領域が描画単位領域となる。試料101にパターンを描画する場合には、1つのストライプ領域上を、XYステージ105をステージ駆動装置106によりストライプ領域の長手方向となる、例えば、x方向に連続移動させながら、偏向器208によって所望のパターンをかかるストライプ領域内に描画していく。そして、1つのストライプ領域を描画し終わったら、XYステージ105を駆動装置106によりY方向にステップ送りしてx方向(今度は逆向き)に次のストライプ領域の描画動作を同様に行なう。各ストライプ領域の描画動作を蛇行させるように進めることでXYステージ105の移動時間を短縮することができる。
【0035】
ここで、例えば、図4において、ローラ52側に油膜19が形成されていた場合に、レール状部材20がローラ50側へと移動したら駆動側回転軸10が油膜19を乗り越え、振動が発生することになる。しかし、描画を開始するには、図7に示すように、まず、XYステージ105を待機位置Pから描画開始位置Qまで移動させる準備段階がある。そのため、待機位置Pから描画開始位置Qまでの移動中は描画を行なっていないので振動が発生しても問題ない。よって、PからQへのステージ移動の間に油膜18,19を略平らに均すことができればよい。実施の形態1では、駆動側回転軸10が油膜19を乗り越えてもその後で直ちにローラ50が油膜19を略平らに均すことができる。逆に、ローラ50側に油膜18が形成されていた場合に、レール状部材20がローラ52側へと移動したら駆動側回転軸10が油膜18を乗り越え、振動が発生することになる。しかし、駆動側回転軸10が油膜18を乗り越えてもその後で直ちにローラ52が油膜18を略平らに均すことができる。
【0036】
よって、PからQへのステージ移動の間に油膜18,19を略平らに均すことができる。よって、描画開始位置Qに移動が完了するまでには、段差を形成する油膜が存在しなくなる。よって、描画中の振動の発生を防止できる。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態1では、第2の機構の第1と第2の均し部材の一例として、ローラ50,52或いは軸受状部材といった回転体を配置したが、これに限るものではない。実施の形態2では、回転しない均し部材を使った構成を説明する。描画装置100の構成は、駆動装置106の内部構成以外は、図1と同様である。また、以下、特に、説明した点以外は実施の形態1と同様である。
【0038】
図8は、実施の形態2におけるステージ駆動装置の内部構成を示す概念図である。
図9は、図8のC−C断面図である。
図8,9において、第2の機構の第1と第2の均し部材の一例となるローラ50,52及び軸54,56の代わりに、ブロック51,53を配置した点以外は図2,4と同様である。また、図3で示した構成は、実施の形態2でも同様である。
【0039】
第1の機構で防ぎきれず、仮に、レール状部材20の上面に振動を引き起こす程度の膜厚を持った油膜(油溜まり)18,19が形成されてしまった場合でも、第2の機構で描画開始前に油膜18,19を均す。実施の形態2における第2の機構では、第1と第2の均し部材の一例となるブロック51,53が、レール状部材20の長手方向の前後で駆動側回転軸10を挟むようにレール状部材20の上面側の平面部と線接触或いは面接触して配置される。ブロック51,53は、レール状部材20が移動することによりレール状部材20における上面側の平面部に付着した油膜18,19を略平らになるように均す。また、ブロック51,53の幅は、レール状部材20の幅よりも大きくすることで油膜均し洩れを防止できるため好適である。ブロック51,53は、駆動側回転軸10側の側面がレール状部材20と線接触する位置から上方に向かって斜めに駆動側回転軸10から離れる向きに傾斜するように形成されると好適である。
【0040】
図10は、実施の形態2におけるレール上の油膜除去機構の作用を説明するための概念図である。図10(a)では、レール状部材20の上面に振動を引き起こす程度の膜厚を持った油膜(油溜まり)18が駆動側回転軸10とレール状部材20との接触位置におけるブロック51側に形成された状態を示している。かかる状態で、駆動側回転軸10が図10(b)上で向かって反時計周りに回転すると、図10(b)に示すように、レール状部材20がブロック51側に送り出される。そして、レール状部材20の移動によりブロック51に油膜18が到達する。そして、ブロック51の傾斜した測面に油膜18がすくい取られて測面に広がる。そして、図10(c)に示すように、今度は逆方向にレール状部材20が引き戻されると、ブロック51の傾斜した測面から油膜18を構成する油がレール状部材20上に流れ落ちてくる。しかし、かかる場合には少しずつ流れ落ちるので、レール状部材20が動いていれば振動を引き起こすような膜厚の油膜とならず略平らになるように均された状態となる。
【0041】
ここでは、第2の機構の第1と第2の均し部材の一例として、レール状部材20の長手方向に厚みをもったブロック51,53を配置したが、これに限るものではない。例えば、薄い板状の部材を斜めにレール状部材20の上面側の平面部と線接触するように配置しても好適である。
【0042】
以上のように、油膜18,19を略平らになるように均されることで、駆動側回転軸10が乗り越えたとしても振動が発生しないようにすることができる。
【0043】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0044】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0045】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置、描画方法及びステージ駆動装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0046】
10 駆動側回転軸
12 従動側回転軸
14,16,18,19 油膜
20 レール状部材
22 モータ
30,32,34,36,40,42 軸受
44,46,54,56 軸
50,52 ローラ
51,53 ブロック
100 描画装置
101 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
106 駆動装置
112 駆動制御部
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203,410 第1のアパーチャ
204 投影レンズ
205,208 偏向器
206,420 第2のアパーチャ
207 対物レンズ
330 電子線
340 試料
411 開口
421 可変成形開口
430 荷電粒子ソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と裏面に移動距離以上の範囲で平行な平面部を有し、基板を配置するステージに接続され、長手方向に移動することで当該方向に前記ステージを移動させるレール状部材と、
前記レール状部材における上面側の平面部に円形の外周面で接触し、接触した状態で回転することで前記レール状部材を前記長手方向に移動させる回転軸と、
前記回転軸を支持する軸受と、
前記回転軸の下部に配置され、前記回転軸の外周面のうち前記レール状部材と接触する部分よりも前記軸受側に位置する部分に円形の外周面で接触し、前記回転軸の回転により回転させられる回転体と、
を備えたことを特徴とするステージ駆動装置。
【請求項2】
前記回転体は、全体が一体となって回転するローラ部材と、内輪と外輪を有し、前記内輪の状態にかかわらず前記外輪が前記回転軸の回転により回転させられる軸受状部材とのうちの一方であることを特徴とする請求項1記載のステージ駆動装置。
【請求項3】
前記長手方向の前後で前記回転軸を挟むように前記レール状部材における上面側の平面部と接触して配置され、前記レール状部材が移動することにより前記レール状部材における上面側の平面部に付着した油膜を均す第1と第2の均し部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のステージ駆動装置。
【請求項4】
前記第1と第2の均し部材は、それぞれ、ローラ部材と軸受状部材と板状部材とブロック状部材とのうちのいずれかであることを特徴とする請求項3記載のステージ駆動装置。
【請求項5】
前記回転軸を第1の回転軸とする場合に、
前記レール状部材を前記第1の回転軸とで挟持するように配置され、前記レール状部材における裏面側の平面部に円形の外周面で接触し、前記第1の回転軸と共に回転する第2の回転軸を更に備えたことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のステージ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−23551(P2011−23551A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167394(P2009−167394)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】