ストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法
【課題】損失熱を抑えることができるとともに、NOx除去率を向上させることができるストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法を提供する。
【解決手段】複数のストーカ11,12,13段上で廃棄物を順次移動させながら乾燥、燃焼、後燃焼させる主燃焼室10aと、この主燃焼室10aで発生した燃焼排ガスに含まれる未燃ガスを二次燃焼させる二次燃焼室10bとを備えるストーカ式焼却炉2において、主燃焼室10aにおける後燃焼が行われる後燃焼ゾーン22から燃焼排ガスを引き抜き、この引き抜いた燃焼排ガスに尿素水を吹き込んでアンモニアガスを含んだアンモニア含有燃焼排ガスを生成し、このアンモニア含有燃焼排ガスを二次燃焼ゾーン14の燃焼排ガス流れの下流側に設けられるNOx還元ゾーン23に吹き込む。
【解決手段】複数のストーカ11,12,13段上で廃棄物を順次移動させながら乾燥、燃焼、後燃焼させる主燃焼室10aと、この主燃焼室10aで発生した燃焼排ガスに含まれる未燃ガスを二次燃焼させる二次燃焼室10bとを備えるストーカ式焼却炉2において、主燃焼室10aにおける後燃焼が行われる後燃焼ゾーン22から燃焼排ガスを引き抜き、この引き抜いた燃焼排ガスに尿素水を吹き込んでアンモニアガスを含んだアンモニア含有燃焼排ガスを生成し、このアンモニア含有燃焼排ガスを二次燃焼ゾーン14の燃焼排ガス流れの下流側に設けられるNOx還元ゾーン23に吹き込む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物や産業廃棄物を焼却処理するストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ストーカ式焼却炉は、燃焼室内に供給される廃棄物をその燃焼室内にて複数のストーカ段上を順次移動させながら乾燥、燃焼、後燃焼させるように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−230517号公報
【0004】
この種のストーカ式焼却炉において、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制する技術として、二段燃焼法や排ガス循環法等による燃焼法の改善以外に、触媒を用いて還元剤と反応させる触媒脱硝法や、炉内に還元剤を吹き込む無触媒脱硝法などがある。
【0005】
触媒脱硝法は、例えば燃焼排ガス処理流れの途中に設けられた集塵装置の下流側に排ガス加熱装置と触媒脱硝装置とが組み込まれることで達成されるものである。ここで、排ガス加熱装置は、集塵装置からの150℃程度の排ガスを210℃程度にまで加熱するものであり、熱源としてはボイラ付き廃棄物焼却処理施設の場合にはボイラからの過熱蒸気(400℃または300℃)が使用される。また、触媒脱硝装置は、触媒上でアンモニア(NH3)とNOxの反応を起こさせ、NOxをN2とH2Oに分解する装置であるが、分解率は反応温度に大きく依存するため、排ガス温度を少なくとも200℃以上に保つ必要がある。
【0006】
無触媒脱硝法は、例えば尿素水吹込装置が焼却炉に付設されることで達成されるものである。ここで、尿素水吹込装置は、尿素水を焼却炉内の所定温度域に噴霧ノズルを介して吹き込むものであり、この尿素水吹込装置にて尿素水を炉内に霧状に吹くことにより、NOxを還元して脱硝処理することができるようになっている。
【0007】
しかしながら、上記の触媒脱硝法では、触媒脱硝装置に加えてその触媒脱硝装置に導入される排ガスを加熱する排ガス加熱装置が必要であるため、設備費が高くなるという問題点がある。また、排ガス加熱装置で使用される熱源のエネルギーは損失エネルギーとなり、例えば発電効率の低下の原因になるという問題点がある。
【0008】
一方、従来の無触媒脱硝法では、以下のような問題点がある。
(1)焼却炉内に吹き込む尿素水の噴霧状態を一定として炉内での混合を良くするために10倍程度の水で希釈する必要があるため、回収可能な熱量がその希釈水の蒸発潜熱分だけ減少する。
(2)尿素水を10倍の水で希釈したとしても少量であり、燃焼排ガスとの混合が十分にできず、NOx除去率が当量比1.2で30〜40%に止まってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、損失熱を抑えることができるとともに、NOx除去率を向上させることができるストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明によるストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法は、
複数のストーカ段上で廃棄物を順次移動させながら乾燥、燃焼、後燃焼させる主燃焼室と、この主燃焼室で発生した燃焼排ガスに含まれる未燃ガスを二次燃焼させる二次燃焼室とを備えるストーカ式焼却炉において、
前記主燃焼室における後燃焼が行われる後燃焼ゾーンから燃焼排ガスを引き抜き、この引き抜いた燃焼排ガスに尿素水を吹き込んでアンモニアガスを含んだアンモニア含有燃焼排ガスを生成し、このアンモニア含有燃焼排ガスを前記二次燃焼が行われる二次燃焼ゾーンの燃焼排ガス流れの下流側に吹き込むことを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、前記後燃焼ゾーンから引き抜かれる燃焼排ガスに除塵処理が施されるのが好ましい(第2発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、酸素濃度が高く、CO等の未燃ガスやHCl、SOx等の酸性ガス濃度が低い後燃焼ゾーンからの燃焼排ガスに尿素水を吹き込むことで生成されるアンモニア含有燃焼排ガスが二次燃焼ゾーンの燃焼排ガス流れの下流側に吹き込まれるので、炉内燃焼排ガスとの混合が十分に行われ、高いNOx除去効果を得ることができ、NOx除去率を向上させることができる。
また、後燃焼ゾーンからの比較的高温(500℃以上)の燃焼排ガスに尿素水が水で希釈されることなく吹き込まれ、しかもその燃焼排ガスの熱エネルギーで尿素水を蒸発させた結果発生するアンモニアガスを含有するアンモニア含有燃焼排ガスが二次燃焼ゾーンの燃焼排ガス流れの下流側に吹き込まれるので、損失熱を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るストーカ式焼却炉を備えた廃棄物焼却処理施設の概略システム構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明によるストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<廃棄物焼却処理施設の概略構成の説明>
図1に示される廃棄物焼却処理施設1において、廃棄物は焼却炉2で燃焼される。この焼却炉2での廃棄物の燃焼に伴い発生する排ガスは、ボイラ3での熱交換に供されるとともに、エコノマイザ4でのボイラ3への給水の加熱に供された後に、減温塔5で所定温度まで冷却されてからバグフィルタを用いた集塵装置6に送られる。この集塵装置6でダストが除去された排ガスは、誘引通風機7により、煙突8を介して系外に排出される。
【0016】
<焼却炉の説明>
焼却炉2は、ストーカ式焼却炉であって、廃棄物を燃焼する燃焼室10を備えている。この燃焼室10は、主燃焼室10aと二次燃焼室10bとから構成されている。
主燃焼室10aにおいては、下部に配置された複数のストーカ、すなわち上段から下段に向かって順に配される乾燥ストーカ11、燃焼ストーカ12および後燃焼ストーカ13上で廃棄物を順次移動させながら乾燥、燃焼、後燃焼が行われる。
二次燃焼室10bにおいては、主燃焼室10aで発生した燃焼排ガスに含まれる未燃ガスが、室内に吹き込まれた二次燃焼空気によって二次燃焼される二次燃焼ゾーン14が設けられている。
【0017】
焼却炉2には、従来公知の一次燃焼空気吹込装置15および二次燃焼空気吹込装置16とは別に、排ガス還流装置17が付設されている。
【0018】
<排ガス還流装置の説明>
排ガス還流装置17は、燃焼排ガス引抜管路18と、集塵装置19と、還流ガス送風機20と、吹込ノズル21とを備えている。
燃焼排ガス引抜管路18は、後燃焼ストーカ13上での後燃焼が行われる後燃焼ゾーン22から燃焼排ガスを引き抜くための管路であって、主燃焼室10aを構成する炉壁における後燃焼ストーカ13の上方に位置する炉壁に接続されている。
集塵装置19は、耐熱性・耐薬品性に優れるセラミックフィルタを用いたもので、燃焼排ガス引抜管路18によって引き抜かれた比較的高温(500℃以上)の燃焼排ガス中に含まれるダストを効果的に除去する機能を有している。
還流ガス送風機20は、セラミック製等の耐熱性に優れる送風機であって、集塵装置19によってダストが除去された燃焼排ガスを還流ガスとして吹込ノズル21に向けて送り出す機能を有している。
吹込ノズル21は、焼却炉2の上部において二次燃焼ゾーン14の燃焼排ガス流れの下流側に設けられるNOx還元ゾーン23に臨ませて配設されている。なお、この吹込ノズル21においては、焼却炉2内が均一に攪拌されるようにその配置や設置個数が決められている。
還流ガス送風機20と吹込ノズル21とは、還流ガス流通管路24によって接続されており、還流ガス送風機20の作動により、集塵装置19からの還流ガス(後燃焼ゾーン22から引き抜いて除塵処理した後の燃焼排ガス)を、還流ガス流通管路24を通して吹込ノズル21からNOx還元ゾーン23に向けて吹き出すことができるようになっている。
【0019】
<尿素水混入装置の説明>
排ガス還流装置17には、尿素水混入装置25が付設されている。
尿素水混入装置25は、尿素水貯留タンク26に貯留されている尿素水を送給ポンプ27の作動にて尿素水流通管路28を通して還流ガス流通管路24内に混入するように構成されている。
この尿素水混入装置25において、還流ガス流通管路24内への尿素水の混入量の調節は、送給ポンプ27を駆動する電動モータ29の回転制御によって達成される。電動モータ29には、モータ制御器30が付設されており、このモータ制御器30からの制御信号に応じて電動モータ29の回転が制御される。
モータ制御器30は、煙突8から排出される直前の燃焼排ガスのNOx濃度を測定するNOx濃度計31からの測定信号をフィードバックして、かかる燃焼排ガス中のNOx濃度が規制値以下となるように制御信号を電動モータ29へ送信する。
【0020】
<作用効果の説明>
本実施形態においては、酸素濃度が高く、CO等の未燃ガスやHCl、SOx等の酸性ガス濃度が低い後燃焼ゾーン22の燃焼排ガスが燃焼排ガス引抜管路18を介して引き抜かれる。後燃焼ゾーン22から引き抜かれた燃焼排ガスは、セラミックフィルタを用いた集塵装置19で除塵処理が施された後、還流ガス送風機20によって還流ガス流通管路24を介して吹込ノズル21へと送られる。
還流ガス流通管路24には、尿素水貯留タンク26に貯留されている尿素水が送給ポンプ27の作動にて尿素水流通管路28を通して混入される。
還流ガス流通管路24を流れる燃焼排ガスは、500℃以上の高温の排ガスであり、還流ガス流通管路24に吹き込まれた尿素水を容易に蒸発させることができる。
還流ガス流通管路24に吹き込まれた尿素水は、蒸発・分解してアンモニアガスになり、このアンモニアガスを含んだアンモニア含有燃焼排ガスが吹込ノズル21を介してNOx還元ゾーン23へと吹き込まれる。
【0021】
本実施形態によれば、酸素濃度が高く、CO等の未燃ガスやHCl、SOx等の酸性ガス濃度が低い後燃焼ゾーン22からの燃焼排ガスに尿素水を吹き込むことで生成されるアンモニア含有燃焼排ガスがNOx還元ゾーン23に吹き込まれるので、炉内燃焼排ガスとの混合が十分に行われ、高いNOx除去効果を得ることができ、NOx除去率を向上させることができる。
また、後燃焼ゾーン22からの500℃以上の燃焼排ガスに尿素水が水で希釈されることなく吹き込まれ、しかもその燃焼排ガスの熱エネルギーで尿素水を蒸発させた結果発生するアンモニアガスを含有するアンモニア含有燃焼排ガスがNOx還元ゾーン23に吹き込まれるので、損失熱を抑えることができるとともに、燃焼促進効果も大きく貢献して残存している未燃ガスも完全燃焼させることができる。
【0022】
また、NOx除去率が当量比1.2で30〜40%程度であった従来の無触媒脱硝法と比べて格段に高いNOx除去率(70〜80%程度)を達成することができ、触媒脱硝法を併用したり、触媒脱硝法を単独で採用したりする必要がなくなるので、触媒脱硝装置が不要になり、また触媒の活性を維持するための排ガス加熱装置も不要となって発電効率の向上につながる。
さらに、尿素水を燃焼排ガスで蒸発させてから焼却炉2内に吹き込む構成とされており、従来のように尿素水を直接炉内に吹き込む構成では尿素水噴霧ノズルの詰まり等で噴霧不良になった場合、ボイラ水管に尿素水が当たり、ボイラ水管を損傷させる恐れがあったが、かかる不具合の発生を未然に防ぐことができる。
【0023】
以上、本発明のストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法は、損失熱を抑えることができるとともに、NOx除去率を向上させることができるという特性を有していることから、一般廃棄物や産業廃棄物を焼却処理するストーカ式焼却炉の排ガスの処理の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 廃棄物焼却処理施設
2 焼却炉
10a 主燃焼室
10b 二次燃焼室
14 二次燃焼ゾーン
18 燃焼排ガス引抜管路
19 集塵装置
20 還流ガス送風機
21 吹込ノズル
22 後燃焼ゾーン
23 NOx還元ゾーン
24 還流ガス流通管路
26 尿素水貯留タンク
27 送給ポンプ
28 尿素水流通管路
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物や産業廃棄物を焼却処理するストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ストーカ式焼却炉は、燃焼室内に供給される廃棄物をその燃焼室内にて複数のストーカ段上を順次移動させながら乾燥、燃焼、後燃焼させるように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−230517号公報
【0004】
この種のストーカ式焼却炉において、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制する技術として、二段燃焼法や排ガス循環法等による燃焼法の改善以外に、触媒を用いて還元剤と反応させる触媒脱硝法や、炉内に還元剤を吹き込む無触媒脱硝法などがある。
【0005】
触媒脱硝法は、例えば燃焼排ガス処理流れの途中に設けられた集塵装置の下流側に排ガス加熱装置と触媒脱硝装置とが組み込まれることで達成されるものである。ここで、排ガス加熱装置は、集塵装置からの150℃程度の排ガスを210℃程度にまで加熱するものであり、熱源としてはボイラ付き廃棄物焼却処理施設の場合にはボイラからの過熱蒸気(400℃または300℃)が使用される。また、触媒脱硝装置は、触媒上でアンモニア(NH3)とNOxの反応を起こさせ、NOxをN2とH2Oに分解する装置であるが、分解率は反応温度に大きく依存するため、排ガス温度を少なくとも200℃以上に保つ必要がある。
【0006】
無触媒脱硝法は、例えば尿素水吹込装置が焼却炉に付設されることで達成されるものである。ここで、尿素水吹込装置は、尿素水を焼却炉内の所定温度域に噴霧ノズルを介して吹き込むものであり、この尿素水吹込装置にて尿素水を炉内に霧状に吹くことにより、NOxを還元して脱硝処理することができるようになっている。
【0007】
しかしながら、上記の触媒脱硝法では、触媒脱硝装置に加えてその触媒脱硝装置に導入される排ガスを加熱する排ガス加熱装置が必要であるため、設備費が高くなるという問題点がある。また、排ガス加熱装置で使用される熱源のエネルギーは損失エネルギーとなり、例えば発電効率の低下の原因になるという問題点がある。
【0008】
一方、従来の無触媒脱硝法では、以下のような問題点がある。
(1)焼却炉内に吹き込む尿素水の噴霧状態を一定として炉内での混合を良くするために10倍程度の水で希釈する必要があるため、回収可能な熱量がその希釈水の蒸発潜熱分だけ減少する。
(2)尿素水を10倍の水で希釈したとしても少量であり、燃焼排ガスとの混合が十分にできず、NOx除去率が当量比1.2で30〜40%に止まってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、損失熱を抑えることができるとともに、NOx除去率を向上させることができるストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明によるストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法は、
複数のストーカ段上で廃棄物を順次移動させながら乾燥、燃焼、後燃焼させる主燃焼室と、この主燃焼室で発生した燃焼排ガスに含まれる未燃ガスを二次燃焼させる二次燃焼室とを備えるストーカ式焼却炉において、
前記主燃焼室における後燃焼が行われる後燃焼ゾーンから燃焼排ガスを引き抜き、この引き抜いた燃焼排ガスに尿素水を吹き込んでアンモニアガスを含んだアンモニア含有燃焼排ガスを生成し、このアンモニア含有燃焼排ガスを前記二次燃焼が行われる二次燃焼ゾーンの燃焼排ガス流れの下流側に吹き込むことを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、前記後燃焼ゾーンから引き抜かれる燃焼排ガスに除塵処理が施されるのが好ましい(第2発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、酸素濃度が高く、CO等の未燃ガスやHCl、SOx等の酸性ガス濃度が低い後燃焼ゾーンからの燃焼排ガスに尿素水を吹き込むことで生成されるアンモニア含有燃焼排ガスが二次燃焼ゾーンの燃焼排ガス流れの下流側に吹き込まれるので、炉内燃焼排ガスとの混合が十分に行われ、高いNOx除去効果を得ることができ、NOx除去率を向上させることができる。
また、後燃焼ゾーンからの比較的高温(500℃以上)の燃焼排ガスに尿素水が水で希釈されることなく吹き込まれ、しかもその燃焼排ガスの熱エネルギーで尿素水を蒸発させた結果発生するアンモニアガスを含有するアンモニア含有燃焼排ガスが二次燃焼ゾーンの燃焼排ガス流れの下流側に吹き込まれるので、損失熱を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るストーカ式焼却炉を備えた廃棄物焼却処理施設の概略システム構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明によるストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<廃棄物焼却処理施設の概略構成の説明>
図1に示される廃棄物焼却処理施設1において、廃棄物は焼却炉2で燃焼される。この焼却炉2での廃棄物の燃焼に伴い発生する排ガスは、ボイラ3での熱交換に供されるとともに、エコノマイザ4でのボイラ3への給水の加熱に供された後に、減温塔5で所定温度まで冷却されてからバグフィルタを用いた集塵装置6に送られる。この集塵装置6でダストが除去された排ガスは、誘引通風機7により、煙突8を介して系外に排出される。
【0016】
<焼却炉の説明>
焼却炉2は、ストーカ式焼却炉であって、廃棄物を燃焼する燃焼室10を備えている。この燃焼室10は、主燃焼室10aと二次燃焼室10bとから構成されている。
主燃焼室10aにおいては、下部に配置された複数のストーカ、すなわち上段から下段に向かって順に配される乾燥ストーカ11、燃焼ストーカ12および後燃焼ストーカ13上で廃棄物を順次移動させながら乾燥、燃焼、後燃焼が行われる。
二次燃焼室10bにおいては、主燃焼室10aで発生した燃焼排ガスに含まれる未燃ガスが、室内に吹き込まれた二次燃焼空気によって二次燃焼される二次燃焼ゾーン14が設けられている。
【0017】
焼却炉2には、従来公知の一次燃焼空気吹込装置15および二次燃焼空気吹込装置16とは別に、排ガス還流装置17が付設されている。
【0018】
<排ガス還流装置の説明>
排ガス還流装置17は、燃焼排ガス引抜管路18と、集塵装置19と、還流ガス送風機20と、吹込ノズル21とを備えている。
燃焼排ガス引抜管路18は、後燃焼ストーカ13上での後燃焼が行われる後燃焼ゾーン22から燃焼排ガスを引き抜くための管路であって、主燃焼室10aを構成する炉壁における後燃焼ストーカ13の上方に位置する炉壁に接続されている。
集塵装置19は、耐熱性・耐薬品性に優れるセラミックフィルタを用いたもので、燃焼排ガス引抜管路18によって引き抜かれた比較的高温(500℃以上)の燃焼排ガス中に含まれるダストを効果的に除去する機能を有している。
還流ガス送風機20は、セラミック製等の耐熱性に優れる送風機であって、集塵装置19によってダストが除去された燃焼排ガスを還流ガスとして吹込ノズル21に向けて送り出す機能を有している。
吹込ノズル21は、焼却炉2の上部において二次燃焼ゾーン14の燃焼排ガス流れの下流側に設けられるNOx還元ゾーン23に臨ませて配設されている。なお、この吹込ノズル21においては、焼却炉2内が均一に攪拌されるようにその配置や設置個数が決められている。
還流ガス送風機20と吹込ノズル21とは、還流ガス流通管路24によって接続されており、還流ガス送風機20の作動により、集塵装置19からの還流ガス(後燃焼ゾーン22から引き抜いて除塵処理した後の燃焼排ガス)を、還流ガス流通管路24を通して吹込ノズル21からNOx還元ゾーン23に向けて吹き出すことができるようになっている。
【0019】
<尿素水混入装置の説明>
排ガス還流装置17には、尿素水混入装置25が付設されている。
尿素水混入装置25は、尿素水貯留タンク26に貯留されている尿素水を送給ポンプ27の作動にて尿素水流通管路28を通して還流ガス流通管路24内に混入するように構成されている。
この尿素水混入装置25において、還流ガス流通管路24内への尿素水の混入量の調節は、送給ポンプ27を駆動する電動モータ29の回転制御によって達成される。電動モータ29には、モータ制御器30が付設されており、このモータ制御器30からの制御信号に応じて電動モータ29の回転が制御される。
モータ制御器30は、煙突8から排出される直前の燃焼排ガスのNOx濃度を測定するNOx濃度計31からの測定信号をフィードバックして、かかる燃焼排ガス中のNOx濃度が規制値以下となるように制御信号を電動モータ29へ送信する。
【0020】
<作用効果の説明>
本実施形態においては、酸素濃度が高く、CO等の未燃ガスやHCl、SOx等の酸性ガス濃度が低い後燃焼ゾーン22の燃焼排ガスが燃焼排ガス引抜管路18を介して引き抜かれる。後燃焼ゾーン22から引き抜かれた燃焼排ガスは、セラミックフィルタを用いた集塵装置19で除塵処理が施された後、還流ガス送風機20によって還流ガス流通管路24を介して吹込ノズル21へと送られる。
還流ガス流通管路24には、尿素水貯留タンク26に貯留されている尿素水が送給ポンプ27の作動にて尿素水流通管路28を通して混入される。
還流ガス流通管路24を流れる燃焼排ガスは、500℃以上の高温の排ガスであり、還流ガス流通管路24に吹き込まれた尿素水を容易に蒸発させることができる。
還流ガス流通管路24に吹き込まれた尿素水は、蒸発・分解してアンモニアガスになり、このアンモニアガスを含んだアンモニア含有燃焼排ガスが吹込ノズル21を介してNOx還元ゾーン23へと吹き込まれる。
【0021】
本実施形態によれば、酸素濃度が高く、CO等の未燃ガスやHCl、SOx等の酸性ガス濃度が低い後燃焼ゾーン22からの燃焼排ガスに尿素水を吹き込むことで生成されるアンモニア含有燃焼排ガスがNOx還元ゾーン23に吹き込まれるので、炉内燃焼排ガスとの混合が十分に行われ、高いNOx除去効果を得ることができ、NOx除去率を向上させることができる。
また、後燃焼ゾーン22からの500℃以上の燃焼排ガスに尿素水が水で希釈されることなく吹き込まれ、しかもその燃焼排ガスの熱エネルギーで尿素水を蒸発させた結果発生するアンモニアガスを含有するアンモニア含有燃焼排ガスがNOx還元ゾーン23に吹き込まれるので、損失熱を抑えることができるとともに、燃焼促進効果も大きく貢献して残存している未燃ガスも完全燃焼させることができる。
【0022】
また、NOx除去率が当量比1.2で30〜40%程度であった従来の無触媒脱硝法と比べて格段に高いNOx除去率(70〜80%程度)を達成することができ、触媒脱硝法を併用したり、触媒脱硝法を単独で採用したりする必要がなくなるので、触媒脱硝装置が不要になり、また触媒の活性を維持するための排ガス加熱装置も不要となって発電効率の向上につながる。
さらに、尿素水を燃焼排ガスで蒸発させてから焼却炉2内に吹き込む構成とされており、従来のように尿素水を直接炉内に吹き込む構成では尿素水噴霧ノズルの詰まり等で噴霧不良になった場合、ボイラ水管に尿素水が当たり、ボイラ水管を損傷させる恐れがあったが、かかる不具合の発生を未然に防ぐことができる。
【0023】
以上、本発明のストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法は、損失熱を抑えることができるとともに、NOx除去率を向上させることができるという特性を有していることから、一般廃棄物や産業廃棄物を焼却処理するストーカ式焼却炉の排ガスの処理の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 廃棄物焼却処理施設
2 焼却炉
10a 主燃焼室
10b 二次燃焼室
14 二次燃焼ゾーン
18 燃焼排ガス引抜管路
19 集塵装置
20 還流ガス送風機
21 吹込ノズル
22 後燃焼ゾーン
23 NOx還元ゾーン
24 還流ガス流通管路
26 尿素水貯留タンク
27 送給ポンプ
28 尿素水流通管路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のストーカ段上で廃棄物を順次移動させながら乾燥、燃焼、後燃焼させる主燃焼室と、この主燃焼室で発生した燃焼排ガスに含まれる未燃ガスを二次燃焼させる二次燃焼室とを備えるストーカ式焼却炉において、
前記主燃焼室における後燃焼が行われる後燃焼ゾーンから燃焼排ガスを引き抜き、この引き抜いた燃焼排ガスに尿素水を吹き込んでアンモニアガスを含んだアンモニア含有燃焼排ガスを生成し、このアンモニア含有燃焼排ガスを前記二次燃焼が行われる二次燃焼ゾーンの燃焼排ガス流れの下流側に吹き込むことを特徴とするストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法。
【請求項2】
前記後燃焼ゾーンから引き抜かれる燃焼排ガスに除塵処理が施される請求項1に記載のストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法。
【請求項1】
複数のストーカ段上で廃棄物を順次移動させながら乾燥、燃焼、後燃焼させる主燃焼室と、この主燃焼室で発生した燃焼排ガスに含まれる未燃ガスを二次燃焼させる二次燃焼室とを備えるストーカ式焼却炉において、
前記主燃焼室における後燃焼が行われる後燃焼ゾーンから燃焼排ガスを引き抜き、この引き抜いた燃焼排ガスに尿素水を吹き込んでアンモニアガスを含んだアンモニア含有燃焼排ガスを生成し、このアンモニア含有燃焼排ガスを前記二次燃焼が行われる二次燃焼ゾーンの燃焼排ガス流れの下流側に吹き込むことを特徴とするストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法。
【請求項2】
前記後燃焼ゾーンから引き抜かれる燃焼排ガスに除塵処理が施される請求項1に記載のストーカ式焼却炉の無触媒脱硝方法。
【図1】
【公開番号】特開2013−108668(P2013−108668A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253471(P2011−253471)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】
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