説明

スピンドルクリーナー及びクリーナーキット

【課題】 確実なスピンドルの清掃を効率的かつ清潔に行うことができるスピンドルクリーナー及びクリーナーキットを提供する。
【解決手段】棒状体の外周に雄ねじが形成されたスピンドル31に付着しているグリースを除去するスピンドルクリーナー1であって、筒状体の内周に雌ねじが形成されたクリーナー本体4と、前記クリーナー本体4の外面に取り付けられた把持部5と、を備えるスピンドルクリーナー1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートバルブ等に用いられるスピンドルを清掃するためのスピンドルクリーナー及びクリーナーキットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、公知のゲートバルブ等に用いられるスピンドルが知られている。ゲートバルブは、一般的に、下水処理場あるいは抽水所等における主要な設備として、屋外の過酷な環境下に設置されている。したがって、このゲートバルブの操作に支障が生じないように、計画を立てて点検作業を行うのが一般的である。
【0003】
このようなゲートバルブに用いられるスピンドルとして、図7に示すスピンドルが知られている(例えば、特許文献1参照)。このスピンドル101は、図7に示すように、鉛直方向に延びる棒状体の外周に雄ねじが形成されることにより構成されている。また、スピンドル101には、雌ねじを有するハンドル102が螺合しており、スピンドル101を回転中心としてハンドル102を回動操作することにより、スピンドル101が上下に移動するように構成されている。これにより、スピンドル101に固定された図示しないバルブが上下に移動して、ゲートバルブ100が開閉するように構成されている。
【0004】
このようなスピンドル101においては、その外面に、ハンドル102を滑らかに回転させるためのグリースが塗布されているが、このグリースは、時間の経過と共に劣化してゆくのが一般的である。しかし、このような劣化グリースを放置しておくと、スピンドル101がさび付くことや、雄ねじ部分に異物がかみ込むことがあり、ゲートバルブ100の操作に支障が生じることがある。そこで、劣化グリースを新しいグリースに交換するために、スピンドル101に付着した劣化グリースを除去してスピンドル101を清掃することが行われている。そのような場合、従来は、金ブラシを用いて、手作業により劣化グリースを除去する方法が一般的であった。また、金ブラシよる作業の後、ウエスを用いて劣化グリースの拭き取り作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−275890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような従来の清掃方法では、金ブラシを用いて劣化グリースを除去するときに、作業者がスピンドル101を抱え込むような姿勢で清掃をするので、グリースが作業者に飛散して付着することがあった。また、金ブラシによる清掃作業では、手間がかかり、作業時間が長くなるという問題があった。また、ウエスによる拭き取り作業においても同様の問題があった。また、金ブラシによる清掃では、スピンドル101の雄ねじ部分にグリースが残存することがあり、残存グリースを拭き取るために多量のウエスを消費することがあった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、確実なスピンドルの清掃を効率的かつ清潔に行うことができるスピンドルクリーナー及びクリーナーキットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためのスピンドルクリーナーであって、棒状体の外周に雄ねじが形成されたスピンドルに付着しているグリースを除去するスピンドルクリーナーにおいて、筒状体の内周に雌ねじが形成されたクリーナー本体と、前記クリーナー本体の外面に取り付けられた把持部と、を備える。
【0009】
このような構成によれば、スピンドルにクリーナー本体を螺合させ、把持部を把持してクリーナー本体をスピンドルに対して回転させるだけで、スピンドルに付着したグリースを除去することができる。したがって、手軽にグリースを除去できるので、作業時間や作業人数を削減することができる。また、清掃作業中にグリースが飛散して作業者が汚れるのを防ぐことができる。また、クリーナー本体をスピンドルに螺合してスピンドルを清掃するので、スピンドルのねじ溝部分まで確実に清掃することができる。これにより、残存グリースを少なくでき、残存グリースを拭き取るためのウエスの消費量を抑制できる。したがって、本発明に係るスピンドルクリーナーによれば、確実なスピンドルの清掃を効率的かつ清潔に行うことができる。
【0010】
また、上記のスピンドルクリーナーにおいて、前記把持部は、前記クリーナー本体から延びる棒状体から構成されていてもよい。
【0011】
また、前記クリーナー本体は、分割されて第1分割体及び第2分割体を備えており、前記第1分割体及び第2分割体は、一端部において互いに回転可能に連結されており、他端部において対向した状態で固定機構により固定されていてもよい。
【0012】
また、前記固定機構は、前記第1分割体及び第2分割体をねじ止めにより固定可能なように構成されていてもよい。
【0013】
また、前記スピンドルは、ゲートバルブにおけるスピンドルであってもよい。
【0014】
また、本発明は、上記のいずれかに記載のスピンドルクリーナーと、前記スピンドルを挿通可能な貫通孔を有する受け皿と、を備えるクリーナーキットであってもよい。このような構成によれば、受け皿によりグリースを受け取るので、グリースを除去した後、このグリースの廃棄を容易に行うことができる。その結果、より効率的な清掃作業となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスピンドルクリーナー及びクリーナーキットによれば、確実なスピンドルの清掃を効率的かつ清潔に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るスピンドルクリーナー及びクリーナーキットを説明する側面図である。
【図2】スピンドルクリーナー及びクリーナーキットの斜視図である。
【図3】スピンドルクリーナーの断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るスピンドルクリーナーの斜視図である。
【図5】スピンドルクリーナーの上面図である。
【図6】スピンドルクリーナーの要部を拡大して示す斜視図である。
【図7】従来技術に係るゲートバルブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るスピンドルクリーナー及びクリーナーキットを説明する側面図である。また、図2は、スピンドルクリーナー及びクリーナーキットの斜視図である。また、図3は、スピンドルクリーナーの断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、クリーナーキット3は、スピンドル31に適用されるスピンドルクリーナー1及び受け皿2により構成されている。スピンドルクリーナー1及び受け皿2の材質としては、特に限定されないが、例えば、鉄或いは銅などを用いることができる。
【0019】
スピンドル31は、例えば公知のゲートバルブ30等に用いられる部材であり、鉛直方向に延びる棒状体の外周に雄ねじ33が形成されることにより構成されている。また、スピンドル31には、雌ねじを有するハンドル32が螺合しており、スピンドル31を回転中心としてハンドル32を回動操作することにより、スピンドル31が上下に移動するように構成されている。これにより、スピンドル31に固定された図示しないバルブが上下に移動して、ゲートバルブ30が開閉するように構成されている。また、スピンドル31の表面には、ハンドル32を滑らかに回転させるためのグリースが塗布されている。
【0020】
スピンドルクリーナー1は、図3に示すように、クリーナー本体4と、クリーナー本体4に取り付けられた一対の把持部5、5とを備えている。クリーナー本体4は、挿入部6を有する筒状部材からなり、挿入部6にスピンドル31が挿入される。また、クリーナー本体4を構成する筒状部材の内周には雌ねじ7が形成されており、この雌ねじ7は、挿入部6に挿入されたスピンドル31の雄ねじ33と螺合するように構成されている。
【0021】
一対の把持部5,5は、クリーナー本体4の外周に固定された一対の棒状体から構成されており、クリーナー本体4の外周から側方に延び、素手で把持可能に構成されている。把持部5,5とクリーナー本体4との固定方法は特に限定されないが、例えば、溶接或いはねじ止め等により固定することができる。
【0022】
受け皿2は、グリースを受け入れ可能なようにお盆形状に形成されている。また、受け皿2は、中心部に貫通孔8が形成されており、貫通孔8にスピンドル31を挿通できるように構成されている。また、受け皿2は、ハンドル32の上に載置することができる。
【0023】
次に、以上のように構成されたスピンドルクリーナー1を用いてスピンドル31を清掃する方法について説明する。
【0024】
まず、受け皿2の貫通孔8にスピンドル31を挿通し、受け皿2をハンドル32上に載置する。次に、表面にグリースが付着したスピンドル31に対して、クリーナー本体4を螺合させる。次に、把持部5,5を把持して、クリーナー本体4をスピンドル31に対して回転させることにより下方へねじ込んでゆく。このとき、スピンドル31に付着しているグリースは、クリーナー本体4により下方へ押されてゆく。そして、図2に示すように、下方へ押されたグリースgは、スピンドル31に沿って下方へ流れてゆき、受け皿2に受け入れられる。このようにして、スピンドル31に付着したグリースを除去する。その後、必要に応じて、ウエスによりスピンドル31に残存したグリースを拭き取る。
【0025】
以上のように、本実施形態に係るスピンドルクリーナー1によれば、把持部5,5を把持してクリーナー本体4をスピンドル31に対して回転させるだけで、スピンドル31に付着したグリースを除去することができる。したがって、手軽にグリースを除去できるので、従来の金ブラシによる清掃作業のように手間がかかることがなく、作業時間を短縮することができる。また、作業者の人数を削減することも可能である。また、清掃作業中にグリースが飛散するのを防ぐことができ、作業者にグリースが付着するのを防ぐことができる。また、スピンドル31にクリーナー本体4を螺合させることによりスピンドル31を清掃するので、スピンドル31のねじ溝に残存するグリースを少なくすることができる。したがって、従来よりも多量のグリースを除去できるので、スピンドル31を確実に清掃することができる。また、残存グリースが少ないので、ウエスによる拭き取り作業を減らすことができる。その結果、ウエスの消費量を抑制することができる。以上より、本発明に係るスピンドルクリーナーによれば、確実なスピンドル31の清掃を効率的かつ清潔に行うことができる。
【0026】
また、受け皿2によりグリースを受け取るので、グリースを除去した後、このグリースの廃棄を容易に行うことができる。したがって、クリーナーキット3によれば、より効率的な清掃作業となる。また、把持部5,5がクリーナー本体4から延びる棒状体からなるので、少ない力でクリーナー本体4を回転させることができる。したがって、清掃作業を容易に行うことができる。このような構成は、ゲートバルブ等のようにスピンドル31が大型で、グリースが多量なことにより清掃作業が煩わしい場合に、特に有効である。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0028】
例えば、上記実施形態では、クリーナー本体4は、1つの部材から構成されていたが、グリースを除去可能であればその構成は特に限定されず、複数に分割可能であってもよい。図4は、本発明の他の実施形態に係るスピンドルクリーナーの斜視図であり、図5は、スピンドルクリーナーの上面図であり、図6は、スピンドルクリーナーの要部を拡大して示す斜視図である。図4〜6において、図1〜3に係る構成と同様の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図4に示すように、クリーナー本体4は、2つに分割されることにより第1分割体10及び第2分割体11を備えている。第1分割体10及び第2分割体11にはそれぞれ把持部5,5が固定されている。また、第1分割体10及び第2分割体11は、湾曲した部材からなり、凹部を向かい合わせて対向することにより、挿入部6を有する筒状体を構成する。また、第1分割体10及び第2分割体11の一端部には、連結機構12が取り付けられており、他端部には、固定機構16が取り付けられている。クリーナー本体4の外周の形状、すなわち、第1分割体10及び第2分割体11の外周の形状は特に限定されず、適宜変更可能である。
【0030】
連結機構12は、本実施形態では公知の蝶番を用いており、回転軸13を介して一片14が第1分割体10に固定され、他片15が第2分割体11に固定されており、第1分割体10及び第2分割体11を一端部において互いに回転可能に連結している。
【0031】
固定機構16は、回転軸17を介して互いに回転可能に連結された一対の固定板18,19を備えており、一方の固定板18は、第1分割体10の他端部に固定されている。また、他方の固定板19には図示しないねじ孔が形成されており、このねじ孔に締め付けねじ20が螺入されており、他方の固定板19により第2分割体11の他端部を覆った状態で、締め付けねじ20をねじ込むことにより、締め付けねじ20の先端部が第2分割体11の外面に押圧されるように構成されている。これにより、他方の固定板19が第2分割体11の他端部に固定される。このような固定機構16のねじ止めにより、第1分割体10及び第2分割体11は、他端部において互いに対向した状態で固定される。
【0032】
以上のように構成されたスピンドルクリーナー1によりスピンドル31を清掃するときは、まず、第1分割体10及び第2分割体11の他端部を開放した状態で、第1分割体10及び第2分割体11によりスピンドル31を軸方向の所望の位置で覆う。次に、第1分割体10及び第2分割体11の他端部を対向させた状態で、締め付けねじ20を締めることにより、第1分割体10及び第2分割体11を互いに固定する。これにより、クリーナー本体4がスピンドル31に螺合する。続いて、把持部5,5を把持して、クリーナー本体4をスピンドル31に対して回転させてゆき、これによりスピンドル31に付着したグリースを除去する。
【0033】
このような構成によれば、クリーナー本体4が第1分割体10及び第2分割体11を備え、一端部において回転可能に連結されており、他端部において対向した状態で固定可能に構成されているので、クリーナー本体4をスピンドル31に螺合させるとき、第1分割体10及び第2分割体11の他端部を開放した状態でスピンドル31に取り付けることができる。これにより、クリーナー本体4をスピンドル31の上端から螺合させる必要がないので、スピンドル31の軸方向の位置を自由に選択してクリーナー本体4を螺合させることができる。その結果、スピンドル31の目的部分のみを清掃することができるので、より効率的に清掃作業を行うことができる。また、締め付けねじを用いて第1分割体10及び第2分割体11を固定することにより、クリーナー本体4をスピンドル31に螺合させるので、締め付けねじ20の締め付け強さを調整することにより、スピンドル31に対するクリーナー本体4の螺合の強さを調整することができる。その結果、スピンドル31に付着するグリースの量に応じて、螺合強さを調整して清掃することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、把持部5,5は、一対の棒状体から構成されていたが、素手で把持可能であれば構成は特に限定されず、その形状や数は適宜変更可能である。
【0035】
また、スピンドル31は、ゲートバルブのスピンドルに限定されるものではなく、他の装置に用いられるスピンドルであってもよい。また、クリーナー本体4の大きさも特に限定されるものではなく、スピンドル31の大きさに応じて適宜変更可能である。
【0036】
また、締め付けねじ20が螺入される固定板19の図示しないねじ孔の大きさや形状は、適宜変更可能である。例えば、このねじ孔をクリーナー本体4の周方向に沿って延びる横長の孔として形成すると、締め付けねじ20を螺入する位置を、クリーナー本体4の周方向に沿って調整することができる。このような構成によれば、グリースの量に応じて締め付けねじ20による締め付け位置を調整することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 スピンドルクリーナー
2 受け皿
3 クリーナーキット
4 クリーナー本体
5 把持部
10 第1分割体
11 第2分割体
12 連結機構
16 固定機構
20 締め付けねじ
31 スピンドル
32 ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状体の外周に雄ねじが形成されたスピンドルに付着しているグリースを除去するスピンドルクリーナーであって、
筒状体の内周に雌ねじが形成されたクリーナー本体と、
前記クリーナー本体の外面に取り付けられた把持部と、を備えるスピンドルクリーナー。
【請求項2】
前記把持部は、前記クリーナー本体から延びる棒状体からなる請求項1に記載のスピンドルクリーナー。
【請求項3】
前記クリーナー本体は、分割されて第1分割体及び第2分割体を備えており、
前記第1分割体及び第2分割体は、一端部において互いに回転可能に連結されており、他端部において対向した状態で固定機構により固定される請求項1又は2に記載のスピンドルクリーナー。
【請求項4】
前記固定機構は、前記第1分割体及び第2分割体をねじ止めにより固定可能なように構成されている請求項3に記載のスピンドルクリーナー。
【請求項5】
前記スピンドルは、ゲートバルブにおけるスピンドルである請求項1〜4のいずれかに記載のスピンドルクリーナー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のスピンドルクリーナーと、
前記スピンドルを挿通可能な貫通孔を有する受け皿と、を備えるクリーナーキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−177829(P2011−177829A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44163(P2010−44163)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所 社団法人日本下水道協会 刊行物名 下水道協会誌 第46巻 第564号 発行日 平成21年10月15日
【出願人】(591030499)大阪市 (64)
【Fターム(参考)】